Untitled - 学際物質科学研究センター

はじめに
センター長 大塚洋一
筑波大学学際物質科学研究センター(TIMS)の平成 18 年度の活動を報告いたします。
センターでは本年度 4 月から文部科学省の特別教育研究経費大学間連携事業の支援
を受け、大阪大学原子分子イオン制御理工学研究センター、東京理科大学ポリスケー
ルテクノロジー研究センターとの3大学連携アトミックテクノロジー創出事業をスタ
ートしました。これは三センターが有機的に連携し、それぞれ得意とする研究分野と
技術を生かして融合し、キーアトムの制御に基づくアトミックテクノロジー創出を図
ろうとするものです。私立大学を含めた国内でも初めての取り組みであり、事前に関
係者同士合宿をするなど相互の理解と事業の推進に向けた準備を行いスタートしまし
た。その結果、開始 1 年にして既に連携によるいくつかのユニークな成果が出ていま
す。また、学生研究会など人材育成においても新しい試みを始め、さらに、3 月には国
際会議を 150 人を超える参加者を得てつくばで成功裡に開催しました。
TIMS 設立以来の念願であるセンター棟は今年度もまだ実現されませんでした。
TIMS では毎週火曜日の昼を定例推進会議として意見を交わしていますが、学際研究に
は異分野の研究者がさらに日常的に話を交わす場が不可欠です。今後もその実現を期
したいと考えます。
3 大学連携事業は 4 年間の計画です。センターとしてはこれを飛躍の期間とすべく努
力して参りますので、今後ともご支援,ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
3
白紙
4
目
次
はじめに
1.理念と沿革
1
1.1 理念
1.2 沿革
1.3 歴代センター長
1.4
TIMS ロゴ
2.組織
2
2.1 構成員
2.2 委員会
2.3 学内委員等
2.4 組織図
2.5 WEB
2.6 所在地
2.7 決算
3.センター活動報告
6
3.1 運営委員会等
3.2
TIMS セミナー、シンポジウム
3.3 三大学連携アトミックテクノロジー事業
4.研究活動報告
9
4.1 研究コア報告
機能性高分子コア
10
分子物質変換コア
12
融合物質生命コア
19
ハイブリッド機能コア
31
量子制御コア
37
4.2 競争的資金獲得状況
44
4.3 共同研究
46
4.4 各種授賞
47
4.5 各種活動
47
4.6 新聞報道など
48
5
白紙
6
1.
理念と沿革
1.1 理念
筑波大学学際物質科学研究センターは、白川英樹筑波大学名誉教授の 2000 年ノーベ
ル化学賞受賞を契機として、工学と理学の枠を越えた連携と融合により、未来型機能性物
質群の創成と学際物質科学研究の新機軸の構築を目指し、さらには研究成果の社会還元
を図ることを目的として平成 15 年 4 月に設置された。
これからの我が国の発展には、物質創成に端を発するデファクトスタンダードの獲得が
求められている。白川教授のポリアセチレン研究にも見られるように、新たなブレークスル
ーの多くは学際的研究から生まれてきている。学際物質科学研究センターでは、高度な研
究環境と研究支援体制のもと、異なる領域の研究者が日常的に互いに連携しつつ中長期
的展望に立った基盤研究を推進し、物質科学の未踏領域に一段と高い研究ピークを実現
することを目指す。
1.2 沿
革
2000 年
10 月
白川英樹博士のノーベル化学賞受賞
11 月
「白川記念学際物質科学研究センター」(仮称)WG の発足
2001 年
9月
2002 年
11 月
2003 年
2月
「学際物質科学研究センター」WG の発足
概算要求事項の申請
学際物質科学研究センター設置準備委員会の発足
4月
1日
学際物質科学研究センターのスタート
5月
19 日
センター看板上掲式(共同研究棟 A)
6月
17 日
スタートアップシンポジウム(つくば研究交流センター)
10・11 日
開所式、記念講演会(筑波大学大学会館)
11 月
2006 年
4月
2007 年
3月
三大学連携融合事業「アトミックテクノロジー」の開始
16・17 日
アトミックテクノロジー国際シンポジウム(ISAT-2007)の開催
1.3 歴代センター長
2003.4~2006.1
赤木和夫
1.4 TIMS ロゴマーク
中心の小円と外の楕円は物質の根源要素である原子を表し Science の S を抽象化し
た形3つは、物質科学の各分野の協力による新物質の創成を意味します。また、こ
れら3つの形は通称、白川センターの川の字も表しています。(2003 年 11 月制定)
7
2.
組織
2.1 構成員
専任教員
鍋島達弥
教授
(物質創成先端科学専攻、化学系)
長崎幸夫
教授
(物性・分子工学専攻、物質工学系)
山部紀久夫
教授
(電子・物理工学専攻、物理工学系)
大塚洋一
教授
(物理学専攻、物理学系)
後藤博正
講師
(物性・分子工学専攻、物質工学系)
秋根茂久
講師
(物質創成先端科学専攻、化学系)
大石 基
助教
(物性・分子工学専攻、物質工学系)
蓮沼 隆
講師
(電子・物理工学専攻、物理工学系)
神田晶申
講師
(物理学専攻、物理学系)
客員教授
赤木和夫
客員研究員
京谷陸征
非常勤研究員
渡辺 学
(研究機関研究員)
小川 浩
(研究支援推進員)
今村友紀
(連携融合事業推進博士研究員)
下岸史明
(連携融合事業推進博士研究員)
宮本大輔
(連携融合事業推進博士研究員)
安達隆文
(連携融合事業推進博士研究員)
風間善美
(専門職員)
事務職員
(京都大学工学研究科 教授)
2.2 委員会
運営委員会
大塚洋一
(センター長、TIMS)
矢田貝豊彦
(物理工学系)
水林 博
(数理物質科学研究科長)
戸嶋信幸
(物質工学系)
竹内光弘
(数学系)
鍋島達弥
(TIMS)
金谷和至
(物理学系)
山部紀久夫
(TIMS)
新井達郎
(化学系)
長崎幸夫
(TIMS)
小林俊一
(秋田県立大学長)
大塚洋一
(センター長、TIMS)
徳丸克己
(筑波大学名誉教授)
鍋島達弥
(TIMS)
菅野卓雄
(東京大学名誉教授)
山部紀久夫
(TIMS)
筒井哲夫
(九州大学大学院総合理
長崎幸夫
(TIMS)
運営協議会
工学府教授)
8
推進室
水林 博
(数理物質科学研究科長)
山部紀久夫
(TIMS)
大塚洋一
(センター長、TIMS)
長崎幸夫
(TIMS)
鍋島達弥
(TIMS)
2.3 学内委員等
サブネットワーク管理委員会
委員長
鍋島達弥
環境安全管理室
廃棄物管理責任者
鍋島達弥
〃 補助責任者
長崎幸夫
2.4 組織図
運営委員会
センター長
運営協議会
研究コア
z
機能性高分子コア
z
分子・物質変換コア
z
融合物質生命コア
z
ハイブリッド機能コア
z
量子制御コア
2.5 WEB
http://tims.tsukuba.ac.jp/
2.6 研究室等の所在地
センター固有の建物は未整備のため、以下の共同利用スペースを借用して活動している。
共同研究棟A 406、 413、 414、 415、 416(電子顕微鏡室)、111、214
総合研究棟B 022-1(クリーンルーム)、223、224、 225、 226、 1225、 1226、 1227
9
(左・中)総合研究棟 B、
(右上)共同研究棟 A、
(右下)TIMS 看板
学内地図
10
2.7 決算
(2006 年度)
予
算
科
目
管理運営費
特別教育研究経費:学際的連携融合による物質科学研究創出事業
決算額 (円)
7,662,000
990,000
特別教育研究経費:アトミックテクノロジー創出事業
50,000,000
大学運営改善経費:クリーンルーム設置補助費
10,000,000
数理研究科よりの借入金
RA 経費
5,000,000
699,480
11
3.
センター活動報告
3.1 運営委員会等
平成 18 年度第 1 回運営委員会 (平成 18 年 5 月 23 日(火)開催)
1.議事録の承認
2.平成17年度決算について
3.平成18年度予算について
4.センター細則の改訂について
5.人事について
6.アトミックテクノロジー創出事業の開始について
第2回運営委員会 (平成19年1月17日(水) 開催)
1.議事録確認
2.次期センター長の候補適任者の推薦
3.予算執行について
4.アトミックテクノロジー国際会議について
臨時運営委員会議事録 (平成 19 年 1 月 25 日(木)開催)
1.機能性高分子コア教授人事について
2.機能性高分子コア講師について
推進室会議
毎週火曜日正午から 13 時までを定例として推進室会議を開催し、TIMS の研究推進全般に関
して緊密な意見交換を行い、センター活動の活性化を図っている。
3.2 TIMS セミナー、シンポジウム
TIMS セミナー
2006 年
5/31
Ging-Ho Hsiue (清華大・台湾)
New approach in bioengineering. Ⅰ .Tissue engineering for corneal endothelial
reconstruction. Ⅱ.Novel mixed miceller system in intracellular drug delivery
7/7
木村榮一(静岡大理学部)
Supramolecular Chemistry with Macrocyclic Polyamine Ligands-Anion Complexes,
Metalloenzyme Models, Gene Manipulation, & Molecular Capsule
12
12/4
Ji-Heung Kim (Sungkyunkwan Univ.、 Korea)
Preparation and Properties of Modified PHEMA and PNVP hydrogels containing PEG
or PEG-sulfonate Grafts
12/12
神原貴樹(東工大、資源化学研)
遷移金属錯体及び硫黄を用いる重縮合による機能性高分子の開発
12/27
清水敏美 (産総研)
オーガニックナノチューブ -分子集積化と今後の展望-
3/14
鈴木 章(北大名誉教授)
有機ホウ素化合物を用いるクロス・カップリング反応
シンポジウム・ワークショップ
2006/5/29-30 エポカルつくばにて第1回ホスト・ゲスト化学シンポジウムを協賛開催(主催:機能
性ホスト・ゲスト化学研究会)(世話人:鍋島達弥教授)
2006/5-6
アトミックテクノロジー創出事業発足記念シンポジウムの開催
2006/10/28
有機合成化学協会若手研究者のためのセミナーを協賛開催(主催:有機合成化学
協会関東支部)(筑波大総合研究棟 B にて。世話人:鍋島達弥教授)
2007/1/15
第 1 回ポリスケールテクノロジーワー クショップを共同開催
2007/3/16-17 第 1 回アトミックテクノロジー国際シンポジウム(ISAT-2007)の開催
3.3 三大学連携アトミックテクノロジー事業
2006 年 4 月から 4 カ年計画として文部科学省特別教育研究経費大学間連携事業としてアトミック
テクノロジー推進事業を開始した。本事業で TIMS は大阪大学科原子分子イオン制御理工学セン
ター、東京理科大学ポリスケールテクノロジー研究セン
ターと有機的に連携し、三者がそれぞれ得意とする研
究分野と技術:最先端の原子操作・評価技術とそれを
可能にする装置開発技術、世界的な新機能物質創製
技術、量子物性評価技術、卓越した超微細加工・デバ
イス展開技術を効率よく融合させ、キーアトムの操作・
制御による究極のものづくり技術の構築を目指す。また、
このプロジェクトを通して、博士課程院生の相互指導、
若手研究者の活用と育成を積極的に推進する。
2006 年度の主な活動
13
スタートアップシンポジウム (2006 年 5 月 29 日、大阪大学)
スタートアップシンポジウム (2006 年 6 月 12 日、筑波大学)
第一回三大学連携学生研究会 (2006 年 8 月 26-28 日、東京理科大学長万部)
第一回ポリスケールテクノロジーワークショップ (2007 年 1 月 15 日、東京理科大学)
第 1 回国際シンポジウム(ISAT-2007) (2007 年 3 月 16-17 日、筑波大学)
第 1 回アトミックテクノロジー国際シンポジウム
開催日: 2007 年 3 月 16 日(金)、17 日(土)
会場 : つくば国際会議場「エポカルつくば」
参加者数:159 名 (学生 91 名、一般 68 名)
内訳: 筑波大 90、阪大 23、東理大 20、他大学 12、
海外大学 3、企業 1、研究所 4 海外招待講演者 6
ポスター講演発表 : 87 件
ポスター賞受賞者
z H. Ishikawa, M. Iijima, M. Oishi, Y. Nagasaki
(University of Tsukuba, Oyama National College
of Technology, TIMS, TARA), “PEG and lipase
co-immobilized silica colloid for specific
bioactivity”
z S. Masubuchi, S. Akine, T. Nabeshima
(University of Tsukuba, TIMS), “Multi-Step
Regulation of Anion Recognition Abilities by
Using
Redox-Responding
Pseudocryptands
Bearing Assembled Urea Moieties”
z S. Matsushita, M. Kyotani, M. Shimomura, A.
Kaito, T. Nagai, Y. Matsui, K. Akagi (Kyoto
University, TIMS, University of Tsukuba, AIST,
NIMS), “Morphology-Retaining Carbonization
Subjected for Helical Polyacetylene with
Super-Hierarchical Structure”
z T. Takizawa, H. Hashimoto, M. Yamashiro, S.
Hamaguchi
(CAMT,
Osaka
University),
“Analysis of physical/chemical sputtering based
on molecular dynamics simulation”
z R. Nishi, M. Hiragaki, D. Miyagawa, H. Etou, Y.
Seino, I. Yi, S. Morita (Osaka University),
“Lateral manipulation of single defect on
KCl(100) surface”
z R. Furugen, A. Kanda, B. J. Baelus, D. Y.
Vodolazov, Y. Ootuka, F. M. Peeters (TIMS,
University of Tsukuba, University of Antwerp,
Russian Academy of Sciences), “Novel Vortex
States in Mesoscopic Superconducting Rings”
14
4.
研究活動報告
4.1 研究コア報告
機能性高分子コア
分子物質変換コア
融合物質生命コア
ハイブリッド機能コア
量子制御コア
10
12
19
31
37
15
1.機能性高分子コア
専任教員:
後藤博正(数理物質科学研究科物性・分子工学専攻・講師)
大学院生 富樫史博(数理物質科学研究科M1)
米山裕之(同M1)
、
機能性高分子コアでは光学活性な導電性高分子を
合成し、この光学回転や円偏光二色性を調べてき
た。
【 1 】 電解不斉重合法の開発
コレステリック液晶を電解液として用い、ポリチ
オフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポ
リピロールなどの電解重合を行い、その光学活性
を確認すると共に、電気化学的ドーピングによる
光学回転角や円偏光二色性を制御できる「光学活
性エレクトロクロミズム」という新現象を見出し
た。これは電気化学的ドーピング-脱ドープにより、
導電性高分子の電子状態の変化に基づき光学活性
が変化する現象である。得られたポリマーの表面
構造の一例を図1に示す。ポリマーの光学回転角
の大きさは無機物のファラデー回転角に匹敵した。
特に本方法により得られたポリピロールは Nazca
line structure (ナスカ地上絵構造)、Sea anemone
structure (イソギンチャク構造)などと命名したユ
ニークな表面構造を示した。
【 2 】 コレステリック液晶溶媒中での縮合重合
コレステリック液晶溶媒中において縮重合型反応を
行い、アキラルなモノマーからキラルなポリチオフェ
ン誘導体を得た。
ここでは液晶中で重合反応を行うため、加熱時の温
度範囲、反応系の攪拌速度などに留意し条件を整え反
応を行った結果、得られたポリマーは不溶化し、液晶
中から沈殿物として脱離していることが偏光顕微鏡
で観察された。反応開始後および終了後のいずれも液
晶溶液はコレステリック液晶を示し、得られたポリマ
ーは可溶性であるとともに、会合型の強いコットン効
果を示した。また溶媒として用いたコレステリック液
晶はキラルな「形」を提供する一方、「化学的」には
重合反応に関与していないことがわかった。
図1 円偏光微分干渉顕微鏡によるポリマーの
表面構造. スケールバーは 50 μm.
<論文>
1. Goto, H.; Akagi, K. Vertically Aligned Polypyrrole Drawing a
Fingerprint Array Prepared by Electrochemical
Polymerization in Chiral Nematic Electrolyte, Journal of
Polymer Science Part A. Polymer Chemistry Edition, 44,
1042–1047 (2006).
2. Goto, H. Synthesis of Polyanilines Bearing Optically Active
Substituents, Macromolecular Chemistry and Physics, 207,
1087–1093 (2006).
3.
Goto, H.; Akagi, K. Optically Active Electrochromism of
Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)
Synthesized
by
Electrochemical Polymerization in Lyotropic Liquid Crystal
of Hydroxypropyl Cellulose/Water: Active Control of
Optical Activity, Chemistry of Materials 18, 255-262
(2006).
<講演>
1.
2.
国際会議
Ohta, R.; Togashi, F.; Goto H., Synthesis of a Chiral
Conjugated Polymer with Light-Induced Isomerization
Function (poster), The 7th International Conference on
Nano-Molecular Electronics, Kobe, 2006. 12. 13-15.
Yoneyama, H.; Tsujimoto A.; Goto H., Asymmetric
Electrochemical Polymerization of Three-ring Monomers
(poster), The 7th International Conference on
Nano-Molecular Electronics, Kobe, 2006. 12. 13-15.
16
3.
Tsujimoto, A.; Yoneyama H.; Goto, H., Synthesis of
Poly(3,4-ethylenedioxythiophene) in Cholesterics (poster),
The 7th International Conference on Nano-Molecular
Electronics, Kobe, 2006. 12. 13-15.
4.
Togashi, F.; Ohta R.; Goto H. Synthesis of Conjugated
Polymers with Optical Activity by Polymerization in
Cholesteric Liquid Crystal Solvent (poster), The 7th
International Conference on Nano-Molecular Electronics,
Kobe, 2006. 12. 13-15.
5.
Tsujimoto, A.; Yoneyama H.; Goto, H., Synthesis of an
Optically Active PEDOT Derivative by Electrochemical
Polymerization in Cholesteric Liquid Crystal (poster), The
First International Symposium on Atomic Technology
(ISAT-2007) , 2007/03/16-17, Tsukuba
6.
Ohta, R.; Togashi, F.; Goto H. (poster), Synthesis of Chiral
Conjugated Polymers with Cholesteric Medium
Asymmetric Polymerization Method, The First International
Symposium on Atomic Technology (ISAT-2007) ,
2007/03/16-17, Tsukuba
8.
米山裕之、辻本亞紀都、後藤博正, コレステリック液晶
場での電解重合によるチオフェン-ピリジン共重合体
の合成と性質 (口頭), 平成18年度繊維学会秋季研究
発表会, 平成 18 年 9 月 19 日(火)~ 9 月 20 日(水)金
沢大
9. 後藤博正、 導電性高分子複合紙 (口頭), 平成18年度
繊維学会秋季研究発表会, 平成 18 年 9 月 19 日(火)~
9 月 20 日(水)金沢大
10. 辻本亞紀都、米山裕之、 後藤博正、 液晶電解液を用
いたポリエチレンジオキシチオフェン(BEDOT) 誘導体
の光学活性 (口頭), 日本化学会第87春季年会、
2007.3.25-28 関西大
11. 太田怜奈、 富樫史博、後藤博正、 感光基をもつキラル
共役系ポリマーのコレステリック液晶中での合成 (口頭),
日本化学会第87春季年会、2007.3.25-28 関西大
国内会議
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
後藤博正、赤木和夫, 電解不斉重合法の開発 (ポスタ
ー), 第 55 回高分子年次大会、名古屋国際会議場 2006
年 5 月 24-26 日
後藤博正、赤木和夫, キラルネマチック液晶を溶媒とす
る新規不斉重合法 (口頭), 第55 回高分子年次大会、名
古屋国際会議場 2006 年 5 月 24-26 日
京谷陸征、須田清、後藤博正、長井卓朗、松井良夫、下
村正樹、海藤彰、赤木和夫、カンファースルフォン酸をド
ープしたポリアニリンからの中空状ナノカーボン(ポスタ
ー)、第 55 回高分子年次大会、名古屋国際会議場 2005
年 5 月 24-26 日
米山裕之、辻本亞紀都、 後藤博正, 不斉液晶反応場で
の電解重合によるチオフェン-ピリジン共重合体の合
成と性質 (口頭), 第 55 回高分子討論会、2006.9.20-22
富山大
富樫史博、太田怜奈、後藤博正、コレステリック液晶を
反応溶媒としたアキラルなモノマーから合成した光学活
性な共役系ポリマー (口頭), 第 55 回高分子討論会、
2006.9.20-22 富山大
京谷陸征、後藤 博正、富樫 史博、太田 怜奈、長井 拓
郎、松井 良夫、下村 正樹、海藤 彰、赤木 和夫 、 自
己組織化ポリアニリンの構造と炭素化による中空円筒
状ナノカーボン (口頭), 第 55 回高分子討論会、
2006.9.20-22 富山大
後藤博正、二森茂樹, 導電性高分子の分子配向 (口
頭), 平成 18 年 11 月 15-17 日日本磁気学会第一回年次
大会, つくば市
17
2.分子・物質変換コア
専任教員:
鍋島達弥(数理物質科学研究科物質創成先端科学専攻・教授)
秋根茂久(数理物質科学研究科物質創成先端科学専攻・講師)
教員
研究員
佐藤総一(数理物質科学研究科助教授)
池田忠作(化学系準研究員)
Robert Trokowski(TIMS研究員)
今村友紀(TIMS研究員)
大学院生 増渕小百合(数理物質科学研究科D5)
宮崎隼人(数理物質科学研究科D5)
秋本亜矢子(数理物質科学研究科M2)
市川響子(数理物質科学研究科M2)
鍵山聡子(数理物質科学研究科M2)
木暮翠(数理物質科学研究科M2)
白井由利子(数理物質科学研究科M2)
丹羽和也(数理物質科学研究科M2)
上田智子(数理物質科学研究科M1)
江幡良子(数理物質科学研究科M1)
木村望(数理物質科学研究科M1)
須永修一(数理物質科学研究科M1)
玉井大史(数理物質科学研究科M1)
巻口琢郎(数理物質科学研究科M1)
森田陽子(数理物質科学研究科M1)
子に7つの亜鉛、6つの酢酸イオン、1つの酸素
R R
原子からなる
7核クラスタ
N N
ー錯体である
ことがわかっ
OHHO
た。予想通り
OH
HO
N
N
7つの亜鉛の
HO OH
N
N
R
うち3つの亜 R
R
R
鉛はそれぞれ
1a R = H
(=L1a•H6)
の saloph 部
1b R = OC4H9 (=L1b•H6)
位に結合して
いた。またこの3つの亜鉛に囲まれる形で酸素原
子があり、さらにその酸素原子の上に残りの亜鉛
が位置する凸型の構造を取っていた。酢酸イオン
については3つが saloph 部の亜鉛に配位してお
Zn1
分子・物質変換コアでは応答性や協同性をもつ機
能性の超分子、
特に有機−無機ハイブリッド超分子
の特徴を活かした機能性分子システムの構築を目
指して研究を行っている。
【 1 】 大環状 saloph 配位子による金属クラス
ターの高選択的合成
シッフ塩基部位を二つ持つ saloph 配位子は各
種の金属イオンに対して優れた配位能を持ち、そ
の錯体は触媒作用など種々の機能を発現すること
が知られている。本研究では、この部位を三カ所
導入した大環状化合物 1 を合成して各種の金属イ
オンとの錯形成を検討したところ、非常に協同的
なクラスター生成を実現することができた。例え
ば 1b は Zn(OAc)2 と速やかに反応して亜鉛錯体を
与えるが、
7 当量以上の亜鉛を加えると定量的に 7
核錯体を与えることが、NMR や吸収スペクトルに
よる検討、および元素分析から示唆された。この
錯体は 94%の収率で赤橙色の結晶として得られ
た。さらに X 線結晶構造解析により、1つの配位
Zn7
Zn6
Zn4
Zn5
Zn3
Zn2
2. Crystal structure of [L1bZn7(μ4-O)(OAc)6]
Figure 1.
り、残りの3つは中央の4つの亜鉛を囲む形で配
位していた。通常、構成する金属の数や形の決ま
ったクラスターを定量的に合成するのは困難であ
るが 1b を使うことでこれを実現することができ
た。さらに興味深いことは、1b が提供するのは三
つの亜鉛配位部だけであり、他の四つの亜鉛は自
発的にその上に集積し、その周りを酢酸アニオン
が配位してクラスターが安定化されていることで
ある。これは 1b が一種のテンプレートとしてク
ラスター生成に関わっているものの、クラスター
18
の一部分の生成を促進しているだけで、間接的に
全体のクラスター生成を促しているに過ぎない。
すなわちこれは部分テンプレートとでも呼ぶべき
極めて珍しい例となっており、テンプレート合成
の新しい方向性を示している。さらに 1b の亜鉛
7核錯体に酢酸ランタンを作用させると、定量的
に亜鉛を3つ、ランタンを一つ含むヘテロ4核錯
体が生成することがわかった。また7つの亜鉛を
取り囲むように配位している酢酸アニオンはプロ
ピオン酸アニオンのような他のカルボン酸アニオ
ンと交換することができ、これを利用した超分子
メタロ系への可能性も示すことができた。ヘテロ
多核錯体も様々な機能が期待される化合物群であ
り、
これらを使った機能実現が今後の課題である。
【 2 】ヘテロ多核金属テンプレート法による大
環状オキシム配位子の合成
ヘテロ多核テンプレート法による
[3+3]環状オキシム配位子の合成
(A) [L23Zn3La]3+ (B) [L1Zn3La]3+の結晶構造
大環状ポリエーテルやポリアミンを収率よく合
成するために、適切な大きさのテンプレート金属
を共存させて構成成分を環化させる方法がしばし
ば用いられてきた。しかしながら同一環内に複数
の金属を取りこめる、より大きなサイズの大環状
配位子を合成する場合、うまくプログラムされた
構成要素を複数のテンプレートイオンを共存させ
て環化させる方法が望まれる。そこで、複数の異
なる金属を協同的に取りこむことができる大環状
配位子をヘテロ多核金属テンプレートとする、新
しい大環状化合物の合成法を開発した。
2,3-ジヒドロキシベンゼン-1,4-ジカルバルデ
ヒドと 1,2-ビス(アミノオキシ)エタンをテンプ
レート非存在下で反応させたところ、複数種の環
状化合物およびポリマー状の生成物が得られたが、
ランタン(III)を 1 当量、
亜鉛(II)を 3 当量共存さ
せてこの環化反応を行い、続いて脱メタル化を行
ったところ、
ほぼ定量的に[3+3]環化体が得られた。
このように[3+3]環化体のみが得られてくるのは、
ジアルデヒド 2 (= H2L2)が 1 当量のランタン(III)
および 3 当量の亜鉛(II)とヘテロ四核錯体
[L23Zn3La]3+を形成し、その四核コアを保ったまま
ジアミン 3 と反応して環状配位子 4 (H6L1)の錯体
[L1Zn3La]3+となっているためだと考えられる。実
際、これら二つの錯体[L23Zn3La(NO3)3] および
[L1Zn3La(NO3)3]を単離して結晶構造解析を行った
ところ、亜鉛およびランタンの位置に極めて良い
類似性が見られた。
【 3 】 擬クリプタンドによる応答性配位空間の
創出
末端にビピリジンを有するトリポダンド 5 は、
すでに我々の研究によって、
正八面体型の鉄−ビピ
リジン錯体部をもつ擬クリプタンド型アニオンレ
セプターとなり、高いレドックス応答性を示すこ
とが明らかとなっている。本年度は、発光性など
多様な機能が期待できる5 のRu(II)錯体を合成し、
その機能を検討した。5 と RuCl3 を反応させ、続い
て AgPF6 を作用させると 5•Ru(II)•(PF6)2 が 32%の
収率で得られた。この錯体は DMF 中でルテニウム
19
トリスビピリジン錯体に特徴的なMLCT 吸収を451
nm にもち、609 nm の発光をもつことがわかった。
またその空孔にはハロゲン化物イオン、特に塩化
物イオンを包接することが、NMR による検討から
支持された。さらに、X 線結晶構造解析によって、
塩素イオンが尿素部位との水素結合によって取り
<学位論文>
・ 増渕小百合:Regulation of Ion Recognition by Utilizing
Characteristic Properties of Coordination Comopounds (数
理物質科学研究科、
物質創成先端科学専攻、
博士論文、
2007.3)
・ 秋本亜矢子:硫黄を含む多座配位子の合成とその錯形
成 (数理物質科学研究科、化学専攻、修士論文、2007.3)
・ 市川響子:アザクラウンエーテルを持つ新規イリジウ
ム錯体による金属イオン捕捉と発光制御 (数理物質
科学研究科、物質創成先端科学専攻、修士論文、2007.3)
・ 鍵山聡子:テトラオキシム型配位子の末端修飾による
機能変換 (数理物質科学研究科、物質創成先端科学専
攻、修士論文、2007.3)
・ 木暮翠:金属による含ビピリジンホストの構造変換・
組織化および機能発現 (数理物質科学研究科、物質創
成先端科学専攻、修士論文、2007.3)
・ 白井由利子:ベンゾクラウンエーテルを有するサロフ
型配位子による集積型超分子の合成 (数理物質科学
研究科、物質創成先端科学専攻、修士論文、2007.3)
・ 丹羽和也:トリフェニルベンゼン骨格を持つアニオン
レセプターによる協同的機能の発現 (数理物質科学
5・Ru(II)錯体による
ハロゲン化物アニオン捕捉
込まれていることが明らかとなった。
研究科、物質創成先端科学専攻、修士論文、2007.3)
<論文>
1 T. Nabeshima, S. Akine, “Metal-Incorporated Hosts for
Fe 錯体の場合と同じように、この Ru 錯体も可逆
なレドックス応答性を示し、塩化物イオンの取り
込みが錯体部の電荷によって大きく変化すること
がわかった。例えば、5•Ru(II)を一電子還元する
と会合定数は 10 分の 1 に、
これをまた一電子還元
するとさらに 6 分の 1 となり、アニオンと錯体部
位の静電的相互作用がこの取り込みに重要な働き
をしていることがわかった。
また Fe 錯体では分解
が起こる酢酸アニオンに対してもこの Ru 錯体は
認識能を持つことが明らかとなった。ハロゲン化
物アニオンの添加は 5•Ru(II)の発光強度を増大
させることもわかり、発光出力を利用したアニオ
ンのセンシングの可能性も示すことができた。
Cooperative and Responsive Recognition to External
Stimulus”, In Redox Systems Under Nano-Space Control;
Hirao, T., Ed.; Springer: Berlin, Chapter 10, pp 167-178
(2006).
2
T. Nabeshima, Y. Tanaka, T. Saiki, S. Akine, C. Ikeda, S. Sato,
“Tricyclic Pseudocryptand Formed by Reaction of FeII with
Tripodand Bearing Triazacrown Ether” Tetrahedron Lett. 47,
3541-3544 (2006).
3
S. Akine, T. Taniguchi, T. Nabeshima, “Heterometallic Zn2La
and
ZnLu
Complexes
Formed
by
Site-selective
Transmetalation of a Dimeric Homotrinuclear Zinc(II)
Complex” Chem. Lett. 35, 604-605 (2006).
4
S. Akine, W. Dong, T. Nabeshima, “Octanuclear Zinc(II) and
20
Cobalt(II) Clusters Produced by Cooperative Tetrameric
22nd International Symposium on the Organic Chemistry of
Assembling of Oxime Chelate Ligands” Inorg. Chem. 45,
Sulfur (ISOCS-22), Saitama, Japan, August 20-25, 2006.
4677-4684 (2006).
5
the
Metal Complexes” 22nd International Symposium on the
Organo-persulfuranes [12-S-6(C6)]” J. Am. Chem. Soc. 128,
Organic Chemistry of Sulfur (ISOCS-22), Saitama, Japan,
“Isolation
and
Molecular
Structure
of
August 20-25, 2006.
6778-6779 (2006).
6
T. Nabeshima, H. Miyazaki, A. Iwasaki, S. Akine, T. Saiki, C.
6 S. Akine “Helical Oligooxime-Zinc(II) Complexes for Ion
Ikeda, S. Sato, “Efficient Formation of Homo and Hetero
Recognition” International COE Symposium for Young
Metal Clusters by Triangular Trisaloph Ligand as a Partial
Scientists on Frontiers of Molecular Science, Tokyo, Japan,
August 25-26, 2006 (Invited).
Template” Chem. Lett. 35, 1070-1071 (2006).
7
S. Akine, A. Akimoto, T. Nabeshima, “Synthesis of Novel
Oxime-Based N2S2 and N2SO Chelate Ligands and Their
5 S. Sato, K. Matsunaga, E. Horn, N. Furukawa, T. Nabeshima,
S. Akine, T. Taniguchi, T. Matsumoto, T. Nabeshima,
7
S. Sato, K. Matsunaga, H. Ameta, N. Furukawa, T.
“Guest-dependent Inversion Rate of a Tetranuclear Single
Nabeshima, “Reactions of Bis(2,2'-biphenylylene)sulfuranyl
Metallohelicate” Chem. Commun. 2006, 4961-4963.
Dication [8-S-4(C4)]2+” JSPS Core-to-Core Program
8 S. Akine, T. Taniguchi, T. Nabeshima, “Chiral Single-stranded
Innovative Synthesis of Novel Main-Group Compounds and
Metallohelix: Metal-mediated Folding of Linear Oligooxime
Its Application Second Core-to-Core Symposium on Main
Ligand” Tetrahedron Lett. 47, 8419-8422 (2006).
Group Element Chemistry, Tokyo, August 26-28, 2006.
9 S.
Akine,
T.
Taniguchi,
T.
Nabeshima,
“Helical
8 T. Nabeshima, “Construction of Responding Coordination
Site-Selective
Space and Multi-Step Regulation of Molecular Functions of
Transmetalation of Homotrinuclear Complexes” J. Am. Chem.
Dynamic Complexes” 2nd International Symposium on
Soc. 128, 15765-15774 (2006).
Chemistry of Coordination Space, Fukuoka, December 15-16,
Metallohost-Guest
Complexes
via
<講演>
2006.
国際会議
9
1. T. Nabeshima, M. Hasegawa, S. Akine, N. Kimura, S. Sato
Helicene-Type
Tetranuclear
Hexaoxime
Bearing
Coordination Space, Fukuoka, December 15-16, 2006.
Terpyridine-Pt
Moieties”
37th
International
10 Y. Imamura, K. Fukushima, S. Akine, T. Nabeshima,
Africa, August 13-18, 2006.
“Synthesis and Amine Recognition of Ti(IV)-Catecholate
C. Ikeda, S. Akine, T. Nabeshima “Synthesis and Properties of
Host” 2nd International Symposium on Chemistry of
Novel Boron-Dipyrromethene Cyclic Assemblies” 37th
Coordination Space, Fukuoka, December 15-16, 2006.
11 T. Nabeshima, “Finely Cooperative Control of Guest
Town, South Africa, August 13-18, 2006.
Recognition by Utilizing Characteristic Properties of
S. Masubuchi, S. Akine, T. Nabeshima “Multi-Step
Metallo-supramolecules” 4th International Symposium on
Regulation of Anion Recognition Ability of Pseudocryptand
Future-Oriented Interdisciplinary Materials Science, Tsukuba,
Bearing Urea Moieties” 37th International Conference on
Coordination Chemistry, Cape Town, South Africa, August
4
of
Complexes” 2nd International Symposium on Chemistry of
International Conference on Coordination Chemistry, Cape
3
Structure
“Synthesis and Guest Recognition of Molecular Metalloclefts
Conference on Coordination Chemistry, Cape Town, South
2
S. Akine, T. Matsumoto, T. Nabeshima, “Synthesis and
March 12-13, 2007.
12 R. Trokowski, C. Ikeda, T. Nabeshima “Rigid Analog of
13-18, 2006.
Terpyridine as a Bis-Pt(II) Host-Guest Dimer System” 4th
S. Sato, K. Matsunaga, H. Ameta, N. Furukawa, T.
International
Nabeshima,
Interdisciplinary Materials Science, Tsukuba, March 12-13,
“Reactivities
of
Bis(2,2'-biphenylylene)sulfuranyl Dication [8-S-4(C4)]2+”
Symposium
on
Future-Oriented
2007.
21
13 Y. Imamura, K. Fukushima, S. Akine, T. Nabeshima,
2007.
“Pseudocryptand-Type Ti(IV)-Catecholate Host: Synthesis
22 R. Ebata, H. Miyazaki, S. Akine, T. Nabeshima, “One-Pot
and Amine Recognition” 4th International Symposium on
Synthesis of Homo- and Heterometal Zinc Clusters Having a
Future-Oriented Interdisciplinary Materials Science, Tsukuba,
Macrocyclic Imine Ligand” The 1st International Symposium
March 12-13, 2007.
on Atomic Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17,
14 S. Masubuchi, S. Akine, T. Nabeshima, “Multi-Step
Regulation
of
of
23 Y. Imamura, K. Fukushima, S. Akine, T. Nabeshima, “Amine
Pseudocryptands Bearing Redox Active Metal-Bipyridine
Recognition of Ti-Catecholate Host” The 1st International
Complex
Symposium on Atomic Technology (ISAT-2007), Tsukuba,
Unit”
Anion
4th
Recognition
International
Abilities
2007.
Symposium
on
Future-Oriented Interdisciplinary Materials Science, Tsukuba,
March 12-13, 2007.
March 16-17, 2007.
24 S. Kagiyama, S. Akine, T. Nabeshima, “Synthesis of
15 H. Miyazaki, S. Akine, T. Nabeshima, “Synthesis of Homo-
Macrocyclic Tetraoxime Ligands by Ring-Closing Olefin
and Hetero-Metal Clusters by Triangular Tris(saloph) Ligand”
Metathesis” The 1st International Symposium on Atomic
4th
Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17, 2007.
International
Symposium
on
Future-Oriented
Interdisciplinary Materials Science, Tsukuba, March 12-13,
25 S. Masubuchi, S. Akine, T. Nabeshima, “Multi-Step
2007.
Regulation of Anion Recognition Abilities by Using
16 T. Nabeshima, “Design and Synthesis of Responding
Redox-Responding Pseudocryptands Bearing Assembled
Supramolecular Systems” The 1st International Symposium
Urea Moieties” The 1st International Symposium on Atomic
on Atomic Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17,
2007.
Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17, 2007.
26 H. Miyazaki, S. Akine, T. Nabeshima, “Synthesis of homo
17 K. Ichikawa, C. Ikeda, and T. Nabeshima, “Synthesis and Ion
and hetero multinuclear clusters by complexation of a
Recognition Ability of Iridium Complexes Bearing
triangular tris(saloph) ligand” The 1st International
Azacrownether” The 1st International Symposium on Atomic
Symposium on Atomic Technology (ISAT-2007), Tsukuba,
Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17, 2007.
March 16-17, 2007.
18 N. Kimura, C. Ikeda, T. Nabeshima, “Synthesis and Anion
27 S. Sunaga, S. Akine, T. Nabeshima, “Oligometallic Template
II
Recognition of Bisterpyridine ・ Ru Host Bearing Urea
Synthesis of Macrocyclic Hexaoxime Ligand Using Two
Moieties” The 1st International Symposium on Atomic
Different Metal Ions” The 1st International Symposium on
Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17, 2007.
Atomic Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17,
19 M. Kogure, S. Akine, C. Ikeda, T. Nabeshima, “Chirality
2007.
Control of Pseudocryptand by Guest Recognition” The 1st
International
Symposium
on
Atomic
Technology
(ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17, 2007.
国内会議
1
○宮崎隼人・秋根茂久・鍋島達弥「多彩な配位様式を
20 R. Trokowski, C. Ikeda, T. Nabeshima, “Rigid Analog of
もつトライアングル型 saloph 誘導体」第 51 回有機合成
Terpyridine; Recognition Abilities of the Pt(II) Dimer
化学協会関東支部シンポジウム,名古屋,2006 年 5 月.
Assembly” The 1st International Symposium on Atomic
2
Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17, 2007.
の協同的メタル化によるヘリセン型錯体の合成とキラ
21 A. Akimoto, S. Akine, T. Nabeshima, “Synthesis and
リティー制御」第 1 回ホスト・ゲスト化学シンポジウ
Complexation Behavior of Novel Salen-type Tetradentate
N2S2 and N2SO Ligands” The 1st International Symposium
on Atomic Technology (ISAT-2007), Tsukuba, March 16-17,
○秋根茂久・松本崇・鍋島達弥「直鎖オリゴオキシム
ム,つくば,2006 年 5 月.
3
○市川響子・池田忠作・鍋島達弥「イリジウム錯体部
位を持つモノアザクラウンエーテル類の合成と発光特
22
性」第 1 回ホスト・ゲスト化学シンポジウム,つくば,
2006 年 5 月.
4
長谷川真弓・○木村望・秋根茂久・鍋島達弥「テルピ
リジン白金(II)錯体部位を有する集積型メタロクレフト
の合成と分子認識能」第 1 回ホスト・ゲスト化学シン
ポジウム,つくば,2006 年 5 月.
5
6
7
8
9
つくば,2006 年 5 月.
14 ○池田忠作・秋根茂久・鍋島達弥「酸素配位部位を導
入した新規ジピロメテン錯体の自己組織化」
15 ○須永修一・秋根茂久・鍋島達弥「3 つの salamo 部位
を持つ大環状配位子の合成と協同的な錯形成」
16 ○増渕小百合・秋根茂久・鍋島達弥「鉄−ビピリジン錯
○増渕小百合・秋根茂久・鍋島達弥「集積尿素部位を
体のレドックス特性を利用したアニオン認識能の制
有するルテニウム(II)擬クリプタンドの構造と機能」第
御」第 16 回金属の関与する生体関連反応シンポジウム
1 回ホスト・ゲスト化学シンポジウム,つくば,2006
(SRM 2006)−生体超分子システムと金属−,東京,2006
年 5 月.
年 6 月.
○Robert Trokowski・秋根茂久・鍋島達弥「Synthesis of
17 ○丹羽和也・鍋島達弥「複数の尿素部位を有するポダ
Assembled Platinum-Terpyridine Derivatives and Their
ンド型分子の合成とアニオン認識能」第 16 回金属の関
Responding Functions」第 1 回ホスト・ゲスト化学シンポ
与する生体関連反応シンポジウム(SRM 2006)−生体超
ジウム,つくば,2006 年 5 月.
分子システムと金属−,東京,2006 年 6 月.
○鍵山聡子・秋根茂久・池田忠作・鍋島達弥「ダンシ
18 ○市川響子・池田忠作・鍋島達弥「アザクラウンエー
ル蛍光部位を導入した鎖状テトラオキシム配位子の合
テル部位を持つイリジウム錯体のイオン応答性発光」
成と錯形成能」第 1 回ホスト・ゲスト化学シンポジウ
第 19 回配位化合物の光化学討論会,つくば,2006 年 8
ム,つくば,2006 年 5 月.
月.
○木暮翠・秋根茂久・鍋島達弥「キラルな擬クリプタ
19 ○増渕小百合・秋根茂久・鍋島達弥「レドックス応答
ンドの合成と、イオン添加によるらせん構造の制御」
性擬クリプタンドによるアニオン認識の多段階制御」
第 1 回ホスト・ゲスト化学シンポジウム,つくば,2006
生体機能関連化学部会(21 回)
・バイオテクノロジー部
年 5 月.
会(9 回)
・生命化学研究会(9 回)合同シンポジウム,
○丹羽和也・鍋島達弥「複数の尿素部位を有するトリ
京都,2006 年 9 月.
ポダンド型分子の合成とアニオン認識能」第 1 回ホス
20 ○丹羽和也・池田忠作・秋根茂久・鍋島達弥「複数の
ト・ゲスト化学シンポジウム,つくば,2006 年 5 月.
尿素部位を有するポダンド型アニオンレセプターの合
10 ○木村望・池田忠作・鍋島達弥「集積型メタロ超分子
成とその認識能」生体機能関連化学部会(21 回)
・バイ
のためのテルピリジン誘導体の合成と錯形成」第 1 回
オテクノロジー部会(9 回)
・生命化学研究会(9 回)
ホスト・ゲスト化学シンポジウム,つくば,2006 年 5
合同シンポジウム,京都,2006 年 9 月.
月.
21 ○巻口琢郎・秋根茂久・鍋島達弥「ビナフチル骨格を
11 ○白井由利子・秋根茂久・池田忠作・鍋島達弥「クラ
有するテルピリジンポダンド類の合成とそのイオン認
ウンエーテル部位を有する saloph 型ホストの合成と認
識能」生体機能関連化学部会(21 回)
・バイオテクノロ
識能」第 1 回ホスト・ゲスト化学シンポジウム,つく
ジー部会(9 回)
・生命化学研究会(9 回)合同シンポ
ば,2006 年 5 月.
ジウム,京都,2006 年 9 月.
12 ○巻口琢郎・清水隆・秋根茂久・鍋島達弥「アミド部
22 ○秋根茂久・松本崇・鍋島達弥「ヘリセン型オリゴオ
位をもつビナフチル骨格とテルピリジン部位を有する
キシム錯体の合成とキラリティー制御」第 56 回錯体化
ホストの合成とイオン認識能」第 1 回ホスト・ゲスト
学討論会,広島,2006 年 9 月.
化学シンポジウム,つくば,2006 年 5 月.
13 ○宮崎隼人・秋根茂久・佐藤総一・鍋島達弥「saloph
部位を有するトライアングル型ホストによる Zn(II)の
協同的認識」第 1 回ホスト・ゲスト化学シンポジウム,
23 ○宮崎隼人・秋根茂久・鍋島達弥「トライアングル型
saloph 誘導体の協同的認識による多核錯体の合成」第
56 回錯体化学討論会,広島,2006 年 9 月.
24 ○木暮翠・秋根茂久・鍋島達弥「エステル基を持つ擬
23
クリプタンドのカチオン認識能」第 56 回錯体化学討論
会,広島,2006 年 9 月.
25 ○池田忠作・秋根茂久・鍋島達弥「新規な環状ホウ素
ジピロメテン錯体の合成と性質」第 56 回錯体化学討論
会,広島,2006 年 9 月.
26 ○市川響子・池田忠作・鍋島達弥「イリジウム錯体部
位をもつモノアザクラウンエーテル類の合成とイオン
認識能」第 56 回錯体化学討論会,広島,2006 年 9 月.
27 ○今村友紀・福島主也・秋根茂久・鍋島達弥「カテコ
ラート錯体部位を有するメタロホストの構築とその性
質」第 56 回錯体化学討論会,広島,2006 年 9 月.
28 ○須永修一・秋根茂久・鍋島達弥「大環状ヘキサオキ
シム配位子の合成と遷移金属との錯形成能」第 36 回複
素環化学討論会,長崎,2006 年 11 月.
29 ○鍵山聡子・秋根茂久・鍋島達弥「閉環メタセシスに
よる大環状テトラオキシムの合成」第 36 回複素環化学
討論会,長崎,2006 年 11 月.
30 ○池田忠作・鍋島達弥「酸素配位部位を導入した新規
ジピロメテン錯体による超分子ホストの構築」第 36 回
複素環化学討論会,長崎,2006 年 11 月.
31 ○木村望・鍋島達弥「アニオン認識部位をもつビステ
II
ルピリジン・Ru ホストの合成と機能」第 36 回複素環化
37 ○木暮翠・秋根茂久・鍋島達弥「鎖に複数のアミド結
合を有する新規な擬クリプタンドの合成と機能」日本
化学会第 87 春季年会,吹田,2007 年 3 月.
38 ○今村友紀・福島主也・秋根茂久・鍋島達弥「擬クリ
プタンド型 Ti(IV)-カテコラートホストの合成と分子認
識能」日本化学会第 87 春季年会,吹田,2007 年 3 月.
39 ○鍵山聡子・秋根茂久・鍋島達弥「直鎖状テトラオキ
シムおよびその金属錯体の閉環メタセシスによる大環
状配位子の合成」日本化学会第 87 春季年会,吹田,2007
年 3 月.
40 ○須永修一・秋根茂久・鍋島達弥「2 種類の金属をテン
プレートとする大環状ヘキサオキシム配位子の合成」
日本化学会第 87 春季年会,吹田,2007 年 3 月.
41 ○宮崎隼人・秋根茂久・鍋島達弥「金属添加によるト
ライアングル型 saloph 配位子の合成」日本化学会第 87
春季年会,吹田,2007 年 3 月.
42 ○丹羽和也・鍋島達弥「3 つの尿素部位を有するトリポ
ダンド型アニオンレセプター」日本化学会第 87 春季年
会,吹田,2007 年 3 月.
43 ○池田忠作・鍋島達弥「カテコリルジピロメテン錯体
の自己組織化とその構造を利用したゲスト認識」日本
化学会第 87 春季年会,吹田,2007 年 3 月.
学討論会,長崎,2006 年 11 月.
32 ○秋本亜矢子・秋根茂久・鍋島達弥「チオールを含む
salen 型オキシム配位子の合成とその錯形成」第 33 回有
機典型元素化学討論会,福岡,2006 年 12 月.
33 ○巻口琢郎・清水隆・秋根茂久・鍋島達弥「複数の認
識部位をもつテルピリジンホストの合成と機能」第 52
回有機合成化学協会関東支部シンポジウム,新潟,2006
年 12 月.
34 ○木村望・長谷川真弓・秋根茂久・鍋島達弥「テルピ
リジン白金(II)錯体部位を有するメタロクレフトホスト
の合成と機能」第 52 回有機合成化学協会関東支部シン
ポジウム,新潟,2006 年 12 月.
35 ○秋根茂久「らせん型オリゴオキシム錯体を用いた新
規な超分子システムの構築」日本化学会第 87 春季年会
(若い世代の特別講演会)
,吹田,2007 年 3 月.
36 ○玉井大史・秋根茂久・鍋島達弥「新規な多座配位子
としてのジピリジルビピリミジン類の合成と錯形成
能」日本化学会第 87 春季年会,吹田,2007 年 3 月.
24
3. 融合物質生命コア
専任教官: 長崎幸夫
(数理物質科学研究科物性・分子工学専攻・教授)
大石 基
(数理物質科学研究科物性・分子工学専攻・助手)
原 暁非(数理物質科学研究科物性・分子工学専攻・準研究員)
教員 吉本敬太郎(数理物質科学研究科物性・分
子工学専攻、先端学際領域研究センター講師)
研究員 宮本 大輔(産学官連携研究員)
、辰巳
泰我
(産学官連携研究員)
、
Swapan Kumar
Saha(産学官連携研究員)、小川 浩
(TIMS 研究支援員)
大学院生 小泉 亮(数理物質科学研究科 D5)
、
市野 正洋(同 D4)
、平瀬 匠(同 D4)
、
近藤 章一(同 D3)
、古性 均(同 D3)
、
佐久間 浩史(同 M2)
、佐藤 嘉秀(同
M2)
、中山 慶一(同 M2)
、松本 慎哉
(同 M2)
、吉田 吉行(同 M2)
、吉富 徹
(同 M2)
、石井 志郎(同 M1)
、石川 博
子(同 M1)
、梅山 雅也(同 M1)
、野沢
麻希子(同 M1)
、山中 千栄子(同 M1)
卒業研究生(工学基礎学類物質・分子工学主専攻)
厚見 宙志、角谷 省吾、中村 隆仁、
西尾 元彦
【 1 】 緒言
バイオ分野におけるナノテクノロジーの技術の
導入は、新たな新領域“ナノバイオテクノロジー”
を生み出し、従来の性能をはるかに凌駕する様々
な新規材料やシステムデバイスが提案されている。
融合物質生命コアでは、特に生体分子や組織と接
触する機材界面の精密構築ならびに構造制御の重
要性に着目し、我々が独自に創製してきた材料に
よって生体分子や組織と接触する機材界面を最適
化することで、新しいセンシング・治療用デバイ
スを開発することを目的としている。微細なシス
テムデバイスをバイオ関連技術に適用する場合、
バイオと機材のインターフェースの最適化が最も
重要な観点の一つであり、特にマイクロチップ、
ナノ粒子等の集積デバイスやナノ材料を利用する
場合、その集積化が進めば進むほど、界面の影響
が大きくなり、バイオインターフェースの役割が
ますます重要になってくる。
このような作業仮説のもと、本年度も様々なバ
イオインターフェースの構築に取り組み、バイオ
分野にて有用な各種センシング・診断用デバイス
を開発した。本年次報告では、合成トリブロック
共重合体ミセルを利用する非ウイルスベクター、
ポリアニオン誘導体化ポリエチレングリコールに
よるアップコンバージョン発光粒子の表面改質、
非熱平衡プラズマとポリアミン誘導体化ポリエチ
レングリコールを利用する金ナノ粒子作成法、生
体高分子固定化金ナノ粒子の創製、Protein A 固定
化金センサーチップの研究に関するトピックスを
紹介する。
【 2 】pH 応答性トリブロック共重合体による非
ウイルスベクターの創製
(1)非ウイルスベクターについて
近年、ウイルスベクターによる遺伝子治療の安
全性に疑問が深まっている中、ウイルスに代わる
ベクターとして安全かつ効率的な非ウイルスベク
ターの開発が望まれている。しかしながら、多く
の非ウイルスベクターは、標的細胞へのターゲテ
ィング能が低いことや細胞内エンドソームでのト
ラップなどにより遺伝子導入効率が低いことが問
題となっている。本研究では、標的細胞へのター
ゲティング能とエンドソームエスケープ能を有す
る非ウイルスベクターの開発を目的とし、ポリア
ニオンである DNA と強く相互作用するポリカチ
オンの1つであるポリ
(2−ジメチルアミノエチル
メタクリレート)
(PDMAMA)連鎖およびエンド
リガンド
PEG
(lactose)
PDMAMA連鎖
DNAを安定に担持
ポリイオンコンプレック(PIC)
ミセル
PSAO連鎖
エンドソームエスケープ
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA
ブロック共重合体
pDNA
+ H+
エンドソーム内 pH
PSAO連鎖の相転移(コ
イル状態→ロッド状態)
PICミセルの膨潤
図1 pH 応答性トリブロック共重合体による非
ウイルスベクターの概念図
25
HOOH
H
HO
HOOH
H
H
O
OH H
O
N
H OH HO H OH
H
H
H
O
O
S
O
O
n
N
N
Me
Si
Me
N
N
O
m
o
O
O
O
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA
ブロック共重合体
N
図 2 pH 応答性トリブロック共重合体
(Lac-PEG-PSAO-PDMAMA)の化学構造
大することが明らかとなった。一方、
Lac-PEG-PDMAMA(アミン数 55)のジブロック
共重合体からなる PIC ミセルは、粒径の変化を示
さなかった。このことは、pH 低下に伴いポリサイ
ラミン鎖がコイル状態から剛直なロッド状態に相
転移したためと考えられる。
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA/pDNA ミセル
粒径 (nm)
180
160
140
120
3.5
4
4.5
5
5.5 6
pH
6.5
7
7.5
8
図 3 pH に対するミセルの粒径変化
ソーム内 pH(5~6)に応答して相転移を起こすポ
リサイラミン(PSAO)連鎖を有するラクトース
化ポリエチレングリコール(Lac-PEG)トリブロ
ック共重合体を合成し、非ウイルス型遺伝子ベク
ターとしての機能を評価した(図 1)
。
(2)トリブロック共重合体のミセル化および物
性評価
図2に示すトリブロック共重合体
(Lac-PEG-PSAO -PDMAMA)を合成し、1H NMR
および GPC で構造確認を行った。また、
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA(アミン数:PSAO 連鎖
12 , PDMAMA 連鎖 35)とルシフェラーゼをコー
ドした pDNA を N/P 比=3(アミノ基/リン酸エス
テル基)でポリイオンコンプレックス(PIC)ミセル
を調製し、pH に対する粒径の変化を DLS により
測定した(図3)。その結果、Lac-PEG-PSAO
-PDMAMA ト リ ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 お よ び
Lac-PEG-PSAO(アミン数 12)ジブロック共重合
体かなる PIC ミセルは、pH 低下に伴い粒径が増
(3)培養細胞に対する遺伝子導入および細胞内
動態評価
Lac-PEG-PSAO -PDMAMA トリブロック共重合
体およびジブロック共重合体かなる PIC ミセルを
アシアログリコプロテインレセプター(ラクトー
スを認識する)
が過剰発現しているHuH 7細胞
(ヒ
ト肝ガン由来)に対して遺伝子導入効率を評価し
た(図4)
。その結果、いずれの N/P 比において
も Lac-PEG-PSAO-PDMAMA/pDNA ミセルは、
Lac-PEG-PSAO ( ア ミ ン 数 12 ) お よ び
Lac-PEG-PDMAMA(アミン数 55)のジブロック
共重合体からなる PIC ミセルよりも高い発現効率
を示すことが明らかとなった。
さらに、蛍光ラベル化した pDNA を用いて、
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA/pDNA ミセルおよび
Lac-PEG-PDMAMA/pDNA ミセルの細胞内動態を
100000
遺伝子発現効率 (RLU/mg protein)
Lac-PEG-PDMAMA/ pDNA ミセル
Lac-PEG-PSAO/ pDNA ミセル
200
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA/pDNA ミセル
Lac-PEG-PDMAMA/ pDNA ミセル
Lac-PEG-PSAO/ pDNA ミセル
10000
1000
100
10
1
1
2
N/P比
3
4
pDNA
alone
図 4 HuH7 細胞(ヒト肝ガン由来)に対する
各ミセルの遺伝子発現効率(n=3)
26
b)
図 5 HuH7 細胞(ヒト肝ガン由来)に対する
共 焦 点 蛍 光 顕 微 鏡 写 真 a)
Lac-PEG-PDMAMA/pDNA ミ セ ル 、 b)
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA/pDNA ミセル。緑
色:ミセル、赤色:エンドソームマーカー、黄・
橙色:ミセルとエンドソームマーカーが共存
評価した。
図 5 に共焦点蛍光顕微鏡の写真を示す。
その結果、Lac-PEG-PDMAMA/pDNA ミセル(緑
色)は、いずれもエンドソームマーカーである
LysoTracker(赤色)と局在しており、エンドソー
ムにトラップされていることが明らかとなった
( 黄 ・ 橙 色 ) 。 一 方 、
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA/pDNA ミセルの共焦点
蛍光顕微鏡写真では、
緑色単独の蛍光が観察され、
エンドソームからの脱出が起こっていることが示
唆 さ れ た 。 以 上 の こ と よ り 、
Lac-PEG-PSAO-PDMAMA トリブロック共重合体
と pDNA からなる PIC ミセルは、エンドソームエ
スケープ能を有することで効率的な遺伝子発現が
可能になったと考えられる。
【 3 】アップコンバージョン発光粒子の PEG 修
飾による表面機能化
(1)アップコンバージョン発光とバイオイメー
ジング
近年、赤外光を励起光源として可視発光が可能
な希土類含有セラミックス微粒子によるアップコ
ンバージョン (UC) 発光をバイオイメージング
(BI) に応用する試みがなされている。UC-BI では
励起光が赤外光であることから生体へのダメージ
が軽減され、無機物であるため退色しにくく、光
散乱が低減するため、蛍光 BI における多くの問
Particle Size of Y2O3 (nm)
a)
800
600
400
200
0
0
1
2
3
4
5
Concentration of PEG-b-PAAc (g/L)
図 61 Agglomeration
PEG 化 Y
/ 3Er
Fig.
of2O
Y23O
particles
were restrained
2O3 粒子の粒径と調
by PEG-b-PAAc
製時に用いた PEG 濃度の関係
題の解決が期待される。ただし、セラミックスで
ある UC 発光粒子を生体内でプローブとして利
用する際、粒子同士の凝集の抑制、タンパク質等
への非特異的な吸着の防止、観察したい部位との
特異的結合性の付与が必要となる。
(2)PEG 化アップコンバージョン発光粒子の作
製
我々はUC 発光セラミックス粒子であるEr 含有
Y2O3 粒子の PEG 化により、上記の生体機能性を
もつ高性能ナノ粒子の調製を試みた。Y2O3 粒子表
面は pH 7 付近では正に帯電しているため、pH 7
付近で負に帯電しているポリアクリル酸 (PAAc)
と PEG のブロック共重合体 (PEG-b-PAAc) を静
電相互作用により Y2O3/ Er2O3 粒子表面に吸着さ
せ、PEG 化された Y2O3/ Er2O3 粒子の分散安定性
を動的光散乱 (DLS) による粒径分布測定により
評価した。さらに PEG 化粒子の水中での UC 発
光の測定も行った。
PEG-b-PAAc (Mw = 5000/3200)を Tris-HCl buffer
(10 mM, pH 7.0) に添加し、Y2O3/ Er2O3 粒子を加
えて撹拌し、粒子の PEG 化を行った。粒子濃度
一定の条件下でポリマー添加量を変化させたとき
の PEG 化粒子の粒径変化を 図 6 に示す。焼成に
よって凝集している粒子が PEG-b-PAAc 存在下
で磁気撹拌することによって解砕することが確認
された。さらに、粒子の 10 倍量 のポリマーを添
加することにより粒子が安定に分散することが確
認された。
27
Immediately after
PEGylation : 325.8 nm
Γ (%)
10
Immediately after
redispersion under
physiologic conditions :
311.1 nm
5
0
Redispersed under
physiologic
conditions after stirring
for 1day : 329.1 nm
100
500
Particle Size of Y2O3 (nm)
(Average diameter)
size distribution (DLS)
図 Fig.
7 2 Particle
生体成分と同等の条件下における
Y2O3/ Er2O3 粒子の粒径変化
PEGylated Y2O3:Er particles
図 9 バリアープラズマジェット装置の概略図
-- Y O :Er
- 2 3
-
980 nm
550, 660 nm
UPC emission
Fig. 3 PEGylated Y2O3 :Er particle showed UPC emission in
aqueous solution
図8
トル
PEG 化 Y2O3/ Er2O3 粒子の UC スペク
PEG 化粒子を調製直後、生体条件下(10 mM, pH
7.4 Tris-HCl, 150 mM NaCl)、生体条件下 1 日攪拌
後の粒径を測定した結果を 図 7 に示す。各条件
においても、水中での粒径に変化は無く、生体条
件下においても PEG 化粒子は安定に分散するこ
とが確認された。
このPEG 化粒子の水中でUC 発光スペクトルを
測定した結果を 図 8 に示す。PEG 化粒子の水中
での UC 発光が確認された。
以上、Y2O3/ Er2O3 粒子表面を PEG-b-PAAc で
修飾することにより水中での分散安定性を向上さ
せることに成功した。 PEG 化 Y2O3/ Er2O3 粒子
は新規バイオイメージング材料としての可能性を
十分に有している。
【4 】
ポリアミン誘導体化 PEG とバリアー型プ
ラズマジェットを併用する新規金ナノ粒子簡易合
成法
(1)熱非平衡プラズマジェット
熱プラズマと呼ばれる一般的なプラズマは、溶
接や溶断などの高熱を利用する金属加工、各種基
材の表面修飾、金属製品の殺菌、核融合など幅広
い用途に利用されている。しかしながら、プラズ
マ自体が非常に高いエネルギーと温度を有してい
ることから、適用可能な対象物質は強度が高いも
のに限定されている。一方、熱非平衡プラズマに
分類される誘電体バリアー型プラズマ(dielectric
barrier discharge plasma: DBDP)は、電子や分子間
の衝突に関する自由行程が長いため、高いエネル
ギーを有しているにもかかわらずプラズマ自体の
温度が比較的低いという特長をもつ。従って、柔
らかく熱に弱い生体分子やバイオマテリアルなど
の表面改質に適しており、大気圧下における安定
した低温放電プロセスであるため装置のコンパク
ト化や細かなプラズマ照射操作が容易に行えるこ
とから、新たな境界分野を開拓する新エネルギー
源として期待されている。
(2)バリアー型プラズマジェットとオリゴアミ
ン誘導体化 PEG を用いる金ナノ粒子の簡易合成
本研究では、大阪大学浜口研究室で開発された
バリアープラズマジェット(図 9)を利用する金
属ナノ粒子の精密合成法の構築を検討した。その
結果、塩化金酸溶液に同プラズマジェットを照射
するという簡単な操作だけで金イオン(3 価)か
らの金ナノ粒子(0 価)の合成(還元)が可能で
あることを見出し、さらに、オリゴアミンやオリ
28
H2N
N x
H
NH2
a)
x = 1: N3
x = 2: N4
x = 3: N5
20 nm
O
O m
c)
d)
n
NH2
HN
b)
N
H
N 4-n
H
N6-PEG (2k), n = 0-4
図 10 ポリアミンおよび N6-PEG の構造
ゴアミン誘導体化 PEG 共存下において同様なプ
ラズマ処理を施した場合、合成される金ナノ粒子
の粒径が変化することを見出した。
金ナノ粒子の作成は、塩化金酸水溶液 10 mL
(HAuCl4: 0.1 g, 0.4 mM) に対して、図 10 に示す各
種オリゴアミン (ジエチレントリアミン:N3、ト
リエチレンテトラミン:N4、テトラエチレンペン
タミン:N5、ペンタエチレンヘキサミン誘導体化
PEG:N6-PEG (2k)、[N] = 60 mM) を溶解させた後、
室温大気下において図 2-1 のプラズマジェット装
置を用いて、DBDP を 30 分間照射して行った(一
。
次側電圧:90 V, He 圧:0.1 kg/cm2)
塩化金酸/ポリマー混合溶液は調整直後黄色を
呈していたが、プラズマジェット照射後の溶液の
色は一様に赤褐色に変化した。プラズマジェット
照射後の反応溶液の紫外-可視吸収スペクトルを
測定した結果、520 nm 付近に金ナノ粒子の局在
プラズモンに由来する吸収帯が観測された。さら
に、プラズマ照射後の溶液を乾燥 TEM により観
察した結果、数十ナノメートルスケールの粒子の
存在が確認された。以上の結果から、金イオン(3
価)溶液にプラズマジェットを照射することによ
り金ナノ粒子(0 価)の合成(還元)が可能であ
ることが示された。
図11 得られた金ナノ粒子のTEM 画像a) ジエチ
レントリアミン:N3、b)トリエチレンテトラミ
ン:N4、c)テトラエチレンペンタミン:N5、d) ペ
ンタエチレンヘキサミン誘導体化 PEG:N6-PEG
さらに興味深いことに、生成した金ナノ粒子の
粒径がオリゴアミンのアミノ基の数に依存して変
化することが明らかとなった。本研究で合成した
典型的な金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡
(Transmission electron microscope: TEM) 画像を図
11 に示す。TEM 画像に示されるように、ポリア
ミンの鎖長が増加するに従い、金ナノ粒子の粒径
は小さくなる傾向が観察された(金コロイドの粒
。すなわち、バリアー型プラズ
径:N5 < N4 < N3)
マジェットを用いて金ナノ粒子を合成する場合、
併用するオリゴアミンを適切に選択することによ
り、目的の粒径を有する金ナノ粒子の獲得が可能
であることが明らかとなった。しかし、これらオ
リゴアミン存在下で得られた金ナノ粒子のプラズ
モン吸収は、時間の経過に伴い徐々に長波長側に
シフトし、凝集・沈殿する。これに対して、末端
にポリアミンを有する PEG(N6-PEG)を用いた
場合、大気下で 1 週間経過しても凝集・沈殿は認
められないほどの高い分散安定性有する金ナノ粒
子の生成が確認された。これは、N6-PEG のオリ
ゴアミンセグメントが、プラズマジェットと塩化
金酸との反応で生成した金ナノ粒子表面へ優先的
に吸着し、その結果、運動性の高い PEG ブラシ
29
が金ナノ粒子表面に構築され、金ナノ粒子に高い
分散安定性を付与したものと考察している。
【 5 】生体高分子固定化金ナノ粒子の創製
(1)核酸/PEG 共固定表面を有する金ナノ粒子の
創製
siRNA と PEG-ポリアミンを表層に共固定した
金ナノ粒子を作成し、生体環境下において siRNA
を安定且つ癌特異的にデリバリー可能な新規ナノ
粒子の作成に成功した。同金ナノ粒子の RNA 干
渉活性は市販の siRNA キャリアよりも高く、毒
性も示さないことが明らかとなった。また、さら
なる遺伝子デリバリー用キャリアとしての性能向
上を目指し、長期間高い分散安定性を維持可能な
金ナノ粒子の作製を試みるため、鎖長の異なる
PEG-ポリアミンを合成し、各金ナノ粒子の分散安
定性の評価を行った。その結果、PEG-ポリアミン
のアミンセグメント部位により強固に修飾された
金ナノ粒子、特に短いアミン鎖を有するポリマー
で修飾されたものは血清中でも優れた分散安定性
を示すことが明らかになった。
(2)高い分散能と活性を兼ね備えた PEG/酵素共
固定化金ナノ粒子、シリカ粒子の創製
粒子固定化酵素は、反応系からの分離・回収・
再利用が容易となるため新しい工業用材料として
期待されていると同時に、二段階のドラッグ・デ
リバリーシステムを可能とするプロドラッグ療法
用キャリアや診断システムとしても注目されてい
る。
本研究では、モデル酵素としてリパーゼおよび
実用性が高いグルコース酸化酵素を選択し、ナノ
微粒子として金ナノ粒子、シリカコロイドを用い
て、各微粒子表面への酵素の固定化(複合化)を
試みた。このように作った固定化酵素の構造を確
認した上に、
各特徴を評価した。
興味深いことに、
複合化の際にある種のポリマー(PEG-ポリカチ
オン)を共固定すると、様々な環境下における粒
子の分散安定性ならびに再分散性が向上すること
が確認された。また、酵素活性においてもポリマ
ーと酵素を共固定させることにより、酵素ナノ複
合体は、元の酵素と同等レベルの活性を保持でき
ることが明らかとなり、また、遠心分離等により
回収・再利用も可能であることが確認された。
【 6 】ヒスチジンタグ導入型 Protein A/PEG 共固
定化金基板を用いるイムノセンシング
(1)センサー基材表面における分子認識素子の
固定化
基材表面に様々な分子認識素子を固定化し、標
的物質のみを選択的且つ高感度に検出する高性能
タンパク質センサーの開発が医薬、生化学分野な
どで期待されている。基材表面に固定化された抗
体を用いて高性能なセンシングシステムを構築す
る場合、1)基材表面における抗体の配向性や密
度の制御、2)基材表面に対する目的物質以外の
吸着(非特異的吸着)の抑制、3)基材表面におけ
る抗体の分子認識能の確保・向上、などを考慮し
た高度な表面設計が必要となる。
(2)ヒスチジンタグ導入型 Protein A
図 12 Protein A/PEG 共固定化金基板と同基板上における抗原抗体反応(サンドイッチアッセイ)の概念図
30
Anti-BSA/PEG surface
His6-Protein A/PEG surface
o
SPR angle shift Δθ ( )
o
SPR Response Δθ ( )
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
(a)Immobilized antibody
0.20
0.18
0.16
0.14
0.12
0.10
0.08
0.06
0.04
0.02
0.00
0
20
40
60
80
Concentration of antigen (nM)
100
(b)Sensing ability
図 13 金基板ならびに Protein A/PEG 共固定化金
基板への (a)一次抗体固定化量と (b)サンドイッチ
アッセイを行った場合の SPR レスポンス. □ Anti
BSA 抗体物理吸着金表面、■ His6 ProteinA 固定化
金表面
Protein A は熱や変性剤に対して高い耐性を有
し、抗体の Fc 部分と速やかに強く結合する機能
性タンパク質である。Protein A を物理吸着・化学
結合させたセンサー基板が既に知られているが、
本研究では、Protein A を直接金基板へ固定化させ
るための結合モチーフとしての His6 の有用性、
さらに、金基板上における Protein A の配向性の
制御が可能であるかを主に検討した。
6 つの ヒスチジン(His6)が導入された Protein
A(His6-Protein A)は、His6 が組み込まれたベク
ターにプロテイン A を連結させ、大腸菌培養によ
り調製した。His6-Protein A の精製は、ニッケルキ
レートカラムおよび IgG カラムを用いて行った。
(3)Protein A/ポリエチレングリコール共固定化
金基板の作製と抗原検出
His6-Protein A とチオール誘導体化ポリエチレ
ングリコール(PEG)を共固定した金表面を作成
し、これを利用した表面プラズモン共鳴(SPR)
を検出原理とする高性能イムノセンサー系の構築
を試みた。得られた His6 プロテイン A を金基板
に固定化後、チオール誘導体化 PEG を用いて処
理することで、His6-Protein A / PEG 共固定化金基
板を作成した(図 12)
。
作成した金基板に Anti-BSA 抗体を固定化した
図 14 SPR 測定を適用した際の各金基板表面に
おける抗原検出能の差 (▲) Ni-NTA His6-protein A
表 面 , (■) His6-protein A/PEG 表 面 ,
(●)Anti-BSA/PEG 表面.
後、抗原である BSA の検出を SPR 装置を用い
て行った。二次抗体を利用するサンドイッチアッ
セイを適用し、抗原シグナルを増幅させて検出を
行った。また、ヒスチジンを有さない Protein A 基
板、Anti-BSA 抗体を物理吸着させた基板、アル
カンチオール単分子膜状に Ni2+-NTA を固定化し
た Ni-NTA/SAM 基板も作製し、同様に SPR 測
定を行った。
金基板上へのタンパク固定化量を SPR 測定よ
り算出し、タンパクの 1 分子あたりの占有面積か
ら表面被覆率を算出した結果、His6 を導入してい
ない Anti-BSA 抗体や Protein A の表面被覆率は
そ れ ぞ れ 37% 、 22% で あ っ た の に 対 し 、
His6-Protein A の表面被覆率は 93%と最も高い値
を示した。また、ベア金基板に対する Anti-BSA
抗体固定化量と Protein A/PEG 共固定化金基板に
対する Anti-BSA 抗体固定化量がほぼ等しいに
もかかわらず、サンドイッチアッセイにおける
SPR レスポンスは Protein A/PEG 共固定化金基板
の方が 8 倍程度大きな値となった(図 13)
。以上
の結果は、His6-Protein A が His6 部位で特異的に
金基板と結合していること、
さらに、
Protein A/PEG
共固定化金基板上における Anti-BSA の配向性
が向上したことを示唆している。また、ヒスチジ
ンタグを有するタンパク質の固定化単体として一
般的に利用されている Ni-NTA/SAM 表面に
31
Protein A を固定化した表面では、サンドイッチア
ッセイにおける抗原のレスポンス値が大きかった
ものの、基板に対する二次抗体の非特異吸着が大
きいため、低濃度領域における抗原の検出が不可
能であった。これに対し、本研究で構築した
Protein A/PEG 表面では、二次抗体の非特異吸着に
由来するバックグラウンドノイズの大幅な低減に
成功し、低濃度領域(1-10 nM)における抗原の検
出が可能であった(図 14)
。
<学位論文>
・ 佐藤 嘉秀:ポリエチレングリコール/ポリカチオン
共重合体と無機ナノ粒子の複合化に際するポリカチ
オン鎖の影響 (数理物質科学研究科、物性・分子工学
専攻、修士論文、2007.3)
・ 中山 慶一:異なる温度応答性を有する PEG-ポリカ
チオンブロック共重合体からなる PEG 修飾リポソー
ムの調製と評価 (数理物質科学研究科、物性・分子工
学専攻、修士論文、2007.3)
・ 松本 慎哉:DNA センシングのための PEG/DNA 混
合ブラシ表面の精密制御 (数理物質科学研究科、物
性・分子工学専攻、修士論文、2007.3)
・ 吉田 吉行:胆汁酸吸着剤を目指したコア-シェル型ナ
ノゲル粒子の設計と評価 (数理物質科学研究科、物
性・分子工学専攻、修士論文、2007.3)
・ 吉富 徹:高性能バイオラベリングを目指した PEG/
オリゴアミン修飾剤の設計と修飾量子ドットの創製
(数理物質科学研究科、物性・分子工学専攻、修士論文、
2007.3)
・ 厚見 宙志:水素結合性ランタノイド錯体の合成およ
び核酸塩基認識能の評価 (工学基礎学類、物質・分子工
学主専攻、卒業論文、2007.3)
・ 角谷 省吾:バイオイメージングを目指したフッ素化
合物内包型 PEG 化 pH 応答性ナノゲル粒子の創製 (工
学基礎学類、物質・分子工学主専攻、卒業論文、2007.3)
・ 中村 隆仁:ナノゲル固定化免疫診断(GELISA)シ
ステムを目指した PEG 化ナノゲル/金ナノ粒子複合
体の設計 (工学基礎学類、物質・分子工学主専攻、卒業
論文、2007.3)
・ 西尾 元彦:高性能免疫診断を目指した PEG 修飾ガ
ラス基板の構築と評価 (工学基礎学類、物質・分子工学
主専攻、卒業論文、2007.3)
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
<プロシーディング>
1.
2.
3.
<論文>
1.
Motoi Oishi, Satoshi Ikeo, Yukio Nagasaki, Polymer
Journal (2007), 39(3), 239-244.
Yukio Nagasaki, Hiroshi Kobayashi, Yoshinori
Katsuyama, Tomoko Jomura, Takeshi Sakura,
Journal of Colloid and Interface Science (2007),
309, 524-530.
Yukio Nagasaki, Kenji Yoshinaga, Koshiro
Kurosawa, Michihiro Iijima, Colloid and Polymer
Science (2007), 285(5), 563-567
Hiroto Hatakeyama, Hidetaka Akita, Motoi Oishi,
Yukio Nagasaki, Hideo Kobayashi, Hiroshi Kikuchi
and Hideyoshi Harashima Gene Therapy (2007), 14,
68-77.
Wei Lu, Yusuke Tokuhiro, Ikurou Umezu, Akira
Sugimura, and Yukio Nagasaki, Applied Physics
Letters (2006), 89(14). 143901/1-143901/3.
Motoi Oishi, Junpei Nakaogami, Takehiko Ishii,
Yukio Nagasaki, Chemistry Letters (2006), 35(9),
1046-1047.
Motoi Oishi, Kazunori Kataoka, Yukio Nagasaki,
Bioconjugate Chemistry (2006), 17(3), 677-688.
Ali Md. Monsur, Motoi Oishi, Fumi Nagatsugi,
Kenya Mori, Yukio Nagasaki, Kazunori Kataoka,
Shigeki Sasaki, Angewandte Chemie International
Edition, (2006), 45, 3136-3140.
Michihiro Ijima, Yukio Nagasaki, Journal of
Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry (2006),
44(4), 1457-1469.
4.
Hitoshi Furusho, Daisuke Miyamoto, Yukio
Nagasaki, Katsuhisa Kitano, Satoshi Hamaguchi,
"Synthesis of Uniformly
Dispersed Metal
Nanoparticles with Dispersion Stability by
Nonequilibrium Atmospheric Plasma Jets", Journal
of Photopolymer Science and Technology (2007),
20(2), 229-233.
Yuki Hoshino, Ryuichiro Kimura, Joe Chiba, Keitaro
Yoshimoto, Yukio Nagasaki, "Construction of
His6-Protein A/PEG Co-immobilized Surface for
High-Performance Protein Sensing", Transactions of
the Materials Research Society of Japan (2006),
32(2), 571-574.
Takumi Hirase, Takehiko Ishii, Yukio Nagasaki,
"Construction of poly(ethylene glycol) tethered chain
surface possessing mercapto group at the distal end
for protein immobilization", Transactions of the
Materials Research Society of Japan (2006), 31(1),
633-636.
Tomoya Konishi, Msasayoshi Yamada, Kohei Soga,
Daisuke Matsuura, Yukio Nagasaki, "PEG-based
32
5.
surface modification on upconversion nanophosphors
for bio-imaging under IR excitation", Journal of
Photopolymer Science and Technology (2006), 19(2),
145-149.
Masahiro Ichino, Yukio Nagasaki, "Construction of
spheroid cell microarray on patterned PEG hydrogel
surface", Journal of Photopolymer Science and
Technology (2006), 4, 451-454.
<著書>
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
市野正洋、長崎幸夫、“細胞マイクロアレイ”、
“バイオセンサ・ケミカルセンサ辞典”、軽部征
夫、テクノシステム、東京、2007 年。
古性 均、吉本 敬太郎、長崎幸夫、"ナノ粒子
センサー"、”バイオ計測の実際”、三原久和、
小畠英理、馬場嘉信編、講談社サイエンティフィ
ク、東京、2007 年。
Motoi Oishi, Yukio Nagasaki, “Block Copolymer
Synthesis for Nanoscale Drug and Gene Delivery” in
Nanotechnology in Drug Delivery, in press.
Tadahito Takahashi, Yukio Nagasaki, "Clay-Polymer
Nanohybrides for Pharmaceutical Applications, in
Smart Nano and Microparticles", Kenji Kono and
Reza Arshady Ed., Kentus Book, London,
pp.371-392, 2006.
平野覚浩、菊池明彦、長崎幸夫、“医用材料の新
展開”、“図解適用事例にみる高分子材料の最先
端技術 ~なぜ、高分子材料を使うのか~“、松
浦 一雄 ; 尾崎 邦宏編著、工業調査会、東京、
2007 年。
市野正洋、長崎幸夫、“細胞マイクロアレイ”、
“ナノバイオ大事典”、山根恒夫 ; 松永 是編
著、テクノシステム、東京、2007 年。
内田勝美、長崎幸夫、“DNA チップ、遺伝子診
断技術”、“ナノテクのためのバイオ入門 (ナノ
テクノロジー入門シリーズ)”、日本表面化学会
編(荻野 俊郎、宇理須 恒雄)、共立出版、東京、
2007 年。
石井武彦、長崎幸夫、
“バイオ検出用金ナノ粒子”、
ナノマテリアル工学大系 第2巻 ナノ金属、井
上明久監修、フジテクノシステム、東京、2006
年。
原 暁非、長崎幸夫、 “PEG/酵素共固定化金
ナノ粒子の調製と機能”、“酵素開発・利用の最
新技術”、今中忠行監修、シー・エム・シー出版、
東京、2006 年。
<総説・解説>
1.
2.
吉本敬太郎、古性 均、長崎幸夫、“ナノ粒子セ
ンサーの発展“、未来材料、エヌ・ティー・エス、
7 巻、6 号、pp.36-44、2007 年。
石井武彦、長崎幸夫、“ナノバイオ粒子による分
子センシング”、ケミカルエンジニヤリング、52
巻、6 号、pp.448-453、2007 年、化学工業社。
<国際会議>
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
2007.3.16
Yukio
Nagasaki,
“Design
of
Bionanointerface”, 1st International Symposium on
Atomic Technology, EPOCAL Tsukuba, (Invited)
2007.3.16 Motoi Oishi, Naoki Miyagawa, Takeshi
Sakura, Yukio Nagasaki, “On-Off Regulation of
Catalytic Activity Based on the pH-Sensitive
PEGylated
Nanogels
Containing
Platinum
Nanoparticels”, 1st International Symposium on
Atomic Technology, EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Hitoshi Furusho, Daisuke Miyamoto,
Motoi Oishi, Keitaro Yoshimoto, Yukio Nagasaki,
Katsuhisa Kitano, Satoshi Hamaguchi, “Synthesis of
Metal Nanoparticles using Dielectric Barrier
Discharge Plasma Jet”, 1st International Symposium
on Atomic Technology, EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Masao Kamimura, Yoshihito Okumura,
Yu Saito, Daisuke Miyamoto, Kohei Soga, Yukio
Nagasaki, ”Surface Modification on Upconverting
Phosphors with PEG/polyanion Block Polymer for
Fluorescence Bioimaging”, 1st International
Symposium on Atomic Technology 2007, EPOCAL
Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Takumi Hirase, Keitaro Yoshimoto,
Yukio Nagasaki, “Poly(ethylene glycol) Brushed
Layer Possessing a Free Thiol Group at PEG Chain
End on Gold Surface for High Performance Protein
Immobilization”, 1st International Symposium on
Atomic Technology, EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Hiroko Ishikawa, Michihiro Iijima, Motoi
Oishi, Yukio Nagasaki, “PEG and Lipase
Co-immobilized Silica Colloid for Specific
Bioactivity”, 1st International Symposium on
Atomic Technology, EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Chieko Yamanaka, Motoi Oishi, Yukio
Nagasaki, “Synthesis of Functional PEG-Polyamine
Block
Copolymer
for
Apoptosis-Sensitive
PEGylated Gold Nanoparticles”, 1st International
Symposium on Atomic Technology, EPOCAL
Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Makiko Nozawa, Keitaro Yoshimoto,
Yukio Nagasaki, “Surface Design for Highly
33
9.
10.
11.
12.
13.
14.
15.
16.
Specific Biosensing: Nonfouling and Molecular
Recognition Behavior of Aptamer/PEG-b-PAMA
Co Immobilized Gold Sensor”, 1st International
Symposium on Atomic Technology, EPOCAL
Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Masahiro Ichino, Keitaro Yoshimoto,
Yukio Nagasaki, “Construction and Characterization
of PEG-GEL Pattern Chip for Inverse Pattern
Formation of Cell Microarray”, 1st International
Symposium on Atomic Technology, EPOCAL
Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Taiga Tatsumi, Shouichi Kondo, Motoi
Oishi, Yukio Nagasaki, “Molecular Design of
Multifunctional Core-Shell Type pH-sensitive
Nanogel”, 1st International Symposium on Atomic
Technology, EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.16
Shiro
Ishii,
Kenji
Yoshinaga,
Michihiro.Iijima, Motoi Oishi, Yukio Nagasaki,
“Design of PEG and Enzyme Co-Immobilized Gold
Colloid for Enzyme Prodrug Therapy”, 1st
International Symposium on Atomic Technology,
EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Daisuke Miyamoto, Hitoshi Furusho,
Motoi Oishi, Keitaro Yoshimoto, Yukio Nagasaki,
“Preparation of Highly Stabilized Gold Nanoparticle
Modified by Precisely Synthesized Poly(ethylene
glycol)-bpoly((2-dimethylamino)
ethyl
Methacrylate)”, 1st International Symposium on
Atomic Technology, EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Yu Saito, Yoshihito Okumura, Masao
Kamimura, Tomoya Konishi, Kohei Soga, Yukio
Nagasaki,
“Synthesis
of
Yittrium
Oxide
Nano-Particles Using Enzymatic Decomposition of
Urea”, 1st International Symposium on Atomic
Technology, EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.16 Swapan Kumar Saha, Motoi Oishi, Yukio
Nagasaki, “Novel Preparation of Both Enzyme and
PEG Co-immobilized Gold Nanosphere and Its
Application for High-functional Biodegradable
Polymers Synthesis”, 1st International Symposium
on Atomic Technology, EPOCAL Tsukuba, (Poster)
2007.3.13 Yukio Nagasaki, Motoi Oishi, Naoki
Miyagawa, Takeshi Sakura, “On-Off Regulation of
Catalytic Activity Based on the pH-Sensitive
PEGylated
Nanogels
Containing
Platinum
Nanoparticles”, 4th International Symposium on
Future-Oriented Interdisciplunary Materials Science,
Kyoto University, (Oral)
2006.12.4 Takumi Hirase, Keitaro Yoshimoto,
Yukio Nagasaki, “Construction of mercapto-ended
17.
18.
19.
20.
21.
22.
poly(ethylene glycol) tethered chain surface for high
performance protein immobilization and sensing”,
NANOBIO-TOKYO 2006, The University of Tokyo,
(Poster)
2006.11.12 Takumi Hirase, Yukio Nagasaki,
“Construction of mercapto-ended poly(ethylene
glycol) tethered chain surface for high performance
bioconjugation”, AIChE 2006 Annual Meeting, San
Francisco, U.S.A., (Oral)
2006. 10.30 Xiaofei Yuan, Shiro Ishii, Hiroko
Ishikawa, Michihiro Iijima, Motoi Oishi, Yukio
Nagasaki, “Design of stable nanozyme by
hybridization
of
lipase
with
PEGylated
nanoparticles”, The Ninth Japan-China-Korea Joint
Symposium on Enzyme Engineering, Piazza Omi &
Hotel Piazza Biwako, (Poster)
2006.10.17
Yukio
Nagasaki,
“Design
of
Bionanoparticles,
Japan-India
Science
and
Technology Initiative Meeting”, Mita International
Conference Center, (Invited)
2006.9.26 Yukio Nagasaki, “Materials Design for
Gene Delivery System”, 4th International Forum on
Post-genome Technologies (IPFT’4), Hangzhou,
China, (Oral)
2006.7.27 Motoi Oishi, Yukio Nagasaki, Nobuhiro
Nishiyama, Keiji Itaka, Motoki Takagi, Akira
Shimamoto, Yasuhiro Furuichi, Kazunori Kataoka,
“Enhanced
Tumor
Growth
Inhibition
in
Multicellular Tumor Spheroids Induced by Smart
Polyion Complex Micelles Composed of
PEG-siRNA Conjugate and Polycation”, 33th
Controlled Release Society, Viena, (Oral)
2006.4.1 Yukio Nagasaki, “Inorganic, Metal and
Semiconductor
Nanoparticles
Stabilized
by
Acetal-PEG/
polycation
Block
Copolymer
-Bionanoparticles
for
New
Diagnostics,
Bioimagings and Therapeutics”, 231th American
Chemical Society Meeting, Atlanta, U.S.A, (Oral)
<国内会議>
1.
2.
2007.3.26 長崎幸夫、「機能性ソフトインターフ
ェースの構築」、日本化学会シンポジウム”ソフ
トマテリアルの分子科学”、関西大学、(国内招
待講演)
2007.3.25 齋藤 悠、上村真生、小西智也、曽我
公平、長崎幸夫、「バイオイメージングのための
酸化イットリウムナノ粒子の表面機能化」、 日
本化学会第 87 春季年会、関西大学、(国内一般講
演)
34
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
2007.3.19 長崎幸夫、「細胞センサーを目指した
スフェロイドアレイの構築と機能」、光、プラズ
マプロセスのバイオ応用ワークショップ、大阪大
学、(国内招待講演)
2007.3.8 吉本敬太郎、厚見宙志、齋藤伸吾、大熊
盛也、前田瑞夫、長崎幸夫、「DNA のナノ空間
を識別する水素結合性試薬」、平成 18 年度ナノ
サイエンス特別プロジェクト講演会および研究
成果発表会, 筑波大学、(国内ポスター)
2007.1.29 長崎幸夫、「生体環境下で機能するバ
イオインターフェースの設計と機能」、第 4 回ラ
イフサーベイヤ特定領域研究シンポジウム、京都
大学、(国内招待講演)
2007.1.17 吉田吉行、大石 基、長崎幸夫、「胆
汁酸吸着剤を目指した新規コア-シェル型ナノゲ
ル粒子の設計と評価」、第 18 回高分子ゲル研究
討論会、東京大学、(国内ポスター)
2007.1.17 辰巳泰我、林 寿人、近藤章一、大石
基、長崎幸夫, 「マルチ機能搭載コア-シェル型
ナノゲルの材料設計」、 第 18 回高分子ゲル研究
討論会、東京大学、(国内ポスター)
2007.1.17 市野正洋、吉本敬太郎、長崎幸夫 、
「パ
タン化 PEG ハイドロゲルの調製と細胞パタニン
グに関する基礎検討」、 第 18 回高分子ゲル研究
討論会、東京大学、(国内ポスター)
2007.1.15 長崎幸夫、「三大学連携バイオナノプ
ロジェクト」、第 1 回ポリスケールテクノロジー
ワークショップ、東京理科大学、
(国内招待講演)
2007.1.15 石川博子、飯島道弘、大石 基、長崎
幸夫, 「In vivo 利用を目指した PEG 化リパーゼ/
シリカ複合体の調製と評価」、第1回ポリスケー
ルテクノロジーワークショップ、東京理科大学、
(国内ポスター)
2006.12.9 星野裕樹、木村竜一朗、千葉 丈、吉
本敬太郎、長崎幸夫、”Construction of His6-Protein
A/PEG
Co-Immobilized
Surface
for
High-performance protein sensing”、第 17 回日本
MRS 学術シンポジウム、日本大学、(国内ポス
ター)
2006.12.9 吉冨 徹、大石 基、長崎幸夫、「バ
イオラベリングを目指した安定発光量子ドット
の創製」、
第 17 回日本 MRS 学術シンポジウム, 日
本大学、(国内ポスター)
2006.12.9 松本慎哉、石井武彦、吉本敬太郎、長
崎幸夫、「PEG-b-PAMA/DNA 共固定構築表面に
おける DNA の検出」、第 17 回日本 MRS 学術シ
ンポジウム、日本大学、(国内ポスター)
2006.11.28 市野正洋、吉本敬太郎、長崎幸夫、
「ポ
リエチレングリコールハイドロゲル上での細胞
接着制御と細胞パタンニング表面の構築」、第
15.
16.
17.
18.
19.
20.
21.
22.
23.
24.
25.
28 回日本バイオマテリアル学会大会、アルカデ
ィア市ヶ谷(私学会館)、(国内ポスター)
2006.10.13 石川博子、飯島道弘、大石 基、長崎
幸夫、「ポリエチレングリコール(PEG)、シリ
カ粒子を担体とした固定化酵素の調製」、酵素工
学研究会第 56 回講演会、東京大学、(国内ポス
ター)
2006.10.13 石井志郎、吉永健二、飯島道弘、大石
基、長崎幸夫、「生体環境下で機能する酵素、ポ
リエチレングリコール共固定化金ナノ粒子の創
製」、酵素工学研究会第 56 回講演会、東京大学、
(国内ポスター)
2006.9.21 長崎幸夫、「コア-シェル型ナノゲル
の合成と機能」、第 55 回高分子討論会、富山大
学五福キャンパス、(国内一般講演)
2006.9.21 原 暁非、石井志朗、石川博子、飯島
道弘、大石 基、長崎幸夫、「表面機能化により
安定したナノ酵素の設計」、第 55 回高分子討論
会、富山大学五福キャンパス (国内一般講演)
2006.9.22 大石 基、西山伸宏、位高啓史、石井
篤史、高木基樹、嶋本 顕、古市泰宏、片岡一則、
長崎幸夫、「ウイルスの機能を模倣した高分子ナ
ノ組織体による核酸医薬のデリバリー」、第 55
回高分子討論会、富山大学五福キャンパス (国内
一般講演)
2006.9.22 星野祐樹、木村竜一郎、千葉 丈、長
崎幸夫、「His6 プロテイン A/PEG 固定化表面の
構築と評価」、第 55 回高分子討論会、富山大学
五福キャンパス、(国内ポスター)
2006.9.22 平瀬 匠、長崎幸夫、「高感度イムノ
センシングを目指した抗体フラグメント/PEG ブ
ラシ共固定表面の構築と評価」、第 55 回高分子
討論会、富山大学五福キャンパス、(国内ポスタ
ー)
2006.9.15 石川博子、飯島道弘、大石 基、長崎
幸夫、「PEG および酵素を表層に有するシリカ
コロイドの調製と評価」、第 59 回コロイドおよ
び界面化学討論会、北海道大学、
(国内ポスター)
2006.9.15 石井志郎、吉永健二、飯島道弘、大石
基、長崎幸夫、「酵素、プロドラッグ療法を目指
した酵素担持 PEG 化金コロイドの創製と評価」、
第 59 回コロイドおよび界面化学討論会、北海道
大学、(国内ポスター)
2006.7.7 長崎幸夫、「白金ナノ粒子含有コアーシ
ェル型 pH 応答ナノゲルの設計と機能」、第 22
回日本 DDS 学会、東京国際交流館、(国内一般講
演)
2006.7.7 大石 基、西山信宏、位高啓史、高木基
樹、嶋本 顕、古市泰宏、片岡一則、長崎幸夫、
「PEG-siRNA コンジュゲート型ポリイオンコン
35
26.
27.
28.
29.
30.
31.
32.
33.
34.
35.
プレックスミセルによる癌細胞の増殖抑制評価」、
第 22 回日本 DDS 学会、東京国際交流館、(国内
ポスター)
2006.5.30 大石 基、西山伸宏、位高啓史、高木
基樹、嶋本 顕、古市泰宏、片岡一則、長崎幸夫、
「高分子ナノ組織体による核酸医薬のピンポイ
ントデリバリー」、第 1 回ホスト・ゲスト化学シ
ンポジウム、つくば国際会議場、(国内一般講演)
2006.5.29 松本慎哉、平瀬 匠、石井武彦、長崎
幸夫、「PEG/ポリアミンブロック共重合体修飾
基板における DNA 鎖相互作用の検出”、第 1 回
ホスト・ゲスト化学シンポジウム、つくば国際会
議場、(国内ポスター)
2006.5.29 平瀬 匠、長崎幸夫、「最表面にメル
カプト基を有する PEG ブラシ表面の構築とタン
パク質相互作用検出への展開」、第 1 回ホスト・
ゲスト化学シンポジウム、つくば国際会議場、
(国
内ポスター)
2006.5.29 吉冨 徹、古性 均、大石 基、長崎
幸夫、「水中分散安定したポリエチレングリコー
ル修飾量子ドットの創製」、第 1 回ホスト・ゲス
ト化学シンポジウム、つくば国際会議場、(国内
ポスター)
2006.5.25 中津原 均、飯島道弘、長崎幸夫、「末
端反応性ポリエチレングリコールによるフラー
レンの機能化と応用」、第 55 回高分子学会年次
大会、名古屋国際会議場(国内ポスター)
2006.5.25 宮川直己、林 寿人、佐倉武司、長崎
幸夫、「白金コロイド固定化 pH 応答性ナノゲル
粒子の調製と評価」、第 55 回高分子学会年次大
会、名古屋国際会議場(国内ポスター)
2006.5.25 石井志郎、吉永健二、飯島道弘、長崎
幸夫、「酵素、プロドラッグ療法を目指した金ナ
ノ粒子、酵素/PEG 複合体の創製と評価」、第 55
回高分子学会年次大会、名古屋国際会議場、(国
内ポスター)
2006.5.25 林 寿人、飯島道弘、片岡一則、長崎
幸夫、「抗癌剤ドキソルビシン内包刺激応答性ナ
ノゲル粒子の細胞内における薬物放出挙動評価」、
第 55 回高分子学会年次大会、名古屋国際会議場、
(国内ポスター)
2006.5.25 飯島道弘、石川絵梨子、山中千栄子、
長崎幸夫、「イオン性セグメントを有するブロッ
クポリマーの合成と応用」、第 55 回高分子学会
年次大会、名古屋国際会議場、(国内ポスター)
2006.5.25 市野正洋、長崎幸夫、「バイオアッセ
イを目的とした細胞マイクロアレイシステムの
ための PEG ハイドロゲルパターン化表面の構築
と機能評価」、第 55 回高分子学会年次大会、名
古屋国際会議場、(国内ポスター)
36. 2006.5.25 石川博子、飯島道弘、西尾圭史、大石
基、長崎幸夫、「耐熱性および分散安定性を有す
る酵素担持シリカナノ粒子の設計」、第 55 回高
分子学会年次会, 名古屋国際会議場、(国内ポス
ター)
37. 2006.5.25 遠藤 格、平瀬 匠、松本睦良、長崎
幸夫、「PEG ブラシを有する温度応答性バイオ
インターフェースの設計と評価」、 第 55 回高分
子学会年次会, 名古屋国際会議場, (国内一般講
演)
38. 2006.5.26 平瀬 匠、石井武彦、長崎幸夫、「最
表面にメルカプト基を有する PEG ブラシ表面の
構築とタンパク質センシングへの展開」、第 55
回高分子学会年次会、名古屋国際会議場、(国内
一般講演)
39. 2006.5.26 長崎幸夫、「バイオに向けての精密高
分子界面設計」、第 55 回高分子学会年次会、名
古屋国際会議場、(国内招待講演)
40. 2006.5.25 中山慶一、大石 基、辰市洋祐、長崎
幸夫、「刺激応答性 PEG-ポリアミンブロック
共重合体と荷電性リポソームの調整」、第 55 回
高分子学会年次会、名古屋国際会議場、(国内ポ
スター)
41. 2006.5.23 大石 基、西山伸宏、位高啓史、高木
基樹、嶋本 顕、古市泰宏、片岡一則、長崎幸夫、
「がんスフェロイドを用いた PEG-siRNA コンジ
ュゲート型スマート PIC ミセルの抗腫瘍活性評
価」、第 55 回高分子学会年次会, 名古屋国際会
議場、 (国内一般講演)
42. 2006.5.20 吉冨 徹、古性 均、大石 基、長崎
幸夫、「生体環境下で機能するポリエチレングリ
コール修飾量子ドットの構築」、 第4回ナノ学
会、京都大学、(国内ポスター)
43. 2006.5.18 大石 基、西山伸宏、位高啓史、高木
基樹、嶋本 顕、古市泰宏、片岡一則、長崎幸夫、
「肝がんスフェロイドを用いた PEG-siRNA コン
ジュゲート型 PIC ミセルの評価」
、第 6 回遺伝子、
デリバリー研究会シンポジウム、九州大学、(国
内ポスター)
36
4.ハイブリッド機能コア
専任教員:
山部紀久夫(数理物質科学研究科物理工学専攻・教授)
蓮沼 隆 (数理物質科学研究科物理工学専攻・講師)
大学院生 尾崎亮太(数理物質科学研究科M2)
大沢敬一朗(同M2)
本コアでは、ナノエレクトロニクスの基盤技術と
して、ナノテクノロジー固有技術とそれに融合す
るシリコン集積回路のナノ構造制御技術を構築し
ている。
【 1 】 単結晶シリコン表面の原子ステップ位置
制御
面方位(111)のシリコン単結晶を溶存酸素濃度
が低い超純水(LOW: ultra-Low dissolved Oxygen
Water) に浸漬すると、シリコン表面は原子ステッ
プと原子的に平坦なテラス構造で覆われること、
原子ステップに沿って Cu の単原子列を形成でき
ることを報告した。実際に、ナノテクノロジーと
しては、原子ステップを予め決めた位置に形成す
ることが必須である。これまでに報告した技術で
は、
原子ステップは図 1 のようにぎざぎざになり、
位置も不確定であった。本年度は、まず、原子ス
テップを直線的にすること、形成時のステップフ
ロー・エッチングでのフロー速度を求めることに
した。
図1 LOW処理後のSi(111)面の
原子ステップ/テラス構造
図2 原子ステップの直線化。
SiO2フェンスに挟まれた領域の幅が狭くな
るにつれ、原子ステップが直線的になって
いる。原子ステップの形状を制御している
ことを示している。
(1)原子ステップの直線化
本研究に原子ステップ/テラス構造形成に用い
る LOW は、シリコン表面を原子一層づつエッチ
ングするが、シリコン酸化膜はほとんどエッチン
グせず、高い選択比を有している。また、シリコ
ン結晶の最表面の Si 原子は H 原子で終端されて
おり、Si-H、Si-H2、もしくは Si-H3 になっている。
もっとも安定なのは原子面に対して垂直方向の
Si-H であり、水平方向の Si-H や Si-H2 や Si-H3 は
Si-H に比較すると、エッチングされやすい。つま
り、ぎざぎざの原子ステップはエッチングされや
すく、一旦、エッチングするとステップラインに
沿って、非常に速く Si 原子が剥ぎ取られていく。
つまり、
ぎざぎざはエッチングの進行と共に、
徐々
に均されて直線的になっていくはずである。しか
し、実際には、図 1 のように、ぎざぎざのままエ
ッチングが進行する。これは、直線的になろうと
しても、長いステップでは、数箇所で新たに無秩
序にステップ端の Si 原子が、確率的にアタックさ
れ剥ぎ取られ、ぎざぎざの発生がおこってしまう
ことによる。図 2 のように、SiO2 ラインを 2 本描
くと、
外側で発生した剥ぎ取りは、
SiO2 で留まり、
内側に侵入できない。つまり、SiO2 は LOW 処理
でのステップフロー・エッチングに対して「フェ
37
ンス効果」を有するのである。内側での発生は、
ステップライン長に比例するため、ライン長が短
いと発生頻度は少なく、ぎざぎざの発生は起こり
にくい。よって、内側では、新たな Si 原子の剥ぎ
取りが発生しにくく、すでにできているぎざぎざ
を均す機構が優先的に進行し、ステップ端は直線
的になったのである。
(2)ステップフロー速度の制御
前節で述べたように、LOW 中での Si 表面では
原子ステップが 1 列ずつ剥ぎ取って、ステップが
流れるように後退していくステップフロー・エッ
チングが進行している。各列のエッチングはステ
ップ端のどこかで確率的に起こる原子の剥ぎ取り
によって始まる。この確率は、単位面積で一定と
考えることができる。つまり、ステップラインの
長さが短いほど、最初の剥ぎ取り頻度が低下し、
ステップフローの進行は遅くなることが予想され
る。図 3 は、シリコン酸化膜の 2 本の直線パター
ンを形成した後、LOW 処理したシリコン表面の
原子ステップ/テラス像を示したものである。前節
で示したように、原子ステップラインが直線的に
なっている以外に、2 本のシリコン酸化膜パター
図3
ステップフロー速度の制御による
テラス幅制御の例。
ンで挟まれた領域とその外側では、テラスの幅が
異なり、内側では狭くなっていることがわかる。
LOW 中でのステップフロー・エッチングにより、
像の下方から上方に向かってステップフローが進
行するが、パターン内側と外側ではフローの速度
が変化したために、
テラス幅が変化したのである。
つまり、外側で速く、内側で遅くなった結果であ
る。このような結果は、SiO2 のように、LOW 処
理中でのステップフロー・エッチングを留めるフ
ェンス効果を有するパターンで囲まれた領域内で
のステップライン長により、
テラス幅を制御でき、
ある範囲内にステップライン位置を制御できるこ
とを示している。
上記のような制御された原子ステップラインを
利用すれば、金属ナノワイヤなどのナノ構造の新
機能素子と、信号処理能力に優れたシリコン集積
回路の融合に一歩近づいた。
【 2 】原子的に平坦なシリコン表面を用いたシ
リコン熱酸化の原子論的研究
鏡面研磨表面は、原子的レベルでは荒れてお
り、原子挙動などを議論できるだけの空間分解能
を有していない。そのため、熱酸化原子論的な研
究は、赤外吸収スペクトルや X 線光電子スペクト
図4
原子的平坦な表面のシリコン熱酸化膜表
面・界面のラフネスの膜厚依存性。
38
ルなどの平均な情報による解析に留まっていた。
しかし、
最先端 LSI の最小寸法は、
もはや数 10nm、
膜厚方向には 1nm 程度に達しており、原子レベル
の空間分解能を有する解析が必要とされている。
上記、図 1 のような原子的に平坦なテラス面を
利用することにより、シリコン単結晶の熱酸化に
関して、原子レベルの三次元分布に関する知見が
得られるようになった。
(1)シリコン酸化膜の表面・界面のラフネス
図 4 は、原子的に平坦なシリコンテラス表面を
800℃の乾燥酸素雰囲気中で熱酸化したときの、
シ
リコン酸化膜表面およびシリコン基板との界面の
ラフネスを膜厚の関数としてプロットしたもので
ある。
初期シリコン表面の rms 値(root mean square) が
0.03nm 程度であるが、界面は、酸化開始直後に急
激に荒れが始まり rms が 0.09nm 程度まで一気に
上昇している。鏡面研磨シリコン表面のラフネス
は rms 値が 0.1nm 程度であることを考えると、初
期に原子的平坦なテラス面を用いることで初めて、
このような傾向を実験的に知ることができたと言
える。
一方、表面は、ある程度の膜厚まで(本実験では
0.5nm 程度まで)ラフネスに変化はないものの、そ
の後は、界面と異なり、膜厚増加と共に徐々に荒
れていく様子がわかる。
シリコンの熱酸化は、Deal-Grove モデルとして
広く知られているように、主として、酸化剤がシ
リコン基板との界面に到達し、酸化により新しい
シリコン酸化膜が形成される。また、シリコンを
熱酸化すると、シリコン酸化膜表面は、元のシリ
コン表面より盛り上がり、酸化によって体積増加
することが知られている。つまり、
Si +O2 +V = SiO2
------ ①
で表されるように、
体積Vが必要である。
しかし、
界面という閉じられた空間では、そのような体積
を得ることは容易ではない。体積は、つぎのよう
にいくつかの素過程で確保される。つまり、1)シ
リコン酸化膜が表面に押し出される。大半の体積
はこの過程で得られる。2)シリコン酸化膜が変形
する。
反応界面から、
未酸化のSiあるいはSiOで、
3)シリコン酸化膜に、あるいは 4)シリコン基板内
に放出される。もしくは、5)結晶中には熱平衡的
に原子空孔が存在するため、その原子空孔を吸収
する。6)シリコン酸化膜が高密度化する。いずれ
による体積確保も不十分な場合は、酸化の進行が
遅延されたり、停止されたりする。
上記素過程の内、3)で放出された Si あるいは
SiO の一部は、SiO2 膜中もしくは表面で、酸化剤
と反応し、SiO2 になる。いずれにしても、体積増
加を伴うため、前者では、膜内部から表面に向け
て、膜の突き上げが生じ、シリコン酸化膜表面に
凹凸を誘起する。後者は、SiO2 粒を表面に形成す
ることになり、やはり凹凸を誘起する。未酸化 Si
や SiO の放出は、第一原理計算や高真空中での実
験により予測されていることからも、シリコン酸
化膜表面の凹凸は素過程 3)によると結論される。
一方、界面の凹凸については、理想的に原子層毎
酸化機構で酸化が進行していれば、界面はほぼ初
期の rms を維持するはずであるが、すでに報告し
ているように、大まかには原子層毎酸化機構で酸
化が進行しているが、数%程度の比率で、多原子
層酸化機構が起こっている。そのために、界面の
rms が初期より大きくなっていると説明すること
ができる。
最先端超高集積回路では、1nm 程度の極薄シリ
コン酸化膜の使用が検討されている。そのような
極薄膜では、
たかだか数分子層程度の厚さであり、
1 分子分の増減が絶縁特性に大きく影響すること
から、熱酸化過程での原子・分子レベルでの挙動
を理解し、制御することが重要である。第一原理
計算および高真空中での実験で未酸化SiやSiOの
放出が予測されていたとは言え、実際の形成プロ
セス条件下で極薄膜の膜厚の均一性にどれだけ影
響をもたらすかを示したことは、大きな意義があ
る。特に、初期にわずかな領域ながら、凹凸が変
化しない膜厚領域があることは、高均一膜厚の極
39
薄シリコン酸化膜形成技術にとっては注目すべき
ことである。
S.Miyazaki, N.Umezawa, A.Hamid, T.Chikyow, T.Ohdaira,
M.Muramatsu, R.Suzuki, S.Inumiya, S.Kamiyama,
Y.Akasaka, Y.Nara and K.Yamada, "Characterization of
上記ように、原子レベルで、表面原子や酸化の
挙動を把握することを進めていくことによって、
ナノテクノロジーに一歩づつ近づいている。
HfSiON gate dielectrics using monoenergetic positron beams",
J.Appl.Phys., Vol.99 (2006) 054507.
6. N.Umezawa, K.Shiraishi, T.Ohno, M.Boero, H.Watanabe,
T.Chikyow, K.Torii, K.Yamabe, K.Yamada, and Y.Nara,
<学位論文>
"Unique behavior of f-centers in hight-k Hf-based oxides",
• 赤坂泰彦「高集積LSIにおけるMIS型FETの高性能ゲート
Physica B, 376-377, (2006) p392-394.
電極の研究」
(数理物質科学研究科 電子・物理工学専攻 博
士論文 2007年2月).
• 徳河唯「高電界ストレス印加下のシリコン酸化膜の劣化
7. Y.Akasaka, G.Nakamura, K.Shiraishi, N.Umezawa,
K.Yamabe, O.Ogawa, M.Lee, T.Amiaka T.Kasuya,
H.Watanabe, T.Chikyow, F.Ootsuka, Y.Nara and
分布の可視化」(数理物質科学研究科 電子・物理工学専攻
K.Nakamura, "Modified oxygen vacancy induced Fermi Level
修士論文 2007年3月).
pinning model extendable to P-metal pinning",
• 内藤達也「超高集積回路用高誘電率ゲート絶縁膜の電流
ステップ」(数理物質科学研究科 電子・物理工学専攻 修
士論文 2007年3月).
Jpn.J.Appl.Phys., Vol.45 (2006) pL1289-1292.
8. A.Uedono, K.Ikeuchi, T.Otsuka, K.Yamabe, K.Eguchi,
M.Takayanagi, S.Ishibashi, T.Ohdaira, M.Muramatsu, R.
Suzuki, "Vacancy-impurity complexes in polycrystalline Si
<論文>
used as gate electrodes of HfSiON-based
1. N.Tokuda, M.Nishizawa, K.Miki, S.Yamasaki, R.Hasunuma
metal-oxide-semiconductors probed using monoenergetic
and K.Yamabe, "Formation of Cu Nanowires on Atomically
Flattened Si(111) Surface Studied by Atomic Force
positron beams", J.Appl.Phys., Vol.100-034509 (2006).
9. A.Uedono, T.Naito, T.Otsuka, K.Shiraishi, K.Yamabe,
Microscopy and Fourier Transform Infrared Spectroscopy",
S.Miyazaki, H.Watanabe, N.Umezawa, T.Chikyow,
J.Jpn.Soc.Infrared Sci.Tec., Vol.15, 78-83 (2006).
Y.Akasaka, S.Kamiyama, Y.Nara, and K.Yamada,
2. A.Uedono, K.Ikeuchi, T.Otsuka, K.Yamabe, K.Eguchi,
"Introduction of defects into HfO2 gate dielectrics by
M.Takayanagi, T.Ohdaira, M.Muramatsu, R. Suzuki,
metal-gate deposition studied using x-ray photoelectron
A.S.Hamid and T.Chikyow, "Impact of nitridation on open
spectroscopy and positron annihilation", J.Appl.Phys.,
volumes in HfSiOx studied using monoenergetic positron
beams ", Appl. Phys. Lett. 88, 171912 (2006).
3. A.Uedono, K.Ikeuchi, T.Otsuka, K.Ito, K.Yamabe, M.Kohno,
Vol.100-064501 (2006).
10. J.Chen, T.Sekiguchi, N.Fukada, M.Takase, T.Chikyow,
K.Yamabe, R.Hasunuma, Y.Akasaka, S.Inumiya, Y.Nara and
T.Moriya, N.Okumura, T.Nakanishi, T.Arikado, T.Ohdaira,
K.Yamada, "Observation of leakage sites in a hafnium silicon
and R. Suzuki, "Open volumes in SiN films for strained Si
oxynitride gate dielectric of a metal-oxide-semiconductor
transistors probed using monoenergetic positron beams", Appl.
field-effect transistor device by electron-beam-induced current",
Phys. Lett. 88, 252107 (2006) (3 pages).
Appl.Phys.Lett. Vol.89 (2006) 222104.
4. T-W.Chiu, M.Tanabe, A.Uedono, R.Hasunuma and
K.Yamabe, "Study of Interactions of Hf and SiO2 Film for
<講演>
High-k Materials", Jpn.J.Appl.Phys., Vol. 45 No.8A (2006)
国際会議
6253-6255.
1. N.Umezawa, K.Shiraishi, H.Watanabe, K.Torii, Y.Akasaka,
5. A.Uedono, K.Ikeuchi, T.Otsuka, K.Shiraishi, K.Yamabe,
S.Inumiya, M.Boero, A.Uedono, S.Miyazaki, T.Ohno,
40
T.Chikyow, K.Yamabe, Y.Nara and K.Yamada, "Extensive
の影響"、
「極薄シリコン酸化膜の形成・評価・信頼性」、
Studies for the Effect of Nitrogen Incorporation into Hf-Based
2006年2月3,4日、p145-149、応用物理学会薄膜・表面物
High-k Gate Dielectrics", 209th ECS Meeting, May 7-12,
理分科会/シリコンテクノロジー分科会共催特別研究
Denver, Cororado, (2006).
会
2. A. Uedono, T. Naito, T. Otsuka, K. Shiraishi, K. Yamabe, S.
Miyazaki, H. Watanabe, N. Umezawa, T. Chikyow, Y.
2. 内藤 達也, 樋口 恵一, 蓮沼 隆, 山部 紀久夫, "3nm厚
HfAlOx膜の伝導と劣化"、
「極薄シリコン酸化膜の形成・
Akasaka, S. Kamiyama, Y. Nara, K. Yamada,
評価・信頼性」、 2006年2月3,4日、p227-232、応用物理
"Characterization of metal/high-k structures using a
学会薄膜・表面物理分科会/シリコンテクノロジー分科
monoenergetic positron beam", 2006 International Workshop
会共催特別研究会
on Dielectric Thin Films for Future ULSI Devices-Science and
3. 岡本純一、蓮沼隆、山部紀久夫, "極薄シリコン酸化膜に
Technology (IWDTF-06), The Japan Society of Applied
おける膜厚揺らぎがもたらす電気的特性ばらつき"、
「極
Physics, (2006) p.51-52.
薄シリコン酸化膜の形成・評価・信頼性」、 2006年2月
3. C.Tamura, T.Naito, S.Inumiya, R.Hasunuma, K.Yamabe;
"Dispersive dielectric characteristics of HfSiON with poly-Si
gate ---Dependence on nitrogen concentration of TDDB
3,4日、p329 - 334、応用物理学会薄膜・表面物理分科会
/シリコンテクノロジー分科会共催特別研究会
4. 上殿明良・大塚 崇・内藤達也・伊東健一・白石 賢二・
slope---", 2006 International Workshop on Dielectric Thin
山部紀久夫・宮崎誠一・梅澤直人・知京豊裕・大平俊行・
Films for Future ULSI Devices-Science and Technology
鈴木良一・犬宮誠治・神山 聡・奈良安雄・山田啓作, "
(IWDTF-06), The Japan Society of Applied Physics, (2006)
低速陽電子ビームを用いたhigh-kゲート絶縁膜の空隙の
p.99-100.
評価"、2006年6月21日, 第82回研究集会 表面・界面・シ
4. T.Naito, C.Tamura, S.Inumiya, R.Hasunuma, K.Yamabe,
"Dispersive dielectric characteristics of HfSiON with poly-Si
リコン材料研究委員会
5. 大毛利健治・Parhat Ahmet・白石賢二・渡部平司・赤坂
gate (2) –correlation of conduction and lifetime based on
泰志・吉武道子・K. S. Chang・M. L. Green・奈良安雄・
inhomogeneous defect distribution-", 2006 International
山部紀久夫・山田啓作・知京豊裕, "仕事関数変調金属を
Workshop on Dielectric Thin Films for Future ULSI
電極に用いたHigh-k絶縁膜キャパシタの電気的特性"、
Devices-Science and Technology (IWDTF-06), The Japan
2006年6月21日, 第82回研究集会 表面・界面・シリコン
Society of Applied Physics, (2006) p.101-102.
材料研究委員会
5. Y.Tokukawa, S.Okamoto, R.Hasunuma, K.Yamabe, M.Ogino,
6. 蓮沼 隆・内藤達也・犬宮誠治・山部紀久夫, "HfSiON膜
H.Kuribayashi, Y.Sugahara, "Visualization of Two-dimesional
の電気特性の窒素濃度依存性"、2006年6月21日, 第82回
Distribution of Dielectric Degradation by Stress Induced
研究集会 表面・界面・シリコン材料研究委員会
Surface Roughness of Tunnel Silicon Dioxide", 2006
7. 岡本純一,蓮沼 隆,山部紀久夫、「極薄シリコン酸化
International Workshop on Dielectric Thin Films for Future
膜表面・界面ラフネスと酸化温度」、2006年春季 第53
ULSI Devices-Science and Technology (IWDTF-06), The
回応用物理学会学術講演会、25a-P7-11
Japan Society of Applied Physics, (2006) p.117-118.
8. 内藤達也,樋口恵一,犬宮誠治,蓮沼 隆,山部紀久夫、
「HfSiON膜の経時絶縁破壊寿命の温度依存性」、2006
国内会議
1. 大毛利 健治, P. Ahmet, 白石 賢二, 渡部 平司, 赤坂 泰
年春季 第53回応用物理学会学術講演会、25p-V-19
9. 樋口恵一,内藤達也,犬宮誠治,蓮沼 隆,山部紀久夫、
志, 山部 紀久夫, K.-S. Chang, M. L. Green, 山田 啓作,
「HfSiONゲート絶縁膜のリーク電流と絶縁破壊特性の
知京 豊裕, "金属電極/high-k絶縁膜キャパシタのフラ
相関」、2006年春季 第53回応用物理学会学術講演会
ットバンド電圧特性に与える仕事関数変調及び熱処理
25p-V-18
41
10. 上殿明良,池内恒平,大塚 崇,白石賢二,山部紀久夫,
19. 染谷 満,田村知大,内藤達也,犬宮誠治,蓮沼 隆,山
宮崎誠一,梅澤直人,アブドゥルハミド,知京豊裕,大
部紀久夫、「HfSiON膜の表面および界面粗さの窒素濃
平俊行,村松 誠,鈴木良一,犬宮誠治,神山 聡,赤坂
度依存性」、2006年秋季 第67回応用物理学会学術講演
泰志,奈良安雄,山田啓作、「低速陽電子ビームを用い
会 30a-P5-27
たHfSiONゲート絶縁膜の空隙の評価」、2006年春季 第
53回応用物理学会学術講演会 25p-V-10
11. 徳田規夫,齊藤丈靖,梅沢 仁,山部紀久夫,山崎 聡,
20. 関口隆史,陳 君,高瀬雅美,深田直樹,梅澤直人,大
毛利健治,知京豊裕,蓮沼 隆,山部紀久夫,犬宮誠治,
奈良安雄、「EBIC法によるHfSiON MOSFETのリーク箇
大串秀世、「ダイヤモンド合成におけるボロン原子によ
所の観察」、2006年秋季 第67回応用物理学会学術講演
る表面平坦化効果」、2006年春季 第53回応用物理学会
会 30a-P5-9
学術講演会 23a-Q-1
12. Si(111)表面の原子ステップ制御、尾崎亮太、蓮沼隆、山
部紀久夫、アトミック/ポリスケールテクノロジー連携研
究会(8/、2006)
13. 大毛利健治,Parhat Ahmet,白石賢二,吉武道子,山部
21. 尾崎亮太,蓮沼 隆,山部紀久夫、「陽極酸化パターン
によるSi(111)表面の原子ステップフロー速度制御」、
2006年秋季 第67回応用物理学会学術講演会 29a-ZN-8
22. 徳田規夫,梅沢 仁,李 成奇,小倉政彦,山部紀久夫,
大串秀世,山崎 聡、「ステップフロー成長を用いたダ
紀久夫,渡部平司,赤坂泰志,奈良安雄,K.-S. Chang6,
イヤモンド(111)表面上へのステップフリー表面の形成」、
M.L. Green6,山田啓作,知京豊裕、「コンビナトリアル
2006年秋季 第67回応用物理学会学術講演会 29a-W-4
手法を用いた金属電極材料及びHigh-k絶縁膜の界面特
性制御」、2006年秋季 第67回応用物理学会学術講演会
30p-ZW-8
14. 山田啓作,山部紀久夫,知京豊裕、「SiO2からHigh-k絶
SEMI標準化
SEMI
M60-0305;”TEST
DEPENDENT
METHOD
DIELECTRIC
FOR
TIME
BREAKDOWN
縁膜の材料科学と界面物理」、2006年秋季 第67回応用
CHARACTERISTICS OF SiO2 FILMS FOR Si WAFER
物理学会学術講演会 30p-ZW-1
EVALUATION”.
15. 岡本真一,徳河 唯,蓮沼 隆,荻野正明,栗林 均,須
ヶ原紀之,山部紀久夫、「高電界印加後のシリコン酸化
膜中の損傷評価」、2006年秋季 第67回応用物理学会学
術講演会 31p-P12-28
16. 伊東健一,大塚 崇,上殿明良,山部紀久夫,鴻野真之,
守屋 剛,西田辰夫,奥村信夫,中西敏雄,有門経敏,
大平俊之,鈴木良一、「低速陽電子ビームを用いた歪み
SiN薄膜の自由体積評価」、2006年秋季 第67回応用物理
学会学術講演会 31p-P12-21
17. 内藤達也,田村知大,犬宮誠治,蓮沼 隆,山部紀久夫、
「高電圧ストレス下におけるHfSiON膜の絶縁特性劣化
(2)」、2006年秋季 第67回応用物理学会学術講演会
30a-P5-35
18. 田村知大,内藤達也,犬宮誠治,蓮沼 隆,山部紀久夫、
「高電圧ストレス下におけるHfSiON膜の絶縁特性劣化
(1)」、2006年秋季 第67回応用物理学会学術講演会
30a-P5-34
42
5.量子制御コア
専任教員:
大塚洋一(数理物質科学研究科物理学専攻・教授)
神田晶申(数理物質科学研究科物理学専攻・講師)
TIMS 機関研究員 渡辺学
アトミックテクノロジー研究員 下岸史明
大学院生 迫坪行広(学振特別研究員、数理物質研
究科 D5)
、森木拓也(M2 年)
、髙山尚(M2)
、坂
口勇也(M1)
、佐藤崇(M1)
、古堅亮(M1)
、新
山雄(M1)
量子制御コアでは、金属クラスター、カーボン
ナノチューブ、グラファイト超薄膜、微小超伝導
体、単原子接合や単分子接合など様々なメソ~ナ
ノスコピック構造の電子輸送現象を中心に研究を
行っている。アトミックテクノロジー推進事業で
は、大阪大学原子分子イオン理工学センター中谷
研究室とメカニカルブレーク接合(MBJ)法による
単分子伝導の実験法についての情報交換、東京理
科大学基礎工学部谷口研究室と微細加工技術の開
発とそれを利用した単分子計測に関する研究など
をスタートした。
【 1 】金属クラスター/アルミナ超薄膜構造の作
製とトンネル分光
昨年度に続き NiAl(110)基板上に成長するアル
ミナ超薄膜を基板として用い銅クラスターの電子
状態を調べ、試料調整法、測定法の改良を進めた
ことにより、準位の離散化に起因するスペクトル
の変化の観測に成功した。現在詳細な解析を進め
ている。
また並行してアルミナ超薄膜/ Ni3Al(111)に関す
る研究もおこなった。Ni3Al(111)基板上に成長する
アルミナ超薄膜は NiAl(110)の場合と比べ、膜上に
より多種の金属クラスターを成長させることが可
能であり、またクラスターは膜の長周期構造の決
まったサイトと強く結合すること、成長するクラ
スターのサイズを容易にコントロールできる等の
利点がある。これまでこの薄膜の性質は様々な方
法で調べられてきた。しかし詳細な電気的特性は
まだ明らかとなっておらず、この薄膜がトンネル
分光を行うに適した絶縁膜であることは確認され
ていない。金属クラスターの電子状態を調べる準
備段階として、この Ni3Al(111)上アルミナ超薄膜
の作製と詳細な電気的特性の評価をおこなった
(図1)
。各サイトにおいてフェルミ・エネルギー
以上に最低 2.0eV 程度のギャップが見られ、トン
ネルバリアとして利用可能であることが考えられ
る。また、各サイトのピークの位置が大きく異な
ることが分かった。この起源についてはまだ分か
っていない。さらに、アルミナ超薄膜上にCuを
蒸着した場合、クラスターは dot structure 上(図中
A)に配置することが確認された。クラスターの
トンネル分光を行った結果、二重トンネル接合に
特有なクーロン階段が観察され、このことにより
超薄膜がトンネルバリアとして働くことを確認し
た。
【 2 】ナノカーボン系の量子輸送現象
(1)多層カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ(CNT)は低次元系であ
D
り、エネルギー準位が離散的であるという特徴を
+3.2V
C
A B
+2.0V
持つため、通常の金属とは違った伝導現象が知ら
れている。我々は、まだ報告のない多層カーボン
ナノチューブ(MWNT)における超伝導近接効果
の観測を目指している。
図 1:
(左)Ni3Al(111)上アルミナ超薄膜 topo 像(14×
これまで行っていた窒化シリコンメンブレン法
14nm) Bias:+3.2V, +2.0V。A~C は超構造の特徴的 による試料作製法は、静電トラップ法により偶然
なサイト。D は A または B の欠陥構造。
電極間に橋渡しされた MWNT を試料に用いるた
(右)アルミナ超薄膜の各サイトにおけるdI/dV-V 曲線。
め、より抵抗値の低いと思われる MWNT を意図
43
的に選択し試料とすることはできない。また、下
部電極蒸着後は空気中で作業するため、下部電極
には酸化しない金属しか用いることができないと
いう問題点があった。そこで、これらを改善する
ため、新たな試料作製法を用いた。まず、基板上
に散布させた MWNT を SEM で観察し、比較的抵
抗値の低いと思われる MWNT を選択し、基板上
のマーカーを頼りに位置確認を行う。その後、電
子線リソグラフィープロセスを行い、MWNT 両
端に電極を接続させた。その際、MWNT と電極
とのコンタクトを良好にするため、電極蒸着直前
に真空装置内で電極と接触する部分の MWNT 表
面を Ar イオンシャワーによりクリーニングした。
電極金属には、Ti/Al を用いた。Ti は CNT とのコ
ンタクトが良好であり、Al は超伝導転移温度が比
較的高いという特徴を考慮した構造となっている。
このようにして作製した試料を低温で測定した
結果、窒化シリコンメンブレン法により作製した
試料に比べ、抵抗値が大幅に低減した(数 k 程
度)
。
しかし、
ゼロバイアス付近で抵抗値が上昇し、
超伝導近接効果を観測されなかった。ひとつの原
因として、MWNT 内の乱れが考えられる。そこ
で、MWNT 内層のナノチューブには比較的欠陥
が少ないという報告に基づき、MWNT 両端を酸
素プラズマによりエッチングし、電極と内層のナ
ノチューブとのコンタクトを可能にした。
しかし、
この試料においても超伝導近接効果は観測されな
かった。また、同時に合成したナノチューブでも
乱れの度合いにばらつきを持つという報告から、
多量の MWNT を並列に接続し、同時に測定する
ことも試みたが、この試料においても超伝導近接
効果は観測されなかった。
これらの結果より、
我々
の用いた多層カーボンナノチューブでは、ナノチ
ューブ内の乱れが伝導に大きな影響を及ぼしてい
ると推察できる。
(2)グラファイト超薄膜
近年はじめて単離されたグラファイト超薄膜を
用いたデバイス作製と伝導測定を行った。
図2.ナノグラファイト薄膜の Al 端子素子の電子
顕微鏡写真と著運伝導近接効果のゲート依存性。理
論的に指摘されている高いコヒーレンス性を、超伝
導近接効果の観察によって実験的に検証すること
に成功した。
原子 1~数層からなるグラファイト超薄膜は、
移動度の高さ、素子作製の自由度の高さにより新
たな 2 次元電子材料としての可能性を持つことに
注目し、電極作成技術・電極材料・低温コヒーレ
ント伝導を検討した。劈開したグラファイトを酸
化膜付低抵抗シリコン基板上に貼り付け、金属電
極(ソース-ドレイン電極)を取り付けて電気伝導特
性を調べた。仕事関数の違う種々の金属材料でソ
ース-ドレイン電極を作製しところ、いずれの材料
を用いてもゲート電圧に対して抵抗が極大を持つ
両極性型の特性を示し、抵抗を最大にするゲート
電圧には材料依存性が見られた。これは電極とグ
ラファイト薄膜間の電荷注入障壁の大きさを反映
していると考えられる。さらに電流注入障壁の改
善のため、アルゴンイオン照射の伝導に対する影
響を評価し、超薄膜グラファイトの加工ダメージ
を詳細に検討した。これらの結果を基にして、
100nm 以下のチャネル形成技術を確立することが
出来た。伝導のコヒーレント性を調べるために、
厚さが 5-10nm のグラファイト超薄膜に 500nm 間
隔で2つのAl超伝導電極を取り付け低温での電気
伝導特性を詳細に調べた。この結果、低温で超伝
導近接効果を観測し、近接効果によるコヒーレン
ト伝導がゲート電圧で変調可能であることがわか
った。超伝導電流の温度依存性から、グラファイ
ト超薄膜はクリーンリミット(平均自由行程>電
極間隔)の特性を持つことが初めて明らかとなっ
44
た。さらに、以下の新しい現象が観測された:①
ゼロバイアス近傍にて微分抵抗がピークを持つ、
②高ゲート電圧(電子伝導)と低ゲート電圧(ホ
ール伝導)における臨界電流の常伝導抵抗依存性
が異なる、③臨界電流と常伝導抵抗の積(IcRn 積)
がゲート電圧に依存する。今後、素子構造を工夫
することによって、
これらの現象の起源の解明し、
本材料の持つコヒーレント性を引き出した電子素
子の提案と実現を目指す。特にバリスティック性
を引き出し、高速で動作可能な薄膜トランジスタ
の提案へと発展させる。
【4】メゾスコピック超伝導
サイズが超伝導コヒーレンス長と同程度のメゾ
スコピック超伝導体では、超伝導電流の分布が試
料形状の影響を大きく受けるので、バルクとは異
なる超伝導状態が出現する可能性がある。
我々は、
multiple-small-tunnel-junction(MSTJ)法を用いて
メゾスコピック超伝導体の超伝導状態を調べてい
る。この方法は現時点で、複数個所の超伝導の強
さを比較することができる唯一の方法である。昨
年度は、この手法を用いて、超伝導リングについ
て 10 年来理論的に予測されてきた1次元渦糸状
態の観測に成功した。今年度は、ベルギー、ロシ
ア、イスラエルの理論家の協力のもと理論シミュ
レーションを行い、
理論・実験の良い一致を見た。
現在論文投稿中である。さらに、1 次元渦糸状態
の安定性を実験的に確認するために、穴が中心か
らずれている超伝導リングを多数作製し、フラク
ソイド状態間転移磁場の温度依存性を詳細に調べ
た。理論によれば、中心からの穴のずれが大きい
ほど 1 次元渦糸状態は安定化する。1 次元渦糸状
態があらわれたか否かは、フラクソイド状態間転
移が連続であるか否かで実験的に判断することが
できる。実験の結果、1 次元渦糸の安定性に関す
る理論予測を定性的に確認することができた。
メゾスコピック超伝導体に現れる新しい渦糸状
態のひとつに、
「反渦糸」がある。これは、渦糸状
態が試料形状の対称性を保つために生じる。例え
図 3: 白金-および白金・水素-ポイントコンタ
クトのコンダクタンスヒストグラム
ば、正方形試料で渦度が3の場合、4 個の渦糸が
頂点近傍に配置し中心に反渦糸がある状態が安定
化する。これまで、反渦糸の観測は実験的には困
難であるとされてきたが、試料に微細な孔を空け
ることで反渦糸の安定化するパラメータ範囲が広
がることがベルギーの理論グループによって本年
度明らかにされた。
この理論グループの協力を得、
反渦糸観測のための MSTJ 実験を開始した。
【 5 】MBJ 法による単分子伝導の研究
サブミクロン領域での微細加工の中心となる電
子線リソグラフィ法も 10nm 以下の構造を作るの
は容易ではなく、この限界を超えるために様々な
工夫が試みられている。我々もこれまでに、メッ
キ法、斜め蒸着法、無機レジスト法など 10nm 以
下の構造作製に向けた開発を行ってきた。これと
ともに、比較的容易に単分子や単原子など nm の
ナノ構造にアプローチできる方法として機械的破
断接合(Mechanically-Controlled Break Junction,
MCBJ)法がある。MCBJ は切り込みを入れた金
属細線を弾性体基板上に固定したのち、基板に曲
げ変形を加えて細線を破断するという方法であり、
変形の度合いを制御することで一度破断された細
線の間隔を pm レベルで制御しながら再接触させ
ることが可能である。類似の技術である走査型ト
ンネル顕微鏡 STM 等と比較して変位の自由度は
45
1次元に限られるものの、高い安定性を持つとい
う特徴をもつ。
これまでの微細加工による MBJ 用金試料に加
え、簡便なワイヤーを利用した試料作製作成法や
Pt や Nb などの試料作製、超伝導近接効果型の接
合試料などの開発を進めた。また、室温から2K
の間での実験を行うための専用クライオスタット
を作製した。これを用いて行った水素分子伝導の
予備実験の結果を図に示す。電極は白金であり、
白金のみの場合と水素分子を装置内に導入した場
合のコンダクタンスヒストグラムであり、水素の
導入によるヒストグラムの変化と Pt-H2 系での 1.0
G0 でのピークが観測された。後者は単一 H2 分子
によるブリッジが実現していることを示す。今後
は I-V 特性や機能性を有する分子の計測へと展開
する計画である。
論文、2007 年 3 月)
・ 髙山 尚:金属-半導体接合の作製と低温伝導測定 (数
理物質科学研究科、物理学専攻、修士論文、2007 年 3 月)
<論文>
1.
B. J. Baelus, A. Kanda, F. M. Peeters, Y. Ootuka, and K.
Kadowaki, "Different Temperature Dependence of the
Phase Boundary for Multivortex and Giant Vortex States in
Mesoscopic Superconductors", Proceedings of the 24th
International Conference on Low Temperature Physics, AIP
Conference Proceedings, Volume 850, 743-744 (2006).
2.
Hisao Miyazaki, Yamaguchi Takahide, Akinobu Kanda and
Youiti
Ootuka,
"Current-Phase
Relation
of
a
Well-Characterized Superconducting Atomic Point Contact",
Proceedings of the 24th International Conference on Low
Temperature Physics, AIP Conference Proceedings, Volume
850, 765-766 (2006).
【 6 】金属転移前後の Si:P のトンネル状態密度
アンダーソン局在の典型系である P を大量にド
ープしたシリコン(Si:P)についてトンネル分光
測定を行い、金属-絶縁体転移に伴う状態密度の変
化を調べ以下の知見を得た。(1)すべての試料につ
いてゼロバイアスでのコンダクタンスの減少が見
られた。(2)大局的な変化は Lee らによる現象論的
なスケーリング理論で理解できる。(3)局在状態の
クーロンギャップにおいて金属電極による遮蔽効
果による状態密度の変化を初めて観測した。さら
に個々の局在状態のトンネル分光を目指して
10nm 以下の微小接合を実現するための研究も進
めた。
なお、本研究に関連して、東京理科大学基礎工
学部谷口淳講師から spin-on glass (SOG)膜の微細
加工法について、また産総研原市聡研究員から熱
酸化 SiO2 膜の直接電子線加工法についてそれぞ
れ指導いただいたことを付記し感謝したい。
3.
A. Kanda, B. J. Baelus, F. M. Peeters, Kazuo Kadowaki, and
Youiti Ootuka, "Experimental Distinction Between Giant
Vortex
and
Multivortex
States
in
Mesoscopic
Superconductors", Proceedings of the 24th International
Conference on Low Temperature Physics, AIP Conference
Proceedings, Volume 850, 739-742 (2006).
4.
A.Kanda, N. Shimizu, K. Tadano, Y. Ootuka, B. J. Baelus, F.
M. Peeters, and K. Kadowaki, "Coalescence and
rearrangement of vortices in mesoscopic superconductors",
Proceedings of the 8th International Symposium on
Foundations of Quantum Mechanics in the Light of New
Technology (ISQM-TOKYO’05), pp 200-203 ( World
Scientific Publishing Co., Singapore, 2006).
5.
H. Miyazaki, A. Kanda and Y. Ootuka, "Simple and stable
control of metallic break junction for the study of
superconducting atomic point contact", Proceedings of the
8th International Symposium on Foundations of Quantum
Mechanics
in
the
Light
of
New
Technology
(ISQM-TOKYO’05), pp 216-219 ( World Scientific
<学位論文>
・ 森木拓也:グラファイト超薄膜/超伝導体接合の作製
と電気伝導測定(数理物質科学研究科、物理学専攻、修士
Publishing Co., Singapore, 2006).
6.
Y. Ootuka, H. Miyazaki and A. Kanda, "DC-SQUID ratchet
using atomic point contact", Proceedings of the 8th
46
International Symposium on Foundations of Quantum
Mechanics
7.
in
the
Light
of
New
Technology
Ootuka, Y. Aoyagi, K. Tsukagoshi, "Electron transport in
(ISQM-TOKYO’05), pp 208-211 ( World Scientific
thin graphite films: influence of microfabrication processes",
Publishing Co., Singapore, 2006)
Physica E in press.
A. Kanda, B. J. Baelus, N. Shimizu, K. Tadano, F. M.
on giant vortex and multivortex states in mesoscopic
<講演>
国際会議
superconductors", Physica C 437-438, 122-126 (2006).
1.
Peeters, K. Kadowaki, and Y. Ootuka, "Experimental study
8.
A. Kanda, M. Hayashi, Y. Ootuka, "Mesoscopic
A.Kanda, B. J. Baelus, N. Shimizu, K. Tadano, F. M. Peeters,
superconducting fluctuations in nanoscale rings", Nanoscale
K. Kadowaki, and Y. Ootuka, "Size Dependence of Vortex
Superconductivity and Magnetism 2006, July 6-8, 2006,
States in Mesoscopic Superconductors",
Leuven, Belgium.
Physica C
2.
445-448, 253-256 (2006).
9.
16. T. Moriki, A. Kanda, T. Sato, H. Miyazaki, S. Odaka, Y.
A. Kanda, "Quasi-one-dimensional vortex in mesoscopic
Hisao Miyazaki, Akinobu Kanda, Youiti Ootuka,
superconducting
"Current-phase relation of a superconducting quantum point
Mesoscopic Superconductivity and Magnetism (Invited)
contact", Physica C 437-438, 217-219 (2006).
(MesoSuperMag 2006), August 28 - September 1, 2006,
International
Workshop
on
Chicago, USA.
10. B.J. Baelus, A. Kanda, F.M. Peeters, Y. Ootuka, K.
Kadowaki, "Two kinds of vortex states in mesoscopic
rings",
3.
Y. Sakotsubo1, T. Ohgi, D. Fujita , Y. Ootuka
superconductors", Journal of Physics: Conference Series 43,
“CHEMICAL POTENTIAL OF METAL CLUSTERS
647-650 (2006).
BOUND TO BULK METAL THROUGH TUNNELING
11. B.J. Baelus, A. Kanda, N. Shimizu, K. Tadano, Y. Ootuka, K.
BARRIER”, 24th European Conference on Surface Science,
Kadowaki, and F. M. Peeters, "Multivortex and giant vortex
states near the expulsion and penetration fields in thin
ECOSS 24, Paris September 4-8 2006
4.
T. Ohgi, Y. Sakotsubo, D. Fujita , Y. Ootuka, “SINGLE
mesoscopic superconducting squares", Phys. Rev. B 73,
ELECTRON TUNNELING SPECTROSCOPY OF Cu
024514 (2006).
CLUSTERS GROWN ON ULTRATHIN Al2O3 LAYER
12. Takahide
Y,
Miyazaki
H,
Ootuka
ON NiAl(110)”, 24th European Conference on Surface
Y,
Science, ECOSS 24 (Paris, September 4-8 2006)
“Superconductor-insulator crossover in Josephson junction
arrays due to reduction from two to one dimension”, Phys.
5.
Rev. B 73 (2006) 224503 .
A. Kanda, B.J. Baelus, D.Y. Vodolazov, R. Furugen, Y.
Ootuka, F.M. Peeters, Experimental confirmation of
13. F. Shimogishi, J.P. Noh, Y. Idutsu and N. Otsuka,
anomalous
properties
of
vortices
in
mesoscopic
“Percolation transition via quantum point contacts in Be
superconducting rings with nonuniform width, 19th
delta-doped GaAs structures grown by molecular beam
International Symposium on Superconductivity (ISS2006),
epitaxy”, J. Crystal Growth 301-302, 2007, 666-670.
Oct. 30 - Nov. 1, 2006, Nagoya.
14. R. Furugen, A. Kanda, D.Y. Vodolazov, B.J. Baelus, Y.
6.
Y. Ootuka, Quantum Coherence in Nano-Superconducting
Ootuka, F.M. Peeters, "Fluxoid state transitions in
Structures, (invited 2 hour lecture), International Autumn
mesoscopic superconducting rings: effect of geometrical
Seminars on Nanoscience and Engineering for Young
symmetry", Physica C in press.
Scientists, Atagawa Heights, Higashi-izu, Kamo, Shizuoka,
15. B. J. Baelus, A. Kanda, D. Y. Vodolazov, Y. Ootuka, F. M.
Peeters, "Quasi-one-dimensional vortex in an asymmetric
supercodnucting ring, Physica C in press.
2006.11.27&28
7.
H.Miyazaki,
S.Odaka,
T.Moriki,
T.Sato,
A.Kanda,
K.Tsukagoshi, Y.Ootuka, and Y.Aoyagi, Gate-voltage
47
Dependence of Shortchannel Atomically Thin Graphite FET,
S.Odaka, K.Tsukagoshi and Y.Aoyagi, Electron transport in
The 2nd Annual IEEE International Conference on
ultra-thin graphite films, the First International Symposium
Nano/Micro
on Atomic Technology (ISAT-2007), つくば国際会議場,
Engineered
and
Molecular
Systems
(IEEE-NEMS), Bangkok, Thailand, January 16-19, 2007.
8.
2007.3.16
A. Kanda, T. Moriki, T. Sato, Y. Ootuka, H. Miyazaki, S.
16. Hisashi
takayama
and
Youiti
Ootuka,
Tunneling
Odaka, K Tsukagoshi, Y. Aoyagi, Electron transport in thin
spectroscopy of Si:P near the metal - insulator transition, the
graphite films: effect of microfabrication processes, Second
First International Symposium on Atomic Technology
International Symposium on Nanometer-Scale Quantum
(ISAT-2007), つくば国際会議場, 2007.3.16
Physics (nanoPHYS'07), Tokyo, January 24-26, 2007.
9.
A.Kanda, T.Moriki, T.Sato, H.Miyazaki, S.Odaka, Y.Ootuka,
国内会議
Y.Aoyagi,
1.
and
K.Tsukagoshi,
Proximity
induced
神田晶申、メゾスコピック超伝導体における新しい超
superconductivity in thin graphite films, The International
伝導状態の観測,第 24 回ナノサイエンスナノテクノ
Symposium “Trends in Nanoscience 2007“, Kloster Irsee,
ロジーセミナー、理化学研究所、2006 年 4 月 14 日
Germany, February 24-28, 2007.
10. Youiti
Ootuka,
Electrical
2.
transport
through
a
mesoscopic superconductors”, COE 研究会、2005 年 5
superconducting atomic point contact, the First International
Symposium on Atomic Technology (ISAT-2007), つくば
月 15 日、筑波大学
3.
国際会議場, 2007.3.17
大塚洋一, 量子機能プロジェクト, アトミックテクノ
ロジー創出事業発足記念シンポジウム(大阪大学銀杏
11. Yu Niiyama, Yukihiro Sakotsubo, Taizo Ohgi and Youiti
Ootuka, Tunneling spectroscopy for ultra-thin Al2O3 films
on Ni3Al(111),
神田晶申, “Size and shape dependence of vortex states in
会館, 2006.5.29)
4.
the First International Symposium on
アトミックテクノロジー創出事業スタートアップシ
Atomic Technology (ISAT-2007), つくば国際会議場,
2007.3.16
ンポジウム (筑波大学, 2006.6.12)
5.
12. Yukihiro Sakotsubo, Yu Niiyama, Taizo Ohgi and Youiti
神田晶申、メゾスコピック超伝導体における新しい超
伝導状態の観測,石橋極微デバイス工学研究室セミナ
Ootuka, Single-electron tunneling spectroscopy of Cu
clusters grown on ultrathin Al2O3 layer on NiAl(110), the
大塚洋一, アトミックテクノロジー創出事業:概要,
ー、理化学研究所、2006 年 9 月 6 日
6.
First International Symposium on Atomic Technology
新山雄、迫坪行広、大木泰造、大塚洋一, “アルミナ
超薄膜上金属微粒子のトンネル分光”, 日本物理学会
(ISAT-2007), つくば国際会議場, 2007.3.16
秋季大会, 2006 年 9 月 23 日~9 月 26 日(千葉大学)
13. Yuya Sakaguchi, Fumiaki Shimogishi, Manabu Watanabe
7.
神田晶申,
古堅亮,
B.J. Baelus,
D.Y. Vodolazov,
J. Berger,
and Youiti Ootuka, Measurement of the conductance of
大塚洋一,F.M. Peeters,メゾスコピック超伝導リングに
Pt-H2-Pt junctions using MCBJ method, the First
おける 1 次元渦糸状態の観測,日本物理学会 2006 年
International
秋季大会,2006 年 9 月 23-26 日、千葉大学。
Symposium
on
Atomic
Technology
(ISAT-2007), つくば国際会議場,2007.3.16
8.
14. R. Furugen, A. Kanda, B.J.Bealus, D.Y.Vodolazov, Y.
古堅亮,神田晶申,B. J. BaelusA,D. Y. VodolazovA,
J. BergerB,大塚洋一,F. M. PeetersA メゾスコピック
Ootuka and F.M. Peeters, Novel vortex states in mesoscopic
超伝導リングのリング線幅均一性と 1 次元渦糸状態,
superconducting rings, the First International Symposium on
日本物理学会 2006 年秋季大会,2006 年 9 月 23-26
Atomic Technology (ISAT-2007), つくば国際会議場,
日、千葉大学。
2007.3.16
15. T. Sato, T.Moriki, A.Kanda, Y. Ootuka, H.Miyazaki,
9.
高山尚,大木泰造,神田晶申,大塚洋一, 無機レジス
トを用いた縦型 SET の作製, 日本物理学会2006
48
年秋季大会, 千葉大学, 2006.9.25
10. 渡辺学,下岸史明,坂口勇也,神田晶申,大塚洋一,
MCBJ法を用いた微小SNS接合の作製, 日本物理学会
2006年秋季大会, 千葉大学, 2006.9.25
11. 下岸史明,渡辺学,坂口勇也,神田晶伸,大塚洋一, 超
伝導原子ポイントコンタクトの交流ジョセフソン効
果, 日本物理学会2006年秋季大会, 千葉大学,
2006.9.25
12. 森木拓也,佐藤崇,宮崎久生,小高隼介,神田晶申,
16. 高山尚,大塚洋一, M-I 転移近傍における Si:P のトン
ネル分光, 日本物理学会2007年春季大会, 鹿児島
大学, 2007.3.19
17. 坂口勇也,下岸史明,渡辺学,大塚洋一, MCBJ 法に
よる Pt-H2-Pt 接合の伝導測定, 日本物理学会20
07年春季大会, 鹿児島大学, 2007.3.20
18. 神田晶申,森木拓也,佐藤崇,宮崎久生,小高隼介,
大塚洋一,青柳克信,塚越一仁,グラファイト超薄膜
における超伝導近接効果とそのゲート制御,2007 年
塚越一仁,大塚洋一,青柳克信、グラファイト超薄膜
春季 第 54 回応用物理学関係連合講演会,青山学院大
の電気伝導の磁場・ゲート電圧依存性,日本物理学会
学 相模原キャンパス、2007 年 3 月 27-30 日。
2006 年秋季大会,2006 年 9 月 23-26 日、千葉大学。
13. 宮崎久生,小高隼介,森木拓也,佐藤崇,神田晶申,
19. 小高隼介,宮崎久生,森木拓也,佐藤崇,神田晶申,
塚越一仁,大塚洋一,青柳克信,微細加工によるグラ
塚越一仁,大塚洋一,青柳克信,グラファイト超薄膜
ファイト超薄膜素子作製,2007 年春季 第 54 回応用
/金属電極接合の電極依存性,日本物理学会 2006 年
物理学関係連合講演会,青山学院大学 相模原キャン
秋季大会,2006 年 9 月 23-26 日、千葉大学。
パス、2007 年 3 月 27-30 日
14. 佐藤崇,森木拓也,神田晶申,大塚洋一,超伝導体/
多層カーボンナノチューブ/超伝導体接合の作製と
電気伝導測定 II,日本物理学会 2006 年秋季大会,2006
年 9 月 23-26 日、千葉大学。
15. ァイト超薄膜-金属接合の電気伝導特性,日本物理学
会 2007 年春季大会,鹿児島大学、2007 年 3 月 18-21
日。
49
4.2 競争的資金獲得状況
予算額
予算区分
種目
研 究 課 題
研究者
科学研究費
補助金
特定領域
動的錯体による応答性配位空間
の創出と機能の多段階制御
鍋島達弥
1,900
特定領域
金属錯体超分子の創製と分子
認識・外部刺激応答機能
鍋島達弥
7,300
特定領域
応答性高分子錯体による超階層
構造の制御と機能変換系の構築
鍋島達弥
1,400
若手(B)
不斉情報の書き込み・読み出し・
変換・増幅・消去が可能なメタロヘ
リセンの合成
秋根茂久
2,800
(財)池谷科学学
技術振興財団
ジピロメテンユニットを用いた超分
子システムの構築
池田忠作
550
基盤(A)
バイオフロンティア界面の創成によ
るナノバイオマテリアルの設計
長崎幸夫
21,970
若手(B)
核酸の光機能化に基づく新規バイ
オセンサーの開発と細胞分析基板
技術への応用
吉本敬太郎
1,100
受託研究費
JST 戦略的創造
研究推進事業
マルチ機能性高分子の精密合成
と革新的製造技術の確立
長崎幸夫
(分担者)
1,950
受託研究費
JST 戦略的創造
研究推進事業
ナノ構造デバイス構築のための高
分子設計に関する研究
長崎幸夫
(分担者)
11,000
共同研究費
NEDO 大学発事
業創出実用化研
究開発事業
各種固形癌を治療するために有
用性の高い創薬の開発
長崎幸夫
(分担者)
25,000
共同研究費
住友ベークライト
ポリエチレングリコール化表面の研
究開発
長崎幸夫
500
奨学寄付金
化学素材研究開
発振興財団記念
基金「グラント」
「ナノ酵素分散体の創成と機能材
料への展開」
長崎幸夫
500
奨学寄付金
細胞科学研究財
団研究助成
「siRNA のピンポイントデリバリーを
可能とする高分子ナノ組織体の創
製」
大石基
科学研究費
補助金
科学研究費
補助金
科学研究費
補助金
奨学寄付金
科学研究費
補助金
科学研究費
補助金
(千円)
3,000
50
発蛍光型水素結合性核酸塩基認
識試薬を利用する高性能遺伝子
変異検出用マイクロチップ
吉本敬太郎
400
シリコン酸化膜に関する研究
山部紀久夫
500
高誘電率ゲート絶縁膜の信頼性
物理の研究
山部紀久夫
500
半導体絶縁材料の信頼性評価
山部紀久夫
500
半導体先端
テクノロジーズ㈱
高誘電率ゲート絶縁膜の高信頼
化に関する研究
山部紀久夫
795.5
共同研究費
半導体先端
テクノロジーズ㈱
高誘電率ゲート絶縁膜の高信頼
化に関する研究
山部紀久夫
2,780
共同研究費
東京エレクトロン
㈱
シリコン酸化膜に関する研究
山部紀久夫
5,250
共同研究費
東北大学
電気通信研究所
ナノ構造形成プロセスと新機能半
導体デバイスへの応用に関する研
究
山部紀久夫
240
特定領域
固定電極にリンクしたナノスケール
導体の電気伝導特性
大塚洋一
神田晶申
28,400
基盤B
メゾスコピック超伝導体における新
しい渦糸状態
神田晶申
5,300
萌芽
多層カーボンナノチューブにおけ
るバリスティック伝導の解明
神田晶申
900
基盤A
ナノ薄膜層状伝導システムの創生
とコヒーレント伝導制御(分担)
神田晶申
14,000
CREST
面内伝導システム基礎伝導
神田晶申
3,000
奨学寄付金
筑波大学
学内プロジェクト
(若手)
奨学寄附金
㈱富士電機
奨学寄附金
㈱東芝
セミコンダクター
奨学寄附金
JSR㈱
奨学寄附金
科学研究費
補助金
科学研究費
補助金
科学研究費
補助金
科学研究費
補助金
受託研究費
51
4.3 共同研究実績
相 手 先
大阪大学
原子分子イオン理工
学研究センター
東京理科大学
ポリスケールテクノロジ
ー研究センター
フロリダ大学化学科
出光興産㈱
出光興産㈱
期 間
内
容
2006.4~
アトミックテクノロジー創出事業
2006.4~
アトミックテクノロジー創出事業
1999~
2005.10.1~
2006.9.30
2005.10.1~
2006.9.30
液晶性エレクトロクロミック材料の開発
アダマンタンをコアとする有機金属錯体超分子材料
の開発
アダマンタンの高い対称性と剛直性を基盤とする高
次構造材料の開発
東京大学
2001~
非ウイルスベクターに関する研究
九州大学
2001~
核酸医薬キャリアに関する研究
北海道大学
2001~
DDS 用 PEG 化リポソームに関する研究
日産化学(株)
2003~
発光粒子の創成に関する研究
住友ベークライト(株)
2003~2006
バイオ基材表面に関する研究
東京理科大学
2005~
バイオイメージング材料の創成に関する研究
東京理科大学
2005~
遺伝子工学による高度バイオセンシング表面の構築
に関する研究
小山高専
2005~
酵素固定化ナノ粒子の設計と評価に関する研究
愛知学泉大学
2005~
生体アミンのカラム分離に関する研究
大阪大学
2006~
東京理科大学
2006~
大阪大学
2006~
早稲田大学
2005~
理化学研究所
(塚越一仁)
筑波大(門脇和男)
アントワープ大
(F.M.Peeters)
2005~
2004~
2004~
誘電体分離型低温プラズマによるナノ粒子設計とバ
イオインターフェースの構築に関する研究
プラズモンセンサーに関する複合体の設計と評価に
関する研究
誘電体分離型低温プラズマによるナノ粒子設計とバ
イオインターフェースの構築に関する研究
カスタムナノ造形・デバイス評価支援事業にかかる
共同研究契約
ナノスケール導体の電気伝導に関する研究
学振先端研究拠点事業「超伝導ナノサイエンスと応
用」
メゾスコピック超伝導体に関する研究
52
4.4 各種授賞
受賞者
賞
受賞理由
受賞年月日
星野裕樹、吉本敬
太郎、木村隆一郎、
千葉 丈、長崎幸夫
第 17 回日本 MRS 学
術シンポジウム
ポスター賞
優秀ポスター発表による
題 目 : "Construction of
His6-Protein
A/PEG
Co-Immobilized Surface for
High- Performance Protein
Sensing"
2006.12.22
石川博子
First International
Symposium on Atomic
Technology
(ISAT-2007)
ポスター賞
“Preparation of stable enzyme
for bio-material
with high
dispersion stability”
2007.3.17
増渕小百合
〃
古堅亮
〃
“Multi-Step Regulation of
Anion Recognition Abilities by
Using
Redox-Responding
Pseudocryptands
Bearing
Assembled Urea Moieties”
“Novel Vortex States in
Mesoscopic Superconducting
Rings”
2007.3.17
2007.3.17
4.5 各種活動:学会活動・各種委員など
氏
名
役職など
組
織
任
期
鍋島達弥
部会委員(幹事)
社団法人日本化学会
生体機能関連化学部会
2005.3~
鍋島達弥
日本化学会英文速報誌編
集委員
社団法人日本化学会
2005.3~
鍋島達弥
評議員
財団法人化学・バイオつくば財
団
2005.4~
鍋島達弥
評議員
社団法人有機合成化学協会
2004.12~
鍋島達弥
関東支部幹事
社団法人有機合成化学協会
2000.4~
鍋島達弥
幹事
ホストゲスト超分子研究会
2006.1~
長崎幸夫
評議員
日本バイオマテリアル学会
2002~
長崎幸夫
日本化学会英文速報誌
編集委員
日本化学会
2004~
53
electric Journal of
Soft Materials 編集委員
ナノロジーアスペクト・
長崎プロジェクト プロジェ
クトリーダー
長崎幸夫
日本ゴム協会
2005~
筑波大学
先端学際領域研究センター
2006~
世話人
高分子学会茨城地区若手会
2006~
山部紀久夫
委員
日本学術振興会第 145 委員会
1999 年~
山部紀久夫
GOI-TF リーダー
SEMI 国際スタンダード委員会
シリコンウェーハ委員会
1996 年~
山部紀久夫
評議委員
応用物理学会
1996 年~
山部紀久夫
幹事
山部紀久夫
諮問委員
山部紀久夫
組織委員長
山部紀久夫
運営委員長
山部紀久夫
特許出願技術動向調査—
半導体洗浄技術—委員
特許庁
2006 年~
大塚洋一
領域4領域代表
日本物理学会
2005.10~
2006.9
大塚洋一
J.Phys.Soc.Jpn.編集委員
日本物理学会
2004.9~2006.8
長崎幸夫
大石 基
応用物理学会
薄膜表面物理分科会
応用物理学会
シリコンテクノロジー分科会
2006 IWDTF
(International
Workshop on Dielectric Thin
Films for Future ULSI Devices
-Science and Technology-)
第 12 回「ゲートスタック研究会−
材料・プロセス・評価の物理−
1996 年~
1996 年~
2006
2006 年~
4.6 新聞報道・特記事項他
日 付
新聞・雑誌名
報道内容
2007.1
“ナノテクのためのバイオ入門
(ナノテクノロジー入門シリー
ズ)”、日本表面化学会編(荻野
俊郎、宇理須 恒雄)、共立出
版、東京、2007 年
書籍の表紙絵に採用される
内田勝美、長崎幸夫、“DNA チップ、遺伝子診断
技術”
54
2007.3.13
Polymer Journal
(日本高分子学会)
投稿論文「Lipase-Catalyzed Selective Synthesis
and Micellization of Poly(ethylene glycol)-blockpoly(ε-caprolactone) Copolymer Possessing a
Carboxylic Acid Group at the PEG Chain End」が
表紙絵に採用される。(2007), 39(3), 239-244.
55
56
{裏表紙}
平成 18 年度年報
筑波大学学際物質科学研究センター
Tsukuba Research Center for Interdisciplinary Materials Science (TIMS)
〒305-8573
茨城県つくば市天王台 1-1-1
University of Tsukuba, 1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki 305-8573, Japan
URL: http://www.tims.tsukuba.ac.jp/
Phone: 029-853-4028 (担当事務)
Fax: 029-853-6305
57