「アメリカの一大イベント『感謝祭』」(PDF)

D.C.通信
海外だより
連載 68
中村岳志 (JA全中農政部国際企画課<在ワシントン>)
January, 2017
アメリカの一大イベント「感謝祭」 する笑顔の写真が掲載されてい
を囲んだり、子どもと遊んだり
た。
この記事が掲載されるのは 1
■現在の感謝祭
また、ホワイトハウスでも、
月になるため、多少季節遅れと
それから約400年。現在のア
感謝祭の朝、大量に消費される
なるが、アメリカの秋から冬
メリカの感謝祭は、11月の第
七面鳥の中から 2 羽を選び、大
は、10月にはハロウィーン、11
4 木曜日とされており、家族や
統領権限で、おいしく食べられ
月には感謝祭、12月にはクリス
親戚が一堂に会してごちそうを
る運命から「恩赦」するという
マスと、イベントがめじろ押し
作り、食 卓を囲むのが 慣 例と
ジョークに近い行事が恒例と
の時期であった。このうち感謝
なっている。この期間には、全
なってもいる。
祭は、日本ではあまりなじみが
米で帰省ラッシュが繰り広げら
ないため、今回ご紹介すること
れたり、多くの店が閉店したり
■おわりに
としたい。
と、どこか日本の正月を思わせ
現在のアメリカの感謝祭は、
る雰囲気でもある。
神の恵みや先住民に感謝すると
■アメリカの感謝祭の起こり
感謝祭での伝統的なメニュー
いう当初の意味合いは薄れてい
アメリカにおける感謝祭の起
は、クランベリーソースを添え
るものの、家族や友人に感謝の
こりは、17世紀の以下の史実
た七面鳥を中心に、マッシュポ
気持ちを表明する機会となって
にさかのぼると言われている。
テトなどの副菜やパンプキンパ
おり、各地の公園等では、慈善
イなどのデザートなど豪勢。イ
団体等がホームレスなど恵まれ
弾圧を受けていた清教徒は、信
リノイ大学の調査では、感謝祭
ない人々に温かい料理を振る舞
仰の自由を求めて海を渡り、同
の 1 日だけで約4,600万羽の七
う等のチャリティーも多く展開
年冬に現在のマサチューセッツ
面鳥が消費されるというのだか
される。
ら、どれだけ盛大な行事なのか
わが家でも、簡単ではあるが
しんだが、先住民であるネー
ということが分かる(七面鳥に
七面鳥を丸焼きにして味わいな
ティブ・アメリカンの部族が食
とってみれば悪夢の日か)
。
がらゆったりと過ごし、家族の
・1620年、イギリス国教会の
州に到着し、入植を始めた。
・一団は、厳しい冬の寒さに苦
料を分け与え、当地での狩猟や
農耕を教えて支援した。
■政治家にとっての感謝祭
機会となった。
感謝祭は、政治家にとって
わが国では、父の日や母の日
確立し、その年の11月、世話に
も、自らが家族を重視する親し
はあるものの、家族が互いに感
なった部族を招き、収穫物や七
みやすい人物であると PR する
謝を示すための日はないことか
面鳥等を並べた宴席を設け、友
良い機会であり、多くの議員の
ら、帰国後も続けていくことと
ツイッター等では、家族で食卓
したい。
・春には入植者数が約半数まで
減ってしまうが、何とか生活を
人と神の恵みに感謝した。
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ありがたさを考える非常にいい
月刊 JA
2017/01