年度経営計画 平成28年度 1 (1)業務環境 1) 岐阜県の景気動向 平成27年度の県内経済は、消費は一部に弱さがみられるものの緩やかな持ち直しの動きがみられ、雇用情勢は着実に改善、 企業収益は通期で増益が見込まれるなど、緩やかに回復しています。 一方で、原材料価格の上昇が製造コストを押し上げており、販売価格への転嫁が進んでいない中小企業・小規模事業者の企 業収益を圧迫しています。今後は、アメリカの利上げによる新興国経済への影響や中国経済の減速などの海外景気の下振れリ スクに注意を払う必要があります。 2 2) 中小企業を取り巻く環境 県内中小企業の経営環境は、1)の景気動向の下で、一部に受注や生産が好調な業種もあり回復基調にありますが、業種・ 規模によっては厳しい状況が続いています。 製造業では、海外需要や新型車効果に支えられた自動車などの輸送用機械関連を中心に受注や生産は好調を維持してい る一方、原材料価格の上昇分を販売価格への転嫁が進んでいない企業や、消費意欲の減退や海外製品との競合などにより厳 しい状況が続いている企業も見受けられます。 商業・サービス業では、雇用環境の改善による賃金上昇を背景に消費に持ち直しの動きがみられます。インバウンドの増加も 売上増加に寄与し、消費増税による駆け込み消費の反動は和らいでいます。 観光業では、インバウンドの増加や好天に恵まれたことなどにより入込客、宿泊者数ともに好調を維持しています。 建設業では、公共工事は受注量が減少していますが、新設住宅着工戸数は低金利や所得環境の改善を背景に前年同期を 上回っています。 雇用情勢は、有効求人倍率は上昇を続け、完全失業率も低水準で推移しており着実に改善している一方、業種によっては人 手不足に陥っている企業も見受けられます。 企業の資金需要は、金融機関間の金利競争が続く中、新規融資実績は横ばいの状態で推移しています。 企業倒産は、金融機関の融資姿勢や返済条件変更の対応に大きな変化が見られないことなどから低水準に推移しています が、体力的に弱く倒産に追い込まれる企業は一定数発生するものとみられます。 3 (2)業務運営方針 平成28年度の業務運営方針は、県内中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境を考慮し、国、県及び市町村の制度融資 を活用した資金調達の円滑化を支援するとともに、金融機関及び中小企業支援機関との連携を図りながら実情に応じた適切な 期中支援をこれまで以上に取り組み、県内中小企業の発展と地域経済の活性化に寄与していくため、下記のとおりとします。 ①保証利用の推進 中小企業・小規模事業者の健全な発展が地域経済の活性化に欠かせないとの認識の下、各種保証制度の積極的な利用推 進により中小企業・小規模事業者の資金繰り支援に努めます。 創業者には、資金繰り支援に加え、商工団体等と連携した経営相談会や外部機関が実施する創業セミナーへの参加などに より、創業期の課題解決に向けた支援にも取組みます。 ②経営改善サポートの充実 金融機関や中小企業支援機関との連携強化、協会独自の専門家派遣事業や国の経営支援等対策補助事業の活用などによ り、返済条件緩和先の経営改善を積極的に支援します。 ③回収の推進 回収業務の見直しを継続して実施し、回収の効率化と最大化を図ります。 4 ④信頼される組織づくりと人材の育成 役職員一人ひとりが、日常業務において高い倫理観と責任感を持って行動することでコンプライアンスの実現を目指すととも に、職員の資質向上を図り、誰からも信頼される協会職員となるための人材育成に努めます。 ⑤信用補完制度見直しへの対応 制度の見直しにかかる情報を的確に入手し、関係機関に対する情報発信に努めるとともに、来るべき見直しの実施に備えま す。 5 (3)重点課題 【保証部門】 ①利用者ニーズに応じた保証推進による保証利用の拡大 保証申込みの際に、中小企業者の実情に応じて、ニーズに合った資金調達方法や保証制度の提案に努めるとともに、平成2 7年12月に名古屋税理士会と連携し新たに創設した「税理士連携短期継続特別保証」の利用推進を図ります。 また、金融機関には、各種キャンペーンの実施や保証業務説明会等の開催による保証推進のほか、営業店等への訪問活動 を通じてきめ細かく利用促進を働きかけるなど、保証利用の拡大に努めます。 さらに、商工会議所・商工会には、「提携型全国小口」、「県小口Z」等の小規模事業者向け保証制度の推進を図り、商工団体 経由保証の利用増加に努めます。 ②創業支援、事業継承等への積極的な対応 平成27年度より県創業支援保証における県の保証料補助が拡大し、利用者負担が大幅に軽減されたことから、同保証制度 の有利性を関係機関にPRして創業保証の利用増加に努めます。 また、自治体や商工団体等が実施する創業セミナー等に積極的に参画するなど、創業者に直接関わる機会を拡げるとともに、 創業保証後3年間は企業支援室企業支援課が創業者の相談窓口となり、きめ細やかなフォローアップを行うなど、創業支援業 務の強化を図ります。 さらに、事業存続、雇用維持を目指し、事業継承を計画する中小企業者への金融支援を金融機関等と連携して積極的に取組 みます。 6 ③経営改善に向けた支援事業の充実 平成27年度から取組みを開始した外部専門家の派遣による「経営改善計画サポート事業」を推し進め、「事業再生計画実施 関連保証」、「経営力強化保証」、「条件変更改善型借換保証」等を活用して条件変更先のランクアップを加速させます。 また、昨年に引き続き「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」の費用補助事業を実施して保証先企業の経営改 善促進に努めます。 さらに、商工団体等の経営支援機関が実施する経営相談会に参画し、経営課題を抱える中小企業者の金融・経営相談に対 応します。 ④保証審査態勢の充実 協調融資保証制度「協調α保証」を引き続き推進するなど、金融機関プロパーとの協調融資により適切なリスク分担を図りま す。 また、不正な保証利用防止に継続的に取組み、適正な保証の推進に努めるほか、早期代位弁済に至った事例について、平 成27年度に立ち上げた「事例研究会」で事故原因等を検証して、保証審査に活かす取組みを実施します。 7 【期中管理部門】 ①条件変更先への期中支援の取組み強化 返済条件緩和先に対しては、引き続き取扱い金融機関と協調して、中小企業者の実情に応じた弾力的な条件変更を実施し、 資金繰り支援に努めます。 また、協会職員が中小企業者を訪問し、事業者のニ-ズ、現況及び課題を把握し、借り換えの前提となる返済額の増額や事 業改善の取組みへの意識付けを金融機関と連携して行うほか、中小企業診断士による経営診断サービスを提供するなど期中 支援の取組み強化に努めます。 ②金融機関、中小企業支援機関と連携した支援態勢の拡充 中小企業支援ネットワーク「岐阜企業力強化連携会議(全力応援!ぎふネットワーク)」と「岐阜県経営支援機関担当者連絡 会(サポネットぎふ)」の事務局として、時宜な課題などを取り上げて会議を開催し、中小企業支援機関間の情報共有に努めま す。 また、個別中小企業者への金融支援・経営支援を効果的に行うため、必要に応じて「全力応援!ぎふサポート会議(以下「サ ポート会議」という。)」を開催するほか、「岐阜県よろず支援拠点」、「地域プラットフォーム」等の専門家派遣を活用、さらに岐阜 県中小企業診断士協会との連携事業を顧客の状況やニーズに応じた内容に拡充し、金融機関、商工会議所・商工会などの支 援機関と連携した地域一体の実効性ある中小企業者支援に取組みます。 ③事業再生支援態勢の充実 抜本的な事業再生事案が増加していることから、中小企業再生支援協議会、再生支援ファンド等と密接に連携のうえ適切な 8 再生手法を検討するとともに金融機関や支援機関等と協力して、再建を図る中小企業者の支援に取組みます。 また、同支援協議会スキームによる暫定リスケ期間が終了する案件も増加していることから、メイン金融機関はじめ関係支援 機関等との情報共有を密接に行い、今後の支援に積極的に取組みます。 ④調整部門の充実 事故報告書の提出を受けた場合は、中小企業者、金融機関及び保証協会で構成するサポート会議を適宜開催し、事業の見 込みを検討する中で三者が情報を共有し、中小企業者にとって納得感のある方針決定をします。この結果、代位弁済に至る場 合は返済の意識付けを行うなど求償権回収の促進を図ります。 また、保証付き貸付金に延滞が生じた場合は、金融機関からの事故報告提出を待つことなくサポート会議の開催を提案する など延滞解消に向けた積極的支援を引き続き行います。 さらに、適正な期中管理を推進するため、前年度に引き続き金融機関営業店単位の期中管理説明会の開催を充実させま す。 9 【回収部門】 ①回収の効率化と向上策の実施 全ての求償権について、管理職が担当者に対し半期毎のヒアリングを実施し進捗状況を確認するとともに的確な回収方針の 指示を行うことで効率的かつ確実な回収を目指します。 また、自動督促などのシステムを活用した返済管理と現地訪問などによる折衝を効果的に組み合わせ定期回収額の増額を 図ります。 ②サービサー委託求償権の状況把握と回収促進サポート 協会及びサービサーの管理職による定期的な情報交換によりサービサー委託求償権の状況を把握するとともに回収促進を サポートします。 ③管理事務停止・求償権整理の推進 回収見込みのない求償権については適時適切な管理事務停止を実施します。 また、求償権整理手続きは専任の担当者による集中処理を実施し、求償権残高の圧縮を図るとともに人材等の経営資源を 回収可能な求償権の回収に集中させます。 ④回収業務の合理化と不正・事務過誤防止チェック機能の見直し 管理回収マニュアルについて、効果的かつ平準的な回収業務が行われるように適宜見直しを行います。 また、不正や事務過誤を防止するチェック機能に漏れがないように引き続き事務手順の見直しに努めます。 10 【その他間接部門】 ①コンプライアンス態勢の充実、強化 ・役職員全員がコンプライアンスマニュアル及びコンプライアンス・プログラムの実践に努めるとともに、実施状況を定期的に検 証し、フォローアップの徹底を図ります。 ・「特定個人情報等管理台帳」、「個人データ等顧客情報管理台帳」、「個人データ外部持出管理簿」等の管理強化により、顧客 保護等管理態勢の徹底を図ります。 ・コンプライアンス関連諸規程及びマニュアルの継続的な見直し、整備に努めるとともに、実践を確実なものとするため、役職員 に対して規程等の周知を徹底し、コンプライアンス態勢の充実・強化を図ります。 ・反社会的勢力との関係を遮断するため、一元的な管理態勢の元で、組織として一丸となって対応するとともに、平素から警察、 公益財団法人岐阜県暴力追放推進センター、弁護士及び金融機関と緊密に連携します。 ②危機管理体制の検証 ・休日又は夜間の災害発生を想定したBCP(事業継続計画)が、非常時に実効性のある体制であるかの検証を行います。 ・COMMON システム運用協議会及び保証協会システムセンター株式会社と連携して、システム関連障害の発生を防止し安定運 用を図ります。 ・定期的かつ継続的なシステム検証を行うことで保証料違算発生の未然防止を図ります。 ・平成28年5月の保証料業務統一化が確実に実施できるよう、様々な状況を想定し設定項目の修正結果の検証を行うことで障 害発生の未然防止を図ります。 11 ③信頼される保証協会職員となるための人づくり ・各種研修への積極的参加、内部研修の充実及び資格取得の奨励等により職員のスキルアップに努め、経営支援や再生支援 における能力の向上等、中小企業者の視点で誠意と熱意を持って行動ができる職員の育成を図るとともに、有資格者や女性職 員の能力を積極的に活用します。 ④広報、広聴活動等の充実、強化 ・テレビ・ラジオなどのマスメディアを通じた効果的な広報活動により、信用保証協会の認知度及び保証利用度の向上を図りま す。 ・ホームページにてタイムリーに情報を発信するとともに、積極的に情報公開を行うことにより、利便性及び経営の透明性の向 上を図ります。 ・中小企業団体や商工会議所・商工会等中小企業支援機関との意見交換を積極的に行い、ニーズを業務に反映するよう努め ます。 ・信用保証制度や協会業務の適切な運用を図るため、金融機関担当者向け保証及び期中管理業務説明会を継続的に実施しま す。 ・関係機関や中小企業者向けに各種保証制度に係るチラシ等の広報物を配布し、保証付融資の利便性や有益性の周知に努め ます。 ・商工会議所・商工会等中小企業支援機関と連携した中小企業者向けセミナーや地域の大学と連携した金融教育を通じて、信 用補完制度の社会的認知度の向上を図ります。 12 (4)保証承諾等の見通し 平成28年度の保証承諾等の主要業務数値(見通し)は、以下のとおりです。 (単位:百万円、%) 対前年度 金 額 計画比 保証承諾 96,000 92.3 保証債務残高 351,000 92.2 保証債務平均残高 361,000 92.0 代位弁済 6,500 79.3 実際回収 1,800 100.0 求償権残高 1,894 79.3 13
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