資金繰りの苦しい状況から脱却する方法

資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
無料レポート
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
1. 目次
【資金繰りの苦しい状況から脱却する方法】
1. 目次・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・3
3. 著者紹介・・・・・・・・・・・・・・・4
4. 倒産回避・苦しい資金繰りから解放されたい方へ・・・6
5. 資金調達以外の方法とは・・・8
6. 銀行融資を断られた時に、あなたのすべき 5 つのこと・・・12
7. 銀行はリスケジュールを受理してくれるのか?・・・・22
8. 競売からあなたの不動産を守る!資産防衛について・・・27
9. 連帯保証人に迷惑をかけたくない・・・・32
10. 債権者の取り立て行為・・・34
11. 会社の悪経営にメスを入れる・・・36
12. 事業再生は、お金のあるうちに・・・38
13. 振り返って・・・・41
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
2.はじめに
はじめまして、事業再生実践会の事業再生コンサルタントの水野です。
この度は、無料レポート「資金繰りの苦しい状況から脱却する方法」をご請求いただき、
誠にありがとうございます。
このレポートをご請求いただいたということは、冷やかしなどでなければ、
「このままの状態が続けば資金ショートしてしまう」
「資金が回らないからいっそのこと破産して、楽になろうかな・・・」
等と考えたことが、少しでもあるのではないでしょうか?
本レポートでは、資金繰りの厳しい企業が立ち直るために、やらなければいけない事や、
再生に必要な考え方など、資金繰りを楽にするための方法や倒産回避の気づきを得られる
ようになっております。
「どうせ無料だから、たいした事書いてないんだろ」と思う方がいらっしゃるかもしれま
せんが、そんな事はありません。無料でも、決して手を抜くことなく、経営者様のお役に
少しでも立てるよう執筆いたしました。
本レポートを読んでいただいた後は、きっと
「資金繰りは工夫と努力次第でなんとかなる」
「倒産を回避する方法が存在する」
という事に気づくはずです。
本レポートをお読みいただく事をきっかけに、
「解決策は存在する」という事に気づいてい
ただき、資金繰りの悩みが今よりも軽くなったり、
「もう破産しかないのか」と思い込んで
いた方が「破産しなくても解決策はある」という事に気づき、考え直してもらえるように
なれば、望外の幸せです。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
3. 著者紹介
水野諭史
事業再生実践会 代表
会社概要
会社名:
事業再生実践会
所在地:
広島県広島市中区広瀬北町3-11
和光広瀬ビル 4F
電話 :
082-277-9557
FAX:
082-277-2743
Add:
HP:
Facebook:
Blog:
生年月日:1978 年 10 月 12 日
出身:広島県広島市
趣味:
略歴:地元広島の勤めていた会社が収益悪化により会社倒産となる。
役員から会社を抜け出す中、最後まで会社に残り続け再生の道を社長と模索するが、債権
者(銀行や取引先)の強い圧力などにより倒産を余儀なくされる。
会社倒産の経験から、多くの会社の「明日の見えない経営状況」を何とか立て直したいと
思い、コンサルタントに転身。製造卸売会社への外部コンサルタントとして会社の立て直
しを行う。同時に、顧客管理プログラムを中心とした店舗再生ノウハウの提供を行う
個別コンサルティングが物理的に不可能になったためコンサルティング業務の新規契約を
終了する。しかしながら、1 人でも多くの飲食店経営者に、余計な経費を使わずに集客・
売上向上ノウハウを会得してもらうため、「小さな飲食店地域 NO1プロジェクト実践会」
の HP を立ち上げ、会員様と最新の成功事例を作り上げている。
現在は、事業再生実践会を立ち上げ、資金繰り不安や倒産不安に陥った会社の事業再生に
特化したコンサルティングサービスを提供。以降、事業再生コンサルタントとして活躍。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
「事業再生実践会」は、中小零細企業の事業再生や売上向上に特化したコンサルティング
サービスを提供しております。
この不況下、
“経営に行き詰まりを感じている”という経営者の方は少なくありません。
当「再生実践会」では、そんな経営者の方を徹底サポートし、経営の苦しみを幸せに
変えるお手伝いをしています。
最終ゴールとして掲げるのは、本当の意味での会社再生。
わたしたちは経営者の方とともに、その目標に向かって努力いたします。
中には「立ち行かなくなったら投げ出すんじゃない?」と不安に思う方もいらっしゃ
るかもしれませんが、一切そのようなことはありませんのでご安心ください。
当社では、年商 10 億円以下の法人企業に対する倒産回避、事業再生から売上向上まで
のコンサルティングを強みとしています。
また、会社のコア(核)としたリポジショニング、プロモーション戦略の再考・考案
が得意分野です。
コンサルティングサービスの概要としては、債務超過の解消、資金繰りに関するアド
バイス・リスケジュールによる会社再生、不動産の保全、売上向上など、経営再建に
付帯する様々なお手伝いをさせていただきます。経営者の方の「ゴール」を共に認識
し、事業再生を叶えるのが仕事です。
長くなりましたが、次ページより詳しく「倒産回避や苦しい資金繰りから逃れる方法」を
お伝えしていきます。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■倒産回避・苦しい資金繰りから解放されたい方へ
資金繰りが苦しくなると、
「自己破産して楽になりたい・・・」と考えるようになりま
す。経営者の方なら一度はそう思ったことがあるはずです。
しかし、安易に自己破産について考えることはお勧めできません。
なぜなら、そのネガティブな思考回路では、事業の成長や発展を考えられなくなり、
いつの間にか資金繰りの原因究明をしなくなってしまうからです。
もちろん、資金繰りの厳しい中、穏やかでいられる訳はありません。
嫌でも脳裏に「自己破産」の 4 文字が浮かぶのは自然なことです。
経験上、そのような気持ちは重々承知していますが、それでもなお、私がこう提唱す
るのは、自己破産を選ばずして資金繰りの苦しみから解放される、そんな方法を知っ
ているからなのです。
○破産を選んではいけない理由
「楽になる」ためには、会社経営に工夫を施すのか、すべてを精算し破産してしまう
のか、2つに1つしかありません。
破産は確かに楽なものです。
債権者の取り立てに怯えることも無く、入金の催促に対応することもなくなります。
事業を回す資金を工面することも、あらゆる取引先への支払いもしなくて済みます。
では、なぜ楽なのに破産を選んではいけないのか。
それは、あなたが今まで大切にしてきたもの、築きあげてきたものすべてを失ってし
まうからです。
資産も、信用も、大切に積み上げたノウハウも、事業も。
また、大切な思い出の詰まったマイホームさえ失うこともあります。
あなたが築き上げた生活、成長してきた証である技術、何もかもを失ってしまいます。
もちろん、あなたがこれから再就職できる可能性をお持ちであったり、落ち着いてか
ら再スタートする余裕があるのであればいいでしょう。
しかし、中小企業を経営している人の2割が 60 歳以上の高齢者。
そのような再スタートをきるには、あまりに非現実的です。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
「破産」に肯定的な専門家(コンサルタントや税理士)もいらっしゃいます。
若い方ならいいでしょう。いくらでもこれからやり直せます。
再就職もできるでしょうし、スポンサーを見つける可能性だってあります。
しかし、もしあなたが高齢であるなら、
その専門家と同じ目線で「破産しても大丈夫だ、楽になろう」と思うのはどうでしょ
うか。
ひとつご自身の年齢も加味して冷静に考えることをお勧めします。
もし、これから人生の再スタートをきるのは難しいと判断するなら、
「破産」以外の道
を選ぶ方が得策です。
ここからは、そんな破産以外の選択肢について、ご紹介して行きたいと思います。
○破産以外の道とは
破産を選ばずに楽になる方法があると申し上げました。
資金繰りに苦しんでいるあなたは、その苦しみの解放は「資金調達」にあるとお考え
ではありませんか?
そんなあなたにこそ知っていただきたいのが、
「資金繰りを楽にする」いくつかの方法
です。
例えば、銀行の融資などの資金調達なしに会社を回していけたらどうでしょう?
今までは、色んな銀行を回り借金を増やすだけ・・・。
もちろん、資金調達によりきちんと回復すれば構いませんが、もともと経営自体に難
があると、そう上手くもいきません。
資金調達以外で、経営者であるあなたを楽にする道とは・・・。
そんな工夫について、ここからはお話して行きたいと思います。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■資金調達以外の方法とは
まずは、具体的にその方法をご紹介して行きましょう。
○支払いサイトの延長を申請する
あなたがあらゆる「支払い」に苦しんでいるのなら、この方法が効果的です。
月末締めの翌月払いという条件であるなら、月末締めの翌々月払いにするだけでも資
金繰りは楽になります。
猶予されている間の売上や資金のやりくりで、なんとか支払いに間に合わせることも
できるかもしれません。支払いサイト 30 日から、支払いサイト 60 日になれば、気分
的にもあなたに余裕が生まれるはずです。
この時間的余裕と精神的余裕を手に入れれば、銀行融資以外の資金調達や、コスト削
減など、事業を動かして行く上でも対策がとれるようになるのです。
○入金を早めてもらう
取引先に交渉し、入金のタイミングを早めてもらうようにしましょう。
これは、支払いサイトの延長とともに行うことがお勧めです。
「経営者として恥ずかしい」と思うかもしれませんが、一度取引先に頭を下げれば、
大きな苦しみを回避することができるのです。
会社にあるお金が増えることで、経営的にも、気持ち的にも余裕が生まれます。
恥ずかしがっている場合ではありません。
資金繰りが楽になるのですから、頭を下げられる取引先を真っ先にピックアップして
いきましょう。
○売掛金担保融資(ABL)を利用する
売掛金担保融資とは、会社の売掛金債権を担保として、金融機関から資金調達を受け
ることです。
○在庫を利用した在庫担保融資(ABL)を利用する
売掛金が納入されるまでのつなぎの運転資金として、金融機関からの融資が可能とな
ります。動産(在庫・原材料・機械設備)を担保にし、銀行などからの融資を得られ
るようになります。
「お、うちの会社にも当てはまりそうだぞ」と思った方もいらっしゃるでしょう。
そんな方は、在庫になっている品をチェックしておくことが必要です。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
対象となるのは、製品や、食品、生花、酒など、様々な在庫商品。
あなたの会社にもこのような動産があるのであれば、立派な資金調達の材料になりま
す。
○売掛金ファクタリングを利用する
こちらは、売掛金債券をファクタリング会社(債券買収業者)に譲渡し、
それにより売掛金の早期回収を実現できるようになる方法です。
第三者であるファクタリング会社が代金の回収を行い、その譲渡金を毎月決められた
日に支払ってもらえるというシステム。
一定額、一定率での譲渡金を受け取る事ができるので、大きなメリットと言えるでし
ょう。
ただし、この場合は取引先とファクタリング会社とのやりとりになりますので、事前
に取引基本契約を結ぶ必要があり、従来の契約との変更を依頼しなければなりません。
「売掛金債券は第三者に譲渡しない」ことなどを条文として明記する必要もでてきま
すので注意しましょう。
○仕入れ代金を信販会社に立て替えてもらう
仕入れをしなければ事業を行うことはできません。その仕入れをするために資金が必
要なら、この方法を考えてみてください。
何百万もする仕入れの支払いを心配会社に分割払いで立て替えてもらえば、
資金調達をせずとも、仕入れ費用の負担を一時的に軽減させることができます。
この方法を取り入れる場合は、信販会社に連絡し相談してみましょう。
いかがでしょうか?
今「破産」を考えている方にも、どうにか資金調達以外の方法で、資金を得ること、
節約をすることが可能に思われたことでしょう。
中には、経営再建について前向きに考えることができた方もいるかもしれません。
これらは経営者であるあなたの資金繰りを「楽にする方法の一部」です。
他にも方法はいくらでもありますので、まずは諦めずに方法の模索に務めましょう。
まずは「破産」から頭を切り離し、なんとか身の回りから資金を捻出する方法を考え
るのが得策です。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
○融資を断られた時の心づもり
銀行へ融資を頼みに行くのはどんな経営者にも経験のあることでしょう。
融資担当者が重い口ぶりで「申し訳ないのですが・・・」
「今回の融資はちょっと・・・」
と新規の融資を断ると言うのは、テレビドラマなどでも見たことがあるかもしれませ
ん。あのシーンは、まさにその通りです。
そして、続いて「経営状況が変わるまでは、融資はできません」などと断られてしま
うのです。
経営が悪化しているから融資を頼んでいるのに、その道を断たれてしまったら、あな
たはどうしますか?
バイタリティのある方は粘り強く他行へ融資を申し込む方もいるでしょう。
諦めないことはとてもいいことです。もしかしたら「融資しましょう」と握手してく
れる銀行もあるかもしれません。
しかし、この状況ではなかなか OK を出してくれるところを見つけるのは至難の業だと
言えます。
このような「拒否」される経験を重ねると、今月、来月、その先と、考えれば考える
ほど「どうしよう」という焦燥の念でいっぱいになります。不安で仕方なくなり「ま
だ大丈夫だ!諦めないぞ!」といった、自分を鼓舞させるような意気込みは消滅して
しまいます。
当然「倒産」という言葉が浮かんでしまって仕方ない状況にも陥るでしょう。
こんなとき、不眠がちになり、心身ともに疲弊してしまう人も少なくありません。
ストレスの影響で、不眠症、胃腸炎、鬱病などを引き起こしてしまう経営者の方もい
らっしゃいます。
そんな状況では資金調達のアイデアも浮かばず、ただただ、「倒産」「破産」のことし
か考えられなくなります。すべてが悪循環になるのです。
経営者にとっては本当に苦しい局面です。
しかし、経営者の方には、このような状況になったとしても「絶対に乗り切ってやる!」
と強い心持ちを持っていただきたいと、私は思います。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
この期に及んで精神論かと思われるかもしれません。しかし、実際にこのような局面
から立ち上がった方達は、この「諦めない意思の強さ」を持っている場合がほとんど
なのです。
資金繰りで苦しんでいた。そして銀行に融資を断られた。もう破産しか無いと思った。
でも、「まだ諦めないぞ!」と奮い立った経営者達。
同じような経営の窮地に立たされていた経営者が経営危機脱出を成功させています。
先人達から学ぶことは本当に有効ですので「破産してしまえば・・・」と諦めず、
たとえ銀行からの融資が絶たれても、強い意志を持って経営を立て直して行くことが
大切です。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■銀行融資を断られた時に、あなたのすべき 5 つのこと
経営悪化、資金繰りの苦しさにより銀行融資を申し込むも融資を断られてしまった・・・。
あなたがそのような場面に立つことになったら、すぐに行動して欲しいことがありま
す。迷っている時間はありません。時間が経つにつれ、どんどん状況が悪化していく
と考えてください。反対に、早ければ早いほど状況を好転させるチャンスがあるので
す。
あなたがすべきことを 5 つ、以下でご紹介していきますので、しっかりと行動に移し
て行きましょう。
1)
状況を把握する
「資金が必要だ」と考え、それを断られた状況にある経営者。
「もうダメだ」と頭が真っ白になるのも無理はありませんが、こんな時こそ落ち着く
ことに務めましょう。
冷静になるのは難しいかもしれませんが、ここはとにかく冷静に、落ち着いて状況を
把握しなければなりません。
そういえば、そもそも、なぜ資金を必要としているのでしょうか?
あなたは本当にお金が必要ですか?融資でしかまかなえないことなのでしょうか?
融資を断られましたが、もしかしたら資金調達以外でもなんとかできる、
立て直しのヒントが隠されているかもしれません。
◆なぜ、資金が減るのか◆
そして、一番大切なのは「なぜ、資金調達が必要な状況に置かれてしまったか」とい
うことです。
例えば、株価の大暴落のあおりを受けて大損害を被ったとか、製品トラブルで負債を
負うことになったとか、特別な要因で資金が必要になることもあるでしょう。
または一方で、慢性的な赤字により資金が必要なのかもしれず、その原因を把握する
ことが大切です。
「なぜか現金が減ってしまう・・・」というのなら、その原因を突き止めなければ、
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
借りても、借りても、現金は減るばかりになってしまいます。
たとえ急場の資金調達ができたとしても、また時間が経てば資金繰りに至るのでは、
結局安定した経営を続けることはできないのです。
2)
資金繰りの見直しをする
相談機関へ行くにも、現状を把握しなければ具体策を導き出して貰うことはできませ
ん。現状を把握し、見直すことが大切です。
まずは、以下の項目を紙に書き出すことから始めてみましょう。
◆損益計算書の把握する◆
・営業利益が出ているのか?
ここでは経営利益ではなく、営業利益を書き出しましょう。営業利益が黒字であれば、
立て直す方法が出てきます。
・過去の経営を見て、赤字体質なのか・黒字体質なのか?
だいたいでいいので、会社の経営がどちらの体質なのかを判断します。
・今後の見通し
現状維持できるのか、それとも下降線をたどるのか、向上するのかを判断します。
自分の事業の需要の可能性があるのか、需要は減って行くばかりなのかを見て行きま
す。
◆貸借対照表の実態を把握する◆
・どれくらいの流動資産があるのか
流動資産とは、現預金、受取手形、売掛金、有価証券、在庫などのことです。
・固定資産の実勢価格はいくらなのか?
保有する車両、土地、建物の価格がいくらなのかを把握しましょう。
・流動負債の実態を把握する
流動負債とは、支払手形、買掛金、短期借入金、未払費用、対納税金などのことです。
・固定負債の内容を把握する
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残債務、利率、支払い状況、担保の有無、保証人の有無、保証協会付きなのかプロパ
ーなのかなどを把握します。
◆経営者個人の資産・負債状況の把握◆
・債務の連帯保証を結んでいるかどうか
友人や知人などの連帯保証をしているなら、件数や総額などを把握します。
・個人名義の不動産の有無
個人名義の不動産を所有しているのであれば、実勢価格を把握します。
・各種ローンについて
住宅ローンの残債や、カードローン、消費者金融、教育ローン、マイカーローンなど
の有無について詳細を把握します。
・個人資産の詳細
預貯金、有価証券、生命保険、相続財産などをできるだけ細かく把握します。
ここで経営全体の見直しをすると共に必要なのは、資金繰りのシステム自体を切り替
えて行くことです。支払いをずっと続けて行けば、経営不振での収支から言ってお金
は減るばかりです。
銀行の融資を断られたら、今までしていたような資金繰りから、緊急時の資金繰りへ
と早急なシフトチェンジを行わなければなりません。
もし、資金繰りが苦しいのに今まで通りの支払いを続けていたら、手元のお金は減る
ばかりなのですから、資金ショートは時間の問題です。
もちろん、すべての支払いをストップすることはできませんが、それでも支払い期限
の順に払っている通常の資金繰りでは、どんどん経営は弱っていってしまいます。
●緊急時の資金繰り方法
まずは、支払いに優先順位をつけましょう。
今までは支払い期限を優先にしていましたが、この場合はそうではありません。
支払い優先度の高さから挙げると、
・手形支払い
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
・従業員の給料
・取引先の支払い
・事務所の維持費(可能な範囲で)
・税金や社会保険料
・銀行への返済
となります。
真面目に支払い期限を守ってきた方からすると、
「銀行への支払いをストップして大丈夫なのか?」と思われるかもしれませんね。
しかし、銀行は数百万の支払いをとめられたところで、経営が立ち行かなくなるよう
なことはありません
実際は1〜2ヶ月ストップしても大丈夫だと言えるでしょう。
それよりも経営に危機が訪れているあなたの場合は、期日だけを気にしている場合で
はないのです。もっと総括的に支払いの優先度を把握しなければいけません。
支払いの優先度が低ければ減額支払いに切り替えたり、場合によっては支払いをスト
ップする。その手続きを早急に行わなければなりません。たちまち資金ショートを起
こすようになってしまいます。
この手続きが今後の経営に支障をきたすような可能性は少ないですので、安心してく
ださい。それよりも、今後支払えなくなる可能性があるのであれば、まずはその手続
きを行い、債務不履行に至るのを防ぐ必要があるのです。
●この調整をしないとどうなるか。
従業員の給与を払わなければ、それぞれの家計にも大きな影響を及ぼします。
数ヶ月待ってくれる従業員は、現実的に考えて少ないでしょう。
こんなことが続けば、不安定な状況から会社を辞めてしまう従業員が出てくるかもし
れません。
取引先の支払いをストップすれば、仕入れに影響し、ひどい場合は取引を止められて
しまいます。それでは、今後の事業を通常に行うことはできませんし、利益も生み出
せなくなります。
従業員への給与の支払いと、取引先への支払いが遅れたり止まったりすることは、生
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
産量も売上も落ちてしまうのです。
自分の会社が破産する前に、破綻目前状態の従業員の家庭が出て来ることも考えれば、
支払いの優先度を高くする意味も分かっていただけるかと思います。
ここまでで触れてきたように、危機的状況に陥る可能性がある従業員や取引先と、銀
行を比べれば一目瞭然。影響の少ない銀行への支払いを止めるか減額するべきなのも
ご理解できると思います。
担保に自宅や事業資産を撮られている場合も、変わらずにこの優先順位を守ります。
ただし、この方法は一時的なもので、永遠に続けられる方法ではありません。
他の対策と併用して行うことが重要でしょう。
ここからは、同時に行っていくべき方策をお伝えして行きます。
●同時に行うべき資金探し
もう会社にはお金に換えられるような資産は無いとお思いかもしれませんが、
それでも、改めて資金となるような資産を見つける努力をしてみましょう。
・積立て性の保険(積立て範囲内での借り入れが可能、または解約)
・不必要な保険の解約
・不要な不動産の売却(資金化、または賃借して保証金を運転資金化)
あなたの会社や向上には資金化できるものがないでしょうか?
中には、借り入れが可能になったりするものもあり、また、解約すればそれを資金化
することも可能です。
ちょっと解約するのはためらわれる方もいるかもしれませんが、微々たる物でも積も
れば大きな資金になります。会社中を見渡し、改めて探してみましょう。
そして、こちらも同時に行わなければならないのが、リスケジュール応諾のための申
請です。支払いのストップが認められたら、直ちにしなければいけないことがありま
す。
融資の返済をやめること自体はできませんので、今後の計画をリスケジュールし、返
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
済条件緩和の申請を正式に行わなければなりません。
こちらの申請に関しては、後々述べていきます。
3)
真剣に今後を考察する
現在の危機的状況がどれくらいのものかはそれぞれですから、
冷静になり、真剣に今後の経営を検討してください。
深刻度に寄っては撤退も必要になります。
しかし、ここでの撤退は「破産」と言うわけではありませんので勘違いしないように
してください。ここでの撤退は、事業譲渡という事業撤退を指しています。
適切な方法を取れば、従業員の雇用が保たれます。再生資金を利用すれば、その後も
事業を興して行くことが可能になります。事業自体を見つめ、今後の動向をしっかり
とつかんでいきましょう。
先に述べた「損益計算書の把握する」のところで『赤字体質』だと事業を判断してい
る場合は、事業の継続・撤退は今後の資金繰りに大きく関わりますので、再考が必要
です。
生産する部分にコストカットが必要なのか、製品の価格設定によって解決するのか、
それとも、需要もないのに事業を続けているのか、赤字の理由は様々だと思います。
「結構頑張ってきたけど、どうも赤字から抜け出せないな」というような事業は、
やはり継続を考えなければいけないでしょう。
今までは目の前のことで忙しく、最近は資金繰りで頭がいっぱいになっていたと言う
人も、ここで少し落ち着いて、自身の事業を見返すこともいいことです。
一方、一時的資金ショートである場合や、事業の継続が必要だと結果が導かれる場合
には、黒字プランを考え出さなければなりません。
細かいシミュレーションを行うのも大切でしょう。
コストカットで利益が見込まれるのか、債権債務の解消で利益が生まれるのか。
具体的な黒字プランを考えてください。
この黒字プランが立たない場合には、やはり潔い事業撤退をした方がいいのかもしれ
ません。プランも立たずに再出発をしても、結局は赤字になってしまう可能性もある
のですから、黒字の計画に対しては綿密に策を練ることがお勧めです。
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●決断はとにかく早く行う
どんな場面でも、決断はできるだけ早く行うようにしてください。
早ければ早いほど、対策はたくさんあり、多くの選択肢から選ぶことができます。
逆に、遅ければ遅いほど、会社の経営は苦しくなり、取引先や銀行などへの影響など
も大きくなります。
「様子を見て判断する」のは一番やってはいけないことです。
再建するためには早く的確な決断が鉄則ですので、肝に銘じてください。
意思決定を早く行うメリット・デメリットは後々触れて行きます。
●一番守りたいものを守る
ここで守るものというのは、会社、資産、自宅などのことを言います。
「今まで通りすべて守りたい」
「以前のように全部を手に入れたい」というような気持
ちは、ここでは捨てなければなりません。
もちろん、あなたの気持ちは痛いほど分かります。
今まで築いてきた愛すべき会社、家族を守ってきた大切なマイホームなど、思えば思
うほど、すべてを守りたいと思うのは当然でしょう。
しかし、今は経営不振の危機的状況です。
そのような状況の中、
「すべてを守り抜こう」と思えば、逆に「すべてを失う」結果を
招くこともあるのです。
すべてを失うリスクを負うよりも、ここで一回事業を立て直し、落ち着いてからすべ
てを獲得し直すことだって不可能ではありません。
今、絶対に守らなければいけないものは何なのか。それをあなた自身が選ばなければ
なりません。
ここでは「最低でもこれだけは守りたい」と言うものをピックアップし、また、守り
たいものにも優先順位を決めることが大切です。
苦戦した上に何も残らなければ、その後の人生は考えられない厳しいものにしかなり
ません。シビアなことかもしれませが、守れるものをしっかり守るためにも、この優
先順位を決めることは重要なことなのです。
4)
誰かに相談する
経営者はそれまでも一人で決断することが多かった経験から、経営不振や資金繰りの
悩みも一人で抱え込んでしまう傾向にあります。
プライドもあるため、経営不振の悩みをの第三者に相談することは「恥ずかしい」と
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
いう気持ちになるのも原因の一つでしょう。
しかし、一人で悩み抱えて、現状は回復するのでしょうか。
今までの判断の域を超えて、新たなアイデアが必要な場合もあります。
「黒字にするにはどうしたらいいんだ・・・」ただ一人で悩んでいても、何も変わら
ないのは分かっているのではありませんか。
無駄な時間をやり過ごしている状況ではありません。
ならば、第三者に頼り、早急に方法を見つけ出すことは正しい判断です。
相談をしない人に多いよくある事例としては、一人資金繰りに悩み、行き詰まってノ
ンバンクで借金をし、銀行への支払いに充てるというような例です。
「低金利の借金を高金利で返済する」といった行為が、本当によく見られます。
頼みやすい従業員に給料の支払いを待ってもらい、銀行への返済を優先する例なども
少なくありません。
こんなことを繰り返すうちに、ノンバンクでも借りられないほど借金が膨らみ、最終
的には従業員も居なくなり、取引先には取引停止を叩き付けられ、訴訟になった方も
いらっしゃいました。
お分かりかと思いますが、これでは事業を通常通り行うことも不可能ですから、生産
ラインを動かすこともできず、利益も上がらず、さらなる悪循環を招いてしまいます。
行き着く先は「経営破綻」です。
経営不振の状況になると、知識が無ければ太刀打ちできないことは正直多いのです。
会社を上手く回して行く人はたくさん居ますが、倒産を何度も経験している人は多く
ないですよね。
「僕は何度も倒産しているから、一人でもあらゆる手続きができますよ」
なんて人はそうそう居ません。
あなたも、現在のような苦しい資金繰りが初めてなのではありませんか?
それなら、有効な手段や手続きに疎くたって当たり前なのです。
素直に「分からない」と思うのであれば、誰かに話してみたって、悪くないはずです。
資金繰りに疲弊しているあなたよりも、他人は冷静に的確なアドバイスをしてくれる
かもしれません。また、話すことで気持ちが軽くなり、
「専門家に相談しよう」といっ
たような心持ちにしてくれるかもしれません。だから、家族でも、友人でも、専門機
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
関でも、あなたの気持ちや悩みを相談してみてください。経営に疎い人でも、あなた
を精神的に励ましてくれるかもしれません。癒してくれるかもしれません。
もし、一人抱え込んで鬱状態に陥れば、今後の再建は本当に難しくなってしまいます。
決断をくだすことができるのは経営者なのですから、そんなあなたの精神状況を健康
にすることも、経営においては重要なことです。
あなたの気持ちを楽にする、ホッとさせる存在は、経営を立て直す大切なエッセンス
だということを忘れないでください。そんな心の止まり木になってくれる人間や相談
機関を持っておくのは大切なのです。
ちょっとした経営のミスなのか、世界的不況のあおりを受けて今の経営危機が引き起
こされているのか、その原因はそれぞれあるでしょう。しかし、今まで事業を切り盛
りし、会社を大きくしてきたのはあなたの努力の賜物です。
今までの功績を、経営者自信が自負しても罰は当たりません。
堂々とし、自信を持ち、人の力を借りながらも、
「危機を切り抜けてみせる!」と、
そんな強い気持ちを持つようにしてください。
経営を立て直せるのはあなただけです。でも、実際に専門的な部分は他人に頼っても
いいのです。どうぞ、あなた自身を大切にし、そしてきちんと正しい判断をできる礎
を築いてください。
5)
意思決定を早急に行う
先ほども述べましたが、意思の決定はとにかく早く行います。
これはどんな場面でも重要なことです。
意思決定の遅さは「倒産確率」を上げてしまう要因にしかなりません。
●意思決定が遅くなる、よくあるパターンとは
危機的状況に相談にいらっしゃる方はたくさんいらっしゃいます。
こちらで現状を調査し、分析した後に再生スキーム(計画)を提案します。
経営危機の場合は一刻を争うため、
「今できるベストな方法」を提案するのですが、こ
こで「それは今すぐ決断できないな〜・・・」とためらってしまう方が多いのです。
取締役の方々か OK を出しても、経営者が最終決定を決断できない場合がよくあります。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
実際に家族経営の会社であった例では、奥様やご子息が一生懸命説得しても「ダメだ」
と固く否定する方も居ました。どんなに揺さぶり妻がお願いしても、断固として意見
を変えてくれません。これが珍しいことではないからこそ、同じ立場にある経営者の
方がいらっしゃるのであれば、一度客観的に自身と重ねあわせて考えていただきたい
と思います。
こうして迷い、否定しているうちにも現状は悪化するばかりなのですが、
「債権者から
の攻撃」や「風評被害」などを恐れて何もできないパターンが多いです。
やっと説得できた時には、以前提案した再生スキームが通用しない場合があります。
もちろん、経営状況も下降線をたどっている最中のことです。
どんどん事業再生の可能性が途絶えてしまうのです。
動くのか動かないのか。それを早期に決断することが重要なのです。
動けば何かは変わります。動かなければ、何も変わらず、好転することはありません。
神風を待つように他力本願の奇跡を祈るよりも、あなたが動いた方が格段にスピーデ
ィーに対処できるのです。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
ここからは、具体的な苦しい資金繰り時の対処法をご説明していきます。
■果たして、銀行はリスケジュールを受理してくれるのか?
資金繰りに困った時にすることとして、以下の 2 点について触れてきました。
・銀行融資を受けられれば融資を受ける
・銀行融資を断られたらすぐにリスケジュール(返済条件緩和)を申請する
しかし、銀行融資を断られたときに、銀行は「返済条件緩和」を受け入れてくれるの
でしょうか?
一度結んだ契約を変更することは、とても難しいことだと思われる方もいらっしゃる
でしょう。あなたは今まで、結んだ契約通りに支払いをし、資金調達のために新規融
資を申し込む方法を取ってきたのですから、そう思うのも無理も無いでしょう。
現在、銀行は金融庁の指導もあって、返済条件の緩和には比較的柔軟に対応してくれ
るようになっています。今は銀行側から「リスケジュールしませんか」と持ちかけて
くるほどだと言いますので、驚かれるかもしれませんね。
以前は経営者失格の烙印を押すように卑下したものですが、今は違うのです。
新規融資しか望みの無かった時代とは打って変わり、今は取引銀行とのリスケジュー
ルが、最適な資金ショート回避法と言えるでしょう。
しかし、以前の考えが抜けないのでしょうか。
ここでも、リスケジュールの提案を避けてしまう経営者の方が多いです。
そんな方は、リスケジュールのチャンスは新規融資とかわらないことだと思うように
してはいかがでしょうか?
新規融資と同じ対処だと考え、早い決断をくだすのが得策です。
それほどにリスケジュールを受理して貰えるのは対策として有効なのです。
○銀行が考えるのは「処理の実行」か「リスケジュール」の 2 つ
銀行側の考えを知るのも必要なので、ここで一度、触れておきましょう。
資金繰りの苦しい、経営が悪化している企業に対して、銀行はどんな考えや選択肢を
持つのでしょうか。
その選択肢は 2 つしかありません。
「処理の実行」と「リスケジュール」です。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
○処理の実行
融資先の会社の経営が悪化しているとなれば、銀行は「処理」を考えます。
ここでの処理とは融資資金を回収することです。
「融資したお金を回収できるうちに回収しよう」それが銀行の基本的な考え方。
もし経営の立ち行かない企業があれば、直ちにその処理を行うことになります。
担保物件の処理、保証人への取り立て、会社資産差し押さえなど、回収できる方法は
なんでも行います。銀行も経営がありますので、そうやって処理を行うことは一つの
業務です。
もし、保証協会の保証付き融資をしている場合には代位返済が適用されます。
この場合、キャッシュフローで事業を回せる場合には融資可能ですが、ある程度の大
きな運転資金を必要としている企業は新規融資の可能性が無くなります。
何も対策をとらずに決断を後回しにしている企業へは、銀行がこの処理判断を下す可
能性も多いにあります。
逆に言えば、判断の早さは経営努力とも捉えられ、最終的には会社を救う術を提供し
てもらえ、経営再建に繋がるのです。
○リスケジュール
お気づきかもしれませんが、リスケジュールを提案されているうちは、
「今後も融資資
金を返済してもらえる可能性がある」と判断をした証です。あなたの企業にもまだ可
能性があると言うことになります。
多少返済が送れても、正常な回収が行われるプランを提示すれば、銀行はそのプラン
を受け入れます。
なので、もし返済条件緩和を申請する場合は、
「返済可能なプラン」を用意することが
大切です。銀行が「これなら大丈夫だろう」と決断できるような、そんなプランを提
示しましょう。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■リスケジュール申請の際のポイント
○書類を作成する
リスケジュールを応諾してもらうには、口で伝えるだけでは意味がありません。
きちんと書面に計画を記し、経営者自ら金融機関を説得させる必要があります。
ここでいう書面とは「経営改善計画書」のことです。
リスケジュールの折衝の際には、
「経営改善計画書」
「資金繰り表」
「返済条件変更依頼
書」の 3 点を用意することが必要です。
この書類を必ず作成し、承諾を貰えるように万全を喫しましょう。
実は、最近までは「経営改善計画書」は必須でしたが、昨年の金融機関マニュアル(別
冊)では、この書類の提出は必須条件ではなくなりました。しかし、念には念を重ね
て、提出した方がベストです。金融機関が安心して OK サインを出せるようにするため
にも、きちんとした印象はプラスになります。
もちろん、とりあえずの暫定措置でリスケジュールを応諾してくれる場合もあります
が、結局後々提出を求められることになります。
金融機関の支援を確実に受けるためにも、この書類作成は必須と考えてもいいと言え
ます。
○スケジュールの内容
リスケジュールを申請する際には、絶対にやってはいけないことがあります。
それは以下の 2 点です。
・嘘をつかない
嘘をつくのが良くないことであるのは当然ですが、今まで決算対策と称して少し数字
をいじった経験はありませんか?
何年も前の売掛金をそのまま計上する、在庫数を少し多めに計上するといった、粉飾
問題とは言わないまでの対策を行っている企業は少なくありません。
銀行から融資を受ける際にも、このような計算書を提出しますよね。
だからといって、リスケジュールを申請する時にはこの点を明確にする必要がありま
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
すので、そのまま計画書を作成することはやめましょう。
なぜ、このような点において明確にしなければならないのかと言うと、なぜ資金繰り
が苦しくなったのか、枯渇したのかを銀行に説明しなければならないからです。
現状を説明する時には、事実を反映していなければつじつまが合わなくなります。
粉飾した利益のある決算書では意味がありませんよね?銀行に会社の現状を訴えられ
なければ意味がありません。
また、粉飾や嘘が後々分かれば、信用がなくなりリスケジュールすら難しくなってし
まう場合もあり得ます。だからこそ、そのようなリスクを負わないためにも、銀行に
は正直に経営状況を伝えましょう。
○無理な条件を飲み込まない
銀行がリスケジュールに対応してくれる場合、無理な条件をお願いされる場合があり
ます。その場合、「金利アップ」「追加担保の要請」など、その後の経営に響きそうな
内容が多いのです。
経営者としては、リスケジュールを応諾して欲しいわけですから、少し無理な条件で
も「返済かけなくて迷惑をかけるのだし・・・」と思って、不利な条件を受け入れて
しまう場合が多いです。
友人との付き合いならば、そのような気づかいは当たり前かもしれません。
しかし、これはビジネスです。
銀行だってお金を借りてもらいたいわけですから、不利な条件で無理に契約をせず、
できないことはハッキリ「できない」ということを伝えましょう。
あまりに態度が大きければ問題かもしれませんが、自分を責め、銀行の言う通りを鵜
呑みにするのはよくありません。返せない借金をしたら、すべてを失ってしまう可能
性もあるのです。
対等な態度で交渉に臨み、お互いに有益な形で契約をするのが一番です。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
○リスケジュールは、その後の融資に響くのか
リスケジュールをして借金の返済を延滞するわけですから、同金融機関からの融資は、
その後から受けられなくなります。
しかし、リスケジュール中、借金の返済延滞中は融資が受けられないだけなので、
返済を開始すれば、今まで通り融資の対象になります。
資金繰りが苦しいのに、リスケジュールして融資の可能性を全くのゼロにすることは
不安かもしれません。新たにお金が必要になった場合、融資を受けられないとなれば、
チャンスを逃してしまうかも・・・と不安になるのも当然です。
会社に協力してくれるようなスポンサーが表れた場合には、リスケジュール中の融資
が可能になった場合もあります。しかし、これは非常に稀なケースですので、資金調
達の具体例としては参考にならないかもしれません。リスケジュールをした後は、別
の方法での資金調達を考えるように、工夫と努力が必要です。
こんな場合に、保証協会ではどのようにしているのか。
保証協会では、やはりリスケジュール中は融資しないものの、返済が再開されて半年
が経てば、様子を見ながら新規での融資を受け付けるそうです。
一度返済を滞らせてしまっても、その後きちんと返済を継続すれば、融資の道が開け
てくるのです。
融資は会社を経営する上では切っても切れないもの。栄養剤や肥料のようなものでも
あります。リスケジュールにより、会社経営が難しくなるようなことはありませんの
で安心してください。
◎前触れの無い支払い遅延は御法度
リスケジュールでの支払いストップが可能だと申し上げましたが、これはきちんと支
払い期限の前に相談することが条件となります。
どんな場合でも、支払いの遅延は会社の信用度にも繋がります。
「資金管理のできない企業」というレッテルを貼られては、その後の融資金回収を「無
理だ」と判断する銀行が出てくるのも当たり前です。
資金繰りの苦しい理由を伝えれば、銀行だって無理に返済を迫ることはありません。
一緒に状況悪化を回避するため、協力的な条件を出してくれるはずです。
銀行を事業の追い風にするためにも、事前にきちんと相談するのが一番大切なのです。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■競売からあなたの不動産を守る!資産防衛について
経営危機に陥った際、あなたは「競売」で頭を抱えることになるかもしれません。
中小企業では、銀行から融資を受ける時に自宅や会社の不動産を担保に、融資を受け
ることが多いと思います。
返済中に競売にかけられることはありませんが、資金繰りが苦しくなればズルズルと
返済が遅れ、滞りがちになってしまう人も少なくありません。
そうなると、銀行は先に述べた「処理」を行うことになります。
もちろん、相談もなしに延滞してしまうのですから、当然、銀行だって対策をとらな
ければなくなるのです。
「支払いが難しい・・・でも、このままでは家を失うかもしれない」などと、あなた
はきっと競売の恐怖で頭がいっぱいになるはずです。
資金繰りでも悩んでいるのに、次いで自宅や会社、工場などを失う恐怖に迫られるこ
とになったら、精神的にもダメージが大きいことは容易に想像できます。
私としては、銀行から担保処分を言い渡される前に、何らかの対策をとっていただき
たいのですが、この段階まで来たらその資産を競売から守る手段を考えましょう。
もちろん、あなたの不動産を守る方法はちゃんとありますので、安心してください。
あまりに悩まれていると、その手段を取ることもなく「競売」にかけられてしまいま
すので、不安に打ち勝ち、いち早く的確な対策に出ることが大切です。
担保に入れている物件があるという経営者の方にも知っておいて欲しい方法ですので、
今現在は危機的状況でない方も、ぜひ覚えておいてください。
○任意売却
任意売却とは、債務者(所有者)と債権者の中に仲介者が入り、買主を含めて納得い
く価格を決定、売却を成立させることです。
通常、金融機関からお金を借りる場合に、所有する不動産を担保に入れると「抵当権」
がつきますよね。この抵当権がついてしまうと、その物件は売却することができませ
ん。
しかし、任意売却を行うと、この抵当権を消してしまうことができます。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
つまり、売却が可能になるのです。
でも、売却が可能だと言うことは、やはり物件を手放すんじゃないか・・・と思われ
るかもしれません。しかし、ここで忘れてならないのは「競売」から逃れることが第
一の目的だということです。
ここでポイントなのは、買い取ってくれる買主が誰かと言うこと。
「競売」は見ず知らずの誰かが買い取る可能性が高いのですが、この任意売却なら、
知人や友人に買ってもらうことも可能なのです。
信頼のおける知人や友人に自宅を買い上げてもらい、あなたが家賃を払って今までと
同じような生活を続けることも可能になります。
第三者の手に渡れば、マイホームからも退去しなければいけませんし、アパートを借
りて住まなければならなくなります。
しかし、知人や友人に事前に話しを通しておき、今までと同じ生活が続けられれば、
より一層会社の再建だけに集中することができます。
では、会社の社屋や工場の場合はどうすればいいでしょうか。
これだけ大きい不動産になると、個人の友人や知人に買ってもらうことは難しいでし
ょう。そんな時には、不動産ファンドの組成がお勧めです。
ファンドに一旦売却し、ファンドに家賃を支払いながら工場や会社を今まで通りに使
用可能な状況にします。
買主にも家賃収入が入るこの方法は、リスクもないので実行しやすい競売回避法とい
えます。
○担保割れしている場合
バブル時に購入した不動産の場合、不動産価格が大幅に下落してしまったケースがよ
くあります。
任意売却をしたところで、残債務が何千万も残るのではないかと不安に思われる方も
いらっしゃるでしょう。
しかし、この場合の無担保の債務というのは圧縮して処理する方法があり、それを実
行することが可能になるので安心してください。
とにかくどんな不動産の場合でも、任意売却を利用して「不動産を第三者に手渡さな
い」「競売を避ける」ことが大切です。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■連帯保証人に迷惑をかけたくない
誰だって、第三者には迷惑をかけたくないものです。
ことに、連帯保証人への迷惑を避けようと必死になっている経営者の方はたくさんい
らっしゃるでしょう。
無理してでも借金をし、返済をやりくりしている方も多いです。
○連帯保証人制度とは
中小企業が融資を受けたい場合に、連帯保証人制度を取り入れている場合があります。
代表者が債務保証をするのが通常ですが、会社の経営状況や、融資の内容から判断し
て、第三者の保証人を立てなければならない場合があります。
○保証人を立てる場合は
まず、「保証人をたててください」という銀行の心理をお伝えしておきます。
シビアな言い方かもしれませんが、この言葉の裏には「あなたの会社の現在の経営状
況では、完済の可能性が低い」という意思が隠されています。
銀行などの金融機関は、融資を回収して成り立つ商売です。だからこそ、融資の取り
っぱぐれが無いように、第三者の保証人を立てたいと要望してきます。
「完済可能だろう」という判断であれば、保証人なしで融資をしてくれるのが金融機
関です。金融機関は「融資の回収」を目的としてお金を貸しているのだと言うことを
頭に入れておいてください。
もし、あなたが融資を頼んで保証人を求められ保証人を立てたとしても、債務不履行
の確率が高いということを暗に意味していることになります。
銀行の融資資産の調査制度はとてもクオリティが高いものですので、
保証人を求められたということは、それだけの裏付けがあるのだと、経営者自身が客
観的に結果を受け止める必要があります。
会社の財務内容、事業内容、経営者の資産など、多角的に審査し、その上で保証人を
求めているのだと言うことを、その意味を、経営者がしっかりと認識することが必要
です。
そんな判断を金融機関がしているのにも関わらず、あなたは第三者を保証人に立てて
まで融資を受ける道を選びますか?
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
もちろん、資金調達をしなければ経営が立ち行かないのですから、なんらかの方法で
資金を得ることは必要でしょう。
でも、それが、破綻の見えた融資による資金調達であるのか、今までで述べてきたよ
うに、他の方法での資金調達を行うかでは、大きく違ってきます。
先行きの見えない中での保証人制度の利用は、トラブルの種となり、今後の経営にも
影響が大きく出てきます。まずは、保証人制度を利用する以前にできる方法を探すこ
と、借りるのではなく、他の工夫をして資金繰りを回す方法を考えることが大切なの
です。
経営が厳しいからこそ、冷静に資金繰りを見直す。
簡単にリスクの高い融資を受けることは考えないことが、会社を建て直す考え方の要
となります。
○連帯保証人制度の怖さ
友人や知人に頼み込み、すでに連帯保証人を立てている経営者の方もいらっしゃるで
しょう。
実は、ここで経営者としてしなければならないことがあります。
それは、連帯保証人の財産を守ることです。
「ちゃんと返済を継続しているから大丈夫」と言う方にも注意していただきたいので、
これからの知識は覚えておいてください。
返済を遅延すること無く行えば、まず、連帯保証人への取り立て行為までには至りま
せん。当然ですが、返済が遅れると、債権者は取り立てに行くことになります。
銀行であれば、事前に交渉をすることで、ただちに保証人のところへ取り立てに行く
ようなことは無くなるケースもあります。
しかし、商工ローンで融資を受けている場合には、返済が少しでも遅れればすぐにで
も取り立てが保証人へと及んでしまいます。
そのような契約なのですから、取り立てが急に来たからといって、これは何も違法な
ことではありません。
そして、これらは以外と知らない方が多いかと思われますが、民法 454 条では、主債
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
務者が返済中であろうと無かろうと、債権者はいつでも連帯保証人から取り立てるこ
とができるということを保証しています。
連帯保証人に強制執行をしても、連帯保証人が「主債務者が支払いをしているのだか
ら、なんでこっちから取り立てるんだ!」と言うことができないのです。もちろん、
主債務者が「きちんと払っているんだから、連帯保証人から取り立てるのをやめてく
ださい」と懇願することもできません。
連帯保証人をお願いするとき、きっとほとんどの方は「あなたには迷惑かけませんか
ら」と言って、経営者自身の完済を固く心に誓い頼み込んでいることだと思います。
しかし法律上は、連帯保証人になったら、返済状況に関わらず、連帯保証人も取り立
て対象となることが認められているのです。
可能性としては、いつ保証人への取り立てが始まるのかは分からない状態です。
だからこそ、すでに連帯保証人制度を利用しているなら、迅速に保証人の財産を守る
対策をとることが大切です。
もちろん、これから連帯保証人制度を利用しようとしているのならば、同時に保証人
の資産防衛も計画にいれて融資を受ける準備が必要なのです。
○連帯保証人の財産を守るには
連帯保証人の財産を守るためには、預貯金名義や自宅の名義を変更するような対策を
行って行きます。保証人の持っている資産を、できるだけ減らすことが重要です。抵
当のついていない自宅などは、真っ先に狙われてしまう可能性があるからです。
連帯保証人は「何事か」と思うかもしれません。もしかすると、最初は名義変更など
の手続きを拒まれる場合もあるかもしれません。
それでも、主債務者である経営者の方は、しっかりと連帯保証人を説得し、
「財産を守
るために手続きをして欲しい」と頼み、対策をとってもらわなければなりません。
連帯保証を受けてくれた相手は、あなたを信頼し、助けたいと心から思うからこそ連
帯保証人になってくれたのでしょう。
その気持ちをしっかりと受け止め、責任を持ちたいと考えるなら、説得することはあ
なたの使命とも言えます。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
連帯保証人となってくれたのは、心やさしい知人、大切な友人である場合が多いので
す。
人生の上でのあなたの人間関係を良好に保つためにも、保証人の財産を何としてでも
守りましょう。
不動産、預貯金を取られないようにする方法を、主債務者が助言するのは連帯保証人
制度とセットだと思ってください。
<資産防衛のポイント>
1 つ、大切な資産防衛においての注意をお伝えしておきます。
実は、資産防衛をするにも、タイミングを間違えると大変なことになります。
とうとう経営者である主債務者が債務不履行になった・・・その直後に資産防衛をす
ると大変なことになりますので、このタイミングでは資産防衛は決して行ってはなり
ません。
債務不履行の直後に資産防衛を行うと、その事実が詐欺行為だと裁判所が判断するこ
とがあります。
返済に当てなければいけないであろう資産の名義変更などを、債務不履行後に行うと
します。すると、当然の債権者の権利として与えられている回収行為を「妨害した」
と捉えられかねないのです。
財産防衛を行うのであれば、債務不履行前に行い、そういった二次的なトラブルを避
ける必要があります。
○連帯保証人を外すことは可能
連帯保証人の財産を守る方法として、連帯保証人から外れるというのも一つの手です。
簡単ではありませんが、不可能ではありません。
例えば、保証している融資の一部資金を準備し、金融機関へ保証人を外してもらうよ
う交渉することが可能になります。どの程度の資金が必要か、保証人が資金を持つの
か、主債務者が持つのかは当事者同士での話し合いが必要ですが、こうすることで保
証人を取り立てから守ることができます。
このとき、金融機関へは連帯保証人自らが「保証人から外れたい」と申し出なければ
なりません。関係性からいって、債務者が「保証人から外してください」というのは
少し妙なことですので、この方法を取るのであれば、連帯保証人本人に申請してもら
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
いましょう。
保証人を守ることができるのですから、現在、連帯保証人制度にお悩みのお方は、検
討してみることをお勧めします。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■債権者の取り立て行為
手形の不渡り、買掛金の支払い遅延など、資金繰りの雲行きが怪しくなった時点でも
気の早い取り立て行為を行う債権者がいらっしゃいます。
「回収できないかもしれない・・・」という不安から、少しのかげりで訪問してくる
債権者は少なくありません。
「今月は支払えそうですか?」
「期日までに支払ってくださいよ」という言葉だけで、
穏便に済ませてくれる取引先はかまいませんが、少し手荒な債権者の場合はそうはい
きません。
中には、
「払ってくれるまで担保にする」といって、会社中の備品を勝手に持ち出す債
権者もいます。もちろん、そういった契約を事前に結んでいるようであれば持って行
かれても仕方ありません。執行認諾契約を締結し、約束を交わしているのであれば問
題にはならず、言われるがままになります。
しかし、そうでない場合は、立派な窃盗と同じになります。
つまり、違法行為です。
ですから、この場合にはひるまずに毅然とした態度で対応しなければいけないのです。
もちろん、身の危険を感じる際には警察を呼びましょう。
「近所の目が気になる」といって、言いなりになっていてはいけません。
警察を呼べば、債権者もとりあえずはクールダウンしてくれる場合がほとんどです。
勝手に備品を持ち出されないためにも、怪我などの新たなトラブルを起こさないため
にも、迷うこと無く警察を呼びましょう。
債権者と債務者と言う関係になると、コンプライアンスが存在しないように振舞われ
る場合があり、債務者も遠慮がちになるために、本当にこのようなことが多く起りま
す。
とくに、資金繰りで頭がいっぱいになり、心身疲労困憊状態において、債権者を追い
出すことはなかなか難しいのです。
疲れきった思いから面倒になってしまったり、言う通りにさせてしまう場合も多いで
す。会社内で合図を決めておき、周りの社員に警察を呼ばせる策を取るのもよし、経
営者不在の時に取り立てにきた場合は、迷わず警察を呼ぶように指導しておくのもい
いでしょう。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
特に、債務者もそうですが、債権者も債権回収に対して知識が無い場合があります。
悪意と言うよりは「我先に回収しなければ」と言う思いで、非合法な手段を選んでい
る場合も多いです。これが、特に中小企業の仕入れ先や取引先に多く見られますので、
もしかしたら、みなさんの周囲でも同じような経験をしている方がいらっしゃるかも
しれませんね。
勉強が必要と言う意味では、債務者よろしく債権者も、もっと知識を正しく認識する
必要があるのが現状だと言えます。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■会社の悪経営にメスを入れる
ある一部の事業の経営で会社全体が苦しめられているなら、第二会社法式をお勧めし
ます。人間の体に癌ができれば、人間は手術によりその癌を取り除きますね。
第二会社法式とは、いわば会社経営上の外科手術です。
会社の事業の中には、負債を多大に抱えた不採算部門と、収益のあがっている優良部
門があると思います。その優良部門だけを残し、不採算部門を取り除けばどうでしょ
うか。あなたの会社の経営状態は向上するかもしれません。
具体的には、不採算部門の事業を別法人に譲渡したり、移転させたりして事業を継続
させます。もちろん、そのまま事業の収益が上がればいいですが、ほとんどの場合は
資産売却後に特別精算や破産に至り、債務を抱き合わせた状態で法的手続きにより処
理してしまいます。
○第二会社方式のメリット
この方法の利点は、金融機関の協力が受けやすく、税務上の損金算入の手続きが容易
である点が上げられます。
また、スポンサー協力も得やすく、企業再生に勢いを持たせることができる点でもメ
リットになるでしょう。
今後、この方法はより多く取り入れられることが予想されており、それだけ有効な方
策だと言えます。
○第二会社方式には 2 つの方法がある
第二会社方式には、事業譲渡と会社分割という 2 つの方法があります。
この 2 つの方法の一番の違いは、その目的にあります。
・事業譲渡
売買契約を行い、事業を売ること。会社法上の組織再編手法には当たらない。
・会社分割
会社の一部を他の会社へ継承させること。会社法上の組織再編集に当たる。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
事業譲渡をする時には、現金での事業の売買が行われますが、会社分割では現金では
なく株式を発行することになります。会社分割は組織の組み替えということです。
この2つの方法はともに、他社へと事業を移して手放すことには代わりがありません。
しかし、目的の違いから、得られる対価や手続き方法に違いがあります。
第二会社法式を行う上での手続き、また、譲る側と譲られる側の関係もありますので、
どちらの手法を採用すればいいのかはケース・バイ・ケースです。
どちらにしても、お互いが納得するやりかたを選択することがベストと言えるでしょ
う。お互いの会社の状況や、事業の内容など、より詳細を踏まえた熟考を必要としま
すので、この手続きは専門家に相談することがベストです。
ご自身の会社の事業の中で、赤字事業と黒字事業が存在するなら、
切り離して会社全体にプラスにできる方法があるのだと言うことを覚えておいてくだ
さい。このことをきっかけに、会社の経営や資金繰りは数段改善される場合があるの
です。
ある程度黒字経営を続けていても、足かせとなる赤字事業があっては、黒字の事業に
もいつ影響が及ぶのか分かりません。
黒字の事業に集中できれば、より売上を向上させることも可能になるかもしれません。
債務超過に悩んでいる企業は、この方法で切り抜けることもできます。
今後の見通しに暗雲が立ちこめていて不安に打ちひしがれるよりも、
このような方法で会社を建て直すことは可能です。
どうでしょうか、融資を新たに受けなくても、こんなにも優良な経営状況に立て直す
ことができるのです。企業によって経営悪化の原因はさまざまですので、ご自身の経
営状況と似ていると言う方には、ぜひ、融資を受けるよりも第二会社法式を採用して
いただきたいと思います。
諦めて会社全体を破産に持ち込むようなことは、大変もったいないことにも気づいて
いただけたでしょうか。
第二会社法式のような手段を取れば可能性が見えてくるのであれば、早急な意思決定
をくだし、事業を伸ばして拡大させて行くことを考えた方が得策と言えますよね。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■事業再生は、お金のあるうちに
これまで、何回かにわたり「意思決定は早急に行いましょう」とお伝えしてきました。
いくつかの経営再建、事業再生の方法をご説明してきましたが、
これらの方法を行うには、率直に言って「お金がかかる」ということです。
もちろん、代位弁済などの中にはお金をかけずに事業再生を行う方法もありますが、
これは末期症状の悪経営企業に処方する方法ですので、その他多くの場合では、お金
がかかることになります。
資金繰りが苦しい、資金が無いから再建を試みるのだからと、その対策方法にお金が
かかるとはつゆ知らず、ギリギリまで粘る方が多くいらっしゃいます。
いい方法を提案し、いざ、実行しようとした時には、
「そんな資金はありません」と落
胆される方もいらっしゃいます。
ですから、事業再生のための資金のあるうちに、手を打つことを考えなければなりま
せん。
○なぜ、お金がかかるのか
たとえば、リスケジュールを金融機関に応諾してもらう際にも、お金がかかります。
返済条件緩和を行うためには、条件変更の手数料を払い、僅かなものですが収入印紙
代も支払います。また、リスケジュール交渉中の支払いをストップしている場合には、
通常支払う分の金利だけは支払わなければいけません。
また、保証協会の保証付き融資のリスケジュールでも、手数料が発生します。
リスケジュールの場合に、両者の意向は固まり、さぁ手続きを完了させようと思った
ところで手続き費用が支払えず、リスケジュール交渉が先へ進まないといった方も見
られます。
さて、リスケジュール費用が支払えた場合でも、ここで終わりではありません。
手続きを終える事ができても、リスケジュールのために提出した経営再建策や、事業
立て直しを行う必要がでてきます。
金融機関はこの対策に完済の可能性を見出し、リスケジュールを応諾しているのです
から、経営者は再建のために動き出さなければなりません。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
そうすると、抜本的な組織再編などで専門家を必要とする場合があります。
ここで費用が必要になります。
先にご紹介した第二会社法式を検討する場合にも、法的書類を作成する必要から、弁
護士や司法書士といった方に依頼をせねばなりません。
専門家の力なしには、検討も実行もままならないのが実情です。
他にも、検討している第二会社法式が法律を犯していないかどうかのリーガルチェッ
クを行う必要があったり、会計士に株式の評価額算定を依頼したりすることも場合に
よっては必要です。
事業再生について、詳しい人間が側にいないのであれば、やはりここでも事業再生専
門のコンサルタントをお願いせねばなりません。
任意売却をするにも、不動産鑑定士への依頼が必要となります。
法的手続きによる再生を検討しているなら、弁護士費用や裁判所に収める予納金も必
要です。
○事業再生には
お金のあるうちに事業再生を考える必要性を感じていただけましたでしょうか。なぜ
お金がかかるのか、分かっていただけたかと思います。経営者であるならば、いざと
言う時のために、この費用を蓄えておく必要もありますね。
また、事業再生にかかる最低限の費用を確保できているうちに手を打たなければ、
多くの選択肢や方法は水の泡。虚しく消えてしまうだけです。
今後、事業再生を行う可能性があるならば、お金や時間の余裕が必要であることも念
頭に置いておかなければいけません。早めの決断がここでも必要であることもお分か
りになるでしょう。
ここではひとつ例をご紹介します。
ある日、民事再生を検討視野に入れていたとある経営者の方からご連絡をいただきま
した。
こちらでは、事業再生に必要な手続きをご説明するため、費用についてもお話したの
です。
「弁護士費用と裁判所へ支払う予納金が必要です。御社の負債額から算出して、700
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
〜800 万円ほどが必要かと思われます。ご用意できますか?」
答えには「そんな資金は用意できません」と、肩を落とした返事が返ってきました。
せっかくの再生方法があっても、お金がなければ実行できません。
的確な対処法を実行するのにもお金がかかるのです。
○公的機関の利用でも、費用はかかる
中小企業再生支援協議会は公的機関です。
商工会議所などを代表とする受託機関とし、中小企業再生の支援をおこなうものとし
て認定を受けて設置されています。
この中小企業再生支援協議会では、事業再生に特化し精通している多くの専門家が常
駐し、日々訪れる中小企業の相談者を受け入れています。
経営危機を乗り切るためのアドバイスや、解決支援施策の提供、支援してくれる機関
や他の専門家などを紹介しています。
ここで行われる助言の一部は「一次対応」と呼ばれるものです。
常駐の専門家からアドバイスを受ける事ができ、一次対応時は無料です。
しかし、この一次対応でのアドバイスが無料であることや、公的機関であることもあ
り、
「費用は最後までかからない」と思っている経営者の方がたまにいらっしゃいます。
さまざまな助言を貰い、状況や企業規模に寄っては関わる専門家の数も変わってきま
す。無料であるのは一次対応のみですので、やはり、その後の支援には費用がかかっ
てくるのです。
実際、費用がかかることを知らずに相談していた経営者の方がいました。
そして、いざ支援が決定した段階で費用の請求を受け、結局お金を用意できないと言
う理由で支援が受けられなかったケースも発生しています。
「なんとかなるかもしれない」とギリギリまで粘っていると、資金も底をついて事業
再生の道すら絶たれてしまう場合もあります。
経営に危機を感じたら、ひとまず何らかのアクションを起こすのが大切です。
もし本当に「なんとかなるかもしれない」のであれば、それは相談機関や専門家が「な
んとかなるかもしれないから、今はまだ大丈夫」と言うはずです。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
■ここまでを振り返って
さて、多くの方法やケースを見てきましたが、会社をたてなおして行くには色んな方
法があることを分かっていただけたかと思います。
もし、今あなたが資金繰りに悩んでいるのなら、新規融資を断られたなら、
・資金調達以外の方法で、資金繰りを楽にする道を考えること
・諦めず、早急な意思決定を行うこと
を実行に移すことをお勧めします。
あなたはきっと、ここまでのさまざまな方法を知って、
少しは気持ちに余裕を取り戻せたはずです。また、前向きな検討もできるようになっ
たはずです。
何も知らずに、毎日悩むだけの吐露を繰り返すのが一番無駄なことにも、きっと気づ
いていただけたでしょう。
ゴールがあれば、人間はゴールに向かって突き進むことができます。
しかし、ゴールが無ければ、どこへ向かって疾走していいのかも分からず、
持てる力も発揮できません。
前向きに事業再生のゴールを決める手段を知ったあなたは、これからも落ち着いて考
えること、対処することができるはずです。
この、「落ち着いた対処」が、できるかできないかでは大違いなのです。
資金のあるうちに専門家に相談して処理してもらうことも可能ですし、事態が悪化す
る前に、支払いが滞る前に、対処を行うための資産調査を行ったりすることも可能に
なります。
これはすべて、慌てふためいているときや、意気消沈しているとき、資金繰りで頭が
いっぱいになって鬱状態のときには行うことはできません。
経営者は、困った時こそ堂々と、落ち着くことに注力してください。
それが、経営者の力の見せ所と言っても過言でないほどです。
なぜなら、落ち着いた精神状態で居ることが、会社に取っての正しい意思決定を早急
に行える要因になるからです。
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
○それでも動けない経営者も存在する
「債務圧縮の方法があります」と説得しても動けない経営者。
事業が立ち行かず、資金繰りに悩んでいても尚、提案を拒む経営者は多くいらっしゃ
います。どんな説得にも考えを変えることなく、または悩んでその場で足踏みしてし
まうことは本当に多いのです。
資金繰りに厳しい状況下でよくあるのが「大手企業からの見積もり依頼」といった期
待ある依頼の舞い込みです。
偶然かもしれませんが、資金繰りに苦しんでにっちもさっちもいかないと言う時に限
って、このような一発逆転の可能性が出てくる話の登場があります。
もちろん、受注できれば万々歳ですが、できなければただ時間を浪費したことになり
ますよね。リスクはきちんと認識していなければなりません。
もとい、会社経営が赤字体質なのであれば、どんな仕事を受注しようとも、遅かれ早
かれ危機に達するのは確実です。そうであるならば、受注によらない経営改善を考え
なければいけないのは、分かりきったことなのです。だから、やはり冷静に状況を捉
えて行動に移さねばいけません。そのまま止まったままではいけないのです。
また、このような期待が舞い込むことで、人はどうしても一喜一憂してしまいます。
そうすると、精神的ダメージも大きいのです。落ち込んでしまった場合には、次の対
策に出る第一歩が遅れがちになる可能性だって拭えません。
大口の受注を期待しながら、経営を見直す伏線をはるのも悪くないはずです。
たとえ受注できなくても、
「大丈夫、経営の立て直し対策もしているから」と、気持ち
の落ち込みを防ぎ、直ちに次の手を打つ事ができるようになります。
経営者の精神衛生を保つためにも、必要な伏線なのです。
○債権者と向き合う勇気を得るためにも「良き相談相手」を見つける
今のままでは苦しいとお思いなら、思い切って債権者と向き合うことも大切です。
あなたを楽にし、余裕を持った経営判断をするためにも有意義なことだと言えます。
でも、一人で向き合うのは勇気がない。色んな方法があることは分かったけど、自分
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
自身の知識だけでは、話しをどうやって切り出せば良いのかさえすら全く分からない。
そもそも、何から始めればいいんだろう?
こんな時にこそあなたには、良き相談相手を見つけて欲しいと思います。
実際に法律や手段に詳しいだけでなく、先方へのアプローチ方法や、些細なことでも
アドバイスをしてくれるはずです。
また、良き相談相手は、あなたの不安な気持ち、今後の会社について、そんな思いを
洗いざらい聞いてくれ、安心感と自信をあなたに与えてくれるはずです。
それだけでも気持ちが楽になり、あなたのパフォーマンスも向上します。
あなたが「今の状況から抜け出さないと」と、せっかく気持ちを一歩前へと踏み出し
たのですから、その気持ちをきちんと建設的に活かしていきましょう。
○良き相談相手とは
資金繰りに苦しんでいる経営者は、なんとかしてこの状況から脱しようとし、相談相
手に最適なアドバイスを求めようとします。
でも、相談したら「もう打つ手は無いですね、破産しかありません」と言われたらど
うでしょう。
「あぁ、やっぱりだめなんだ」とあなたは他の手を探すことすら諦めてし
まうかもしれません。
事業再生、会社再建の道を探すために相談しているのに、簡単に諦めさせてくる相談
相手は、良き相談相手でしょうか?
私が言うのはおこがましいことかもしれませんが、銀行融資を断られたことだけであ
なたに破産を勧めるようなら、その相談者は良き相談者ではありません。顧問契約を
結んでいるのなら、その契約から見直すことが必要です。
本来は、必死に頑張るあなたと一緒になり頑張ってくれる相手や、自分が頑張れるよ
うに支えてくれる相手、それがあなたにとっての良き相談相手です。
資金繰りが苦しくなっているのであれば、事業再生に特化したコンサルタントや税理
士などに、顧問を変えるのも一つの再生の手段だと言えます。
税理士や弁護士でも、まだまだ事業再生のチャンスがあるにもかかわらず、破産を勧
めてくる場合があります。もしかすると、その税理士や弁護士は、事業再生に関して
は専門分野外なのかもしれません。事業再生の専門でなければ、そういった答えを導
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資金繰りの苦しい状況から脱却する方法
き出すこともあるのです。
だからこそ、場合によっては、必要な相談相手を見極めて、選ぶことも当然の処遇と
言えます。それが会社を再建させる手段なのですから、仕方の無いことです。
○今一度、
「守りたいもの」を選ぶ
先に述べたことですが、再び念を押しておきたいと思います。
「すべてを守ろうとすると、すべてを失う危険がある」と述べましたが、自分が一番
に守りたいもの、これだけは手元に残しておきたいものを、今一度選んでください。
事業が大切なのか、マイホームを守りたいのか、資産を残したいのか。
その目的によって対処も変わりますし、守りたいものを選んでおくことで対処方法に
も余裕が生まれます。すべてを守ろうとして、ギリギリの道を選んでしまうよりも、
取捨選択して安全に生き残る道を歩くのです。
もちろん、ここでの意思決定も早急に決定しましょう。
早ければ早いほど、多くの対処法が考えられ、アプローチ法の幅も広がります。
資金繰りに苦しめられる経営者ですが、一番の苦しみは「決断」でしょう。
静観しようか、実行に移そうかと悩んでしまうことは多いです。決断に至ることは簡
単ではありません。辛く厳しいと感じている方も多いでしょう。
それでも、苦しみながら「決断」を下す。それがあなたの仕事なのです。
事業再生、経営再建は辛いもの、厳しいものです。
しっかりとした気持ちで向き合わなければ、立ち行かないでしょう。
でも、きっと大丈夫です!諦めなければ、あなたの会社は立派に再生するはずです。
あなたの苦労の末に、いつか安堵感や安定経営が待っているのです。
今回、ご紹介したように、資金調達以外の道を考え、良き相談相手を見つけ、一人で
抱え込まないこと、意思決定は早急に行うことを徹底すれば、きっと解決の道は開け
るはずです。諦めず、頑張って行きましょう。
この度は、最後までお読みいただきありがとうございました。
このレポートを読み、みなさんに少しでも活路を見出していただけたら幸いです。
これから事業再生に立ち向かうみなさんの成功を心から祈り、最後の挨拶にかえさせ
ていただきます。
水野諭史
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