KOBE 鉄人 PROJECT の経済波及効果

2010 年 12 月 1 日
記者発表資料
KOBE 鉄人 PROJECT の経済波及効果
大阪市立大学大学院創造都市研究科・経済効果研究会
はじめに
2009 年 9 月 29 日に JR 新長田駅前に鉄人 28 号のモニュメント像が完成し、多くの見
学客が当地を訪れるようになっています。その日から 1 年あまりが経過したことを受け、
本研究会では NPO 法人 KOBE 鉄人 PROJECT の協力のもと、モニュメントの建造に関
わった当 NPO 法人の事業ならびにモニュメントの見学客(以下、見学客とする)による
新長田周辺での消費と交通費が地域にもたらした経済波及効果を計測しました。
1. KOBE 鉄人 PROJECT の経済波及効果の測定にあたって
(1)経済波及効果は、産業連関表※1 を用いて、間接二次効果まで計測しています。
(2)経済波及効果を、次の 3 種の効果と 2 地域に分けて計測しています。
事業効果
消費効果
鉄人
効果
神戸市域
その他地域
交通効果
①事業効果は「NPO 法人の事業によって喚起される効果」です。
②消費効果は「新長田駅周辺商業地での見学客の消費によって喚起される効果」です。
③交通効果は「見学客の交通費(公共交通機関のみ)によって喚起される効果」です。
(3)事業効果は NPO 法人の過去 3 か年合計の事業収支計算にもとづいて計測しています。
(4)消費効果と交通効果は、モニュメント完成後 6 か月間(2009 年 10 月から 2010 年 3
月までの 180 日間)の効果を計測しています。
(5)消費効果と交通効果は、見学客数を 1 日あたり平均 1 万人として計測しています。
(6)消費効果は見学客の消費額を 1 人あたり 2,872 円※2 として計測しています。
※1
........
経済波及効果の測定に際して、本研究会では独自の産業連関表を作成しています。
その特徴は次の 2 点です。
ⓐNPO 法人 KOBE 鉄人 PROJECT を独立した 1 つの産業部門として扱っています。
ⓑ2007 年神戸市産業連関表をベースに全国表をもとに神戸市域外との取引計数を
........
推計して神戸市地域間産業連関表 に改編しています。
※2
この金額は神戸市が見学客を対象に行なったアンケート結果に基づいています。
(出所:神戸市産業振興局『新長田商業地商圏調査報告書』2009 年 12 月)
-1-
2. KOBE 鉄人 PROJECT の経済波及効果の概要
KOBE 鉄人 PROJECT による経済波及効果は、産業連関表を用いることによって、鉄
人 PROJECT により直接喚起される需要(直接効果)と、それらの需要を満たすために必
要となる各産業部門の生産が最終的にどれだけ誘発されるか(間接一次効果)
、またそれら
の生産に従事した雇用者の得た所得が消費に回ることによって、さらに各産業の生産がど
れだけ誘発されるか(間接二次効果)という形で求められます。
ここでは、間接二次効果まで含めた生産波及効果を経済波及効果としています。
その額は事業効果から交通効果まですべて含めると、142 億 7000 万円となります。その
うち、神戸市域内には 48.1%の 68 億 5800 万円が生じ、残りの 51.9%の 74 億 1200 万円が
その他地域に生じます(図 1)。
図1
KOBE 鉄人 PROJECT(2009 年 10 月~2010 年 3 月)の生産波及効果概略図
(単位:百万円)
(注※)過去3か年分
NPO法人KOBE鉄人PROJECT
175
事業費(※)
鉄人モニュメント見学者
一日あたり
1万人
生産波及効果(全国)
事業効果(※)
消費効果
48.1%
540
11,581
交通効果
2,149
計
生産波及効果(神戸市)
(※)
事業効果
消費効果
交通効果
計
生産波及効果(その他地域)
5,676
事業効果(※)
消費効果
5,905
1,056
交通効果
1,093
126
6,858
事業効果
計
消費効果
神戸市域
23%
その他地
域
77%
51.9%
14,270
その他地域
51%
-2-
神戸市域
49%
414
7,412
交通効果
その他地域
51%
神戸市域
49%
3. KOBE 鉄人 PROJECT の経済波及効果の特徴
(1)KOBE 鉄人 PROJECT による経済波及効果を種類別にみると、事業効果の占める割
合は 4%にすぎず、消費効果が 81%と圧倒的な割合を占めています(図 2)。モニュメント
に投資された金額と比べ、見学客が現地で飲食や買い物に費やす効果の方が圧倒的に大き
いのが特徴です。
(2)神戸市域に波及する効果の割合が消費効果、交通効果ともに全体のほぼ 5 割となって
います(図 1 の円グラフ)。KOBE 鉄人 PROJECT によって、他の地域にも相当の効果が
生じることがわかります。当地域だけに効果が留まらないのが特徴です。
(3)直接効果と間接効果の内訳をみると、事業効果では間接一次効果の比重が高いのに対
して、交通効果や消費効果では直接効果の比重が高くなっています(図 3)。
図2
KOBE 鉄人 PROJECT の経済波及効果に占める効果種類別の割合
事業効果
81.2%
15.1%
消費効果
交通効果
3.8%
0%
図3
20%
40%
60%
80%
100%
KOBE 鉄人 PROJECT の経済波及効果における直接効果と間接効果の内訳
100%
13.7%
20.7%
22.6%
34.7%
31.9%
80%
60%
50.2%
間接二次効果
間接一次効果
40%
20%
直接効果
36.1%
44.6%
45.5%
消費効果
交通効果
0%
事業効果
-3-
(4)消費効果のうち、新長田周辺商業地で生じる消費額は、見学客の見学以外の目的に応
じて「買い物消費」
「飲食店消費」
「娯楽サービス消費」の 3 区分に分けられます。その内
訳は、図 4 のように買い物消費が 33 億 9130 万円で全体の 66%を占めています。
(5)この買い物消費額をもとに、地元商業者が手にする小売マージン(粗利)を計測する
ため、JR 新長田駅周辺商業地の 145 店舗を調べ、取扱商品別に 2007 年商業統計表を用い
て販売額を推計し、さらに商品別に産業連関表の小売商業マージン率を使って推計・集計
したところ、地元商業者に帰着するマージンは 8 億 8100 万円となります。
図4
見学客が新長田周辺商業地で消費する金額の内訳
(単位:百万円)
931 , 18%
848 , 16%
3,391 , 66%
買い物消費
飲食店消費
娯楽サービス消費
(6)最後に、効果の種類別に生産波及額(直接効果から間接二次効果までの合計)を産業
別にみると、次のような特徴がみられます(次頁図 5)。
①事業効果では「鉄鋼」部門の効果が突出しています。これはモニュメントの製作に
大阪府にある鉄工所が関わったことに起因し、主に神戸市域外に波及しています。
②消費効果では「商業」部門の 22 億 3600 万円が最大です。(4)でみたように買い物
消費が消費全体の 66%を占めていることに起因します。次いで大きいのは「飲食料品」
部門の 17 億 1000 万円です。これは見学客の買い物に食品が多いからです。3 位には「そ
の他の対個人サービス」部門がランクされます。新長田駅周辺にはパチンコ・カラオケ
などの娯楽施設やエステ・スポーツクラブなどの美容・健康関連施設が立地し、それら
が貢献しています。
「飲食店」への効果は 9 億 2200 万円にとどまっています。
「飲食店」
部門の効果を増やすには、見学客の滞留時間を延ばす工夫が必要でしょう。
③交通効果では「運輸」部門の 11 億 3000 万円が最大です。その 87%は直接効果であ
り、公共交通機関の運賃がそれに相当します。試算の前提として、見学客の 59%が公共
交通機関を利用し、神戸市内で購入される運賃の割合を 63%、運賃に占める JR の割合
を 83%としています。なお JR 運賃の試算には、見学客のすべてが新長田駅から半径
80km 圏内の居住者であるという仮定を置いています。
-4-
図5
KOBE 鉄人 PROJECT による生産波及額の産業別内訳
(金額は間接二次効果まで計上、百万円)
0
農業
林業
漁業
鉱業
飲食料品
繊維製品
パルプ・紙木製品
化学製品
石油・石炭製品
窯業・土石製品
鉄鋼
非鉄金属
金属製品
一般機械
電気機械
情報・通信機器
電子部品
輸送機械
精密機械
その他の製造工業製品
建設
電力・ガス・熱供給
水道・廃棄物処理
商業
金融・保険
不動産
運輸
情報通信
公務
教育・研究
医療・保健・社会保障・介護
その他の公共サービス
KOBE鉄人プロジェクト
対事業所サービス
飲食店
その他の対個人サービス
事務用品
分類不明
500
1,000
1,500
2,000
2,500
337
1,710
513
150
320
142
80
247
91
397
213
111
102
97
2,236
458
425
501
1,130
352
63
155
73
161
615
922
1,157
43
NPO法人KOBE鉄人PROJECTの事業効果
鉄人モニュメント見学客の消費効果
鉄人モニュメント見学客の交通効果
本件内容の問い合わせ先
まえかわ さ と し
前川知史 (090-6062-2533)
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