和泉山脈の自然と都市の開発

第1編
わかやまの風土
第 3 章 わかやまの自然と生活
和泉山脈
橋本市
岩出市
和歌山市
第2編
和泉山脈の自然と都市の開発
わかやまの歴史
関連地域の位置
多い人工林と私有林
いずみ
かつらぎ
和泉山脈は,大阪府と和歌山県の境になっていて,
和泉葛城山脈とか葛城山脈ともよばれています。東の
第3編
いわわきさん
しゅほう
き たん
岩湧山(897m,大阪府)から主峰の和泉葛城山(858m)をへて,山並みは西にむかって低くなり紀淡
かいきょう
な
ら
こんごう
海峡までつづきます。東西の長さは約60kmの山脈で,岩湧山から東へは大阪府と奈良県をへだてる金剛
わかやまのいまと未来
い こま
山地・生駒山地へと連なっています。
和泉山脈の森林は,地形的に
西から東のほうに行くほど森林
大 阪 府
和泉山脈の森林と果樹園
人工林
和泉市
岸和田市
い
堺市
橋本地方にかけてスギ・ヒノキ
天然林
果樹園
貝塚市
関西国際空港
などの人工林の割合が高くなっ
紀見峠
岩湧山▲
蔵王峠
燈明岳▲
城山▲
燈明ヶ岳▲
三国山▲
熊取町
*1
橋本市
人や会社などの所有する私有林
わり あい
いわ で
の割 合 は,和歌山市,岩 出 市,
紀の川市,かつらぎ町,橋本市
岩出市
紀の川市
和歌山市
森林面積のほとんどが民有林
となっています。そのうち,個
かつらぎ町
加太
ています。
しょゆう
風吹峠
雄山峠
札立山▲
孝子峠
友ヶ島
爼石山▲
岬町
四石山▲
阪南市
河内長野市
大石ヶ峰▲
料
泉南市
泉佐野市
資
田尻町
と
面積が広く,
紀の川市から伊都・
の各市町村ともおよそ90%を
紀ノ川
し
和歌山県
(国土地理院 土地利用図より)
占めています。
残りの公有林は,
県や市町村がもつ山林のほか,
むかし
いりあい ち
ざいさん
昔,村の入会地であったところが財産区有林とし
*2
て紀の川市や橋本市などに残されています。国有
せ と ないかい
林の面積はほんのわずかで,和歌山市の瀬戸内海
こくりつこうえん
いち ぶ
かぜふきとうげ
国立公園などの一部や,岩出市の風吹峠,紀の川
市のごく一部に見られるにすぎません。
和泉山ろくの開発
最近,和泉山ろくの一部は開発がすすんで
け しき
景色
が変わってきています。
きゅう りょう
その丘陵台地の開発は,1955(昭和30)年ご
けいざい
ろからの高度経済成長期に,和歌山市や橋本市で
雄山峠を通る阪和自動車道
*1 国のもっている林野(国有林)以外のすべての林野で公有林,私有林をさす。
たきぎ
*2 山ろくの村の人々が共同で利用する山野。昔はまぐさや肥料にする雑草・薪などをとった。
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和泉山脈の自然と都市の開発
はん わ
む そ た
なる
ゴルフ場がつくられたのが始まりです。1965年ごろからは,JR阪和線の六十谷駅の北方に建設された鳴
たき
き せん
滝団地や岩出市紀泉台など,各地に住宅団地がつくられるようになりました。1975年になると,橋本市の
しろやま
みついし
だい き
ぼ
つうきんしゃ
えいせい
北部の台地に城山台・三石台などの大規模な住宅地ができ,大阪府への通勤者が増えて,橋本市は衛星都
い てん
*1
きん き
市としてのはたらきを強めました。1985年ごろからは,和歌山大学の移転や近畿大学の新キャンパスの建
うめ た
ど しゃ
か
だ
おおがた
設のほか,関西国際空港の埋立ての土砂が和歌山市の加太からとられたり,大型の開発がすすみました。
お みね
さらに,平成期に入ってからも,橋本市の小峰台・あやの台や,和歌山大学近くのふじと台などの宅地開発
たかだい
けい な わ
や,山脈に沿う高台には京奈和自動車道の建設がすすめられています。
自然の保護と保全
きょう し
おのやま
和泉山脈には, 孝子峠(106m,和歌山市)
,雄山峠(181m,
ざ おう
和歌山市),風吹峠(216m,岩出市),蔵王峠(553m,かつ
き み
とうげみち
らぎ町),紀見峠(380m,橋本市)などの峠道があり,昔から
さか
こう か きょう
人と物の交流が盛んでした。これらの峠は,トンネルや高架橋
によって,鉄道や自動車道となり,峠道は大きく変わりました。
ほ ぜん
一方,開発するだけでなく,山林の保全はきわめて大切です。
さんちょう
げんせい
てんねん き ねんぶつ
和泉山脈の山頂に広がるブナの原生林は国の天然記念物に指定
*2
かんきょう
されていますが,自然環境の保護のために瀬戸内海国立公園・
き せんこくてい
きん き けんきんこうりょく ち
ハイランドパーク粉河
ほ ぜん く いき
金剛生駒紀泉国定公園・近畿圏近郊緑地保全区域などの指定も
みられます。
ど じょう
2001(平成13)年に成立した森林・林業基本法では,木材生産だけでなく水源や土壌の保全,地球温
暖化の防止,住民の保健休養など森林のもつ役割を明らかにしています。和泉山脈でも,ところどころで,
よう
ど しゃりゅうしゅつぼう び
ひょう じ ばん
水源かん養保安林・土砂流出防備保安林・保健保安林などの標示板をみることができます。また,山頂の
こ かわ
いこ
展望台や,その西につづく紀の川市の「ハイランドパーク粉河」の展望台(748m)の付近は,住民の憩
ね ごろやま
きょうせい
いの場となっています。そして,岩出市の県立森林公園「根来山げんきの森」
(250m)は,木と人が共生
し せつ
する森林レクリエーション施設として知られています。
和泉山脈(和歌山県)の自然保護関係図(2008年)
大 阪 府
関西国際空港
奈 良 県
あやの台
城山台
三石台
蔵王峠
燈明岳▲
小峰台
●橋本
紀泉台
鳴滝団地
三国山▲
山脈
和泉
風吹峠
雄山峠
爼石山▲
札立山▲
孝子峠
友ヶ島
四石山▲
住宅団地
燈明ヶ岳▲
山林地域
城山▲
保安林
大石ヶ峰▲
近畿圏近郊緑地保全区域
紀見峠
金剛生駒紀泉国定公園
岩湧山▲
瀬戸内海国立公園
桜台
●粉河
●岩出
ふじと台
●和歌山
紀ノ川
和歌山県
(参考資料)
・近郊緑地保全区域図(国土交通省国土計画局)
・和歌山県保安林配置図(和歌山県)
・和歌山県自然公園・自然環境保全地域位置図(和歌山県)
*1 大阪市のような大きな都市を惑星(地球)とすると,和歌山市や橋本市はそのまわりにある衛星(月)にあたり,大阪との関係が深い。
*2 人の手の加わっていない自然のままの森林。
和泉山脈の自然と都市の開発
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