書き込み式 「効率的勉強法」 のすすめ

第
書き込み式
「効率的勉強法」
のすすめ
勉強法を間違えると、時間の浪費となってしまいます。
そこで、
まず、
「効率的勉強法」について考えます。
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1「効率的勉強法」とは何か――総論編
★「省くべき無駄とは何か」を意識して勉強する
★目標がはっきりしていないと、効率的にはなれない
★サブノート作りは「勉強」ではなく「作業」である
★合格者、成功者の体験談や勉強法を鵜呑みにしない
★作業時間と勉強時間を分けて考える
★成功者のものまねがスキルアップの第一歩
★好き嫌いではなく、損得で考え実行する
★人まねから、自分の勝ちパターンを作る
★「多回転勉強法」という勝ちパターン
★記憶の衰えは回転数でカバーすればよい
★少ない時間でいかに回転数を増やせるか
★「情報集中」の原則とは、テキストに書き込むこと
★「よく出題される問題=重要な問題」ではない
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2「効率的勉強法」とは何か――経済学編
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★そもそも経済学やビジネス書がわからない原因は何か
★資格試験に必要な経済の勉強法とは
★ビジネスに必要な経済の勉強法とは
コラム
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数学が苦手だと経済は理解できない!?
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章
1
「効率的勉強法」とは何か
――総論編
「省くべき無駄とは何か」を意識して勉強する
経済学とは「現実経済を分析する学問」ですが、そもそも限りある資
源をいかに無駄なく利用するかという「効率」を考える学問なのです。
ですから、ここでは、ちょっと「効率」の意味にこだわって、「効率的
勉強法」について考えたいと思います。
まず、「効率的勉強法」といったときの「効率的」とは何かを知る必
要があります。「効率的」とは、「投入したもの、つまりインプットした
ものに対して、比較的、成果、つまりアウトプットが大きいこと」を言
います。とすると、何をインプットとして投入して、何をアウトプット
としてカウントするかを考える必要があります。この話は後ほど詳述す
るとして、要するに、一言で言えば「効率的=無駄を省く」ということ
です。
ですから、本当に「効率的」に勉強しようと思ったならば、省くべき
「無駄が何なのか」を明確に意識しなければ、無駄を省くことができま
せん。「そんなことはわかっている!」と言う人もいるでしょうが、抽
象的なイメージとして無駄を省かなければいけないということはわかっ
ていても、省くべき無駄とは具体的に何かを明確に意識していないため、
結局、無駄な勉強・作業を続けている人が多いのです。したがって、
「効率的勉強法」は、「省くべき無駄とは何か」ということを明確に意識
する勉強法であるということが、第一のポイントとなります。
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第1章 書き込み式「効率的勉強法」のすすめ
目標がはっきりしていないと、効率的にはなれない
何らかの勉強をするときには、いろいろな労力とか時間を投入して成
果を得るわけですが、その出てきた成果、つまりアウトプットが、自分
が目指している目標と関連性があるかどうかという問題が、「効率性」
という場合には重要です。
例えば、時間をかけてノートを作ったあるいは単語カードを作ったと
すると、確かに、時間をかければノートや単語カードという具体的な成
果は出てきます。しかし、いくらすばらしいノートや単語カードを作っ
ても、それを理解・暗記し、マスターしなければ、資格試験や公務員試
験などには合格できない、あるいは、自分の身にはつかない、そして仕
事にも活きないでしょう。つまり、最終的に自分の目標、例えば、試験
に受かって何かをしたい、あるいは、マスターして仕事でスキルアップ
をしたいということが目標であるならば、あくまでも、その最終的な目
標を達成する上で、今やっていることがどれだけ関連しているかを考え
ることが重要です。
つまり、効率的というとき、アウトプットに対してインプットという
形に考えますが、アウトプットを表面的な、例えば、ノートを作る、あ
るいは単語帳を作る、ということにしてしまうとそれだけで終わってし
まって、最終的な本当の目標が実現できないというおそれがあります。
ですから、効率性の判断のためインプットとアウトプットを比較する
ときには、アウトプットとして出てきたものが、「(最終的な)自分の本
当にやりたいこと」「最終的な目標」にどれだけ関係していくか、とい
うことをチェックしていくことも重要になります。
その意味では、「目標がはっきりしていないと、効率的にはなれない」
と言うこともできます。
そして、最終目標を着実に実現するために、多くの場合には中間目標
を作り、進捗状況をチェックします。つまり、何かをしたい、そのため
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にはこの知識を身につけなければならない、そのためには、例えば、今
日1日何時間勉強しようと目標を立てます。もちろん、何時間勉強する
かは最終的な目標ではありません。勉強すればたぶん理解力がついてく
るであろうというものです。しかし、その勉強がだらだらしてしまうと、
図表1−1 ■ 勉強における「効率性」とは何か
関連性が重要
(中間目標)
インプット
アウトプット
勉強
投入
目標
達成
結果
例えば
例えば
例えば
・テキストを2回 ・理解できるよう
読む
になる
・問 題 集 の 6 割 ・専門知識を得て、
を正解する
仕事に活かす
・試験に合格する
・勉強時間
・お金
インプットの割にアウトプットが多い=効率的
インプット
アウトプット
投入
結果
要するに「
無駄がない
効率的に勉強するには
」ということ
無駄を省けばよい
省くべき無駄が何かわかっているか!?
具体的に対策を考えて、実行してるか!?
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第1章 書き込み式「効率的勉強法」のすすめ
理解力はつきません。となれば、勉強時間だけにこだわるのは意味がな
いというわけです。ですから、こういうときには必ず、勉強時間だけで
はなく、理解力をチェックできるような仕組みを作っておかないとまず
いということになります。
サブノート作りは「勉強」ではなく「作業」である
では、次に「具体的な勉強方法」の話題の最初として、サブノートに
ついてお話ししたいと思います。ここでは、「サブノートというのは本
当に効率がよいのだろうか」ということについて考えてみましょう。
サブノートを作る勉強方法と、既存の本に自分なりの加筆・修正を加
える方法の2つを比較しながら考えることにしましょう。まず、サブノ
ートのメリットは愛着が持てるということが挙げられます。また、自分
で書くわけですから、表現が非常にわかりやすく馴染みやすいでしょう。
これに対して、既存の本(テキスト)は表現が馴染みにくいという欠点
が挙げられると思います。
しかし、サブノートは欠点もあります。それは、逆にテキストの長所
になるわけですが、サブノートは自分で作るわけですので間違いが多い
ということです。もし、自分が作ったノートのほうが通常の本より間違
いが少ないのであれば、その人は専門家レベルということになります。
本を読んで勉強しなければならない、あるいはサブノートを作らなけれ
ばならないという人が書いたものは、本以上に正確なものができるわけ
はありません。
次に、特に時間がない中でいろいろなことをマスターしなければなら
ないというときに、サブノート作りは非常に時間がかかります。ですか
ら、少なくとも時間がない受験生には、決定的な問題が残るわけです。
そこを整理すると、図表1−2のようにサブノート、テキスト書き込み
には一長一短があるということになります。
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さて、図表1−2を冷静に検討すると、サブノートを作る意味はあま
りないのではないかという気がします。それにもかかわらず、多くの人
がサブノートを作るのは、おそらく、サブノートを作ったときの達成感
が大きな要因となっているのではないかと思います。「サブノートが完
成した」
「勉強した」と満足し、達成感を感じるのです。
図表1−2 ■ サブノートとテキスト書き込みの比較
サブノート
テキスト書き込み
読みやすさ
○
×
正確性
×
○
×
○
時間
致命的
達成感
◎
△
しかし、目的実現には
貢献しない
総合評価
×
もちろん、サブノートを作るときに、わからないところをきちんと調
べて、集中して作るという場合にはそれなりの効果はあると思いますが、
多くの場合は途中でだらだらしてただ書き写すだけ、となってしまうの
ではないでしょうか。それでは、ほとんど意味はないのです。ただ「達
成感」を求めるというだけであれば、何もサブノートを作る必要はなく、
写経でもすればよいということになってしまいます。
もっとも私は、書くことは意味がないと言っているわけではありませ
ん。むしろ、書くという作業は非常に重要だと思っています。つまり、
書くという行為で暗記することができますし、逆に言えば、暗記をする
ためには書かなければならないと言えるかもしれません。しかし、それ
は、サブノートを作るということではなくて、ある程度理解をして、し
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第1章 書き込み式「効率的勉強法」のすすめ
かも直前にきちんと記憶をしたいという段階でするものであって、初期
の段階でサブノートを作るというのとは別の話です。
以上の理由より、私は、サブノートはあまりオススメしません。もち
ろん、完成度の高いテキストが存在しないという学問であれば、サブノ
ートを作る意味はあると思います。しかし、そのような特殊な事情がな
く、標準的なテキストがあるならば、テキストに書き加える方法が「効
率的」であると考えられますので、その方法をおすすめします。
合格者、成功者の体験談や勉強法を鵜呑みにしない
さて、サブノートは効率という観点からはおすすめできない理由を説
明しましたが、サブノート作成のように「時間がかかる作業」について
は必ず、その方法が効率的であるのか、もっと短時間で効果を上げる方
法はないのかを慎重に検討する必要があります。
サブノートが1日や2日できるというのであれば、作っても構いませ
ん。なぜなら、それが無駄になってしまったとしても1日や2日の時間
のロスですみますので、大きな痛手にはならないからです。ところが、
何カ月もかけて作るというような大きな作業であれば、大した効果がな
かった場合の時間のロスは非常に大きくなるのですから、当然、効率性
について考える必要性は高まります。具体的な方法としては、本当にそ
れが有効なのだろうか自分で考える、また情報収集するために、そのこ
とをよく知っている経験者に聞いてみるということが必要になるでしょ
う。
では、次に、経験者に話を聞くということについて考えてみましょう。
例えば、試験であれば合格者に聞く、あるいは仕事であればよくできる
人に聞くということになろうかと思います。自分が目指している目標を
すでに実現している人をまねるということは、非常に一般的で、効果の
ある方法だと思います。しかし、ここで注意しなければならないことが
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2つあります。
まず、合格者とか先輩が自分の状況と同じであるかどうかを見極める
必要があります。つまり、状況が違う人の話を聞いても、そのまま自分
に取り入れることはできません。必ず、自分の状況と同じなのか、違っ
た場合には、自分の状況においてはそのやり方は有効かと考える必要が
あります。
また、話を聞く際にはポイントがあります。それは、成功者の話は、
3つのパターンに分かれるということです。1つ目は、真実を淡々と話
してくれるパターン。この人は一番いいのですが、2つ目のパターンが
「非常に勉強した」「死ぬほど勉強したんだ」と努力を誇張して言う人。
3番目のパターンが、「何も勉強しなかった」と努力を少なめに言う人。
このパターンは、生来控えめな人と、言外に、「勉強していないけれど、
頭がよいから受かった」とアピールしたい人に分類できます。
このように3パターンに分かれますので、話を聞いても、その人がい
図表1−3 ■ 成功者の話を聞くときのポイント
1.
成功者と自分の状況は同じなのか、違う場合は、自分の状況に合わせて考える。
2.
成功者の話には3つのパターンがある。どのパターンなのか、特徴をつかん
で判断をする。
パターン1
真実を淡々と話す人
パターン2
努力を誇張する人
パターン3
努力を少なめに言う人
複数の人の話を聞くことにより
判断力をつける+リスク分散
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第1章 書き込み式「効率的勉強法」のすすめ
ったいどのパターンなのか、見極める必要が出てきます。とはいっても、
それは難しいでしょうから、やはり、複数の人から聞いて、自分なりに
イメージをつかむのが一番よいと思います。
作業時間と勉強時間を分けて考える
先ほどサブノートは作らず、テキストを加工したほうがよいという話
をしましたが、今度は、このサブノートを作るとか単語帳を作成するこ
となどを「作業」と考えて、勉強とは考えないようにするという提案を
します。つまり、1日何時間という目標を決めて勉強するときに必ず、
作業時間と勉強時間は分けて考えてほしいということです。
例えば、サブノート作成の場合。しばらく作成していると頭がボーッ
として、そうなると、ただサブノートに写し書きをするだけになってし
まうでしょう。しかし、そのような状態でも、5時間も6時間も続ける
と勉強した気になってしまうのです。つまり、時間だけはたつので、勉
強時間を稼いだつもりになってしまうのです。しかし、当然のことなが
ら、ボーッと写しているだけでは、基本的には理解力は上がりません。
サブノートとか単語帳の作成とかいったものは、むしろ単純な作業で
あり、それに時間をかけただけで成果が上がるものではありません。作
業は、所要時間が短いほどよいわけですから、これを勉強時間に入れて、
時間をかけたことを高く評価してはいけなのです。
ですから、多くの時間を費やすことが望ましい勉強と、少ない時間で
行ったほうがよい作業は分けて考え、勉強時間は何時間、作業時間は何
時間と別々に決めるべきなのです。そして、その日の勉強時間が増える
ようにするには、作業時間を短くしようというインセンティブ、動機付
けが働くわけです。つまり、何か自分で計画を立てるときには、無駄を
省くようなシステムを作ることが重要になるのです。
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図表1−4 ■ 無駄を省くような動機付けを組み込んだ「勉強」システムを作る
・勉強と作業の分離
=勉強時間の中に、作業時間を入れない
いくら作業したとしても勉強時間は増えない
その日の勉強時間の目標を達成するためには、
作業時間を削ったほうが得
作業時間を減らす工夫をする=作業効率がよくなる
成功者のものまねがスキルアップの第一歩
「成功者の話を聞く」「合格者の話を聞く」という話を前にしましたが、
やはり、最初は、成功した人のものまねから入るのが効率的です。仕事
でもそうですが、仕事ができる人のものまねをすることは非常に有効で
す。もちろん、自分にはできることとできないことがありますが、「あ
の人のやり方はすばらしい」「自分でもできそうだ」と思ったら、自分
の能力を考えながら、どんどん取り入れていくことが必要です。ものま
ねが、やり方、スキルを上げていく基本だと言ってもいいでしょう。で
すから、この本を読まれている人は、この本のここが使えるなと思った
ら基本的にはものまねをしていくということがスキルアップの第一歩に
なると思います。
これは経済学の講師としてたくさんの受講生を指導した私の経験なの
ですが、やはり、上達が早い人というのは、よいと思ったことをすぐに
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