手書き文字入力システムの提案 2006 年 12 月 井戸伸彦([email protected]) ■はじめに 当方で考案しました、漢字学習システムに用いる手書き漢字入力システムについて説明さ せて頂きます。 《要旨》①現在使用されている文字の手書き入力システムではポインティングデバイスの 軌跡を表示するものが主ですが、提案システムではこれを文字中のストロークと 解釈して表示することに加えて、該ストローク中の始点・終点・折れ点・曲線の 描き方を決める点を含む、文字の書き方を表す特徴点を、図形による印や色を用 いて表示します。また、それら特徴点の変更・追加・削除を行って、入力したス トロークの変更が出来るようにします。 ②提案の文字手書き入力システムを用いれば、漢字の入力において、入力者が意 図したとおりの画・頂点になっているか否かを視認することができます。すなわ ち、漢字書き取り試験で用いれば、試験受験者の意図に反した解釈を入力システ ムが行うことによって正解不正解に関して誤った判定を下すことを防げます。 なお本資料に含まれる技術的な情報は、報告者が知的所有権を有し、特許を出願済みです。 ■1.提案のアイディア 提案方法では、ポインティングデバイスの操作 による軌跡を入力して、文字中のストロークと して代数的曲線により表現して表示します。こ れに加えて、該ストローク中の始点・終点・折 れ点・曲線の描き方を決める点を含む、文字の 書き方を表す特徴点を、図形による印や色を用 いて表示します。 右図は、提案システムでの“与”という漢字の 入力の過程を示しています。ポインティングデ バイスにより入力された軌跡は漢字のストロー クとして、直線もしくは曲線よりなるパスによ り表示され、さらに各パスには、始点を表す○ 印、折れ点もしくは終点を表す□印、曲線の制 御点を表すハート印が表示されます。 図で分かるように、“与”という漢字がどのような画から成り立っているとして入力を行っ たかを、誤解の余地なく視認することが出来ます。また、表示された○印□印ハート印を ポインティングデバイスで操作することにより、入力の変更も容易に行えます。 1 ■2.従来方法の問題点 文字の手書き入力システムでは、ポインティングデバイスの操作に伴い、その軌跡を表示 する方法を用いているものが多いようです。Microsoft Windows に装備された IME 手書き 入力もそうですし、ゲーム機の任天堂DSのソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」 においてもそうです。文字の手書き入力は、文字認識による入力手段として発展してきた 背景から、このようになっているものと思われます。 軌跡ではなく、代数曲線で表示を行う方法も提案されています(特許公開平11−143 354号)。この提案は、スプライン曲線を用いて表示することにより、入力時の手ぶれや 癖などのノイズに対して安定させることを目的としています。 上記の従来方法を漢字の書き取り試験を行うシステムで用いるとします。この時、入力し た文字のストローク中の文字の書き方を表す点について、入力を行なったシステム利用者 が考えていたものと、システムが該入力から判断するものとが一致しているか否かを、利 用者は知ることができません。軌跡が表示されている場合では、該軌跡中の手振れによる ゆがみが、システムによりストロークの折れ点と解釈される恐れがありますが、電子ペン 等の軌跡のみの表示を見ても、折れ点と解釈されているか否かを利用者は判断できません。 また、スプライン曲線によりノイズが平滑化されて表示されている場合でも、鈍角の折れ 線があるのか否かの判断や、漢字の画としてストロークが続いているのか否かの判断を、 システムがどのように行なっているかを利用者は知ることができません。 と解釈されて正解となるか、 入力者は もしくは、 視認出来ない と解釈されて不正解となるか? 一般的には、正解である入力に対して不正解とすることが無い様にして、不正解である入 力に対して正解としてしまう傾向があるシステムが多いようです。 「脳を鍛える大人のDS トレーニング」でも、適当な字を書いても正解となることが少なからずあります。このよ うな傾向も、文字認識による入力手段としての歴史からくるものと思われます。 提案システムでは、前頁の図のように、どのような画か、折れ点があるのか無いのか等、 入力者が視認することが出来るので、システムとの解釈の齟齬が生じる余地がありません。 これにより正誤の判断が正確に行えることはもちろん、曖昧さに関わる処理を行う必要が なくなり、平易で性能が良い実装とすることが可能となります。 2 (上記の文章は、実装したシステムにより出力したVMLでの手書き文字です。 ) 3 ■おわりに 漢字学習システムに用いる手書き漢字入力システムについて提案しました。提案方法につ いて、継続して議論して頂ける商用サイト運営者おられればご連絡を頂きたく、よろしく お願い申し上げます。 ―以上― 4
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