2020年ビジョン - COOP

2020年ビジョン ∼ わが生協の展開
寄
稿
連
載
「人と人をつなぎ、生きるを支える」
の実践を通じて
地域に貢献できる生協をつくる
とう ぐ しんいち
ユーコープ事業連合 理事長
當具伸一氏
全国の地域購買生協の“10年後にありたい姿”を示す『日本の生協の2020年ビジョン』。このビジ
ョンを各会員生協のトップ・幹部はどう読み解き、具体的な事業や活動に展開していくのか? 今
回は、ユーコープ事業連合※理事長の當具伸一氏にご寄稿いただいた。
いま、なぜビジョンなのか?
『日本の生協の2020年ビジョン』(以下、「2020年ビジョン」)では、
「いま、なぜビジョンなのか」という章で、「協同組合の役割発揮」
「組合員のくらしのきびしさ」「生協事業のくらしへの役立ち」「い
まこそ、あらたなビジョンを掲げよう」という4つのキーワードを
挙げています。
これは言い換えれば、「20年までの10年間は地域購買生協にとっ
當具伸一 氏
て社会の期待に応えて大きく発展を遂げる」のか、「厳しい競争に
負け、昔生協というものがあったという記念碑が建っている状態に
なる」のかの、大きな分岐点になる10年だと考えています。
そして10年後にどちらの姿になっているのかは、環境のせいでは
なく、生協で働く一人ひとり、そして生協に集う一人ひとりの主体
的な努力いかんにかかっていると決意をしています。そういう意味
で「2020年ビジョン」は、その検討・策定のプロセスで多くの組合
員や役職員のご意見もいただきながら大変苦労してつくり上げてき
ましたが、いわば今が出発点です。
「2020年ビジョン」を道しるべに、全国各地の生協で多彩で豊か
な実践が取り組まれなければ、まさしく「絵に描いた餅」になって
しまいます。この実践を通じて、「10年後のありたい姿」をぜひ実
現したいと思っていますし、また微力ながらユーコープグループと
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※ コープかながわ、コ
ープしずおか、市民生協
やまなし、うらがCO-OP、
全日本海員生協、富士フ
イルム生協が加盟。組合
員総数187万人、総供給
高2,056億円(2010年度)。
してその一翼を担いたいと決意をしているところです。
独自の問題意識も踏まえて作成された
4生協の「2020年ビジョン」
コープかながわ・コープしずおか・市民生協やまなし・ユーコー
プ事業連合(以下、4生協)では「2020年ビジョン」づくりと並行
して、4生協の「2020年ビジョン」(以下、「ビジョン」)づくりを、
将来を担う30代の若手職員で検討チームをつくり、進めてきました。
チームとしてのビジョン案がまとまり、理事会に答申をし、現在、
理事会の責任で組合員・職員議論を始めているところです。
この時期に4生協で「ビジョン」をつくる意味は、「2020年ビジ
ョン」づくりと共通の問題意識に加え、4生協独自の問題意識もあ
りました。それは、
(1)これまで4生協では共通の理念(人−社会−自然の調和ある平
和な社会づくりに貢献する)はありましたが、これはいわば100年
ビジョンで、これと3カ年の中期計画をつなぐものが必要であった
こと。
(2)コープかながわ・コープしずおか・市民生協やまなしの組織合
同の検討を進める上で、もう一度グループとしてどんな生協になっ
ていたいか、具体像をはっきりさせる必要があったこと。
(3)社会や全国の生協の仲間にご迷惑をお掛けした、「店内加工品
ロースカツの不適切な取り扱い」の反省に立ち、「働いている職員
が何のために働いているのか」の軸を、あらためてはっきりさせる
必要があること。
以上のような背景がありました。
そのために、まず、「協同組合原則」−「グループ理念」−「倫
理綱領」−「ビジョン」−「経営改革5カ年プラン」(後述)−
「中期計画」−「年度経営方針」の関係を整理しました(p.122・資
料1参照)。
生協運営資料 2011.11
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「人と人をつなぎ、生きるを支える」ことが
私たちに求められていると考えています
その上で、「2020年ビジョン∼私たちのありたい姿∼」として
「人と人をつなぎ、生きるを支える」を「ビジョン」(案)としまし
た(資料2参照)
。
10年後、20年後の社会は少子高齢化と人口減少に加え、単身世帯
の増加などで、地域や家族との疎遠・孤独など、従来の家族や地域
社会が担ってきた「支えあい」の希薄化が大きな問題になると予想
されます。このため地域や世代を超えてコミュニケーションやネッ
トワークの再構築が重要な課題になると思われます。人は一人で生
きていけるものではありません。人々はさまざまな「力」を持って
います。私たちの持つ多様なネットワークによって、その力を必要
とする人、必要とされる人の間で広く生かすことができるようにし、
一人ひとりの生きる喜びを創出する−
−−こうした「人と人をつなぎ、
生きるを支える」ことが私たちに求められていると考えます。
資料2
生協運営資料 2011.11
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日々、行動の意義と意味合いを確かめ合いながら、生協の原点で
ある基本的価値を大切に、一歩ずつ行動し、私たち一人ひとりが主
体的に「目指す姿」を実現するため、この「ビジョン」を掲げます。
その「道しるべ」としてのビジョン実現に向けた「3つの柱」を
掲げました。
1.私たちは一つ一つの行動の積み重ねを通じて「コープがあっ
てよかった」という存在になります。
2.私たちは安定した剰余を確保し、将来にわたって存続し続けます。
3.私たちは誇りと自信を持って、コープに集い、コープで働きます。
ビジョンの「3つの柱」に込めた思い
1.は、いわば地球的視野で考え、足元から行動するといった意
味合いです。最初から「社会貢献をする」と大上段に振りかぶるの
ではなく、日々の仕事の積み重ね、例えば、店舗では、キャベツ4
分の1、精肉80gパック、99円の惣菜といった品ぞろえが毎日、き
ちんとできているのか。そういうことの積み重ねが地域社会への貢
献につながり、「みるくぼきん」(コープの牛乳を1リットル利用さ
れると1円がアフリカの子どもたちに募金される取り組み)を通じ
て世界とつながる。そういったことを大切にしたいということです。
2.は、「事業の存続を柱にしていいのか」と議論になりました。
しかしながら、生協にとって事業を通じて組合員や地域社会に貢献
するという役割は大変大きく、事業がずっと存続するということが、
ある意味最大の社会貢献だと考えました。そして、変化する組合
員・消費者の期待に応え続けていくためにも健全な経営体質をつく
ることが必要です。そのため、あえて柱の1つとして掲げました。
3.は、「コープに集う組合員がコープの組合員であることに誇り
が持てる」「コープで働く全ての人がコープで働いていることに誇
りを持てる」−−−これが私たちの目指す理想の組織の姿です。また、
このことが実現でき、地域社会の中のいろいろな組織から、「コー
プのようになろうよ」「コープのように運営しようよ」といってい
ただけるようになれば、これはコープ最大の社会的影響力の発揮だ
と思っています。
組合員の期待に応え続けていくために
「経営改革5カ年プラン」を作成中です
そして、10年後の私たちのありたい姿を実現するためにも、経営
再建は待ったなしの課題です。10年度のコープかながわとコープし
ずおか、市民生協やまなし、ユーコープ事業連合の累計経常剰余は
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ほぼ0です。このままではビジョンの実現はおぼつきません。この
5年間でなんとしても購買事業で1.5%以上の剰余率を実現するた
めに、現在いくつかの柱に沿って、「経営改革5カ年プラン」を作
成中です。ビジョンと併せて、現在討議中で、3月の理事会で議決
をし、総代会で報告できるように準備を進めています。
このプランの柱は、(1)店舗事業の改革(減収増益)、(2)宅配事
業の改革(増収増益、利益率の改善)、(3)本部コストの削減、(4)
連帯戦略の推進、(5)未来開発です。なお、経営改革5カ年プラン
はビジョンの現実的な基盤づくりとなります。
足元をしっかり見つめながら
未来に向かってはばたきたい
2012年は国際協同組合年です。これまでになく協同組合という仕
組みに対して、社会的な期待が高まっています。その一方で、流通
業をめぐる生き残りをかけた競争はますます激しくなっています。
目の前の厳しさから逃げることなく、だからといって視線は高く持
ち続けることが必要です。これからの競争でホームランはありませ
ん。誰もができることを誰よりも一生懸命、誰よりもずっとやり続
けられるか。また、組合員の気持ちに寄り添い、愚直に努力し続け
られるか。そんな組織をつくることができるか。私たちの未来はそ
のことにかかっていると思います。やることはみんな分かっていま
す。あとはみんなでやり続けられるかです。
4生協の「ビジョン」の3つの柱は、全て、「私たちは∼します」
という表現になっています。これには、「ビジョンは誰かがつくっ
て、誰かがやるものではなく、私たち一人ひとりがつくり、実践す
るものだ」という思いを込めています。そして、それぞれの事業所
ごとに10年後になっていたい姿をつくろうと呼び掛けています。
「毎年の事業所の事業計画や毎日の仕事に、ビジョンが生きてい
る」−
−
−このような状態を早くつくりたいと思っています。
4生協の「ビジョン」を通した新しい生協づくりが少しでも全国
の仲間の皆さんの参考になるよう、微力ではありますが頑張ってい
きたいと決意をしています。
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