抄録 - 茨城大学

【抄録】
特別講演
教育講演Ⅰ
教育講演Ⅱ
一般演題Ⅰ
一般演題Ⅱ
一般演題Ⅲ
一般演題Ⅳ
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【特別講演】
9 月 14 日(金) 17:05~18:05
Discovery of localized function and distributed whole
brain connectivity patterns using EEG tomographies:
new methods and examples
RD Pascual-Marqui1,2, K Kochi2, T Kinoshita3, H Kanai1, N Yamada1
1Department of Psychiatry, Shiga University of Medical Science
2The KEY Institute for Brain-Mind Research, University of Zurich
3Department of Neuropsychiatry, Kansai Medical University
【略歴】
Roberto D. Pascual-Marqui received the PhD degree in biological sciences from the Cuban
Neuroscience Center in 1988. He was the head of the Neurophysics Laboratory at the
Cuban Neuroscience Center from 1981-1992. In 1992, he joined the Brain Mapping
Laboratory, Department of Neurology, University Hospital, Zurich. Since 1996, he has been
a senior research scientist at the KEY Institute for Brain-Mind Research, University
Hospital of Psychiatry, Zurich. He received the “Privatedozent” degree in 2004 from the
Faculty of Medicine, University of Zurich. From 2010 to 2012 he was a visiting professor at
the Dept of Psychiatry in Kansai Medical University, and since 2012 he is a lecturer at the
Dept of Psychiatry in Shiga University of Medical Science. His research interests include
the development of techniques for functional mapping of the human brain based on EEG
and MEG, the analysis of the spatio-temporal properties of brain electric activity and its
relation to the mind (cognition), and the development of tools for pattern recognition (in
general). Most recently, functional dynamic brain connectivity has been his main focus of
attention.
2
【Abstract】
Using high time resolution multichannel EEG recordings, the 3D distribution of electric
neuronal activity throughout the cortex can be computed with eLORETA (exact low
resolution electromagnetic tomography). This linear tomography is capable of exact
localization, albeit with low spatial resolution. A straightforward application is in
classical neuroimaging for functional localization, in which the simplest paradigm
compares activity between conditions or between groups, in search of localizing brain
regions where there is significant difference. However, localization alone provides very
limited information on brain function.
It is the study of brain connectivity that gives new information to better understand
brain function. For this purpose, eLORETA can provide time series of activity at over
6000 cortical voxels at very high time resolution, which can then be used for quantifying
functional connectivity of the brain. In its simplest form, a “strong functional connection”
between two regions corresponds to “high similarity” of the respective activity signals.
Coherence and phase synchronization are two widely used “similarity” measures.
However, they are known to be strongly affected by volume conduction, which
invalidates their use in functional connectivity studies. This problem is solved with the
physiological lagged similarity (Pascual-Marqui et al 2011: Phil Trans R Soc A
369:3768-3784), which is not affected by such artifacts. These measures are useful for
exploring connections between some few regions of interest. However, the analysis of a
full connectivity matrix of dimension >6000 is fraught with difficulties. A new method
for simplifying the analysis of extreme high-dimensional data is presented, based on an
efficient computation of the full cortical partial connectivity field (Pascual-Marqui et al
2011: “arxiv.org/abs/1108.0251”). In addition, two important extensions of network
discovery methods are presented. One method allows the discovery of causal
connections in the sense of Granger causality, revealing cortical regions that are
senders, hubs, and receivers of information (Pascual-Marqui and Biscay-Lirio 2010:
“arxiv.org/abs/1009.0796”). The second family of methods allows the discovery of
generalized
cortical
networks
(Pascual-Marqui
and
Biscay-Lirio
2011:
“arxiv.org/abs/1103.2852”). Whereas a metabolic (e.g. fMRI) network consists of 3D
distribution of interconnected regions, the new EEG based network consists of a
spatio-frequency distribution of possibly different cortical regions that can synchronize
across different frequencies. A variety of experimental EEG data are used to illustrate
the methods presented here.
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【教育講演Ⅰ】
9 月 14 日(金) 13:05~14:05
社会脳の発達と自閉症
千住 淳
Birkbeck, University of London
【略歴】
東京大学大学院総合文化研究科修了,博士(学術)取得(2005 年)
。専門は発達社会神経科
学。定型発達児・自閉症児を対象として,社会脳の定型・非定型発達とその認知神経科学
的 基 盤 に つ い て 研 究 を 進 め て い る 。 現 在 , UK Medical Research Council Career
Development Award による助成を受け,Birkbeck, University of London にて Research
Fellow として在職。東京大学総長賞(2005 年),日本心理学会国際賞奨励賞(2007 年),
British Psychological Society Neil O’Connor Award(2011 年)受賞。Association for
Psychological Science より”Rising Star”として紹介される(2011 年)
。
著書に「社会脳の発達」
( 東京大学出版会,2012 年)「読む目・読まれる目」(共著,東京
大学出版会,2005 年)
,
「ソーシャルブレインズ」
(共著,東京大学出版会,2009 年),
「発
達障害の臨床心理学」
(共著,東京大学出版会,2010 年)
,「発達と脳」
(共著,医学書院,
2010 年)がある。
【要旨】
適応的な社会行動を行うためには,複雑で流動的な社会的環境の中で,社会行動に関連
した情報を素早く,また自発的に読み取り,適切なタイミングで反応することが不可欠で
ある。しかしながら,旧来型の認知心理学実験では,構造化された実験環境において,明
確な教示に基づいた反応を計測することがほとんどであり,社会的認知の「自発性」を十
分に捉えているとは言い難い。
ことばによる教示が不可能であり,旧来型の認知実験には乗ってこない乳幼児を対象とし
た研究は,必然的に彼ら・彼女らの自発的な視線行動な認知処理 を引き出し,アイトラッ
キング,注視時間計測,さらには脳波計測などの脳機能イメージングにより定量化するデ
ザインとなっている。こういった乳児研究の知見が蓄積されるにつれて,心の理論など高
度な社会的認知能力が,生後1−2年の間に急速に発達することが明らかとなってきた。一
方,演者らの最近の研究により,旧来型の認知実験では十分に高い社会的認知能力を示す
高機能自閉症者において,定型発達の乳児期から見られるような自発的な社会的認知が見
られないことも示唆されている。本講演では,こういった自発的な社会的認知の定型発達
および自閉症における非定型発達について議論したい。
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【教育講演Ⅱ】
9 月 15 日(土) 11:00~12:00
脳律動変化にもとづいた脳電磁イメージングと
ブレイン・マシン・インターフェース
平田 雅之,柳澤 琢史,菅田 陽怜,松下 光次郞,貴島 晴彦,吉峰 俊樹
大阪大学脳神経外科
【略歴】
学歴・職歴 昭和 62 年 3 月東京大学大学院工学系研究科修了(精密機械工学専攻)工学修士
・平成 6 年あ 3 月大阪大学医学部医学科卒業
・平成 13 年 3 月大阪大学大学院医学系研究科修了(脳神経外科学専攻)医学博士
・平成 21 年 10 月~ 大阪大学大学院医学系研究科脳神経外科学 特任准教授
学会役員
日本生体磁気学会理事,日本脳神経外科学会保険委員
資格
日本脳神経外科学会専門医,日本脳神経血管内治療学会専門医,
・日本臨床神経生理学会専門医
研究歴
・平成 9 年~ 脳磁図,皮質脳波,経頭蓋磁気刺激を用いた脳機能解析
・平成 12 年~ ブレイン・マシン・インターフェースによる脳機能再建
【要旨】
開眼時の α blocking など脳活動にともなって大脳の律動状態が変化することが知られて
いる。我々はこの脳律動変化を脳磁図や皮質脳波を用いて計測し,感覚・運動・言語等の
脳機能の局在や時間的推移を調べ,脳外科の術前評価に用いてきた。たとえば,末梢神経
電気刺激により対応する一次体性感覚野に high γ 帯域の同期反応が認められることや,黙
読課題により Broca 野に low γ 帯域の脱同期反応が認められることを明らかにし,術前の
中心溝同定・言語優位半球評価や機能局在評価に用いてきた。最近ではこうした知見をブ
レイン・マシン・インターフェースに応用して,皮質脳波を用いてロボットアームのリア
ルタイム制御を達成した。さらに位相情報解析により,運動前に high γ 帯域の振幅が α 帯
域の位相にカップリングしていることを明らかにして,運動制御のメカニズムへの関連性
を調べている。並行してワイヤレス体内埋込型皮質脳波計測装置の開発を進めており,最
終的には重症の神経難病や頚髄損傷の患者が在宅で利用できることを目指している。侵襲
的手法により確立した方法を逆に非侵襲計測にフィードバックして,最近では脳磁図を用
いた運動内容推定にも取り組んでおり,埋込治療の術前評価法への応用が期待される。本
発表では,こうした脳律動変化を用いた脳電磁イメージングとブレイン・マシン・インタ
ーフェースへ応用について紹介する。
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【一般演題Ⅰ-1】
文献計量的にみた近赤外分光法(NIRS)による
脳機能マッピング研究の動向
新谷 益朗
東京歯科大学口腔科学研究センター情報支援部
1990 年代半ばに近赤外分光法 (NIRS) による脳機能マッピングが開発され
て以来,近年はめざましい技術的な改良や装置の普及もあって,NIRS を用いた
研究成果の公開がさかんになっている。このような新しい手法が実用化されて
研究や臨床での応用が拡大していく状況は,文献データベースを用いた適切な
キーワード検索によっても,多角的に検討することが可能である。
Elsevier が提供するデータベース Scopus は,PubMed が対象とする医学生物
学分野だけでなく,工学系や心理学系の雑誌も広くカバーしているが,NIRS
(near infrared spectroscopy) で検索すると 8,800 件以上の論文が見いだされ,
さらに NIRS と Brain mapping を論理積とした検索では 334 件の論文がヒット
する。これを国別で見ると日本が 137 件で,第二位のアメリカ (75 件) 第三位
のドイツ (46 件) を大きく引き離して独走状態となっている。
国内医学文献を対象とした医学中央雑誌データベースを使用した検索では,
シソーラスの整備がまだ不十分であり,脳機能マッピングを主題とした論文を
抽出することが難しいこと,さらに近赤外分光法と光トポグラフィーという用
語の使い分けの制約もあるが,近赤外分光法を用いて大脳皮質を計測の対象と
したものは,論文が約 210,会議録が約 640 件あり,とくに最近 5 年間は活発
なパブリケーションが行われていることを示していた。
Scopus を用いた同条件 (NIRS AND "brain mapping”) の検索では,MEG
(2,180) ,EEG (8,796) ,fMRI (9,538) ,PET (2,962) など他の計測手法と比
較するとまだ規模は小さいが,今後は NIRS の特性を活かしたユニークな研究
がさらに活性化していくものと期待される。
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【一般演題Ⅰ-2】
脳波と NIRS を用いた呼名に対する脳活動計測
田村 かおり,加留部 ちひろ,水場 太陽,片山 喜規,伊良皆 啓治
九州大学システム生命科学府
人間が社会的活動を行う上で,個人それぞれがもつ「名前」は,単なる識別
記号にとどまらない特別な意味をもつ。特に「自分自身の名前」を呈示される
場合は,単語の意味理解だけでなく自己認識を誘発させるという点で興味深い。
このように呼名と認識の関係を解明することは,言語理解と自己認知をどのよ
うに結びつけているかを考える上で極めて重要である。
聴覚刺激による無視条件下のオッドボール課題において,被験者の名前を呈
示すると(Subject’s Own Name; SON),事象関連電位である novelty P300 等 が
誘発されることが知られている。SON 刺激により novelty P300 が誘発される
ことに対する解釈として,非注意条件下でも,自身の名前が呼ばれたことへの
注意が向き,結果的に注意の転移が起きるためであると考えられる。我々はこ
の SON 刺激を含むオッドボール課題を作成し,健常者を対象に実験を行ったと
ころ,前頭頂部周辺を中心に novelty P300 が観察された。
Novelty P300 により注意の転移が予想されたとしても,呼名による注意が自
己認識と結びついたものであるのか,あるいは単に偏奇刺激として反応してい
るだけなのかという疑問が残る。呼名による注意の転移と自己認識をより詳細
に検討するため,今回,同じ SON 刺激を用いて,近赤外線分光法(NIRS)によ
る計測を行った。これまでに,左中側頭部は言語認識,右側頭頭頂部は自己認
識と関連することが報告されている。本研究ではこれらの部位の脳活動計測に
より,呼名と認識との関係をさらに解明していくことを目的としている。
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【一般演題Ⅰ-3】
SEP の HFOs を用いた tDCS 後の神経興奮性変化の分析
増田 和也 1,Adili Yimam2,野村 大輔 2,伊良皆 啓治 1,2
1 九州大学大学院システム情報科学府情報学部門
2 九州大学大学院システム生命科学府
経頭蓋直流電流刺激 (transcranial direct current stimulation, tDCS ) はう
つ病,片頭痛などの治療を目的とし,頭蓋上に置いた電極から 2mA 程度の電流
を用いて被験者の脳皮質を低侵襲的に刺激する手法である。先行研究における
薬理学的手法によって,tDCS が刺激電極直下の神経細胞群に対して長期的な神
経興奮性変化を引き起こすためのレセプターの存在も明らかになっている。ま
た慢性神経痛の患者を用いた研究によって臨床生理学的知見も蓄積されてきた。
しかし,神経ネットワーク規模での tDCS の影響はモデル化されていない。例
えば,tDCS が影響を及ぼす神経経路上の部位の局在や,長期的影響に貢献する
細胞の同定や機能の解明などについては議論が続いている。この背景には,現
在の測定手法の限界という問題がある。時間分解能に優れ,細胞の発火を正確
に観測できる細胞膜電圧計測は一度に測定できる細胞が少ない。また測定に必
要な針を細胞の付近に設置,もしくは内部に挿入する必要があり,ヒト生体を
対象とすることには制限が多い。一方,一般的な脳波計測は不特定多数の電流
源を離れた位置から計測するものであり,各細胞の発火挙動を正確に知ること
ができない。以上の問題点を踏まえ,野村は体性感覚誘導電位(somatosensory
evoked potential, SEP)の高周波(high frequency oscillations, HFOs)成分によ
る分析方法を提案した。SEP の HFOs は,特定の神経細胞の発火活動と関連す
ることが示唆され,近年注目を浴びている。野村は HFOs の形状の変化に着目
することで,その背景に存在する神経細胞の膜電位の位相変化を評価する手法
を提案した。本研究では tDCS 前後の SEP から HFOs を抽出し,提案された神
経活動発火モデルの妥当性を検証した。
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【一般演題Ⅰ-4】
表皮内電気刺激に伴う痛覚誘発電位と
交感神経活動の呼吸による変化
尾﨑 勇 1,岩部 達也 1,橋詰 顕 2
1 青森県立保健大学大学院健康科学研究科理学療法学分野
2 広島大学脳神経外科
【目的】呼吸によって痛み感覚が変化するのではないかという仮説を検証する
ために,呼息相と吸息相に表皮内電気刺激を与えて,痛み感覚,痛覚誘発電位,
交感神経活動の比較検討を試みた。
【方法】健常者 9 例を対象に, 脳波(頭皮上 31 チャネル),交感神経皮膚反応
(sympathetic skin response, SSR),指尖容積脈波(digital plethysmogram,
DPG),呼気 CO2 濃度を連続的に記録し,濃度が 20mmHg を越えた(呼息)
か下回った(吸息)時に左手へ表皮内電気刺激し first pain を誘発した。
Habituation を避けるため刺激間隔は数十秒あけ,強度は痛覚閾値の 3~4倍で
一定とした。主観的評価,加算平均した痛覚誘発電位(N1,P1),SSR,DPG
を呼吸相で比較した。
【結果】 主観的評価は,軽度の痛みで少しつらいとわずかな痛みの間で変動し,
後者の割合が呼息相で多かった。 N1 電位および P1 電位と SSR の振幅は,呼
気相刺激時に比べ吸気相刺激時で大きく,DPG 波高は吸気相刺激でより低下し
た。
【考察】吸息時刺激と比べて呼息時刺激では,痛みの主観と共に痛覚誘発電位,
交感神経活動が減少したことから,呼吸によって痛み感覚が変化する(呼息相で
痛み感覚が減少する)ことが示唆された。
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【一般演題Ⅱ-1】
耳鳴の臨床と脳科学
中川雅文
国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科
耳鳴はその愁訴が耳にあることから,患者は耳鼻咽喉科医を受診することが
ほとんどである。
しかし近年の脳科学の研究から耳鳴は皮質下レベルにその本態があり,神経
系の不適切な可塑性発現によるものと考えられるようになってきた。
耳鳴は古くは自覚的耳鳴と他覚的耳鳴に分類されてきた。近年ではこれを急
性と慢性,拍動性と非拍動性に分類するようになっている。また非拍動性の慢
性耳鳴は,末梢感覚入力の不足(難聴)にともなう辺縁系レベルでのキンドリ
ング現象あるいは大脳辺縁系レベルでの神経伝達物質のエラーがその本態と考
えられ,新しい治療アプローチが行われるようになっている。
従来,薬物療法,音治療(補聴器,音楽療法,TCI),教育的カウンセリング
の集学的な治療の行われてきた耳鳴診療は ,セロトニン取り込み阻害剤や
NMDA 受容体阻害剤などの薬物療法が行われるようになっている。また,感覚
入力の不足を直接一次聴覚皮質を刺激することで解決しようとするrTMS や耳
鳴にともなう不適切な徴候,主に副交感神経系のエラーを制御する目的での
VNS(迷走神経電気刺激)などが検討されるようになってきている。
非拍動性で慢性の耳鳴の責任病巣を扁桃体あるいは海馬レベルの障害とする
見解は,しかし耳鳴モデルラットの研究などから得られたものに過ぎない。実
のところいまだヒトの耳鳴の責任病巣は脳機能画像診断的には明らかではない。
本発表では耳鳴の歴史をひもときながら,最新の耳鳴診療を紹介するとともに,
よりよい臨床成果をえるために脳機能画像研究者になにが今求められているか
解説していく。
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【一般演題Ⅱ-2】
片頭痛患者の脳波における光駆動時のトポグラフィ変化
高嶋 良太郎,田中 秀明,渡邉 由佳,平田 幸一
獨協医科大学神経内科
【目的】片頭痛の症状の一つに脳過敏性に起因する光過敏があり,診断基準に
も含まれている。光過敏を誘発するのと同様の刺激で出現する点で類似性がみ
られることから,脳波の閃光刺激による光駆動を用いて,病型や臨床背景の関
連につき検討を行なった。
【対象】国際頭痛分類第 2 版で片頭痛と診断され,脳波を施行した 28 症例(前
兆のある片頭痛/前兆のない片頭痛=11/17,年齢 21-50 歳,男/女=9/19,罹病
期間 0-40 年)
【方法】頭痛発作間歇期に,安静閉眼状態で脳波を 20 部位より記録し,
3-5-8-10-13-15-18-20Hz からなる各 10 秒間の閃光刺激を行い光駆動の有無を観
察した。閃光刺激時の脳波を FFT 解析し,基本ならびに高次同調駆動反応にお
ける global field power(GFP)とトポグラフィの重心位置(gravity center)
につき前兆の有無や罹病期間などの臨床背景との関連性を検討した。
【結果】光駆動反応は光過敏の有無とは関係なく高率に認められ,H-response
も高率に認めた。長期罹患群で光駆動反応の GFP が増高し,高次同調駆動反応
では gravity center の前方化がみられた。一方,前兆の有無による病型間での
差は明らかでなかった。
【考察】片頭痛患者では,病型にかかわらず長期罹患群で光駆動時の GFP 振幅
の増高,高次同調駆動反応での gravity center の前方化を認めた。この事実は,
長期罹患によって視覚系の中枢感作が起こることを示唆し,その背景に辺縁系
が関与している可能性が考えられた。
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【一般演題Ⅱ-3】
SSRI/SNRI がうつ病の睡眠構築に及ぼす影響
中島 亨,長谷川 崇,鬼頭 伸輔,古賀 良彦
杏林大学医学部精神神経科学教室
SSRIs/SNRIs(SRIs)は 5HT2A/2C を介して睡眠構築に影響を与えるとされる
が,実際に検証された報告は少ない。我々はうつ病に対して施行された終夜睡
眠ポリグラフ(PSG)記録で,連続した 5 例及び 13 例の SRIs 使用及び非 SRIs
使用下の PSG 記録を比較し,覚醒反応指数(arousal index: ARI),四肢不随意運
動指数(periodic limb movement index: PLMI),レム睡眠比率(%REM),深睡眠
比率(%SWS),睡眠,段階 1 比率(%S1)について検討を行った。これらの PSG
の選択にあたっては,20-70 歳の症例のものを選択し,また,ナルコレプシー及
び重度の睡眠時無呼吸症候群を除外し,個人が特定できないように配慮した。t
検定の結果,%SWS は SRIs 症例で有意に低下していた。が他のパラメータで
は SRIs で睡眠が悪化する傾向が見られるものがあったものの,有意な変化は認
められなかった。また,このほかに SRIs 使用下の PSG では睡眠中へのα波の
侵入が多くみられており,これについても報告を行う予定である。
12
【一般演題Ⅱ-4】
手の模倣と構成失行の評価
定 翼,高嶋 良太郎,渡邊 由佳,平田 幸一
獨協医科大学神経内科
【背景】構成失行の存在はトイレ動作をはじめとする認知症患者の ADL を阻害
する要因である。当院認知症外来では ADAS-J や MMSEA-J 等の机上検査,山
口キツネ・ハト模倣テストを代表とする手の模倣検査を用いて構成失行を評価
してきた。これらの検査間での重み付けと実際の ADL の評価との関連について
検討を行なったので報告する。
【方法】対象は獨協医科大学神経内科高次脳機能外来に通院中の 72 歳~86 歳
のアルツハイマー病の患者 8 人(男 6 人女 2 人)。アルツハイマー病の診断は改訂
版 NINCDS-ADRDA アルツハイマー病診断基準(NINCDS-ADRDA criteria)
に則り行い,MMSE,脳波,MRI VSRAD を用いて行なった。MMSE は 3 点
~21 点,結果的に NINCDS-ADRDA criteria で Probable AD を満たす者を対
象とした。被験者全員に MMSE のダブルペンタゴン課題と片手での手の模倣,
両手での手の模倣を行い,比較検討を行なった。ADL の評価は Barthel Index
の食事,整容,トイレ動作,入浴,着替えを用いて行なった。
【結果】ダブルペンタゴンは 7 人が可能,片手での模倣は 6 人が可能,両手で
の模倣は 4 人が不可能であった。Barthel Index の点数はダブルペンタゴン不可
能例,片手での模倣不可能例,両手での模倣不可能例の順で低かった。脳波,
MRI VSRAD と実際の ADL の評価との関連は有意ではなかった。
【結論】構成失行を評価する検査は日常生活 ADL に密接に関連していることが
分かった。また,机上の試験よりも手の模倣の試験の方がより鋭敏に病態を反
映することを明らかにした。
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【一般演題Ⅲ-1】
脳磁図におけるグループ解析
菅野 彰剛 1,秋元 頼孝 1,野澤 孝之 2,杉浦 元亮 1,奥村 栄一 3
中里 信和 4,5,川島 隆太 1,2
1 東北大学加齢医学研究所脳機能開発研究分野
2 同加齢医学研究所スマート・エイジング国際共同研究センター
3 同大学院医学系研究科博士課程,4 同大学院医学系研究科てんかん学分野
5 同加齢医学研究所神経電磁気生理学分野
【目的】脳磁図解析では個人毎の計測結果に対し電流双極子モデルや空間フィ
ルタ法が利用される。本研究では,空間フィルタ法を用いたグループ解析が可
能かを検討するために,単純タスクとして感覚あるいは運動タスクを,認知タ
スクとしてオドボールタスクを行った。
【対象および方法】対称は右利き健常人 14 名(平均年齢 20.7 歳,男 9 人)で
ある。単純タスクでは,運動タスクとして視覚的な提示後左右いずれか,ある
いは両方の人差し指でボタンを押すタスク,感覚タスクとして,正中神経電気
刺激を行った。認知タスクとして視覚刺激によるオドボールタスクを用い,標
準刺激80%,ターゲット10%,ディストラクタ 10%とした。脳磁図計測は,
ヘ ル メ ッ ト 型 脳 磁 計 を 用 い た 。 解 析 は 空 間 フ ィ ル タ 法 で あ る adaptive
beamformer 法を用いた。得られた活動に対し SPM8 を用いグループ解析を行
った。
【結果】単純タスク:運動タスクでは,運動野および補足運動野の活動を認め
た。さらに感覚タスクでは,解剖学的中心溝近傍に活動源を認めた。認知タス
ク:前頭前皮質,頭頂連合野,側頭頭頂接合部,楔前部,視覚野の活動を認め
た。
【考察】脳磁図においてグループ解析を行う利点は,慣れを伴うようなタスク
では,個人のデータとして多くの加算を行うことができず,グループ解析によ
り S/N 比を高くすることが可能になる点。また,ヘルメット型の脳磁計では,
その形状から前頭部および側頭部前方のセンサー配置が前頭葉,あるいは側頭
葉先端部の機能部位と距離を有することがしばしばあり,グループ解析により
S/N 比を高くすることが可能になる。加えて,複数の活動が同時に起こる場合
には電流双極子モデルによる信号源推定では困難なことが多いが,空間フィル
タ法を用いたグループ解析手法は有効であると思われる。
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【一般演題Ⅲ-2】
MEG 計測装置の定量的評価
松本 拓也,関原 謙介
首都大学東京大学院システムデザイン研究科
【背景】脳磁図(MEG)計測装置には横河電機製,NeuroMag 社製の 2 種類があ
る。両機器は原理の異なるセンサーを用いており,互いに長所・短所があるも
のの,その定量的な評価は行われていない。本研究ではコンピュータ上で発生
させた信号源の位置推定を行うコンピュータシミュレーションを通じて,MEG
計測装置の定量的な評価を行った。
【実験】コンピュータ上において信号源を3つ発生させ,得られる磁場データ
から再構成させるシミュレーションを行う。信号源位置は頭部を模した領域に
おいて 100 通りランダム発生させる。磁場には SN 比:0.1~8.0 のセンサーノイ
ズを付加し,計測データとした.信号源の再構成には空間フィルター法を用い
た。
【評価指標】信号源の再構成結果の評価には検出率・偽検出率の 2 つの指標を
定義した。検出率は信号源が検出された割合を示す指標であり,[検出率]=[再構
成された信号源数]/[発生している信号源数]として定義した。また偽検出率は,
実際には存在しない信号源を検出する割合を示す指標であり,[偽検出率]=[偽検
出された信号源数]/[再構成結果の総ピーク数]として定義した。
【結果】検出率においては,SN 比 0.8 以下において NeuroMag 社製の MEG 計
測装置での解析結果の方が若干高い値を示すことを確認した。偽検出率におい
ては両装置の解析結果に有意な差は見られなかった。
【考察】横河電機製 MEG 計測装置に用いられている軸型センサーは脳内の深
い位置に存在する信号源検出に有利とされているが,今回の結果はこれに反す
る結果となっている。しかし両社の MEG 計測装置はセンサー原理の他にセン
サー数・アレイ形状など,解析結果に影響を与える要素を多く含む。今後はこ
れらの要素の違いに関しても考慮し検討する必要性がある。
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【一般演題Ⅲ-3】
Event related beamformer of magnetoencephalography for
interictal spikes in pediatric neocortical epilepsy
Hiroshi Otsubo, Ismail Mohamed, Doug Cheyne
Division of Neurology and Diagnostic Imaging,The Hospital for Sick Children
【Purpose】 We evaluated an event-related beamformer (ERB) comparing
with the MEG spike source (MEGSS) and the ictal onset zone on intracranial
EEG (ICEEG) in pediatric neocortical epilepsy.
【 Methods 】 We acquired interictal MEG data using a whole-head
151-channel gradiometer system in 35 children with intractable neocortical
epilepsy using a band pass filter of 15-70 Hz. We used a spatiotemporal
beamforming method to estimate the spatial distribution of source power in
individual interictal spikes over the whole brain. The volumetric source
power images of individual spikes were averaged to display on the patient
MRI. We compared ERB results to the localizations obtained by MEGSSs
using equivalent current dipole model and to the ictal onset zones on ICEEG.
【Results】 Thirty-one patients had a single MEGSS cluster. Four patients
had >=2 MEGSS clusters. Twenty-three patients showed focal ERB,
including a single focal ERB 16 (46%) patients, and >=2 ERBs in 7 (20%)
patients. The Euclidean distance between the centroid of the MEGSS
cluster and the ERB was <2 cm in 27 (77%) patients. ERB was localized
within the ictal onset zone with gyral level in 24 (69 %) patients, regional
concordance was seen in 8 (23 %) patients and discordant in 3 (8 %) patients.
A focal ERB was associated with concordant seizure localization (p=0.02).
Maximum ERB was included in the resection margin in 28 (80 %) patients.
In 23 patients with focal ERB, the ERB area was included in the resection
margin in 22 (95 %) patients. A favorable surgical outcome was obtained in
17 (74 %) with a focal ERB.
【Conclusion】 ERB for interictal MEG spikes highly corresponded to the
center of the MEGSS clusters and ictal onset zones on ICEEG. The
frequency analysis of interictal MEG spikes may correlate with a subset of
the epileptogenic high frequency oscillations.
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【一般演題Ⅲ-4】
脳波中の TMS アーチファクトに対する形状解適合除去法における
モデル拡張
片山 喜規,伊良皆 啓治
九州大学大学院システム情報科学研究院情報学部門
経頭蓋磁気刺激(TMS)は非侵襲的かつ無痛で脳皮質を刺激し,外部から神経活
動を制御できることから,精神障害等の治療や脳機能解明を目的として利用さ
れている。TMS による脳皮質刺激の量的評価として運動野刺激に対する運動閾
値が挙げられるが,脳皮質全体が運動野と同一の刺激閾値を採るとは限らない。
TMS の実際の効果を電気的な反応として診るために,TMS 適用中の脳波の測
定(TMS-EEG)が行われる。この測定の際,脳波上に重畳される大振幅のパルス
状ノイズは TMS アーチファクトと呼ばれ,その低減・除去法が研究されてきた。
TMS アーチファクトが TMS コイルからの誘導ノイズであることを踏まえ,我々
は TMS コイルを含む TMS 装置系と生体側の脳波測定系を電気回路でモデル化
し,TMS アーチファクトの形状解を求め,TMS アーチファクトを含んだ脳波
への適合・除去を行う手法を提案した。本手法は電磁誘導現象の簡素モデル化
によって振動的な TMS アーチファクトに対しては良く適合するが,振動的では
ない TMS アーチファクトに対する適合に難があった。そこで,脳波測定系にお
ける生体等価回路の入力インピーダンス情報を TMS 装置系に繰込むモデル拡
張を行った。従来の TMS 装置系モデルは変動磁場モデルと改名するが,脳波測
定系からの入力インピーダンス情報は従来モデルにおける TMS コイルの内部
抵抗成分に合一することにより,従来の電気回路モデルがそのまま適用される。
TMS アーチファクトの形状解は,判別式が負の場合は従来の減衰振動解,正の
場合は新たな過減衰解として統合された。TMS アーチファクトを含む脳波に対
する適合においても,従来法では難があった非振動的な TMS アーチファクトに
対して過減衰解が良く適合することが確認された。
17
【一般演題Ⅲ-5】
指電気刺激法による脳波意思伝達システムの検討
村山 伸樹,宮内 翔平,伊賀崎 伴彦
熊本大学大学院自然科学研究科
我々は,これまで視覚呈示による Brain-Computer Communication System
(BCCS)を開発し,95%以上の正答率を持つシステムの開発に成功した。
本研究では,視覚障害および聴覚障害を持つ運動失調症患者のために指電気
刺激による意思伝達システムの開発を検討した。まず,被験者の5指のそれぞ
れを電気刺激するために刺激切替器を製作し,コンピュータプログラムで自動
的にランダムに刺激の切替が行える様にした。被験者の右手5指に電極を取り
付け,各指にパルス刺激(刺激強度:閾値×3,パルス幅:200μs)を 1.5 秒
間隔でランダムに与えた。被験者には5指の中の一つの指の刺激に対して意識
する(ターゲット),その他の指の刺激は無視する(ノンターゲット)よう指示
した。記録は頭皮上 Pz の部位から脳波を刺激前 100ms-刺激後 1024ms まで記
録し,各指に対して 10 回加算(1試行)の後に FFT により周波数分析を行い,
1~3Hz 帯域のパワースペクトルを求めた。比較対象として事象関連電位 P300
の振幅による正答率を求めた。被験者は健常人男性7名(22~28歳)とし,
1人当たり15試行(各指3回のターゲット)行った。
結果:P300 の振幅による正答率は,7人の平均で 79.3%であった。一方,1
~3Hz 帯域のパワースペクトルを用いた正答率は 98.1%であった。
結論:今回の指の電気刺激による意思伝達システムでも周波数解析による正
答率は 98.1%となり,その有用性を示した。今後は2連発刺激により,より多
くの情報を知らせることが出来る様にしたい。
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【一般演題Ⅳ-1】
累積評価がフィードバック関連陰性電位に及ぼす影響
-ADHD 傾向との関連から-
溝越 彩乃 1,勝二 博亮 2,平山 太市 3,尾崎 久記 2
1 茨城大学大学院教育学研究科,2 茨城大学教育学部
3 茨城大学大学院理工学研究科
【目的】フィードバック関連陰性電位(FRN)を指標として,ギャンブリング
課題遂行時に1つの選択反応に対する評価と複数の連続選択反応に対する評価
の違いがフィードバック情報の処理に及ぼす影響を検討した。さらに,ウェン
ダー・ユタ評価尺度(WURS)による注意欠陥多動性障害(ADHD)の傾向と
FRN 振幅との関連についてもあわせて検討した。
【方法】対象は,健常大学生 15 名(男性 5 名,女性 10 名)。4 つのドアが呈示
される選択画面で,宝箱が隠されていると思われるドアをボタン押し反応選択
後,報酬である宝箱(ポジティブフィードバック:PF)か罰である爆弾(ネガ
ティブフィードバック:NF)をフィードバック画面として呈示。選択画面の反
応直後にフィードバックが生じる単一条件と,選択画面が 3 回連続呈示され,
全ての選択反応後に累積評価がフィードバックされる累積条件を実施。脳波は
国際 10-20 法に基づく頭皮上 19 部位から鼻尖基準で導出。NF から PF を引い
た差分波形により FRN 成分を抽出。
【結果および考察】単一条件ではフィードバック刺激呈示後約 300ms で前頭中
心領域優勢の FRN 成分が認められたが,累積条件では不明瞭であった。FRN
成分は行動反応に対する予測と実際の結果との誤差を反映すると考えられてい
る(Zhou et al., 2009)。連続反応に対する累積評価では,行動反応への予測と
その結果との関係性が複雑になり,結果としてミスマッチが起こりにくいため
に FRN 成分が不明瞭になることが示唆された。
ADHD 傾向と報酬機能との関係性については,単一条件でのみ WURS 得点と
FRN 頂点振幅との間に有意な正の相関が認められ、WURS 得点が高く ADHD
傾向が強いと FRN 振幅は減少することが明らかになった。Onoda et al.(2011)
は ADHD の中核症状の 1 つである衝動性が高いほど FRN 振幅は減少すること
を報告しており,ADHD 傾向が強い対象者では反応直後にフィードバックが呈
示されても,その認知処理に困難をきたすことが推察された。
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【一般演題Ⅳ-2】
テトリスゲーム課題遂行における Frontal midline theta:
興味関心,ゲーム集中および性格特性との関連
松本 秀彦 1,本平 智美 2,諸冨 隆 1
1 作新学院大学,2 駿河学院静進情報高等専修学校
【目的】精神作業中に頭皮上の前頭正中線上で認められる 6-7Hz の Frontal
midline theta(Fmθ)は,TV ゲームの興味関心度や面白さの高さに応じて出
現率が高くなり,
「精神集中や没頭,無我の状態」を反映した指標であるとされ
る。また,不安,神経症的傾向及び向性との関連が指摘されている。そこで本研
究では,興味関心度,ゲーム集中状態及び性格特性と Fmθの出現率との関連性
について,「暗算」,「テトリスゲームプレイ及び観察」課題を用いて検討した。
【方法】成人男性 13 名(平均 24.9 歳)を対象に,「閉眼暗算」,他者がプレイ
する「テトリス観察(高・中成績)」及び「テトリスプレイ」課題の 4 課題を,
それぞれ 3 分間課した。課題後,興味・集中得点を報告させた。脳波は両耳朶
平均を基準として頭皮上 8 カ所から導出した(バンドパス 1.6-30.0Hz,サンプ
リング 1000Hz)。FFT 解析は 1 秒間を 1/20 秒ずつスライドさせながら行い,
Fz の脳波優勢周波数が 6-7Hz,電位振幅 20μV 以上 100μV 未満,かつ Cz の
優勢周波数が 6-7Hz ではない区間を Fmθ出現区間とした。
【結果と考察】興味集中度「面白さ」と Fmθ出現との間に正の相関が認められ
た(r=.644; r=.642, p<.05)。テトリスプレイ中のブロック段数については中程
度の段数で Fmθ出現数が最も多く,終盤では最も少なかった。これらから興味
集中の程度を反映する成分であることが示唆された。不安や神経症及び向性の
性格特性と Fmθ出現の関連性はなかった。一方で,私的自意識と「テトリスプ
レイ」課題での Fmθとの間に中程度の正の相関が認められた(r=.605,p=<.05)。
私的自意識の高い者は,自己の感情等の内面に注意を向ける傾向が強いため,
テトリスプレイに注意を多く向けることで Fmθの出現が多くなるものと考え
られた。
20
【一般演題Ⅳ-3】
聴覚刺激のヒト脳-筋同期活動への干渉
~純音,単純音声,英語文章音声刺激~
村山 伸樹,西橋 正博,金井 美賀,伊賀崎 伴彦
熊本大学大学院自然科学研究科
本研究では,聴覚刺激により脳-筋コヒーレンスにどのような変化が起こる
のかを検討した。聴覚刺激として,純音刺激(実験1),単純音声刺激(実験2)
および文章音声刺激(実験3)の3種類で実験を行った。
実験1:被験者に右手の親指と人差し指で物を摘むような等尺性運動課題を
行ってもらい,その間,純音刺激をイヤフォンを介して与え,被験者に純音刺
激を無視してもらう無視条件,および純音刺激の一つをカウントしてもらう意
識条件を行った。純音刺激は 1kHz および 2kHz の音(音圧:60dB, 刺激幅:300ms,
刺激頻度:1Hz)を左右の耳にランダムに1分間与えた。コントロールとして,
被験者に純音刺激を与えない状態で等尺性運動課題のみを行ってもらった。結
果として,無視条件下でも意識条件下でも脳-筋コヒーレンスの振幅およびピ
ーク周波数にはコントロールと比較して有意な変化が見られなかった。
実験2:実験1の純音の代わりに「ば」と「が」という単純音声刺激を与え,
無視条件およびカウント条件下でのコヒーレンスの変化を調べた。その結果,
無視条件下でも意識条件下でも脳-筋コヒーレンスの振幅およびピーク周波数
にはコントロールと比較して有意な変化が見られなかった。
実験 3:聴覚刺激として英語文章音声刺激(40dB)をイヤフォンを介して1
分間与え,無視条件および意識条件下でのコヒーレンスの変化を調べた。その
結果,無視条件下では,脳-筋コヒーレンスの振幅およびピーク周波数にはコ
ントロールと比較して有意な変化が見られなかったが,意識条件下では,脳-
筋コヒーレンスの振幅はコントロールと比較して約 50%の有意な減少(P<0.05)
を認めた。
結論:聴覚刺激は視覚刺激に比較して運動システムへの干渉作用は弱く,視
覚刺激が興奮性を示したのに対して抑制性を示した。
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【一般演題Ⅳ-4】
情動刺激のヒト脳-筋同期活動への干渉
村山 伸樹,Satoria Fexta,伊賀崎 伴彦
熊本大学大学院自然科学研究科
本研究では,情動刺激により脳-筋コヒーレンスにどのような変化が起こる
のかを検討した。
被験者に右手の親指と人差し指で物を摘むような等尺性運動課題を行っても
らい,その間,国際情動画像システム(IFPS)から抽出した Pleasant-Calm 画
像および Unpleasant- Exciting 画像を1分間ディスプレイに呈示し,これを注
視する様に被験者に指示した。コントロールとして,IFPS から同様に抽出した
Neutral 画像を被験者に与えた。
結果:Pleasant-Calm 画像刺激では,脳-筋コヒーレンスの振幅およびピー
ク周波数はともにコントロールと比較して有意な減少は示さなかった。一方,
Unpleasant- Exciting 画像刺激では,脳-筋コヒーレンスのピーク周波数はコ
ントロールと比較して有意差は示さなかったが,脳-筋コヒーレンスの振幅は
有意な増大(P<0.05)を示した。この時の第一背側骨間筋の筋電図および大脳
皮質 C3 部位の脳波のδ,θ,α,β,δ波帯域のパワースペクトルを調べたと
ころ,筋電図に関しては Unpleasant- Exciting 画像刺激時の各帯域のパワース
ペクトルはコントロールのそれとどの帯域でも有意差は見られなかった。一方,
脳波については,α帯域のパワースペクトルがコントロール時のそれと比較し
て有に減少していた。
また,自律神経の変化を調べるために心電図を記録し,R-R 間隔を計測した。
その結果,Pleasant-Calm 画像刺激および Unpleasant- Exciting 画像刺激の瞬
時心拍数はコントロール時のそれと比較して有意な変化はなかった。
結論:Unpleasant- Exciting 画像刺激時に脳―筋コヒーレンスは有意に増大
したが,これが情動回路の興奮が脊髄前角細胞に直接影響を及ぼしたのか,大
脳皮質運動野の神経回路に影響を及ぼしたのかは今後の検討が必要である。
22
【一般演題Ⅳ-5】
脳波 Phase Lag Index を用いた同時・継次処理課題遂行中の
ニューラルネットワークの検討
奥畑 志帆 1,2
1 京都大学工学研究科,2 独立行政法人学術振興会特別研究員(RPD)
人の情報の符号化をはじめとする複雑な認知機能は脳皮質の特定の一部位の
賦活のみならず,複数部位による共働的活動により実現されている。これまで
このような共働的な活動を反映するニューラルネットワーク指標が多く開発さ
れてきた。代表的な指標の一つであるコヒーレンス(coh)は,相関値を算出する
脳部位間で共通する信号源の影響を排除できず,その相関関係を本来よりも高
く 見 積 も っ て し ま う 問 題 点 が 指 摘 さ れ て き た 。 こ れ に 対 し , Phase Lag
Index(PLI)は信号の位相変化のみに着目することで共通の信号源による問題を
回避する指標として報告されてきた。本研究ではこれまでに coh を用いて検討
されてきた同時・継次処理課題遂行中のニューラルネットワークを,PLI を用
いて再検討した。実験課題には認知機能アセスメントシステム Das-Naglieri
Cognitive Assessment System(DN-CAS)の同時・継次処理下位検査(同時:図
形の推理,関係の理解,継次:文の記憶,統語の理解)を用いた。同時処理と
は提示された情報を一つのまとまりとして統合的に処理する様式,継次処理と
は提示された複数の情報を系列順序として統合する様式である。定型発達成人
18 名(平均年齢 24.4 歳±3.6)を対象とし,頭皮上 32 部位から両耳朶結線リフ
ァレンスによりサンプリングレート 500 Hz で脳波を導出し,Stam et al. (2007)
に準じて PLI を算出した。有意なネットワークは surrogate data を作成し,Z
score から判定した。その結果,α帯域において継次課題遂行中に同時課題中に
はみとめられない側頭が関連するネットワークが示された。加えて,β帯域で
は言語を用いる 3 つの課題に共通するパターンが示されたことから,PLI は各
周波数帯域に特異的に反映される認知活動を示したと考えられた。
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【一般演題Ⅳ-6】
開眼による脳電流密度分布と“functional connectivity”の変化
磯谷 俊明 1,2,吉村 匡史 2,西田 圭一郎 2,3,三井 浩 2,北浦 祐一 2
青栁 宇以 2,木下 利彦 2,Roberto D. Pascual-Marqui4,5
1 四国大学看護学部看護学科脳と心の研究室,2 関西医科大学精神神経科学教室
3Department
of Psychiatric Neurophysiology, University Hospital of
.Psychiatry, Berne
4The
KEY Institute for Brain-Mind Research, University Hospital of
.Psychiatry, Zurich
5 滋賀医科大学地域精神医療学講座
【目的】 開閉眼試験は脳波検査において普遍的に行われる。今回,最新の
LORETA プ ロ グ ラ ム を 用 い て , 開 眼 時 の 脳 電 流 密 度 分 布 と functional
connectivity(Pascual-Marqui, 2011)を閉眼時と比較した。
【対象】対象は,四国大学看護学部看護学科に所属し,脳波をテーマとするゼ
ミに参加した学生 8 名(21.8±5.4 歳)で,全員女性で右利き,視察脳波に異常
を認めなかった。文書にて,本研究への参加の同意を得た。
【方法】2 分間の開眼時および閉眼時の脳波を頭皮上 19 部位より記録し,被験
者毎に 40 秒間(20 epochs)のデータを切り出し sampling:128/秒にて AD 変
換した。
Functional connectivity については,ROI を上記 19 部位から eLORETA
の transformation matrix を用いてそれぞれ皮質内に single voxel として設定し,
171 通りの“lagged linear connectivity(lagged coherence)”を求め,LORETA
による電流密度分布と同様に,開閉眼 2 条件間で“multiple paired t-test with
nonparametric randomization”を行った。
【結果】 電流密度分布は,閉眼時に比較して開眼時に,徐波帯域(1.5-7Hz)
の右側 Brodmann area 39(角回)
,alpha 帯域(8-13Hz)の右側 Brodmann area
20(下側頭回)でそれぞれ低下した(p<0.05)。また,alpha 帯域で,左右半球
内それぞれの前後領域間で connectivity が減少した(p<0.05)。
【考察】 徐波および alpha 帯域の脳波活動を抑制ととらえると,開眼が高次
視覚野,特に側頭連合野や頭頂連合野を活性化することが示唆された。LORETA
は空間解像能 5mm ではあるが,脳機能を描写する優れた tool であることが確
かめられた。
24
第 29 回日本脳電磁図トポグラフィ研究会(JSBET2012)
会
長 尾崎 久記 (茨城大学教育学部)
事務局長 勝二 博亮 (茨城大学教育学部)
スタッフ 細川美由紀 (茨城キリスト教大学文学部)
軍司 敦子 (国立精神・神経医療研究センター)
松本 秀彦 (作新学院大学人間文化学部)
青木 真純 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
高村 秀彰 (茨城大学大学院理工学研究科)
平山 太市 (茨城大学大学院理工学研究科)
瀬谷 裕輔 (茨城大学大学院教育学研究科)
溝越 彩乃 (茨城大学大学院教育学研究科)
郡司 理沙 (茨城大学特別支援教育特別専攻科)
岡崎 朋美 (茨城大学教育学部特別支援教育コース)
福山 剛司 (茨城大学教育学部特別支援教育コース)
吉田 聖美 (茨城大学教育学部特別支援教育コース)
JSBET2012 プログラム・抄録集
2012 年 8 月 31 日 発行
第 29 回日本脳電磁図トポグラフィ研究会 事務局
〒310-8512 茨城県水戸市文京 2-1-1
茨城大学教育学部 障害児生理研究室内
E-mail:[email protected]
Tel&Fax:029-228-8292
(当日連絡先:090-6503-8292 )
Web:http://jsbet2012.edu.ibaraki.ac.jp