第2回 薪協議会 「先進地視察研修」 郡上市薪ストーブ普及・推進協議会高山市視察研修報告書 【期 日】 【参加者】 平成 22 年 7 月 29 日(木) 午前 9 時 00 分∼午後 6 時 30 分 協議会委員 7 名、事務局 5 名 合計 12 名 【視察研修目的】 当協議会において、今後木質ストーブ及び木質燃料の普及・推進について具体的に検討 を進めていくため、木質バイオマスエネルギーに関する総合的な取り組みを進めている高 山市への視察研修を実施しその実情や取り組み状況を把握する。 (前回会議で明らかになっ た課題点についても考察) <高山市視察研修先と目的> 今回の視察研修内容は、全部で 5 つ。それぞれの研修先の概要と目的は以下のとおりで す。 (1)飛騨高山・森のエコハウス(高山市西之一色町) 環境省の 21 世紀環境共生型モデル住宅の普及促進事業で建設されたモデルハウス。ペ レットストーブ、ペレットボイラー等が導入されているため、その設置状況、稼動状況等 を把握し、郡上市での導入の可能性を探る。 (2)高山市補助金制度説明 エコハウス内で、高山市の地球温暖化防止を目的とした木材活用と森林保全の取り組 みの説明及び昨年から木質ストーブへの補助制度をはじめたので執行状況、反響、効果 等を聞き、補助制度について考える。 (3)薪ストーブ見学(高山市松之木町) 昨年、市補助金を活用して設置されたお宅を見学させてもらい、設置の経緯や薪材の 調達方法などを聞き、一般家庭での普及の可能性や補助金による効果を把握する。 (4)飛騨雪国科学(高山市一之宮町)の資材置き場 有志により結成された「NPO 法人 山と森お援け隊(まつぼっくり含)」が、山に残さ れた間伐材や放置材の活用システムを始めたので、現場から運搬→受け取りの過程を見 学、流通の仕組みを教えてもらい、薪の供給システムについて考える。 (5)木質燃料(株) (高山市国府町) 平成 21 年 1 月より稼動している岐阜県で初めての大型ペレット製造プラント。実際の ペレットを見学、又事業者の説明を聞き、木質燃料活用の意義、地域での経済効果につ いて学ぶ。 -1- (1) エコハウス(高山市西一之色町) 環境省の補助事業で建設されたモデルハウスで、暖冷房設備には高山市内の工場で作ら れるペレット燃料を用いたペレットストーブとペレットボイラーが採用されている。 高山は、1年のうち7カ月間暖房が必要な地域で日本で2番目に寒い地域に入るのでエ コハウスには、断熱性をあげる・通気性を考えるなどの設計上の工夫がされている。また、 地域の自然エネルギーを積極的に活用するようになっている。 ※現在、エコハウスの運営管理は高山市内の工務店や設計士、建築に関わる業者で組織する飛騨高山 ネットが行っている。 ※エコハウスは一般の宿泊も可能。原則4人までで基本料金 3000 円+1人 1500 円金土の夜宿泊可 <ペレットボイラーの説明> ・ ペレットボイラー本体価格は 200∼300 万円で、 ペレット燃料は満タンにして 100kg 投入可能。 ・ ペレットボイラーは給湯用で 160ℓをためられ、 80℃に設定できるので水と混ぜれば 300ℓ使える。 使用感は普通のボイラーと変わらない。 ・ 実際に住んでいるわけではなく、たまにしか宿 泊しないので 100kg のペレットで半月ぐらいもつ。 ・ メンテナンスは、さほどかからない。 <ペレットストーブの説明> ・ ペレットストーブの熱が床下を通って家全体にいきわたるよう設計されているが、実際 家の中が暖まるまでには何日かかかる。 ・ ペレットストーブは温風のでる前面だけが暖かい、暖かさはファンヒーター並み。 ・ 実際は、ペレットストーブのみでは十分な暖がとれず、ファンヒーターを併用しないと 寒冷地では無理。 ・ 本体価格は 30 万円だが、工事費込みにすると約 100 万円かかる。 ・ メンテナンスは意外に毎日必要で、朝使用する前に灰を捨てなければならない。 ・ 煙突掃除は必要ない。 ・ 一日8時間使用し続けて1袋(1袋 450 円←市の補助金が 100 円つくので 350 円) <高山市の概要 高山市林務課長より説明> ・ 高山市は森林面積 20 万 ha を有しており、県の 1/4 の面積で東京都の面積に匹敵する。 ・ 50 年生以上の林齢が 1/3 を占めている。 ・ 平成 21 年度から、高山市で木質ストーブの補助事業を実施しているが、実際は申請の -2- 8割がペレットストーブではなく、薪ストーブであった。その理由は、薪ストーブが自 然志向にあっているからと思われる。 ・ 最近、高山市内でNPO法人「山と森お助け隊」が結成され、市民レベルで材の搬出の 取組みが進みつつある。 <高山市の取り組み 高山市主事より説明 > ・ 高山市では、二酸化炭素の削減、再生可能エネルギーの活用、循環型社会システムの構 築により低炭素型の地域づくりを目指している。→環境負荷の少ない都市づくり ・ 平成 21 年度には、高山市地球温暖化対策地域推進計画及び高山市バイオマスタウン構 想が策定された。 高山市では低炭素型の地域づくりに向け、以下の取組みを行っている。 木質バイオマス活用促 進事業 1.ペレットストーブ等導入促進補助金 2.ペレットボイラー導入促進補助金 3.ペレット燃料普及促進補助金 再生可能エネ 1.市内小中学校へのペレットストーブの設置 ルギーの活用 公共施設への導入 北小学校(平成 19・20 年度)30 台 国府小学校(平成 21 年度)12 台(平成 22 年度)16 台 宮中学校(平成 22 年度)20 台予定 1.エコハウスの建設 低炭素型住宅 2.屋根遮熱塗装推進事業 の普及 3.住宅エコ推進補助制度 カーボンオフセット 豊富な森林資源を活用 ○東京都千代田区と連携 による他都市 した都市・農山村の連 まずは、エコツアーを実施し高山市内の工場の見学や自然との との連携 携・協働 ふれあい体験を実施した。 他、林務課としては以下の取組みを行っている。 ○ 森づくり委員会の設置(平成 19 年4月) 合併に伴い、日 森林の保全 ○ 高山市独自の間伐推進計画の策定 ○ 国有林との連携による「美しい森林づくり in 飛騨」 本一広い森林 ○ 林業と建設業の協働による森林づくりの取組み を持つ都市に 森林の活用 ○ 地域材住宅に対する助成(新築で最大 50 万円) ○ 木質バイオマス利用促進事業 高山市では、地球温暖化対策全般を地域政策課が受け持ち、生活環境課でレジ袋削減、 -3- 市民への環境啓発を。都市整備課でエコ住宅ポイント。商工課で新エネルギーの導入。管 財課で省エネ法の事業者責任。林務課で木質バイオマス補助。と個別事業を各課で分担し ている。 <ストーブへの補助金について> 昨年度の実績 ペレットストーブ等導入促進事業 木質バイオマス活用促進事業 計 10,680,000 円 (内訳) ペレットストーブ 26 件 合計 11,020,000 円 薪ストーブ 82 件 ペレット燃料普及促進補助金 計 340,000 円 ペレットストーブ等導入促進事業 計 15,000,000 円 ペレットボイラー導入促進事業 計 3,000,000 円 ペレット燃料普及促進事業 計 2,000,000 円 今年度の予算見込 木質バイオマス活用促進事業 合計 20,000,000 円 昨年の補助金の傾向 ① ペレットストーブは2割で、薪ストーブが8割の申請。 ② 市街はペレットストーブで、郊外は薪ストーブが多い。薪置き場が必要だから。 ・ 本体の購入助成とペレット燃料に対する購入助成を行ったが、燃料に対する補助は事務 量も煩雑になるので少々考えもの。 ・ 環境面から考えられた補助制度なので、今後木材利用と結びつけていきたい。 以下、説明後協議会委員より高山市へ質問事項 ・ 薪に補助金がない理由 → 審査基準が定まらないため、ペレットのみに助成 ・ 薪ストーブに補助金をつけた経緯 → 森林を活用して地球温暖化対策を進めるため 環境課から林務におりてきた時には決定していた。 ・ ストーブ本体について、ダイオキシンや二酸化炭素などの有害物質の発生量など環境を 考えた機種に対する意識はあるか。 → 特にないが煙に対する配慮については宣誓書 をもらっている。 ・ 補助金制度を設けてから切捨て間伐の変化は感じるか らないが市民意識の変化はでてきているのでないか。 -4- → 利用間伐量はさほど変わ (2)個人宅(高山市内) 昨年、市の補助制度を活用して個人の家に購入された薪ストーブの見学。 市街地から車で5分程の住宅街にある。購入された薪ストーブは、長野県を中心に普及し ている信州カラマツストーブだった。 ・ 薪ストーブは新築と同時に購入。 ・ 32 坪の家全体を薪ストーブひとつで暖をとっている。 ・ 薪は自分で調達。 ・ シイタケ材の不用部分をもらって薪として使っている。 ・ 薪は2∼3年分ストックがある。 ・ 薪割りは朝倉さん(REDBEAR)で薪割り機を借りている。 ・ 灰の処理は、1カ月に1回。 ・ カラマツストーブは、針葉樹でも焚けるので間伐材が使える。 ・ 補助金制度があったことが、薪ストーブ購入になったわけではない。 ・ 10 万円補助金でもらっても、ほんの一部にしかなっていない。 (3)NPO 法人「山と森お援け隊」 高山市では、今年有志が集い「NPO法人 山と森お援け隊」が結成され、山に残され る残材や放置材などの資源活用方法をシステム化する活動を始めた。 ・ 材は主に間伐ででる針葉樹。 ・ 一番多いのが 2m10cm(他 90・130・170)に分け てもらっている。 以下、協議会委員より質問 ・ 需用はあるのか(森林組合専務)→雪国科学で薪 ストーブをつけた家がこれまでに 100 件ほどあり、 そのうちの 40 件は薪材を購入してくれるだろうと 思っている。 ・ 出荷と入荷のバランスがとれるのか →雪国科学で薪割りの会を毎年やってきていた のであてにしている。 (4)木質燃料㈱(高山市国府町) 岐阜県で初めての大型ペレット製造プラントで平成 21 年 1 月から稼動している。製造し たペレットは市内の大型ホテルや旅館で利用されている。社長は風呂屋の三代目で、東京 から帰郷した際、高山には木が豊富にありそれを燃料にすれば、まち全体が活性化するの ではないかとの思いから取り組みをはじめた。 ・ まずは需用の確保のため、市内の大型ホテルをまわりペレットボイラーの営業活動をし てボイラー導入の確約をもらった。 -5- ・ 現在、経営が成り立っているのは、高山は大きいホテルがあって需用が多いおかげ。 ・ 従業員は7名、年間2千トン製造。 ・ 来年、ラインを増やす計画 ・ 木材の地産池消をすると良いことは、地元にお金がおちること。 ・ 補助金をつけると費用対効果が大きい。 ・ 今は、バイオマスタウン構想とかいうが昔はどこもバイオマスタウンだった。 ・ 全国的にもペレットの価格が安い、安くできるのは需用があるからと市の燃料に対する 補助金制度があるから。 以下、協議会委員の質問 ・ クローズアップ現代で、ペレットが取り上げられていたが、自治体で工場を立ち上げて もペレットの普及率や工場の稼動率が悪いため、どこもうまくいっていないとやってい たが、なぜ木質燃料は経営が安定しているのか → 高山市内の大型施設が環境面を考えて、社会貢献の意味もありペレットボイラーに 切り替えてくれたため需用が多いから。 ・原料の材はどうやって確保しているのか → ほとんどが間伐材 -6- 車中での協議内容 【往路】 資料1 視察行程表(事務局より) 資料2「薪のある暮らしフェア」企画について 協力依頼(事務局より) カタログ 薪ストーブカタログで環境を考えた薪ストーブの説明(委員より) ・薪ストーブの燃料効率が悪いと煙(一酸化炭素)が多くでる。 ・薪の持つエネルギーを効率よく取り出すことが環境にも良い。 ・北欧では、環境やエネルギーへの関心が高く、30 年前から取組みがされている。 海外では、燃焼効率が 60%以下はだめと言っており、構造的に三次燃焼までできる ようになっているが日本には計測器がない。日本暖炉協会があって現在、国交省に働 きかけをしている。日本も環境を考えた薪ストーブの導入を検討すると良い。 【復路】 資料4「郡上の山を活かす会」の活動紹介(委員より) ・自分たちの会でまとめたことを紹介させてもらう。 ・協議会の会議があと数回しかないので少しでも役にたてればと出させてもらった。 ・追加→5.薪ストーブの周知の方法について <視察研修の感想> ・郡上でも木質ストーブや木質燃料の普及により、雇用問題の解決や山林の整備 が進むと良いと思う。 ・エコハウスの 8000 万円の家は非現実的だがモデルハウスとしては有り。 ・工場は最初から設備投資をしすぎると長続きしない。木質燃料さんのように空 いた工場を再利用して少ない従業員でやっていけば続いていける。高山は大き いホテルがあるのでやっていけるが、郡上でやるなら病院や老人施設などの大 型施設で導入すれば普及可能ではないか。 ・薪ストーブの普及については、薪ストーブは高価だが、長い目でみると高くな いと思う。その辺を深く掘り下げると良いのでは。また、化石燃料と木の燃料 を比較してクローズアップすれば郡上でも普及するのでは。 ・日本人も自分さえ良ければ良いとゆう考え方でなく、一人ひとりの行為が環境 にどれだけ影響を与えるのか考える必要がある。山の木を調達して使うと思え ば薪もむずかしいことではない。 -7- ・自分の目で見ることが必要。山と森お援け隊の原木流通システムが参考になっ たので今後詳しくききたい。 ・職業柄コスト面ばかりを重視してしまうが、環境など目線を変えなければと反 省した。 ・薪をつくるのが男の人が多いが、楽しみながらやらなければ長つづきしない。 山と森お援け隊のボランティアのシステムを見学したが、あれができるのも楽 しみながら社会に貢献できるという面からだと思う。 ・化石燃料を使わないと外貨の流通が減って地元にお金がおちると感じた。そう思 ってみると、薪ストーブを使うことは自分の山の手入れにもなりまたそれが薪と して使える。良いことなので郡上でも山を持っていてまだ薪ストーブを持ってい ない人に普及すると良いと思った。 <参考 郡上市と高山市の比較> 比較内容 郡上市 高山市 人 口(h22.4) 46,716 93,822 世帯数(h22.4) 14,907 34,021 総土地面積(ha) 103,079 217,767 森林面積(ha) 92,610 200,963 国有林・民有林(ha) 2,698・89,913 森林率(%) 89.8 -8- 81,217・119,746 92.3 <高山市視察研修まとめ> ◇ ペレットストーブ、ペレットボイラーについて ・暖房効果はファンヒーター並みだが、炎による癒し効果が期待できる。 ・部屋の空気を汚さず、簡単便利に利用できる。 ・木質燃料を使用するため、化石燃料の使用量が削減され地球温暖化防止に貢献できる とともに木材活用が推進される。 ◇ 薪ストーブについて ・ファンヒーターと比べると、暖房効果が高く部屋も結露せず快適。 ・初期投資や手間もかかるが、それに見合うだけの暖房効果や癒し効果が得られる。 ・薪を使うことで、山への関心が高まり山の手入れにつながる。 ◇ ペレット燃料について ・切捨て間伐材や端材、林地残材などの未利用材が資源として有効活用できる。 ・郡上市には、工場がなく調達できないため他地域から取り寄せると輸送費がかかり割 高になる。工場を建設するには、安定した需用が確保できないと難しい。 ■ 高山市は観光都市で大型のホテル等があるため、ペレット燃料の需用があり経営は軌道 にのっているが、郡上市で同じようにペレット工場を建設し実際に経営していくことは かなり難しいと思われる。 ■ ペレットストーブとペレットボイラーは、薪ストーブや薪材と比較すると取り扱いが良 いが暖房効果がファンヒーターと変わらないこと、その燃料は一度木材からペレット燃 料につくりかえなければいけないことから、委員からは「郡上では、薪をそのまま使用 できる薪ストーブのほうが良い」との意見が多くでた。 ■ 委員が関心を持たれたのは、 「NPO 法人山と森 お援け隊」の活動方針と活動内容だった。 民間の非営利団体が山に放置された間伐材や風倒木を大事な地域の資源と捉え、志を同 じにする異業種の人たちがそれぞれの得意分野で協力をし、合間を見て楽しみながら活 動し地元の山や森を綺麗にしていく。(具体的には放置された材を搬出しストックヤー ドに保管しておき利用者がそこにとりにくるというもの。)こうした「山と森 お援け 隊」のように、市民自らが考え行動を起こし、無理のない範囲で活動していくことが継 続(持続)可能な森林づくり、まちづくりに繋がると思われる。 ■ 薪ストーブが普及すれば、おのずと山への関心が高まるものと思われる。それが利用間 伐量の増加(森林整備)にまでは直接繋がらないかもしれないが、環境保全(里山保全) や地球温暖化、地域の資源を見直す契機にはなるのでないか。 -9-
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