平成25年3月28日 於 ジャパン・タックス ・インスティチュート 税務行政の国際的な動向 国税庁長官官房審議官(国際担当) 上田 衛門 1 1 コンプライアンス向上のための取組 2 二重課税への取組 3 アジア地域における協力 2 1 コンプライアンス向上のための取組 1‐1 情報交換 1‐2 ベスト・プラクティスの共有 1‐3 徴収共助 1‐4 新たな課題 ① FATCA(外国口座税務コンプライアンス法) ② BEPS(税源侵食と利益移転) ③ 無形資産 3 1-1 情報交換 4 第2回金融・世界経済サミット首脳宣言(抄) (2009年4月2日、ロンドン) タックス・ヘイブンを含む非協力的な国・地域に 対する措置を実施する。我々は、財政及び金融 システムを保護するために制裁を行う用意があ る。 銀行機密の時代は終わった。 我々は、税に関する情報交換の国際基準に反し ているとグローバル・フォーラムによって評価され た国のリストを本日経済協力開発機構(OECD)が 発表したことに留意する。 5 我が国の情報交換ネットワークの拡充 国・地域 発効年月 内容 香港 23年8月 新たに租税協定を締結。 バハマ 23年8月 新たに租税協定を締結。 マン島 23年9月 新たに情報交換協定を締結。 ケイマン諸島 23年11月 ケイマン国内法に基づく片務的情報交換に代 えて、新たに租税協定を締結。 スイス 23年12月 条約改正により国際基準に則った情報交換規 定を新設。 ルクセンブルグ 23年12月 条約改正により国際基準に則った情報交換規 定を新設。 リヒテンシュタイン 24年12月 新たに情報交換協定を締結。 6 我が国の租税条約ネットワーク 平成25年1月末現在、我が国が締結している租税条約等は54条約(適用国・地域は65 か国・地域) 「※」は、租税に関する情報交換規定を主体とするもの。 7 租税条約等に基づく情報交換のイメージ 日 本 国税庁 外 国 ③情報交換要請 税務当局 ⑤関連情報の提供 ①調査 A社 ④調査 ②不審な金の支払 B社/C銀行 8 我が国の情報交換件数の推移 情報交換件数(総計)及び 情報交換ミーティング事案件数 個別の情報交換要請件数(地域別) 情報交換件数の推移 (件) (千件) 600 556 500 500 30 25 25 400 300 20 294 291 15 260 200 10 11 100 5 2 0 0 19年度 20年度 情報交換件数 21年度 22年度 23年度 情報交換ミーティング事案数 9 効果的な情報交換に向けた取組等 ¾ 外国税務当局との「情報交換ミーティング」の実施 • 複雑な取引に係る事案や、迅速な情報入手が必要な事案が対象。 • 相手当局職員と直接面談し事案の詳細や解明すべきポイント等を説明。 ¾ 「国際タックスシェルター情報センター」(JITSIC)の活用 • • 加盟9カ国(日、米、英、加、豪、韓、中、仏、独)が ロンドン、ワシ ントンの両事務所に職員を派遣。 国際的租税回避スキーム及び富裕層に関連した情報交換要請への対応や 調査手法等の知見の共有。 ¾ 日米同時査察調査実施取決めの合意 • • 24年7月、日米の権限のある当局は、日米租税条約第26条に基づいて行われ る情報交換に関し、「アメリカ合衆国と日本国の権限ある当局間の同時査察調 査実施取決め」に合意。 同時査察調査とは、日米両国において、関連する納税者等にそれぞれ犯 則嫌疑がある場合に、両国の査察部門が並行して査察調査を行うもの。 10 税の透明性及び情報交換に関するグローバル・フォーラム (Global Forum on Transparency and Exchange of Information for Tax Purposes) ¾ 税の透明性及び情報交換の分野におけるOECD加 盟国と非加盟国との間の対話のフォーラム。 ¾ 税の情報交換に関する国際基準を実施させるた めに、情報交換協定や国内法整備の状況とその実 施状況についてのモニタリング及び相互検証(ピ ア・レビュー)を行う場となっている。 ¾ 2013年1月末時点で、OECD加盟国に加え、非加 盟国も含む合計118の国と地域が参加している。 11 国際的に合意された税の基準の実施についてOECDグローバル・フォー ラムにより調査された国・地域に関する進捗報告書 2009年4月2日、OECD事務局は、税に関する情報交換 のOECD基準(注)の実施状況に関する進捗報告書を 発表。82の国・地域を以下の3つのグループに分類。 ① OECD基準を実施している国・地域(40の国・地域) ② OECD基準にコミットしているが、実施が不十分な国・地 域(38の国・地域) ③ OECD基準にコミットしていない国・地域(4の国・地域) (注)税に関する情報交換のOECD基準の核心的部分は以下の通り。 • 金融機関が所有する情報を交換する(銀行機密の否定) • 自国の課税利益がなくても情報を入手し交換する 12 国際的に合意された税の基準の実施についてOECDグローバル・フォーラムにより 調査された国・地域に関する進捗報告書 (2012年12月5日現在、当初のレポートは2009年4月2日発表) ① OECD基準を実施している国・地域 アンドラ、アンギラ、アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、アルバ、オーストラリア、オーストリア、 バハマ、バーレーン、バルバドス、ベルギー、ベリーズ、バミューダ、ブラジル、英領ヴァー ジン諸島、ブルネイ、カナダ、ケイマン諸島、チリ、中国、クック諸島、コスタリカ、キュラサオ、 キプロス、チェコ、デンマーク、ドミニカ、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ジブラルタ ル、ギリシャ、グレナダ、グアテマラ、ガーンジー、香港、ハンガリー、アイスランド、インド、イン ドネシア、アイルランド、マン島、イスラエル、イタリア、日本、ジャージー、韓国、リベリア、リヒ テンシュタイン、ルクセンブルク、マカオ、マレーシア、マルタ、マーシャル諸島、モーリシャス、 メキシコ、モナコ、モンセラット、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、 パナマ、フィリピン、 ポーランド、ポルトガル、カタール、ロシア、セントキッツ・ネービス、セントルシア、セントビンセント・グレナ ディーン諸島、サモア、サンマリノ、セーシェル、シンガポール、シント・マールテン、スロバキア、 スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、タークス・カイコス諸島、アラ ブ首長国連邦、イギリス、アメリカ、ウルグアイ、米領ヴァージン諸島、バヌアツ ② OECD基準にコミットしているが、実施が不十分な国・地域 ナウル、ニウエ ③ OECD基準にコミットしていない国・地域 なし ※現在、グローバル・フォーラムによって調査されたすべての国・地域は、国際的に合意され 13 た税の基準の実施にコミットしている。 G20声明(透明性及び情報交換に関する グローバルフォーラム関連) G20財務大臣会合声明(2013年2月 於:モスクワ) (パラ20)我々は透明性及び情報交換に関するグローバル・ フォーラムに対し、情報交換についての国際的な基準の実施 を継続的に評価し監視することに引き続き素早い進歩をとげ ることを奨励し、2013年4月までに進捗報告書を期待する。我々 は、適切な場合には自動的な情報交換の実践を拡大するとい うコミットメントを再確認し、この分野での最近の進捗を称賛す る。我々はその領域における多国間の実施についてのOECD の分析を支持する。 14 1‐2 ベスト・プラクティスの共有 15 OECD税務長官会議 (FTA:Forum on Tax administration) ¾ 税務行政の幅広い分野にわたって各国ベストプラク ティスの比較・検討を行う目的で2002年に設置。 OECD加盟国(現在34か国)及び主要な非加盟国・地 域の長官クラスが参加。 ¾ 2012年1月にブエノスアイレス(アルゼンチン)で、 オフショア・コンプライアンスの強化等を主要議題 とした第7回会合が行われた。 ¾ 次回会合は2013年5月16‐17日にモスクワにて開催の 予定。 16 第7回OECD税務長官会議 ブエノスアイレス声明 (オフショア・コンプライアンス) ¾ 第7回OECD税務長官会合(FTA)は、(中略)オフショアにお ける税の濫用と闘うため、統一的かつ強化されたコミットメント を行い締めくくられた。 ¾ 我々の戦略には、これまでにないほどの情報の共有や交換及び 協調的な行動が含まれるが、これは濫用的なオフショア・スキー ムのプロモーター及び利用者をより上手く特定し、休むことなく 追跡するためである。かつて資金及び資産を海外に隠すことは安 全であると感じていた人々は、今や徐々にリスクのある立場に置 かれている。 ¾ 我々が包囲網を強化しているとプロモーター及びファシリテー ターが感じた時、彼らは単に新たな場所に移動するだけかもしれ ない。我々は、彼らがどこにいようとも、彼らを執拗に追跡する であろう。 ¾ 我々は更に、最終的にオフショアにおけるノンコンプライアン スに終止符を打つため、各国による協調的な行動が必要であるこ とに同意した。 17 オフショア・コンプライアンスに関する取組 ¾ 我が国の提案により、FTAオフショア・コンプラ イアンス・ネットワークのワークショップを東京 で開催(2012年11月28・29日)。22の国・地域よ り30名以上の税務当局の専門家が参加。 ¾ 各国の自主開示プログラム(注)に係る知見の共有や、 オフショア取引を利用した脱税事案の調査手法等 の共有。 (注) 自主開示プログラム:無申告のオフショア預金口座やオフショ ア財産等を有している納税者に対し、期間を限定して自主申告を慫 慂し、これに応じた者については刑事罰や加算税を減免することに より、オフショア・コンプライアンスの向上を目的とするもの。 18 1‐3 徴収共助 19 税務行政執行共助条約 ¾ 税務行政執行共助条約への署名 平成23年11月、我が国は、税務当局間で徴収共助等の行政支援を 相互に行うための多国間条約である税務行政執行共助条約に署名。 税務行政執行共助条約は、本条約の締約国間で、租税に関する以 下の行政支援を相互に行うための多数国間条約であり、本条約を締 結することにより、国際的な脱税及び租税回避行為に適切に対処し ていくことが可能になる。 ① 情報交換:締約国間において、租税に関する情報を相互に交換する ことができる。 ② 徴収共助:租税の滞納者の資産が他の締約国にある場合、他の締約 国にその租税の徴収を依頼することができる。 ③ 送達共助:租税に関する文書の名宛人が他の締約国にいる場合、他 の締約国にその文書の送達を依頼することができる。 20 徴収共助 ¾ 徴収共助 徴収共助とは、相互主義の下、ある国の税務当局が、他国の税務当局 からの要請に基づき、当該他国の租税債権を当該他国のために、当該 他国の納税者又は納税者の財産から徴収することをいう。 A国 B国 ③ 徴収共助要請 A国当局 B国当局 ⑤ 送金 ④徴収 ①課税 納 税 者 ② 財産移転 21 徴収共助(改正日米条約) ¾改正日米租税条約 本年1月、日米両国は日米租税条約の改正議定書に署名。改 正議定書は、2004年に発効した現行条約の一部を改正するも のであり、両国の税務当局間の協力関係の強化の文脈では、 徴収共助の対象を拡大した。 ¾徴収共助の対象範囲の拡大 (現行条約)条約濫用の場合に対象範囲を限定 (改正後) 滞納租税債権一般について適用 ¾対象税目 所得税、法人税、復興特別所得税、復興特別法人税、消費 税、相続税、贈与税 22 1‐4 新たな課題 ① FATCA(外国口座税務コンプライアンス法) 23 FATCAとは ¾ 外国口座税務コンプライアンス法(FATCA;Foreign Account Tax Compliance Act)は、米国人による海外口座を使った租税回避を防止する ために、2010年3月に成立した米国法。 ¾ 外国の金融機関に対して米国人が保有する口座の情報を米国政府に提供 するよう求めるもの。具体的には、外国の金融機関に以下を求めている。 ①米国・内国歳入庁との契約及び登録 ②米国人が保有する口座を確認し、その情報(注1)を米国・内国歳入庁へ 報告 ③口座確認に非協力的な口座の米国源泉所得(注2)への源泉徴収 ④口座確認に非協力的な口座の最終的な閉鎖 ¾ 米国・内国歳入庁と契約しない外国の金融機関に対して、米国・内国歳 入庁はその米国源泉所得に源泉徴収税を課す。 (注1)氏名、住所、米国納税者番号、口座番号、口座残高等 (注2)米国源泉所得:米国債(株式)から得られる利子(配当)収入、売却収入等 24 FATCAに関する日米政府間の枠組み z租税条約の活用により個人情報保護法・源泉徴収・口座閉鎖の問題を解決。 z 2012年6月21日に、当局間の日米共同声明を公表。 日本 ③租税条約に基づく 情報要請・情報提供 国税庁 ④同意のない 個別情報 内国歳入庁(IRS) ②非協力口座の 総数・総額情報 金融機関は 内国歳入庁に登録 ①協力口座の 個別情報 口座情報 口座情報 口座閉鎖なし 非協力口座 (口座確認・情報提供 に不同意) 源泉徴収なし 配当 利子など 日本の金融機関 源泉徴収なし 米国 米国企業 米国債など 協力口座 (口座確認・情報提供 に同意) 25 1‐4 新たな課題 ② BEPS(税源侵食と利益移転) 26 最近のG20声明(BEPS関連) G20財務大臣会合声明(2013年2月 於:モスクワ) (パラ20)税の分野では、我々は税源浸食と 利益移転を扱ったOECDの報告を歓迎し、財 政の持続可能性の重要な部分は、我々の歳 入基盤の確保であるということを認識する。 我々は税源浸食と利益移転に対処するため の手法を策定し、必要な共同行動をとるこ とを決意しており、OECDが7月に我々に示 す包括的な行動計画に期待する。 27 租税回避を巡るOECD租税委員会のこれまでの取組 ¾ 1998年 OECD有害税制フォーラムがタックスヘイブンの判定基準を策定 以下の1に該当し、かつ、2∼4のいずれかに該当する場合にタックスヘイ ブンと判定 1. 金融・サービス等活動から生じる所得に対して無税若しくは名目的課税 2. 実効的な情報交換の欠如 3. 税制の透明性の欠如 4. 誘致される金融・サービス等の活動について実質的な活動が行われることが要求 されない ¾ 2001年 タックスヘイブンの基準の見直し 上記1については、全ての国は税を課すか課さないかを決定し適切な税率を決 定する 権利を有する、上記4については、実質的な活動が行われているか否かの決定 は困難、 という理由からタックスヘイブンの基準から除外 ¾ 2005年 OECDモデル租税条約26条の改正による情報交換根拠規定の強化 ①銀行機密の否定、②自国に課税利益がない場合でも情報を収集し提供 ¾ 2009年9月 OECD「税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」を拡大・ 改組 ・ 各国の透明性・情報交換に関する法制整備とその実施の状況について相互審査 を 2010年より実施。 ・ 審査項目は主として、①税に関する情報(取引情報、所有者情報等)の保存、 ②課税 28 当局による情報入手の権限の具備、③租税条約等の情報交換規定の国際基準遵守。 BEPSを巡るOECDの議論 ¾ 2012年6月、OECD租税委員会(CFA)本会合におい て、BEPSについての問題意識が共有され、CFAにお いて作業を進めていくことを合意。 ¾ 上記作業は、国境を越えた脱税・租税回避スキー ム全体を解明し、国際協調の下、戦略的かつ分野 横断的に問題解決を図ることを目的としている。 ¾ 2013年2月、1月のCFA本会合において承認された BEPSに係る現状分析資料「Addressing Base Erosion and Profit Shifting」が公表。 29 英キャメロン首相演説(BEPS関連) ¾ 世界経済フォーラム年次総会(1月23日∼27日 於ダボス)において、 今年のG8議長国である英国のキャメロン首相が演説を行った。 ※今年のG8サミットは、本年6月17、18日に英国・北アイルランドで開催予定。 ¾ この演説で、同首相はG8の経済分野における優先課題を①自由貿 易の発展(Trade)、②より公平な税制(Tax)、③政府及び企業の透明 性向上(Transparency)の3つであると表明した。 ¾ 「私は低税率を支持しているが、課税ベースなくして低税率は維持 できないのであり、個人や企業は妥当な分の税金を納めるべきであ る。公平な税金の負担を逃れ続けることができると考えている企業、 英国で事業を継続し、一層複雑な仕組みを海外に組成して徹底的に 税金を回避できると考えている企業は目を覚まさなければならない (“they need to wake up and smell the coffee”)」 30 スターバックス英国法人と英国税務当局との合意(1) 1. 2. 3. 4. 問題の背景 利益移転の概要 同法人の見解と批判の高まり 自発的な“税”支払いを約束 1. 問題の背景 ¾ 1998年に英国での事業を開始して以来、30億ポンド (4260億円)の売上があったが、多額の損失が同時に計上 されたため法人税の納付額はわずかに860万ポンド(12億 円) ¾ これについて、同法人が低税率国に利益を移転している ためであるとの指摘 報道情報に基づき作成 31 スターバックス英国法人と英国税務当局との合意(2) 2.利益移転の概要 米国関連法人 利子支払い ・・・ 英国からの 利益移転 貸付金 英国法人 ※スイスでは、日用品 の貿易に係る利益に対 する税率はわずか5%。 割高な 材料費 スイス関連法人 ロースト済 コーヒー豆 ロイヤルティ 商標等のライ センス付与 オランダ関連法人 報道情報に基づき作成 32 スターバックス英国法人と英国税務当局との合意(3) 3. 同法人の見解と批判の高まり ¾ 同法人は、高額な賃料支払い等の経営戦略上のミスに より損失を計上していたに過ぎないと説明。 ¾ 英スターバックスの納税額に関する報道等を受け、不買 運動などの批判が高まった。 4. 自発的な“税”支払いを約束 ¾ 2013‐14年の2年間にわたって、企業内ローンの利払い や原料費にかかる2000万ポンドを控除の対象外とする。 ¾ 2013‐14年の2年間にわたって、利益の有無にかかわら ず年間1000万ポンド(14億円)を英国政府に対して支払う。 報道情報に基づき作成 33 1‐4 新たな課題 ③ 無形資産 34 無形資産の取扱い 2012年6月、OECDは無形資産のディスカッション・ ドラフト(OECD 移転価格ガイドライン(TPG)第Ⅵ章 改訂案)を公表。 ¾ 1996年、TPGに無形資産に関する第Ⅵ章を追加し、商 業上の無形資産(特許、ノウハウ、デザイン等)に関す る指針を記述。 ¾ その後、各国の移転価格税制に関する実務的な経験が 進み、現在のTPGでは、国際的な指針として不十分であ り、再検討の必要があるとの税務当局とビジネス界の 双方の認識。 35 OECDにおける無形資産に係る議論 ¾ TPGの無形資産に係る主な議論は次の3点 ① 無形資産の定義 ② 無形資産に関するリターンを受ける当事者の特定 (IRR:Intangible Related Return) ③ 無形資産の評価方法 ¾ OECD作業部会でのパブリックコンサルテーション や議論を経て、2014年のTPG改訂が目標 36 2 二重課税への取組 2-1 相互協議の現状と課題 2-2 新たな動向:仲裁手続の導入 37 2‐1 相互協議の現状と課題 38 相互協議のイメージ 【日本親会社の所得】 【外国子会社の所得】 移転価格課税 100 50 70 外 国 税務当局 相互協議 国 税 庁 30 移転価格課税を 30とする合意 二重課税排除のため30の減額 100 20 30 100 当初の移転価格課税を20減額 39 相互協議事案発生件数の推移 事務年度 40 相互協議事案処理件数の推移 事務年度 41 処理事案の地域別内訳 42 対OECD非加盟国の発生・処理件数 件数 40 30 件数 30 発生件数 26 61 11 0 平20 平21 平22 平23 事務年度 11 3 6 平19 平20 8 内事前確認 82 95 67 60 66 15 0 平19 12 10 11 繰越件数 74 80 19 20 26 15 内事前確認 18 13 24 処理件数 24 18 件数 100 32 24 20 10 同・繰越件数 同・処理件数 OECD非加盟国・発生件数 56 40 8 33 38 45 内事前確認 20 平21 平22 平23 事務年度 平19 平20 平21 平22 平23 事務年度 43 相互協議の実施状況 ¾ 1カ国あたり、平均して、年に2,3回程度、1回につ き1週間程度の定期協議を実施 (例)事案数が最も多い米国の場合、2週間の定期協議を年に4回実施 ¾ 定期協議に加えて、必要に応じて、アドホック協議 (臨時の協議)やシニア協議(審議官レベルの協議) も実施 44 相互協議の相手国(平成25年1月末現在) 欧 州 アジア・大洋州 北 米 ベルギー ※ オーストラリア ※ カナダ ※ チェコ ※ 韓国 ※ アメリカ ※ 中国 ※ デンマーク O E C D 加 盟 国 フランス ※ ドイツ ※ アイルランド ※ イタリア ※ ルクセンブルク ※ オランダ ※ スウェーデン ※ スイス ※ イギリス ※ O E C D 非 加 盟 国 インド インドネシア マレーシア 12か国 シンガポール ※ タイ ※ 8か国 2か国 (備考) 平成24年6月末現在で、相互協議を実施している相手国 (計22か国)。 国名の右の 「※」 は、事前確認に係る相互協議を実施している相手国 (18か国)。 45 相互協議事案 事務年度別発生・処理・繰越件数 (平成21事務年度∼平成23事務年度) (単位:件) 相互協議事案の種別 事務年度 平21 平22 平23 事前確認 移転価格 課 税 その他 合 計 発生 149 27 7 183 処理 105 33 16 154 繰越 305 58 17 380 発生 135 14 8 157 処理 128 27 9 164 繰越 312 45 16 373 発生 112 21 10 143 処理 135 15 7 157 繰越 289 51 19 359 (注) 1 事務年度は7月1日から翌年6月30日までである。 2 発生件数は、納税者からの相互協議申立て又は相手国税務当局からの相互協議の申入れがあった件数である。 3 事前確認に係る相互協議事案の合意後、当該事案に係る補償調整及び修正について納税者からの申立て又は相手国税務当 局からの 申入れがあった場合には、当該申立て又は当該申入れが行われた年度の発生件数としてカウントしている。 4 処理件数は、相手国税務当局との合意、納税者による相互協議の申立ての取下げ等により相互協議を終了した件数である。 5 「その他」欄には、恒久的施設(PE)に関する事案や、源泉所得税に関する事案などが含まれる。 46 2‐2 新たな動向:仲裁手続の導入 47 相互協議手続と仲裁 租税条約における仲裁制度とは、二国間で生じた租税条約上の税務紛争が税務当局間の協議(相互協 議)により解決されない場合に、相互協議の円滑化・実効性を確保し、納税者の負担を軽減するため、税務当 局間の協議により解決されない事項を、第三者から構成される仲裁委員会により解決する制度。 〔仲裁のイメージ〕 A国 納税者 B国 ①課税処分 ②相互協議の申立て A国当局 B国当局 ③相互協議の実施 ④一定期間内に税務当局間の協議で解決できない事項を、 納税者の要請に基づき、仲裁に付託 ⑤仲裁委員会の決定 による解決 48 相互協議への仲裁手続の導入 平成20年のOECDモデル租税条約の改定において、 相互協議条項に仲裁手続が導入 (我が国の二国間条約にも順次導入) ○日米租税条約(平成25年1月署名) 上記のほか、日香港、日蘭の各条約については、発効済み。 また、日ポルトガル、日ニュージーランドの各条約について も両国間で署名済 仲裁手続の導入を進めることにより、税務当局間において相 互協議の事案の解決に至らない場合であっても、仲裁による 解決が可能となる。相互協議の実効性が高まることが期待さ れる。 49 相互協議への仲裁手続の導入(改正日米租税条約) 日米租税条約 〔参考〕OECDモデル条約 仲裁の対象 課税事案(APA事案は、二重課税が生じたもののみ を対象) 仲裁の要件 ○ 相互協議の開始から2年以内(又は権限のある当 ○ 相互協議の開始から2年以内 局が別途合意した期間内)に合意に至らない に合意に至らない ○ 納税者が仲裁の要請を行う ○ 納税者が仲裁の要請を行う ○ 権限のある当局が合意した不適格事案ではない ○ 裁判所又は行政審判所が決定 ○ 納税者が仲裁に関する情報の守秘に合意する を下していない ○ 裁判所又は行政審判所が決定を下していない 課税事案 仲裁付託事項 権限のある当局間で未解決の事項 同左 仲裁委員会の構成 独立した3名の仲裁人により構成 3名の仲裁人により構成 仲裁決定の方法 仲裁の効果 仲裁実施手続き 仲裁委員会は、いずれか一方の当局の提案を選択 することにより決定 仲裁委員会が独自の判断により 決定 納税者が仲裁決定を受け入れた場合、当局を拘束 同左 権限のある当局間の実施取決めで規定 同左 50 3 アジア地域における協力 3‐1 多国間・二国間の税務協力 3‐2 開発途上国への技術協力 51 3‐1 多国間・二国間の税務協力 52 アジア税務長官会合 (SGATAR:Study Group on Asian Tax Administration and Research) 税務執行面における国際協力の促進を図るとともに、直面する共通の 諸問題についての意見交換を目的として、1971年より毎年開催(現在 まで42回開催)。アジア太平洋地域諸国・地域の16か国・地域(※) が参加。 2012年は11月にタイ・チェンマイにおいて開催され、各国税務当局の 最近の動向、大規模納税者に対する税務行政、相互協議における紛争解 決、税の犯罪に対する調査等について、意見交換が行われた。 (※) 日本、オーストラリア、中国、香港、インドネシア、 韓国、マカオ、マレーシア、モンゴル、ニュージーラ ンド、パプアニューギニア、フィリピン、シンガポー ル、台湾、タイ、ベトナム 53 日中税務長官会合・日韓税務長官会合 ¾目的 両国税務当局トップが、税務行政の共通の諸問題に関 して意見交換を行い、両国における税務行政の改善に資 するとともに、相互協力の発展を図ること。 ¾会合開催時期 日中税務長官会合:1995年∼ 日韓税務長官会合:1990年∼ 第21回日韓税務長官会合 第18回日中税務長官会合 54 3‐2 開発途上国への技術協力 55 開発途上国に対する技術協力(税務行政支援) 【日本】 【開発途上国】 短期・長期専門家の派遣 研修・支援 国税庁 研修 税務当局 職員の受入れ ・国際税務行政セミナー(ISTAX) ・外国税務職員に対する短期研修 ・留学中の外国税務職員に対する研修(国税庁実務研修) 技術協力:人材の育成、適正な課税、納税者サービス、組織管理などの ノウハウや経験の提供 アジア諸国等の法執行体制・投資環境の改善 56 税務執行における技術協力 【受入型】 ¾ 日本の税制・税務行政全般に関する研修(包括型の研修) 開発途上国の税務職員を対象に日本の税制・税務行政全般について講義・視察を行う。 ¾ 特定のテーマに関する研修(テーマ・フォーカス型の研修) ① 支援対象国との間で合意されたテーマに関して、対象国の個別具体的なニーズに沿っ た内容の講義・視察を行う。 ② アジアの複数国の国際課税に従事する職員を対象に、テーマを国際課税に絞った 講義 を行う。 ¾ 大学との連携を通じた研修 世界銀行等の奨学金制度を利用し、日本の大学院修士課程へ留学している各国職員を対 象に、日本の税制・税務行政について講義・視察を行う。 【派遣型】 ¾ 長期専門家派遣 開発途上国へ長期間職員を派遣し、税務当局へのアドバイスや研修を実施。現在、 インドネ シア、マレーシア、ベトナムへ派遣。 ¾ 短期専門家派遣 開発途上国における税務当局向けの研修に職員を講師として短期的に派遣。 57
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