表紙のデザインについて 演者、査読者など本学会に関わる方々から顔写真をご提供いただき、 表紙のデザインに使用させていただきました。写真をご提供いただき ました皆さま、ありがとうございました。 平成 27 年 1 月吉日 施設長様 一般社団法人千葉県理学療法士会会長 第 20 回千葉県理学療法士学会学会長 田 中 康 之 (公印略) 第 20 回千葉県理学療法士学会出張許可についてのお願い 謹 啓 時下、貴台におかれましては益々ご清栄のこととお喜び 申し上げます。 平素は千葉県理学療法士会の活動にご理解、ご協力を賜り、 厚く御礼申し上げます。 さて、このたび千葉県理学療法士会では、下記の通り第 20 回千葉県理学療法士学会を開催いたします。 つきましては、貴施設所属理学療法士 氏 の学会出張に格段のご配慮をいただきますよう、謹んでお願い 申し上げます。 謹 キ リ ト リ 記 テ ー マ 『理学療法士の説明力 ~あなたはきちんと伝えていますか?~』 開催期日 平成 27 年 2 月 1 日(日) 開催時間 9:00 ~ 18:00 開催会場 千葉県立保健医療大学 幕張キャンパス 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉 2 丁目 10 番 1 号 白 第 20 回 千葉県理学療法士学会 The 20th Annual Meeting of the Chiba Physical Therapy Association 抄録集 理学療法士の説明力 ~あなたはきちんと伝えていますか?~ 会 期:2015 年 2 月 1 日(日) 会 場:千葉県立保健医療大学 学会長:田中 康之 千葉県千葉リハビリテーションセンター 主 催:一般社団法人千葉県理学療法士会 第 20 回千葉県理学療法士学会事務局 千葉県千葉リハビリテーションセンター 〒266-0005 成人理学療法科 千葉県千葉市緑区誉田町 1 丁目 45 番 2 E-mail:[email protected] INDEX 学会長あいさつ ………………………………………………………………………1 会場への交通案内 ……………………………………………………………………2 会場案内図 ……………………………………………………………………………3 参加者へのお知らせとお願い ………………………………………………………4 座長へのお知らせとお願い …………………………………………………………5 演者へのお知らせとお願い …………………………………………………………6 新人教育プログラム、専門・認定理学療法士制度について ……………………7 表彰について …………………………………………………………………………8 お子様連れの会員の皆様方へ ………………………………………………………9 学会日程表……………………………………………………………………………10 リレー講演・技術講習プログラム…………………………………………………11 口述発表プログラム…………………………………………………………………12 リレー講演抄録………………………………………………………………………22 技術講習抄録…………………………………………………………………………23 口述発表抄録…………………………………………………………………………28 第 20 回学会準備委員会組織図………………………………………………………69 学会長あいさつ 「理学療法士の説明力 ~あなたはきちんと伝えていますか?~」 第 20 回千葉県理学療法士学会 学会長 田 中 康 之 千葉県千葉リハビリテーションセンター 地域連携部地域支援室 第 20 回千葉県理学療法士学会の学会長を務めさせていただく田中康之です。この節目の大役に、身が引き締まる思い です。 今回は、イベント性を薄くし、時間をかけて議論ができる学会を目指し、学会運営会社等に頼らず実行委員のみんなが 全て手作りで準備をして参りました。当日は多くの県士会員の皆様のご協力の下運営を行います。素朴な学会、しかし実 の濃い学会、明日からの活力につながる学会を目指し一同がんばりますので、よろしくお願いいたします。 さて、今回はメインテーマを「理学療法士の説明力」とし、リレー講演の実施、一般演題は全て口述で行うこととしま した。 この 20 年間で理学療法士を取り巻く環境は大きく変わりました。そして地域包括ケアシステムの構築が議論されてい る昨今、私たちの職域は病院の中の医療から地域・在宅と言われる領域での保健・医療・福祉・介護、そして教育や産業 と多様になりつつあります。 一方で「理学療法士」という職種の認知度は決して高くありません。今まで私たちの多くは、同じ職場の医師や看護師 と仕事をしてきました。ところが地域・在宅という場は違います。はじめて理学療法士と仕事をするという医師も多くい ます。訪問先の患者・家族は初めて理学療法士に会うかもしれません。その時に、自分がどのような職種で、自分が関わ ることで何を成果としてもたらすことができるのかを、きちんと説明できるでしょうか。 そこでリレー講演では「患者に伝える」「他職種に伝える」「経営者に伝える」等を各方面でご活躍をされている講師 を招きお話していただきます。お一人の講演は 30 分と短いのですが、各講演を聴講された皆さん自らが統合し、自らの 説明力を考え直す契機になればと考えております。 また、これからは病院内で勤務していた中堅の理学療法士が、在宅領域に関わることも増えるでしょう。その結果、自 分の得意分野以外の分野への関わりが増えると思います。しかし、中堅・ベテランは再度基礎から確認をすることはなか なか難しいのも実際です。 そこで、「明日から使える基礎 ~基礎を見直して臨床のレベルアップ~」と題し、新人や基礎を見直したいベテラン まで幅広く参加できる技術講習会を企画いたしました。各講座とも県内外でご活躍をされている講師を招きまして、その エッセンスを県士会員の皆様に吸収していただければと思っております。 短い時間ではありますが、実行委員・運営スタッフ、そして参加者の皆さんと一緒に実り多き学会にしたいと思います。 ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。 第 20 回千葉県理学療法士学会 1 会場への交通案内 会場までのアクセス ■電車 JR 総武線幕張駅、JR 京葉線海浜幕張駅、京成千葉線京浜幕張駅より徒歩 15 分 注)当日は正門よりお入りください。 ■お車でお越しの方へ 注)当日は大学の駐車場は使用できません。周辺の駐車場をご利用ください。 2 第 20 回千葉県理学療法士学会 会場案内図 図書館棟 1F 1F 2F 第 20 回千葉県理学療法士学会 3 参加者へのお知らせとお願い 1.学会参加費について 日本理学療法士協会員:3,000 円 釣銭のいらないようにご準備をお願いします。 非 会 員 :5,000 円 非会員は公益社団法人日本理学療法士協会員以外です。 学 生 :1,000 円 受付時に学生証の提示をお願いします。理学療法士の資格がある方は該当しません。 ※受付にて参加者全員に学会誌をお渡しします。 2.学会受付について 1)受付場所・時間:千葉県立保健医療大学 幕張キャンパス 図書館棟メインエントランス 9:00~ 2)会員受付:受付時に日本理学療法士協会の会員証の提示をお願いいたします。 3)参加費と引き換えに、ネームカード(参加費領収証を兼ねた参加証)を配付します。 所属・氏名を記入し、見やすい場所(胸の前など)に付けてください。 4)座長・演者の方は学会受付終了後、座長・演者受付を行ってください。 3.新人教育プログラム、認定・専門理学療法士制度について 詳細は、本誌 8 頁「新人教育プログラム、認定・専門理学療法士制度についてのお知らせ」をご参照く ださい。 4.技術講習について 技術講習Ⅱ「基礎のテーピング」につきましては定員を 65 名とさせていただきます。参加を希望される方には 受付にて整理券を配布します。それ以外の技術講習は特に定員は設けておりません。 5.会場内での飲食について 1)大学周辺には飲食店が多くありませんが、正門を出て JR 幕張駅方面に 200mほど進むとコンビニエンス ストアがあります。また JR 幕張駅、JR 海浜幕張駅周辺には多くの飲食店があります。 2)学会当日は大学の食堂・売店は営業しておりません。また、お弁当の販売は行いませんので、昼食等は 各自でご準備ください。 3)講演・発表会場内では飲食禁止となっておりますが、学生ホール棟 1 階の学生ホールでの飲食は可能です。 6.写真撮影・取材について 全ての撮影(デジタルカメラ、ビデオ、カメラ機能付き携帯電話を含む)および録音を禁止いたします。 7.お子様連れの会員の皆様方へ 本学会では託児所を開設せず、お子様連れの会員を対象に学会参加費の減免をおこなうこととしました。 詳細は本誌 10 頁「お子様連れの会員の皆様方へ」をご参照ください。 8.クロークについて クロークはございません。また使用できるロッカーもございません。お荷物は各自でお持ちください。 9.その他の注意事項 1)大学構内は禁煙になっております。喫煙は所定の場所でお願いいたします。 2)大学館内に持ち込まれたゴミは、個人でお持ち帰りください。 3)講演・発表会場では、携帯電話の通話やメールの使用を禁止いたします。電源を切るかマナーモードに設 定する等、ご協力をお願いいたします。 4)緊急・火災時に備えて、非常口の確認をお願いいたします。 10.連絡先(運営事務局) 千葉県千葉リハビリテーションセンター 〒266-0005 千葉県千葉市緑区誉田町 1 丁目 45 番 2 第 20 回千葉県理学療法士学会事務局 E-mail:[email protected] 4 第 20 回千葉県理学療法士学会 北郷仁彦 座長へのお知らせとお願い 1.座長へのお知らせとお願い 1)座長は学会受付終了後、「座長・演者受付」へお越しください。 2)午前のセッションの座長は、セッション開始 30 分前までに受付を行ってください。 3)午後のセッションの座長は、12:00~セッション開始 30 分前までに受付を行ってください。 4)ご担当のセッションの開始 10 分前までに、発表会場内の「座長席」にお着きください。 5)発表時間は 1 演題につき 7 分とします。質疑応答は 3 分以内でお願いいたします。 6)全ての発表会場内にはタイムキーパーが入ります。座長席に時計も用意しておりますので、ご確認いただき ながら時間の管理をお願いいたします。 7)発表の際に、倫理に関する記載をご確認いただきますようお願いいたします。 8)座長の職務遂行が不可能になった場合には、速やかに学会担当者までご連絡ください。 2.座長についてのお問い合わせ 千葉県千葉リハビリテーションセンター 〒266-0005 千葉県千葉市緑区誉田町 1 丁目 45 番 2 第 20 回千葉県理学療法士学会事務局 北郷仁彦 E-mail:[email protected] ※お問い合わせの際には、件名に「座長の問い合わせ」と書いていただき、お名前と連絡先を添えてご送信 ください。 第 20 回千葉県理学療法士学会 5 演者へのお知らせとお願い 1.演者へのお知らせとお願い 1)演者は学会受付終了後、「座長・演者受付」へお越しください。 2)発表終了後、閉会式にて優秀な演題に対する表彰を行います。演者の方は閉会式に参加されますようお願い いたします。 3)採択された演題のキャンセルはできません。筆頭演者の方が発表できない場合には、必ず共同演者の方が発 表してください。 4)演者は演者受付終了後、各発表会場にて PC 受付を 9:00~11:30 までに行ってください。 5)発表 10 分前までに「次演者席」にお着きください。 6)発表時間は 10 分(発表 7 分以内・質疑応答 3 分以内)を設定しております。 7)発表は PC プレゼンテーションに限ります。発表用のデータの持ち込みはメディア(USB メモリー、CD-R) にてお願いいたします。PC 受付にて演者ご自身で動作確認を行ってください。 8)データを保存したメディアは、必ずコンピュータウイルスの検査を行ってください。 9)当日使用するアプリケーションソフトは「Windows 版 PowerPoint 2010」です。必ず Windows 版 PowerPoint 2010 で動作確認を行ったうえでお持ちください。 10)発表中のページ送りの PC 操作は、発表者ご自身で行ってください。 11)学会終了後、PC 上のデータは学会事務局にて責任を持って消去いたします。 2.座長についてのお問い合わせ 千葉県千葉リハビリテーションセンター 〒266-0005 千葉県千葉市緑区誉田町 1 丁目 45 番 2 第 20 回千葉県理学療法士学会事務局 北郷仁彦 E-mail:[email protected] ※お問い合わせの際には、件名に「演題発表の問い合わせ」と書いていただき、お名前と連絡先を添えて ご送信ください。 6 第 20 回千葉県理学療法士学会 新人教育プログラム、認定・専門理学療法士制度について 1.新人教育プログラム 一昨年度より新人教育プログラムの改定が行われ、新人教育プログラムにつきましても日本理学療法士協会 での管理となりました。 一般演題の筆頭演者におかれましては『理学療法の臨床 また、今学会では『理学療法の臨床 C-6 症例発表』の取得が可能となっております。 C-7 士会活動・社会貢献』の取得も可能となっております。前記2テー マの単位は、学会事務局が日本理学療法士協会へ受付リストを報告することで日本理学療法士協会より付与さ れます。 学会終了後、速やかに日本理学療法士協会へ受付リストを報告させていただく予定ではありますが、単位が 付与されるまで1~2週間程度のお時間をいただく場合がありますので、あらかじめご了承ください。 2.認定理学療法士・専門理学療法士制度 下記のポイントの取得が可能です。 都道府県士会学会への参加 ⇒ 10 ポイント 都道府県士会学会での一般演題の筆頭演者 ⇒ 5 ポイント 認定・専門理学療法士制度につきましては日本理学療法士協会もしくは各専門領域研究会が管理しておりま す。今学会においても学会運営事務局が参加者名簿を日本理学療法士協会へ報告することにより、日本理学療 法士協会よりポイントが付与されます。 参加者名簿を作成する都合上、履修ポイントをご希望の方におかれましては、必ず日本理学療法士協会の会 員証を持参していただきますようお願い申し上げます。 会員証をお忘れの場合はポイントの付与ができない場合がありますので、あらかじめご了承ください。 認定・専門理学療法士制度について不明な点がございましたら、協会 HP をご確認の上、日本理学療法士協 会もしくは各専門領域研究会までお問い合せください。 認定・専門理学療法士制度について(協会 HP) http://www.japanpt.or.jp/lifelonglearning/system/ 認定・専門理学療法士制度の新ポイント基準表 http://www.japanpt.or.jp/00_jptahp/wp-content/uploads/2014/08/senmon_ninteipt_point2014.pdf 第 20 回千葉県理学療法士学会 7 表彰について 第 20 回千葉県理学療法士学会では、県内において優秀な理学療法士を育成すること、学会の学術活動を活性化 すること、千葉県理学療法士学会をさらに発展させることを目的として、最優秀賞 1 名を選考し表彰いたします。 また、本学会は第 20 回という節目の開催であることを記念いたしまして、記念賞 1 名を選考し表彰いたします。 選考方法は本学会で選考した審査委員により演題発表を審査し、発表終了後に審査結果の集計を行います。表彰 は閉会式の際に学会長より行われます。すべての発表者が表彰対象になっておりますので、発表者(共同演者でも 可)の方は、閉会式にご出席いただきますようお願いいたします。 8 第 20 回千葉県理学療法士学会 お子様連れの会員の皆様方へ (学会参加の支援) 本学会ではお子様連れの会員の学会参加を支援するために、学会参加費を下記のとおり減免いたします。なお、 託児室はございませんので、あらかじめご了承ください。 6 歳未満のお子様がいらっしゃる会員は学会当日に受付においてお子様の保険証をご提示ください。 減免額:2,000 円(通常の会員参加費 3,000 円のところ参加費 1,000 円となります。) ※減免額はお子様の人数に関係なく一律です。 ※ご夫婦で参加の場合は、共に減免いたします。 減免対象者:6 歳未満のお子様がいらっしゃる千葉県理学療法士会会員 学会当日はお子様連れで学会に参加される会員の方が、お子様と休憩や食事に利用できる簡易の部屋を用意いた しております。託児室ではありませんので、保育士等のスタッフは配置しておりません。お子様を部屋に一人で放 置したりしないようにしてください。この部屋を利用中に発生した事故の責任は本学会では負いかねます。ご利用 される方はこのことをご理解のうえご利用ください。 当日、ご利用を希望される方は受付にて申し出てください。係員が部屋までご案内いたします。 お問い合せ先: 千葉県千葉リハビリテーションセンター 〒266-0005 千葉県千葉市緑区誉田町 1 丁目 45 番 2 第 20 回千葉県理学療法士学会事務局 北郷仁彦 E-mail:[email protected] ※お問い合わせの際には件名に「減免の問い合わせ」と書いていただき、お名前と連絡先を添えてご送信ください。 第 20 回千葉県理学療法士学会 9 学会日程表 平成27年2月1日(日) 第1会場 第2会場 第3会場 第4会場 大講義室 図書館棟 1F 中講義室 図書館棟 1F 講義室1 学生ホール棟 2F 講義室2 学生ホール棟 2F 09:00 9:00~ 受付 9:30~ 10:00 開会式 10:00~11:00 10:00~11:00 技術講習Ⅰ 10:00~11:00 「脳画像の見方」 講師:村山 尊司 千葉県千葉リハビリテー ションセンター 運動器Ⅰ 11:00 11:10~12:10 地域生活期 11:10~12:10 10:00~11:00 基礎Ⅱ 11:10~12:10 11:30~12:30 運動器Ⅱ 12:00 13:00 技術講習Ⅱ 「基礎のテーピング」 講師:岡田 亨 船橋整形外科病院 ※参加定員65名 受付で整理券を配布します 13:00~15:30 リレー講演 「理学療法士の説明力~あなたはき ちんと伝えていますか?~」 講師 14:00 ①竹内 恵 13:00~14:00 技術講習Ⅲ 「装具と歩行分析」 講師:中野 克己 埼玉県総合リハビリテー ションセンター 患者支援 13:00~14:00 運動器Ⅲ 基礎Ⅲ 13:00~14:00 基礎Ⅳ 空港ターミナルサービス(株) ②島村 敦子 14:10~15:10 千葉大学大学院看護学研究科 14:10~15:10 ③廣瀬 英紀 (株)スペースケア 運動器Ⅳ 15:00 ④曽根 祐介 教育・医療安全 みっつの輪 コーディネーター:田中 康之 15:20~16:20 技術講習Ⅳ 16:00 16:00~17:00 説明力 (学会テーマ演題) 17:00 18:00 10 閉会式 17:40~ 第 20 回千葉県理学療法士学会 「高齢者のシーティング」 講師:明石 圭司 (株)ウィズ 講師 松岡 研太郎 ラックヘルスケア(株) 15:20~16:20 運動器Ⅴ 15:20~16:20 神経Ⅰ 16:30~17:30 16:30~17:30 基礎Ⅰ 神経Ⅱ リレー講演・技術講習プログラム リレー講演 13:00~15:30 会場:第1会場(図書館棟1F) コーディネーター:田中 康之 (千葉県千葉リハビリテーションセンター) [理学療法士の説明力~あなたはきちんと伝えていますか?~] 竹内 島村 廣瀬 曽根 恵 敦子 英紀 祐介 空港ターミナルサービス株式会社 千葉大学大学院看護学研究科 株式会社スペースケア 医療法人社団創進会 エアライン業務部接遇セクション 訪問看護学教育研究分野 東北事業部 サービス付き高齢者向け住宅 技術講習Ⅰ 10:00~11:00 みっつの輪 会場:第2会場(図書館棟1F) 座長:倉山 太一 (千葉大学医学研究院 子どものこころの発達研究センター) [脳画像の見方] 村山 尊司 千葉県千葉リハビリテーションセンター 技術講習Ⅱ 11:30~12:30 会場:第2会場(図書館棟1F) 座長:関 俊昭 (平和台病院) [基礎のテーピング] 岡田 亨 船橋整形外科病院 技術講習Ⅲ 13:00~14:00 会場:第2会場(図書館棟1F) 座長:松井 貴司 (松戸リハビリテーション病院) [装具と歩行分析] 中野 克己 技術講習Ⅳ 埼玉県総合リハビリテーションセンター 15:20~16:20 会場:第2会場(図書館棟1F) 座長:北郷 仁彦 (千葉県千葉リハビリテーションセンター) [高齢者のシーティング] 明石 圭司 株式会社ウィズ 松岡 研太郎 ラックヘルスケア株式会社 第 20 回千葉県理学療法士学会 11 口述発表プログラム 1 運動器Ⅰ 第1会場(図書館棟1F) 10:00~11:00 座長:内山田 悟朗(藤リハビリテーション学院) 01 成長期サッカー選手における鼠径部痛実態調査 船橋整形外科病院 理学診療部 榊井 晴也 リハビリテーション科 高橋 季奈 02 Osgood-Schlatter 病と身体重心の関係に着目した一症例 医療法人社団徳清会 三枝整形外科医院 03 運動負荷後の軟部組織に対してマッサージは有効か? ~軟部組織硬度及び筋力の経時的変化~ 榎本整形外科医院 高梨 晃 04 変形性足関節症における足部機能の着眼点 ~病期と QOL、機能評価の関連について~ 北千葉整形外科 脊椎・スポーツ医科学研究所 塙 大樹 05 腸脛靭帯の伸張性低下が膝関節屈曲に及ぼす影響 松戸整形外科病院リハビリテーションセンター 深山 智那美 内田 みなみ 06 膝前十字靭帯再建術後の膝関節伸展可動域制限に対する半月板修復術の影響 船橋整形外科病院 理学診療部 1 運動器Ⅱ 第1会場(図書館棟1F) 11:10~12:10 座長:國井 佳代子(藤リハビリテーション学院) 07 大腿骨頸部骨折により筋力低下を呈した症例 ~階段動作獲得に着目した介入~ 化学療法研究所附属病院リハビリテーション室 小泉 純 米澤 卓 08 大腿骨頚部骨折術後に歩行訓練が進むにつれ非特異的腰痛に悩まされた一症例 医療法人社団 心和会 新八千代病院 リハビリテーション科 09 既往に右大腿切断があり左大腿骨骨幹部骨折を呈したが住宅改修なしで自宅退院できた症例 医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院 林 沙紀 10 阻血性壊死により右大腿切断、両前腕屈筋・左下腿背屈筋部分切除を施行し自宅退院となった症例 ~義足歩行が及ぼした影響に着目して~ 千葉県千葉リハビリテーションセンター 12 第 20 回千葉県理学療法士学会 リハビリテーション療法部 高橋 慎治 11 交通事故による多部位外傷により,下肢に著明な運動障害を呈した症例 医療法人社団 心和会 新八千代病院 中田 大樹 12 下肢多発骨折を生じた重度変形性膝関節症一症例に対する装具の検討について 亀田リハビリテーション病院 1 運動器Ⅲ 鈴木 耕平 第3会場(学生ホール棟2F) 13:00~14:00 座長:結城 俊也(千葉中央メディカルセンター) 13 両変形性膝関節症が既往にあり、自宅復帰に向けた歩行動作獲得に難渋した左大腿骨転子部骨折一症例 社会福祉法人 太陽会 安房地域医療センター リハビリテーション室 山田 千尋 川端下 諒 14 右大腿骨頚部骨折により人工骨頭置換術を施行された症例 ~運動学習に着目した下衣更衣動作の改善~ 化学療法研究所附属病院リハビリテーション室 15 人工股関節全置換術術後 12 週における前屈動作と骨盤傾斜角との関連性について 船橋整形外科病院 理学診療部 黒木 聡 16 右人工股関節全置換術施行後、カップが転位し再置換した一症例 千葉大学医学部附属病院 リハビリテーション部 浅見 勇太 17 TKA 術後の階段昇降の可否に関わる術前評価因子の検討 松戸整形外科病院リハビリテーションセンター 柴 雅也 18 RA における TKA 後の歩行バランス能力の変化について ~OA との比較検討~ 千葉県千葉リハビリテーションセンター 1 運動器Ⅳ 斎藤 奈緒子 第3会場(学生ホール棟2F) 14:10~15:10 座長:外口 徳章(さかいリハ訪問看護ステーション) 19 当院での TKA 後の膝関節屈曲可動域改善のための取り組みについて 千葉市立青葉病院リハビリテーション科 藤原 朱唯 20 陳旧性 TFCC 損傷に対して TFCC 再建術を施行した症例に対しての一考察 ~術後残存した回外時痛の疼痛解釈~ 千葉こどもとおとなの整形外科 古田 亮介 21 胸郭からの運動連鎖により疼痛軽減が図れた肩関節周囲炎の一症例 三枝整形外科医院 リハビリテーション科 清野 友紀 第 20 回千葉県理学療法士学会 13 22 上腕二頭筋長頭腱切除術の施行が肩関節鏡視下腱板縫合術の術後経過に及ぼす影響 船橋整形外科病院理学診療部 押尾 雅彦 23 肩関節自動外転時の疼痛と自動外転可動域の低下を呈した症例への物理療法の効果について ―シングルケーススタディによる検討― 榎本整形外科医院 橋口 広太郎 24 烏口突起骨折を受傷し肩関節屈曲制限を呈した症例 亀田メディカルセンター リハビリテーション室 1 運動器Ⅴ 小倉 明日美 第3会場(学生ホール棟2F) 15:20~16:20 座長:小川 明宏(東邦大学医療センター佐倉病院) 25 肩関節周囲炎の保存療法における治療期間と初回来院時の評価項目との関連性について 船橋整形外科病院 理学診療部 海老根 豊 渡辺 純子 26 頸部・肩甲帯部痛に対するリハビリテーションの効果に罹患期間は影響するのか? ~VAS・NDI による検討~ 西川整形外科リハビリテーション部 27 腱板断裂術前患者における Shoulder36 の健康感と客観的肩関節評価との関連性 松戸整形外科病院 リハビリテーションセンター 中川 貴寛 リハビリテーションセンター 有阪 芳乃 28 罹病期間が腱板断裂術後 3 ヶ月 JOA に与える影響について 松戸整形外科病院 1 神経Ⅰ 第4会場(学生ホール棟2F) 15:20~16:20 座長:高杉 潤(千葉県立保健医療大学) 29 右小脳梗塞を呈した症例について -体幹に着目して― 医療法人社団誠和会 長谷川病院 リハビリテーション科 稲村 莉沙 30 片麻痺患者に対する起き上がり動作練習 ~逆方向連鎖化を用いて~ 医療法人社団千葉秀心会 東船橋病院 富田 駿 31 脳卒中片麻痺患者に対するウィントラックを用いた起立訓練の効果 我孫子東邦病院 晴山 亮 32 左視床出血にて歩行障害を呈した症例 ―ペダリング運動に着目して介入した効果― 医療法人鉄蕉会 亀田リハビリテーション病院 14 第 20 回千葉県理学療法士学会 リハビリテーション室 沼倉 遥 33 裸足で立位保持可能な脳卒中片麻痺患者に対してスペックス膝継手付長下肢装具を使用した 動的荷重練習を行い、下肢関節可動域が改善し屋外歩行が自立した症例 医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院 1 神経Ⅱ 諸永 浩平 第4会場(学生ホール棟2F) 16:30~17:30 座長:村山 尊司(千葉県千葉リハビリテーションセンター) 34 運動療法の介入が困難であった失語症患者に対する介入 東船橋病院 上村 朋美 35 左被殻出血後の歩行機能の再獲得に向けた、注意の向け方に対する工夫の一例 亀田リハビリテーション病院 傅 驍 36 脳出血によりボディーイメージ低下が疑われる患者の歩行能力向上へ向けた治療介入 九十九里病院 石田 祐大 37 体幹機能を中心に介入し、座位バランス・立ち上がり動作の改善がみられた左視床出血の症例 医療法人社団 誠和会 長谷川病院 診療部 リハビリテーション科 高橋愛梨子 38 右中脳背側出血による両上下肢の失調症状に対してトレッドミル歩行を中心に実施し自宅内歩行 自立した症例 船橋市立リハビリテーション病院 岡 知紀 39 神経サルコイドーシス後対麻痺を呈した患者への HAL 使用の即時効果 ―3 次元動作解析装置を用いて― 千葉県千葉リハビリテーションセンター成人理学療法室 1 基礎Ⅰ 片山 雄一 第3会場(学生ホール棟2F) 16:30~17:30 座長:真寿田 三葉(千葉県立保健医療大学) 40 誤嚥性肺炎を予防するためのアプローチ ~吸引回数に着目して~ 介護老人保健施設おゆみの 勝山 浩吏 41 長期人工呼吸器管理下のⅡ型呼吸不全患者に対し栄養状態改善がウィーニングに功を奏した症例 国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院リハビリテーション室 善田 督史 高木 秀明 大曽根 厚人 42 千葉県内における小児に対する呼吸リハビリテーションの現状 船橋二和病院 リハビリテーション科 43 生活環境の整備から屋外歩行が可能となった一例 ~福祉用具専門相談員との関わりを通して~ セコメディック病院 第 20 回千葉県理学療法士学会 15 44 当院における家屋評価の追跡調査 ~退院後の家屋状況と ADL~ 千葉県勤労者医療協会 船橋二和病院 リハビリテーション科 橋本 香奈江 45 当院リハビリテーション部における退院支援の取り組み実施状況についての調査報告 ~介護保険利用者の分析~ 帝京大学ちば総合医療センター 1 基礎Ⅱ リハビリテーション部 柴田 大輔 第4会場(学生ホール棟2F) 10:00~11:00 座長:古田 哲朗(船橋二和病院) 46 立位保持時間延長に向けた骨盤前後傾運動の効果について ~排泄動作獲得に向けて~ 医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院 尾身 香織 47 腰部疾患患者における腰部症状と心理的因子の関連性 -JOABPEQ、BS-POP を用いて- 船橋整形外科病院 理学診療部 網代 広宣 船橋整形外科病院 理学診療部 松田 航平 48 異なる脚組み座位姿勢が背筋群に与える影響 -筋活動の観点から- 49 『脊椎機能が移動能力に及ぼす影響(第一報)』 ~2step test と脊椎機能の関係性~ 北千葉整形外科 脊椎・スポーツ医科学研究所 鈴木 大 50 超音波診断装置を使用した定量的腰部可動性評価方法と Modified Schober test との関連 了德寺大学 1 基礎Ⅲ 兎澤 良輔 第4会場(学生ホール棟2F) 11:10~12:10 座長:御代川 英己(船橋市立リハビリテーション病院) 51 骨粗鬆症に対する運動療法と薬物療法の長期観察における比較 千葉きぼーるクリニック 52 新保 雄介 HUR おける筋力測定の信頼性 ~BIODEX と比較して~ おゆみの中央病院 山下 卓也 53 足圧中心と質量中心動揺の相互相関解析に基づく高齢者の静止立位制御特性 千葉県立保健医療大学 16 第 20 回千葉県理学療法士学会 健康科学部 竹内 弥彦 54 高齢者の自立度判定に 30-second chair-stand test は有効か -Berg Balance Scale との比較- 医療法人社団上総会 山之内病院 リハビリテーション課 朝生 尚吾 55 円背指数とロコモ 25 の関係について 千葉きぼーるクリニック 児玉 康行 56 リハビリ動作におけるエアマットレスの影響評価 株式会社ケープ 中新 英之 ( 協 賛 企 業 発 表 ) 1 基礎Ⅳ 第4会場(学生ホール棟2F) 13:00~14:00 座長:松尾 洋(東京女子医科大学八千代医療センター) 57 思春期特発性側弯症に対する運動療法の経験 海村医院本院 鵜殿 隼考 聖隷佐倉市民病院リハビリテーション室 奥村 太朗 58 思春期特発性(AIS)患者における運動能力の検討 59 思春期特発性側弯症(AIS)患者における後方矯正固定術が運動能力に与える影響 聖隷佐倉市民病院リハビリテーション室 加藤木 丈英 60 脊椎後方矯正固定術前後における思春期特発性側弯症患者の重心動揺変化の検討 聖隷佐倉市民病院リハビリテーション室 1 患者支援 原園 学 第3会場(学生ホール棟2F) 11:10~12:10 座長:小林 好信(千葉医療福祉専門学校) 61 入院中に腰椎圧迫骨折を認め、廃用性筋力低下の予防に着目しベッド上介入を行った一症例 社会福祉法人太陽会 安房地域医療センター 佐藤 加奈 62 段階的難易度調節が移乗動作学習に及ぼす影響 ~股・膝関節に屈曲拘縮を呈した症例への介入~ 医療法人社団千葉秀心会東船橋病院 隆杉 亮太 63 重度認知症を呈した症例に対し歩行距離のグラフをフィードバックに用いた効果についての検討 医療法人社団千葉秀心会東船橋病院 中島 秀太 川口 沙織 樋口 拓哉 64 重度認知症患者に対する応用行動分析学を用いたトイレ誘導の効果 医療法人社団千葉秀心会東船橋病院 65 応用行動分析学的介入により離床拒否が減少し活動範囲が拡大した症例 初富保健病院 リハビリテーション科 第 20 回千葉県理学療法士学会 17 1 地域生活期 第3会場(学生ホール棟2F) 10:00~11:00 座長:中村 亮太(五香病院) 66 訪問リハビリテーションに用いる評価方法の検討 ~当法人居宅サービス利用者像を捉えることができるのか~ おゆみの中央病院 在宅医療センター 訪問リハビリテーション部 池田 奈央 67 当院短時間通所リハの取り組みについて 第 1 報 ~基本的ケアの重要性について再考する~ 袖ケ浦さつき台病院 通所リハビリテーション 福元 浩二 中山 泰貴 68 当院地域における「生活空間の広がり」と「できる・している ADL」 ~関わりの意義~ 医療法人社団 上総会 山之内病院 リハビリテーション課 69 市原市五井地区における多機関協働による体操教室への取り組み 医療法人社団白金会 白金整形外科病院 佐藤 正司 白金整形外科病院 伊藤 俊介 君津中央病院 児玉 美香 70 理学療法士が取り組む地域の医療・介護・福祉・行政との顔の見える関係を目指して 市原地域リハビリテーション広域支援センター 医療法人社団白金会 71 君津圏域地域リハビリテーション広域支援センターの取り組み 1 教育・医療安全 第 4 会場(学生ホール棟2F) 14:10~15:10 座長:松田 徹(千葉医療福祉専門学校) 72 臨床実習に向けた新たな学習システムの取り組み 千葉医療福祉専門学校理学療法学科 樋口 典男 小串 健志 73 多職種診療チームにおける他学科臨床実習受け入れの試み 医療法人社団 心和会 新八千代病院 74 若手理学療法士に必要な退院支援の情報収集について セコメディック病院 太田 愛 75 療養型病院における感染状況について 総泉病院リハビリテーション部 藤嶋 洋平 竹之内 純 76 当院におけるインシデント・アクシデントレポートについて ~転倒・転落に着目して~ おゆみの中央病院 18 第 20 回千葉県理学療法士学会 説明力(学会テーマ) 第1会場(図書館棟1F) 16:00~17:00 座長:三好 主晃(山之内病院) 77 転倒後、動作レベル低下、排尿障害が残存した症例に対する他部門と連携した退院支援 医療法人社団誠和会長谷川病院診療部 リハビリテーション科 橋田 理英 78 当院での人工股関節全置換術患者用パンフレット作成の取り組みについて 千葉市立青葉病院リハビリテーション科 中村 真理子 79 指導者に求められる説明のポイント ~デモを実践する立場になって学んだこと~ 船橋二和病院 村木 正昭 特別養護老人ホーム 松葉園 市川 保子 斎藤 義雄 80 デイサービスにおいて移動手段を介護職と共同認識するための試み 81 地域包括ケアシステムを踏まえた多職種間情報伝達の傾向と対策 2014 松戸ニッセイ聖隷クリニック 第 20 回千葉県理学療法士学会 19 MEMO 20 第 20 回千葉県理学療法士学会 リレー講演・技術講習 抄録 第 20 回千葉県理学療法士学会 21 リレー講演 「理学療法士の説明力 ~あなたはきちんと伝えていますか?~」 千葉県千葉リハビリテーションセンター 田中 康之 あなたは、初対面の患者・家族、そして理学療法士と一緒に仕事をしたことがない他職種に「理学療法士とは何か」 「私たちは何を成果としてもたらすことができるのか」を伝えられますか? 認知症高齢者に対する関わりが様々な機会で話題になりますが、認知症の方に伝える・説明する術を持っていますか? 多職種協働の必要性はどこでも謳われています。では他の専門職、そして勤務先の経営者に、貴方の考えを伝える術を 持っていますか? 今回は流行のプレゼンテーション技術に関する講習会ではありません。私たちの日々の業務の中で必ずや必要となる 「伝える術」について、悪戦苦闘されてきた講師の皆様の体験や思い、そして実践等をお話いただき、参加者の皆さんに 日々の業務を振り返り、明日から活かしてもらう企画です。 あなたは「伝えたつもり」「説明したつもり」で終わっていませんか? <演者> 竹内 恵 空港ターミナルサービス株式会社 エアライン業務部 接遇セクション 島村 敦子 千葉大学大学院 看護学研究科 訪問看護学教育研究分野 廣瀬 英紀 株式会社スペースケア 東北事業部 曽根 祐介 医療法人社団創進会 サービス付き高齢者向け住宅 みっつの輪 22 第 20 回千葉県理学療法士学会 技術講習Ⅰ 脳画像の見方 千葉県千葉リハビリテーションセンター 村山 尊司 脳卒中患者を担当した際に初期評価で得る情報として脳画像は必須項目である。現在では多くの病院で電子カルテ化が 進み、以前に比べ脳画像へアクセスしやすい環境が整っている。しかし、実際は脳画像に対する苦手意識が強く、見るこ とを敬遠してしまう印象も受ける。勉強を始めようと思っても参考書に詳細に記載された解剖名称を覚えることから始め てしまい挫折してしまうこともよく耳にする。 脳画像を見る意味は医師とセラピストでその目的が異なる。医師は、救急搬送された患者の病名診断、脳卒中に対する 治療方針の決定の手段として用いる。これに対してセラピストは、リハビリテーションの観点から機能障害の推定と予後 予測をすることが最大の目的となる。損傷部位とそこに存在する神経機能とをマッチングさせることで機能障害の推定と 予後予測を行うのである。脳卒中患者に対するリハビリテーションについてセラピストが科学的に説明するための一つの 手段として利用されるべき情報である。 本講演は、明日から苦手意識を持たずに担当症例の脳画像をみてみようと思えるような内容で進めたい。 以下の要点に絞って、脳画像の何を見て、何の情報を取ればいいかをお伝えしたい。 1)脳画像の基本的な知識を知る(CT と MRI の違い) 2)運動麻痺など臨床上よくみかける機能障害と脳画像を結び付ける 3)よく起こる脳卒中(脳出血・脳梗塞)の画像を理解する 4)事例から機能障害と損傷領域を結び付ける 5)脳画像から得られる情報の限界を知る 略歴 学歴 H9 専門学校社会医学技術学院卒業 H23 千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了 職歴 H9 佐々総合病院 H11 千葉県千葉リハビリテーションセンター (H23~成人理学療法科科長) 役員 脳機能とリハビリテーション研究会理事 資格 理学療法士 博士(医学) 回復期セラピストマネージャー 第 20 回千葉県理学療法士学会 23 技術講習Ⅱ TAPING を理学療法士として使うということ 船橋整形外科病院 新規事業開発部 部長 岡田 亨 対象者のリハビリテーションをすすめるために実施される理学療法において、理学療法士は患者への有益な医科学的ア プローチを常に模索しながら幅広く対応してゆかなければならない。しかし近年の臨床事情では単位数の縛りや書類作成、 さらに CS 向上?なる施設利用の説明など、本来の患者満足度を満たすための、充分な患者対応時間は限られている。限 られた時間でより効果的に理学療法を展開しようにも手が足りない状況と言ってよい。加えて最近、自分の前での治療結 果が良いということにとらわれている療法士も少なくないように感じる。リハビリテーションとはまさに包括的に患者・ 対象者の活動空間における障害回復や ADL 機能の改善、QOL、アクティビティーパフォーマンスの向上に貢献することで ある。つまり対象者が治療の結果を実感するのは、我々の目の前ではないという事実に気付くべきである。しかしやはり 心配もある。対象者自身も心配であろうと考えるのは理学療法士の常であろう。そうした場合、スポーツ現場での障害・ 再発予防としてだけの意味合いの枠を超え、理学療法士としてテーピングを活用することは、大変有効と言える。しかし、 テーピングの実施には「技術が必要で、巻き方・貼り方が分かっていないと使えない。 」と思い込んでいる人も少なくは なのではないか。巻き方・貼り方は「どこで、誰に教えてもらえばいいのか?」そう思っている人もいるであろう。しか し、その方法はすでに理学療法士の頭の中に、手の中にあることに気が付くべきである。理学療法士の評価・分析・発想 力をもって活用すれば、対象者のニーズに、治療にと、必要な一手として有効なテーピングが自然と生まれてくるのであ る。手の不足は発想で補うべきものである。 丁寧なリスク管理を行えば、テーピングに正解を問う必要はない。不正解はリスクを冒すことであり、テーピングによ り対象者に不利益を被らせることである。障害予防、機能向上・改善、動作補助を目的に理学療法士の目と頭と手で行え ば対象者に不利益を与えることはないと言っていい。「では、どうすればいいの?」あなたはそう感じているかもしれな い。答えは簡単だ、ただテーピングを手に取ればいいのである。さぁやってみましょう。 今回の機会が皆様の理学療法アプローチの幅を広げる一手につながることを心より願う。 **当日はテーピングに実際に触れて頂きます。時間が限られていますのでまずテーピングを使ってみるということに限 らせていただきます。主に膝周囲、足部周囲、手首などで実際に体験をしていただきますので、テーピング実施部を露出 できるご準備をお願いします。テーピングは皮膚に直接実施する方法で紹介しますのでテープの素材、のりなどにアレル ギーがある方は見学のみとしてください。テーピングはこちらで準備致します。 限りがありますので受講は、先着 65 名といたします。ご理解・ご了承ください** 略歴 学歴 平成 4 日本体育大学社会体育学科卒業 平成 7 藤リハビリテーション学院卒業 職歴 平成 24 船橋整形外科病院 理学診療部統括部長 平成 25 船橋整形外科病院 新規事業開発部長 資格 専門理学療法士(運動器) 日本体育協会公認アスレティックトレーナー 24 第 20 回千葉県理学療法士学会 役員等 千葉県理学療法士会スポーツ・健康増進支援部 副部長 日本体操協会マルチサポート AT 育成部 部会長 千葉県アスレティックトレーナー協議会副会長 主な著書・文献 日本体育協会公認アスレティックトレーナー教本 体操競技 技術講習Ⅲ 装具と歩行分析 埼玉県総合リハビリテーションセンター 中野 克己 1.装具の歴史と現状 短下肢装具の歴史は 1950 年代初頭より始まり両側金属支柱付き靴型短下肢装具(金属 AFO)は 1956 年の A.Thorndike らの報告が、そしてプラスチック下肢装具(プラスチック AFO)は、1967 年 B.C.Simons らによる繊維ガラス入りポリエステル樹脂の装具が最 初とされている。理学療法診療ガイドライン第1版(2011)にて「理学療法介入」の推奨グレード分類 A「行うように勧められ る強い科学的根拠がある」では、1.早期理学療法、2. (1)早期歩行練習、(2)回復期の姿勢・歩行練習に並び、(3)装具療 法が挙げられている。しかし、理学療法士養成校における義肢装具学の授業時間は極めて少なく、卒後教育でも(公社) 日本理学療法士協会が主催する研修会に下肢装具を対象としたものは皆無である。そのため「行うように勧められる強い 科学的根拠がある」にもかかわらず我々理学療法士は、卒前卒後どちらにおいても装具に関する十分な教育を受ける機会 がないのが現状である。 2.歩行分析の重要性 装具の作製において、装具の種類や部品の知識のみを膨大に学習しても決して適切な装具を選択できるようにはならな い。これは味覚の麻痺した料理人が料理方法を多く知っていても一流の料理を作ることができないように、装具の違いが 歩行にどのような影響を及ぼしているかを逐次評価できなければ選択した装具が適切かどうか、また部品をどのように工 夫すべきか判断できないからである。そのため装具療法は歩行分析も同時に学習することが必要不可欠である。 3.装具療法の問題と対策 下肢装具は、①運動の代償、②変形の矯正・予防、③荷重の免荷・分散、④収納など多くの役割を担い、歩行能力の向 上に貢献している。しかし現在の装具療法は、歩行中の麻痺側下肢の膝折れや反張膝、踵接地時の緩衝作用、つま先の引 っかかりなど矢状面上の跛行のみに着目し、踵接地後の下腿外旋、立脚期の膝側方動揺や体幹の側屈など、装具が起因す る前額面上や水平面上の跛行に対する問題意識が低く対応がなされていない。今回、これら見過ごされている跛行への対 処方法として、三次元的アラメントの調整、装具上面へのパッド貼付による足底圧操作、非麻痺側下肢からのアプローチ、継手付き プラスチック AFO における継手の工夫、金属 AFO における T ストラップの効果的な装着方法などを紹介する。詳細は、理学療法臨床・研究・教育- 短下肢装具の作製時及び仮合わせ時におけるチェック表作成の試み(2014)、下肢装具の三次元的アライメント とバイオメカニズム(2012)をご参照頂きたい(インターネットにて無料閲覧可能)。 4.今後の課題 下肢装具の普及を阻害している要因として、外見の悪さ、高価、装具に装着可能な靴の少なさ、装具は身体機能を低下 させるといった患者や理学療法士の誤解、装具教育を受ける機会の少なさと知識・技術の不足、保険や身障手帳の手続き の煩雑さ、病院・施設における常駐義肢装具士の不足、病院・施設における試用装具の不足、医師や義肢装具士まかせの 装具処方、装具作製後のアフターケア不足など、今後改善しなければならない課題は山積みである。 略歴 【学歴】 千葉県医療技術大学校 理学療法学科 卒業 筑波大学大学院教育研究科リハビリテーションコース 修了 【資格】 神経専門理学療法士 【職歴】 埼玉県総合リハビリテーションセンター 主任 文京学院大学 埼玉医科大学 非常勤講師 【役員】 (公社)埼玉県理学療法士会にて、理事 研修部長 埼玉理学療法編集委員 学会準備委員長 などを歴任し、現在南部ブロック運営委員 生活環境支援専門理学療法士 第 20 回千葉県理学療法士学会 25 技術講習Ⅳ 高齢者のための車椅子フィッティング ラックヘルスケア株式会社 西日本営業チーム チームリーダー 松岡 研太郎 2000年に介護保険法が施行され、福祉用具が高齢者ユーザーへ供給される仕組みがレンタルになった事で、日本の 福祉用具は大きく進化を遂げました。 当時『シーティング』や『ポジショニング』という言葉は使われる事が少なく、補装具給付を受ける事が出来るユーザ ー以外の多くの高齢者に対しては、画一的でサイズも大きく身体に合わせて調整する事など出来ない車椅子が標準として 供給されていました。 その後、海外製の高機能でデザイン性も高い福祉用具が日本市場に登場すると、徐々に車椅子に対する意識改革も行わ れ、近年では国内メーカー製品も加わり、調整型車椅子やモジュール型車椅子が普及し、それに伴い『車椅子シーティン グ』への認識も広まり、知識や技術も向上して参りました。 しかし、全ての車椅子ユーザーを対象とし、なおかつユーザーのLife(生命・生活・人生)に適合する車椅子シー ティングを考えると、非常に広範囲で深い知識と技術が必要となり、ユーザーに関わる医療専門職や福祉用具供給事業者 が想いを持って実践してもなかなか上手くいかず、良い結果が生まれない場合も少なくありません。 そこで一般社団法人 日本車椅子シーティング協会と公益財団法人 テクノエイド協会が発起人となり関係団体と協同 で、対象をあえて高齢者に絞り込み、Life(生命・生活・人生)へのフィッティングを目的とした『高齢者のための 車椅子フィッティングマニュアル』を作成致しました。 当日は実際に車椅子を使用し、高齢者の身体特性や特徴的な疾患に対応する車椅子選定の考え方とフィッティングの方 法についてご紹介したいと思います。 略歴 1970 年 1 月生まれ。 2002 年 4 月ラックヘルスケア株式会社に入社、同年より福祉用具販売の営業及び海外講師セミナー企画運営、医療専門職等を対象とした国内研 修講師として活動。 スウェーデン etac 社認定 Wheelchair specialist、ドイツ LUCK 社 Ms.Sabine M.Becker Dr PH 認定 Professional in positioning、福 祉住環境コーディネーター2 級などを取得。 現在は看護師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士などを対象とし、病院・施設等の人財育成研修及び、専門学校、自治体等の研修会や講習 会の講師を務める。 ラックヘルスケア株式会社 概要 公益社団法人 関西シルバーサービ協会 理事 福祉先進国である北欧を中心としたヨーロッパの福祉機器の輸入・販売及び、国内外の第一線で活躍している医療専門職を講師として招き、医 療・介護の専門職を対象とした公開型セミナーや、医療法人、社会福祉法人の職員を対象とした人材育成研修プログラム等の教育セミナー事業 (LAC スクール)を運営。 26 第 20 回千葉県理学療法士学会 一般演題 抄録 第 20 回千葉県理学療法士学会 27 01 査 成長期サッカー選手における鼠径部痛実態調 ○榊井 晴也1)細川 智也 2)望月良輔1) 1) 船橋整形外科病院 理学診療部 2) 船橋整形外科病院 スポーツリハビリテーション部 02 Osgood-Schlatter 病と身体重心の関係に着 目した一症例 ○高橋李奈 1)、長谷川諒 1)、 新井恒雄 1) 、三枝 超(MD)2) 1) 医療法人社団徳清会 リハビリテーション科 2) 医療法人社団徳清会 三枝整形外科医院 三枝整形外科医院 Keyword:鼠径部痛、サッカー、筋柔軟性 Keyword:身体重心、姿勢筋緊張、胸郭運動システム 【目的】成長期サッカー選手において、鼠径部周囲に痛みを 訴えるケースを多く経験する。先行研究により股関節内転筋 力、股関節内転・外転可動域の低下および股関節内外旋可動 域の合計値の低下により股関節周囲の障害・外傷のリスクが 高くなると報告されているが、成長期サッカー選手における 理学所見と鼠径部痛症候群のリスクについて述べた報告は少 ない。そこで、本研究は成長期サッカー選手における鼠径部 痛の既往と身体機能の関係性を調査することとした。 【方法】対象は、男子中学生サッカー選手 36 名(年齢 13.4±0.7 歳、競技歴 7.5±2.3 年)とした。蹴り脚における鼠径部痛既往 の有無から、既往有群(以下 GP 群)16 名と既往無し群(以下 N 群)17 名に分類した。測定項目は関節可動域測定として、① 股関節総外転、②股関節屈曲 0°内旋、柔軟性測定として、 ③FFD(cm)、④HBD(cm)、⑤Thomas test(cm):床~膝窩部 までの距離、⑥Patrick test(cm):床~大腿骨外側上顆までの 距離、⑦しゃがみこみの可否とした。統計学的処理はロジス ティック回帰分析を用いて目的変数を鼠径部痛の GP 群、N 群とし、説明変数を上記の測定項目とした。統計ソフトは R2.8.1 を使用し、有意水準は 5%とした。 【説明と同意】本研究は船橋整形外科病院倫理委員会の承認 を受け、対象者へ十分説明し、同意を得て実施した。個人情 報保護のため得られたデータは匿名化し、個人情報が特定で きないように配慮した。 【結果】鼠径部痛における既往に関与する因子として、軸足 股関節屈曲 0°内旋、蹴り足 HBD、しゃがみこみが抽出され た。各オッズ比(95%信用区間)は、軸足股関節屈曲 0°内旋 1.233(1.053-1.445)、蹴り足 HBD1.233(1.008-1.509) 、しゃ がみこみ 1.869(1.195-292.999)であった(p<0.05)。 【考察】結果より蹴り脚鼠径部痛の既往に関与する因子とし て軸足股関節内旋可動域が大きく、蹴り足 HBD が大きく、 しゃがみこみが出来ないことが挙げられた。サッカー選手に おける鼠径部痛症候群の病態として蹴り脚が注目されるが、 今回の調査により軸足の関与が示唆された。しかし、これら 3 つの因子が鼠径部痛発症前からのものなのかは定かではな く、今後前向き調査が必要と思われる。 【はじめに】Osgood-Schlatter 病(以下 OSD)は成長期のス ポーツ障害として、大腿四頭筋や下腿三頭筋の伸張性低下が 問題視されるが、治療としてこれらのストレッチングでは根 治には至り難いことをよく経験する。今回、身体重心を前方 化することで良好な成績を得たので報告する。 【症例紹介】10 歳代男性。1 ヶ月前からバスケットボールを 行っている際に、左膝痛が出現していた。今回、運動量が増 え、痛みが増加してきたため当院を受診し、左 OSD と診断 され運動療法開始となった。 【理学療法評価】立位姿勢;骨盤に対して胸郭左偏位。上半 身重心後方、下半身重心前方。筋緊張;大腿四頭筋、下腿三 頭筋、脊柱起立筋高緊張。 整形外科的テスト;FNST(cm)0/10。関節可動域テスト;他 動運動(以下 passive)左膝関節屈曲 110°、その他問題なし。痛 み;両脚ジャンプ NRS8。 【治療内容】運動療法として、本症例の後方重心となる原因 が胸郭左偏位の影響が強いことから、柿崎の提唱する胸郭運 動システムの再建法による、姿勢に対するアプローチを行っ た。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき対象者に同意を得た 上で行った。 【結果】身体重心の前方化により、FNST(cm)0/0、passive 左膝関節屈曲 130°、両脚ジャンプ NRS0 まで改善し、バスケ ットボール時の痛みも消失した。 【考察】本症例の身体重心は左後方に位置していたため左膝 関節伸展モーメントが増加し、大腿四頭筋の高緊張を呈して いた。そこで、運動療法として重心を偏位させている姿勢に 対するアプローチを行った。後方重心の原因は多種多様であ るが、本症例の場合、胸郭左偏位により脊柱アライメントが 変化し、抗重力伸展機構が活動しにくい状態となり、全体的 に屈曲傾向をとるため身体重心は後方に位置していた。これ により、股関節伸展モーメントは減少し、抗重力伸展筋であ る大殿筋の活動が低下するため、膝関節伸展モーメントを増 大させて適応していた。こうした状態にさらに膝関節伸展モ ーメントを強いられる運動が加わることで局所的な痛みが生 じていた。アプローチ後は身体重心の前方化が得られた状態 にて活動することで、初期にみられていた筋群の高緊張は減 少していた。また、他動での膝屈曲角度が向上したこともこ れを裏付けていると考える。一般的に OSD の治療としてス トレッチングが選択されるが、本症例のように根本的な原因 が姿勢にある場合には、姿勢に対するアプローチにより身体 重心を変化させ、筋緊張の適正化を図ることが重要であるこ とを再認識した。 28 第 20 回千葉県理学療法士学 03 運動負荷後の軟部組織に対してマッサージは 有効か? ~軟部組織硬度及び筋力の経時的変化~ 04 変形性足関節症における足部機能の着眼点 ~病期と QOL、機能評価の関連について~ ○髙梨 晃1)、川田 教平2)、兎澤 良輔 3)、加藤 宗規 3) ○塙 1) 榎本整形外科医院 2) 常葉大学 3) 了德寺大学 1) 北千葉整形外科 脊椎・スポーツ医科学研究所 2) 北千葉整形外科 脊椎・スポーツ医科学研究所 (MD) Keyword:マッサージ、軟部組織硬度、筋力 Keyword:変形性足関節症・病期・足部足関節評価問票 【目的】マッサージは、循環の改善に伴う筋疲労の軽減に効 果があるとされている。本研究は、運動負荷後の軟部組織に 対し、マッサージが有効か否かについて、軟部組織硬度(STS) 及び筋力を指標とし検討した。 【方法】対象は、健常若年男性 11 名(平均年齢 20(19-20)歳) とした。方法は、同一被験者に対しマッサージ施行期及び非 施行期の大腿四頭筋に対し、等速性筋力測定装置(BIODEX) を使用し、角速度 60°にて最大膝関節伸展トルクの 50%に低 下するまで運動負荷を実施し、運動負荷前、運動負荷終了直 後、20 分、40 分、60 分後の大腿中央部の STS、膝関節伸展 筋力を測定した。STS は、軟部組織硬度計(特殊計測社製) を用い 10N荷重時の変位値を測定した。 筋力は徒手筋力計(フ ロンティアメディックス社製)を用いて、脛骨内果、腓骨外果 上部を結んだ線上に筋力計を固定した。測定は、各々3 回測 定し平均値を採用した。マッサージ強度は、軽い痛みを感じ る程度とし、母指に装着した圧力センサ(フロンティアメデッ ィクス社製)にて確認し、画面上で圧力を定量化して 1Hz10 分間大腿中央部に対して実施した。なお、マッサージ期及び 非施行期の測定は、1 週間以上の間をあけ実施した。統計学 的検討は、STS、筋力のマッサージ施行の有無の経時的変化 について、各々二元配置分散分析を行い、ポストホックテス トとして多重比較法(Shaffer)を用いた。統計処理には、 R2.8.1 を用い、有意水準は 5%とした。 【説明と同意】本研究は、了德寺大学研究倫理審査委員会の 承認を受け実施した。 【結果】STS、筋力ともに、経時的変化に主効果を認め、交 互作用は認めなかった。STS の経時的変化は、マッサージ非 施行期は、負荷後 60 分においても有意に変位値が低値を示し た。一方で、マッサージ期の負荷直後は、変位値が有意に低 値を示すものの負荷後 20 分には、負荷前と比較し有意な変化 を認めなかった。また、筋力のマッサージ非施行期は、負荷 後 40 分で、負荷前と比較して有意な変化を認めなかったが、 マッサージ期では、負荷後 40 分においても有意に筋力の低下 を認め、60 分後で、施行前と比較し有意な変化を認めなかっ た。 【考察】マッサージは、局所循環の改善を促進することで、 軟部組織硬度をより早期に改善させる一方で、筋緊張の緩和 により、筋出力の改善には時間を要すことが示唆された。 【目的】変形性足関節症患者(以下足関節 OA)は退行性疾患と して近年増加傾向にあり、その多くに構造的特徴があるとい う報告がされている。しかし、病期・QOL と足部機能の関係 を検討している報告は少ない。そこで本研究では機能評価を 用いて、病期・QOL 評価との相互関係を検討し、理学療法介 入の一助とする事を目的とする。 【方法】対象者は専門医による診断を受けた足関節 OA 27 名 (男性 10 名、女性 17 名、年齢 67.8±12.2 歳)とし、病期分類 は田中らの分類を用いた。QOL 評価は日本足の外科学会が作 成した足部足関節評価問診票(以下 SAFE-Q)を用いた。機能 評価は足関節底背屈・第 1 中足趾節関節(以下 MP 関節)背屈・ 後足部内外反の可動域測定、アーチ高率、下腿三頭筋の筋力 検査、片脚立位時間、立ち上がりテストを測定した。各機能 評価項目を、健側・患側に分けて T 検定を行った。また、病 期と SAFE-Q 得点を目的変数にし、各機能評価を説明変数と し、重回帰分析を行った(有意水準は 1%未満)。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき本研究を行った。 【結果】病期分類の内訳は、Ⅰ型 4 名・Ⅱ型 11 名・Ⅲ-a 型 7 名・Ⅲ-b 型 2 名・Ⅳ型 3 名となった。全例、内反型であり片側 性に愁訴を有する者であった。T 検定の結果は、足関節底背 屈、MP 関節背屈、後足部外反、アーチ高率、片脚立位時間、 立ち上がりテストに有意差を認めた(p<0.01)。重回帰分析の 結果は、病期を目的変数にすると、患側の後足部外反・片脚立 位時間、健側の片脚立位時間が採用された(R²=0.7771)。 SAFE-Q を目的変数にすると、患側の後足部外反・片脚立位時 間、健側の後足部内外反が採用された(R²=0.7260)。 【考察】結果より、一次性の足関節 OA の足部機能は健側と 患側で明らかな機能の違いが認められ、患側は病期の進行に 伴い、後足部外反制限・片脚立位時間の短縮が認められた。ま た患側機能の低下に加え、健側の後足部内外反が正常範囲を 逸脱する程、SAFE-Q 得点が低下する事が示唆された。後足 部は、歩行時の衝撃吸収及び中足部への推進力伝達を担って いる。そのため病期の進行に伴い患側の機能が低下すると、 健側による相対的な補償機能を用いる事で推進力を得ている のではないかと考えた。以上より、足関節 OA の足部機能に おいて患側の後足部外反制限及び、片脚立位時間短縮に対す る理学療法介入が必要だと考えた。また健側の相対的な補償 機能にも着眼し後足部の正常可動域と片脚支持機能を保つ事 で、歩行能力及び QOL を維持向上が出来ると考えた。 大樹1)、篠田 愛1)、橋川 拓史1)、篠原 裕治2) 第 20 回千葉県理学療法士学会 29 05 腸脛靭帯の伸張性低下が膝関節屈曲に及ぼす 影響 06 膝前十字靭帯再建術後の膝関節伸展可動域制 限に対する半月板修復術の影響 ○深山智那美1)、栗林亮1) ○内田みなみ1)、細川智也2)、平田大地3)、平尾利行1) 1) 松戸整形外科病院リハビリテーションセンター 1) 船橋整形外科病院 理学診療部 2) 船橋整形外科病院 スポーツリハビリテーション部 3) 船橋整形外科 西船クリニック 理学診療部 Keyword:腸脛靭帯、大腿筋膜張筋、膝関節屈曲 Keyword:ACL 再建術、半月板修復術、HHD 【目的】林らは、腸脛靭帯(以下、ITT)の伸張性低下は二次 的に外側広筋の緊張に影響を与え、膝関節拘縮の原因となる としている。本研究の目的は、股関節内外転に伴う ITT の伸 張性低下が、膝関節屈曲に及ぼす影響を定量的に検討するこ とである。 【方法】対象は下肢に整形外科的既往を持たない健常成人 12 名(男性 7 名、女性 5 名、年齢 24.5±1.8 歳)24 肢とした。測定 項目は、腹臥位での膝関節屈曲角度と Ober test 変法での股 関節内転角度とした。膝関節屈曲角度は腹臥位における①股 関節内外転中間位(以下、中間位)、②股関節外転 20°(以下、 外転位)、③股関節内転 20°(以下、内転位)の 3 肢位で、ラン ダムに測定した。Ober test 変法は側臥位で行い、被験者に非 測定肢を膝・股関節屈曲 90°に保持させ、検者が測定肢を股 関節最大伸展および内転させ、もう 1 名の検者が股関節内転 角度を測定した。統計処理には SPSS Ver.17.0 for windows を用いて、中間位、外転位、内転位での膝関節屈曲角度に対 して一元配置分散分析および多重比較検定を行った。また、 膝関節屈曲角度と股関節内転角度の関係は Pearson の相関を 用いて分析した。 【説明と同意】被験者にはヘルシンキ宣言に基づいて研究の 主旨を十分に説明し、同意を得たうえで研究を行った。 【結果】膝関節屈曲角度の平均は内転位 137.8±8.4°、中間位 143.1±6.0°、外転位 149.5±5.4°であり、3 肢位間に有意差が 認められた(p<0.05)。また、内転位での膝関節屈曲角度と股 関節内転角度に有意な正の相関が認められた(r=0.4、p<0.05) 【考察】本研究の結果から、股関節内外転の肢位により膝関 節屈曲角度が変化することと、ITT の伸張性低下が膝関節屈 曲角度に影響を及ぼすことが定量的に示された。膝関節屈曲 角度は、股関節内転位であるほど減少したことから、股関節 内転時に緊張する組織が膝関節屈曲可動域制限に影響を及ぼ すことが明らかとなった。さらに、ITT の伸張性を評価でき る Ober test 変法と内転位での膝関節屈曲角度に相関が得ら れたことから、ITT の伸張性低下が膝関節屈曲角度に影響を 及ぼすと考えた。三浦らは ITT 遠位の浅層線維束の一部は膝 蓋骨の表層と外側に付着すると報告している。また、ITT の 後面からは外側広筋斜走線維が起始し、外側膝蓋支帯と膝蓋 骨外側に付着するとされている。よって、ITT の伸張性が低 下すると膝蓋骨を介して膝関節屈曲に影響を与えたと推察し た。今後、臨床での効果も踏まえて検討していきたい。 【目的】膝前十字靭帯(ACL)再建術において、膝完全伸展 可動域の獲得は、後療法を進める上で重要であり、当院では 膝関節伸展可動域制限を Heel-Height Difference(HHD)を 用いて評価している。我々は先行研究にて、術後の膝関節伸 展可動域制限は膝伸展筋力、パフォーマンスに負の影響を及 ぼすと報告した。しかし、半月板修復術の有無による膝関節 伸展可動域制限の報告はない。そこで、本研究では ACL 再建 術時の半月板修復術の有無が HHD に及ぼす影響を調査した。 【対象】2012 年 1 月から同年 12 月の間に当院にて ACL 再 建術を施行し、HHD の経過を術後 12 ヵ月まで追えた 72 例 とした。それを、半月板修復術なし群 20 例(年齢 17~48 歳、 身長 168.1±7.0cm、体重 61.4±8.2kg)と半月板修復術(内側 20 例、外側 17 例、内外側 15 例)あり群 52 例(年齢 14~62 歳、 身長 165.3±9.4cm、体重 62.4±15.6kg)の 2 群に分けた。除外 基準は、両側 ACL 再建術例、片側 ACL 再々建術例、複合靭 帯損傷例、反対側の膝関節既往例とした。なお 2 群間で、年 齢、身長、体重に有意な差は認めなかった。 【方法】半月板修復術なし群と半月板修復術あり群の HHD を診療録より抽出した。HHD は、腹臥位にて検査台から膝 蓋骨下縁より遠位を出し肋骨隆起測定器を用いて mm 単位で 計測した。術前、術後 3、6、9、12 ヵ月における HHD の推 移を 2 元配置分散分析を用いて検討した。また、時期別の比 較を Mann-Whitney の U 検定を用いて検討した。なお、統 計ソフトは R2.8.1 を使用し、有意水準は 5%とした。 【結果】半月板修復術あり群と半月板修復術なし群の HHD の推移を比較検討した結果、主効果は群による影響はあると 認めたが、時期による影響は認めなかった。また、交互作用 は認めなかった。時期別では術後 3 ヵ月時の HHD のみ、半 月板修復術なし群(平均 6.3mm)が半月板修復術あり群(平均 0.8mm)より有意に大きい値を示した。 【考察】ACL 再建術後の HHD は、半月板修復術の有無によ り異なる経過を辿ることが分かった。さらに、半月板修復術 のない ACL 再建術単独例では、術後 3 ヶ月の時点で膝関節 伸展制限が残存しやすいことが示唆された。 30 第 20 回千葉県理学療法士学会 07 大腿骨頸部骨折により筋力低下を呈した症例 ~階段動作獲得に着目した介入~ 08 大腿骨頚部骨折術後に歩行訓練が進むにつれ 非特異的腰痛に悩まされた一症例 ○小泉純1)、別所雅彦2)、善田督史1)、武原格3) 1) 化学療法研究所附属病院リハビリテーション室 2) 化学療法研究所附属病院整形外科 3) 化学療法研究所附属病院リハビリテーション科 ○米澤 卓、小串 Keyword:大腿骨頸部骨折・階段昇降・膝関節伸展筋力 Keyword:大腿骨頚部骨折、腰痛、運動連鎖 【はじめに】今回、左大腿骨頸部骨折により人工骨頭置換術 を施行した症例に対し、階段動作に着目し介入を行い改善み られたため報告する。 【症例紹介】本症例は 2014 年 7 月に自宅庭内にて転倒し、 翌日に当院入院となった 89 歳、BMI25.1 の男性である。左 大腿骨頸部骨折 Garden 分類 StageⅢと診断され、第 3 病日 に人工骨頭置換術施行となった。病前は妻と 2 人暮らしであ り、寝室は 2 階にて布団を利用していた。 【初期評価(第 24 病日) 】疼痛:右大腿外側部 NRS3/10。筋 力:左膝関節伸展 9.8 kgf、左股関節周囲筋群 MMT2~3。感 覚:下肢触覚左右ともに問題なし。動作:起居移乗動作自立、 屋内 T 字杖見守り、階段昇降見守り。Functional Independence Measure(FIM):106 点。階段降段時、左下肢 立脚時に降段速度の調節ができない。脱臼肢位の理解は良好 である。 【経過、介入方法】第 4 病日より術後リハビリテーション開 始。第 6 病日より平行棒内歩行練習開始し、第 20 病日にて T 字杖にて見守りとなった。第 24 病日より歩行能力向上、階段 昇降および床上動作獲得目的で当院回復期病棟へ転棟。介入 内容として、下肢筋群のリラクゼーションおよび筋力増強運 動、バランス練習、歩行練習、階段昇降練習を行った。介入 の結果屋内独歩自立、階段昇降修正自立、床上動作自立とな った。自宅階段および浴室内への手すり設置が施行され,第 84 病日に自宅退院なった。 【説明と同意】本症例を報告するにあたり、症例本人に口頭 にて説明し同意を得た。 【最終評価(第 79 病日) 】疼痛:右大腿外側部 NRS0/10。筋 力:左膝関節伸展 12.6kgf、左股関節周囲筋群 MMT3~4。動 作:屋内独歩自立、階段昇降修正自立。FIM:122 点。階段 は片手すり使用にてふらつきなし。 【考察】階段降段動作において、大腿四頭筋の筋活動は立脚 相に 2 峰性の活動がみられ、後半における遠心性収縮が身体 の前方移動と制御降下に作用する。本症例は初期評価時に大 腿四頭筋の遠心性収縮筋力を十分に発揮できず、降段時にお ける膝関節屈曲速度の調節が困難だったと考えられる。最終 評価時に改善がみられた理由として、重錘負荷を用いた OKC での大腿四頭筋の遠心性収縮に加えて実際の降段動作に即し た CKC での訓練を反復したことにより、筋力増強と降段動 作の学習効果が得られたと考えた。 【はじめに】右大腿骨頚部骨折を呈し、人工骨頭置換術を施 行された症例が、脊柱の変形、重度の両変形性膝関節症を有 していた。腰痛により一時歩行困難となるが、足底挿板療法 により腰痛の改善を認めた症例を経験したので報告する。 【症例紹介】70 歳代女性。家事動作時に右股関節痛出現。右 大腿骨頚部骨折と診断、人工骨頭置換術施行。農家であり、 受傷直前にも農作業を行っていた。術後 27 日目に当院回復期 病棟へ転院。右股関節 ROM 屈曲 100°、外転 40°、外旋 30°。 右股関節屈曲・外転・膝関節伸展 MMT4。右股関節外転筋群 に運動時痛(NRS3)を認めたが、非ステロイド性抗炎症薬(以 下、NSAIDs)の服用にて自制内。既往に内側型両変形性膝関 節症があり、kellgren&lawrence 分類にて右 GradeⅢ、左 GradeⅣであった。左膝関節荷重時痛(NRS4)を認め、金属支 柱付膝装具を着用し歩行訓練実施。転院 50 日目、歩行量増加 に伴い腰痛(NRS8)出現し、歩行困難となった。NSAIDs では 改善せず、1 週間以上歩行困難となった。腰部レントゲンに おいて第 1 腰椎左下部、第 2 腰椎左上部・右下部、第 3 腰椎 右上部の椎間狭小化及び骨棘を認めた。また第 1・2 腰椎部で 右に凸、第 2・3 腰椎部で左に凸の側彎を認めた。治療は腰椎・ 膝関節アライメントを考慮し、足底挿板療法を選択。右は踵 骨外側底及び立方骨底へ、左は踵骨外側底に足底挿板を挿入 した。 【説明と同意】本報告はヘルシンキ宣言に基づき、紙面にて 説明を行い、同意を得て作成した。 【結果】腰痛は改善し(NRS1)再び歩行訓練が可能となった。 足底板挿入 2 週間後には T 字杖歩行が可能となり、NSAIDs も不要となった。 【考察】症例は受傷前より円背であり、両膝関節内反変形か ら歩行時に股関節外旋し骨盤後傾位をとっていたと考えられ る。それにより、腰椎全体の運動が第 1~3 腰椎間に集中しや すい状態であったと推察される。また術後の右股関節外転筋 力低下から、受傷前よりも歩行時における骨盤の外側動揺を 過大にさせ、第 1~3 腰椎間へのメカニカルストレスを助長さ せてしまい、腰痛を誘発させていたと考えられた。足底挿板 を両側の踵骨外側底に挿入することで、足底への荷重線が膝 関節中心部に近づくように修正され、膝関節内反ストレスは 軽減したと考える。また、右の足底挿板が立方骨底にあるこ とで荷重時に重心の過剰な外側移動を防ぎ、骨盤の外側動揺 を軽減させることが出来た。その結果、第 1~3 腰椎間へのメ カニカルストレスは軽減され、腰痛が改善したと考える。 医療法人社団 ン科 健志、藤田 心和会 聡行 新八千代病院 リハビリテーショ 第 20 回千葉県理学療法士学会 31 09 既往に右大腿切断があり左大腿骨骨幹部骨折 を呈したが住宅改修なしで自宅退院できた症例 ○林 加辺 沙紀1)、板橋 憲人 1) 健太 1)、野間 10 阻血性壊死により右大腿切断、両前腕屈筋・ 左下腿背屈筋部分切除を施行し自宅退院となった 症例 ~義足歩行が及ぼした影響に着目して~ 貴雄 1)、 1) 医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院 ○高橋慎治1)、鈴木謙太郎1)、村山尊司1) 1)千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション療法部 Keyword:完全免荷、環境整備、移乗 Keyword:大腿切断、義足歩行、自宅退院 【はじめに】左大腿骨骨幹部骨折で完全免荷設定、既往に右 大腿切断、全身性エリテマトーデスがあり、右人工肩関節置 換術、左肩・肘関節に変形と疼痛がある症例に対し、独居・ 住宅改修不可・生活保護受給中であるが環境調整・移乗方法 提案し自宅復帰可能となったので以下に報告する。 【症例紹介】症例は 60 歳代女性。自宅で転倒し、左大腿骨骨 幹部骨折の診断を受けた。受傷後 14 日目でプレート固定術施 行、70 日目に当院へ入院となった。病前の移動は基本いざり で、段差などは左片脚ジャンプで行っていた。受傷後、仮骨 形成の不良により完全免荷設定と大腿骨回旋力禁忌であった。 自宅復帰にあたり、上記のリスクを守れる移乗方法の獲得が 必須であった。 【説明と同意】今回の発表に際し、対象者に目的・方法・自 己決定権の尊重・プライバシーの保護について十分に説明を 行い、書面にて同意を得た。また当院倫理委員会より承認を 得た。 【経過】認知機能低下は MMSE28 点と年齢相応であるが、 新しいことはなかなか覚えられない傾向であった。上肢の関 節に負担のかかりにくい、かつリスクを守れる移乗方法を提 案する必要性があった。PT・OT で検討し、車いす-ベッド間 で車いすを垂直につけてスライドする方法を提案した。ケア スタッフと連携し、動作定着を図り、見守りで行えるように なった。その後、家庭訪問を実施し、環境確認・調整および 福祉用具の検討を行った。トイレの入り口は小型の車いすで も入れないため入り口から便座までの左半分を便座と同じ高 さに埋め込み台を設置し、車いすは便座と同じ高さとなるよ う調整した。自宅に合わせた設定で、上記の車いす-ベッド間 の垂直移乗方法をトイレ-車いす間でも応用し、反復練習した。 これらの組み合わせにより移乗自立を達成した。 その他にも独居生活を再開するために必要な環境調整やサー ビス調整をサービス担当者会議にて行い、自宅退院に至った。 退院後の現在(退院 2 ヶ月経過時) 、無事に独居生活を送れて いる。 【考察】左下肢完全免荷で右大腿切断を含めた既往が多彩で あるなかで自宅復帰して安全かつ問題なく生活を継続するこ とができるのか、移乗方法を筆頭に難渋した。住宅改修はで きない状況のなか、安全な動作方法を提供・獲得することと、 福祉用具やサービスを組み合わせ環境設定を整え、多職種や 地域のスタッフと連携することで患者様の希望である自宅復 帰を可能にすることができたと考える。 32 第 20 回千葉県理学療法士学会 【はじめに】コンパートメント症候群による四肢阻血のため 両前腕・両下腿筋壊死となり右大腿切断、両前腕屈筋・左下 腿背屈筋部分切除を施行し、義足歩行により ADL 自立度が 拡大し自宅退院となった症例を経験したので報告する。 【症例紹介】30 代男性。既往歴:うつ・統合失調症、肺気腫。 症例には症例報告の了解を得ている。 【現病歴】自宅にて薬物過量内服のため倒れているところを 発見され救急病院搬送。四肢屈曲位で倒れていた為か四肢に コンパートメント症候群を生じ、阻血性壊死により右大腿切 断、両前腕前屈筋・左下腿背屈筋部分切除を施行し、発症 199 病日リハビリテーション目的で当センター入院。 279 病日一 時転院し左手指機能再建手術施行し、287 病日当センターに 再入院した。 【評価および経過】入院時は両手指とも母指 IP 屈曲、MP 内 転、第 2~5 指 MP 軽度伸展、PIP・DIP 屈曲、手関節軽度伸 展位で拘縮しており左手関節および MP のみ僅かな自動運動 可能。右下肢は断端の状態良好で著明な可動域制限無し。左 下肢は足関節に軽度背屈制限および下腿以下に重度感覚鈍麻 あり。 筋力(MMT)は左膝関節屈曲 2、左足関節背屈 1、底屈 2、その他筋力は 3~4。 入院当初、左下肢片脚での立ち上が りや移乗も困難で ADL 全般に介助を要し、リハビリテーシ ョン以外の時間はベッド上臥位で過ごしていた。入院1ヵ月 頃より義足歩行練習を開始し PT は歩行練習を中心とした。 左下肢の支持性が低いため義足は固定式膝継手により立位安 定性を重視した。また両手指の拘縮により把持を要する補助 具の使用は困難であったため前腕支持が可能な U 字型キャス ター歩行器やプラットフォーム杖など種々の補助具を用いて 歩行練習を実施した。 左手指機能再建手術により左手指機能 が筒握り可能な程度まで改善したことで退院時(発症 400 病 日)には左手でロフストランド杖を使用しての立ち上がり・ 立位保持・歩行が見守りで可能となった。歩行能力の向上に 伴い立位動作の安定性も高まったことで、排泄時の立位での 下衣更衣や移乗などの ADL も自立し、U 字型キャスター歩 行器歩行の自立で自宅退院となった。 【考察】歩行が上下肢や体幹の筋力改善にも影響も及ぼし、 歩行以外の ADL 動作自立につながったと考える。四肢障害 を伴う本症は、単肢の下肢切断例に比べ長期間の入院リハと 義足歩行獲得に多くの工夫を要したが、退院時には杖歩行自 立への意欲もみられ義足歩行を試みた意義は大きかったと考 える。 11 交通事故による多部位外傷により,下肢に著 明な運動障害を呈した症例 ~アプローチを トリアージした結果,移動能力に奏功が見られた 症例~ 12 下肢多発骨折を生じた重度変形性膝関節症一 症例に対する装具の検討について ○鈴木 ○中田 大樹、小串 医療法人社団 心和会 健志、藤田 聡行 耕平1)、川木 雅裕1) 1) 亀田リハビリテーション病院 新八千代病院 Keyword:多発外傷、ADL、廃用症候群 Keyword:膝関節不安定感 【はじめに】今回,両下肢多発外傷により四肢に著明な関節 可動域制限を呈した症例を経験した.自宅退院に向け,運動 障害に対するアプローチをトリアージすることで,自立した 移動能力の獲得に至ったので報告する. 【症例紹介】50 歳代,男性.診断名は出血性ショック,骨盤 骨折,両大腿骨開放骨折,両下腿骨開放骨折,胸椎圧迫骨折, 右血胸,左膝蓋骨骨折,左脛骨骨髄炎,右大腿部仮骨性筋炎. 両大腿骨・両下腿骨 ORIF をのべ 9 回,左大腿部皮弁形成術 を経て,受傷 240 日目でリハビリ目的にて当院回復期リハビ リテーション病棟へ入院となった. 【説明と同意】本報告は,対象者及び家族に書面と口頭にて 説明し,同意を得た. 【初期評価】安静度は右下肢全荷重,左下肢起立台 60°での 部分荷重であった.ROM は両股関節屈曲 90°未満,右膝関節 屈曲 70°,左膝関節屈曲 20°両足関節背屈-20°であった.両 上肢は廃用性の可動域制限と筋力低下認め,手が肩より上の 空間に保持することが困難であり,臥位の状態から自分で身 体を動かすことが困難であった.FIM 運動項目 30 点(すべ ての項目で減点があり,ほぼ中等度以上の介助を要した) , BI 10 点(食事以外,全介助)であった.主治医より,右膝 関節可動域制限は,大腿部の仮骨性筋炎によるものであり, 左膝関節可動域制限は大腿部の軟部組織の癒着によるものと 診断され,入院時以上の可動域の改善は見込めないと判断さ れた. 【移動能力・ADL の経過】移乗・移動は,入院時リクライニ ング車椅子移乗四人介助.受傷後 290 日目,リクライニング 車椅子に長座移乗が可能となり見守り.受傷後 315 日目,車 椅子移乗が軽介助.受傷後 338 日目,移動は Pick up 歩行器 歩行見守り,起立時一人介助となった.ADL は,上衣更衣, トイレ動作,入浴,屋内移動の順で改善した. 受傷後 384 日目で, 屋内 ADL 自立にて自宅退院となった. 歩行は,屋内 pick up 歩行器自立.起立は,50 ㎝以上の座面 から pick up 歩行器を使用し自立.退院時の FIM 運動項目 63 点(入浴,更衣,トイレ動作,排泄,移乗,階段昇降に減 点) ,BI 95 点(階段昇降のみ見守りにて減点)であった. 【考察】入院時は四肢に運動障害があり,自宅退院は困難と 思われた.しかし運動障害を廃用性のものと,骨折または手 術の後遺症にトリアージした結果,上肢は廃用性の運動障害, 下肢は骨折または手術の後遺症としての運動障害に分けられ た.下肢の改善は困難であったが上肢は廃用性の運動障害で あったため,時間はかかったが改善がみられた. 【目的】重度変形性膝関節症(以下、OA)の既往がある多発骨 折症例に対し、疼痛および骨折部負荷軽減の為に軟性膝装具 を使用した。軟性膝装具による効果の作用機序は明らかでな く、装具を検討するための要因も不明確である。そのため今 回は、客観的評価として、2 次元動作解析装置であるダート フィッシュソフトウェア(以下、DART)を使用した動作分析と、 主観的評価にて膝関節不安定感及び疼痛を聴取し検討を行っ たので、以下に報告する。 【説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言の原則を遵守し、 プライバシー保護に基づき施行した。 【方法】対象症例は既往歴に重度 OA(K-L 分類:grade4)のあ る 80 代女性。左脛腓骨骨折、左足関節亜脱臼開放骨折の診断 にて左脛腓骨骨折に対し髄内釘、足関節に対し k-wire 固定術 を行った。一般的な理学療法介入を行ったが、膝関節の疼痛 軽減得られず、軟性膝装具の検討を行った。 比較は、軟性膝装具 3 種(OAEX、OAGX、ライトスポーツ 3) にて行った。主観的評価として、Visual Analog Scale(以下、 VAS)により膝関節不安定感、Numeric Rating Scale(以下、 NRS)により疼痛を聴取した。客観的評価としてビデオカメラ により前額面での足踏み動作 10 歩行周期を撮影、2 次元動作 解析装置(DART)により解析を行った。計測はマーカー位置を 大腿骨大転子(A)、外側上顆(B)、脛骨外果(C)とし、立脚期に て膝関節内反角度(∠ABC)の最大値を記録した。サンプリン グ周波数は 60Hz とした。 装具比較検討時、X-P 評価にて非荷重の FTA(右/左)は 175/190(°)であった。左膝関節の疼痛は荷重時に NRS 2、不 安定感は VAS 49/100mm であった。 【結果】DART による最大膝内反角度は、OAEX 211.18(±0.98)°,OAGX 210.64(±1.67)°,ライトスポーツ 3 は 209.06(±1.09)°であった。VAS の結果は、OAGX21mm、ラ イトスポーツ 3 と OAEX で 35mm であった。疼痛は NRS に て各装具で 0 であった。そのため、VAS にて不安定感の低い OAGX 使用にて自宅復帰となった。 【考察】比較した装具すべてにおいて疼痛は消失し、DART による内反角度は同程度であった。VAS では OAGX が不安 定感の低い結果となった。DART の結果については、症例の OA が重度であり、アライメントの矯正効果が得られなかっ た事が要因と考えられる。OAGX が不安定感軽減を示した要 因としては、支柱やバンドなどの構造が3種の中で最も強固 である事や、装着感やデザインなどによる主観の影響が考え られる。そのため、装具の選択おいては個別性の考慮が必要 であると考えられる。 疼痛 膝関節内反 第 20 回千葉県理学療法士学会 33 13 両変形性膝関節症が既往にあり、自宅復帰に 向けた歩行動作獲得に難渋した左大腿骨転子 部骨折一症例 ○山田 千尋1)、多田 幸代1) 1) 社会福祉法人 太陽会 ビリテーション室 安房地域医療センター 14 右大腿骨頚部骨折により人工骨頭置換術を施 行された症例 ~運動学習に着目した下衣更衣動作の改善~ ○川端下諒,別所雅彦,善田督史,武原格 リハ 化学療法研究所附属病院リハビリテーション室 化学療法研究所附属病院リハビリテーション科 化学療法研究所附属病院整形外科 Keyword:大腿骨転子部骨折、両変形性膝関節症、自宅復帰 Keyword:人工骨頭置換術・運動学習・下衣更衣動作 【目的】歩行動作獲得し自宅復帰を目標としたが、膝の変形・ 荷重時痛が著明で歩行動作獲得に難渋したため介入内容に考 察を加えて報告する。 【症例紹介】症例は 84 歳女性。自宅前の市道で転倒し、当院 にて左大腿骨転子部骨折と診断され、骨接合術を受けられた。 既往に両変形性膝関節症(Kellgren-Lawrence 分類 gradeⅣ)、 高血圧、糖尿病、高脂血症。長男との 2 人暮らし。長男は長 年の統合失調症治療から社会復帰したばかりであり、平日の 日中は仕事のため介助してもらうことは困難であった。受傷 前の動作能力は、屋内はつたい歩き・四つ這い、屋外はシル バーカー歩行自立していた。身辺動作・IADL も自立してい た。介護保険は要介護度 2。過去に住宅改修を行い改修費は 残っていない。自宅環境としては自宅前に急勾配の坂道があ り、車両の進入が困難であり、坂道を登らなければならなか った。 【理学療法】理学療法を進める上での問題点として、左膝の 荷重時痛、左下肢筋力低下による異常歩行や長距離・応用歩 行動作未獲得、加えて環境因子の問題が挙げられた。下肢筋 力低下に対しては、股関節周囲筋を中心に筋力練習を行った。 環境因子への対策として、坂道は改修困難であるため、自宅 環境に合わせて応用歩行練習を行った。 【説明と同意】今回の発表の趣旨を説明し、同意を得た。 【結果】下肢筋力は MMT2 から 3 へと改善が認められた。 左膝の荷重時痛が残存したものの、入院前と同程度の痛みの 強さとなった。49 日間の期間を要し、FIM は 51/126 点から 85/126 点となり、固定型歩行器を使用し応用歩行動作獲得も 可能となった。身辺動作や IADL も自立したことで自宅復帰 も達成できた。 【考察】理学療法介入当初、左膝の荷重時痛と左下肢筋力低 下の問題があり、歩行時の異常動作が生じ、長距離・応用歩 行動作が未獲得であった。また、環境面でも急勾配の坂道や 統合失調症の息子と二人暮らしという問題点があった。しか し、左下肢筋力改善と固定型歩行器を使用したことにより、 左膝への負担軽減へと繋がり歩行動作が獲得され、日常生活 での自立度向上、自宅復帰へと至ったと考える。 【はじめに】今回,右大腿骨頚部骨折により人工骨頭置換術 を施行し,下衣更衣動作自体は可能だが,学習困難なため脱 臼肢位をとる傾向にある症例に対し動作指導を行い改善がみ られたため報告する. 【症例紹介】年齢:85 歳.性別:女性.身長:145cm.体重: 37kg.診断名:右大腿骨頚部骨折(Garden 分類 StageⅢ)・人 工骨頭置換術後.現病歴:外出先にて転倒し受傷.合併症: 右心不全.要介護 1.家族構成:独居.key person:長男. なお,症例報告にあたり本人に趣旨を説明し,同意を得てい る. 【初期評価】コミュニケーション:会話・指示理解良好. HDS-R:23/30 点.脱臼肢位の理解が乏しい.疼痛:安静時 (-),動作時(+)術創部に荷重時痛 NRS5/10.関節可動域: 股関節屈曲右 65°左 120°.握力:右 18 kg 左 14 kg.μ-tas(膝 伸展筋力):右 46 N 左 61 N. 荷重量:静止時 13 kg 最大 24 kg. TUG:21 秒 5.10m 歩行:22 秒 1.起居動作:軽介助.端 座位:見守り.立ち上がり:把持物用いて見守り.移乗動作: 軽介助.歩行:歩行器見守り.FIM:88/126 点. 【経過】第 3 病日より術前リハビリ開始.第 8 病日に右大腿 骨人工骨頭置換術を施行.第 9 病日より術後リハビリ開始. 第 24 病日より下衣更衣動作練習を開始.第 31 病日に下衣更 衣動作の獲得.第 33 病日に自宅退院. 【最終評価】脱臼肢位の理解良好であり,下衣更衣動作が安 全に実施可能.疼痛:安静時(-),動作時(+)術創部に荷重時 痛 NRS2/10.関節可動域:股関節屈曲右 80°左 120°.握力: 右 19 kg 左 14 kg.μ-tas(膝伸展筋力):右 66 N 左 68 N.荷 重量:静止時 17 kg 最大で全荷重可能.TUG:13 秒 2.10m 歩行:11 秒 3.起居動作・端座位・立ち上がり・移乗動作: 自立.歩行:独歩にて見守り.FIM:114/126 点. 【考察】本症例は,初期評価時において脱臼肢位に対しての 理解が乏しく学習困難であった.動作指導において,山﨑ら より動作学習過程では反復練習・練習に対する動機づけが必 須と述べられている.今回,動作練習時の手がかりを徐々に 減らしていくプロンプト・フェイディング法を用いて介入し, 成功した際に賞賛することで動機づけを行うことにより,最 終評価時には下位更衣動作が改善したと考えた. 34 第 20 回千葉県理学療法士学会 15 人工股関節全置換術術後 12 週における前屈 動作と骨盤傾斜角との関連性について 1) ○黒木 聡 、妹尾 石垣 直輝1) 1) 賢和 、平尾 1) 利行 、 1) 船橋整形外科病院 理学診療部 16 右人工股関節全置換術施行後、カップが転位 し再置換した一症例 ○浅見 勇太1)、加藤 村田 淳1) 真敏1)、萩原 茂生2)、 1) 千葉大学医学部附属病院 リハビリテーション部 2) 千葉大学医学部附属病院 整形外科 Keyword:THA、前屈動作、PIA Keyword:人工股関節全置換術、カップ転位、再置換 【目的】人工股関節全置換術(THA)術後において、骨盤可動 性が低下している症例で前屈動作を獲得しづらい事を経験す る。前屈動作は、脊柱可動性、股関節や骨盤の可動性が重要 とされているが、静止立位での骨盤傾斜角(PIA)と前屈動作の 関連性を示した報告はない。本研究の目的は、術後 12 週時の PIA を調査し、骨盤傾斜が WOMAC における前屈みになって 床に手をつく(前屈)動作に及ぼす影響を明らかにすることで ある。 【方法】 対象は 2012 年 9 月から 2013 年 7 月までに片側 THA を施行し、術後 12 週まで経過観察可能であった 112 例(男性 15 例、女性 97 例、平均年齢 64 歳(42-86)歳である。調査項 目は、術後 12 週時の WOMAC から前屈動作の可否、X-p よ り PIA を算出、診療録より両側の股関節 ROM(屈曲、伸展、 外転、内転、外旋、内旋)とした。統計学的処理は、前屈動作 獲得群、非獲得群の全項目において、Mann-Whitney の U 検 定を用い、その後多重ロジスティック回帰分析を用いて検討 した (p<0.05)。目的変数を術後 12 週時の前屈動作の可否、 説明変数を術後 12 週における PIA、両側の股関節 ROM とし た。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り対象者には十分説明し、 同意を得て実施した。 【結果】術後 12 週時、前屈動作は 58 例が可能、54 例が不可 能であった。両群間の検討では(獲得群/非獲得群)、健側屈曲 (116.4°/111.3°)、健側伸展(14.8°/12.5°)、健側外転(34.0°/27.8°)、 術側外転(23.7°/20.2°)、術側内転(8.8°/7.4°)、PIA(21.3°/25.6°) において有意差を認めた。また術後 12 週の前屈動作に関与す る因子として、PIA と健側股関節屈曲可動域が抽出された。 各オッズ比(95%信頼区間)は、PIA 0.91(0.86-0.96)、屈曲 1.05(1.00-1.10)であった。 【考察】上村らは PIA20°未満を骨盤前傾群、20°以上 30°未 満を中間群、30°以上を後傾群と分類している。本研究結果で は両群共に PIA は正常範囲内だが、獲得群は非獲得群よりも 前傾位であることが分かった。またオッズ比より骨盤が前傾 し、健側股関節屈曲可動域が高い方が WOMAC の前屈動作が 可能となることが示された。よって THA 術後の前屈動作で は、骨盤前傾位に保持する能力や、健側の屈曲可動域の改善 が重要であることが示唆された。 【はじめに】人工股関節全置換術(以下 THA)後のプロトコ ールは当院を含め確立されているが、再手術後は状態に応じ てリハビリテーションを進める必要がある。今回、術後短期 間でカップを再置換し、重度の熱感、腫脹、術創部痛があっ たため、運動負荷に留意して介入し、再手術後 3 週で疼痛や 跛行の増悪無く自宅退院した症例を経験したため報告する。 【説明と同意】本報告は、本人に趣旨を説明し、同意を得て 行っている。 【症例紹介】62 歳女性。数年前より右股関節痛を認め、近医 にて右変形性股関節症と診断。 右 THA 施行目的に当院入院。 術前は重度の右股関節痛(NRS 安静時 5、動作時 7) 、右股関 節周囲の筋力低下(MMT2 から 3)を認めた。左股関節は変 形性疾患がなく、著明な機能低下もない。職業は小児科の診 療所の看護師で、早期復職の希望があった。 【経過】前側方アプローチにて右 THA 施行。術後の荷重制 限なし。各種基本動作は順次自立が進み、順調に経過してい た。しかし、術後 12 日目より右股関節内転筋群、大殿筋に安 静時痛(NRS2) 、動作時痛(NRS6)を認め、術後7日目に 中止していた鎮痛薬も再開。その後術後 2 週の X-P にてカッ プの転位を認め、術後 17 日目にカップ再置換術を施行。再置 換術後は重度の熱感、腫脹、術創部痛(NRS8)を認めたた め、介入翌日の炎症症状の変動に注意しながら慎重に運動負 荷を上げた。介入中は歩行練習を実施するも、院内は退院直 前まで車椅子駆動で移動し、病棟内の歩行量も具体的に指導 を行い、制限した。再手術に伴う長期入院、活動制限による 廃用により健側である左下肢の筋力低下(MMT4) 、筋萎縮(術 前より両側大腿周径は約 3cm 減少)を認め、連続歩行距離は 下肢疲労感出現により 150m 程度での退院となったが、自主 トレーニングにて退院後 3 週で復職を果たせた。 【考察】術後 12 日目から認めた疼痛は、右股関節内転筋群、 大殿筋の圧痛、収縮時痛を認めたため、連休中の過度の自主 トレーニング、歩容改善に伴う遅発性筋痛であると考えた。 ただ、カップの転位が疼痛を引き起こした可能性もあり、術 後の経過中に強い疼痛が再燃した場合は、他部門と情報共有 する必要がある。再置換術後の重度の熱感、腫脹、術創部痛 は、術後早期に創部を再展開したためと考えられた。そこで、 それらに留意し運動負荷を下げ、疼痛の再燃に注意して介入 したことが、炎症症状の増悪、跛行を認めず再手術後 3 週で 自宅退院できたことに寄与したものと考えた。 第 20 回千葉県理学療法士学会 35 17 TKA 術後の階段昇降の可否に関わる術前評 価因子の検討 18 RA における TKA 後の歩行バランス能力の変 化について~OA との比較検討~ ○柴雅也 1) 福岡進 1) ○齋藤 川井誉清 1) 奈緒子1)、村山 尊司2) 1) 松戸整形外科病院リハビリテーションセンター 1) 千葉県千葉リハビリテーションセンター 2) 千葉県千葉リハビリテーションセンター Keyword:階段昇降動作、TKA 術後、準 WOMAC Keyword:RA,TKA,歩行バランス能力 【目的】当院における人工膝関節置換術(以下、TKA)術後の 入院期間は 3 週間となっており、入院中に最低限の日常生活 動作(以下、ADL)の獲得をしなくてはいけない。しかし、階 段昇降動作は患者によって退院時に一足一段の階段昇降動作 が可能な患者と不可能な患者に別れてしまうのが現状である。 そこで、術後早期より階段昇降能力の回復を予測できる因子 を明らかにすることでゴールの設定がしやすくなると考えた。 本研究の目的は TKA 術後の退院時における階段昇降の可否 に関わる術前評価因子について検討することである。 【方法】対象は当院において変形性膝関節症と診断され、片 側 TKA を施行した 19 名(男性 15 名、女性 4 名)とした。ただ し、 両側および既に片側 TKA を施行している者は除外した。 階段昇降動作は退院時の術側 JOA スコアにおける疼痛・階段 昇降能力が 20 以上の者を可能(以下、可能群)、20 未満の 者を不可能(以下、困難群)とした。評価項目は、年齢、BMI、 術前の膝関節可動域(屈曲、伸展)、術前の日本語版膝機能 評価表(準 WOMAC)、術前の JOA スコア、入院中の DVT の 有無とした。統計学的処理は SPSS Ver.17.0 for Windows を 用い、評価項目を独立変数、一足一段の階段昇降動作の可否 を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。 【説明と同意】被験者にはヘルシンキ宣言に基づいて研究の 主旨を十分に説明し,同意を得た上で研究を行った。 【結果】TKA を施行した 19 名のうち、可能群は 7 名、困難 群は 12 名であった。退院時の一足一段の階段昇降動作の可否 と関わりが強い項目は、術前の準 WOMAC 身体機能スコアに おける「階段を昇る」および「階段昇降時の痛み」であった。 それぞれのオッズ比は「階段を昇る」が 1.50、 「階段昇降時 の痛み」が 1.78 であった。 【考察】今回の結果から、術前の準 WOMAC 身体機能スコア における「階段を昇る」および「階段昇降時の痛み」が、退 院時の階段昇降動作獲得に強く影響していることが明らかと なった。また、秋山らは TKA 術後患者における退院時階段 昇降能力と術前 TUG、膝伸展筋力には関連があると報告して いる。同じ TKA 術後患者でも、退院時の ADL 機能は術前の 状態に左右されるため、術前のこれらの因子を十分に把握し た状態で患者の退院時のゴールを設定する必要があることが 分かった。特に、退院時の階段昇降能力を予測する際には、 術前の TUG や膝伸展筋力に加え、術前の動作時痛や階段昇 段能力に対する患者の主観的な評価を考慮することが必要で あると考えた。 【目的】当センターで実施している人工膝関節置換術(以下、 TKA)の約 2 割が慢性関節リウマチ(以下、RA)である。 多関節障害である RA と、基本的に単関節障害である OA と では異なる術後の運動機能回復をするのではないかと考えら れるが、現在多くの施設で同じクリニカルパスが使用されて おり、術後の経過の違いはよく分かっていない。今回、歩行 バランス能力に焦点をあて、Timed Up and Go テスト(以下、 TUG)、10M歩行テスト(以下、10MT)および退院時歩行レ ベルを変形性膝関節症(以下、OA)例と比較した。 【方法】対象は H22/6~24/7(25 か月間)に当センターで TKA を施行した RA 患者 26 名(平均年齢 64±8.7 歳、平均入 院日数 37.1 日、 以下 RA 群) 、OA 患者 136 名(平均年齢 72±7.5 歳、平均入院日数 35.3 日、以下 OA 群)とした。術前と退院 時に計測した TUG 及び 10MT の時間とその変化率を計測値 とし、両群間の差を統計学的に比較した。また、退院時の屋 内歩行レベルの比率を調べた。 【結果】TUG の改善率は、OA 群(5.1%延長)に比較して RA 群(12.8%短縮)で有意な改善を認めた(p<0.05) 。10MT においても OA 群(0.2%短縮)に対し RA 群(12.8%短縮) で有意な改善を示した(p<0.05) 。術前・退院時の計測値を両 群間で比較したところ有意差はなかった。退院時の歩行レベ ルは、RA 群で独歩 65%、片 T 字杖歩行 31%、歩行器 4%、 OA 群で独歩 52%、片 T 字杖歩行 39%、両T字杖歩行 5%、 歩行器歩行 4%であった。 【考察】術前術後の TUG,10MT の時間に関しては両群間で 有意差は示されなかったが、術前に関しては TUG,10MT と も RA 群がより時間がかかる傾向にあった。OA 群に比べ RA 群のほうが TUG,10M歩行とも改善率が高いことが示された ことから、この改善率の違いは、術前の機能レベルの差が影 響していることが推察される。この結果から、RA 群は術後 早期においてバランス能力が改善しやすいこと、屋内歩行レ ベルも OA 群とほぼ同様まで達すると見込まれることが示唆 された。RA 患者は OA 患者に比べ、TKA 術後早期での筋力 の改善率が高い、杖歩行開始までの日数が短いなどの報告も あり、RA は TKA、術後リハにより術後早期における運動機 能の改善が OA 同様、またはそれ以上に期待できると考えら れる。一方、長期経過においては、RA は多関節にわたる機 能障害によって、歩行能力や ADL の低下が見られるケース も多く、退院後も継続的な評価、リハの必要性が検討される。 36 第 20 回千葉県理学療法士学会 19 当院での TKA 後の膝関節屈曲可動域改善の ための取り組みについて ○藤原 朱唯1)、新井 克美1)、山下 代1)、渡邉 仁司2)、坂本雅昭2) 祥司1)、青墳 20 陳旧性 TFCC 損傷に対して TFCC 再建術を 施行した症例に対しての一考察 〜術後残存した回外時痛の疼痛解釈〜 章 ○古田 亮介 1) 源 裕介 1) 1)千葉市立青葉病院リハビリテーション科 2)千葉市立青葉病院整形外科 1) 千葉こどもとおとなの整形外科 Keyword:TKA、ROM 改善、早期介入 Keyword:TFCC、尺側手根筋腱、再建術 【はじめに】当院では全人工膝関節置換術(以下、TKA)後 に他動膝関節屈曲 120°以上を良好群、120°未満を不良群とし ているが、これまで退院時に 130°以上の屈曲可動域を獲得す る症例がある一方、不良群も全体の半数を占めていた。そこ で早期のリハビリ介入が関節可動域(以下、ROM)に及ぼす 効果を検証した。 【対象・方法】平成 26 年 5 月以降は全例に手術当日からリ ハビリ介入をしている。対象は本年 5 月以降の TKA 施行例 のうち、下肢静脈血栓や心疾患などによりリハビリを休止し た 2 例を除く 14 例 20 関節(以下 26 年群)である。手術翌 日からリハビリを開始していた平成 25 年度の症例のうち、同 様にリハビリ休止などの 8 例を除いた 35 例 46 関節(以下 25 年群)を比較対象とした。26 年群の平均年齢および男女比は、 76.9±7.17 歳、5:9、25 年群は、73.1±7.74 歳、8:27 であ った。手術から入院時最終リハビリまでの平均日数は 26 年群 21.43±4.64 日、25 年群 19.63±3.67 日であった。 本年 5 月以降は、手術後 4 時間以内及び翌朝の包交時に、ベ ッド上背臥位で膝関節他動屈曲・伸展角度の測定、及び 1~5 回の ROM 訓練を行った。今回は退院時の膝屈曲角度に関し、 両群を比較検討した。 【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究である。 【結果】退院時の膝屈曲角度(以下、退院時屈曲)の平均値 は 25 年群 116.0±12.72°、26 年群 122.3±8.81°であった。120° を上回った患者数の割合(以下 120°到達率) は、25 年群 52.2%(24 膝) 、26 年群 75.0%(15 膝)であった。退院時 屈曲が 110°未満の症例は 25 年群 23.9%(11 膝)に対し、26 年群 5%(1 膝)であった。 【考察】今回リハビリ開始が従来通り手術翌日からの場合と、 手術当日からの場合とで比較検討を行った。手術当日と翌朝 に ROM 訓練を実施した方が、退院時屈曲および 120°到達率 の改善を認めた。特に退院時屈曲が 110°未満の不良例が大き く減ったことは有意義と思われる。ROM の回復は疾患や術 前の ROM の状態に関わらず、術後早期ほど大きく、時間経 過とともに小さくなる傾向があると言われている。手術当日 と翌朝のリハビリ介入は、回復の大きい時期の ROM 訓練回 数の増加と不動時間の短縮となり、結果的に退院時屈曲の改 善に繋がったと考える。また手術によりアライメントや軟部 組織のバランスが改善されたことや、持続的な硬膜外麻酔下 で疼痛や筋緊張の少ない状態で ROM 訓練を行えたことも良 い影響を及ぼしたと考える。関節拘縮の発生機序として局所 の循環障害が発生しているとされるが、 手術当日からの ROM 訓練は膝関節周囲の循環を促進し、拘縮の発生を抑える一因 になったと推察する。 【はじめに】 TFCC 再建術は、尺側手根伸筋腱(以下 ECUT と略す)を 半裁し遠位より TFCC 内へ通し、三角靭帯部で縫合。TFCC半裁腱を小窩中央に開けた骨トンネル内に誘導し固定する術 式である。つまり TFCC の再固定手術である。本症例は2年 前より生じた尺側部痛に対して、本手術を施行された症例で ある。術後に生じた回外時痛の解釈に、残存した尺骨背側転 位が疼痛原因と考え治療を行った。その結果、良好な成績を 得たので、その経過と疼痛改善のメカニズムに関して、考察 を踏まえて以下に述べる。 【説明と同意】 本症例には今回の発表における目的と意義について口頭に て説明し、同意を得た。 【症例紹介】 症例は 60 歳代前半の女性である。平成24年、要因なく右 手関節に尺側部痛が生じ、当院を受診。ステロイド注射にて 一時疼痛の改善を認めた。しかし疼痛が徐々に増悪し、平成 26 年2月、ECUT を用いた TFCC 再建術を施行した。X 線 所見では ulnar variant±0mm、尺骨は背側へ亜脱臼を呈し、 関節造影より TFCC の小窩剥離を認めた。 【理学療法評価と経過】 運動療法は、術後 7 週目でギプス固定除去後より開始した。 術後 15 週目で回外 60°、回内 70°、握力健側差 50%と可動域 制限と尺骨背側転位が残存した。DRUJ ballottement テスト、 ulnocarpal stress テストは陰性。圧痛は尺骨小窩に認めた。 回外時に尺側部痛を認め、尺屈回外で増悪、橈屈回外で減弱 し、ECUT の滑走性を促すことで疼痛の改善が得られた。術 後 24 週目で疼痛なく回外 85°、回内 90°、尺骨背側転位は改 善し、運動療法を終了した。 【治療内容】 11 週目以降は回外可動域の改善を目的に、尺骨を掌側方向 へ三角骨を背側へ押し込みながら、手関節を撓屈・背屈をす ることで、掌側尺骨手根靭帯のストレッチを行った。また手 関節回外位で ECU の等尺性収縮や、他動で橈屈を繰り返す ことで ECUT の遠位及び近位への滑走性を促した。 【考察】 本来、加齢による TFCC 損傷の疼痛原因は、TFCC の緊張 低下による周囲滑膜への機械的刺激が原因と考えられる。本 症例の場合、再建術により TFCC の緊張は保持できているは ずが、それでも尚疼痛が生じる原因に、術後に残存した尺骨 背側転位が原因と考えた。背側転位により、縫合した ECUT とともに TFCC は背側方向へ Shift されたことで、本来の緊 張を保持できなくなった。そのため、回外時に生じる TFCC への圧縮応力に対して、衝撃を緩衝することができず、疼痛 が生じたと考えた。 第 20 回千葉県理学療法士学会 37 21 胸郭からの運動連鎖により疼痛軽減が図れた 肩関節周囲炎の一症例 22 上腕二頭筋長頭腱切除術の施行が肩関節鏡 視下腱板縫合術の術後経過に及ぼす影響 ○清野 友紀1)、新井 三枝 超2) ○押尾 恒雄1)、笹川 健吾1) 1) 三枝整形外科医院 リハビリテーション科 2) 三枝整形外科医院 Keyword:肩関節周囲炎、胸郭運動システム、関節包インピ ンジメント 【はじめに】今回、両肩関節周囲炎により水平内転時に両肩 関節前方に疼痛を訴える症例に対して肩甲胸郭関節・肩甲上 腕関節の治療後に胸郭運動システム再建法を行った結果、良 好な治療成績が得られたのでここに報告する。 【症例紹介】70 歳代男性。平成 26 年 3 月 31 日重い荷物を降 ろす際に疼痛出現。5 月 20 日当院受診し肩関節周囲炎の診断 を受ける。 【理学療法評価(左/右)】立位姿勢:右肩甲骨外転・下制位、 左肩甲骨外転位、骨盤に対し胸郭左偏移 関節可動域(自動):水平内転右 100°(P=NRS8) 左 110°(P=NRS7) 筋緊張:左右棘下筋・三角筋・棘上筋、右菱形筋高緊張 肋骨下角:45/40°肩甲骨前傾角度:10/15° 第 10 肋骨横径:20/18cm 脊柱-肩甲骨上角・下角距離:上角 7/6・下角 8.5/9cm 上腕骨頭-肩峰距離:2/2.8cm 【治療内容】胸郭運動システム再建法、肩甲骨内転・上方回 旋可動域運動、棘下筋・小円筋・棘上筋・上腕二頭筋・三角 筋ストレッチ、右肘関節アライメント修正、cuff exercise 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき対象者に同意を得た 上で行った。 【結果】左右肋骨のうねりが修正され左右筋緊張が整い、左 右肩甲骨は内転位へ、 右肩甲骨前傾角度が 10°へ修正された。 自動水平内転角度は、右側は外反肘・前腕回内傾向にあるた めアライメント修正し 110°(P=NRS0)、 左側は 120°(P=NRS0)まで改善し治療効果の持続性が確認できた。 【考察】今回の症例は、骨盤に対する胸郭の左偏移があり、 後方回旋側は肋骨と肩甲骨の接触面が減少、前方回旋側は肋 骨と肩甲骨の接触面が前方を向くため肩甲骨は外転位をとり やすい。それにより水平内転時に上腕骨頭は求心位から前方 へ逸脱し前方関節包のインピンジメントを呈していると考え た。胸郭運動システム再建法を行うことで左右肋骨のうねり、 上腕骨頭の前方逸脱が修正されインピンジメントが減少し疼 痛が軽減したのだと考えた。右側は肘関節の影響もあったが 姿勢が整った事で効果の持続性が得られたのだと考える。ま た、マルアライメントの改善により筋緊張が適正化されスト レッチ、cuff exercise などの治療の効率化が図れたと考える。 38 第 20 回千葉県理学療法士学会 雅彦1)、望月 良輔1)、関口 貴博1)、鈴木 智2) 1) 船橋整形外科病院理学診療部、2)船橋整形外科病院スポ ーツリハビリテーション部 Keyword:上腕二頭筋長頭腱、tenodesis、tenotomy 【目的】上腕二頭筋長頭腱(LHB)は肩関節腱板断裂に伴い 肥厚及びインピンジメントが生じ、疼痛を誘発させると報告 されている。当院ではこれに対し除痛目的として肩関節鏡視 下腱板縫合術(ARCR)の際に LHB の腱切除、または腱固定 術を施行している。しかしこれらの処置が術後経過に及ぼす 影響についての報告は少ない。本研究では LHB 腱切除、ま たは腱固定術が ARCR 術後経過に及ぼす影響を検討する。 【方法】対象は 2011 年 9 月から 2014 年 3 月までに当院にて ARCR を施行し、広範囲腱板断裂の術後 6 ヶ月以上経過を追 えた 50 歳以上の症例 46 肩(男性 29 肩、女性 17 肩)である。 内訳は鏡視下で LHB に異常所見を認めず LHB を温存した control(C)群 11 肩、鏡視下所見で hourglass sign 陽性或いは 超音波所見で LHB 肥厚サイズが 20mm 以上となり LHB を 切除した後に腱固定術を施行した tenodesis(TD)群 18 肩、腱 切除術を施行した tenotomy(TT)群 17 肩である。手術時年齢 は 52〜80 歳(平均年齢 67.7 歳)である。 検討項目は術前・術後 1・3・6 ヶ月における他動屈曲可動 域(AE) ・他動外転可動域(ABD)・他動下垂位外旋可動域 (ER1) ・夜間時痛(NRS)を C 群、TD 群、TT 群で比較検 討した。統計処理は Dunnett の多重比較を用い、有意水準は 両側 5%とした。 【説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得、研究協 力者に書面にて説明し同意を得た。 【結果】AE は術後 1 ヶ月において C 群 122.7°、TD 群 105.3°、 TT 群 125.0°で C 群、TT 群と比較して TD 群が有意に低値を 示した。ABD は 3 群間に有意差は認めなかった。ER1 は術 後 6 ヶ月において C 群 49.5°、TD 群 28.9°、TT 群 38.2°で C 群と比較して TD 群が有意に低値を示した。夜間時痛は 3 群 間に有意差は認めなかった。 【考察】結果より AE は術後 1 ヶ月において TD 群は C 群、 TT 群と比較して可動域改善に遅延を認めたが術後 6 ヶ月で は同等の可動域となる傾向を認めた。ER1 は術後 1、3 ヶ月 では 3 群とも可動域は同等であったが術後 6 ヶ月において TD 群は C 群と比較して低値を示した。ARCR に伴い腱固定 術を施行した症例に対し ER1 の可動域制限を認め、今後理学 療法を行う上で治療方法を考慮していく必要性が示唆された。 23 肩関節自動外転時の疼痛と自動外転可動域の 低下を呈した症例への物理療法の効果につい て―シングルケーススタディによる検討― ○橋口 広太朗、髙梨 晃、関根 亜、矢榎本 發雄(MD) 榎本整形外科医院 24 烏口突起骨折を受傷し肩関節屈曲制限を呈し た症例 ○小倉明日美1)、小山稔 1)、間島和志 1) 1) 亀田メディカルセンター ハビリテーション室 亀田メディカルセンター リ Keyword:肩関節周囲炎、直流不変電流、低周波電気刺 激 Keyword:烏口突起骨折、肩関節屈曲制限、肩甲胸郭関節 【はじめに】直流不変電流は、電圧波形を利用しない直流電 流を不変通電することで神経順応が起こり、筋スパズムや疼 痛の改善に効果があるとされている。また低周波電気刺激療 法は、筋再学習効果や末梢循環促通効果が確認されている。 今回、転倒後に右肩関節運動時痛および自動外転可動域(以 下 a-ROM)の低下が生じている症例に対し、直流不変電流お よび Electrical Muscle Stimulation(以下 EMS)を用いたア プローチを行い、疼痛と a-ROM への影響について ABC 型の ケーススタディを用いて治療効果を検討した。 【対象】症例は、平成 26 年 4 月に右側方に転倒し、その後 右肩痛にて挙上困難となった 70 歳代男性であり、平成 26 年 5 月より理学療法を開始した。理学療法評価として、インピ ンジメントテスト陽性、上腕二頭筋長頭腱炎テスト陽性、肩 関節周囲筋の筋スパズムが生じており、外転運動時に肩甲骨 の不良運動が生じていた。 外転運動時痛は 80°以降で大結節、 上腕二頭筋、烏口突起部に生じていた。 【方法】研究デザインはシングルケーススタディ A-B-C を用 いた。A 期はコントロール期として治療(ストレッチ、筋力 トレーニング)を施行した。B 期では A 期の治療に加え、疼 痛部位への直流不変電流および血流改善を目的とした EMS を上腕二頭筋に施行し、C 期では A 期の治療に加え直流不変 電流および筋再教育のための EMS を僧帽筋中部、下部に施 行した。各期とも 1 日の訓練時間は 40 分とし、週 2 回で計 4 回の介入回数とした。各期とも介入後に、肩関節外転時運動 時痛の Numerical Rating Scale(以下 NRS)と a-ROM の 2 項目を測定した。 【説明と同意】本研究は症例に治療計画を十分に説明し、書 面にて同意を得て実施した。 【結果】A 期では NRS、a-ROM ともに改善の傾向が見られ なかった。B 期では NRS、a-ROM ともに改善の傾向が見ら れたが外転 120°以降で疼痛が出現し、a-ROM 低下が見られ る状態であった。C 期では、a-ROM の改善が見られ、疼痛は 烏口突起部、上腕二頭筋に残存し、大結節では消失した。 【考察】筋スパズムが要因の疼痛に対して、直流不変電流で のアプローチは疼痛コントロールが可能であることが示唆さ れた。また、疼痛抑制後に筋活動を促す目的で僧帽筋中部・ 下部へ EMS を施行することは肩甲骨の不良運動が改善し、 疼痛軽減と a-ROM の改善が可能なことが示唆された。 【はじめに】肩甲骨骨折の受傷率は全骨折の 1%と少なく、さ らに烏口突起骨折は肩甲骨骨折全体の 16.3%と稀である。今 回、烏口突起骨折後に肩挙上制限を呈した症例を経験したた め、ここに報告する。 【症例紹介】65 歳、男性、2014 年 3 月 12 日、屋根から転落 し受傷。K 病院整形外科受診、右烏口突起骨折の診断にて同月 18 日に観血的整復固定術施行。術後三角巾固定し、3 週目よ り振り子運動開始。同月 22 日に退院。同年 4 月 14 日、三角巾 固定が解除され当院外来理学療法開始。 【説明と同意】症例報告にあたり本症例に十分な説明を行い、 同意を得た。 【理学療法初期評価】同年 4 月 14 日初診時、主訴は神棚に 水が置けない事であり、運動機能面では右肩関節の疼痛と拘 縮により挙上動作が制限されていた。疼痛は Numerical Rating Scale(以下、NRS)5/10、拘縮は右肩甲上腕関節 (Glenohumeral joint;以下、GH)に屈曲 70°、外転 60°、1st 外旋 5°の制限、右肩甲胸郭関節に肩甲骨後傾・上方回旋制限 を認めた。GH の制限因子は大胸筋、小円筋、棘下筋のスパズ ム、肩甲胸郭関節の制限因子は小胸筋のスパズムを考えた。 主訴改善に必要な肩屈曲 160°を目標に疼痛緩和と可動域改 善に対して介入を行った。 【介入・経過】同年 4 月 14 日より疼痛と可動域制限に対し リラクゼーション手技を中心に介入。同年 6 月 2 日、術部治癒 とスパズム軽減に伴い疼痛は NRS1/10 と軽減したが、右肩甲 胸郭関節制限に加え、右 GH は屈曲 90°、外転 90°、1st 外旋 60°、2nd 外旋 90°、2nd 内旋 60°で、特に後方組織由来の可 動域制限が残存していた。これらに対して介入を継続し、同年 9 月 3 日、肩屈曲 160°と目標達成し終了となった。 【考察】烏口突起骨折は肩甲帯の合併損傷が多く、基部骨折 では肩鎖関節機構損傷の合併が多く報告される。また、主症状 は疼痛で、烏口突起付着筋・靭帯の緊張を逃避する肩内旋・ 肘屈曲位をとるとされる。本症例は肩鎖関節機構損傷の合併 は無かったが、GH と肩甲胸郭関節に可動域制限を認めた。 肩甲胸郭関節の制限因子であった小胸筋のスパズムは、骨折 に伴う疼痛により惹起されたものと考える。GH の制限因子 であった大胸筋、小円筋、棘下筋は、術後患部安静のために 肩内旋・肘屈曲位にて三角巾固定されたことにより生じた二 次的な拘縮であったと考える。本症例より、烏口突起骨折後の 理学療法では、烏口突起に付着する筋群に由来する拘縮に加 え、疼痛回避肢位および患部安静肢位によって生じる二次的 な拘縮への配慮が重要であると考えた。 第 20 回千葉県理学療法士学会 39 25 肩関節周囲炎の保存療法における治療期間と 初回来院時の評価項目との関連性について ○海老根 豊1)、平尾 石垣 直輝1) 1) 船橋整形外科病院 利行1)、関口 貴博1)、 理学診療部 Keyword:肩関節周囲炎、保存療法、治療期間 【目的】臨床において肩関節周囲炎の患者の治療を多く経験 するが、医師の判断で治療終了となる前に患者が来院しなく なることをしばしば経験する。治療期間を初回来院時の評価 項目から予測できるようにすることは治療者側の目標設定お よび患者の通院意欲を高めることの一助となると考え本研究 を行った。 【方法】対象は 2012 年 4 月から 2013 年 3 月までに肩関節に 愁訴があり当院を受診した患者 172 名(男性 102 名、 女性 72 名、21 歳~79 歳)のうち、医師の判断により経過良好にて 通院終了となった 35 名である。除外基準は、骨折や脱臼など の器質的疾患、頸椎疾患、脳卒中、糖尿病、関節リウマチ、 精神疾患、スポーツ時のみに愁訴のある患者である。研究デ ザインは後ろ向き研究を用いた。測定項目は初回来院から医 師に通院終了と判断されるまでの期間(治療期間)、発症から 来院までの期間、初回来院時の挙上・外旋関節可動域(ROM) とした。統計学的分析として、治療期間に対する発症から来 院までの期間および初回来院時の挙上・外旋 ROM との関連 性を検討するために spearman の順位相関係数を用いた。さ らに、治療期間を従属変数とし、発症から来院までの期間と 初回来院時の挙上・外旋 ROM を独立変数とした重回帰分析 (ステップワイズ法)を行い、治療期間の予測回帰式を求め た。なお、有意水準は 5%とした。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り対象者には十分説明し、 同意を得て実施した。 【結果】治療期間と発症から来院までの期間(r=-0.411)お よび初回来院時の患側挙上 ROM (r=-0.713) ・外旋 ROM (r=-0.695)は有意な負の相関を示した。重回帰分析では、 治療期間に影響を与える因子として初回来院時の患側挙上 ROM が説明変数として抽出された。得られた回帰式は、治 療期間=25.196+(-0.12)×初回来院時の患側挙上 ROM (R=0.669、R2=0.447)であった。 【考察】今回の結果から、発症から来院までの期間が長く、 初回来院時の患側拳上および外旋 ROM が少ないほど治療期 間を要することが示された。また、今回得られた回帰式は、 やや精度が低いものの、治療期間を初回来院時に予測し、目 標設定する上で有用なものとなると考える。 40 第 20 回千葉県理学療法士学会 26 頸部・肩甲帯部痛に対するリハビリテーショ ンの効果に罹患期間は影響するのか? 〜VAS・NDI による検討〜 ○渡辺純子 1)、石崎亨 1)、豊岡毅 1)、杉浦史郎 1)2) 1)西川整形外科リハビリテーション部 2)千葉大学大学院医学研究院 環境生命医学 Keyword:頸部・肩甲帯部痛,罹患期間,リハビリテーショ ンの効果 【はじめに】頸部・肩甲帯部痛に対するリハビリテーション (以下リハ)の有効性を示した報告は散見するが,罹患期間 の違いによって,その有効性を検討した報告は少ない. 【目的】頸部・肩甲帯部痛に対して罹患期間に着目し,リハ の効果を検討すること. 【対象】当院に来院した頸部・肩甲帯部痛を有する患者 20 名.(男性 10 名,女性 10 名,平均年齢 52.4±12.3 歳) 罹患期 間で全対象を亜急性期群(2 週間以上 3 ヶ月未満) ,慢性期群 (3 ヶ月以上)の 2 群に分類した.頚髄症患者,急性期の患 者は除外した. 【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり 対象者の倫理的配慮を行なった. 【方法】対象に対し,初診時に安静時痛 Visual Analog Scale(以下安静時痛 VAS),日本語版 Neck Disability Index (以下 NDI-J)アンケートを実施した.治療は徒手療法,運 動療法,物理療法を週 1 回以上実施し,さらにホームエクサ サイズの指導を行った.2 週間後に安静時痛 VAS,NDI-J を 再評価し,2 週間後の安静時痛 VAS と NDI-J の変化を比較し た.統計は 2 元配置分散分析を行い,P 値<0.05 とした. 【結果】安静時痛 VAS(初診時/2 週間後)は,亜急性期群 (3.2±3.3mm/1.1±1.5mm (改善値 2.0±3.1),p≧0.05) ,慢性 期群 (4±2.2mm/1.0±1.0mm (改善値 3.0±2.4mm),p<0.05) であり,亜急性期群に比べ慢性期群で有意に改善を認めた. NDI-J(初診時/2 週間後)は亜急性期群(9.9±5.2/8.2±7.0(改 善値 1.2±5.4),p≧0.05) ,慢性期群(15±8.5/7.0±4.4(改善値 8.0±9.2,p<0.04)であり,亜急性期群に比べ慢性期群では有 意に改善を認めた. 【考察】リハにより亜急性期群よりも慢性期群で疼痛に関し て有意に改善がみられ,罹患期間の違いによりリハの効果に 差が生じることが示唆された.また,NDI-J も慢性期群で有 意に改善したが,これは VAS と NDI は相関関係にあるとい う先行研究より,疼痛の改善が日常生活活動の改善につなが ったと考える.慢性疼痛の原因は器質的原因ではなく,不動, 身体機能認知低下や心理面が関係していると報告されており, 今回のリハは,器質的要因が比較的大きい亜急性期に比べ, 慢性期群で効果的であったと考える.今後は長期的にリハの 効果を検証することや,亜急性期群に対するリハプログラム の検討が必要だと考える. 27 腱板断裂術前患者における Shoulder36 の健 康感と客観的肩関節評価との関連性 ○中川 貴寛、川井 28 罹病期間が腱板断裂術後 3 ヶ月 JOA に与え る影響について 誉清 松戸整形外科病院リハビリテーションセンター ○有阪 芳乃 1)、川井 1) 松戸整形外科病院 誉清 1) リハビリテーションセンター Keyword:Shoulder36・患者立脚型評価法・健康感 Keyword:腱板断裂、罹病期間、予後 【目的】患者満足度や QOL の向上は、より高い医療を提供 す る為に必要な項目である。そのため、従来のような医療者側 の客観的な評価だけではなく、患者立脚型評価が重要となっ てくる。肩関節疾患においても患者立脚肩関節評価法 Shoulder36V.1.3(以下、Sh36)が使用され、調査結果が散見 される。しかし、Sh36 の中でも、より主観的な評価である健 康感に対する検証は少ない。そこで今回、腱板断裂症例に対 して客観的評価と Sh36 の健康感における関連性について検 証することを目的とした。 【方法】対象は、当院にて 2014 年 3 月から 2014 年 9 月まで の期間に腱板修復術施行予定患者に術前 Sh36 を回収できた 76 例 76 肩(男性:35 名、女性:41 名)とした。手術時年齢は平 均 66.2±9 歳であった。客観的評価には日本整形外科学会肩関 節疾患治療成績判断基準(以下、JOA)を用い、機能障害の評 価である疼痛・外転筋力・持久力・日常生活動作・可動域お よび合計点を細分した。主観的評価として、Sh36 を使用し評 価シートへの記述を求めた。Sh36 の健康感の平均点と JOA との関係性について Sperman の相関係数を用いて、危険率 5%未満を有意水準として統計学的処理を行った。統計学的解 析は、SPSS17.0 J for Windows を使用した。 【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に従い、対象者には 本研究の目的を事前に口頭で説明し、同意を得た後に客観的 評価と Sh36 評価シートへの回答を実施した。 【結果】Sh36 の「健康感」と JOA の「疼痛」 (r=0.63)との 間に正の相関を認めた(p<0.05) 。Sh36 の「健康感」と JOA の「挙上関節可動域」 (r=0.01)、 「外旋可動域」 (r=–0.03) 、 内旋可動域(r=0.003) 、 「筋力」(r=0.04)には相関が認めら れなかった。 【考察】今回の結果より、術前腱板断裂症例では JOA の疼痛 が Sh36 の健康感において関連性があることが分かった。疼 痛は、感覚的側面と情動的側面とを含む多面的要素が混在し ていると考えられている。特に慢性疼痛と QOL との関連性 が数多く報告されており、Young ら(2012)は、肩関節の慢 性痛患者は痛みに抑うつや恐怖心といった心理的因子が影響 を及ぼすと報告している。よって、腱板断裂症例における肩 の疼痛が患者の QOL に関連し、Sh36 の健康感領域と相関を 認める結果になったと考えられる。Sh36 の健康感と JOA の 関節可動域・筋力において相関が認められなかったのは、患 者の挙上を伴わない動作での質問項目が多く、日常では肩甲 骨、体幹による代償動作、あるいは健側にて行っており、困 難感を感じていない可能性が考えられる。 【目的】当院では腱板断裂に対し鏡視下骨孔腱板修復術(以 下 ATOS)を施行し、良好な成績を得ている。しかし、機能 回復において患者の個人差は大きく、早期に機能改善が認め られるものから、改善までに長期的な時間を要とするものま で様々である。臨床では、術前の罹病期間が長期に渡る症例 ほど術後の機能回復に時間がかかる印象を受ける。本研究の 目的は、術前の罹病期間が ATOS 術後 3 ヶ月の JOA スコア に与える影響を調査・検討することである。 【方法】対象は 2014 年 4 月から 2014 年 7 月までに ATOS を施行した 47 例(68.3±6.1 歳、男性 24 名、女性 23 名)と し、大断裂、広範囲断裂は対象から除外した。罹病期間は症 状が出現してから手術までの期間とした。JOA スコアを術 前・術後 3 ヶ月時で比較し、 術後に術前よりも 3 ヶ月時の JOA スコアが低下している群を低下群、術前 JOA スコアよりも改 善している群を改善群とした。2 群間の罹病期間、外傷の有 無についてそれぞれ検討した。統計学的検討には SPSS を用 いて Mann-Whitney の U 検定を用いた。有意水準は 1%とし た 【説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に基づき本研究の 説明と同意を得た。 【結果】罹病期間は低下群が 10.2±8.2 ヵ月であり、改善群 6.1±8.9 ヶ月であり 2 群間に有意差が認められた(p<0.01)。ま た、外傷の有無については 2 群間に有意差は認められなかっ た。 【考察】今回の結果より低下群は改善群と比較し、罹病期間 は有意に長いが、外傷による差はないことがわかった。先行 研究では広範囲断裂症例において、罹病期間が 1 年以上の症 例は他と比べて筋力、疼痛の改善率が低かったと報告してい る。これは断裂後長期に経過すると腱板の脂肪変性が進み、 腱板が組織学的、あるいは物理学的に脆弱化することなどか ら、術後の機能改善に影響を与えていると考えた。先行研究 では、高橋らは、術前の可動域が術後の可動域回復に影響を 与えると報告している。術前の可動域を参考に予後について の患者説明を行うことも多いが、可動域が良好であっても罹 病期間が長期に渡っている場合、機能改善に時間を要する場 合もあることが今回の研究から示唆された。これに対して、 今後どのような因子が影響しているのか追及していきたい。 第 20 回千葉県理学療法士学会 41 29 右小脳梗塞を呈した症例について-体幹に着 目して― 30 片麻痺患者に対する起き上がり動作練習 〜逆方向連鎖化を用いて〜 ○富田駿1)、加藤宗規2) 1) 1) ○稲村莉沙 、長澤康弘 、森田良平 2) 1) 医療法人社団誠和会 長谷川病院 リハビリテーション科 2) 医療法人社団誠和会 長谷川病院 診療部 1) 医療法人社団千葉秀心会 東船橋病院 2) 了德寺大学 Keyword:体幹,筋緊張,バランス Keyword:片麻痺、起き上がり動作、逆方向連鎖化 【はじめに】今回,右小脳梗塞を呈した症例を担当する機会 を得た.その際に,歩行時に右側への転倒リスクが確認でき た.本症例の体幹機能に着目し,理学療法評価,問題点抽出, 体幹機能への治療を行った結果,歩行能力の改善がみられた ので,以下に報告する. 【症例紹介】80 歳代,男性.診断名:右小脳梗塞.右後下小 脳動脈領域,小脳中部に拡散強調画像にて高信号を認める. 発症 18 日目に当院転院となる. 【初期評価】右内・外腹斜筋の筋緊張低下,左多裂筋・最長 筋の筋緊張亢進あり.体幹屈曲・回旋,大殿筋は徒手筋力検 査(以下 MMT)3,躰幹失調機能検査は StageⅡ.Berg Balance Scale(以下 BBS)37 点であり,タンデム立位,片脚立位は実 施困難であった.立位姿勢は体幹伸展位であり,歩行は,10m 通常歩行 23 秒,最大歩行 14 秒を要していた.歩行時に右側 への傾きは右内・外腹斜筋の筋緊張低下によるものだと考え, kneeling,四つ這い,座位バランス練習を行い,経過に応じ 立位でのステップ練習を実施した. 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り,患者本人および家族 に十分説明し,同意を得られた. 【最終評価】入院 4 週で BBS49 点に改善し,タンデム,片 脚立位実施可能,MMT4,躰幹失調機能検査 StageⅠと改善 がみられた.10m 歩行,通常歩行 9 秒,最大歩行 7 秒に改善 がみられた.右内・外腹斜筋は筋緊張低下,左多裂筋・最長 筋の低下がみられた. 【考察】鈴木らによると,歩行動作における体幹機能の働き として,立脚初期では外腹斜筋は,胸郭の回旋に対するブレ ーキング作用として働くと言われている.また,外腹斜筋は, 広背筋と連動することで体幹回旋に関連し,胸郭の回旋に対 して求心性または遠心性に制御するとある.立脚中期におい ては,内腹斜筋が骨盤帯の安定のために筋活動が増大し,体 幹を安定させるとある.本症例における歩行時の体幹の右側 への転倒リスクとして,右内・外腹斜筋の筋緊張低下が体幹 の安定性を低下させていると考えた.また,立位姿勢におい ても内・外腹斜筋の筋緊張低下により、左多裂筋・最長筋の 筋緊張が亢進しており,姿勢として体幹伸展位がみられ,歩 行時の体幹回旋や両上肢の振り出しの減少に繋がったと考え る.そのため,主に kneeling や四つ這いといった静的なバラ ンスの中で,体幹の安定性向上を図ることで歩行動作の効率 性だけではなく動的バランスの向上にも繋がったと考える. 【目的】近年、応用行動分析学的技法を用いた動作練習が注 目されている。なかでも逆方向連鎖化を用いた起き上がり動 作練習は片麻痺患者の動作学習を促進する方法とされている。 今回、失語を有する片麻痺患者に対して逆方向連鎖化を用い た起き上がり動作練習を実施し、その効果について検討した。 【方法】対象は 80 歳代後半女性で診断名は左視床出血である。 Brunnstrom recovery stage にて上肢・手指Ⅱ、下肢Ⅲと運 動麻痺が認められ、高次脳機能障害として失語・半側空間無 視を呈していた。失語は標準失語症検査にて単語の理解は可 能であったが、その他の聴く項目で大きな減点が認められて いた(21/40 点) 。 基本動作の中でも非麻痺側への起き上がり動作が全介助であ ったため、第 8 病日から起き上がり動作の獲得を目指した介 入を開始した。 起き上がり動作の過程を「寝返る方向に顔を向ける」、「骨 盤の回旋」、「肩甲帯の回旋」、「足をベッドから降ろす」、 「肘を立てる」、「肘を伸ばし手掌支持」、「支持側上肢を 体に近づけていく」「座位保持」の8つの下位項目に分割し、 項目毎に要した手がかり刺激の種類にて点数付けを行った。 手がかり刺激について、4点:自立、3点:口頭指示、2点: タッピング及びポインティング、1点:介助の4段階とし、下 位項目8×4段階の32点満点で点数を記録し、対象者にフィー ドバックを行った。2日間実施後、介助量に変化がみられない ことから新たに逆方向連鎖化を用いた段階的難易度調整を行 った。起き上がり動作の開始肢位を1:手掌支持、2:肘立位、 3:枕を腋窩に挿入した側臥位、4:タオルを挿入した側臥位、 5:下肢を下ろした側臥位、6:背臥位から開始と6段階に分け、 動作練習を実施した。段階の引き上げ基準として1度でも成功 した場合に次の段階へ引き上げを行った。なお、総課題掲示 での下位項目の点数付けは継続して実施し、翌日の開始肢位 は下位項目の自立度を考慮した上で決定した。 【説明と同意】写真撮影、研究発表に際しては、家族に書面 で説明し承諾を得た。 【結果】逆方向連鎖化を用いた介入開始後、第 11 病日で全て の段階からの起き上がりに成功し、12 病日で下位項目全てが 自立となり、動作の獲得に至った。なお、介入前後の身体機 能の変化はみられなかった。 【考察】逆方向連鎖化を用いた起き上がり動作練習は、失語 により指示理解が困難な片麻痺患者の起居動作技術向上を短 期間でもたらした可能性が考えられた。 42 第 20 回千葉県理学療法士学会 31 脳卒中片麻痺患者に対するウィントラックを 用いた起立訓練の効果 ○晴山 亮、瀬戸山 田内 成幸 健一、石川 32 左視床出血にて歩行障害を呈した症例 ―ペダリング運動に着目して介入した効果― めぐみ、 我孫子東邦病院 Keyword:ウィントラック、視覚的フィードバック、 立ち上がり 【目的】脳卒中片麻痺患者に対し理学療法を施行する際、非 麻痺側荷重傾向となっている場面に遭遇し麻痺側への荷重訓 練を行うことが多い。今回、起立訓練を指導する際、ウィン トラック(以下 W・T)による視覚的フィードバックを実施 した群(以下 W・T 群)と視覚的フィードバックを実施しな かった群(以下未実施群)の端坐位~静止立位までの足底分 圧の推移を比較し、視覚的フィードバックの有用性について 検討した。 【対象】対象はリハビリテーション目的の脳卒中片麻痺患者 7 例(平均年齢:62.6 歳、性別:男性 7 名、麻痺側:右 3 例、 左 4 例、下肢 Br-stage:Ⅲ3名、Ⅳ4名)とした。採用基準 は、①端座位から 15 秒以内に自力で起立し静止立位が行える 者(上肢の使用は問わない)、②認知機能の著しい低下が無い 者(長谷川式簡易知能評価スケールを用いカットオフ値16 点以上)③起立時に疼痛の無い者とした。 【方法】端座位からの起立時、W・T 群/未実施群に振り分け、 それぞれ 3 名の PT(経験年数 20 年目、4 年目、1 年目)に て 15 日間の起立訓練を行った。介入前後に W・T 群、未実 施群それぞれの足底分圧を測定・記録し、両群間の差を比較 することとした。比較する動作時の足底分圧は端座位~静止 立位にいたるまでとし、立ち上がり時間に個人差があるため、 立ち上がり開始時から静止立位にいたるまでを記録した 600 枚の連続静止画像の中から無作為に 30 枚の画像を抽出し平 均を比較した。 【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿い実施し、対象 者に事前に本研究の内容を書面にて説明し同意を得た。 【結果】15 日間の立ち上がり訓練後の結果、それぞれの麻痺 側足底分圧は W・T 群で介入前 19.2%。介入後で 36.4%であ った。 未実施群では介入前 19.4%、 介入後で 27.4%であった。 【考察】本研究において 15 日間の立ち上がり訓練後には W・ T 群・未実施群の両者でも改善はみられたが優位な差を認め た。その関連因子としては左右足底分圧の変化がリアルタイ ムに視覚的フィードバックできることで、対象者自身効率的 な運動学習・運動の習得が可能になったことが考えられる。 また、未実施群に対する指導方法・ハンドリング技術などの 差により、15 日間の介入では効果が出なかった症例があった ことも関連していると考えられる。今後症例数を重ね検証方 法を改善することで、より具体的な結果が得られるのではな いかと思われる。 ○沼倉 遥、廣居 康博 医療法人鉄蕉会 亀田リハビリテーション病院 リハビリテーション室 Keyword:脳卒中、ペダリング、歩行 【はじめに】左視床出血により歩行障害を呈した症例を担当 した。二木の予後予測では 3 ヵ月以内に屋内歩行自立が可能 であると予測された。ペダリング運動は脳卒中患者の筋の協 調性を促通し、筋の再教育に効果的で歩行機能再建に有効と されている。今回、気分不快が強くリハビリ介入に難渋した 症例に対して、歩行練習の代替手段としてペダリング運動を 実施し、歩行能力の改善を認めたので報告する。 【対象・方法】対象は左視床出血より右上下肢に運動麻痺を 呈した 60 歳代男性。発症前より 100m 程度の歩行で休憩を 要し、活動量の低下と両下肢筋力低下が認められた。転院当 初より気分不快の愁訴があるも医学的問題はなかった。ペダ リング運動は発症 35 日目より開始し、8 週間実施した。使用 器具は電動サイクルマシン escargot、リカンベント式の自転 車エルゴメーター、自転車エルゴメーターと難易度を段階的 に変更した。介入前後で運動麻痺の指標として Brunnstrom recovery stage(以下 BRS)と Stroke Impairment Assessment Set 麻痺側運動機能(以下 SIAS-m)、歩行能力の指標として Functional Ambulation Categories Classification(以下 FAC)、10m 最大歩行速度(以下 10MWS)を測定した。 【説明と同意】本稿の作成に際し,症例に口頭にて趣旨を十 分に説明のうえ了承を得た。 【結果】初期評価時から最終評価時、BRS は右下肢ⅡからⅣ、 右下肢 SIAS-m1-1-1 から 3-3-3、歩行は FAC1 から FAC3 と 平行棒内 6m 程度介助レベルから 4 点杖使用し監視レベルと 改善を認めた。初期評価時は 10MWS 測定困難であったが、 最終的に 4 点杖使用し所要時間 51 秒、速度 0.20m/sec とな った。日によって変動を認めるも歩行距離は最大で連続 40m 可能となった。 【考察】本症例は気分不快が強く介入に難渋したが、ペダリ ング運動は歩行と比較して積極的な参加が得られた。最終評 価時には屋内 4 点杖歩行監視レベルとなり、歩行練習に対し ても意欲的な発言がみられた。ペダリング運動は歩行に対す る task-oriented training として有用であり、反復かつリズ ミカルな下肢の対称運動により central pattern generator の 活性化、股関節屈曲や膝関節伸展、足関節背屈筋群の筋活動 が促されると報告されている。難易度の低いペダリング運動 を導入し段階的に歩行練習へと繋げていく方法は、歩行獲得 に向けて有効的な介入手段であると考えられる。結果的に本 症例においても予後予測に近似した動作能力獲得に至ったと 考える。今後は他患者に対してもペダリング運動を活用し、 麻痺側運動機能や歩行能力を経時的に追うことで、その有用 性について検討していく必要がある。 第 20 回千葉県理学療法士学会 43 33 裸足で立位保持可能な脳卒中片麻痺患者に対 してスペックス膝継手付長下肢装具を使用し た動的荷重練習を行い、下肢関節可動域が改 善し屋外歩行が自立した症例 34 運動療法の介入が困難であった失語症患者に 対する介入 ○上村朋美1)、加藤宗規2) 1) ○諸永 浩平 、野田 加辺 憲人1) 1) 仁美 、三浦 1) 創 、 1) 東船橋病院 2) 了徳寺大学 1) 医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院 Keyword:長下肢装具、荷重訓練、関節可動域 Keyword:失語症、拒否、入浴 【目的】下肢関節可動域制限のある中等度運動麻痺患者に対 し、右長下肢装具(KAFO)を使用した動的荷重練習とキシ ロカイン注ポリアンプ 1%(キシロカイン)を併用したこと により関節可動域が改善し、屋外フリーハンド歩行が自立し た症例を担当したため報告する。 【対象者】50 歳代男性、脳梗塞による右片麻痺。当院には 33 病日に入院。入院時、運動麻痺は上田式 12 段階片麻痺機 能テストで右下肢Ⅳ-2。下肢関節可動域(ROM)は右膝関節 伸展が-20°、右足関節が背屈-5°。等尺性膝伸展筋力(膝筋力、 右/左)は 5.1kgf/32.4kgf。Berg Balance Scale(BBS)は 31/56 点。フリーハンド裸足歩行は中等度介助を要し、歩行テスト は実施困難であった。Functional Independence Measure (FIM)は合計 69 点。 【説明と同意】当法人の倫理委員会の承認(承認番号:H26-15) を得、症例には研究の趣旨を書面及び口頭にて十分に説明し 同意を得た。 【経過・アプローチ】 第一期(KAFO 使用期) :入院早期より当院備品の KAFO を 使用しての動的荷重練習を中心に実施。KAFO はスペックス 膝継手を使用。約 1 ヶ月で ROM が右膝関節伸展-15°、右足 関節背屈 0°、膝筋力は 19.9kgf/36.1kgf と改善した。BBS は 50/56 点。フリーハンド裸足歩行が見守りとなり、10m 最速 歩行速度(歩行速度)は 60m/sec であった。その後、83 病日 で本人用プラスチック短下肢装具(PAFO)を作製した(タ マラック足継手、踵補高 2cm) 。第二期(キシロカイン併用 期) :90 病日に右下腿三頭筋に対しキシロカインを施行。動 的荷重練習も実施し、ROM が右足関節背屈 5°となり裸足で の踵接地が可能となった。右膝伸展は-10°と改善し、PAFO の踵補高を 1cm に修正した。第三期(屋外歩行導入期) :動 的荷重練習と併行して、応用動作練習や屋外歩行を実施した。 退院時は PAFO を装着して屋内外のフリーハンド歩行が自立 し、自宅退院となった。退院時の右足関節背屈は 10°、膝筋 力は 24.4kgf/44.3kgf、BBS は 52 点、歩行速度は 78m/sec、 FIM は 117 点。 現在、 週 2 回の外来リハビリに通院中である。 【考察】今回裸足で立位保持が可能な中等度麻痺患者に対し て、KAFO を使用し膝関節を段階的に調整しながら動的荷重 練習を実施した。KAFO を使用することで踵を接地した状態 での立位・荷重練習が可能となり、右膝関節伸展・足関節背屈 の ROM が改善したと推測する。また、キシロカインの併用 により一時的に右下腿三頭筋の筋緊張が緩和した状態で動的 荷重練習を実施したことで、ROM が改善したと推測する。 これらのことが、屋内外のフリーハンド歩行自立の要因の一 つと考える。 【目的】理学療法を拒否をしていた失語症患者に対して行っ た入浴を強化刺激とした介入効果を検討すること。 【方法】60 歳台男性。左脳梗塞による右片麻痺,失語症であ った。発症翌日よりリハビリテーション開始となった。7 病 日目より運動療法を開始したが、翌日から拒否となった。そ こで、唯一自ら積極的に離床していた入浴を強化刺激とし、 理学療法参加率向上を目指した。まず、11 病日目より入浴直 後に理学療法を行った。次に、負荷量を上げた状態でも参加 率に変化がみられなくなった、23 病日目から理学療法を行っ た後に、入浴を実施した。そして、理学療法参加に対し、拒 否がみられなくなった 39 病日目より入浴頻度を隔日に減ら していった。 【説明と同意】本研究は、患者と患者のご家族に対し、書面 及び口頭にて説明し同意を得た。 【結果】入浴直後に理学療法を実施するようになった 11 病日 目より運動療法を行うことが可能であった。しかし、重錘の 使用は拒否がみられていた。15 病日目より重錘を使用し運動 療法を実施することが可能となった。23 病日目より理学療法 士が声をかけると、ベッドから自ら起き上がり、重錘を使用 した筋力トレーニング対しても拒否がみられなくなった。そ こで、理学療法実施後に入浴を行った。37 病日目より自らリ ハビリテーション室へ来るようになった。39 病日から入浴日 を隔日へ変更した。その後も、理学療法に対して拒否は見ら れず、自らリハビリテーション室へ来る行動を維持できた。 【考察】失語症により、運動療法の必要性やどの程度筋力低 下・持久力低下しているかを説明するが理解が困難であった。 そのため、運動療法を行う理由も不明であったことに加え、 運動療法を行うことで疲労感を生じるため、嫌悪刺激が出現 していたと考えられた。それに対してレスポンデント行動と してのイライラ等が生じ、さらに対提示されていた理学療法 士の顔や声が条件性嫌悪刺激化して条件づけられたことが無 視や拒否行動として表れたとも考えられた。したがって、運 動療法と離床に対する介入に先駆けてレスポンデント消去が 必要であった。そこで、症例にとって強い強化刺激と考えら れた入浴を用い、レスポンデント消去を図った。結果、短期 間に運動療法まで可能となったことは、入浴を強化刺激に用 いた介入により、理学療法士に対するレスポンデント消去が 得られたえ、その指示に対するコンプライアンスの向上も得 られたと考えられた。 44 第 20 回千葉県理学療法士学会 35 ○傅 左被殻出血後の歩行機能の再獲得に向けた、 注意の向け方に対する工夫の一例 驍1)、須貝 尚樹1) 1) 亀田リハビリテーション病院 36 脳出血によりボディーイメージ低下が疑われ る患者の歩行能力向上へ向けた治療介入 ○石田 竹下 祐大 1)、森田 浩平 1) 悠介 1)、江澤 那貴 1)、 1) 九十九里病院 Keyword:左被殻出血、運動学習、注意障害 Keyword:高次脳機能障害、感覚障害、歩行 【目的】脳卒中に付随する高次脳機能障害の中でも、注意障 害は患者の日常生活やリハビリテーションの阻害因子となる ことが多い。今回、注意障害を呈し、麻痺側下肢の振り出し が困難であった症例を担当した。歩行能力の改善に向け、注 意障害に対するアプローチ方法を検討したため報告する。 【症例紹介】50 歳代男性。保存加療後、発症後 29 日目に当 院転入院。左被殻出血により軽度意識障害、右片麻痺と注意 障害を呈していた。ST 評価にて標準注意検査法の一部 (Tapping Span)の結果により、分配性の注意障害が見られ た。脳卒中機能評価(Stroke Impairment Assessment Set); motor 右下肢 1-1-0。上下肢表在・深部感覚脱失。歩行は金属 支柱付短下肢装具と四点杖を用いて、遊脚期の足部クリアラ ンス低下により転倒予防のため中等度介助が必要。実用的歩 行能力分類(以下 FAC)レベル 1 であった。 【説明と同意】本症例報告の趣旨をご本人に口頭にて説明し、 同意を得た。 【治療介入・方法】注意障害に対して Internal focus(以下 IF)と External focus(以下 EF)に分けて介入した。介入初 期は自身の身体内部に対し注意を向けるよう、鏡を使用して、 「足先から振り出してください」という言語教示とした(IF による介入) 。中間評価(発症 46 日目)後の介入は、 「地面の 直線に沿って歩いてください」と外部環境へ注意を促すよう な言語教示とした(EF による介入) 。評価は FAC、振り出し 時の左右差の指標として非麻痺側遊脚期/麻痺側遊脚期時間 の比率(以下 Swing 率) とした。Swing 率は Dartfish Software (Dartfish Japan Co.,Ltd.)を使用し、デジタルビデオカメ ラで矢状面上の歩行動作を撮影した上で解析を行った。 【結果】中間評価時、金属支柱付き短下肢装具と T 字杖を使 用、軽介助にて歩行可能。FAC レベル 1。Swing 率は 47%。 最終評価時、FAC レベル 2 であった。Swing 率は 76%と左 右の時間差は減少した。 【考察】左脳損傷患者は自分の身体に対する注意を向けやす いと言われている。そこで歩行における足部クリアランス改 善のために、IF を用いて介入した。しかし、FAC や歩容の変 化は見られず、鏡やビデオに映った自身の姿を見ることを望 まなかった。そのため、本症例の訴えを考慮し、治療内容を 変更したところ、反応は良好で、歩行能力の改善を認めた。 また脳卒中患者のパフォーマンス改善には EF が有効とする 報告も散見する。今回は注意機能障害に対して、運動学習を 図る際に治療反応を見ながら、言語教示を変更させる必要が あることを認識した。 【目的】脳出血(右後部頭頂葉皮質下)により左片麻痺を呈し半 側空間無視、半側身体失認、病態失認、左右失認などの高次 脳機能障害、左足底の感覚障害を伴い、ボディーイメージ低 下が疑われた症例に対して足底の感覚入力、体幹の正中軸修 正を行い歩行能力への影響を検討したのでここに報告する。 【方法】1.アライメント修正、2.麻痺側筋出力促通、3.体幹深 層筋活性化、4.抗重力位荷重刺激、5.応用多面的アプローチ、 6.ミラー療法を視覚的・聴覚的に刺激入力・左側の意識づけ を 4 週間行い、アプローチ前後の以下の項目について比較検 討した。動画歩行評価、Timed Up and Go test(TUG)、6 分 間歩行 test、10m 歩行 test、Berg Balance Scale(BBS)、 Functional Reach test(FR)。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り、研究協力者には書面 及び口頭にて説明し同意を得た。 【結果】TUG:右回り 9“71 秒、左回り 11”69 秒、6 分間歩行 test:418m、10m 歩行 test:9“03 秒、BBS:50 点、FR: 22cm。歩行時に左側を物にぶつける動作減少。歩行時の左足 底荷重促通により体幹のスタビリティー向上、左右立脚中期 の安定性向上。体幹右前側方動揺低下。左肩甲帯周囲筋緊張 低下によりアームスィングが出現し歩行の安定性向上に繋が ったと考えられる。 【考察】本症例は脳出血(右後部頭頂葉皮質下)により高次脳機 能障害、左足底の感覚障害を呈し歩行能力低下に至った。症 例に対して上記の治療を反復し行った結果、左側の空間的・ 身体的認知能力の向上。左足底の感覚入力促通にて体幹のス タビリティー向上、正中軸の修正によりボディーイメージ再 獲得、左右立脚期安定向上に繋がったと考えた。上記から右 体幹突進様歩行減少、推進力増加、左上部胸郭筋緊張低下、 左アームスィング出現により運動方向が確定。歩行時左右立 脚期から遊脚期にかけて力学的エネルギー効率の良い歩行が 可能となったと考えられる。後藤淳らは『運動は「感覚入力 と運動記憶の関係」で行われている』と述べている。上記よ り視覚的・聴覚的フィード・フォワード機構を利用し左側中 心に反復して感覚入力行うことで運動記憶を促し、フィー ド・バック機構の活性化を図ることにより症例の機能回復に 繋げる事ができたと考えられる。 第 20 回千葉県理学療法士学会 45 37 体幹機能を中心に介入し、座位バランス・立 ち上がり動作の改善がみられた左視床出血の症例 38 右中脳背側出血による両上下肢の失調症状に 対してトレッドミル歩行を中心に実施し自宅 内歩行自立した症例 ○髙橋愛梨子 1)、井手一茂 1)、長澤康弘 1)、武井健吉 2) 1) 医療法人社団 誠和会 リハビリテーション科 2) 医療法人社団 誠和会 長谷川病院 診療部 ○岡 長谷川病院 診療部 知紀1)、三浦 創1)、加辺憲人1) 1) 船橋市立リハビリテーション病院 Keyword:体幹機能、座位バランス、立ち上がり Keyword:運動失調・トレッドミル・中脳 【はじめに】今回、体幹機能を中心に介入し、座位バランス・ 立ち上がり動作に改善がみられた左視床出血の症例について 以下に報告する。 【症例紹介】70 代女性。診断名は左視床出血。発症後 2 週間、 他院にて保存的加療後、当院に転院。 【説明と同意】症例報告作成に当たり本人、家族に趣旨を説 明し同意を得た。 【理学療法経過】初期評価時、Brunnstrom recovery stage(以 下 Br.stage)は右上肢Ⅲ、手指Ⅳ、下肢Ⅳ。表在感覚は軽度鈍 麻、深部感覚は重度鈍麻。座位は頚部左側屈、肩甲骨右拳上、 脊柱後弯・右凸側彎、骨盤後傾(右>左)・右後方回旋、臀部接 地面(右>左)にて右臀部優位の荷重となり、座位にて転倒のリ スクがあった。また、右腹斜筋群、腰背筋群筋緊張低下、左 は亢進している状態であった。座位での側方リーチでは腹斜 筋群、腰背筋群の協調的な活動の低下に伴い、姿勢保持が困 難であった。立ち上がり動作では脊柱後弯・骨盤後傾の座位 姿勢から体幹・骨盤が前傾せず、上肢で平行棒を把持し、引 っ張るようにして立ち上がり動作を行っていた。その際に体 幹・下肢に共同運動パターンの出現が確認された為、軽介助 となっていた。介入として①腹斜筋群ストレッチ、②座位で の側方リーチ、③坐骨支持での直立座位、④立ち上がり練習 を重点的に実施した。最終評価(発症後約 16 週)では Br.stage は上肢Ⅴ、手指Ⅳ、下肢Ⅴ、表在感覚は軽度鈍麻、深部感覚 は中等度鈍麻。座位での脊柱後弯・骨盤後傾が改善し、坐骨 支持での直立座位が可能となった。座位での側方リーチにて 腹斜筋群の収縮を促通したことにより、右後方への転倒リス クは消失し、座位保持自立となった。立ち上がり動作は体幹 直立位での骨盤前傾が可能となり、共同運動パターンの出現 の軽減がみられ、支持物無しで見守りとなった。 【考察】体幹筋群は動作時に適切に筋緊張を変化させること が重要であり、その機能不全により四肢の筋緊張が亢進し、 各動作に影響を及ぼす。本症例も、脊柱後弯・骨盤後傾の座 位姿勢をとっており、腹斜筋群、腰背筋群の協調的な活動が みられず、共同運動パターンが出現することで各動作が阻害 されていたと考える。体幹機能中心に介入し、腹斜筋群の筋 活動を促通した結果、体幹筋群の協調的な活動が獲得され、 共同運動パターンの出現が軽減したことで、座位バランスの 向上や立ち上がり動作の改善を認めたと考える。 【はじめに】 古賀らは中脳出血の場合、中脳下部に留まり第四脳室への穿 破がなければ機能予後良好であると報告している。また、桑 原らも片側被蓋か被蓋中央部の血腫 20mm 以下は機能予後良 好と報告している。しかし、本稿は機能予後良好との報告は あるが歩行自立度との報告はなく、中脳出血と歩行能力との 関係性は不明な点が多い。今回、右中脳背側出血を呈し、両 上下肢の失調症状により歩行能力が低下し介助を要していた が歩行器での屋内自立となり自宅復帰となった。今回の症例 を通し若干の知見を得たので報告する。 【症例紹介】 病前ADL自立の50歳代、男性。右中脳背側出血、脳室穿破は なく、血腫量は約15mmであった。左不全片麻痺、失調、複 視、構音障害を認め、保存的治療実施し第28病日に当院に転 院した。第29病日の初期評価では、深部感覚は軽度鈍麻であ り、踵膝試験では右下肢目標到達困難であり左下肢は目標到 達するも運動分解を認め、躯幹協調検査はStageⅡ。深部感覚 は軽度鈍麻であった。その他運動麻痺、筋力、可動域制限は 著明な問題は認めず起居自立であった。BBS36点、TUG(歩 行器)26.3秒、FRT22cm、片脚立位は左右1秒、歩行は支持 物なしでは困難。 【説明と同意】 今回の発表に際し、対象者に目的・方法・自己決定権の尊重・ プライバシーの保護について十分に説明を行い、署名にて同 意を得た。また当院倫理委員会より承認を得た。 【治療内容及び経過】 トレッドミル歩行中心に実施。方法として両上肢支持、段階 的に速度・傾斜を上げ実施。第 161 病日の最終評価では踵膝 試験では両下肢ともに目標到達するも運動分解を認め深部感 覚は軽度鈍麻と変化はなかった。 バランス評価は BBS43 点、 TUG(フリーハンド)23.7 秒、FRT28cm、片脚立位左右 3 秒であった。歩行はキャスター付歩行器で自立しフリーハン ドでは見守りで可能となった。家庭訪問を実施し、環境設定 および動作の確認を行なった。サービスの利用は福祉機器の レンタル・訪問リハビリを提案した。 【考察】 今回、トレッドミル歩行練習中心に行ったことで踵膝試験よ り下肢協調性が改善。このことから歩行能力向上しに改善を 認め自宅内自立に至ったと考える。 46 第 20 回千葉県理学療法士学会 39 神経サルコイドーシス後対麻痺を呈した患者 への HAL 使用の即時効果 -3 次元動作解析装置を用いて- 40 ○片山 雄一1)、太田 村山 尊司 1) ○勝山 山下 直樹 1)、北郷 仁彦 1)、 1) 千葉県千葉リハビリテーションセンター 成人理学療法室 誤嚥性肺炎を予防するためのアプローチ 〜吸引回数に着目して〜 浩吏1)、永井 剛司 MD2) 絢也1)、碧井 猛 MD1)、 1) 介護老人保健施設おゆみの、2)おゆみの中央病院 Keyword:ロボットスーツ HAL、対麻痺、即時効果 Keyword:肺炎予防、ポジショニング、吸引回数 【目的】ロボットスーツ HAL 福祉用(以下 HAL)は下肢に取 り付ける動作支援機器である。近年使用報告が増加しており、 脳血管・脊髄損傷患者に対する歩行能力向上効果が示唆され ている。だが HAL 使用直後の歩行の即時変化を質的に検証 した報告は少ない。そこで本研究は HAL 使用が歩行に与え る即時効果の質的検証を目的とした。 【方法】対象は 20 代男性、神経サルコイドーシス(Th11 レベ ル)後の対麻痺 1 症例。介入時 186 病日。下肢機能(R/L)は、 MMT4/2 レベル、両側伸展痙性あり、両側表在覚軽度・深部 覚重度鈍麻、Modified Ashworsh Scale 膝 1/1+・足関節 3/2 であった。歩行は両ロフストランド杖と両 SLB にて遠位監視 であったが左下肢の引きずりが散見された。介入では、HAL 歩行訓練にて下肢の拳上・歩幅の拡大を促し、訓練直前後に 歩行観察と三次元動作解析を行った。1 歩行周期を 1 サンプ ルとし、左重複歩長、左股・膝関節の遊脚期最大屈曲角度、 左骨盤の最大拳上角度と前方回旋角度の平均値を算出した。 解析中の歩行には両ロフストランド杖と両下肢 SLB を用い た。 【説明と同意】介入前に患者は主治医より説明を受け、書面 にて同意を得た。 【結果】HAL 直後に歩幅の延長と左下肢クリアランスの向上 が観察された。解析の結果増加した項目は、左重複歩長 (70.7cm→79.0cm)、左遊脚期股関節最大屈曲角度 (26.1°→34.7°)、左骨盤前方回旋角度(6.1°→7.1°)であった。低 下した項目は、左骨盤最大拳上角度(6.6°→6.0°)、左遊脚期膝 関節最大屈曲角度(37.5°→37.3°)であった。 【考察】結果から、HAL 訓練直後に歩行が質的に変化してい ることが観察された。左重複歩長と左遊脚期股関節屈曲角度 の増加は、HAL 装着下で下肢拳上と歩幅拡大での歩行を反復 した結果、HAL を外した後も学習効果として残存したのでは ないかと考える。HAL には課題特異的に運動を変容する即時 効果がある可能性が示唆された。 【目的】肺炎は我が国で全死亡原因の第 3 位であり、中でも 経管栄養者の誤嚥性肺炎の発症が高いと言われる。その原因 には咽頭貯留物が繰り返し気管に入る不顕性誤嚥がある。今 回は経管栄養者のベッド上ポジショニングを設定し、咽頭貯 留物の吸引回数を減らせるか検討した。 【方法】対象は当施設で吸引対象となる終日臥床対応の高齢 者 3 名。ポジショニングは「ベッドアップ 30°+頭頸部屈曲 +肩甲帯前方突出+足底接地」とし、1 週間観察した。なお、 体交時に同ポジションでの半側臥位をとることは可とした。 ①1 日の吸引回数、②平均体温、③SpO2、④開口距離(安静 時の上下唇間の距離) 、⑤安静吸気時の胸郭周径(左右の乳頭 を結んだ線)⑥触診による頸部周囲筋の筋緊張検査を介入前 1 週間と介入時 1 週間で比較した。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、対象の御家族様に 本研究の趣旨を十分に説明し、書面で同意を得た。 【結果】個人差が現れたのは①、④、⑤であった。 ①は、A 様:2.1±0.6 回/日→1.3±1.3 回/日。 B 様 3.9±1.5 回/日→2.3±1.2 回/日。C 様: 4.9±2.2 回/日→4.9±2.1 回/日。 ④は、A 様:0.7 ㎝→0.7 ㎝。B 様:0.8 ㎝→0.4 ㎝。C 様:0.5 ㎝→0.0 ㎝。 ⑤は、A 様:77.2 ㎝→79.4 ㎝。 B 様 92.2 ㎝→92.5 ㎝。C 様:93.5 ㎝→93.4 ㎝。 3 名共②、③は介入前後で著明な変化はなかった。 ②は、A 様:36.9℃→36.8℃。B 様:36.8℃→36.9℃。C 様:36.7℃→36.8℃。 ③は、A 様 95.4%→95.5%。B 様:96.9%→97.1%。C 様:96.2%→96.1%。 ⑥は、介入後で A 様、B 様の胸鎖乳突筋の筋緊張低下がみ られたが、C 様は著変がなかった。他職種から介入後は痰絡 みによる苦痛表情がなく、声掛けへの反応も良好だと聴取さ れた。 【考察】A 様、B 様はポジショニングにより吸引回数が減っ た。これは介入後頭頸部屈曲位をとれたためと考える。一方 C 様は頭頸部屈曲位がとりにくく、吸引回数が減らなかった。 3 名で共通した頭頸部伸展位に関して、褥瘡予防のエアマッ トにより全身が不安定になること、枕の位置によって頸部が 伸展位になり易い環境だった。この肢位では咽頭と気管の角 度がつかず、気管に貯留物が流れ易いと考える。吸引回数が 減った A 様、B 様は安静吸気時の胸郭周径が拡大したことか ら気管への空気の流入がし易くなったと考えられる。 吸引回数が減った方がいることでポジショニングの重要性 が各職種に広まりつつある。今後はセラピストの伝達方法を 見直し、確実なポジショニング方法を共有していきたい。 第 20 回千葉県理学療法士学会 47 41 長期人工呼吸器管理下のⅡ型呼吸不全患者に 対し、栄養状態改善がウィーニングに功を奏 した症例 42 千葉県内における小児に対する呼吸リハビリ テーションの現状 ○善田督史 1)、馬島徹 2)、清藤晃司 2)、武原格 3)、川田 寛子 1)、長良梨沙 1)、丸岡弘 4) ○高木 秀明1)、古田 我妻 裕美1) 1) 船橋二和病院 1) 国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院リハビリテー ション室 2) 国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院呼吸器内科 3) 国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院リハビリテー ション科 4) 埼玉県立大学保健医療福祉学部 KeyWords:Ⅱ型呼吸不全・ウィーニング・栄養評価(CONUT 法) 【目的】COPD 患者は呼吸筋に多大なエネルギーを要し、人 工呼吸器の侵襲で更に代謝が進行する。栄養評価法として CONUT 法があり、蛋白代謝、脂質代謝、免疫能の生体指標 から多面的に評価できる。今回、長期人工呼吸器管理患者の ウィーニングに、CONUT 法を用い検討した。 【方法】症例は、原疾患 COPD、69 歳、女性、身長 162 cm、 体重 48.9 Kg、BMI18.6、喫煙指数 800、ADL や IADL は自 立していた。2013 年 11 月に感冒から急性増悪・CO2 貯留の ため他院へ入院し人工呼吸器管理となる。11 月~翌年 6 月ま でウィーニングを試みるが、肺炎を合併し中止。2014 年 7 月 に再度ウィーニング目的で当院へ入院となる。第 1 病日より 理学療法開始、ADL は FIM 運動項目 13/91 点と全介助であ った。血液データは ALB3.4 g/dl、T-CHO170 mg/dl、 LYMPHO562 ml、CONUT score 5 点であった。人工呼吸器 の設定は SIMV、FiO240 %、血液ガスは PaO291 Torr、 PaCO242.5 Torr であり、徐々に FiO225 %まで下げていき第 14 病日にウィーニングを開始した。しかし PaCO255.7 Torr、 呼吸苦強いためウィーニング中止となった。第 47 病日より PSV に変更、第 54 病日 CONUT score 3 点と栄養状態改善に 伴い坐位練習実施、155 病日より歩行練習可能となった。第 245 病日胃瘻造設により CONUT score 2 点となった。 第 307 病日より再度ウィーニング開始、トラキマスク 2.0 ℓ/分可能と なった。第 413 病日には 8 時間 O2 off 可能となり自宅退院と なった。 【説明と同意】当院倫理審査で承認され、症例に発表の趣旨 を説明し同意を得た。 【結果】退院時の血液データは ALB3.7 g/dl、T-CHO197 mg/dl、LYMPHO943 ml、CONUT score 2 点、呼吸機能は O2 off にて PaO277.5 Torr、PaCO253.5 Torr、10m 歩行後 でも SpO290 %維持可能となった。ADL は FIM 運動項目で 51/91 点となった。 【考察】栄養状態は CO2 産生と関連し、エネルギー・脂肪・ 蛋白摂取量が重要とされる。そのため、今回 CONUT 法によ る栄養評価によって、ウィーニングのタイミング把握できた。 48 第 20 回千葉県理学療法士学会 哲朗1)、貫井 幸恵1)、 リハビリテーション科 Keyword:小児,呼吸理学療法,アンケート調査 【はじめに】 当院では,小児期への呼吸理学療法(以下:RPT)や,重症 心身障害児・者への非侵襲的換気療法(以下:NPPV)在宅 導入など,理学療法士が呼吸分野に関わる場面は多い.しか し,重症心身障害児を含む小児への RPT に関する報告は少な く,介入方法も様々である. 小児への RPT の効果や方法を追求していくために,複数施設 間での情報共有や連携は重要になる.そこで今回、県内で実 施されている小児に対する RPT の現状を把握することを目 的に,アンケート調査を行った. 【方法】 県内で小児科病棟とリハビリテーション科(以下:リハ科) を有する 30 施設を対象にアンケート調査を実施した.アンケ ートの内容としては. 「呼吸理学療法の実施」や「小児(0~ 12 歳)に対する呼吸理学療法の実施」 , 「重症心身障害児に対 する呼吸理学療法」 , 「NPPV の使用や理学療法士の関わり」 など計 9 項目とした. 【説明と同意】 アンケート協力施設に対して,アンケート内容の使用につい て文書にて説明をして同意を得た. 【結果】 30 施設中 20 施設(66.7%)より返答を得られた.その中で、 理学療法士不在の 1 施設を除いた 19 施設のアンケート内容 を集計した.全施設にて RPT を実施しており,年間数件の施 設から約 1000 件実施する施設まであった. 小児に対する RPT は 12 施設(63.0%)で実施され,年間実施数は数件~約 300 件であった.小児への RPT の内容は,姿勢管理や体位ドレナ ージ,排痰手技などの徒手的な介入の他,8 施設で患児・家 族に対して自主トレーニング指導を実施していた.重症心身 障害児を対象とした施設は 10 施設(53.0%)であった.また, NPPV を併用している患児に RPT を実施している施設は 7 施設であり,急性期から慢性期,重症心身障害,神経筋疾患, 心疾患など多岐に使用されていた.その中でも,重症心身障 害児・者へ在宅での NPPV 導入を実施している施設は 7 施設 で,内 5 施設で理学療法士が関わっていた. 【考察】 小児科病棟とリハ科を有する施設の約 6 割で RPT が実施され, その対象や内容は施設によって様々であった.エビデンスが 確立されていない中,小児への RPT を実施していくために, 施設内で RPT の効果を追求することは重要である.さらに, 各施設での RPT の実施状況を共有し,連携していくことで, より効果的な小児期への RPT を確立していきたい. 43 生活環境の整備から屋外歩行が可能となった 一例 ~福祉用具専門相談員との関わりを通して ~ 44 当院における家屋評価の追跡調査 ~退院後の家屋状況と ADL~ ○大曽根厚人 ○橋本香奈江1)、髙木秀明 1) セコメディック病院 Keyword:福祉用具専門相談員 連携 1) 千葉県勤労者医療協会 ション科 予後予測 【目的】退院直後の在宅生活者において、福祉用具専門相談 員(以下、福祉用具員)と連携をとり環境整備を行った事で、 生活範囲の拡大に至った事例を報告する。 【事例紹介】90 歳代、男性。独居。要介護2。診断名は腰部 脊柱管狭窄症。日常生活自立度は寝たきり度 A2、認知症自 立。平成 25 年 10 月入院し、1 ヶ月程度で退院。病院スタッ フの申し送りで①腰痛はなく、退院前 Barthel Index(以下 BI)90 点、概ね一人で生活できる②本人・家族の希望より、 お風呂に一人で入りたい、外を歩きたいと希望あり。訪問リ ハビリテーション(以下、訪問リハ)は入浴動作や屋外歩行 の獲得を目的に介入する。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り、本人家族には説明を 行い、同意を得た。 【経過・結果】退院から 1 週間後に訪問リハ開始。初回訪問時、 寝たきりとなっており腰痛を再発していた。動作の不安定さ や転倒恐怖心から寝たきりになったと本人・家族より聴取し た。そこで、目標設定やリハプログラムの再検討を行い、訓 練を開始した。訓練経過と共に腰痛軽減し、動作意欲や動作 能力の向上が見られた。本人から入浴や外出の訓練を行いた いという希望があったため、福祉用具員と共に手すりの設置 場所を検討した。その際、福祉用具員談から提案された設置 場所は、浴室、玄関、門周りであり、過改修が懸念された。 そこで訪問リハから現状の身体能力や今後の予後予測等を福 祉用具員に説明し、検討・実践を繰り返した。その結果、手す りの設置場所を浴室と門周りのみとし、最小限の改修に抑え た。手すりを設置後、屋内生活は自立し外出機会も増えた。 現在は要介護 1、BI95 点、日常生活自立度は寝たきり度 A1、 認知症自立となっている。 【考察】金らは、住宅改修における職種間の連携に関する調 査で作業療法士や理学療法士の関与が少ないと述べている。 しかし生活環境の整備には、訪問リハが他職種へ積極的に介 入することが求められるのではないだろうか。何故なら、訪 問リハは専門職として生活機能や個人・環境因子を含めた利 用者の生活像を捉えることができるからである。それには、 今後の生活の予測を他者へ分かりやすく、具体的に伝えるこ とが重要である。本事例は、生活環境整備をきっかけに他職 種が連携し、動作能力の拡大や安全性にとどまらない「自立 (律) 」を支援した取り組みを実践できたと考えられる。 船橋二和病院 リハビリテー Keyword:家屋評価、追跡調査、予後予測 【目的】当院では年間約 100 件の退院前家屋評価(Home Evaluation:以下 HE)を実施している。しかし HE での提案 が、退院後にどの程度活かされているかを振り返る機会はほ とんどない。今回、HE 時の提案内容が生活に活用されてい るか追跡調査を行い、日常生活動作(以下 ADL)の変化や疾患 との関連や傾向について検討したので以下に報告する。 【方法】対象は 2014 年 2 月~7 月に当院に入院し HE を実施 した患者 46 名の内、住環境整備に関する提案を行い、調査の 協力が得られた 40 名。HE 報告書とカルテによるデータ収集、 電話または訪問による聞き取り調査を実施した。調査項目は HE 時の提案と実際との相違点の有無・理由、退院時と調査 時の Barthel Index(以下 BI)などである。 【説明と同意】本調査の趣旨を調査協力者に口頭にて説明し 同意を得た。 【結果】退院~調査の日数は平均 92.7±36.5 日。平均年齢は 79.5±10.8 歳。疾患は大腿骨骨折 32.5%、脳卒中 25.0%、腰 椎圧迫骨折 20.0%、その他 22.5%。BI 平均値は退院時 72.3±19.8 点、調査時 81.3±21.9 点。 提案と実際の相違では、対象の 75%で相違があり、提案箇所 では 130 箇所中 36%で相違が見られた。相違の有無について は、整形外科疾患で相違が多く脳卒中や退院時 BI が高い症例 で相違が少なかった。年齢、退院~調査の期間、同居人の有 無、外出頻度では相違に差は見られなかった。また、相違の あった群の BI 変化量は平均 11.8 点、相違無し群の BI 変化量 は 6.0 点であった。 相違の内容は A 群:導入をしていない(20 名、30 か所)、B 群: 導入したが使用していない(12 名、17 か所)、C 群:提案以外 にも導入した(14 名、21 か所)。相違が生じた場所は浴室 (32.4%)、トイレ(14.7%)、玄関(13.2%)の順で多かった。理由 は「無くてもできる」 、 「必要性を感じていない」 、 「動く範囲 が拡がった」が多かった。また、心不全や進行性疾患を有す る対象は ADL 低下を理由とする相違が多かった。 【考察】多くの対象で、HE 時の提案内容と実際に相違があ った。相違ありの群では BI 変化量が大きく自立度向上者が多 いことから、ADL 向上や活動範囲拡大により福祉用具が不要 になったと考える。相違なし群では退院時 BI が高く脳卒中が 多い傾向があり、ADL がプラトーに達してから退院したので はないかと考える。退院後に ADL が変化した対象が多かっ たことから、ADL の予後予測が重要である。今後は、退院後 ADL の変化についての予後予測方法の追求や、HE 時の提案 で完結するのではなく在宅からのフィードバックや退院後の 振り返りの機会を増やしていきたい。 第 20 回千葉県理学療法士学会 49 45 当院リハビリテーション部における退院支援 の取り組み実施状況についての調査報告 ~介護保険利用者の分析~ 1) ○柴田 大輔 ,宮原 村上 峰子2) 1) 小百合 ,木本 1) 龍 , 46 立位保持時間延長に向けた骨盤前後傾運動の 効果について~排泄動作獲得に向けて~ ○尾身 香織1)、野間 加辺 憲人 1) 貴雄 1)、三浦 創 1) 、 1) 医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院 1) 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部 2) 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション科 Keyword:急性期病院,退院支援,リハビリテーション Keyword:立位保持時間、骨盤前後傾、体幹筋 【はじめに,目的】当院は市原地域を 2 次医療圏に持つ急性 期の大学病院である.市原市は高齢化率が平成 12 年度は 12.6%であったが,平成 25 年度は 23.1%と急速に高齢化が進 んでいる地域である.また,一世帯あたりの人員が昭和 35 年は 5.4 人であったが,平成 25 年度は 2.3 人であり,家族の 介護力も低下していると考えられる.これらの背景から,地 域資源を生かした地域医療の構築が急務となり,当院におい ては退院支援の重要性が年々高まっている.本研究の目的は, 当院リハビリテーション部が実施している退院支援について 状況を調査し,今後の課題について検討することである. 【方法】2013 年 10 月から 2014 年 3 月までの 6 ヶ月間に当 院から自宅退院し,リハ介入していた患者 657 名のうち,退 院後の介護保険サービスの利用を検討した患者 89 名を対象 とした.平均年齢 77.9±8.8 歳,男性 42 名,女性 47 名であっ た.調査項目は,入院期間,リハ介入から退院までの期間, 入院時に要介護・要支援の認定を受けている人の割合,退院 前訪問指導実施率,退院支援に関してリハ担当者と介護支援 専門員との情報交換実施率,多職種カンファレンスの実施率 である.さらに,当院の外来リハ継続率,6 週間以内に予定 していない再入院率についても調査した.いずれの項目も診 療録から後方視的に調査した. 【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,全て匿名化したデー タを用いることで対象者へ影響がないように配慮した. 【結果】対象者 89 名の入院期間は平均 26±21 日であり,リ ハ介入からは 20±17 日であった.入院時に要介護・要支援の 認定を受けている人の割合は 64%,退院前訪問指導実施率は 2%,リハ担当者と介護支援専門員との情報交換実施率は 26%, 多職種カンファレンスの実施率は 18%であった.また,当院 の外来リハ継続率は 25%.再入院率は 18%であった. 【考察】本研究の結果より,リハ介入から 2~3 週後には自宅 退院しているが,36%の患者は介護保険未認定であり,より 早期に調整を開始する必要があると考えられる.先行研究に おける退院前訪問指導実施率は回復期リハ病院 49%,療養型 病院 34%,急性期病院 16%であったが,当院ではマンパワー 不足やシステムの問題により 2%と非常に低い値となった.多 職種カンファレンスの実施率や介護支援専門員との情報交換 実施率,外来リハ継続率も低いことから退院後の生活が設定 不足・未確認となっており,再入院率の高さにつながってい る可能性も示唆される. 【はじめに】排泄動作獲得に向け、下衣更衣時の立位保持時 間延長に対するプログラムに難渋した症例であった。下肢筋 力強化に加えて体幹筋に対しプログラムを追加した結果、能 力に向上を認めた為、プログラム内容の意図とその効果につ いて報告する。 【症例紹介】80 歳代後半、女性。転倒により左大腿骨頚部骨 折を受傷し骨接合術を施行。既往歴に腰椎圧迫骨折・頚髄症 があり、ADL 全般軽介助~中等度介助、排泄動作は下衣更衣 時に 2 人介助を要した。入院時、握力(右/左;㎏)3.0/10.0、膝 伸展筋力(右/左;kgf)5.5/5.6 であった。 【説明と同意】症例に対し目的・自己決定権の尊重・プライ バシーの保護について説明を行い、署名にて同意を得た。ま た当院倫理委員会の承認を得た(承認番号 H26-13)。 【治療内容・経過】入院時は下肢筋力強化や起立、免荷歩行 器を使用した歩行訓練を中心に介入した。1 ヶ月後には握力 3.0/10.6、膝伸展筋力 8.8/9.5 となり、ADL は移乗動作見守り、 排泄動作軽介助となった。課題は立位保持であり、後方重心 となり易く代償として上肢の過剰努力・過度な股関節屈曲・ 膝関節過伸展を特徴とした。排泄動作に必要な片側上肢支持 での立位保持は最大 6.8 秒であった。体幹・下肢の支持性を 課題として挙げ、1.5 ヶ月経過時より体幹筋に対し骨盤前後傾 運動の訓練を追加した。訓練実施前後での立位保持は、実施 後がより延長している傾向であり、即時効果が得られている ことを確認した。1 ヶ月間継続し、握力 5.0/10.1、膝伸展筋 力 10.1/8.5 と筋力に著しい向上はなかった。 しかし最大 105.5 秒の片側上肢支持での立位保持が可能となり、過度な股関節 屈曲が改善、膝関節軽度屈曲位となった。ADL においては排 泄動作時の下衣更衣は自立となった。 【考察】受傷した左下肢の筋力低下が ADL の自立度を下げ る因子であったが、加えて加齢や既往歴である腰椎圧迫骨折 の影響もあり、腹部深層筋の活動性低下により腰椎の安定性 が低下していたと考える。大田尾らは脳卒中患者に対し端座 位での骨盤前傾を促すことで基本動作が再獲得される可能性 を報告している。また、三浦らは座位での骨盤前傾について 腰椎多裂筋・腹斜筋の活動の高さを示している。今回、体幹 に課題を有する整形外科疾患症例に対し、座位での骨盤前後 傾運動を追加した結果、腹斜筋と連結する腹横筋、腰椎を連 結する腰部多裂筋の深層筋の働きにより体幹の安定性が向上 されたと考える。その結果立位保持が延長し NEED である排 泄動作自立が獲得されたと考える。 50 第 20 回千葉県理学療法士学会 47 腰部疾患患者における腰部症状と心理的因子 の関連性-JOABPEQ、BS-POP を用いて- ○網代 広宣1)、江連 平尾 利行1) 智史2)、石垣 直輝1) 1) 船橋整形外科病院 理学診療部 2) 船橋整形外科病院 スポーツリハビリテーション部 Keyword:BS-POP JOABPEQ 48 異なる脚組み座位姿勢が背筋群に与える影響 -筋活動の観点から- 病期 【目的】近年、腰部症状をきたす疾患は、発症期間が長期に なると抑うつなどの精神医学的問題が身体、機能面に影響し、 病態を複雑にするとされている。現在、BS-POP を用い術後 の腰部疾患患者の精神医学的問題の評価をしている報告は散 見されるが、保存症例にて BS-POP を用い調査した報告は少 なく、病期別に精神医学的問題が身体面、機能面に及ぼす影 響を調査した報告は少ない。本研究の目的は、腰部症状を呈 する保存症例にて病期(急性期、亜急性期、慢性期)を分け た際、症例の精神医学的問題が身体面、機能面に及ぼす影響 を明らかにすることである。 【対象及び方法】対象は 2014 年 8 月から 2014 年 10 月まで に当院外来にてリハビリ適応となった腰部疾患患者 33 名(男 性 18 名、女性 15 名、平均年齢 53.0±23.0 歳)とした。方法 は、初回リハビリ時に JOABPEQ 及び BS‐POP を用いて調 査を行った。更に、3 週未満を急性期、3~13 週未満を亜急 性期、13 週以上を慢性期と発症経過期間で病期分類をした。 検討項目は、BS-POP 陽性と陰性の割合、各病期における BS-POP 陽性と陰性の割合及び、BS-POP 値と JOABPEQ の 項目との関連性を Spearman の順位相関係数を用い、有意水 準 5%として検討した。 【説明と同意】本研究は船橋整形外科病院倫理委員会の承認 を得、研究協力者には書面及び口頭にて説明し同意を得た。 【結果】BS-POP より精神医学的問題があると予測される症 例は 33 例中陽性群 24 名(73%) 、陰性群 9 名(27%)であ った。病期別にて BS-POP 陽性とされた症例は、急性期 10 名中 2 名(20%) 、亜急性期 12 名中 11 名(92%) 、慢性期 11 名中 11 名(100%) であった。更に、BS-POP と JOABPEQ の障害項目の関連性は亜急性期にて腰椎関連障害(R=0.62)、 社会生活障害(R=0.52)、下肢痛(R=0.46)、腰痛(R=0.45) に正の相関関係を認め、慢性期にて腰椎関連障害(R=0.62)、 歩行機能障害(R=0.54) 、腰痛(R=0.48) 、下肢痛(R=0.48) 、 しびれ(R=0.62)に正の相関関係が認めた。 【考察】BS-POP より精神医学的問題があると予測される症 例は全体の 73%と非常に多く、特に亜急性期(92%) 、慢性 期(100%)において高率であった。BS-POP 陽性群の亜急 性期にて腰椎関連障害、社会生活障害、腰痛、下肢痛に関連 性が認められ、慢性期にて腰椎関連障害、歩行機能障害、腰 痛、下肢痛、しびれに関連性があった。本研究より、亜急性 期、慢性期の腰部疾患保存症例の治療には身体面、機能面の みならず、心理、社会面も考慮した理学療法アプローチが必 要であると考えられた。 ○松田 史 1) 航平1)、江連 智史2)、宮坂 祐樹 1)、大石 敦 1) 船橋整形外科病院理学診療部 2) 船橋整形外科病院スポーツリハビリテーション部 Keyword:脚組み座位、多裂筋、表面筋電図 【目的】端座位姿勢と脚組み座位姿勢は,日常的に行われてい る姿勢である.脚組み座位における腹筋群の筋活動を検討し た報告は散見されるが,脚組み座位が背筋群の筋活動に与え る影響を検討した報告は殆どない.本研究の目的は,端座位姿 勢と 2 種類の脚組み座位姿勢における体幹筋の筋活動を比較 検討することである. 【方法】対象は腰部に既往のない健常男性 10 名(年齢 24.2±3.0 歳,身長 173.2±7.4 ㎝,体重 67.1±11.4 ㎏)とした.ノラ クソン社製表面筋電図 Myosystem1400 を用い,導出筋は右腰 部多裂筋,右腸肋筋,右腹直筋,右外腹斜筋とした.測定肢位は, 端座位(股・膝関節 90 度屈曲位,脊柱中間位),脚組み座位 A(脊 柱中間位、右側足部外側を左側膝関節上に乗せた肢位,以下 A 群),脚組み座位 B(脊柱中間位,右側大腿下面を左側大腿上に乗 せた肢位,以下 B 群)の 3 姿勢とした.各姿勢での筋活動を 10 秒間記録,最大随意努力にて筋活動を正規化し,%MVC を算出 した.統計学的処理は,一元配置分析と Tukey の多重比較法を 用い,各導出筋を 3 群間で比較,有意水準は 5%とした. 【説明と同意】当院倫理委員会承認の下,被験者には書面及び 口頭にて説明し同意を得た. 【結果】各筋群の平均%MVC は,右多裂筋は端座位 11.5±4.2%,A 群 5.6±1.5%,B 群 5.9±1.6%と,端座位が有意に 高値を示し,A 群と B 群間に有意差は認めなかった.右腸肋筋 は端座位 3.8±2.3%,A 群 15.1±3.0%,B 群 14.6±2.8%と,端座位 が有意に低値を示し,A 群と B 群間に有意差は認めなかった. 右腹直筋は端座位,A 群,B 群の 3 群間に有意差は認めなかった. 右外腹斜筋においては端座位が A 群,B 群よりも優位に高値を 示し,A 群と B 群間に有意差は認めなかった. 【考察】腹部筋活動は,先行研究と同様の結果を示した.背筋群 の筋活動において,端座位姿勢は 2 種類の脚組み座位姿勢より も,多裂筋の筋活動が高値を示し,腸肋筋の筋活動は低値を示 した.一方,A 群,B 群の 2 群間に有意差は認めず,股関節肢位の 違いは,背筋群へ影響を及ぼさない事が示唆された.高橋らは 多裂筋の機能低下は脊柱起立筋での代償により,筋疲労や筋 スパズムを発生させ,腰痛の一因になり得ると報告しており, 脚組み座位姿勢は端座位姿勢よりも腰痛を引き起こす可能性 が高まると考えられた. 第 20 回千葉県理学療法士学会 51 49 『脊椎機能が移動能力に及ぼす影響(第一報)』 ~2step test と脊椎機能の関係性~ 50 超音波診断装置を使用した定量的腰部可動性 評価方法と Modified Schober test との関連 ○鈴木 大1)、川口 寺門 淳 2) ○兎澤 良輔1)2)3)、加藤 藤縄 理3) 桂蔵 1)、橋川 拓史 1)、 宗規1)、隈元 庸夫3)、 1) 北千葉整形外科 脊椎・スポーツ医科学研究所(RPG) 2) 北千葉整形外科 脊椎・スポーツ医科学研究所(MD/PhD) 1) 了德寺大学 2) 葛西整形外科内科 3) 埼玉県立大学大学院 Keyword:高齢患者、2step test、腰椎伸展機能 Keyword:超音波診断装置、腰部可動性評価、Modified Schober test 【目的】我々は本学会においてロコモティブシンドローム患 者の脊椎疾患の有病率が他の疾患と比べ高い傾向にあると報 告した。これは高齢患者が有している脊椎疾患が移動能力に 影響を及ぼしている結果であると考える。近年、移動能力を 推測する運動機能検査として 2step test(以下 2ST)が広く用 いられている。2ST の構成要素には下肢筋力やバランスの他 に脊椎機能も大きく関与していると考えられる。そこで本研 究は高齢患者の脊椎機能と 2ST との関係性に着目し、高齢患 者の移動能力の維持および改善の一助とすることを目的とし た。 【方法】対象者は当院を受診する 60 歳以上の外来患者 96 名 (男性 26 名、 女性 70 名、 平均年齢 71.3±6.2 歳)を対象とした。 対象者に 2ST、立ち上がりテスト、Functional Reach Test(以 下 FR)、座位体幹回旋可動域(以下 TR)、円背指数、Prone Push Test(以下 PPT)を測定した。統計学的分析は Spearman の順 位相関係数を用いて検討し、有意水準を 1%未満とした。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき対象者に同意を得た 上で行った。 【結果】2ST と立ちあがりテスト(r=0.38)、FR(r=0.43)との 間に有意な正の相関を認めた(P<0.01)。脊椎機能に関しては、 2ST と TR(r=0.13)、円背指数(r=-0.03)には相関を認めな かったが、2ST と PPT(r=0.34) との間に有意な正の相関を 認めた(P<0.01)。 【考察】今回、立ち上がりテストと FR は先行研究と同様に 2ST との間に相関を認めた。よってこれらが高値である者は、 下肢筋力や前方への動的バランスに優れ、2ST において推進 力や体幹姿勢を維持する能力が高いと考える。また 2ST と円 背指数、TR との間に相関はなく、2ST と PPT との間に相関 を認めた。円背指数は高齢患者の立位における脊椎後弯の定 量的評価として用いられ、TR は胸腰部の回旋可動域、PPT は腰椎伸展の可動域を示している。2ST の構成要素には、脊 椎の伸展・回旋運動が求められる。今回の結果から対象者の 有している疾患には関係なく、高齢患者では脊椎後弯の大き さや胸腰部回旋機能だけではなく、腰椎伸展機能が 2ST に大 きな影響を及ぼしていることが示唆された。以上のことから、 高齢患者の移動能力の維持および改善を図る際には、脊椎疾 患の有無を念頭に置き、下肢筋力や前方への動的バランス能 力だけでなく腰椎伸展機能の評価、獲得が有用であると考え る。 52 第 20 回千葉県理学療法士学会 【目的】腰部の可動性評価として Modified Schober test(以 下 MST)は信頼性、妥当性のある評価法であるとされている。 しかし、腰部の分節ごとの可動性を定量化することはできな い。そこで、本研究では超音波診断装置(以下 US)を使用 した分節ごとの定量的腰部可動性評価方法を実施し、MST と 比較した基準関連妥当性の検討を目的とした。 【方法】対象者は健常成人男性 9 名、検者は理学療法士 1 名 であった。機器は US(GE Healthcare 社製 vivid-i) 、リニア 式プローブ(GE Healthcare 社製 8L-RS)を使用した。対象 者 9 名について、正座にて股関節・腰椎を最大屈曲した姿勢 (屈曲位) 、腹臥位(中間位) 、パピー肢位(伸展位)の 3 つ の姿勢で測定を行った。検者は L1-5 棘突起を確認し、プロー ブを脊柱に対して平行、かつ棘突起の直上に垂直に置き、棘 突起間画像を撮影した。測定部位は L1-2、L2-3、L3-4、L4-5 の 4 分節とし、各姿勢で 3 回連続測定後、その平均値を代表 値とした。MST は立位で上後腸骨棘を結んだ線の中点から尾 側に 5cm、頭側に 10cm の 2 点にマーキングを行い、体幹を 最大屈曲した際の 2 点間距離の変化量を記録した。 統計は US 測定で得られた各分節の屈曲位の代表値から伸展位の代表値 を減算し、各分節での可動性を算出した。4 分節の可動性を 加算合計した数値を US 測定での腰部可動性とした。その値 と MST の値の間の関係についてピアソンの積率相関係数を 求めた。統計はすべて R2.8.1 を使用した。 【説明と同意】本研究は埼玉県立大学倫理審査委員会の承認 を得て実施した。また被検者には書面および口頭で説明し同 意を得た。 【結果】US を使用した各分節の可動性(平均値±標準偏差) は L1-2 が 1.16±0.33 ㎝、L2-3 が 1.20±0.17 ㎝、L3-4 が 1.34±0.28 ㎝,L4-5 が 1.86±0.51 ㎝、全体の腰部可動性は 5.56±1.03 ㎝であった。また MST は 5.38±0.87 ㎝であった。 US の腰部可動性と MST の間のピアソンの積率相関係数の結 果は r=0.77 で p<0.05 の有意な相関が認められた。 【考察】本研究では US を使用した腰部可動性評価方法と既 存の信頼性、妥当性の検討が行われている MST の関連につ いて検討した。その結果、2 つの測定方法間の相関係数が高 いことから、US 測定による腰部可動性評価は基準関連妥当 性が高い可能性が示唆された。MST は腰部可動性を分節ごと に測定は困難であるが、US 測定では分節ごとの可動性が定 量的に測定できる。そのため、US を使用した腰部可動性評 価方法は有用であると考えられた。しかし、US 測定は屈曲 位から伸展位までの可動性を検討したため、測定値の幅の大 きさが相関係数に影響している可能性がある。このことから 今後も US 測定の妥当性について検討を続けていく必要性が 示唆された。 51 骨粗鬆症に対する運動療法と薬物療法の長期 観察における比較 52 HUR における筋力測定の信頼性 〜BIODEX と比較して〜 ○新保 雄介1),渡邉 秋野 佑太1) ○ 山下 山下 幸勇1),鍋島 雅美1), 1) 千葉きぼーるクリニック 卓也1)、角田 剛司 MD1) 裕一 1)、秋吉 直樹 1)、 1) おゆみの中央病院 Keyword:骨粗鬆症,運動療法,薬物療法 Keyword:HUR、BIODEX、筋力測定 【目的】骨粗鬆症のほとんどは症状なく発症し,慢性疾患の 経過を辿る.罹患すると易骨折性となり,要支援・要介護を 引き起こす“負の連鎖”を呈する. 現在,運動療法の有効性が報告されているが,運動療法と薬 物療法の効果を比較した研究報告は極めて少ない.そこで, 本研究の目的は,薬物療法に対して運動療法の効果を比較し, 運動療法がどの程度骨粗鬆症予防に有用であるかを明確にす ることとした. 【対象と方法】対象は 2010 年 10 月から 2014 年 7 月までに 当院にて骨粗鬆症と診断された 60 歳以上閉経女性 40 例とし た.このうち約 2 年間運動療法のみ続けた群 20 例(以下,運 動群),約 2 年間投薬のみ続けた群 20 例(以下,投薬群)とし, 除外対象は骨折など骨密度に変化を与えるものとした.運動 群は理学療法評価の下で筋力強化やストレッチなどを実施し ている者とし,投薬群は医師の診断の下で骨粗鬆症治療薬を 処方されている者とした.骨密度評価は骨量指標として,X 線骨密度測定装置(GE 社製 DPX-BRAV)を使用し,腰椎の骨 量を半年又は 1 年ごとに診療放射線技師が測定した.また, 年齢による条件を取り除くため,骨量指標は同年齢比較を用 いた. 統計学的分析には,運動群・投薬群の介入前後の 2 要因につ いて Wilcoxon の符号符順位和検定を用いた.また,両群の骨 量経過について Mann-Whitney 検定を実施し,有意水準は危 険率 5%未満とした. 【説明と同意】本研究の実施にあたってはヘルシンキ宣言に 基づいて,研究への理解を得た. 【結果】運動群の骨量について,介入前:103.6%,介入後: 106.1%であり,有意に高値を示した(p<0.05).また,投薬群 の骨量について,介入前:103.0%,介入後:105.9%であり, 有意に高値を示した(p<0.05).運動群と投薬群の変化率平均 は,運動後は 102.5%,投薬後は 103.1%であり,有意差はみ られなかった(p>0.05). 【考察】今回の検証では,運動群・薬物群ともに介入前後で 骨量増加がみられ,介入後の変化率では両群間に差はなく同 等の効果が考えられた.このことから薬物療法と同等の効果 があり,運動療法の有用性が示唆された. 【目的】HUR Leg Extension-curl(フィンランド HUR 社製: 以下 HUR)は筋力測定を簡便に行える利点があり病院や、ク リニック・介護老人保健施設など様々な施設で使用されてい る。しかし、HUR による筋力測定の信頼性についての研究は 少ない。そこで、本研究は HUR を用いた筋力測定が HUR の信頼性を検証することを目的とし、BIODEXsystem3 (BIODEX 社:以下 BIODEX)による測定値との比較を行 った。また筋力測定時間を簡便性の指標とし、HUR 及び BIODEX における筋力測定時間を比較し検討した。 【方法】本研究の同意を得た膝疾患の既往がない健常成人 11 名 22 膝(23.8 歳)を対象とした。 測定肢位は、股関節屈曲 65°膝関節屈曲 60°の坐位とし、体幹 部と大腿部遠位部に固定ベルトを使用した。なお、HUR 及び BIODEX による測定方法は統一した。測定は最大膝伸展等尺 性収縮−最大膝関節屈曲等尺性収縮を交互に 3 回測定し、測定 間の休息を 20 秒とした。また測定中の声かけによる応援はし ないこととした。検者は BIODEX を用いた筋力測定を頻回に 行っており、HUR を用いた筋力測定は初めてであった。代表 値は 3 回測定した等尺性膝伸展筋力の最大値とし、HUR と BIODEX の関係性はスピアマンの相関係数を用いて検討し た。また簡便性に関しては筋力測定時間の平均値を代表値と し検討した。なお統計ソフトは R version2.12.0 を用い、統計 学的有意水準は危険率 5%とした。 【結果】HUR の検者間による再現性は ICC(1.1)=0.88、 BIODEX の再現性は ICC(1.1)=0.92 であった。また HUR と BIODEX の最大膝伸展等尺性筋力間に有意な相関を認め た(r=0.86) 。HUR による筋力測定平均時間は 9 分 10 秒、 BIODEX14 分 37 秒であった。 【考察】本研究では HUR における筋力測定の信頼性につい て検討した。先行研究において BIODEX は筋力測定の指標と して推奨されているため、結果から HUR は筋力測定の指標 として信頼性があることが示唆された。また測定経験のない HUR の測定時間は、測定経験のある BIODEX の測定時間よ り短いため簡便であることが示唆された。 第 20 回千葉県理学療法士学会 53 53 足圧中心と質量中心動揺の相互相関解析に基 づく高齢者の静止立位制御特性 ○竹内 弥彦1) 1) 千葉県立保健医療大学 健康科学部 54 高齢者の自立度判定に 30-second chair-stand test は有効か-Berg Balance Scale との比較- ○朝生 尚吾、三好 医療法人社団上総会 主晃、片岡 山之内病院 美和子 リハビリテーション課 Keyword:高齢者、足圧中心、身体質量中心 Keyword:CS-30、BBS、歩行自立度 【目的】立位姿勢における姿勢調節能の定量的な評価手法と して、保険診療適応の検査等で計測機器が普及していること から、臨床では足圧中心(Center of Pressure; COP)動揺の 計測が広く用いられている。COP の動揺は身体質量中心 (Center of Mass; COM)の動揺と強く相関するものの、同 一ではないことに注意する必要がある。さらに、ヒトの身体 は分節構造を有していることから、各体節の COM 動揺が COP 動揺に及ぼす影響についても検討していく必要があろ う。本研究の目的は相互相関関数を用いて、高齢者の静止立 位姿勢における COP 動揺と体節別の COM 動揺との関連性を 明らかにすることである。 【方法】地域在住の健常高齢者 20 名(67.0±3.5 歳)を対象 とした。被験者は裸足にて床反力計上で静止立位姿勢を 30 秒間保持した。静止立位中の COM 計測にはカメラ 8 台で構 成されるモーションキャプチャシステムを用い、25 個の反射 マーカを被験者の体表に貼布し標点とした。COP の計測には 床反力計を用いた。データのサンプリング周期はカメラ 5ms、 床反力計 1ms とし、PC への取込時に同期した。データ解析 は、計測開始から 10 秒間を除く 20 秒間を対象とした。カメ ラによる標点データから、頭部(頸椎含む) 、胸郭部(腰椎含 む) 、骨盤部、および全身の体節モデルを作成し、各 COM お よび COP の位置変化を前後、左右方向別に解析した。加え て、COM 動揺と COP 動揺との関連性を調べるために、相互 相関関数により各体節の COM と COP 間の類似性を方向別に 算出した。統計処理は COM と COP 間の相関関数のピーク値 と時間ずれについて、多重比較検定を行った。加えて、COM 動揺と COP 動揺の相関関数のピーク値について、Welch の t 検定を用いて前後方向と左右方向間で比較した。有意水準は 1%とした。 【説明と同意】本研究は本学倫理委員会の承認を得て実施さ れ、すべての被験者には書面及び口頭にて説明し同意を得た。 【結果】相互相関関数(ピーク値)の多重比較検定の結果、 左右方向において全身 COM-COP 間(ピーク値= 0.89)に比 較して頭部 COM-COP 間(ピーク値= 0.71)で有意に低値を 示した。また、方向間での差異は頭部 COM-COP と骨盤部 COM-COP に認め、前後方向に比較して左右方向で有意に低 値を示した。時間ずれについては、各項目間で有意な差は認 めなかった。 【考察】本研究の結果から、高齢者の静止立位制御における COP 動揺と体節別の COM 動揺との類似性の特性は左右方向 で認められた。とくに、左右方向における頭部 COM の動揺 は COP 動揺への貢献度が低いことが示され、視覚や前庭覚 などの立位姿勢制御に重要な感覚器の空間的位置づけを最適 化する頭頸部の動きは、他の体節 COM とは独立した動揺制 御を受けていることが示唆された。 【目的】下肢筋力、Berg Balance Scale(以下 BBS)、10m歩 行、Timed Up & Go test が歩行自立度判定に有用とされてい る。しかし、BBS では所要時間を多く必要とされており、筋 力を測定するには、測定機器を使用しなければならなく、10 m歩行や TUG は、 実施場所に配慮を要するのが現状である。 そこで、本研究は、30-second chair-stand test(以下 CS-30) と BBS を比較し、CS-30 が高齢者の歩行自立度判定として有 効か検討した。 【方法】検査遂行困難な運動障害や認知症患者(HDS-R20 点以下) 、Brunnstrom recovery stage Ⅵ以下の患者、重度 の感覚障害を有する患者、高次機能障害を有する患者は対象 から除外し、障害高齢者の日常生活自立度がランク A 以上に 該当する当院入院・外来患者 21 名(男性 10 名:平均 77.10 歳±9.51 歳、女性 11 名:平均 76.09 歳±6.71 歳)を対象とし た。BBS を実施し、BBS の得点から 46 点以上を歩行自立群、 45 点以下を歩行非自立群の 2 群に分類し、2 群間の CS-30 の 測定値、年齢を独立した 2 群の差の検定を用いて解析する。 有意水準は 1%(p<0.01)とした。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言及び当院倫理規定に基づき、 説明と同意を得た上で実施した。 【結果】CS-30 の平均値は、歩行自立群が 13.70±4.98 回、歩 行非自立群が 8.73±2.22 回であり、年齢では歩行自立群が 79.10±5.56 歳、歩行非自立群が 74.27±9.41 歳であった。 また、Mann-Whitney の U 検定を用いて解析を行った結果、 歩行自立群、歩行非自立群において、CS-30 では有意な差を 認め、年齢では有意な差を認めなかった。 【考察】歩行自立群と歩行非自立群にて CS-30 の測定値で有 意な差を認めた為、CS-30 の測定値が歩行自立度判定の指標 となりうる可能性が示唆された。また、BBS の評価項目は日 常生活関連動作で構成されており、CS-30 は先行研究にて下 肢筋力との相関があるとされている事から、BBS 内の日常生 活動作に制限をきたす場合、下肢筋力を評価する必要性も示 唆された。歩行能力低下は、老年期の初期から生じると言わ れており、要支援・要介護の原因の第 1 位として運動器障害 が挙げられている。また、平均寿命と健康寿命の間では男性 で約 9 年、女性で約 12 年の差があり、平均寿命と健康寿命 の差を縮める事が、個人の生活の質の低下を防ぐ観点からも、 社会的負担を軽減する観点からも重要であると考えられる。 歩行能力と下肢筋力との関連性についてはある程度の相関が ある事から、CS-30 を評価する事は介護予防の観点からも必 要であると考えられる。今回は CS-30 が低値を示した規定因 子については、検証しておらず、今後も検討していく必要性 があると考えられる。 54 第 20 回千葉県理学療法士学会 55 円背指数とロコモ 25 の関係について 1) ○児玉 康行 、鍋島 鈴木 康仁1) 1) 雅美 、齋藤 1) 秀平 、 1) 千葉きぼーるクリニック Keyword:ロコモティブシンドローム、ロコモ 25、円背指数 【目的】ロコモティブシンドローム(以下:ロコモ)とは運 動器症候群とも言われバランス能力、歩行能力などの運動機 能が総合的に低下しているとされている。ロコモの原因とし て加齢に伴う様々な運動器疾患があげられ、関節変形もその 1 つと考えられている。関節変形として臨床上高齢者の脊柱 後彎変形(以下:円背)は多くみられるが、坂光らは円背患 者は体幹前傾の増大に従ってバランス、歩行能力が低下する と報告している。本研究の目的は円背指数と痛み・ADL に関 するロコモ 25 との関係性を調べ、理学療法がどのようにロコ モの予防に役立てられるか考察することである。 【方法】対象は正常群 14 名、円背群 23 名、除外基準 4 名の 60~70 代の女性 41 名(平均年齢 69.8 歳±8.25)とした。除 外基準としてコブ角 15°以上の側彎、圧迫骨折を有する者、 円背指数が正常より低値の者とした。円背指数の測定方法は 寺垣らの方法に基づき、自在曲線定規(ウチダ製図器制)を 用いて安静座位にて測定した(H/L×100) 。円背群(円背指数 >11.7) 、正常群(6.7≦円背指数≦11.7)とそれぞれ群分け を行った。ロコモ 25(日本整形外科学会)をアンケート形式 で記載させ、合計得点を算出した。その後ロコモ 25 と各群の 円背指数との相関を求めた。またロコモ 25 中の痛みを表す項 目を「ロコモ P」 、ADL を表す項目を「ロコモ A」として各 項目の合計得点と円背指数の相関を求めた。相関にはピアソ ンの相関係数を用いた。 【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、対象者に測定と研 究の主旨を説明し同意を得た。 【結果】ロコモ 25 の得点と円背指数の相関は円背群 0.629、 正常群-0.277 であり円背群で弱い相関を認めた。「ロコモ P」 との相関は円背群で 0.215、正常群で-0.200 であり両群にお いて相関は認められなかった。 「ロコモ A」との相関は円背群 で 0.654、正常群で-0.264 であり円背群において弱い相関が 認められた。 【考察】今回円背群とロコモ 25 で弱い相関が認められ、今後 のロコモ予備群となる傾向があると考えられる。また円背群 と「ロコモ A」にも弱い相関がみられ、脊柱アライメント不 良に対し、その改善の理学療法がロコモの予防に繋がる可能 性が示唆された。 56 リハビリ動作におけるエアマットレスの影響 評価 ○中新 英之 1)、片桐 中島 雄大 3) 信子 2)、三浦 1)株式会社ケープ 2)医療法人財団慈生会野村病院 3)医療法人財団慈生会野村病院 由紀子 2) 看護部 リハビリテーション科 < 協 賛 企 業 発 表> 褥瘡予防・治療において圧切り替え型エアマットレスの有用 性は、数多く報告され、褥瘡発生危険要因を持つ患者への使 用が推奨されている。一方で、関節拘縮に対するベッドサイ ドでのリハビリテーション時や、在宅へ向けてのADL拡大 のための座位保持訓練時の体圧分散寝具について評価を行っ た報告は、殆どない。今回われわれは、健常人に対し2種類 のエアマットレスを用いて、リハビリテーション訓練、座位 介助動作時の体圧分散の変化を評価した。さらに調査票を用 い、介助者と患者2つの視点から評価を行い、若干の知見を 得たので報告する。 第 20 回千葉県理学療法士学会 55 57 思春期特発性側弯症に対する運動療法の経験 58 思春期特発性(AIS)患者における運動能力 の検討 ○鵜殿 隼考1)、海村 内田 成男3) ○奥村 太朗1)、加藤木 丈英1)、白井 智裕1)、赤澤 努2)、佐久間 毅2)、小谷 俊明2)、南 昌平2) 昌和2)、向後 美里1、2) 1) 海村医院本院 2) 海村医院分院 3) 富士リハビリテーション専門学校 1) 聖隷佐倉市民病院リハビリテーション室、 2) 聖隷佐倉市民病院整形外科 Keyword:思春期特発性側弯症、運動療法、治療継続 Keyword:思春期特発性側弯症、新体力テスト、運動能力 【目的】脊柱側弯症の多くを占めるのは、思春期特発性側弯 症(adolescent idiopathic scoliosis:AIS)である。AIS の治療は 25°以下が保存療法、25°~30°以上が装具療法、45°~50°以上 が手術療法という見解が示されているが、運動療法の有用性 については不明な点が多い。今回、AIS 患者 10 名において運 動療法の継続等について、興味深い知見が得られたので報告 する。 【対象と方法】対象は当院整形外科にて AIS と診断され、理 学療法の依頼があった女児 10 例を対象とした。年齢は 7 歳 ~15 歳(平均 12.2 歳)であり、Cobb 角は 2°~26°(平均 11.8°)、 装具使用者は 1 名であった。対象者は 1~2 週に 1 回の頻度 で通院し、3~37 ヶ月間(平均 10 ヶ月)の運動療法を行った。 運動療法は体幹機能の左右均等化を主目的とし、①体幹の屈 曲・伸展・回旋運動の意識化、②座位でのサイドシフト ex(疼 痛に配慮) 、③四つ這い位で上下肢挙上 ex、④腹臥位で凹側 筋力強化 ex を実施し、併せて自宅での運動療法継続を指導し た。運動療法継続の有無は家族に確認し、継続群、非継続群 に分け、体幹可動性(FFD)、体幹筋力、バランス能力、Cobb 角の変化を検討した。 【説明と同意】本研究は分院院長の承認を得、研究協力者に は書面及び口頭にて説明し同意を得た。 【結果】継続群 7 名、非継続群 3 名であった。両群ともに、 FFD、体幹筋力、バランス能力の向上がみられた。Cobb 角 では、継続群、改善 1 名、維持 6 名であり、非継続群、維持 2 名、悪化 1 名であった。継続群・非継続群ともに、疼痛が 無く、体幹筋力およびバランス能力の高い者、運動習慣のあ る者の改善率が高い結果であった。 【考察】AIS は脊椎の変形に伴う体幹機能の維持・改善が重 要である。今回、取り入れた運動療法により、脊柱可動域、 体幹筋力、バランス能力を向上させることができ、側弯症の 維持・改善に有用であった可能性が示唆された。また、四つ 這い位での上下肢挙上が行える者の方が、改善率が良い傾向 が示されたことから、運動療法の継続が AIS の進行予防に少 なからず貢献しているのではないかと推察された。しかし、 自宅での運動療法継続はモチベーションの維持を含め、困難 な場合が多い。そのため、本人および家族に対して、側弯症 の疾患特性、主な経過、治療(特に装具療法と運動療法)に ついて教育的なプログラムの実施が重要であると考えられた。 今後、AIS の運動療法を更に発展できるよう検討を重ねてい きたい。 【目的】思春期特発性側弯症(以下:AIS)は思春期に発症 する側弯症である。運動が盛んに行われる時期に進行し、不 良例は手術に至る。脊柱の側弯が運動能力に及ぼす影響はほ とんど明らかになっておらず、AIS 患者と健常者の運動能力 差に関しても明らかになっていない。そこで本研究の目的は、 新体力テスト結果を用い健常者と比較し、AIS 患者の運動能 力を明らかにすることである。 【方法】対象者は AIS 患者 16 例(男性 2 例、女性 14 例) 、 手術時平均年齢 15.9±2.5 歳とした。全例胸椎右凸カーブで、 平均 Cobb 角は 53.0±9.1°であった。検討項目は手術前の新体 力テストの総合評価、種目別記録(上体起こし、長座体前屈、 反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ハン ドボール投げ、握力)とし、文部科学省の発表する同年代の 健常者標準値と比較した。なお、種目別記録は年齢別平均値 より偏差値を算出した。統計処理は、AIS 患者と健常者にお ける各種目の偏差値を対応のあるt検定で比較し、有意水準 を 5%以下とした。 【説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認後、実施にあ たり、本人と保護者に対し書面または口頭にて説明し同意を 得て行われた。 【結果】AIS 患者の新体力テストの種目別記録において、上 体起こし 41.9±10.5(p=0.009) 、20mシャトルラン 44.1±8.3 (p=0.015) 、ハンドボール投げ 42.5±7.6(p=0.002), 総合評価 45.6±5.2(p=0.005)で健常者と比較し有意に低下 していた。 【考察】本研究により筋持久力を表す上体起こし、全身持久 力を表す 20mシャトルラン、巧緻性を表すハンドボール投げ が健常者と比較し有意に低下していた。上体起こしは長期間 のコルセット着用による体幹筋力の低下と Cobb 角の進行と ともに体幹筋力が低下するという報告もあり、双方の関与が 示唆される。20mシャトルランは、胸椎側弯により非対称と なった胸郭の可動性低下が、呼吸機能低下させたことが要因 と考える。ハンドボール投げは、凹側に比べて凸側肩関節の 方が不安定性が高く、肩甲胸郭関節の動きが制限されるとの 報告があり、その関与が示唆される。総合得点においても有 意に低下していることから AIS 患者は同年代の健常者よりも 総合的に運動能力が劣っていることが明らかとなった。この 結果は脊柱側弯が運動能力に何らかの影響を与えている可能 性が示唆させるものであった。 56 第 20 回千葉県理学療法士学会 59 思春期特発性側弯症(AIS)患者における後方 矯正固定術が運動能力に与える影響 60 脊椎後方矯正固定術前後における思春期特発 性側弯症患者の重心動揺変化の検討 ○加藤木 丈英1)、小谷 俊明2)、白井 智裕1) 奥村 太郎1)、原園 学1)、赤澤 努2) 佐久間 毅2)、南 昌平2) ○原園 学¹⁾加藤木 丈英²⁾、佐野 舞子³⁾白井 智裕4) 1) 聖隷佐倉市民病院リハビリテーション室、 2)聖隷佐倉市民病院整形外科 1) 聖隷佐倉市民病院リハビリテーション室 2) 聖隷佐倉市民病院整形外科 Keyword:AIS、運動能力、後方矯正固定術 Keyword:思春期特発性側弯症.重心動揺変化.バランス能力 【はじめに】思春期特発性側弯症(AIS)の手術はスポーツ 活動の盛んな中学から高校時代に行われる事が多い.しかし, 手術が運動能力に与える影響に関する報告は少ない.そこで 本研究の目的は AIS 患者における後方矯正固定術が運動能力 に与える影響を検討することである. 【対象・方法】対象は 2008 年以降に AIS の診断で後方矯正 固定術を受け,2 年以上経過した 20 例である.性別は男性 3 例, 女性 17 例,手術時平均年齢 14.4±1.5 歳(12 歳-17 歳)であり, 主カーブ平均 Cobb 角は術前 55.7±18.1°,術直後 18.2±7.1°,術 後平均観察期間は 38.1 ヶ月(24-81 ヶ月)であった.検討項目 は、術前後の新体力テストの総合評価,種目別記録(握力,上体 起こし,長座体前屈,反復横とび,20m シャトルラン,50m 走,立 ち幅跳び,ハンドボール投げ) とし,術前後の 2 群間で比較した. 更に,術後レントゲンより Lowest Instrumented Vertebra(LIV)を L2 以上(11 例),L3 以下(9 例)と群分け し,両群を比較した.なお,種目別記録は年齢の影響を取り除く ために年齢別平均値より偏差値を算出した.統計処理は,術前 後における各種目の偏差値の比較には対応のあるt検定,LIV 高位による 2 郡間の比較には対応のないt検定を用い,有意水 準 5%以下で検討した. 【説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認後,患者とその 保護者に書面及び口頭により説明し,同意を得て行った. 【結果】術後の新体力テストの結果は,総合成績が向上した者 が 2 例,不変が 15 例,軽度低下 3 例であった.術前 40.3±15.2 が 術後 39.6±16.2 となり,術前後で有意差は認められなかった. 各種目別では,反復横とび(p=0.031),20m シャトルラン (p=0.034)で術後有意に向上していた.その他の種目は,術前後 で有意差は認められなかった.また,LIV が L2 以上群,L3 以下 の群間でも,総合成績,それぞれの種目に有意差は認められな かった. 【考察】本研究の結果,AIS に対する後方矯正固定術が,術後の 総合的な運動能力に影響を与えていないことが分かった.し かし,各種目別では敏捷性と持久力が優位に向上していた.こ れは,脊椎の矯正による左右対称性の獲得により,下肢筋力,呼 吸機能の向上が起因した可能性が示唆された.また,LIV 高位 により体幹の可動性に影響が出ると考えられたが,長座体前 屈での差は認められなかった.よって,AIS に対する後方矯正 固定術は,敏捷性と持久力を向上させる可能性があり,体幹の 可動性には影響を与えていないことが明らかになった. 【目的】思春期特発性側弯症(Adolescent Idiopathic Scoliosis、 以下 AIS)の術前の重心動揺変化に対する報告は散見される が、術前後での報告は少ない。先行研究によると側弯症患者 の立位バランス不良を明らかにしているが、術後の立位バラ ンスに関しての研究は渉猟しうる限り少なく、術後にバラン スが改善するか否かは明らかにされていない。そこで本研究 の目的は、脊椎後方矯正固定術前後の立位バランスを重心動 揺計を用いて検討し、AIS 患者の術後立位バランスを明らか にすることである。 【方法】対象は 2013 年 1 月~2014 年 9 月の期間に脊椎後方 矯正固定術を施行した 20 名(男性 2 名、女性 18 名、平均年 齢 15.2±2.1 歳、平均 cobb 角術前 54.9±13.1、術直後 18.3±8.2 であった。 方法は、重心動揺計(アニマ社製 G-5500)を使用し、術前と 術後 2 週に左右片脚立位(閉眼)を 30 秒間、計 2 回測定し た。検査は、術前後とも体幹装具を外した状態で行った。検 査項目は、前後動揺中心変位・左右動揺中心変位・実効値・ 実効値面積とした。統計学的処理は術前と術後 2 週における 各項目の平均値を対応のあるt検定で比較し、有意水準を 5%以下とした。 【説明と同意】本研究は、実施にあたり本人と保護者に対し 書面または口頭にて説明し、同意を得て行った。 【結果】閉眼右片脚立位の前後動揺中心変位は術前-0.4cm、 術後-0.1cm(p=0.8) 。左右動揺中心変は術前 3.9cm、術後 4.3cm (p=0.83)。 実効値は術前 1.9cm、 術後 1.8cm (p=0.48)。 と有意差は認められなかった(P>0.05) 。実効値面積は術前 12.7cm、術後 13.0cm(p=0.55)でそれぞれ術前後で有意差 は認められなかった。閉眼左片脚立位の前後動揺中心変位は 術前-0.6cm、術後-0.5cm(p=0.67) 、左右動揺中心変位は術 前-3.5cm、術後-3.6cm(p=0.38) 、実効値は術前 1.9cm、術 後 1.8cm(p=0.26)実効値面積は術前 12.9cm、術後 11.5cm (p=0.35)でそれぞれ術前後で有意差は認められなかった。 【考察】日常の臨床において、後方矯正固定術後に立位の不 安定性を訴える症例を経験するが、本研究における閉眼片脚 立位では、各項目で術前後における有意差は認めなかった。 その要因として、手術による脊柱の矯正に伴い、重心位置が 変化し、姿勢制御に関わる足底感覚などの体性感覚・平衡機 能・体幹筋力などが術前に比べ術後即時的に機能し、手術に よる急なアライメント変化にも対応し得たと考えられる。ま た、cobb 角の進行がバランス能力の異常を代償させている可 能性があるという先行研究もあり、脊椎アライメントと立位 バランスの因果関係について更なる検討が必要であると考え る。 第 20 回千葉県理学療法士学会 57 61 入院中に腰椎圧迫骨折を認め、廃用性筋力低 下の予防に着目しベッド上介入を行った一症 例 ○佐藤 加奈1)、渡邊 1) 社会福祉法人太陽会 恭啓1)、田沼 昭次1) 安房地域医療センター 62 段階的難易度調節が移乗動作学習に及ぼす影 響 ~股・膝関節に屈曲拘縮を呈した症例への 介入~ ○隆杉亮太1)、加藤宗規2) 1) 東船橋病院、2)了徳寺大学 Keyword:廃用性筋力低下、ベッド上介入、自主練習 Keyword:段階的難易度調節 【目的】本症例は低ナトリウム血症にて入院加療中に新規圧 迫骨折を認め、13 日間ベッド上介入となった症例である。ベ ッド上介入中は、下肢の廃用性筋力低下予防を目標に積極的 な自主練習を促し、その後も良好な経過が得られた。本症例 への治療介入について考察する。 【症例】86 歳女性。診断名は低ナトリウム血症。既往に両変 形性膝関節症あり。病前 ADL は屋内伝い歩き自立、屋外シ ルバーカー自立。介護保険申請なし。 【現病歴】入院 2 週間前からの食欲不振と歩行困難を主訴に 受診。低ナトリウム血症と診断され入院。 【評価】第 2 病日より理学療法開始。初期評価時、腰背部痛 あり(NRS4)。両腸腰筋・大腿四頭筋 MMT4、シルバーカー 歩行は要監視。第 7 病日に腰背部痛増強あり(NRS8)。保存的 加療中、第 15 病日の画像所見にて第 1 及び第 2 腰椎圧迫骨 折と診断される。 【説明と同意】患者及び家族へ本報告の趣旨を口頭にて説明 し、同意を得た。 【治療・経過】第 15 病日からベッド上介入となり、下肢伸展 挙上練習を中心に開始。第 29 病日に胸腰椎軟性コルセットを 着用し離床を再開。腰背部痛は消失(NRS0)し、荷重時や膝屈 曲最終域で左膝関節内側部痛を認めた(NRS6)。両腸腰筋 MMT3、両大腿四頭筋 MMT4。シルバーカー歩行は軽介助を 要し左立脚期に膝折れあり。第 43 病日に左膝関節内側部痛は 軽減(NRS2)。両腸腰筋及び両大腿四頭筋 MMT4。シルバー カー歩行は監視下可能となり左膝折れは消失した。 【考察】石田らは、低下した筋力の回復には廃用状態に陥っ た期間と同程度もしくはそれ以上の期間を要すると報告して いる。本症例では、ベッド上介入期間の自主練習として高頻 度での下肢伸展挙上練習を中心に指導した。これを 13 日間継 続した結果、離床再開時の筋力低下は 7 日間でベッド上介入 前と同程度の回復を認めた。この要因として、活動制限の期 間に自主練習を継続するよう促し、この期間の廃用性筋力低 下を最小限に留められた事が考えられる。さらに、①本人の 練習意欲が高かった事、②病棟と連携し自主練習を促した事、 ③チェックリストを作成し実施状況を確認できた事が自主練 習継続の一助となったと考える。 【結語】医学的管理により活動制限を余議なくされる場合に おいても、ベッド上での積極的な介入により廃用の進行を最 小限に留め、離床後に筋力の早期回復が見込まれる事が示唆 された。 【目的】本研究の目的は,理学療法開始後 52 病日時点におい て,起立,歩行,移乗が全介助であった一症例に対して行っ た段階的難易度調整が移乗動作練習に及ぼす影響について前 後の動作状況を比較することにより検討することである. 【方法】対象者は 70 歳代,男性,診断名は横紋筋融解症.既 往歴は脊柱管狭搾症術後・頸部脊椎症術後.2 病日に理学療 法を開始. 52 病日時点でも変化がなく,HDS-R は 12 点,SIAS での上肢機能は右 4‐4 ,左 2‐3,下肢機能は右 4‐3‐4, 左 3‐2‐2,体幹機能は 3‐1,合計は右 53 点,左 43 点であ った.等尺性膝伸展筋力体重率は右 20%・左 7%,関節可動 域は股伸展が右-10°,左-20°,膝伸展が-20°,左-40 で あった.FIM は 35 点であり,寝返り・起き上がり・起立・ 移乗共に全介助であった.動作練習回数も減少し,拒否的な 表情や言動を認めるようになった.そこで,段階的難易度調 整を用いた移乗動作学習を検討し実施した.移乗は平行棒を 把持し介助用車椅子のスカートガードを取り椅子に移乗する パターンとした.その際に点数づけを行い,最大介助 0 点, 中等度介助 1 点,軽介助 2 点,介助無し 3 点とした.難易度 調整は,把持する手摺の位置と座る椅子の角度の 2 つについ て行った.介入 1 では,体の正面に平行棒を位置させた状態 において,椅子から立ち上がり元の位置の椅子に座る(0°) から始め,座る時の椅子の角度を 30°,60°,90°に引き上げ ることにした.練習は 1 日 5 回行い,引き上げ基準は 3 回連 続の成功とした. なお,本研究はヘルシンキ宣言に則り行わ れ,症例からの承諾を得て行った. 【結果】介入1において,角度 0°は 2 日間,30°は 3 日間, 60°は 4 日間で引き上げ基準を達成した.しかし,90°は最大 介助が 2 日間続いた.そこで,体の側方に平行棒を位置させ た介入 2 に変更したところ,1 日で動作が可能となった.そ の○日後には,普通型の車椅子でも移乗可能になり,病棟のベ ッドから車椅子への移乗が全介助から軽介助になった.この 時点における麻痺などの身体機能は介入 1 以前とほぼ同様で あった. 【考察】症例は起立や移乗の全介助状態が続き,挫折感・無 力感が積み重なり,拒否的言動に至ったと考えられた.介入 後は,短期間で段階の引き上げ,動作の変化が得られ,この 間の機能的変化を伴わず病棟での生活場面にも般化したこと から,用いた介入は症例の動作学習に有効であったと考えら れた. 58 第 20 回千葉県理学療法士学会 移乗 認知症 63 重度認知症を呈した症例に対し歩行距離のグ ラフをフィードバックに用いた効果についての検 討 ○中島 秀太1)、加藤 宗規2)、 64 重度認知症患者に対する応用行動分析学を用 いたトイレ誘導の効果 ○川口 沙織1)、加藤 宗規2) 1) 医療法人社団千葉秀心会東船橋病院 2) 了德寺大学 1) 東船橋病院 2) 了徳寺大学 Keyword:重度認知症・グラフ提示・フィードバック Keyword:認知症、トイレ動作、拒否 【目的】本研究の目的は,重度認知症(HDS-R:6 点)を呈 した一症例に歩行距離のグラフを提示し,強化刺激としての 効果について検討することである. 【方法】対象は,入院中に肺炎による筋力低下と歩行障害を 呈した 80 歳代男性であった.発表にあたり,家族に説明し同 意を得て行った.肺炎前の評価において,運動麻痺は極軽度, 上下肢・体幹に著明な筋力低下を認め,等尺性膝伸展筋力値 (以下:膝筋力)は右 5.7kgf,左 8.6kgf であった.寝返り・ 起き上がり全介助,端座位見守り,立位保持は手すり使用に て 30 秒見守り,歩行は歩行器にてリハ室を軽介助で 30m 可 能であった.日常生活活動は FIM にて合計 18 点の最重度で あった.1 週間の中止を経た再開後 11-15 日目において歩行 実施後に歩行距離を口頭でフィードバックし,前日以上の場 合に拍手と賞賛を行い,もう少し歩きませんかと問いかけた が,1 セット 30m に留まり, 「歩くのは嫌いだ」 , 「がんばん ねーほうがいい」と話していた. そこで,介入 1 では 60m 以上,介入 2 では 90m 以上の歩行 距離を目標として,歩行前に前回の歩行距離を併せて提示, 歩行後にはグラフ提示しフィードバックを行い,目標を上回 った場合は拍手と賞賛を行うこととした.なお,拒否が出た 時点で歩行練習を終了とし,目標を下回っても叱責や注意は 行わなかった.介入 2 への引き上げ基準は 3 日連続で 60m 以 上の歩行が可能とした. 【結果】介入前の歩行距離は 30m 以下であったが,介入 1 は 3 日続けて 60m 以上,介入 2 は 8 日間の内 6 日間において 90m 以上の歩行距離であった.介入最終日における認知機能 は HDS-R2 点,膝筋力は右 4.3kgf,左 8.1kgf であり,変化 はみられなかった.また,介入 2 ではグラフをみて「良くな っている」 「まだ歩ける」 「歩くのは好き」と発言が聞かれた. 【考察】今回,重度認知症患者に対して,歩行距離をグラフ によるフィードバックとして用いたことで歩行距離が延長し たことから有効に機能したことが考えられた.さらに,介入 2 では内在的強化も得られ,歩行距離の延長に繋がったと考 えられた.この間における身体機能は変わらず,認知機能面 はむしろ低下を認めたことから,重度認知症患者に対するグ ラフ提示は,有効な強化刺激として機能することが示唆され た. 【目的】トイレ拒否を認めた重度認知症患者に対して、応用 行動分析学を用いた介入を行い、その効果について検討した。 【方法】入院中の 80 歳代後半女性であった。慢性硬膜下血腫 で短期間に 2 度入院となり、2 回目入院時は身体機能、認知 面のさらなる低下と不穏、入院時はなかった理学療法とトイ レ拒否を認めた。2 回目入院前は自宅で不穏行動が続き、ト イレ誘導するものの拒否とオムツ内失禁が続き、居室での放 尿や屋外での徘徊もしばしばであった。前回入院時に病棟で 柵はずし等の行為があったため、2 回目入院初日から転倒防 止のためにベッド内での抑制と柵・センサーマットを使用し ていた。また、今回は初日からトイレ拒否を認めたため、オ ムツを使用していた。理学療法評価は限られた項目のみ実施 し、HDS-R は 5 点、MMSE は 2 点、SIAS は 73 点、膝伸展 筋力体重率は右側 17%左側 15%であった。理学療法拒否を 認めたためトイレ誘導のみで介入した。1 時間 30 分置きに 1 日 6 回の頻度で聴覚的教示① 「○○さんトイレに行きましょう」 での誘導を行い、 拒否なく誘導が 3 日間可能となったら② 「○○ さんトイレ」更に③「○○さん」と段階的に除去することで難 易度を上げた。トイレでの排泄成功、パッド失禁無しが可能 であった際には、対象者に対し笑顔での賞賛、身体接触(肩 に触れる)を加えフィードバックを行った。そしてトイレ拒 否回数、パッド内失禁回数、排泄成功回数を記録し介入効果 を検討した。 【説明と同意】本研究は、対象者の家族に目的と方法を説明 し、承諾を得た。 【結果】介入開始から改善を認め、介入 6 日目で拒否回数が 0 回となった。失禁回数は 12 日目で 0 回となり、排泄は 5 日 目で毎回可能となった。聴覚的教示については、9 日目に②、 12 日目に③へ変更しても誘導が可能となり、自ら「行こうか」 と言い起き上がってくるようになった。また、12 日目にはリ ハビリテーション室誘導と歩行練習も可能となった。介入中 の身体機能と CT 画像の改善は認めなかった。 【考察】認知症患者に関する先行研究では、聴覚的教示より も視覚的教示が有効、行動後の賞賛や身体接触は有効とされ ている。しかし本症例は視覚的教示の理解が困難な重度認知 症患者であった。重度認知症の本症例において、聴覚的教示 でも可能となった背景には、賞賛や身体接触に加え、聴覚的 教示の段階的難易度調節によりトイレに対する意識付けが高 まったことが影響した可能性が考えられた。 第 20 回千葉県理学療法士学会 59 65 応用行動分析学的介入により離床拒否が減少 し活動範囲が拡大した症例 ○樋口 拓哉1),小滝 治美 1),佐々木 寛法 1) 1) 初富保健病院 リハビリテーション科 66 訪問リハビリテーションに用いる評価方法の 検討 ~当法人居宅サービス利用者像を捉え ることができるのか~ ○池田 奈央1)、安齋龍治1)、佐野大2)、山下剛司3) 1) おゆみの中央病院 在宅医療センター ーション部 2)おゆみの中央病院 在宅医療センター 3)医療法人社団 淳英会 訪問リハビリテ Keyword:応用行動分析,圧迫骨折,起居動作 【目的】圧迫骨折患者における腰痛は慢性疼痛となり行動の 低下を生じさせ,日常生活活動(以下 ADL)を阻害する要因と なる.症例は,疲労・腰痛に対する不安・不快感により離床 機会が大きく低下していた.今回症例に対して,不安感軽減 と ADL 向上を目標とした応用行動分析学的介入を実施,そ の効果を検討した. 【症例紹介】76 歳男性.身長 163.0 ㎝,体重 36.5kg.H26.3 月胸腰椎圧迫骨折,肝硬変と診断され入院.治療後,自宅復 帰するが疼痛・疲労により活動・ADL の低下を認め,介護困 難となったことで当院入院.MMSE20 点.FIM91 点, DBDS10 点.膝伸展体重比(μ-tas)右 23.8%,左 25.4%.ROM 制限はない.入院当初は摂取量が乏しく,離床は 30 分程度で あり『寝ている方が楽』と、離床への意欲の低さが伺えた. 又,他者との交流を拒む印象であった. 【介入】ベースライン期間 2014/6/30~7/27 では,リハビリ 参加率 50.0%,リハビリ時離床平均時間 6 分,離床拒否平均 数 4.2 回/日,食事摂取量一日平均 10.0%であった.介入期間 2014/7/28~8/15 では,自らベッドから起きることにターゲッ ト行動を設置し,①環境設定として居室にて起き上り練習, ②疼痛の少ない起き上りの方法を口頭指示,③起き上り動作 の順序を課題分析し分かりやすく行う事を実施した.又,成 功した際は即時に賞賛・握手を交わすことをした. 【説明と同意】本研究は,研究協力者に書面及び口頭にて説 明し同意を得,個人情報の取り扱いには十分留意した. 【結果】介入開始後,拒否的な態度は軽減し,介入 19 日目で リハビリ参加率 100.0%,リハビリ時離床平均時間 13 分,離 床拒否平均回数 0.1 回/日となっている.症例からの疲労や疼 痛の訴えは,離床獲得と共に減少した.又,離床時間が増加, 病棟スタッフと社交的な関係が築くことができ,食事摂取量 も増加し平均 18.3%となった. 【考察】腰痛や疲労の嫌悪刺激により離床機会が大きく低下 していたが,適切な周囲の環境を整備する事で活動性が向上 することとなった.自ら起き上がるという行動に対して,周 囲の環境設定,手順を簡易的に伝達という先行刺激を整備, 終了後に賞賛をすることで離床やリハビリに対しする不安・ 不快感を軽減し,達成感を得る事ができた.その結果,離床 機会や時間の拡大,他者との関係性が良好となり,行動・活 動性の向上といった“プラスサイクル”が形成されたと考える. 次の新たな目標として歩行を選択し,更なる活動性の向上を 課題としている. 60 第 20 回千葉県理学療法士学会 Keyword:高齢者生活機能調査基本チェックリスト、 Life-Space Assessment、リハビリテーション評価指標 【目的】平成 25 年に生活期リハビリテーションの効果につい ての評価方法に関する調査研究が発表されたが、生活期に適 切な指標や評価方法を確立するには至っていない。今回生活 期リハビリテーションにおいて用いることができる評価指標 によって、当法人の生活期リハビリテーション各利用者を調 査した。そこで、各リハビリテーション利用者の特徴を捉え、 訪問リハビリテーションから通所リハビリテーションへの移 行を目指す際の、客観的評価の確立に必要な要素について検 討した。 【方法】対象は、おゆみの中央病院訪問リハビリテーション (以下、訪問)利用者 20 名(79.3±10.6 歳)、おゆみの診療所短時 間通所リハビリテーション(以下、通所)利用者 23 名 (73.9±11.7 歳)の計 43 名。但し要支援者及び両サービス併用 者、有料老人ホーム入居者は対象から外した。 対象者に①高齢者生活機能調査基本チェックリスト ②Life-Space Assessment(以下 LSA)③リハビリテーション 評価指標の 3 つの評価方法を用いた。評価者は、リハビリテ ーション職員及び介護職員とした。 【説明と同意】本研究は当法人倫理審査委員会の承認を得、 研究協力者には書面及び口頭にて説明し同意を得た。 【結果】介護度別人数(訪問/通所)…要介護 1:4 名/10 名、 要介護 2:7 名/9 名、要介護 3:3 名/3 名,要介護 4:4 名 /1 名,要介護 5:2 名/0 名。①高齢者生活機能調査基本チ ェックリスト平均点(訪問/通所):8.80 点/14.17 点(うち、 うつ項目 1.65 点/3.35 点)。②LSA 平均点(訪問/通所):21.9 点/38.3 点。③リハビリテーション評価指標平均点(訪問/通 所):実行状況 25.4 点/29.7 点、能力 26.2 点/29.7 点、機能 21.2 点/24.6 点。 【考察】リハビリテーション評価指標において、実行状況と 能力の値が、通所利用者では差が少ないのに対し、訪問利用 者では、能力に対して実行状況が下回る結果を得た。訪問で はこの「能力と実行状況の差」が大きな特徴であり、この差 を少なくすることが目標設定の一つとなる。 訪問利用者では、LSA の値に関しても低値を示した。訪問リ ハビリの実施によって獲得した能力を生活の場以外で発揮す る機会が圧倒的に少ないことが、能力に実行状況が伴わない 要因と考える。加えて、高齢者生活機能調査基本チェックリ ストの小項目にて、 「うつ」傾向の利用者が訪問リハビリにお いて多かった。うつ傾向であることが自分の能力に自信を持 てず、実行に移せないという状況に寄与していると考える。 67 当院短時間通所リハの取り組みについて 第1報 ~基本的ケアの重要性について再考する~ ○福元 浩二1)、竹内 正人2) 68 当院地域における「生活空間の広がり」と「で きる・している ADL」~関わりの意義~ ○中山 泰貴1),三好 主晃 1),片岡 美和子 1) 1) 袖ケ浦さつき台病院 通所リハビリテーション 2) 袖ケ浦さつき台病院 総合広域リハケアセンター 1) 医療法人社団 上総会 リハビリテーション課 山之内病院 Keyword:通所リハ、基本的ケア、その人らしさの支援 Keyword:LSA,ADL,地域生活 【はじめに】当院通所リハでは理学療法士が個別リハビリを 実施するほか、各事業所との連携、送迎も行う事により、生 活環境を把握しリハ内容に反映する事が出来ている。本報告 では当院通所リハで行っている利用者の生活に密着したサー ビスを提供するために基本的ケアへの取り組みを重視してい るので第 1 報として報告する。 【利用者の内訳とサービス内容】 平成 26 年 10 月現在、登録者数は 104 名(男性 47 名、女性 57 名、平均年齢 73.2 歳) 主病名は脳血管疾患 50 名(48%)、整 形外科疾患 27 名(26%)神経内科疾患 11 名(11%)他 16 名 (15%) 介護度は要支援1:16 名(15%)、要支援2:17 名(16%)、要 介護1:29 名(28%)要介護2:16 名(15%)要介護3:13 名 (13%)要介護4:9 名(9%)要介護5:4 名(4%)である。 週1~2回の頻度で月~金午前(3 時間以上 4 時間未満)、 火・木午後(1 時間以上 2 時間未満)サービスを提供、全員に個 別リハの時間を設け、評価、治療を実施している。また定期 的にリハ専門医によるコンサルテーションを受けている。評 価から自己トレメニューを作成し、健康運動指導士や看護師、 介護士に実施内容を共有し、その人らしさの支援ができるよ うにしている。 具体的には①ICF の構造に則って現在を明らかにし、過去を 振り返り、将来を設定している②水分・栄養・活動・排泄・ 生活リズムなどの基本的ケアにより体の基礎作りをする③生 活習慣や環境・周囲の人達との関係性の中にある悪循環を明 確にし、ご本人やご家族を含むチーム(医師・理学療法士・看 護師・介護士・健康運動指導士)で基本方針を決定している④ 行動・心理・環境の視点でご本人や環境へのアプローチをす る事により、 『悪循環から良循環への転換』を図っている。 【結果】 初期⇒6 か月 水分量(ℓ) :829 ⇒ 1600 歩行量(歩) :1834 ⇒ 5754 HDS-R(点) :14.7 ⇒ 20.1 握力(㎏) :20.7 ⇒ 22.4 柔軟(㎝) :25.5 ⇒ 40 TUG(秒) :17.2 ⇒ 10.3 片足立ち(秒 ):7.5 ⇒ 9 【考察】当院通所リハでは利用者個々の悪循環を明確にし、 良循環へと転換するための評価を重要視している。 「基本的ケ ア」は人間が生きていくための要素であり、健康を作り出す ポイントでもある。特に水分は身体の活動性、意識レベル、 覚醒水準への影響もあり、細胞を活性化させる。基本的ケア を再考する事で、高齢者であっても身体機能の大幅な改善が 認められる事が示唆された。今後は ADL・QOL の改善を数 値化し客観的なデータを蓄積していく事で、利用者とサービ スを提供する側が利用の効果を実感できる施設作りを行って いき、今後、第 2 報・3 報として報告していきたい。 【目的】当院周辺地域は,県内における生産年齢人口と同様に, 減少傾向を辿るだけでなく,老年人口の割合は高値を示す.更 には 2020 年には後期高齢者数が前期高齢者数を上回る試算 とされている.その上,持ち家比率の高い地域特性も勘案する と,自立した生活は元より,自宅生活を中心とした自活がより 一層求められる.我々は,臨床上,「できる ADL」の向上,地域・ 自宅に帰ってからの,「している ADL」の向上を目標に関わ ることが多い.地域生活において,獲得した ADL 動作が,実際 の生活空間の広がりに活かされているかに着目する必要があ ると考える.そこで,今回,生活の広がりを評価する指標として 活用されている Life-space Assessment(以下 LSA)を用いて, 獲得された ADL と生活空間の広がりについて検討した. 【方法】対象は当院外来通院中の患者 25 名(男性 15 名,女性 10 名,年齢 71.8±10.4 歳)を対象とした.LSA 得点のカットオ フ値を基準に活動良好群(LSA≧56 点),活動狭小群(LSA <56 点)に群別けを行い,2 群間の Functional Independence Measure (以下 FIM),Barthel Index(以下 BI)の比較を行った. 統計解析は有意差を Mann-Whitney の U 検定を用い,有意水 準は 1%未満とした.統計ソフトは FreeJSTATversion13.0 を 使用. 【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言,及び当院倫理規定に 基づき,対象者に研究目的,プライバシー保護の説明,同意を得 て行った. 【結果】2群全体での得点は LSA61.1±23.9 点,FIM120.1±11.0 点,BI92.6±12.5 点,活動良好群 14 名,活動 狭小群 11 名であった.統計学的分析では 2 群間の FIM 得点,BI 得点に有意差(p<0.01)が認められた. 【考察】 今回の結果より,2 群間で有意差を認め FIM(p=0.0005),BI (p=0.0013)となった.この事は,ADL 動作の獲得が実際の生 活空間を広げる要因として考えられるまた,市内アンケート によると,転居を考える要因として「交通網の不便さ」が上位 に挙げられている事から,今後を見据えても,社会資源の充足 が望まれる.現時点においては,効率的な資源の活用や,環境設 定を適切に行うことで,獲得した ADL 動作が,地域へ帰ってか らの,自宅および周辺地域でも,活かされているのではないか と考えられる.一方で,日本理学療法士協会では健康寿命の延 伸には生活空間の広がりが重要と言っている.また,健康寿命 の短縮の要因として,「ロコモティブシンドローム」が筆頭に 挙げられている.今後,地域に目を向け,自宅内を含め,周辺地域 を取り巻く環境を考慮した関わりを持つと共に,転倒予防教 室などの地域事業を通して,地域貢献していく事が有用と考 える. 第 20 回千葉県理学療法士学会 61 69 市原市五井地区における多機関協働による体 操教室への取り組み 70 理学療法士が取り組む地域の医療・介護・福 祉・行政との顔の見える関係を目指して ○佐藤 正司1)2)、長島 知子3)、亀山 鈴木 斌(MD)1)2) ○伊藤 1) 2) 3) 4) 美紀4)、 医療法人社団白金会 白金整形外科病院 市原地域リハビリテーション広域支援センター 地域包括支援センターごい 市原市役所 高齢者支援課 Keyword:地域リハビリテーション、体操教室、 地域ケア会議 【目的】地域高齢者の健康保持増進を目的とした地域保健活 動として、特に寝たきり予防・閉じこもり防止のための地域 リハビリテーション活動が注目されている。近年理学療法士 が地域で体操教室に参画する報告は散見されるが、行政機 関・民間企業・ボランティア・医療機関・地域リハビリテー ション広域支援センター協働での活動報告は少ない。今回の 目的は多機関協働での取り組みについて報告することである。 【方法】当圏域内で行う「ちーき会」から出た地域高齢者の 健康保持増進に関する話題を市原市役所、地域包括支援セン ター、民間企業、地域住民ボランティア、医療機関、地域リ ハビリテーション広域支援センターが参加する「地域ケア会 議」で取り上げ、参加多職種内で「地域課題」と認識した。 また、各機関の役割・課題も出し合いお互いが補完するよう に努めた。 【説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得、ヘルシ ンキ宣言に基づき説明と同意を得た。 【取り組み内容】管轄地区内に 3 会場を設け 1 会場につき月 1 回「ぬくもり健康体操教室」を企画、実施した。内容は寝 たきり予防に関する講話と音楽を取り入れた転倒予防体操実 施。初回は理学療法士が講師として参加し、次回よりボラン ティアである「市原市高齢者健康体操普及員」が講師を務め た。会場は民間企業が無償提供し、地域住民への広報活動は 市原市役所・地域包括支援センターが協力して行った。 【考察】短期間の運動指導では体力テストの有意な改善は出 にくいものの、行政機関・民間企業・ボランティア・医療機 関・地域リハビリテーション広域支援センターと協働して体 操教室を継続して行うことにより、地域高齢者の寝たきり予 防・閉じこもり防止への関心を高める事ができると考える。 また今後千葉県における高齢社会問題点の一つとして医療従 事者絶対数の不足が示唆されるなか、多機関協働の取り組み には「地域包括ケアシステム」構築への一歩として寄与する ものと考える。 62 第 20 回千葉県理学療法士学会 俊介1)、佐藤 正司1)、鈴木 斌(MD)1) 1) 市原地域リハビリテーション広域支援センター 医療法人社団白金会 白金整形外科病院 Keyword:地域リハビリテーション、顔の見える関係、 意見交換 【はじめに】白金整形外科病院は平成 24 年度に千葉県より指 定を受け、市原地域リハビリテーション広域支援センター(以 下支援センター)として活動している。 支援センターは「行政の医療・介護・福祉に係る諸計画と横 断的に関わりながら市原地域における地域リハビリテーショ ンの問題点を話し合い、その中で1つでも解決に向けて具体 的に動く」を活動方針としている。 今回、支援センター事業の一環として取り組んでいる「ちー き会」の活動について報告する。 【ちーき会立ち上げの経緯】平成 24 年度の活動の中で地域の 問題を探る為、市内の医療機関、介護事業所等へ日常業務で 困っていることについてアンケート調査を行った。特に多か った意見が、他の機関の他職種と話をする機会がない、地域 の事業所が集まって話ができる場がほしいというものであっ た。地域リハビリテーションとは「障害のある人々や高齢者 及びその家族が住み慣れたところで、そこに住む人々ととも に、安全に、いきいきとした生活が送れるように、医療や保 健、福祉と生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハ ビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべて」 と連携指針に定義されている。地域の声と連携指針を踏まえ、 平成 25 年 5 月よりちーき会(市原の地域リハビリテーショ ンを考える会)を立ち上げた。ちーき会は毎月・気楽に・協 議をコンセプトに、方針を「まずは顔が見える関係作り」と して活動している。 【運営方法】支援センターが事務局となり月に 1 度市内の公 共施設で開催。事前にメールと FAX で市内の医療機関、介護 事業所、福祉機関、行政に連絡し参加者を募る。 【結果】平成 25 年 5 月から平成 26 年 3 月まで毎月開催し、 11 回実施。医療、介護、福祉、行政機関の保健師、看護師、 リハ職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士) 、ソーシャル ワーカー、ケアマネジャー等の職種が述べ 346 名参加した。 毎回 5 名~6 名の小グループを組んで意見交換の実施。その 他会の中で勉強会、事業所紹介等実施。 【考察】ちーき会は実施回数を重ねるごとにちーき会参加者 同士が互いに顔見知りになり、会の中で自然と話をする雰囲 気ができつつあると考える。また臨床現場においても他機関 と連携を図る時など相手の顔を知っているので互いに連携が とりやすくなったという意見が挙がっている。理学療法士と して地域に出て何ができるのか、今後も活動を続けながら模 索していきたい。 71 君津圏域地域リハビリテーション広域支援セ ンターの取り組み ○児玉美香 1) 1) 君津中央病院 72 臨床実習に向けた新たな学習システムの取り 組み ○樋口 典男1)、松田 徹1)、小林 秋山 大輔1)、井上 美幸1)、藤原 笠置 泰史2) 好信1)、 正之1)、 1) 千葉医療福祉専門学校理学療法学科 2) 千葉医療福祉専門学校 Keyword:地域リハビリテーション・地域包括支援セン ター・健康増進 当院は君津圏域(君津市・木更津市・富津市・袖ケ浦市)の 基幹病院であり、3 次救急を担う急性期総合病院である。平 成 16 年から地域リハビリテーション広域支援センターの指 定を受け、圏域の数少ないリハビリスタッフと共に試行錯誤 してきた。平成 21 年度脳卒中モデル事業を契機に保健所や有 志のケアマネージャーと協議会を持ち、専門職への支援と患 者や家族を対象に研修会や介護施設への講師派遣、公開フォ ーラムなどを行ってきた。 平成 26 年度は協議会を一新し、4 市 7 箇所の地域包括支援セ ンターの保健師を新たに運営委員として依頼した。ケアマネ ージャー、リハビリ専門職も各市 1 名ずつ依頼し、保健所、 医師会、回復期病院スタッフと共に協議を重ね、市民向けの 公開フォーラムを開催する事になった。市民参加を促す為の テーマとして支援目的の一つでもある介護予防を選択し、各 市地域包括支援センターの紹介や事業報告と、市民グループ の健康増進活動の報告会を企画した。後半には市民主体の健 康増進をテーマに市ごとのグループワークを予定している。 公開フォーラムは 11 月 30 日に実施するため、学会当日は参 加者のアンケート調査結果を含めて報告する。 地域包括ケアの流れに沿って、地域包括支援センターサポー ト事業も始まり、円滑に進めるためにも、協議会で意見交換 をする機会を持つことは有益であると考える。しかし、多職 種連携の難しさも痛感しており失敗談を含めて報告する。 Keyword:学内プレ実習、登院試験、実習評価 【目的】理学療法士養成課程における臨床実習は実際の患者 を通じ学内では経験することのできない学習を行う場である。 だが昨今、臨床実習に対応困難な学生が頻発する傾向にある。 そこで当校において、臨床実習をスムーズに導くことを狙っ て 3 つの学習・評価システムを導入し、一定の結果を得たた め、この取り組みを報告する。 【方法】平成 22 年度入学生 26 名に対して実施した。①「臨 床実習の事前練習のための学内プレ実習」3 年次に臨床実習 を想定したグループ模擬患者授業(以下学内プレ実習)を実 施した。学内プレ実習は学生 4~5 名を 1 グループに設定し た。教員が模擬患者となった。1 回あたり 40 分間の評価時間 を設定し、5 回実施した。臨床実習を想定して症例ノートと 症例レポートを課題とした。②「臨床総合実習前後に客観的 な効果判定を行うための実技技能試験」従来、評価実習前に 行っていた実技技能試験(以下登院試験)を臨床総合実習前 後にも配置し、学生の技能的到達度を客観的に評価した。実 施手順は、症例呈示の後、学生が評価内容を決定、次に下級 生が行う模擬患者に対して評価・測定を実施し、これを教員 2 名で評価した。また、評価・測定に基づく統合と解釈につ いては最後に筆記試験を行った。以上の試験を整形疾患領域、 中枢疾患領域のそれぞれについて行い、姿勢、知識、技術、 リスク管理を評価指標としてその技能到達度を数値化した。 結果は個人別に成績フィードバック用紙として作成し、臨床 実習の初期資料として実習指導者に送付した。③「臨床実習 成績評価配分の変更」実習評価を施設評価 5 割、学内評価 5 割に変更した。学内評価の内訳は登院試験成績 3 割、症例レ ポート点 1 割、症例発表点 1 割とした。この施設評価配分は 全体の 5 割となり従来の実習合否判定基準である 6 割の判定 を下回るものとなった。しかし、施設評価を単独でみた場合、 その 6 割に達しないものは教員会議にて処遇を検討し、その 不足部分を対処した。以上のことを実習指導者会議 2 回に分 けて説明し、同意を得た。 【結果・終わりに】学内プレ実習により、学生は実習を模し た授業経験をすることができた。実習前後登院試験を実施し たことにより、個別の技能到達度の客観的数値を評価するこ とができた。総合実習 1 期は平均 70.5±7.37 点であった。2 期は平均 73.2±11.73 点となり+2.7 点増加であった。また結 果を施設側に伝えることで客観的な初期情報を提供すること ができた。施設側評価 5 割、学内評価 5 割に変更することに 対して「学生が実習を軽んじてしまうのではないか」という 懸念をした指導者がいたが、実習自体で 6 割に達しないと何 らかの処遇を検討するという説明をし、一定の理解を得た。 以上の取り組みを今後も継続し効果について検証し、洗練さ れた学習システムを構築していきたい。 第 20 回千葉県理学療法士学会 63 73 多職種診療チームにおける他学科臨床実習受 け入れの試み 74 若手理学療法士に必要な退院支援の情報収集 について ○太田 ○小串 健志、藤田 医療法人社団 心和会 聡行 愛1)、坂本 雄 1)、山崎真也 1)、戸邉広晃 1) 1) セコメディック病院 新八千代病院 Keyword:回復期、チーム医療、臨床教育 Keyword:理学療法士、退院支援、情報収集 【はじめに】理学療法教育における臨床実習の形態は,1 人 の実習生に対して 1 人又は複数の指導者(以下,SV)で従来行 なわれてきた.小林(2010)によると,複数の実習生に対して 指導を行い,実習生同士のディスカッションの場を設けるこ とで,学習効果及び指導効果を得られるとしている.また, 日本理学療法士協会発行の臨床実習教育の手引き第 5 版の回 復期施設の特性と指導のポイントでは, 「施設の業務内容を知 る」のみならず, 「チームアプローチ」や「退院調整」といっ た内容が指導ポイントとして明記されている. 今回,多職種からなる診療チームにおいて,理学療法学科 と作業療法学科の学生を 1 名ずつ受け入れ,共同して実習を 進めていくことでチームアプローチやチームの中での理学療 法士としての役割を学び,学生間での相互学習の成果とその 効果について検討を加えたので報告する. 【方法】理学療法学科,作業療法学科 1 名ずつ計 2 名の学生 を PT・OT・ST からなる9名の診療チームにて実習指導を行 った.共通の担当症例を決定し,学生同士でディスカッショ ンを行う時間を 1 時間設けた.その他の時間は,クリニカル クラークシップ(以下,CCS)に沿い実習を行った.実習の フィードバック(以下、FB)は適宜行い,更に担当症例に関 する共通の FB を PT・OT の SV よりを行った.実習最終日 に,個別のアンケート調査及び診療チーム全体での意見交換 を行った. 【説明と同意】本報告は,ヘルシンキ宣言に基づき協力者に は,書面及び口頭にて説明し同意を得た. 【結果】アンケート結果からは,SV に質問がしやすかった. 相手に説明しているうちに自分も良く理解できていないこと が分かった.他職種の勉強している内容が分かり参考になっ た等の意見が挙がった.SV からは,FB の際の質問が多くか つ具体的であった.他職種への指導と複数への指導両方が求 められ慣れるまで大変だった等の意見が挙がった. 【考察】CCS は,多くの症例を経験できる.しかし,従来型 の実習に比べて,症例に関しての情報を集めることや他職種 との連携を取ることは困難である.そのため,PT としての技 術が向上する反面,患者の診療にあたるチームの中の役割を 認識することが困難となりやすい. 今回は,実習生という同立場の他職種が存在することによ り,カリキュラムの違いよる特性の差を認識することが出来 たと共に,回復期リハビリテーション病棟に求められる指導 内容に沿うことも可能と考える. 【はじめに】医療費適正化の観点から、入院日数の短縮化が 推進されており、臨床現場における退院支援の重要性が高ま っている。退院支援は必要性が表面化したときには支援のタ イミングを逃してしまうため、早期より正確な情報収集が必 要となる。理学療法士(PT)は大量養成時代を迎え、新卒者 数は年々上昇の一途をたどっており、経験年数を問わない一 定水準のサービスの提供が求められている。本研究は経験の 浅い若手 PT が見落としがちな情報収集項目を明らかにし、 円滑な退院支援の一助とすることを目的とした。 【方法】当院所属の PT43 名(経験年数 5.9±3.3 年)を対象 にアンケート調査を実施した。調査内容は、国際生活機能分 類の社会的項目等に基づき抽出した、退院支援に向けて必要 と考えられる情報収集項目 31 項目とした。各質問項目には 「5:必ず聴取している、4:ほとんど聴取している、3:必 要に応じて聴取している、2:あまり聴取していない、1:ま ったく聴取していない」の 5 段階評定法を用い、留置調査法 にて回答を得た。結果を、経験年数別に 3 年目以下群(若手 群)と 4 年目以上群(ベテラン群)の 2 群に分類し分析を行 った。両群の比較には Mann-Whitney U 検定を用い有意水準 5%とした。 【説明と同意】対象者には、本研究の目的と内容を十分説明 し、同意を得て行った。 【結果】対象 PT は、若手群 12 人(経験年数 2.0±0.7) 、ベテ ラン群 31 人(経験年数 7.3±2.6)であった。両群の比較によ り有意差が生じた項目は 31 項目中「キーパーソン」 、 「経済力 の有無」 、 「自宅内の動線について」 、 「MSW の介入の有無」 、 「内服の管理・服薬状況について」の 5 項目で、いずれも若 手群よりもベテラン群が高値を示した。 【考察】結果より、退院支援に向けての情報収集に際し、若 手 PT とベテラン PT では収集項目に差が生じることが明ら かとなった。差が生じた項目には、患者様との信頼関係が必 要とされる項目、各職種との連携が必要となる項目が含まれ ている。これらは、理学療法の質的側面以外の点においても 若手 PT はベテラン PT に及ばないことを示唆しているもの と考えられた。また、患者様の退院後の実際の生活をイメー ジした情報の聴取にも不十分な傾向が見受けられた。若手 PT は経験値が少なく、退院までの流れやゴール設定が曖昧とな り退院支援が遅延しがちである。今後は上記を意識した若手 教育を行い、充実した退院支援が行えるよう誘導していきた い。 64 第 20 回千葉県理学療法士学会 75 療養型病院における感染状況について 76 当院におけるインシデント・アクシデントレ ポートについて ~転倒・転落に着目して~ ○藤嶋洋平1)、宮崎陽夫1)、庄司美穂1) ○竹之内 純1)、山中 橋本 典1) 1) 総泉病院リハビリテーション部 力(MD) 1) 、山下 剛司(MD)1)、 1) おゆみの中央病院 Keyword:感染、訓練プログラム、栄養摂取方法 Keyword:転倒・転落、インシデント、アクシデント 【目的】感染によりリハビリテーションの介入が困難となり、 廃用が進行し ADL レベルが低下するという報告がされてい る。しかし、療養型病院での調査研究は少ない。今回、療養 型病院の入院患者を対象に訓練プログラムと車椅子離床有無、 栄養摂取方法による感染との関連性を調査したので報告する。 【対象と方法】対象は 2014 年 7 月 3 日時点で当院入院患者 312 名(平均年齢 83.5±9.4 歳)。そのうち感染患者 46 名 (MRSA、緑膿菌、ESBLs、クロストリジウム・ディフィシ ル) 、非感染患者 266 名を訓練プログラムに分け、さらに車 椅子への離床有無で分類した。また、栄養摂取方法を経口摂 取、経鼻経管、胃瘻・腸瘻、中心静脈栄養に分け感染状況に ついて比較、検討した。 【説明と同意】当院の倫理委員会により許可を得ている。 【結果】①訓練プログラム別 感染患者数(%) :歩行 1 名(4%) 、 座位 19 名(10%) 、離床 26 名(27%) 。離床レベルのうち 81%は離床非実施。②栄養摂取方法別 感染患者数(%) :経 口摂取 9 名(6%) 、経鼻経管 20 名(22%) 、胃瘻・腸瘻 11 名(19%) 、中心静脈栄養 6 名(43%) 。感染者の 80%が経管 栄養。 【考察】今回の結果から、訓練プログラムでは離床レベルで 最も感染患者が多く、81%は離床非実施であった。長期臥床 による免疫、感染抵抗性の低下を予防していく事が求められ ると考える。また、座位レベルの感染者は 10%であった。こ の事は起居動作や座位保持が可能な事で活動性が向上し、体 力低下の防止につながったため感染の発生を防止したと推測 される。また、塩原らは「細菌が常在している鼻腔から胃内 へ挿入、留置される事や管内に栄養が富んだ物質が注入され る事、管内温度が 37 度前後で保たれている事などから感染経 路になる可能性が高い」と述べており、当院でも感染患者の 80%が経管栄養となっている。老化に伴い免疫機能が低下し、 高齢者は感染抵抗性が低下すると言われている。当院は入院 患者の多くが高齢者であり、誰もが感染のリスクを抱えてい る。その為、活動性を高め感染抵抗性低下の予防やセラピス トが感染媒体とならないよう感染対策を徹底する必要性があ ると考えらえる。 【目的】当院は 2014 年 3 月に開院した新設病院(149 床、 その内、回復期リハビリテーション病棟 50 床)であり、医療 安全に対する取り組みが重要となる。そこで当院のインシデ ント・アクシデントレポート(以下レポート) の中で、転倒・ 転落に関するものを分析し、今後の事故予防に役立てること を目的とした。 【対象と方法】平成 26 年 3 月から平成 26 年 8 月までの間に 提出されたレポート 364 件を対象とした。その中で転倒・転 落レポートの割合、発生場所、認知機能低下の有無、時間帯、 事故レベルの割合を算出し、検討した。事故レベルの判定は 独立行政法人国立病院機構における医療安全管理のための指 針より 0~5 レベルに分類した。 【結果】全体に対し転倒・転落レポートは 26 件(7.5%)であ った。発生場所は 26 件中 25 件が病棟で起きており、中でも 病室が多く 22 件(88.0%)であった。ステーションは 2 件 (8.3%)、廊下は 1 件(4.2%)であった。この 25 件中、認知機 能が低下している患者によるものが 19 件(73.0%、同患者に よるものが 2 件)であり、その内、認知症の診断を受けている 患者は 7 名(平均年齢 87.7 歳)であった。また、病室がステー ションから近い位置にあり、かつ日中は臥床やステーション で過ごしている患者によるものが 14 件(56.0%)であった。安 全管理を逸脱し、転倒・転落に至ったものは 11 件(42.3%)で あり、全て認知機能が低下している患者によるものであった。 全レポート中、安全管理逸脱は 134 件(37.0%)と最も多かっ た。時間帯は 13~15 時に 5 件(20.0%)と多く、18~20 時に 4 件(16.0%)、1~3 時に 4 件(16.0%)であった。事故レベルは 1 が 10 件(38.5%)、2 が 14 件(53.9%)、3a が 2 件(7.7%)、3b ~5 は 0 件であった。 【考察】今回、レポートを分析した結果より、当院では認知 機能が低下している患者が、病室で安全管理を逸脱(危険行動) し転倒・転落するケースが多かった。時間帯は看護師の業務 繁忙時や勤務人数減の深夜に発生しているため、離床センサ ーの設置の検討や病室の環境設定など他職種と多角的に分析 することが必要と考える。また、対象患者はリハビリを看護 師の業務繁忙時に実施することに加え、監視の目が多いリハ ビリ室での見守りを検討する必要がある 第 20 回千葉県理学療法士学会 65 77 転倒後、動作レベル低下、排尿障害が残存し た症例に対する他部門と連携した退院支援 ○橋田 理英 1)、井手 武井 健吉 2) 一茂 1)、長澤 康弘 1)、 78 当院での人工股関節全置換術患者用パンフレ ット作成の取り組みについて ○中村 真理子1)、津曲 良子1)、山下 祥司1)、 青墳 章代1)、坂本 雅昭2)、渡邉 仁司2) 1)医療法人社団誠和会長谷川病院診療部 リハビリテーション科 2)医療法人社団誠和会長谷川病院診療部 1) 千葉市立青葉病院リハビリテーション科 2) 千葉市立青葉病院整形外科 Keyword:介助指導、排尿障害、退院支援 Keyword:THA、ADL、患者指導 【はじめに】今回、自宅での転倒を機に動作レベル低下、排 尿障害を呈した症例を担当する機会を得た。本症例の自宅退 院にあたり、動作レベル低下に対する理学療法に加え、家族 への介助指導や他部門と連携し、生活環境の設定を行った。 本症例の入院時から自宅退院までの経過について以下に報告 する。 【症例紹介】80 歳代女性。病前 ADL 自立。自宅で転倒後よ り徐々に動作レベルの低下がみられ、下血、排尿障害、意識 レベル低下みられたため、当院外来受診後、他院救急搬送。 搬送後、下血再発なく、全身状態落ち着いたが、排尿障害、 四肢筋力低下が残存したため、リハビリテーション目的に当 院入院。 【説明と同意】症例報告作成にあたり本人と家族に説明し、 同意を得た。 【経過】入院時、認知機能低下、夜間不穏行動頻回。身体機 能面では、上下肢・体幹筋力低下(MMT2-3) 、可動域制限著 明。基本動作は軽度から重度介助、ADL は食事以外ほぼ全介 助であった。基本動作・ADL における介助量軽減を目的に理 学療法を実施し、徐々に動作向上みられ、バルーン抜去後は 基本動作・歩行(独歩)が見守りで可能となり、ADL でも排 泄が見守り、入浴が個浴にて軽介助までの改善みられ、夜間 不穏行動も減少傾向となった。そのため、自宅退院に向け、 家族への介助指導を行い、外泊実施。帰院後に下肢むくみ増 悪し、膀胱内に残尿確認、バルーン再挿入となった。再び夜 間の不穏行動頻回となり、睡眠薬処方により、覚醒レベル低 下に伴い基本動作レベルが低下し、リハビリ拒否もみられる ようになった。動作レベル低下、排尿障害の残存はあるもの の、自宅退院への希望は変わらず、他部門と連携し、退院支 援を開始した。家族が不安に感じていたバルーン管理につい て看護師から指導を行い、リハビリ場面でも適宣説明を行い、 MSW は看護師の資格をもつケアマネージャーを選定した。 さらに退院後、利用する当院併設のデイケアスタッフを含め、 全員で退院カンファレンスを行い、情報の共有、退院後の生 活環境の設定を行った。退院までの理学療法は退院後の生活 に合わせた介助指導を中心に行った。 【結果】家屋改修、介護サービス(デイケア週 2 回、訪問看 護週 1 回)利用下での自宅退院となった。 【考察】家族が協力的であったこと、理学療法士を含め、各 部門が連携し、家族の不安を解消できるような退院支援を行 った結果、自宅退院に至ったと考える。 【はじめに】当院では、人工股関節全置換術(以下 THA)患 者に対し脱臼予防のための ADL 指導を行っている。従来の 指導方法は、患者と動作訓練を行いながら、口頭で説明を行 っていく方法であった。しかし、従来の患者指導方法では理 学療法士間での指導内容の差が見受けられた。今回 ADL 指 導内容の再確認を行い、統一した患者指導が円滑に行えるよ う THA 患者用パンフレットを作成したので報告する。 【パンフレット作成】今まで指導してきた内容を基に、土台 となるパンフレットを試作した。そこから、当院の整形外科 医 2 名と理学療法士 9 名からの意見を取り入れ、THA 患者用 パンフレットを作成した。 理学療法士からは「脱臼のメカニズムについての説明を取り 入れたい」 「術後に使用すると便利な自助具の紹介図があると 良い」との意見が得られた。また、従来の ADL 指導内容は 後方アプローチに沿った内容であったが,現在当院では後方 アプローチと前外側方アプローチの 2 方法を行っており,整 形外科医からは「侵入方法によって分けてみてはどうか」と いう意見を得た。これらの意見を基に、脱臼のメカニズムに ついての説明も取り入れた、後方と前外側方アプローチの 2 種類のパンフレット作成に至った。 【現状・考察】現在パンフレットの運用を開始して 3 ヵ月経 過したが、患者からは「パンフレットがあると家族への説明 がしやすい」 「手元に残るため退院後も振り返ることができる」 「写真が多く分かりやすい」というおおむね良好な意見が得 られた。股関節の構造や動きを患者自身が理解し、その上で 日常生活動作と結びつけることで、結果的に脱臼予防への意 識も高まったのではないかと推察する。さらに脱臼予防だけ でなく,各アプローチ別に ADL 動作を分けることで、患者 別により安全で拡大した指導を行うことができたと考えてい る。 【結語】今回パンフレット作成に取り組んだことは,ADL 指 導方法を明確・統一化ができ、効果的な指導を行う一歩にな った。 【今後の課題】今後アンケート調査などで患者からの意見を 多く取り入れ、パンフレットを使用した指導の更なる充実化 を図っていきたい。また今回は医師と理学療法士のみであっ たが、チームとしての統一認識を築いていくために病棟看護 師との連携を図ることも検討している。 66 第 20 回千葉県理学療法士学会 79 指導者に求められる指導ポイント~デモを実 施する立場になって学んだこと~ 80 デイサービスにおいて移動手段を介護職と共 同認識するための試み ○村木正昭1) ○市川保子1) 1) 船橋二和病院 1) 特別養護老人ホーム 松葉園 Keyword:発達障害領域、症例検討、指導ポイント Keyword:機能訓練指導員、他職種協働、共通認識 【目的】当院は 299 床の一般病院で発達障害児に対する外来 リハを行っている。外来リハを担当しているスタッフは 8 名 で卒後 4 年~15 年目である。リハビリテーション医療に求め られる、患者様のニーズに応じたオーダーメイドの医療 1)の 実践に向けて日々試行錯誤しながら研鑽を積んでいる。今回、 オーダーメイド医療の実践に必要な判断過程を学ぶことを目 的に実施しているデモンストレーション(以下デモ)による 症例検討を通じて、デモ実施者として筆者が、参加者の意見 を基に指導時のポイントについて振り返り学びを得たので報 告する。 【方法】月に 1 回(60 分:40~50 分のリハ、質疑応答 10 分 が目安) 。症例 1 名を選出し、発達障害児の外来リハを担当し ているスタッフがデモを見学した。デモ実施者は、発達障害 領域の専門講習会に参加した理学療法士(経験年数 15 年目)。 毎回のデモ終了後に参加者に聞き取り調査を行いデモのメリ ットと課題について振り返りを行った。 【説明と同意】本報告にあたって、研究協力者には説明の上 同意を得ている。 【結果】2013 年 4 月から 2014 年 10 月まで 16 回(症例数 16 名、スタッフ参加人数平均 5 人) 。聞き取り結果、普段の 治療とは違った効果を見ることができ、どこから介入して良 いかわかり課題が明確になったという意見や、観察をしてい るだけでは、デモ実施者が行っている触り方や動かし方など がわかりにくい、重複障害(知的障害、呼吸器障害、変形・ 拘縮等)の症例に対する介入が不安という意見が聴取できた。 【考察】デモによる症例検討は、症例の示す症状を観察と触 診、問診を通して解釈し治療方法を選択する過程を説明し、 症例が望ましい変化を示すことを共通認識する良い方法と思 われる。一方、判断過程だけでは実際に対面した際に必要な、 触る技術動かす技術指導は不十分となることも示唆された。 この振り返りを通し、①観察と触診の方法を説明と同時に参 加者にも体感してもらうこと、②触り方や動かし方の実技練 習を併せて行うことの重要性も示唆された。 【参考文献】1)内山靖・小林武・前田眞治:臨床判断学入 門.三秀舎,2006 【目的】当施設では、平成 24 年 5 月より併設のデイサービ スにおいて個別機能訓練加算 2 を算定し、理学療法士が機能 訓練指導員として勤務している。他職種協働の中、リハビリ テーションへの認識や生活支援に対する考え方に大きな隔た りがあること実感し、共通認識を持つために試みた事柄を紹 介する。 【方法】デイサービスにおいて、利用者の移動能力を理学療 法士が評価し、介入が必要な利用者の選出と移動レベル・介 助方法を書面にし、介護職員が閲覧できるようにした。書式 は 1)、2) 、3)の順に改訂した。1)利用者氏名、介助方法、備 考として転倒のリスクを 100 字以内で説明、2)利用者氏名と 重要度の色分けのみ、3)利用者氏名、歩行介助の状況を 7 項 目(杖・シルバーカー・サークル(使用/未使用) 、自立、遠 位見守り、立ち上がり・座り時のみ介助、両手引き介助、片 手引き介助、付き添い(近位見守り/介助))で表示。 【説明と同意】本事例紹介は、当施設における関係者に書面 及び口頭にて説明し、同意を得た。 【結果】介護職員の意見・要望により改訂し、現在 3)の書式 に至る。1)読む時間を省略したい。細かい介助方法は覚えら れない。介助を要する利用者が分れば良い。2)遠位見守りの 利用者にも付き添わなくてはいけないため、マンパワー不足 になってしまった。対象者が同時に複数人立ち上がった際、 優先順位が分からない。3)自立の項目を削除し、備考に差し 替えて欲しい。修正後、理学療法士、介護職員、相談員、看 護師が利用者の移動能力について話し合い、確認する機会を 毎月設けるようになった。また、介護職員の経験年数に関わ らず、利用者の移動状態を把握しやすくなった。 【考察】今回、介護職が日常的に関わる移動に注目したこと で、能力に応じた介助方法の重要性を考えてもらうきっかけ となった。また、介護職員の要望に応じて書式の改訂を行っ たことが、マンパワーなど介護職員の視点も理解することに 繋がったといえる。共通認識のためには、他職種間の双方向 の意見が重要であると学ぶことができた。 第 20 回千葉県理学療法士学会 67 81 地域包括ケアシステムを踏まえた多職種間情 報伝達の傾向と対策 2014 ○齋藤義雄1)、芝野亨1)、小原洋典1)、相良亜希1) 1) 松戸ニッセイ聖隷クリニック Keyword:地域包括ケア、情報伝達、デルファイ法 【背景】平成26年度診療報酬改定で本格的にクローズアッ プされた地域包括ケアシステムであるが、その課題の一つに、 他職種との協業が摩擦になっているという問題がある森本)。 【目的】本研究の目的は、多職種間情報伝達に必要な要素に ついてデルファイ法を用いたアンケートから重点項目を導き 出す事、また IA・資源・自分・他人についての4大項目との 関係性を明らかにする事、そしてフリーコメントと上記関係 性を見出し、多職種情報伝達における“摩擦因子”について考 察する事である。 【対象と方法】当施設管理会議(倫理委員会含)の承認後、 医師・管理事務職員を除いた職員 83 名に対し、同意の得られ た者に合計3回のデルファイアンケートを実施した(回答率 1回目 49%・平均年齢 40.6 歳、2回目 40%・平均年齢 38.4 歳、3回目 46%・39.1 歳) 。アンケートは筆者が予め用意し た情報伝達に影響を及ぼしうる項目 120 問(IA・資源・自分・ 他人それぞれ30問)に対し、5 段階リッカートスケールに よる質問にてデルファイ法を用いて 3 回トライアウトした。 都度フィードバックを与え、2 回目には 50 問に絞り、3 回目 には 23 問に絞ったもので実施した。 【結果】3回目トライアウトで絞り込まれた、最も重要であ ると回答のあった4大項目の内訳は、IA・情報共有がないと 良い仕事が出来ない 64%、資源・他部署の業務内容認識不足 で情報共有しにくさを感じる 41%、自分・自分が不明な場合 聞き直す 40%、他人・確認の質問をしてくれる 41%、であ った。フリーコメントの集約では、自分のあり方と他人に期 待する事に共通して、相手のことを考える・嫌な顔しない・ 自分だけ忙しいと言わない等の回答があった。 【考察】4大項目を集約し文章化すると、“良き仕事のために は相手業務を理解し情報に対して双方向の質問が重要”と表 現できる。これに対しフリーコメントとの関係性では、自己 や他者への共通認識にバランスが取れた一方、情報伝達をよ り良くするためには“日頃からの意思疎通”と挙げられたにも 関わらず、他者依存であるという点が摩擦因子になると思わ れた。相手も関係も環境も変えられなくても、自分だけは自 らの手で変えられるアドラー)という点を認識したい。また、年 齢要因も相まって渋谷)、自己認識の重要性が示唆された。 【今後の発展】今回は自職場での試みであったが、今後は関 わる職場、関わる職種、関わる人数を増やし、更なる検討を 試みていきたい。 68 第 20 回千葉県理学療法士学会 第 20 回学会準備委員会組織図 学 千葉県理学療法士会 田 中 会 長 康 之 千葉県千葉リハビリテーションセンター 事務局長 準備委員長 鈴 木 謙 太 郎 北 郷 千葉県千葉リハビリテーションセンター 学術部門 戸 坂 仁 彦 千葉県千葉リハビリテーションセンター 財務部門 友 也 小 針 千葉県千葉リハビリテーションセンター 友 義 千葉県千葉リハビリテーションセンター 第 20 回千葉県理学療法士学会 〇 プログラム・抄録集 学会長:田中 康之 事務局:千葉県千葉リハビリテーションセンター (第 20 回千葉県理学療法士学会事務局) 〒266‐0005 千葉県千葉市緑区誉田町 1 丁目 45 番 2 E-mail [email protected] 印 刷:株式会社 三造ビジネスクリエイティブ 〒290-0067 千葉県市原市八幡海岸通1 TEL:0436-41-0201 第 20 回千葉県理学療法士学会 69 千葉県理学療法士学会 平成7年度 ~ 歴代学会長 平成 25 年度 第 1 回 宮 前 信 彦 第 2 回 渡 辺 京 子 第 3 回 吉 田 久 雄 第 4 回 茂 木 忠 夫 第 5 回 宮 前 信 彦 第 6 回 渡 辺 良 明 第 7 回 江 澤 省 司 第 8 回 井 田 興三郎 第 9 回 藤 井 第10回 宮 崎 陽 夫 第11回 村 永 信 吾 第12回 石 塚 保 士 第13回 山 下 祥 司 第14回 嶋 田 第15回 池 田 純 次 第16回 松 本 一 光 第17回 遊 佐 第18回 薄 第19回 武 内 顕 祐 隆 直 宏 朗
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