白骨化した遺体から推定されていることだが、昔の(古代の)人間にとって

A.11.8
白骨化した遺体から推定されていることだが、昔の(古代の)人間にとって、平均寿命
とは、約 20 歳くらいだった。現在、いくつかの産業国では、平均寿命は約 80 歳だ。これ
だけの寿命の増大の多くは、ここ 150 年間で起こったことだ。しかし、平均寿命が高くな
り、長寿に対する生物的な限界点に近づくにつれて、急速な死亡率の低下は、緩まり、
やがて、横ばい状態になるだろうというのが、大方の予測であった。
そのような減速はまだ起こっていない。今週号の 789 ページにおいて、 Tuljapurkar ら
は、次のことを示している。それは、20 世紀の後半に、G7 諸国の年齢別死亡率は、異常
なほど一定したペースで下がり続けたということだ。減速しているということを示すような
顕著な徴候はない。この報告 は、Wilmoth の報告の後を追うものである。 この Wilmoth
の報告は、2 年前に発表されたものだ。この報告は、年齢標準化死亡率を使って測定す
ると、アメリカでの死亡率の低下は、今世紀の前半よりも、後半において、いっそう加速
したということを示していた。
死亡率の減少が、安定したペースで、今後も続いていくと仮定した場合に、
Tuljapurkar らは、次のような予測が成り立つとしている。すなわち、平均寿命(出生時に
おける平均余命)が、G7 諸国の政府が予測しているよりもより速く増加する可能性があ
ると予測しているのだ。これは、近い将来、老齢人口は、役人たちの予測よりも、多くな
るということを示唆している。一般的な健康状態にもよるが、老齢人口の増大により、医
療費が高騰し、長期介護や他のサービスへの需要が高まるであろう。そして、年金の支
払額も高くなるであろう。
これらの発見により、二つの相互に関連する疑問が生じた。死亡率の減少速度が落
ち始めなかったのはなぜか。そして、死亡率の減少は将来も続くのか。人口統計学と、
疫学と、老化や長寿に関する生物学における研究から、答えの糸口を得られる。死亡率
の水準が着実に減少した背景には、減少様式の変遷というものがあった。19 世紀後半
と 20 世紀の前半は感染症や寄生虫による病気で死ぬ人の数が大きく減った。さらに
は、栄養失調や妊娠や出産に関連する疾患で死ぬ人の数も大きく減った。この減少は、
幼児や子供や、比較的若い成人層に顕著に現れた。しかし、高齢者にはほとんど現れ
なかった。こういうわけで、若年や中年層の死亡率が低い水準まで下落したとしても、平
均余命が更に伸びる可能性はすぐに無くなるとの見解に達した。
しかし、この見解は、20 世紀後半の新しい事態の説明にならなかったし、また、それを
説明できもしなかった。変性疾患による死亡率は減少し始めた。もっとも顕著だったの
は、心疾患や脳卒中の死亡率であった。この減少は、高齢者の間で顕著に見られた。
そして、この減少は、重病人の死を引き伸ばしていることで達成されたのかもしれないと
疑う人もいくらかいた。しかし、アメリカでは、高齢者の健康状態が 1980 年代と 1990 年
代に大きく向上したように見える。これは、高齢になってからの余命が伸びた主たる原因
は、健康状態が改善されたということにあり、病人の命を引き伸ばしているからではない
ということを示唆している。
死亡率の減少様式には、別の変化も起こっていたのかもしれない。いろいろな変性疾
患の死亡率は著しく減少したにもかかわらず、癌の死亡率の一般的な水準は長年の
間、同じままだった。
しかし、1990 年ごろに、長い間待ちわびていたことだったが、ついに、経済的な先進国に
おいて、全体の癌死亡率が減少し始めた。この減少傾向が長期間にわたって続くかどう
かはまだ分からない。
最近、人間の長寿には、生物学的な限界があるという考えは、疑わしいとされてい
る。生物学者は、老化の過程は、人間の体内にある生物時計の中にプログラムされて
いるのかもしれないとかつては考えていた。しかし、彼らの大半は、老化の主因は、体を
維持したり修復したりするシステムの不完全性であるという見解に変わってしまった。す
なわち、このシステムの不完全性により、損傷が修復されないまま、長期間に渡って、大
きな分子や細胞や組織や臓器に蓄積していくという考えだ。老化研究の進歩により、や
がては、損傷の蓄積率を下げるような新しい医学的手法が生じるかもしれない。
全般的に言って、科学的、技術的、そして、経済的な発展により、変性疾患と老化の
進行を、より効果的に制御できるようになるだろう。これにより、死亡率の減少速度が速
い状態が維持されることになりうる。しかし、この見込みは、無条件のものではない。現
在、健康や生存に対する新たな脅威が生じている。新興感染症と再興感染症や、汚染
の増大や、核兵器や生物兵器や化学兵器の拡散などがその例である。もし、私たちが
これらの危険を制御できないのならば、ここ 150 年間での平均寿命の大きな増加幅がい
くらか減少するかもしれない。
G7 諸国以外ではどうだろうか。平均寿命が、間もなく、80 歳を超えるという見込みが
あるのは、これらの国々や、高度に発展した市場経済を持つその他の国々だけである。
そうした国々のほとんどが、西欧や北アメリカや東アジアに位置している。世界の残りの
国々では、平均寿命は、平均して、まだ、65 歳より下である。アフリカのサハラ以南で
は、50 歳を下回っている。そして、それは、経済発展の停滞や政治的対立というだけで
なく、AIDS の流行が原因で、さらに落ち込んでいくかもしれない。東欧や旧ソビエト連邦
に属していた産業国では、平均寿命に関して、ゆっくりした増加が見られるにすぎない。
そして、時々、増加から減少に逆転する場合でさえ見られるのだ。
政府による、G7 諸国の平均寿命や高齢者人口の規模に関する予測が、Tuljapurkar
らの予測よりも、ずいぶんと保守的であるというのは、驚くべきことではない。産業化され
た市場経済諸国の場合においては、国際組織のみならず各政府も、昔からほぼいつ
も、平均寿命を低く見積もってきた。例えば、1984 年に国連は、国際人口予測というもの
を用意した。これは、人間の最大平均寿命は男性で 75 歳、女性 82.5 歳という仮定のも
とで用意されたものだった。しかし、すぐにこの仮定は間違いだと判明した。例えば、日
本では、1988 年に、男性では 77.2 歳、女性では 84 歳となった。低く見積もる原因のうち
の 1 つは、予測する人が、保守的な予測にしておけば、あまり議論を呼ばずに済むし、
無難だと考えているということだ。別の原因としては、彼らが、死因や年齢ごとの、また
は、その両方についての、死亡率に見られた過去の傾向をもとに、予測しているというこ
とが挙げられる。彼らは死因や年齢ごとの死亡率の減少様式については、将来、変遷し
ていくということを見落としているのだ。今も同じ誤りが繰り返されているかのように見え
る。
Questions:
1 二十世紀前半に死亡率が低下したのは、感染や寄生虫による疾病、栄養失調、妊娠や出産に伴
う障害による死亡者数が大幅に減少したため。二十世紀後半に死亡率が低下したのは、特に心臓病
や脳卒中の変性疾患による死亡率が低下し始めたためである。さらに、癌による死亡者も 1990 年代
に入り減少したということも挙げられる。
2
(A 十九世紀後半から二十世紀前半にかけて、乳幼児、子供、青年において大幅に死亡率が低下した
のに対し、老人ではさほどの低下が見られなかったことから、若年や中年層の死亡率が低い水準まで
下落したとしても、平均余命が更に伸びる可能性はすぐに無くなるとの見解に達した。
3 1984 年の国連の国際人口予測において、平均寿命が誤って低く見積もられていた。見積もる人が
保守的な予想を論争の少なく、かつ「安全」な予測であるとみなしたことや、死亡率を予想する際に過
去の死亡要因や死亡年齢の傾向を元にし、これらの傾向が移り変わることを見落としていたからだ。
しかし、現在でも、G7 諸国における平均余命や老人人口に関する政府予測が実情よりも低く予測され
ている。これを見ると。同じ誤りを繰り返しているように思えるということ。
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【解答例】
【1段落】In Japan, more and more people live to be older. I see some changes caused by this. More
older people participate in volunteer activities. The government has tried to make more places
barrier-free. In addition, the government has tried to improve a system for caring for older people.
【2段落】The number of older people who do volunteer activities is increasing. This is because they
want to feel that they do something useful for their society. This feeling makes them very happy. We
should create a society in which it is easy for older people to do volunteer work.
【3段落】The government has made efforts to make more places barrier-free. For example, the
government made a law to make public facilities barrier-free. As a result, there are elevators in many
subway stations. Older people can take the subway more easily than before.
【4段落】The government has tried to make a system for looking after older people as good as
possible. In 2000, the government made a new care system for older people. This system has some
problems. But, it helps many families with older people who need care, because they cannot care for
them on their own.
【5段落】I think that these changes are very important because they help older people live happily.