フィールドセンターニュース

秋田県立大学生物資源科学部附属フィールド教育研究センターニュース 第37 号
2013 年 11 月 15 日
フィールドセンターニュース
http://www.akita-pu.ac.jp/bioresource/F-CENTER
〒010-0451 秋田県南秋田郡大潟村字大潟6番地 TEL 0185-45-2858 FAX 0185-45-2415
フィールド教育研究センターを利用した教育・研究の紹介(2)
フィールド教育研究センター
「ラズベリー果実の着色障害の発生を抑制する栽培管理技術の確立」
准教授 今西弘幸
ラズベリーは、ブラックベリーとともにキイチゴに属し、秋田県のような寒冷地に適した作物で、独特の香りをもつ甘酸
っぱい果実をつけます(第 1 図)
。夏に果実をつけるもの(夏果)と秋に果実つけるもの(秋果)の 2 種類に分けられます。
また、代表的な赤い果実をつけるもののほか、黄色や黒色の果実をつけるものもあります。
ラズベリーを含むキイチゴ類の輸入量は生鮮と冷凍を合わせて約
2,500t を推移しており、国内市場に出回っているほぼすべてが輸入品です。
これまで国内ではほとんど栽培されていなかったため、
“産地”が存在しま
せんでした。2008 年に、生産者、実需者、地方公共団体、銀行などが「あ
きたキイチゴ利活用研究会」を立ち上げ、秋田県におけるキイチゴの産地
化を目指して活動しています。また、五城目町と本学は共同研究を 2008
年から始め、経営実践による産地形成に取り組んでおり、着々と生産・販
売量を伸ばし、昨年は 1.8t の販売実績をあげています。これらの取り組み
を通じて、アイスクリーム、ジュース、和洋菓子、リキュールなどいろい
第1図
結実しているラズベリー
ろな加工商品も開発されてきています。なかでも、生鮮果実の利用は特筆
すべきものといえます。なぜなら、秋田県のように首都圏から距離のある
地域では、輸送による果実のつぶれ・カビの発生や大ロットでの購入を余儀なくされるため、輸入の生鮮果実を利用するこ
とが困難な状況にあります。しかし、生産地が利用地の近くに形成されることによって、小ロット・多頻度での生鮮果実の
利用が可能となり、そのメリットが十分に生かされるような状況がつくりだされています。
フィールド教育研究センターのある大潟村の露地栽培では、夏果が 7 月の
約 1 か月間に、秋果が 8 月中旬から 11 月下旬にかけて収穫されます。赤ラ
ズベリーは、正常に成熟すると果実全体が赤く色付きますが、夏季に果実の
一部が白くなる着色障害が発生することがあります(第 2 図)
。着色障害果
の白い部分は味がなく、商品とすることができません。2012 年には 8 月中
旬から 9 月中旬にかけて最高気温が 30℃を超える日が続き、着色障害が多発
したため、その時期に収穫された果実のほとんどを廃棄処分せざるを得ませ
んでした。障害果が多発すると生鮮果実を利用することができないため、生
産者・実需者の双方が痛手を被ってしまいます。そこで、果実の着色障害の
発生を抑制する技術を開発し、安定的に商品価値の高い果実生産を可能にす
ることを目的とした研究を行っており、アグリビジネス学科学生の卒業研課
第 2 図 ラズベリーに発生した着色障害
題としても取り組んでいます。
ラズベリー果実の着色障害は高温や強い紫外線によって引き起こされているものと考えられており、植物体がどのような
条件にあるときに障害が発生するのかを明らかにし、その発生要因をいかに抑制すればよいのかについて検討を行っていま
す。これまでのところ、果実の表面温度が上昇するように加温すると障害が発生する傾向がみられています。波長の違う紫
外線を照射したところ、UV-B(302nm)によって葉に日焼け症状がみられましたが、果実への影響は明らかにはなってい
ません。まだ明らかになっていない点があるため、今後も継続的に調査を進め、発生要因を軽減させる栽培管理方法につい
て検討を行い、安定的な生産技術の確立を目指しています。
秋田県立大学生物資源科学部附属フィールド教育研究センターニュース 第37 号
2013 年 11 月 15 日
「地域交流室 便り」 vol 34
花巻北高校教諭訪問
9 月 9 日(火)
、花巻北高校教諭 2 名が進路指導のため大潟キャンパス・FC を訪問。アグ
リ学科の特徴や入試状況等について、FC では基礎から応用までの技術を1プロ~4プロま
で実施し、学生自らが企画・運営・解決策について学んでいることを説明する。また、ビオ
トープ水田では、無農薬栽培について興味を持っている生徒がいるとのことで、栽培や販売
について質問があった。生徒の進路選択の一助となるよう伝えてほしいと思う。
JICA 研修団大潟 CP・FC 視察
国際協力機構(前 JICA)の「持続的な農業開発に資することを目的」とする農業政策企画コースが 9 月 10 日~13 日ま
であり、県内の農業試験場、農業団体、そして農業教育の取組みで大潟キャンパスとフィールド教育研究センターを視察し
た。FC 関連施設では、機械格納庫前でトラクター及び作業機の説明をすると、アフリカの研修員は旧式大型汎用型コンバ
インの運転席に座るなど興味津々の様子。園芸ハウスでの自動化された温度や灌水方法、水田ではコンバイン刈りに至るま
での経緯を機械展示し汎用型コンバインをデモンストレーションした。研修員からは「コンバインの価格」
「大型機械を導入
する場合の補助について」等質問があった。また、放牧場庇陰舎前では循環型農業と日本短角牛の飼養管理等をそれぞれ各
班長が説明した。放牧場前で記念撮影後に、フィリピン行政管から「機械のデモンストレーションなど色々対応してくれあ
りがとうございました」と通訳を介してお礼があった。
大潟小学校の総合学習4回目となる稲刈り体験。草取り後
の管理と出穂から登熟までの経過を説明後、黄金色に実った
稲を刈り取る。稲を丁寧に扱うため班毎に結束・運搬したも
のの、棒掛け時にはほどけてしまうものが多く大変であった
が 2~3 週間後には脱穀作業の予定である。3 日(木)も秋晴
れの下、飯島幼稚園の年長児が、ハサミで稲刈りに挑戦した。
「疲れたけど、楽しかった」と感想を話していた子どもたち
には、稲の様子や刈り取る感触などをいつまでも覚えていて
ほしいものです。
稲刈り体験!part4 10/2
大潟小学校 5 年生
飯島幼稚園年長
果樹園からのリンゴ便り
FC センター圃場 22.5a で 4 品種 150 本を栽培、実験圃場 1.3ha では 5 品種 513 本
を植栽し、わい生台木を利用して栽培をしている。春の開花が遅れたがその後は天候に
恵まれ台風被害も無く順調に経過。リンゴ作りで重要な摘果作業は、粗摘果(基本的に
は中心果を残し側果を切除)と仕上げ摘果(平均的な大きさや間隔、傷害果)の2回作
業を行う。更に1樹当り平均 150~200 個前後を目安に調節し夏場は夏季剪定や品種に
よっては葉摘み、玉回しなどの管理することで収穫後の出荷方法がスムーズに行われる。
以上の栽培管理で 10 月下旬からはジョナゴールド、シナノスイート、11 月上旬からは、
、ふじの収穫が始まります。
<技能スタッフ:加賀谷涼平>
FC 農産物販売のお薦め
寒さが日々厳しくなるこの季節、販売担当からネギ 5Kg 袋詰めと堀取りネギを販売中、ふ
じリンゴが出始めます。詳しくは FC 鈴木まで。
編集後記:10 月中旬以降、当たり年である台風は一週おきに到来したが、我が家も無事稲刈りが終わって、ブドウや柿、
を味わい、降霜前にはキウイとカンキツの収穫を迎える。異常気象下で収穫が左右される農作物だが、平年作のようだ。
自然の恵みに感謝しつつ、県内では「デスティネーションキャンペーン」が展開されている。晩秋から初冬の「食・自然・
温泉」を探索するのは「今でしょう」ね。
地域交流班:渡邊良一
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