Hasui Business Academy 企業活動と資本循環 会計という専門領域における企業活動は、利益を獲得するという基本目的に従って展開する 企業資本(投下資金)の増殖運動であると捉えられる。 この資本の増殖運動は、企業活動を通じて、まず資本の資産への投下に始まり、それを市場 取引を通して獲得した収益から回収し、基本的には、その時の投下資本の回収余剰としての利 益とともに再度循環過程に投下されるという一連の経済事象としてあらわれる。企業資本は、 この企業活動としての資本循環において増殖し、企業の維持発展が図られることになるのであ る。 このような企業資本の増殖運動を、会計的に資金の循環過程プロセスとして捉えると、資金 の投下過程(内部投下過程と外部投下過程)と資金の回収過程として分けて理解することがで きる。 ※ 一般に貨幣経済社会においては、貨幣が経済の媒体をなす。したがって、ここでの資本も基本的には貨幣資本を前提に考えるこ とになる。 すなわち、資本の調達とは現金を調達することであるから収入であり、調達した貨幣資本を一定の財等に投下することは、現 金をそれら財等の取得のために支出することを意味する。さらに、資本の回収は、その支出を収入から回収することでもある。 以上から明らかなように、資本の循環過程における増殖運動とは、現金の増殖運動である。 無断転載厳禁- 1 - Hasui Business Academy このような資本の増殖運動を会計的に捉えてみるなら、まず資本の調達により、 (1) (借方)現 金 100 (貸方)資本金 100 となる。 次に資本の資産への投下により企業の資本運動は始まり、 (2) (借方)商 品 100 (貸方)現 金 100 品 100 (貸方)資本金 100 この結果、 (1)’ (借方)商 となる。 さらに、それを市場取引を通して獲得した収益から回収するが、通常、簿記では抽 象的項目である損益項目を使って、 (3) (借方)売上原価 売上利益 100 20 (貸方)売 上 120 (貸方)商 品 売上利益 100 20 と表現、しかし、実物の動きを捉えれば、 (1)” (借方)現 金 120 となる。 この場合、基本的には、その時の投下資本の回収とその余剰としての利益が企業に 流入する。 この結果ストックは、 (4) (借方)現 金 120 (貸方)資 本 金 利 益 (増殖分) 100 20 と増殖するのである。 これは、流出した資本(ストック)と再流入した資本(ストック)の差として資本 (ストック)が20増加したことを意味し、その増殖分の20を「利益」として認識す ることを意味する。 そして、それらのストックはともに再度資本の循環過程に投下されるという一連の 経済事象として現れるわけである。 無断転載厳禁- 2 - Hasui Business Academy 《 会 計的 に 捉 え た 現実 の 企 業 の 資 本 循 環 》 開 始 B/S 現 金 100 現 金 資 本 金 100 商 品 100 100 ( B/S) 商 品 資 本 金 100 100 (B/S) 現 金 商 品 120 100 売上利益 20 ( P/L) 売上原価 売 上 高 100 売上利益 120 20 末 B/S 現 金 資 本 金 100 120 増 殖 額 ※ 20 損益計算は抽象的表現.実際には実在資産の動きがある。 無断転載厳禁- 3 -
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