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平成 24 年 6 月 11 日
山本 忠通 アフガニスタン・パキスタン支援担当特命全権大使
殿
拝啓
山本大使におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
アフガニスタンの石油、ガス、鉱物セクターが、これから 10 年間にかけて同国の安定の
ため果たす重要な役割についてご注意を喚起させていただきたく、またそのために本年 7 月
に東京で開催されるアフガニスタン復興支援国際会議(東京会議)において本件についてお
力添えいただきたく、お手紙を差し上げております。 適正管理と有効な公的監視があれば、
資源採掘産業はアフガニスタンにおいて重要な経済的推進力となり得ます。この分野で活動
する NGO として、私達は、アフガニスタンの市民全員に恩恵が与えられ、人間開発を促進
し、同国の財政的主権の確立に貢献する発展産業の基礎を強化するために東京会議は極めて
重要な機会だと考えております。
コンゴ民主共和国、カンボジア、イラク、リビア、シエラ・レオネなど他の資源国の経験
から、資源採掘は、国内にある紛争、汚職、環境劣化、失業、そして貧困の状況を悪化させ
る可能性があることがわかります。よってアフガニスタンにおける鉱物資源に対する入札者
の増加のペースをかんがみると、上記のような状況に対する監視や規制のキャパシティー不
足は、重大な懸念事項です。
鉱物、宝石、土地、木材は、ソビエト侵攻時代、そして後には数十年の内戦の間、主要な
戦争の資金源でした。今日アフガニスタンの多くの鉱山は密輸組織と内乱軍ネットワークに
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よって利用され続けています。 鉱山活動を規制するべき国家のキャパシティーが脆弱であ
ることはまた、土地、水、そして人々の生活への権利が認められないといった現地における
不満を増幅します。国際治安支援部隊の独自の調査によれば、こうした現地における不満が、
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内乱を支持する主要な推進力となっています。 アフガニスタンにおけるこうした歴史的背
景と現在の状況を鑑みれば、同国における鉱山セクターの開発のペース、スケールそしてそ
れに対するアプローチは、状況によっては同国の安定と将来的な経済成長へのリスクを増加
させる可能性があります。
この主要な収益源となるセクターの開発は、統治と監視システムの改善を伴うことが必要
です。政府と国際開発機関は、ボンにおいて国際的ベストプラクティス、透明性、説明責任
という項目について、ハイレベルな政治的コミットメントを約束しており、また米国‐アフ
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ガニスタン戦略パートナーシップ協定からも、上記はすでに認識されたものとなっています。
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米国‐アフガニスタン協定が強調するように、国際社会とその代理機関 の役割は「国際的
ベストプラクティスに基づきそれを超えるような、説明責任を果たし効率的かつ効果的な透
明性の高い枠組みを通して天然資源を統治するアフガニスタンの努力」を支援することです。
これは賞賛に値する象徴的な声明ですが、経過観察と国際的支援を必要とします。東京会議
は、国際社会がアフガニスタン政府と共同で次のことを行う機会です:
 採掘セクターの開発について、透明性、説明責任、国際的ベストプラクティスを核とする
必要性を認める既存の文言を承認する。
 相互説明責任を共有する枠組みを採掘セクターに設ける。この枠組みには、上記の基準に
対する特定の、測定可能で時間制限のある実行ベンチマークを含む。それに対する進捗を
定期的にモニタリングし、結果は公表する。
アフガニスタンにおける採掘セクターの統治能力の改善をアフガニスタン内外で支持する
者として、私達は上記のようなベンチマークを作成する技術的過程において政府と開発機関
を支援したいと考えます。そのために私達は東京会議で作成される相互説明責任を果たす枠
組みの手引きとなる「採掘セクターにおけるグッド・ガバナンスの四つの主要目標」を提案
いたします(添付)。
ボンにおける会議で発言されたように、「我々の共通目標は、安全かつ繁栄した地域の中
心に位置する、すべてのアフガニスタン人にとって平和と約束に満ちた故郷としてのアフガ
ニスタンであり、また、再び国際テロリズムの巣となることのない、独立国家として正当な
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位置を得ることのできるアフガニスタンです」。 今日、アフガニスタンの鉱物セクターは
大きな変化を迎えようとしていますが、我々は、過去 30 年間の内戦におけるその軍資金と
してのルーツを忘れることなく、十分なセーフガードが作成されるようにしなければなりま
せん。よって、アフガニスタンと国際社会はともに、東京会議においてこの国家の貴重な財
産が平和と発展に貢献することを確実にするための確固たるベンチマークに合意することが
非常に重要です。
上記の共通目標に向け、大使のご協力をいただけるよう願っております。
敬具
Yama Torabi
Director
Integrity Watch
Afghanistan
Gavin Hayman
Director of Campaigns
Global Witness
Karin Lissakers
President
Revenue Watch Institute
Elizabeth Winter
Special Adviser on Policy
British & Irish Agencies
Afghanistan Group (BAAG)
Paul van den Berg
Chairman
European Network of
NGOs in Afghanistan
(ENNA)
Eric Ramirez-Ferrero
Secretary General
Norwegian Afghanistan
Committee (NAC)
Marinke van Riet
International Director
Publish What You Pay
Anwar Jamili
Country Director
Equal Access Afghanistan
Seema Ghani
Chair of Board
Khorosan Charity
Najla Ayubi
Country Director
Open Society Afghanistan
Organization
Marion Regina Mueller
Country Representative
Heinrich Böll Stiftung,
Afghanistan
Aziz Rafi
Director
Afghanistan civil society
forum
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アフガニスタンの採掘セクターにおける
グッド・ガバナンスの四つの主要目標
下記に記載する目標は、アフガニスタンの採掘業界における透明性とビジネス・プラクティ
スの改善を推進する国内外の市民グループによって、東京会議後、アフガニスタン政府とそ
のパートナーである国際機関による相互に説明責任を果たす枠組みの形成を導き支援するた
めに作成されたものである。これらの目標は、特定の、測定可能で、達成できる見込みがあ
り、現実的かつ時間制限のある採掘業界のためのガバナンス指標の基礎を形成すべきである。
(また、プロセスベースの改革を伴うべきである。さらに、東京会議で採択される文書にこ
れらの目標は統合されるべきであると我々は考える。アフガニスタンにおける現実と採掘セ
クターの開発状態を鑑みると、目標達成に向けての取組に持続可能なアプローチを取る場合、
特に初期においては採掘権及び採掘契約について、透明性と説明責任を優先事項とすべきと
考えられる。一方ですべての目標の進行的な実現に向けたベンチマークの形成が必要となる
であろう。
ここに掲げる目標は、アフガニスタンの石油・採掘セクターにおける収益管理及び契約の透
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明性に特化している現段階の焦点をさらに進めたものである。これらは既存の国際基準 や広
範囲にわたる業界のベストプラクティス、さらにはアフガニスタン独自の経験に基づいて作
成されている。
「透明性」及び「説明責任」は、採掘セクターの政策の分野横断的な原則である。加えて、
「コミュニティの能力強化」、「社会・環境上の悪影響の最小化」、「プロジェクトサイト
の安全」といった分野は、アフガニスタンの状況を考えると特に注意が必要な分野である。
1. アフガニスタンの採掘セクターを統治する、説明責任を果たし効率的かつ効果的な透明
性の高い枠組みの構築と強化
石油、ガス、鉱物資源の管理において透明性を確保することは、汚職を減少させ国内資源
の可動化を促進し、採掘収入の発展的利用に関する合意を形成するのに役立つ。鉱物資源
は公的財産であり、その利用に関する決定においては、法規制への準拠を立法者や市民が
モニタリングできるよう、また彼らに代わって結ばれた契約の質を評価できるよう、透明
性を確保しなければならない。またこの場合、資源利用の決定からそれにより得た収益の
使用までといった、バリューチェーン全体にわたり透明性を確保することが重要である。
さらにそうした透明性の確保には、必要とされる特定機関による権力の抑制と均衡(チェ
ックとバランス)が伴っていなければならない。アフガニスタン政府は:

天然資源のライセンスや権利に関わる規制をすべて公的データベースとして入手可
能にし、財政条件、所有権、社会・文化・環境上の保護措置、開発地の回復、ロー
カルコンテンツ要求等を含む、明確な定義や説明を提供する。

全ての将来及び過去の新規公開株と公募増資の文書、事前に資格を授与された企業、
落札された/されなかった入札、契約、企業の受益株主の身元とともに、技術・環
境・経済上の影響調査と作業計画などその他企業と交わされた契約を含む、各採掘
権の条件に関する情報をできる限り公にする。

採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を通し、また、予算及び予算外の割当への貢献
についての定期報告を通して資源に関連する収益について定期的で詳細な報告書を
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発行する。EITI の報告書は現在の国際的ベストプラクティス に沿ったものとし、ま
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た、新たな展開に対応できるよう進行的に報告書の範囲を拡大する。

将来の鉱山資金計画を完全な技術評価とパブリックコンサルテーションに基づかせ
る。鉱山資金は、すべての取引において、明確で統一した規則、目的、統治構造を
持ち、透明性を確保し説明責任を果たすものとする。
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
コミュニティレベルにおける企業の社会的投資が地方開発計画に沿ったものであり
地方統治構造を飛び越していないことを確実にする。

天然資源セクターの監視に、国会議員、市民社会、メディアが、定期的にかつ自由
に参加できるようにする。これには組織的な議会でのヒアリングやパブリックヒア
リングを含むものとし、また、契約のモニタリングにおける市民社会の関与の土台
を形成することを含む(特に環境・社会上の側面において)。

定期的に政府が採掘セクターの透明性を確保できているかをモニタリングし、段階
的に収益監視指標(RWI)などの指標におけるアフガニスタンの評価を改善する。
2. 意思決定において意味のある参加を可能にするコミュニティ能力を強化する
市民には、自らの生活に影響を与える決定において、知らされる権利と選択する権利があ
る。現地のコミュニティの懸念を統合し意思決定における意味のある参加を可能にするこ
とを怠ることは、不満を増長し、究極的にはプロジェクトの持続可能性を損なうことにな
る。アフガニスタン政府、特に鉱山省は:

契約に署名がなされるより以前に、また、鉱山の閉山を含めプロジェクトの存続期
間中を通して、現地コミュニティとともに、自由で事前の、十分な情報を与えられ
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た上での合意 を義務化し、計画し、そのための予算を組む。すべての利益とコスト
について理解できるよう、コミュニティは専門家の助言、訓練及び能力構築の提供
を受ける。

各プロジェクトにおけるいかなる意思決定または監視メカニズムにおいても、女性
や若者を含む、現地コミュニティによる表明及び意味のある参加を確実にする。

警備隊や企業組織に対する苦情、またその他の現地における懸念を軽減できるよう、
信頼性の高い迅速な方法で是正できるよう、コミュニティに十分でアクセス可能な
手段が与えられることを確実にする。
3. 社会・環境上の悪影響を最小化する
採取を行うか否かの決定において、政府は社会、性、文化、環境上の影響を考慮し、これ
らを収益によって得られる利益と比較しなければならない。場合によっては、また場所に
よっては、プロジェクト開発の制限や禁止、あるいはミティゲーション戦略を作成するの
が適切である。例えば、国内外における環境上、文化上、考古学上重要とされる地域、あ
るいは農業、漁業、水路としてまたは先住民族にとって特別な価値のある地域などである。
アフガニスタン政府は:

主要な採掘権を与えるより以前に、探査及び開発が安全性、環境、人権、現地経済、
文化に与える影響について独立評価を行う。影響を受ける人々が十分に情報提供さ
れるように、その結果は発行し、現地コミュニティを含めるレベルでパブリックヒ
アリングが開催されるべきである。

影響及びコスト評価と政府能力の評価を検討し、決定とその理由の両方を公表する。
4. プロジェクトサイトの警備態勢が人権及び法を尊重することを確実にすること
プロジェクトの警備態勢、特に採掘業界におけるそれは、人権を侵害したり侵略的行動に
出ることがある。こうしたプロジェクトは、競合する派閥間で資源管理への競争が起こっ
た場合、汚職や犯罪、さらには紛争につながることがある。よってこのセクターの警備を
行う者に対する特定の監視及び規制が必要である。アフガニスタン政府は:
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
鉱山活動及びその人員の保護のための政策が、安全と人権に関する自主原則などの
認識された国際的ベストプラクティスのガイドラインを反映することを確実にする
こと。

鉱山セクターの安全性に、軍隊の参加をさせないこと。アフガニスタン政府はその
投資契約の一環として鉱山サイトおよびパイプラインを保護する責任があるが、で
きる限りにおいて、軍隊にそれを行わせるのは避けるべきである。軍隊は鉱山と周
辺コミュニティを反乱のための標的とみなし暴力が増加する可能性がある。警備責
任は、武力の行使についてアフガニスタンの民法・刑法の規定のもと完全に説明責
任を果たす義務のある、訓練されたアフガニスタン国家警察(ANP)ユニットが引
き続き行うべきである。

鉱山活動及び関連する村落に関する暴力の原因、源、度合を記録し定期的に発表す
るための、信頼できる独立第三者の監視するメカニズムを設立する。
上記の提言を支持するために、国際社会は:

政府、司法、議会、メディア、市民社会が上記目標を達成できるよう、適切な、信
頼できる、多年度にわたる継続した資金と訓練を提供する。

国際援助透明性イニシアティブ基準に沿って資金に関する情報を公表する。

政府の鉱物管理能力(入札プロセス、契約交渉など)の独立評価を促進し、特定さ
れたニーズと政府の優先事項に従い、技術支援及び能力構築支援を提供する。

契約の入札過程において鉱山省を支援する国際アドバイザリー委員会が、予期され
る及び決定した天然資源に関するライセンスの割当について、定期的で迅速な公的
報告をまとめることを検討する。

市民社会への技術・財政上の支援と自国の企業の十分な参加を通して、EITI を支援
する。

オークション及び競合的入札を支援し、それを超えた政府間の取引によりそれを阻
害しないようにする。

当該セクターの国際的ベストプラクティス に基づき採掘企業の活動及び情報公開に
関する前進的な基準を推進する。

RWI 指標などのツールを使用して当該セクターの透明性へのコミットメントの進捗
をモニタリングする。
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1
Afghanistan’s Conflict Minerals: The Crime-State-Insurgent Nexus - Matthew DuPee, 14/05/12 –
http://www.ctc.usma.edu/posts/afghanistans-conflict-minerals-the-crime-state-insurgent-nexus – 2012 年 3 月 23 日付。
2
ISAF Reintegration guide – 22/10/10 – Force Reintegration Cell HQ ISAF. Alistair Corbett による Force
Reintegration Cell – ISAF HQ – の発表中にもある。2012 年 3 月 5 日、ロンドン。
3
US – Afghanistan Strategic Partnership Agreement – 09/05/2012 –2 条(d) –
http://photos.state.gov/libraries/afghanistan/231771/PDFs/2012-05-01-scan-of-spa-english.pdf - 2012 年 5 月 12 日付。
ボンにおける国際アフガニスタン会議– 結論第 23 項 – 2011 年 12 月 5 日 。
http://eeas.europa.eu/afghanistan/docs/2011_11_conclusions_bonn_en.pdf – 2012 年 5 月 14 日付。
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特に、鉱山セクターの開発に資金を拠出した、米国(特に国際開発庁及び防衛省のビジネス及び安定化事業タスク
フォース)、英国(国際開発省)、ドイツ、ノルウェー、日本など DNATO 加盟国の開発担当省が投資促進におい
て果たす役割は重要である。
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ボンにおける国際アフガニスタン会議– 結論第 23 項 – 2011 年 12 月 5 日 。
http://eeas.europa.eu/afghanistan/docs/2011_11_conclusions_bonn_en.pdf –2012 年 5 月 14 日付。
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6
これには、天然資源憲章、国連難民高等弁務官事務所の企業と人権に関する指導原則、収益監視指標(RWI)、国
際通貨基金(IMF)の資源収入の透明性に関する指針、安全と人権に関する自主原則、採取産業透明性イニシアティ
ブ、国際金融公社(IFC)の持続性フレームワーク、国際金属・鉱業評議会(ICMM)の持続可能な開発の原則、国
際法曹協会(IBA)が作成中のモデル鉱業開発契約書、 国際影響評価学会(IAIA)のガイドライン及び原則、国際労
働機関(ILO)条約 169 号、経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業ガイドライン、OEDC の紛争鉱物サプライチ
ェーンに関するデューディリジェンス原則、その他がある。
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これには次のような必要条件が含まれる:定期的な年次報告;セクターの適切な範囲をカバーするのに適当な具体
性のレベルを設定する、すべてのデータはデータの信頼性を確保するため国際会計/監査基準を使用する;現物支給
などを含む各種の支払方法を認める;不一致についての詳細な説明を提供する;これについては国営企業からの収
入フローを範囲に含む;鉱物、企業、収益源、プロジェクトの各分野を分離する;使用する為替レート、政府が受
け取ったあるいは売却した製品の価格、商品の参考価格などきちんと定義された条件を提供する;また、すべての
国家言語で発行されることを確実にする。参考:What Makes a Good EITI Report? Revenue Watch Institute
2011 http://data.revenuewatch.org/eiti/about.php#goodreport
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パッケージ/物々交換取決、商品担保ローン、社会的またはコミュニティー支払及び地方支払。
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自由で事前の、十分な情報を与えられたコンサルテーションについては、赤道原則を参照。
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