眼科用マイクロサージェリーの将来に向けて・・・PDF

プレスリリース
2007 年 8 月 29 日
株式会社ニデック
眼科用マイクロサージェリーの将来に向けて・・・
- 視細胞レベルの微小スポット治療が可能なレーザー手術装置を開発中 -
<概要>㈱ニデックレーザー研究室では、次世代の眼科医療レーザー装置として、オレンジファイバーレーザ
ーを用いた高輝度レーザー手術装置の要素技術開発を進めており、
本学会におきましてその進捗成果を報告致し
ます。眼科手術に使用できる出力を有し連続(CW)発振のできる高輝度レーザー装置が実現できれば、従来の装
置では達成し得なかった眼内の微細な組織に対して数マイクロメートル(1 ミリの 1/1000)の微小スポット集光
が可能となります。微小スポットレーザーにより個々の生体組織に直接的な作用を促すことができるので、例え
ば不要な毛細血管の除去や病変細胞のみを狙った治療が可能となります。
さらに既存の眼科診断装置と組み合わ
せることで、将来の超微細手術(マイクロサージェリー)技術の一翼を担うことが期待されます。
<研究の背景>近年の日本における眼疾患として、50 代以上の中高年層に加齢黄斑変性(AMD:Age-related
Macular Degeneration)が増加しています。今後ますます急速な高齢化や生活習慣の欧米化が進むことで、AMD
が増加することが予想され、眼科医療に対するニーズが高まっております。AMD の治療法には、直接的なメス
による手術、レーザー治療、医薬品の服用などがあります。現在、非侵襲・低侵襲な治療の要望とともに、非侵
襲である医薬品への期待が高まる一方で、レーザー治療で処置しなければならない症例も存在しております。そ
こで、できるだけ低侵襲なレーザー治療の実現を目指し、サイズがマイクロメートルレベルの微小スポットレー
ザー照射が可能な高輝度レーザー手術装置を試作しています。これにより病変部位に対して、隣接する正常細胞
にレーザー光が照射されることなくレーザー治療が可能となります。
<研究の経緯>㈱ニデックレーザー研究室では、2006 年に(財)光産業技術振興協会の開発プロジェクトの助成
を得て世界初の眼科用オレンジファイバー光凝固システムの開発成果を発表しました。本システムは、光源に光
通信分野で実績があり産業用としても実用化が始まっているファイバーレーザー光源を使用することで小型・高
電力効率・長期信頼性を持つ装置となりました。また、治療レーザー波長は、術者にとって視認性が高く、患者
にとってできるだけ負荷の少ないことから最適色とされているオレンジ色を採用しております。今回、新たにフ
ァイバーレーザー光源のレーザービーム品質が高いという特長を積極的に活用した装置を開発しました。
光源か
らレーザー照射位置までを構成するシステム内のレーザービーム品質を保持することで、
従来の眼科用レーザー
光源には成し得なかった数マイクロメートルの微小スポットの高輝度レーザー手術装置が実現できます。
株式会社ニデックは、今後も"Eye & Health Care"を事業領域に、健康で快適な社会作りに積極的に貢献してまい
ります。
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お問い合わせ先:株式会社ニデック 本発表に関するもの
本発表以外
研究開発本部 伊藤晃一 TEL:0533-67-8884
経営企画部
天野光敏 TEL:0533-67-6753
【補足説明】
角膜
レーザー光凝固術:
脈絡膜
網膜
眼底にある網膜の病変部に対してレーザー
中心窩
(周辺部;黄斑)
照射をすることにより、加齢黄斑変性や糖尿病
視神経
網膜症、未熟児網膜症に代表される眼底疾患の
進行を抑制します。図 1 のようにコンタクトレ
ンズと呼ばれる特殊なレンズを介して可視レ
レーザー光 コンタクトレンズ
水晶体
硝子体
ーザーを網膜に照射すると、網膜組織の色素で
光吸収が起きることで熱が発生します。その熱
作用を利用して組織の蛋白凝固を発生し、病状
光
(レーザー)
の進行を防ぐことができます。
吸収
(組織内の色素)
熱
凝固
(組織内のタンパク質)
図 1 ; レーザー光凝固
加齢黄斑変性(AMD:Age-related Macular Degeneration):
網膜の中心部分に位置し視細胞が集中している黄斑の加齢に伴う変化によっておこる疾患で、
ものが歪んで見
えたり、見ているものの中心部がぼやけていて見えないなどの自覚症状があります。新生血管と呼ばれる異常な
血管が、黄斑部の脈絡膜(網膜より外側に位置)から発生することが原因とされ、これが網膜側に伸びると、新
生血管の血管壁はもろいため、血液や血液成分が黄斑組織内に滲出し(漏れ出し)
、黄斑機能を障害すると言わ
れています。
(滲出型 AMD)
<オレンジファイバーレーザーを用いた高輝度レーザー手術装置の構成図>
図2は、オレンジファイバーレーザーを用いた高輝度レー
ザー手術装置のイメージ図です。装置は、レーザー光源部、
レーザー伝送用シングルモード光ファイバ
光伝送用の光ファイバー、レーザー照射光学系の 3 要素から
構成されています。従来装置では、固体レーザー光源とマル
チモードファイバー伝送を使用していました。今回新たに導
入したオレンジファイバーレーザー光源とシングルモード
ファイバーという2つの光学要素の利用により、手術にも使
えるサブ W(ワット)クラスの出力を有した高輝度レーザー
レーザー照射
光学系
を実現することができます。今後は、レーザー照射光学系の
改良も行っていく予定です。
シングルモードファイバー:
コアと呼ばれる光の伝送路が数マイクロメートルと小さ
く、透過光のレーザービーム品質が低下しにくい特長を持ち
ます。一方、マルチモードファイバーはコア径が数十マイク
ロメートル以上のものをいい高出力伝送に適しますが、ビー
ム品質の高いレーザー光を入射させても、射出光のビーム品
質は保持されず劣化していくという特長を持っています。
補足;レーザービーム品質が高いことは、光の集光性能が高
光凝固装置本体
(オレンジファイバーレーザー光源)
いことを意味しており、レーザービーム品質が高いと高輝度
ビームが作れます。
図 2 ; 装置構成(イメージ図)