パールレース賞杯の由来について

平成23年
7月28日
パールレース賞杯の由来について
(第 52 回パールレース前夜祭における説明)
JPN4010 Nadja
白崎 謙太郎
鳥羽レースは、近年お亡くなりになられた土井
悦さんらが提唱されて始められました。
土井さんは戦争直後からのヨットマンで、1960年代には「舵」にユーモアあふれるエッセ
イを連載され、古いヨットマンにはおなじみの方で、NORC の創設メンバーのお一人でした。
その土井さんが京都の繊維関係のお仕事をされていた井上
という横山
正春さんの「フルールブルー」
晃さん設計の25フィートJOGで確か横浜から名古屋まで航海され、その間に
鳥羽レースを実施するに当たり寄港できる港や海流、気象などの詳細な調査をしながらの航海
でした。その報告は「舵」にも掲載され、それが元になって鳥羽レースが始まったのです。始
めのころは帆走委員長をされました。
特に遠州灘は寄港地の無い長丁場で、「フルールブルー」のような小型外洋ヨットでの走破は
初めてだったはずです。
この「フルールブルー」の航海が西行きだったため、第一回はそうしたのですが、以後は鳥羽
スタートとなりました。
さて記録を見ますと、第一回に「チタ」の優勝の時のファーストホームは「相模Ⅱ世」、そ
の後「どんがめ六世」、
「バレリーナ」
「竜王丸」、次の「のぶちゃん」は安岡さんの横浜の船で
したが、第7回には「モサⅢ」と、これまた小網代の艇でした。この時私は鳥羽レース初陣で
「どんがめ7世」24.6フィートのクルーでした。この時のレースは、世界のファーストホ
ーマー「ストームフォーゲル」が正式参加し、巨大なレーサーをまじかに見た感動を覚えてい
ます。また我が国外洋ヨット界も大型化の象徴のように陳
秀雄さんの「ふじ」と三橋美智也
さんの「アニー」がストームフォーゲルを並んで追走する姿を撮りました。
バレリーナ杯は第三回の優勝艇の「バレリーナ」のクリスチャンソンさんが寄贈したもので
す。彼はYYC(横浜ヨットクラブ)の会員で、わたしの拙著「日本ヨット史」にはこのクラ
ブの主のような、ラフィンジュニアと一緒に写っている写真が載っています。
(実行委員会注釈「ラフィンジュニア」
:わが国最古の「横浜ヨットクラブ」の中心人物「トーマス・メ
ルビル・ラフィン」のご子息で、横浜の海を知り尽くしたヨットマン)
前年優勝の「どんがめ六世」と同じもので、キールを確か10センチくらい浅い設計にしまし
た。リグは「どんがめ六世」と同じジャンパーストラットのついたミッドリグでした。
この年の強風のスピンランで、ブローチングし、ダイヤモンドステイあたりを痛めたのですが、
そのまま強気にスピンを降ろさず、ぶっちぎりの優勝でした。
1965年5月の大島レースは、まれにみる時化で、参加23艇中「どんがめ7世」以外全艇
避難リタイアで、「どんがめ7世」は賞の全てをかっさらいました。この時渡辺家で祝勝会を
クルー4人でしていた時、長身のクリスチャンソンが現れ、リタイアしたのを恥ずかしそうに、
スピンポールを流したので、また図面を造船所に送ってほしいと言っていました。彼はアメリ
カの軍属で、通信担当だということでした。
竹下 政彦さんは「シイラ」というあだ名で、有名な戦前からのヨット乗りです。あだ名の「シ
イラ」は、顔がシイラに似ているという説と、船酔いで苦しんでいるクルーの目の前で、わざ
とむしゃむしゃ物を食うのが、魚のシイラの旺盛な食欲とを関連付けたのだという話を、確か
石原 慎太郎さんのエッセイで読んだことがあります。
お父さんが海軍大将で、原宿の竹下通りは竹下邸のあった所から付いた名前です。
鳥羽レースの帆走委員長も何度もなさっていますが、合併前の日本ヨット協会とNORCの両
方に軸足を置いておられました。
お姉さんも戦前からのヨット乗りで、戦前に行われた初島レースにも乗艇されていました。丹
羽徳子さんの先輩です。
(実行委員会注釈「戦前に行われた大島レース」
:戦前には日本最古のヨットクラブ「横浜ヨットクラブ」
を模して日本人が作った「横浜セーリングクラブ」が主催して、大島レースを1回、初島レースを4回
開催しました。)
(実行委員会注釈「表彰CUPの名称」
:各オーナーからの寄贈を受ける時、当時の日本外洋帆走協会の
幹部から「本人が生きているうちに個人名の表彰CUPはまかりならん」とのお達しがあったとのこと)
白崎さんにご説明いただきましたように、パールレースの表彰CUPは、これまでにご参加
されました艇オーナーからの寄贈で積み上げてきました。参加されるみなさまで築き上げてき
たヨットレースとして、みなさまに親しまれ、永く愛されたレースであり、今後もこの軸を外
れないように継続していきたいと思います。
第 52 回パールレース実行委員会
PS.引き続き参加艇オーナーからの表彰CUPの寄贈を受け付けております。
奮っての御寄贈をお待ちしております。