改正パートタイム労働法が施行されます!

<2015.4 月号> 株式会社フォーラムジャパン
東京都千代田区神田小川町 3-20 第 2 龍名館ビル 6F
改正パートタイム労働法が施行されます!
平成 27 年 4 月 1 日から、パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるようにする
ため、パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)や施行規則、パートタイム労働
指針が変わりました。FJ ニュース 1 月号「2015 年の労働法制改正動向は?」で概要をお伝えしましたが、今
月号では詳細情報をお届けします。
パートタイム労働者とは?
◆
パートタイム労働法の対象となるパートタイム労働者(短時間労働者)とは、
「1 週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用
される通常の労働者の 1 週間の所定労働時間に比べて短い労働者」のことです。
◆
「パートタイム」
「アルバイト」
「嘱託」
「臨時社員」
「準社員」など、呼び方は異なっていても、上記の条件に当てはまれば、
「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
◆
フルタイムで働く人は、
「パート」などのような名称で呼ばれていてもパートタイム労働法の対象とはなりませんが、事業主
はこれらの人についてもパートタイム労働法の趣旨を考慮する必要があります。
主な改正のポイント
1.パートタイム労働者の公正な待遇の確保
①正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大(法第9条)
②「短時間労働者の待遇の原則」の新設(法第8条)
③職務の内容に密接に関連して支払われる通勤手当は均衡確保の努力義務の対象に(施行規則第3条)
2.パートタイム労働者の納得性を高めるための措置
①パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設(法第14条第1項)
②説明を求めたことによる不利益取扱いの禁止(指針第3条の3の2)
③パートタイム労働者からの相談に対応するための体制整備の義務の新設(法第16条)
④相談窓口の周知(法第16条)
⑤親族の葬儀などのために勤務しなかったことを理由とする解雇などについて(指針第3の3の3)
3.パートタイム労働法の実効性を確保するための規定の新設
①厚生労働大臣の勧告に従わない事業主の公表制度の新設(法第18条第2項)
②虚偽の報告などをした事業主に対する過料の新設(法第30条)
改正パート労働法の要点(Q&A)
Q1.差別が禁止されるパート労働者の範囲が拡大されるそうですが、現行とどう変わるのでしょうか?
A.現行のパートタイム労働法では、正社員と差別的取扱いが禁止されるパート労働者の範囲は、
①職務の内容が正社員と同一、②人材活用の仕組みが正社員と同一、③無期労働契約を締結している、という要件
によって判断され、有期労働契約を締結している労働者は、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」の範囲に
含まれていませんでした。今回の改正で、①、②が同じであれば、有期労働契約を締結している労働者でも「通常
の労働者と同視すべき短時間労働者」に該当し、差別的取扱いが禁止されることになります。
<施行までに準備すること>
現在在籍する有期労働契約の従業員それぞれについて、職務内容、人材活用の仕組みがどのようになっているか
を調査し、通常の労働者と同一といえる状態にあるか否かをしっかり認識することをファーストステップとして行
う必要があります。
Q2.今回のパート労働法の改正では、文書で明示すべき労働条件が
増えたそうですが、何が加えられたのでしょうか?
A.労働基準法では、事業主は、労働契約の締結に際し、労働者に
対して賃金、労働時間その他の労働条件(安全衛生に関する事項や
休職に関する事項など)を明示することが義務付けられており、
特に賃金や労働時間に関する事項については、明示方法として書面の
交付に限定されています(労基法第 15 条第 1 項)。
今回のパート労働法改正では、それに加え、
「相談窓口」の明示が
新たに加えられました。「相談窓口」とは、労働者からの苦情などの
相談の受付先であり、法 16 条に基づき相談のための体制として整備
することとされているものであって、組織であるか個人であるかは
問わないとされています。そのうえで、
「相談窓口」として明示する
内容としては、相談担当者の氏名、相談担当者の役職、相談担当部署
などが考えられます。
行政通達では、この「相談窓口」について、雇入れ時の明示のほかに、事業所内でパートタイム労働者が
通常目にすることができる場所に設置されている掲示等により広く周知することが望ましいとしています。
Q3.改正法では、パートタイム労働者の雇入れ時の説明義務が新設されましたが、具体的に何を説明
しなければならないのでしょうか?
A.今回の改正法では、パートタイム労働者の納得性をさらに高めるため、事業主はパートタイム労働者を雇
入れたとき(初めて雇入れたときだけでなく、労働契約の更新時も含む)には、速やかに、当該パートタイム
労働者に対し、一定の事項について説明しなければならないとしています。
雇入れたときに説明しなければならないのは、①通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者について、
パートタイム労働者であることを理由に賃金の決定等で通常の労働者との差別的取扱いをしないこと、②賃金
の決定方法(例えば、職務の内容、職務の成果等のうち、どの要素を勘案した、どのような賃金制度となって
いるかなど)
、③教育訓練の実施があればその内容、④福利厚生施設を利用できるのであればその内容、⑤通常
の労働者への転換を推進するための措置の内容といった事項です。
説明方法は、雇入れたときに、個々の労働者に説明を行うほか、雇入れ時の説明会等で複数のパート労働者
に同時に説明を行うことも可能です。
Q4.「職務の内容に密接に関連して支払われる」通勤手当とはどういうものですか?
A.パートタイム労働者は一般に、昇給が最低賃金の改定に応じて決定されるなど、働き方や貢献とは関係の
ない要素で賃金が決定されることが多く見られます。そのため、パート労働法は、事業主に対して、①通常の
労働者と同視すべきパートタイム労働者に対する差別的取扱いを禁止する(改正法第 9 条)ほか、②それ以外のパ
ートタイム労働者の賃金を改定するにあたっては、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、当該パートタイム労
働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験などを勘案するよう努めることを求めています(改正法第 10 条)。
②の努力義務で対象とされている賃金としては、基本給や精皆勤手当等が考えられますが、他方で、通勤手当
(他に退職手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当等(※施行規則第3条 ))については、対象となる
賃金から除外されています。
通勤手当が除外されているのは、通勤手当が一般的な意味では、実費弁償としての性格を持ち、職務の内容
や成果等に応じて支給の有無や支給額が決定されるのではないからです。
しかし、
「通勤手当」という名称で支給されている手当であっても、職務の内容に密接に関連して支払われる
賃金となっている場合があります。具体的には、実際に通勤に要する交通費等の有無やその額とは無関係に一
律に支給されるなど、通勤手当が実費弁償としての性格を持たない場合もあります。この場合には、
「通勤手当」
という名称の手当てであっても基本給などと性格が変わらないことになり、今回の法改正では、通勤手当のう
ち「職務の内容に密接に関連して支払われるもの」については、改正法第 10 条の対象になることが明確化され
ました。
つまり、
「職務の内容に密接に関連して支払われる」通勤手当とは、実際に通勤に要する交通費等の有無やそ
の額とは無関係に一律に支給される通勤手当などを指します。