振り返ってみると中学生の時 「お母さんの一言」

振り返ってみると中学生の時
「お母さんの一言」
校
長
島 村
暁
2年前、SKIPの小森谷友美さんに「自分の選んだ道」というテーマで生徒に向けた講演をしていただ
いた時のことについて紹介したいと思います。
小森谷さんは、埼玉県警交通機動隊の女性白バイ隊に所属していた方で、平成26年の第45回全国白バ
イ安全運転競技大会(速く、難しい運転が要求される白バイをいかに安全かつ正確に運転することができる
かという技術を競う全国大会)で全国優勝した方です。ご本人にお会いすると予想に反して小柄な方で、ご
自身からも「私、身長が155㎝です(白バイは装備を含めて重量が約 300 ㎏、原付の重量は 90 ㎏前後)」と話
されるとても笑顔が素敵な方でした。私は、生徒自身が自分の将来を考える機会のひとつとして行う未来く
る先生講演会は、生徒の年代に近い方に自身の経験を語ってほしいとお願いしています。その講演の内容に
ついてふれたいと思います。
小森谷さんが警察官になることを決めたのは、ふり返ってみると「中学生の時だった」ということでした。
中学校の入学前、制服を作るときに「友美は制服が似合うから、制服のある仕事が向いているね」というお
母様の言葉がありました。その時は、制服ある職業のひとつとして“警察官”を意識されましたが、たくさ
んある職業のひとつという存在でいた。そして君たちと同じように中学校生活を送り、普通科の高等学校に
進学されました。
その3年後の高校卒業時、進学か、就職かと大きな進路選択に悩んだそうです。その時、小森谷さんは、
「自
分は大学に進んで何を学びたいのだろうか、本当に学びたいと思うものはあるのだろうか」と自分と向かい
合いました。はっきりとした答えは、見つかりませんでした。
「これだ」というものがないのなら進学する理
由がないと思い、職業に就くことを考え始めました。就職のことを考えたとき、いろいろな仕事が思い浮か
んだのですが、
「制服が似合うよ」というお母様の一言で意識した“警察官”という仕事について真剣に考え
るようになりました。そして警察官になることを決めたのですが、
「高校を卒業して警察官になるのか、それ
とも、大学を卒業して警察官になるのか」と、職業を決めたのちにも進学するべきかどうかについて悩みま
した。その結論をだすために、小森谷さんは研修期間(高校卒と大学卒では警察学校での訓練期間がことな
ります)
、給料、自分の人生設計など、いろいろなことを考えながら答えを探したのですが、すぐに明確な答
えはでませんでした。あるとき、
「警察官になる」から「警察官になって何をしたいのか」と別の面から自分
の将来を考えた時、
「自分は高校を卒業後に警察官なることが一番いい」と決断をされ、警察学校に入学しま
した。
警察学校卒業後、小森谷さんは2年間の交番勤務を経て、念願であった交通機動隊へ配属されました。配
属後は、連日厳しい訓練を受け、自身の技術を磨きました。途中で、大きな怪我をしてしまったこともあり
ましたが、その努力と実績が認められ、平成24年には、埼玉県の代表として全国白バイ安全運転競技大会
に出場するようになり、平成26年の大会では見事に全国1位の栄冠に輝きました。このような実績を持っ
ている小森谷さんは、現在でも勤務する日は、乗車の1時間前から自主訓練をして白バイに乗ると話されて
いました。
小森谷さんのお話のように、
「進学するにもしっかりとした目標が必要、進路決定は夢だけでなく現実も含
めて考えなければいけない、職業を決めるのではなくその職業で自分は何をしたいのかが大切、職に就くこ
とが最終目標ではなくそのなかで自分を磨くことが大切」など、考えなければならないことはたくさんあり
ます。いよいよ 7 月になります。3年生にとっては、これから進路決定に向けて体験入学、学校説明会、進
学フェアーなどに参加することになります。多くの生徒が初めて「自分の進路を決める」という大きな決断
を迫られます。幾度と進路決定をされた保護者の方からみると稚拙な面も感じられるかもしれませんが、生
徒は真剣に考え、自分なりの結論ももっています。保護者の方には、よくお子さんの声をよく聞いていただ
き、必要なアドバイスそして最後に「それでいいんだよ」という言葉を伝えていただければと思います。
*SKIP は Saitama Kind Intelligent Professional Woman(親切で知的な職業女性)に由来する。