プロローグ 英文法を征服すれば 自由自在に会話できる 5つの段階を踏んで、 英語をモノにする方法 本書の目的は、 英語を初めて学ぼうとする人に、 あるいは英語の勉強がうまくいかない人に、 基本をきちんと学んで自信をもってもらうこと。 私がみなさんに確信をもって言えるのは、 本書をまじめに学習すれば、 必ず英語が話せるようになるということだ。 ◎英会話と英文法を同時に征服する 前著『50English』に寄せられたみなさんの激励と好評に応え、 今回は『50English英文法』をお届けします。 私の提唱する「50English学習法」は、前書の「50の基本文」 に、本書で紹介する「50の基本文」を合わせた「100の基本文」 で完結します。これに「100の会話文」を加えれば、読者のみな さんは活用度の高い「200の英文」によって確実に口と耳を鍛え ることができます。 さらに、暗記した文章を素材にした「50English英文法」をマ スターして応用力を身につければ、みなさんはいままで経験した ことのなかった強い自信をもてるようになるでしょう。 以前、読者の方から「50の基本文さえ覚えれば、本当に英語が できるようになるのか」と質問されたことがあります。もし、50 の基本文を覚えるだけで英語がマスターできるなら、どんなにい いでしょう。しかし残念ながら、その程度では英語を征服するこ とはできません。 自分の考えや気持ちを他人に伝えるには50種類の文章だけでは 十分ではありません。おそらく1000の文章を覚えても不十分でし ょう。ただし、私が2冊の本で紹介する200の文章(100の基本文 と100の会話文)は、英語の基礎をなす基本的なものであり、み なさんが英語のレベルアップをはかるための確実なウォーミング アップとなります。 また、文章の暗記だけでは流暢な英語を話せるようにはなりま せん。私たちのような英語を母語としない者が英語をうまく話そ 14 プロローグ1英文法を征服すれば自由自在に会話できる うとすれば、英文法に関する知識がなければなりません。 その意味で、本書は、英会話と英文法を同時に征服できる学習 法を提示した指針書として、英語を学ぶすべてのみなさんに大い に役立つことでしょう。 ◎暗記した文章を会話に活かす かつて「話せば話すほど失敗する」と言って言葉を控えた哲学 者 が い ま し た 。 そ の 人 が お も に 使 う 言 葉 は 、「 あ り が と う (thank you)、はい(yes)、いいえ(no)」の3つだけだったと いいます。この3つの言葉だけで彼がどのように生活したかはわ かりませんが、もしこの程度のコミュニケーションを目的とする なら、どんなに難しい言語でも、5分もあれば十分でしょう。 しかし、私たちは言葉の失敗を気にする哲学者ではありません。 行く先々で会う人ごとに、自分の意見や考えを正確に伝える能力 が要求される国際競争の時代に生きています。したがって、自分 の考えを自由自在に伝達するためには、英語の構成原理である英 文法に慣れていなければなりません。 英文の暗記だけでは流暢な英語を駆使するには限界がありま す。基本文の暗記から英語を始めて、そこにとどまることなく勉 強を続け、英文法を確実に自分のものにすることが非常に重要で す。それが50English学習法の基本原則です。 英語を初めて学ぶ人のために、「50English学習法」には5つの 段階があります。 第1段階は、基本的な文章を暗記して反復練習することにより、 50の基本文、あるいは100の基本文がスラスラと言えるようにな 15 る段階です。100の基本文をしっかり理解して使える人は、500の 文章を中途半端に知っている人よりもずっとましです。 「50English学習法」では、基本的なパターン文の暗記が非常に 重要であり、それを積極的に勧めるだけでなく、どのようにして 基本文を効果的に暗記し、実生活に適用させるかを具体的に教え ます。 私がアメリカで学生たちを対象に実験した結果、この方法で 100%成功しました。しかし、ここにとどまってしまえば、表現 できる内容もコミュニケーションの相手も限られます。こんなケ ースがあります。 アメリカに移住して10年を超える人が、小さなお店を経営して 暮らしていました。店内では、彼はとても流暢な英語を駆使しま す。ところが、彼の英語をよく観察すると、文の種類は次のよう に10にも満たないものでした。 ①お客が店に来たときの挨拶 ②お客が品物をカウンターに上げたとき、これが全部かと尋ねる 言葉 ③お客が価格はいくらかと尋ねたとき、いくらだと答える言葉 ④ちょっと待ってほしいという言葉 ⑤天気がいいという言葉 ⑥雨が降れば、天気が悪いという言葉 ⑦お客がお金を出せば、いくらもらい、おつりはいくらかという 言葉 ⑧さようならという挨拶 ⑨また来てくださいという挨拶 これらがすべてでした。彼は、ほぼ毎日この9つの文を数百回 16 プロローグ1英文法を征服すれば自由自在に会話できる も口にするので発音がとてもいいわけです。それで、店に来るお 客は彼は英語がうまいと勘違いします。 しかし彼は、子どもの担任の先生に相談したり、区役所などに 用事があるときはとても当惑します。10にもならない文では、学 校の先生と話したり、区役所に行って何か許可をもらったりする ときにはまったく役に立たないからです。 文章を暗記さえすれば英語がうまくなると思う人は、十中八九 こうした状況に陥っています。100の文章を覚えただけでは使い ものになりません。先の店の主人と同じように、その文の環境か ら離れれば口が堅くなってしまいます。もちろん、英語がひと言 も話せない人よりはましですが。 みなさんが「50English学習法」の最初の段階を習得するとき には、いつもこの点を念頭に置いてください。200の文章の暗記 は英語の学習の始まりにすぎません。スタートボタンを押してこ そ機械が動き始めるように、この段階は英語学習で最も重要かつ 決定的な段階ですが、これ以後の段階をいい加減にしては、コミ ュニケーションできる範囲は決して広がりません。 「50English学習法」の第2段階は「習慣化」です。暗記した 100∼200の文章を正しい音声言語に変えていきます。英語の学 習では、聞くことと話すことは読解や作文よりも難しいものです。 そこで、「50English学習法」では、暗記した文章を反復練習する ことによって聞くことと話すことを訓練します。そうしてはじめ て、暗記した文章が本当に自分のものになるのです。 17 ◎中学程度の英文法を身につける 以上の2段階を徹底して固めれば、自分が暗記した文章の範囲 内で英語によるコミュニケーションが可能になり、先の例であげ た店の主人の状態と同じようになります。ここで、さらにコミュ ニケーションできる範囲を広げてくれるのが、 「50English学習法」 の第3段階にあたる「応用段階」です。 応用段階では英文法の内在化を心がけます。英文法とは、英語 の文章を構成している原理と規則のことです。私たちは中学校の ときから英文法を学んできているので、それなりに英文法を知っ ているつもりになっていますが、じつはその大部分が英語の試験 のための知識の断片にすぎません。 「50English学習法」では英文法の内在化を要求します。つまり、 「50の基本文」を暗記したように、英文法の内容全体を理解して かな 暗記し、自分のものにするのです。文法に適った英語で話せるよ うになることが、この応用段階の目標です。 どんな種類の英文法を、どのように内在化させるのか。英語で コミュニケーションするためには、中学3年程度の英文法の内容 から始め、確実に基礎を固めることが重要です。本を見ないで、 英文法全体の内容を他の人に説明できるようにならなければなり ません。 そのためにはまず、英文法の重要項目の名称から覚えます。 わ 『50English』では、これを「文法の環」と命名しました。本書に 他の本と異なる点があるとすれば、それは100の基本文を暗記し て早く英会話ができるようにするだけではないということです。 18 プロローグ1英文法を征服すれば自由自在に会話できる これら100の文章は、暗記すれば、自動的に英文法のおもな項 目が連想できるように作られているのです。英文法の主要項目は、 次にあげるように30に分けられます。 ①文と8品詞・名詞・代名詞 ②冠詞・形容詞・副詞 ③動詞・助動詞・動詞の時制 ④進行形・文の4要素・文の種類 ⑤5文型・句・節 ⑥不定詞・動名詞・分詞 ⑦比較・完了・受動態 ⑧関係代名詞・関係副詞・付加疑問文 ⑨間接疑問文・接続詞・単純条件節と仮定法節 ⑩前置詞・時制の一致・話法 本書は、英語の知識を伝達するのではなく、英語を征服する方 法を提示します。比喩的に言えば、「魚を与えるのでなく、魚の 釣り方を教える」本です。 「50English学習法」は「100の基本文」に基づき、この100の文 章を10枚の絵によって暗記するように構成されています。「文法 の環」はそれぞれの絵にふられた1、4、7の番号に関連してお り、本書に出てくる文章を記憶すれば、自動的にその「文法の環」 が連想できるようになります。英文法を征服する重要な架け橋が 「文法の環」なのです。 この応用段階に達した学習者が肝に銘じなければならないこと があります。英語がうまくなりたければ、「100の基本文」と 「100の会話文」を暗記し、毎日の反復練習を通じて英語を話し、 聞くことを習慣化するだけではいけません。英文法もまた本を見 19 ないで他人に説明できるほど内在化させなければなりません。 そうなってこそ、英語に自信がもてるようになるのです。これ が第4段階です。 ◎英米文化に適応する 「50English学習法」の第4段階は、いままで学習した内容、つ まり200の文章をどのように暗記するか、また英文法をどのよう に内在化させるかを、他人に教える段階です。 英語を習慣化しようとすれば、大変な努力が必要です。とくに 私たちは非英語圏に暮らしているので、自ら不断に努力しなけれ ば英語を習慣化することはできません。 私は、この「50English学習法」を開発するために長い間努力 してきました。それだけでなく、多くの人がこの方法を適用して、 どんなことがうまくいき、どんなことがうまくいかなかったか、 実際の経験を通してよく知っています。 私が実験してきた中で最も効果的だったのは、「絵を通じて記 憶すること」と「他人に教える経験」でした。こうすれば、より 長く記憶に残り、より確実に理解できるからです。 前著の『50English』でその詳しい理由を説明したので、ここ ではくり返しませんが、英語がうまくなりたいと望むなら、私の 指示に従ってください。 「他人に教えられない知識は知識ではない」というのが、 「50English学習法」の重要な原則です。誰かを前にしていままで の学習内容を教えてみるのが最も効果的な方法ですが、それがで きない環境なら、誰かが前にいると思って講義をしてみてくださ 20 プロローグ1英文法を征服すれば自由自在に会話できる い。この実習段階を実践した人は、この部分を省いて勉強する人 よりもずっと早く英語ができるようになるでしょう。 「50English学習法」の最終目標は、何も見ないで2時間ほどア メリカ人に対して英語で講義することです。みなさんの講義をア メリカ人がちゃんと理解できたなら、みなさんの英語学習は成功 したことになります。 「50English学習法」の第5段階は、 「英米文化の適応段階」です。 これもすでに『50English』で詳しく説明しました。ここで強調 したいのは、英米文化に適応すればするほど、英語が簡単になる という点です。 英語ができないのは2つのケースがあります。1つは自分が話 したい言葉や考えはあるものの、英語を知らないために話せない というケースです。もう1つはアメリカ人に会っても何の話をし たらいいか、思い浮かばないケースです。大部分の人が後者に属 しますが、英米文化に適応していれば、彼らに会っても慌てなく なるでしょう。 本書の目的の1つは、英語を初めて学ぼうとする人に、あるい は英語の勉強がうまくいかない人に、基本をきちんと学んで、英 語に自信がもてるようになってもらうことです。 私がみなさんに自信をもって言えるのは、「50English学習法」 を体系的に適用した本書をまじめに学習すれば、必ず実際に英語 が話せるようになるということです。もし英語を流暢に話すこと がみなさんの目的なら、本書の指示に従って一生懸命に努力して ください。その成果は私が保証します。 21
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