総合討論 - 国立民族学博物館友の会

「新・都市の時代 ─ 創造都市の発展と連携を求めて」
国際シンポジウム
総合討論
(シィリエ)
ありがとうございま
す。過分なご紹介を賜りありがと
うございました。また、本日はこ
の非常にすばらしいイベントに参
加してコメントをする機会を賜り
ありがとうございます。矢作先生
からご紹介いただいたように、私
は建築家であり、都市計画者としてザグレブ大学で都市計
画の教鞭を執っています。今回のテーマについてできるだ
け簡潔にコメントしたいと思います。いくつかの論点につ
いて私見を述べたいと思います。さまざまな観点について
非常に優れた意見がすでにでておりますので、簡単な役割
(座長:矢作)
これからは、私が
座長ということで議事を進行した
いと思います。
これまでのディスカッションを
をいたします。
私は建築家であり都市計画者ですのでまずうかがいたい
のですが、本日こちらにいらっしゃるみなさんのなかで、
ずっとうかがっていて、ふと、ジ
建築あるいは都市計画で学位をとっていらっしゃる専門家
ョン・メイナード・ケインズ卿が、
の方は手を挙げてくださいますか。そういうバックグラウ
確か経済学者が10人いると10の経
ンドの方、建築あるいは都市計画の方です。
済理論がでてくると言っていたのを思いだします。創造都
2%ぐらいでしょうか。なぜそれをうかがったかという
市論はまだ創生期ですので、いろいろなディスカッション
と、いま、手を挙げていただきましたが、そのことからも
があるのも望ましいことかと思いながらずっと聞いており
わかりますように、このような創造都市をつくりあげるた
ました。
めには、複数の仕事やさまざまな職業が必要であり、その
午後のセッションの冒頭に、まず、初日のフォーラムか
全体を統括するような分野横断的な専門家、あるいは、目
ら、昨日、今日の午前中のディスカッションまでについて
が必要だと考えるからです。私も、この創造都市という重
のコメントを、そちらにおられるローマン・シィリエさん
要なテーマに、建築家という観点から参加できてとてもう
にお願いしようと思っております。実は、彼はほかの用事
れしく思っております。
で日本に来ておりましたが、会議主催者や佐々木先生にお
それでは、いくつか論点を述べたいと思います。まず、
願いして、参加の機会をえましたことを、私からもお礼申
マークセン先生は建築による脅かし、それから、ランドリ
しあげたいと思います。
ー先生は建築による支配、さらに、佐々木先生からは建築
お手元の資料にも簡単な略歴を載せてありますが、彼は
というサービスと、いろいろな言葉がでました。このよう
クロアチアの世界遺産都市ドブロフニクで生まれ、創造都
な言葉を聞いていますと、もちろん文脈から切りはなした
市であるスペインのバルセロナで建築学を勉強されました。
かたちでいまは申しあげてしまいましたが、特定の重みの
お国に帰って、たいへん若いうちからクロアチア建築家協
ある言葉だということがわかります。
会のオフィシャルマガジンのエディターグループに入られ、
確かに、こうした建築に関する発言は、私も賛同すると
『人間と空間』という雑誌の編集員を務めました。それから、
ころがあります。さらに専門家の建築家、また、都市計画
昨年はザグレブ建築祭で二席に選ばれたということで、ク
の観点から、いかに創造都市をつくることができるか、し
ロアチアでは若手のホープとして将来を期待されている方
かも、建築に対して脅威や支配的なイメージをもたれるこ
です。
となくいかに参加できるかということが重要です。
それではシィリエさんから、15∼20分でコメントをいた
だけるとありがたいと思います。
82
ではありますが、できるだけ繰りかえしがないようにお話
多くの諸国で建築や都市計画と国土戦略、あるいは都市
政策と地域開発は分担されているようですが、本当はそれ
ではいけないと言えるでしょう。このように分担的に考え
るということは、知識がそれぞれの分野ごとで伝達される
ということです。もちろん、実践的にはやりやすく、それ
をとおして多くの問題に対して知識を個人がえることがで
するほど討議されてきました。ヨーロッパの観点から、こ
きるわけです。しかし、このような知識の獲得、深まりは、
れについてお話ししたいと思います。都市の時代というの
その特定の分野に限られてしまいます。よって、インター
は、それと同時に、都市が世界のさまざまな変化を反映し
マルチ、あるいは、トランスディシプリナリー(学際的)
ているとも言えると思います。
な協力や知識の共有、創出が必要になってくるでしょう。
1980年代以来、ヨーロッパの諸都市において移民の割合
建築、都市計画、都市政策、地域開発、都市開発という
は人口規模に反比例しています。つまり、小さいまちほど
のは、特定の領域のそれぞれの側面を示していると思いま
流入が多く、大都市は逆に流入が少ないという現象があり
す。つまり、いかに創造的な環境をつくりあげるかという
ます。これは特に1990年代に加速化したプロセスで、この
全体のそれぞれの側面を切りだしているわけです。という
ような人口流入・人口移動のヒエラルキーは、かつては小
ことは、教育制度がとても重要になります。新しい専門家、
さい都市から大きい都市へという流れだったのですが、い
横断的にものを見ることができるような専門家を育成する
まはその反対になってきたということで、都市に対する考
うえで教育制度が必要だということです。
え方が大きくかわってきたと思います。
佐々木先生はプレゼンテーションのなかで、創造的なコ
都市を離れた人は村に戻ったわけではありません。もは
アとその周辺領域の図をお示しになりましたが、残念なこ
や、いわゆる村落というのは存在しないからです。ここで
とに、建築はそのコアからずいぶん離れていて、とても悲
は都市発展地域について、わざとメトロポリタンという言
しく思ってしまいました。これは確かに建築に対するひと
葉は避けています。なぜなら、現実にはそのような輝かし
つの見方ですし、創造的なコアに対するひとつの見方だと
い名前が象徴するような場所ではないということです。メ
思います。また、美醜の概念の話もでました。これは、ラ
トロポリスというよりも、メタポリスと言った方がふさわ
ンドリー先生が討議なさったとおりで、醜いという言葉が
しいのではないかと考えます。都市の時代を考える場合に
強く辛辣に使われる一方で、美しいという言葉に対しては
は、このような都市の変化ということを考えなければなり
非常に注意深く、嫌悪の程度がましであるともおっしゃい
ません。都市の定義をまず考えて、では創造都市とは何を
ました。
意味するのか、また、その創造性がどのくらいその周辺に
建築家や都市計画者というのは、機能的・科学的に必要
なことだけではなく、美しいものもつくっていくという使
関連するかを考えなくてはなりません。
2点目に、バルセロナについてご紹介したいと思います。
命があると思います。美しさについて話をしだすととりと
都市再生や文化政策、あるいはクラスターをつくりあげる
めもなくなってしまいますし、危険なテーマでもあります。
ということについては、すでに述べられていますので申し
ただ、いったい何が美しくて、何が美しくないのか、さら
あげないことにして、みなさんが通常おっしゃるようなこ
にまた、詩学的である、創造的であるというのはどういう
とに対して、反対の側面から見ていきたいと考えています。
ことかということは、さまざまな分野の人間が集まって創
できるだけ創造的に考えてお話ししたいと思います。
造的な都市をつくろうとするうえで重要なテーマではない
かと考えます。
では、建築家や都市計画者と創造都市の関係にたち戻り
オリンピックがいかに成功したか、あるいはどれだけ市
民たちがこれを楽しんだかについても話をしません。そし
て、セルダーのマトリックスや2004年のフォーラム・バル
たいと思います。都市計画者、建築家というのは、それ自
セロナがどうであったかについてもお話しいたしません。
身の役目をもっています。しかし、それはひとつの側面を
ただ、オリンピックはバルセロナにとって多大な土地騰貴
さしているだけで、実は非常にひろい領域をカバーしてお
をおこしたと言えます。プロジェクト22という、かつて工
り、物理的にも抽象的にもさまざまなスケールを取り扱う
業地域であったところで創造クラスターをつくろうとした
仕事でもあります。この建築という気取った感じのする立
動きがあったのですが、これは実施中に失敗しました。そ
場を擁護するわけではありませんが、関連分野間の協力が
れは、不動産市場が非常に爆発的に上昇したからです。
必要でしょう。建築家、都市計画者についても、クリエイ
もう一方の側面です。セルダーはバルセロナのマトリッ
ティブコアに対して単に奉仕するだけではなく、原動力の
クスをつくりあげたスペインの建築家ですが、彼の都市計
ひとつだと認識していただければと思います。
画は長年続けられてきました。つくられた当時は車がない
次に、空間についてです。社会あってこその空間で、空
時代だったのですが、それは新しいインフラや新しい交通
間は社会であるわけですから、固有の社会的な慣行のない
網にも対応できるようなものでした。そういう個人の計画
空間を語ることはできません。つまり、社会を反映するも
をベースとしてやってきたシステムが、いまでも有効に使
のではなく、社会の表現そのものということです。マニュ
えるということは、新しい状況に対応できるような計画だ
エル・カステル(Manuel Castells)の言葉を考えれば、物
ったからです。つまり、創造性があったと言えると思いま
理的な側面として空間は、社会の関係意識をもたらすもの
す。そして、そこから連鎖反応がおこって、市民が都市と
と言えます。それから、空間と社会の両方を考えなくては
は何であるかと考えるようになり、バルセロナは世界で最
なりません。つまり、流れのあるスペースや、イノベーシ
も住みたい都市と言われるようになったわけです。
ョンや創造性をもたらし、刺激するような環境をつくって
いくということが必要だと考えます。
国
際
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
﹁
新
・
都
市
の
時
代
︱
創
造
都
市
の
発
展
と
連
携
を
求
め
て
﹂
︱
総
合
討
論
2004年、バルセロナはカルチュラル・フォーラムに対し
て大きな投資をしました。都市行政のなかで、現在では失
それから、「都市の時代」という概念についてと、みなさ
敗に見えているかもしれませんが、その当時では非常に革
んが愛しているバルセロナという都市について、簡単に述
新的、戦術的な取り組みであったわけです。しかし、その
べたいと思います。まず、都市の時代という考え方、テー
都市介入の創造性は目に見えるものではないわけです。目
マについて。このテーマはこの何年かの間、建築、計画、
に見える存在というのは、例えばバルセロナのなかで最大
その他の分野でホットなテーマとして、他のテーマを圧倒
級の下水処理装置をつくったとか、あるいは設備をつくっ
83
たということです。そういった下水処理設備と文化的な要
ークがどのように機能していくかが非常に興味深い点だと
素のふたつを合わせて、文化地域の再活性化がおこなわれ
思います。ひとつ提案なのですが、垂直的なシステムや戦
たわけです。こうした下水処理なしには、この地域の開発
略を考えるというよりは、どちらかというと水平的なアプ
はおこなえなかったでしょうし、また、カルチュラル・フ
ローチ、戦術的なアプローチの方がいいのではないかと考
ォーラムがなければ、こういった大規模な下水処理装置も
えます。創造的なアプローチで戦術を展開させるのが、創
つくられなかったでしょう。
造都市には向いているのではないかと思います。
もうひとつ、バルセロナに対する考え方を述べたいと思
以上です。どうもありがとうございました。
います。例えば人口の増加です。1976年から人口は伸びて
いません。それ以降は人口が25万人も減少したという状況
(矢作)
どうもありがとうございます。物的計画をやって
です。中心部の人口が倍になったのは76∼92年の間です。
こられている方、あるいは、都市計画の視点から、あるい
非常にコンパクトなまちでした。最初はコンパクトなまち
は、バルセロナに久しくいた経験から、これまでの討論を
だったのが、非常にひろがって分散したまちとなったわけ
ふまえてのコメントをいただけたと思います。
です。このような現象はみなさんもよくご存知だと思いま
前半は、会場からのご意見や、あるいは、ここに並んで
す。そして、住民は、都市の中心から離れていったわけで
おられる先生方からご質問などをいただければと思います。
す。その結果、都市のなかでの相互関連性や交流がなくな
いま、おふたり手があがっておりますので順番にあててご
ったわけです。そうして、都市間の交流もなくなり、QO
発言いただきます。
Lを求められるような場所ではなくなったのです。それは
土地が騰貴したからです。
大阪市立大学創造都市研究科の明石
といいます。これまでの議論をうかがっていて、いまのお
ます。そのプライオリティーとしてアーバン・エコシステ
話にもあったのですが、エデュケーションシステム、教育
ムもあります。しかし、ローカルなのかグローバルかとい
あるいは人を育てるという視点からと、午前中の、産業を
うことを考えていかなければなりません。バルセロナは創
おこす、あるいは事業をおこすという視点から、少し質問
造都市として認識されていますが、その前は、通常の市場
ないし意見を申しあげたいと思います。
主義的なまちでした。
創造的な人材が担い手となるというときに、すでにいる
もうひとつ申しあげたい点は、ユネスコが提案している
人をどう結びつけるかという視点は多く議論されたと思う
創造都市についてです。ユネスコが都市間でネットワーク
のですが、そういう仕事をできる人を教育するという視点
を結ぼうということを提案しているわけですが、これは非
から、どういうご意見をもっているか、提案あるいは議論
常に興味深い課題です。簡単に申しあげますと、都市間の
していただきたいと思います。といいますのは、私が佐々
関係性あるいは一都市対複数都市、あるいは、1対1の関
木先生をおよびしてつくった創造都市研究科は、世界でひ
係ですが、ユネスコがそういった組織をつくるということ
とつしかないとは言えないかもしれませんが、非常に象徴
は、非常に重要な出来事だと思います。それは、長期的な
的なスクールです。ビジネス系とニューパブリックマネジ
計画に基づいたものです。つまり、例えば、4∼5年でそ
メントという、ふたつの分野の社会人の方々に大学院生と
の都市のアジェンダがかわっていくというものではなく、
してはいっていただき、創造都市について理解をしてもら
長期的なものとしてつくりあげられているというところに
ったうえで、また社会に戻って活躍してもらうという社会
重要性があるわけです。ですから、行政のリーダーがかわ
人のための大学院です。大阪市が予算を削減しているなか、
ったとしても方向性はかわらず、どういった方向に行くべ
非常に苦戦をしている面もあるのですが、これまでに350人
きかを認識できるということです。創造都市の組織は長期
の卒業生を輩出しており、今年で5年目になります。そう
的な展望を有したかたちで、外でも適用できるようなナレ
いう新しいタイプの大学院で、創造都市を理解したうえで、
ッジ(知見)をつくりだすことが必要ではないかと思いま
それをプロモートする人材を養成するということについて、
す。
どのようにお考えかおききします。
さらには、こういったネットワークは、具体的に計画を
ふたつ目に、これまではどちらかというと行政の視点か
考えていこうとすれば、仮想的なところが多いわけですが、
らのお話が多かったと思います。本日、プラットさんのお
非常にグローバルなものであると考えられます。少なくと
話にもありましたが、私は生産と消費をどう結びつけるか
もヨーロッパでは国家のモデルをのりこえた動きがあるわ
が非常に重要だと思っております。これは芸術文化に限ら
けです。また、その地域固有の構造(territorial structuring)
ず、テクノロジーをどのようにマーケットに結びつけるか
が認識されるようになりました。例えば、国家や政府とい
というテクノロジカル・インキュベーターと同じように、
うかたちで計画を立てる問題解決の方がやりやすいかもし
芸術的・文化的なアウトプットをどのようにマーケットに
れませんが、創造都市の組織のなかでは、それぞれの関係
結びつけるのか。相互作用やリンケージというお話がある
性を考えていかなければなりません。そして、外に発信で
わけですが、プラットさんがおっしゃったように、付加価
きるようなナレッジを考えていかなければなりません。そ
値をつけて、マーケットとプロダクションを結びつける人
のためには共通の言語が必要ですし、比較のためのモデル
材が実際にどこにいるのかという問題が重要だと思います。
も必要になるでしょう。
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(フロア質問:明石)
バルセロナは、現在では開発のモデルとして使われてい
それは日本でもヨーロッパでも欧米でも、NPOという
このような都市というのは、創造性の触媒としていろい
ときに、日本ではどちらかというとNon-profit(非営利)と
ろなアイデアをつくりだし、周辺の空間、つまり都市とい
いうことが強調されるのですが、マークセンさんが言われ
う地域に限らず、よりひろい経験やその領域での考え方を
たように、Not for Profit(営利のためではない)で、利益
だしていくことが非常に重要だと思います。このネットワ
を一番に考えるわけではないけれども、独自の事業収入を
あげながら、本来の目的を継続的に追求するという組織や
なかで、前向きで戦略的な観点といったような社会的な価
仕組みが必要だと思います。ヨーロッパではソーシャルエ
値が十分に活かされないままになってしまうときがありま
ンタープライズ、アメリカではソーシャルベンチャーとい
す。したがって、どういったところに欠落点、あるいは、
う概念がありますが、利益をあげながらも目的を達成する
結びつけのリンクが欠けているのかを見定めなくてはなり
ような人材、あるいは人の集まりというものが、創造都市
ません。さらに、政策立案や政策のサポートというところ
の推進においては重要なのではないでしょうか。非営利で、
で、自治体がやっていくのであれば、どこに弱点があって、
行政の予算でサポートするだけではなく、経済的に自立し
どこにリンクが欠けているのかを見定めなくてはなりませ
た組織、あるいは事業の仕組みをつくる人がいるかどうか
ん。
が重要なのではないかと思います。
また、特定のスキルを学びとっていかなければなりませ
午前中にもありましたが、プロジェクトマネジメントあ
ん。最悪の状況に陥ったときには、全般的なスキルでその
るいはプロジェクトマネジャーといった、プロダクション
分野の専門家を説得しようとしてもダメなわけで、その専
の情報も知りながら、マーケットやコンシューマーの条件
門家の分野のことをよくわかっていなくてはなりません。
も知って、それを担うような人材が必要なのではないでし
いわば双方向でコミュニケーションできるような人材でな
ょうか。私自身はアントレプレナーシップ(企業家精神)
くてはならないのです。
の研究をしているので、ソーシャル・アントレプレナーシ
ップというような意味で、行政の予算だけではなく、何が
(マークセン)
ふたつの観点から申しあげます。まず第一
しかの自立的な事業収入を獲得できるような人が重要なの
点として、皮肉なことにアメリカにおけるノンプロフィッ
ではないかと思っています。人ということと、新しい事業
トの芸術モデルは、危機的な状況にあります。このような
をおこすこと、あるいは産業という視点から見ると、そう
モデルは60年代にはじまり、連邦政府からの全米芸術基金
いうことが重要ではないかと思うのですが、いかがでしょ
(National Endowment for the Arts)による助成金の大幅な
増加をもたらしてきたのですが、それによって新たなサイ
うか。
ロが生まれてしまいました。そしてそのサイロは、特定の
(矢作)
では、プラット先生とマークセン先生に順番にお
芸術家組織や舞台芸術の組織や団体を、商業的な文化産業
答えいただこうと思います。明石先生のご質問の趣旨は、
と非公式なコミュニティの芸術活動というふうに分断させ
社会的あるいは経済的なミッションを背負った企業家、あ
てしまったと、多くの芸術関係者は感じています。
る種の企業家精神をもった社会的企業という表現をされま
ですから、このノンプロフィットモデルをどのように改
したが、そういう企業、ビジネス、あるいはNPOを背負
善したらいいのか。私たちの大学からはいろいろな卒業生
ってくれるような人材をどのように育てることができるの
が生まれ、彼らは営利目的でない芸術の分野で活躍してお
だろうかという質問だったと理解しました。プラット先生
りますが、芸術やプロフィットという側面については理解
から何かご発言いただけますでしょうか。
していない人もいます。そういうことを鑑みても、いま提
起されていることは非常に大きな問題だと思います。つま
(プラット)
これは社会によって
り、創造的な大学をいかにつくるかということでしょう。
違うと思うのです。また、社会的
先生方は世界のリーダーとして、大学を使っていかにこ
企業家(アントレプレナー)につ
の問題全体、つまり、文化や創造性をどのようにかえてい
いて、どのような知識ベースがあ
ったらいいのかをリーダーシップをとって考える必要があ
るのかによっても違うでしょう。
ります。アメリカの大学には非常に大きな問題があります。
ひょっとしたら公共行政の分野の
大学の学長、教授陣たちに、このような文化産業の問題に
方かもしれませんし、あるいは、
ついて一緒に協力していこうと言うのはなかなかたいへん
市民活動グループのなかからでてくるかもしれません。し
です。例えば、医学やハイテクの分野においては、大学が
たがって、どういう背景をもっているかによって違ってく
民間分野の企業とパートナーシップを組むというかたちで、
ると思うのですが、どのような知識ベースがあって、まだ
重要とされる課題を前に進めることが可能です。しかし、
欠けているところは何なのかを理解することが、社会的企
芸術の分野の教授陣たちにとって関心があるものは、芸術
業家を育てていくうえでは重要ですし、その両面をつなぐ
分野の研究や芸術自体であって、社会科学のことも政策の
ためには必要になってくるでしょう。
こともわかっていない先生も多いのです。さらに、建築学
それと同時に、広範な目的と戦略的な機関との間のつな
部もまったく別の分野にいて、孤立しています。したがっ
がりが必要です。それはひょっとしたら公共の機関かもし
て、文化芸術政策を担当している人たち、例えば私のよう
れませんが、さまざまな戦略的な機関が長期的な視野をも
な社会学者、あるいは地理学者など公共政策の部門の人間
つという面も重要だと思います。すでに何人かが指摘して
は、大学においては芸術分野の先生方とぜんぜん関係がな
いることですが、フリーランスの活動として、あるいは、
かったりするわけです。これは大きな問題だと思います。
非常に小規模な雇用形態の企業で働いている人たちがいま
ですから、創造都市に関するリーダーシップについては、
す。そういった人たちが、近視眼的なところに時間をかけ
大学の芸術学部の先生方がまったくリーダーシップをとれ
るだけではなく、より前進的で戦略的な側面に時間をかけ
る状況にはないわけです。
るべきです。したがって、さまざまな活動を横断的に見る、
例えば、サンタフェの隣にある都市、アルバカーキの新
あるいは、長期的な視野をもって将来を見ることが重要で
しい芸術計画では、ニューメキシコ大学の芸術学部の学長
しょう。
さんが中心になっていたりしますし、テキサスの芸術学部
しかし、さまざまな分野が細分化されていると、社会の
国
際
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
﹁
新
・
都
市
の
時
代
︱
創
造
都
市
の
発
展
と
連
携
を
求
め
て
﹂
︱
総
合
討
論
の学長も非常におもしろい方です。ただ、それらの芸術学
85
部の学部長さんというのは、例外はありますが、政策に関
に苦労して勉強していただいた方々のなかには、行政の担
心がなかったり、地域自体にも関心がなかったりします。
い手、芸術家、建築、あるいは都市計画の専門家など、さ
それはとても大きな大学にとっての問題だと思っています。
まざまなジャンルの社会人の人たちに集まっていただいて、
しかし、だからこそ創造的なキャンパスをつくる可能性
があるのだと思います。例えば昨年、創造的キャンパスに
それこそ学際的な、ジャンルをこえた討論とさまざまな研
究がおこなわれてきたのは事実だと思います。
ついての集会をおこないました。これは90年代に全米芸術
この私どもの試みは、大阪にある他の大学にも波及して
基金の議長を務めていたビル・アイビーが提唱したもので
いるように思います。例えば、大阪大学においても、新し
す。この人は、芸術文化や創造都市の経済に関して、もっ
くコミュニケーションデザインセンターができました。大
と大学が関与できるような創造的リサーチや行動計画をつ
阪大学というのは実は自然科学や工学の分野では非常に有
くることを推し進めた人ですが、これはまだ十分に推進さ
力な大学ですが、どちらかというと芸術・文学系が弱いと
れていません。
言われてきました。そこで著名な演出家である平田オリザ
さんを招いて、いわば頭でっかちの日本の大学生、特に理
(ランドリー)
この数日間、もう十分に私は発言させてい
系の学生を相手に芸術をツールとして他のジャンルの人た
ただきましたが、先ほどの知識という点について1点申し
ちや社会とコミュニケーションをするということを、意識
あげたいことがあります。都市がより創造的になるために
的にそのセンターで手がけるということがおこってきてい
はどうしたらいいのかを考える場合、どういった形態の知
ます。私どもはそのコミュニケーションデザインセンター
識が必要かというのとは違うと思います。どのような知識
とも提携しながら進んでいるところです。
を大学が生みだしていくかについては、大学それぞれ自体
が考え直す必要があると思います。
また、私もこちらに来てから、大阪あるいは京都にある
芸術系の大学において、創造都市論、あるいはアーツマネ
ひとつのギアの切りかえとしては、もちろん歴史や経済
ジメントといった新しい領域についての講義や学生の指導
学といったそれぞれの学科は重要ですが、各学科ベースの
にも招かれています。それはつまり、従来のように芸術は
知識ではなく、それとは別にコミュニケーション能力のよ
芸術の分野だけ、あるいは都市計画は理系の専門家だけと
うな別の知識やスキル、現在、大学では教えられていない
いうことではなく、次第にこの5年間で大学の学部自体も
ようなスキルや知識が重要なのではないかと思います。
新たなる再編成がおこっているということです。20世紀に
日本ではそうではないのかもしれませんが、大学自体に
十分に創造性がない、その教授方法自体が創造的ではない
できた縦割りの組織が大きく揺らぎ、かわろうとしている
のです。
ことが批判されています。私たちが欲しいと思っている人
創造都市というもののたいへん大事な点は、既存のあた
材教育を支援し、そして、将来責任をもって都市をより肯
りまえだとされてきた考え方や組織のあり方を大きく揺さ
定的な環境にしていくための人材教育に、十分な創造性を
ぶりながら、ジャンルをこえて、お互いに遠く隔たってい
発揮していないと言われています。しかし、大阪市立大学
た領域のものを結びあわせるような大きな揺さぶりをかけ
やこの新しい大学院におきましては、非常に長年かけて尽
て、融合させる効果があるということを実感しております。
力をしていらっしゃるということで、心から賛意を示した
私どもが大阪でやってきたことが、ある意味では非常に小
いと思います。そのような大学や学部はほかにないと思い
さな蝶々が飛んでいるようなものですが、これが次第に大
ます。
きな羽ばたきになって、地球の裏側まで届くかもしれない
ということを実感しているところです。
(佐々木)
お褒めいただきありがとうございます。実は私
は、2003年の4月に大阪に招かれて、突然、創造都市研究
主催者の一員である大阪市のスタッ
フの岡本と申します。特に私が関心をいだいたのは、本日
間近く、非常に悪戦苦闘してきたわけです。というのは、
の午前中の議論です。そのテーマは、われわれ行政の政策
大阪市自体が創造都市にかわるということ自体が、非常に
担当者が、いままさに直面しているテーマではないかと受
難しいように思えたからです。特に20世紀後半の大阪市は、
けとめさせていただきました。瀬田先生がご指摘になりま
産業的にも財政的にも、そして社会的にもたいへん大きな
したように、民主主義のシステムのなかでいかに納得され
難しい問題をかかえていました。そして、行政の担い手の
るように説明できるかということが、創造都市という政策
方々も、その問題に非常に疲れきっておられたように見え
を実現していくうえで欠くことのできないプロセスだと思
ました。それで、いったいこの大阪を舞台にして新しい大
っております。
学院がどれくらいの社会的役割を果たすことができるのか、
最初は私もたいへん悩みました。
実は最初は、昨日もお見えになった神戸市や京都市など、
86
(フロア質問:岡本)
科の看板を担うような立場におかれました。それから5年
私どもは、創造性とは、ある特定の業種にあるというも
のではないと考えています。例えば、鉄鋼業関係や自動車
関係、あるいは、繊維関係、小売関係といった業種の違い
むしろ大阪以外の行政の方や市民の方が駆けつけてくださ
によって、ある業種には創造性があるけれども、ある業種
って、私どもの考えていることを応援してくださいました。
にはないというものではないと思っています。あるいは、
そして、時間が経つにつれて次第に大阪市自体も、急激に
製造業、サービス業という違いで有無が決まるものでもな
はかわらないのですが、本当にゆっくりすぎてどうなるの
いと思っております。そうではなくて、これもプラット先
かと思うのですが、徐々にかわりつつあると実感しており
生のお話ででておりましたが、プロセスのなかで創造性と
ます。
いうものが発揮されるのではないかと思っています。そし
ただ、まだ一気に大阪における創造都市が実現できると
ころまではいっておりませんが、少なくとも大学院で一緒
て、それを発揮するのは、創造性の源であります人材です。
その人材がどのような活動を実際にやっているのかという
ことを、いま現に、まちのなかでどういうことがおこって
そういう意味では、哲学としてはもうかなり高いレベルに
いるのか、あるいは、地域をこえた関係のなかで、現実に
あると思われます。
どのようなことがおこっているのかということをもっと実
証的に検討していく必要があると思っています。
そのためには、われわれが到達したひとつの到達点、と
ただ、科学としてはどうか。科学としてある程度しっか
り、まさに検証がなされないと、それは哲学にとどまって
しまいます。思いいれというと言葉が悪いのですが、思い
いうと大袈裟なのですが、方法論的なテーマとしていま考
にとどまってしまって、それが具現化されないわけです。
えているは対話です。午前中にもキーワードとしてコミュ
その科学としての創造都市学、創造産業についての創造産
ニケーションというものがあったと思います。創造都市の
業学、あるいは政策としての創造産業政策というように、
政策というのは、行政の政策立案担当者の頭のなかだけで
科学としてのとらえ方がこれからはより重要になってくる
できるものではありません。実際に、まちのなかでいろい
のではないかと思います。もちろん、哲学としてこれから
ろな文化活動にたずさわっておられる方や、経済・産業の
さらにきわめていくことも重要ですが、同時に、科学とし
関係で活動にたずさわっておられる方、あるいはその間を
て検証可能なかたちでとらえることも必要です。そうする
つなごうというエキスパートなど、実際に自分が活動され
ことで、創造都市論が真に世界の人々の幸せに貢献する学
ている、あるいは、これからされようとしている方々との
問および理論になりうると考えております。
対話をとおして、解決策や今後の政策方針を見いだしてい
くことがきわめて重要ではないかと思っているところです。
そのための対話の場をつくっていくということ。これは、
(矢作)
ありがとうございます。石毛先生にもご発言いた
だこうかと思います。会場の方は、先生はたいへん著名な
ひとつには佐々木先生がはじめられたクリエイティブカフ
方なのでよくご存知かと思いますが、外国から来られた方
ェの試み、これが市民会議というかたちで発展してきてい
に、ごくごく簡単にご紹介します。
るわけですが、そういったこともひとつの重要な試みと考
石毛先生は国立民族学博物館の前館長でいまは名誉教授
えています。そのなかで大学研究機関の研究者の方々に知
であります。アンソロポロジーだけなく、研究の範囲はも
恵をだしていただくことも非常に重要です。ですから、そ
っとひろいと思いますが、「食」ということについて、非常
ういう場を重ねていくということが、まず当面の課題だと
にひろく長きにわたって研究活動をされてきておられます。
思っています。
それから、研究者としてだけではなく、エッセイストとし
ただ、場をつくるということは比較的簡単なのですが、
てもたいへんな名文をお書きになる先生です。
そこにどういう方々に参加していただいて、本当に実質的
なコミュニケーションをどうとっていくかということは、
(石毛)
私はいまご紹介にありましたように、食べること
なかなか難しい問題です。創造的な人材というのはみなさ
や、文化人類学の研究はやっていますが、都市については、
ん忙しいですから、なかなかそういうところへ参加できな
研究したことはまったくないただの素人です。突然、話せ
いということもあります。とはいえ、このフォーラムにも、
と言われて、少し頭が混乱しております。
大阪の創造的な活動をされている方、あるいは、これから
しようという方が多数ご参加いただいていると思います。
私は世界のいろいろな都市を訪ねたことがあります。そ
うしますと、20世紀後半にできた建物や都市計画は、世界
この後は、アジェンダの討議も予定されていると思いま
の文化的伝統の異なる地域でもよく似ているということに
すが、今回のテーマに、連携という言葉があります。創造
気づきました。歴史的な建造物やまちなみは個性をもって
都市の発展と連携がテーマになっていますが、昨日でてい
いますが、新しいものはあまり個性がなく、世界中同じよ
た言葉を借りれば、トランスフォーマティブな(かえてゆ
うな気がします。しかしながら、それぞれの都市にしばら
く力のある)都市間の連携ももちろん重要ですが、都市内
く滞在していますと、形をもったものとは違う、そのまち
のさまざまなセクター間、さらにはそのセクターで活動す
独特の雰囲気といったようなものが伝わってくるのです。
る人と人との間の連携をどうつくっていくかというのが、
そこに住む市民たちがつくりあげている、それもかなり歴
非常に大きな課題だと思っています。
史的につくりあげてきたそれぞれの都市独自の個性をもっ
国
際
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
﹁
新
・
都
市
の
時
代
︱
創
造
都
市
の
発
展
と
連
携
を
求
め
て
﹂
︱
総
合
討
論
た雰囲気があるような気がいたします。
(矢作)
ありがとうございます。ご質問というよりご意見
創造都市というのは、そういった個性を活かすことが大
ということでたまわりました。関連で瀬田先生に発言をご
事だろうと思います。大阪の将来を考えるときは、大阪ら
く短くいただきます。
しさとはいったい何であるか、それについて検討すること
が必要ではないかと思います。例えば、大阪の人はお笑い
(瀬田)
大学の役割というお話が何人かの先生からでたと
がたいへん好きで、大阪の人がふたり寄ったら漫才になっ
思います。大学というか、アカデミックの世界の役割から
てしまうとよく言われます。それでは、日本のなかでその
見た創造都市、創造産業という分野ですが、もし学問を哲
お笑い好きの大阪人というのはどういう意味をもつのか。
学(フィロソフィー)と科学(サイエンス)、仮にこのふた
あるいは、大阪人は食い道楽といわれるけれど、それはど
つにわけるとすれば、哲学としての創造都市論や創造産業
ういう意味で、いったいそれが大阪という都市に食がどう
論というものは、もうかなり高いレベルに達していると思
いうかかわりをもって都市という空間に表現されているの
われます。それは、まさに、今回もこれだけの方が集まっ
か。そういった「大阪らしさ」、それを一度きちんと検討す
て議論していますし、世界中でも、創造都市、創造産業と
ることが大事でしょう。
聞けば、いろいろ批判はあるかもしれませんが、将来の日
それは行政や知識人だけの問題ではありません。そうい
本や世界の都市の将来にとってそれが非常に好ましいとい
った大阪らしさ、その街らしさをつくっているのは、やは
うことで、おそらく大勢の一致を見ていると思われます。
りそこに生活している生活者としての市民なのです。そう
87
いった人々の知恵をくみあげる。何かそういったことが必
その関係をどのように考えていったらいいのかをお話しい
要ではないかと思います。
ただけるとありがたいと思います。
最初に、川崎先生には昨日、宿題として出してあります
ので、きっと名解答がでてくるかと思います。まず川崎先
アジェンダ採択に向けた討論
生にお願いして、次にプラットさんにお願いいたします。
(川崎)
名解答はたぶんでないと思いますが、一応、自分
で考えた話をします。山形の国際映画祭というのは確かに
有名な映画祭で、そこに田中邦衛さんが来られたりするの
も、おそらくブランディング効果のひとつだと思います。
映画祭だけで有名になったのではないと思いますが、相乗
的なかたちで人気がでてきているのでしょう。
この場合、率直に言って、780分の1の予算で人を2万人
集められるというのはたいへんなことですし、ざっと計算
すると、市民が28%ということは5,600人。山形市の人口が
どのぐらいか正確に覚えておりませんが、5,600人というの
は、決して少ない数ではないと思います。これは、何とか
山形の国際映画祭
(矢作)
してこの映画祭の方や市役所の方や、あるいは別の何か権
威ある先生にお願いして説得をしてもらうというかたちで、
最後に3日間のセッションのアジェンダ(行動計
その議会の方を啓蒙すべきではないかというのが社会学者
画)をまとめようと思っていますので、そこに向けて多少
の意見です。さらに3万人になれば、これはさらに映画祭
議論が煮詰まればありがたいです。後半は、なるべく壇上
として発展が見込まれますから、できれば持続的発展のた
の先生にお話をいただくようにしようかと思っております。
めに内容の工夫が必要ですし、現状にあぐらをかかないで、
まず、創造都市のブランディングについてお話をうかが
発展している途中で、いろいろと新たなことを仕掛けてい
います。ユネスコの創造都市ネットワークというのは、ひ
くということも、同時に必要になると思います。田中邦衛
とつのブランディング効果があると思いますが、ブランデ
さんの人気だけではやっていけないのではないかと思いま
ィングということでふたつの事例をお話しいたします。
す。
ひとつは、先ほどの午前中のセッションで申しあげまし
たが、ビルバオにグッゲンハイムができて、今月でちょう
大阪の民間の活力
ど10年だそうです。インターネットで「ビルバオエフェク
ト」を検索すると、12,300件ほどヒットするそうです。そ
一言だけ、ブランディングについて言い忘れていたこと
れから「グッゲンハイム」を検索すると、141,000ほどヒッ
を申しあげます。先ほど、石毛先生がおっしゃっていたこ
トするそうです。それから、「ビルバオ」と検索すると、4
とでもあるのですが、この会議の趣旨でもある、大阪市が
千万ぐらいヒットするそうです。これ自体で、相当なブラ
創造都市として発展をしていくためにどういうことを考え
ンディングの効果が、ビルバオというかつて製鉄で疲弊し
たらいいのかについて、私の立場からひとつだけ言わせて
たまちにあって、グローバルに有名なまちになったわけで
いただきます。それは、〈大阪らしさ〉とは何かをいろいろ
す。プラット先生のおっしゃっていた生産と消費、あるい
議論したり、いろいろな考えをだしあうことが必要ではな
は、新しい付加価値を創造するということと、このブラン
いかと思います。
ディング効果をどのように考えたらいいのかを後でご説明
いただけますでしょうか。
とがあったと思います。昔は町人文化が非常に華やかに花
もうひとつは、先日、日本の新聞に掲載されていた話で
開いた場所だと記憶しています。その関連で言うと、いま
す。山形県山形市が、ドキュメンタリーの分野の国際映画
の言葉だと民間ということではないかと思います。少し曖
祭で、たいへん成功を収めているそうです。2年に1度開
昧に聞こえるかもしれませんが、民間の活力というのは、
いていますが、年間780億円の市予算のうち、1億円を映画
東京が昔、帝都(インペリアルシティ)といって国家を背
祭につぎ込んでいるそうです。2005年は、国内のみならず
負ったのとはだいぶ話が違います。大阪は一時期だけ国家
海外から2万人が山形に押しかけたそうですが、市民の参
を背負ったこともあるとは思いますが、〈民間性〉というも
加がわずか28%しかなく、市議会で問題になったそうです。
のがあると思います。つまり、
〈肩の力を抜いた大阪らしさ〉
私は28%というのは相当高いと思っているのですが、市議
というものなのではないかと思います。
会の先生は「予算の780分の1も使っているのに市民が28%
なのか」と言っていました。
88
大阪はもともと歴史が非常に厚い都市で、いろいろなこ
通常の経済学や経営学、行政学という観点から言うと、
少しはずれた話題で申し訳ないのですが、創造性の応用と
この映画祭が成功すればするほど、全世界からやってく
いうかひろがりとして、例えば、趣味行動があると思いま
る人が増えるわけです。次年度は3万、あるいは、その次
す。日本では、趣味行動をしている方が本当にたくさんい
は5万になるかもしれません。そうすると、市民の参加率
ます。カルチャーセンターなどが一番有名だと思いますが、
はますます下がるわけです。そうすると、市議会の先生は
それも十分に創造産業です。そこで育った人が先生になっ
ますます怒るわけですが、そのブランド効果と文化都市、
て、カルチャーセンターがさらに栄えていくというような
あるいは、創造都市と言えるかどうかはわかりませんが、
構造は、立派な教育機関でもあります。それ自体が、工夫
次第によって、うまく接合できれば、おもしろい展開にも
は行かないということが、ひとつの問題だと思います。で
なります。
すから、いわゆるリピーターをどうやってつくるかも問題
あまり堅苦しく考えなければ、結局、創造性の根源は自
です。
己表現だと言えます。自分たちが何か新しいものをつくる、
それから、消費効果についてですが、グッゲンハイムだ
ユニークなものをつくると同時に、表現でもあるわけで、
けでは十分ではないということで、もうひとつ、メガ建造
その表現の中身、いまだと例えば、化粧行動やエステとい
物をバウで企画をしていますが、それはエンドレスである
った〈癒し産業〉のようなものをうまく使えば結びつかな
ということです。つまり、ビルをつくれば、またその次の
いでしょうか。スポーツなども健康産業ですが、一部、創
ビル、それを持続させるためには、次から次へと、また建
造産業に当然入ってくると社会学では考えます。どうせ曖
造物をつくっていかなければいけないわけです。ですから、
昧だと言われるのならば、そのようにひろげてみて、使え
社会的、文化的な結果は、そういったことも考えて評価し
るところを使うこと、要するに、型にはめてものを見ない
ていかなければならないと考えます。
ということが大切ではないかと思います。
最後に、私は大阪のこうした会議にかかわらせていただ
ですから、グッゲンハイムをひとつのビジネスとして見
るならば、興味深いものと思えます。グッゲンハイムは、
いて思うのは、大阪の民間の力には、本当に洗練されたも
いわゆるフランチャイズのようなかたちで、マクドナルド
のがあるということです。ぜひ、イニシアチブを発揮して
と同じような運用になっていくわけではありません。つま
いただいて、ユネスコのネットワークに入るのもいいです
り、巨大投資をおこなってビルを自分たちでつくる。そし
し、日本の創造都市ネットワークをマネジメントしていく
て、いろいろなリソースを集める。そうして、ブランドを
ということもとてもいいと思います。同時に、アジアの都
つくりあげ、それを活用して回収をおこない、ある程度の
市とうまく連携して、対等なネットワークを、大阪が中心
期間で回収してしまうということです。そうすると、グッ
になってつくっていくぐらいの感じでやっていかれると、
ゲンハイム、ビルバオ、あるいはそのほかの場所であった
大阪にあって、すごく重層的で、私の発表で言うと、ただ
としても、アート市場をアップグレードするような状況が
インターな、総合的なもののもうひとつ上のトランスな状
でてくるわけです。台湾でも、サンパウロでも、同じよう
態になる。その両方がうまくできるような気がするので、
な事象がおこっています。ですから、ギャラリーがどれだ
そういうことを期待したいと思います。
けコストがかかるかも認識しなければなりません。それに
よって市民がどれだけ支払っているかを検討し、再考しな
(矢作)
ありがとうございます。プラット先生、グッゲン
ければなりません。
ハイム効果についての研究はこの十年の間にたくさんでて
われわれが評価するときに、バランスをとった評価をし
いるようですが、先生のおっしゃっている付加価値生産と
ていかなければならないと考えます。もっと綿密に見てい
いうこととの関係をどう考えたらいいのか。あるいは、も
かなければならないのです。ビッグネームとして大きな建
しコメントをいただけるのでしたら、山形のお話について
造物がある、ギャラリーがあるということだけで評価をす
も何かご感想をいただけないでしょうか。
ることはできないと考えています。
グッゲンハイムについてもうひとつ申しあげるなら、ビ
グッゲンハイム効果と付加価値生産
(プラット)
ルバオで非常にプラスの効果があったからといって、同じ
ような効果を今後も期待できるということではないと思い
グッゲンハイム効果ですね。これは確かに
ます。ですから、注意深く、実証的に評価をしていかなけ
人々を分断してしまう非常に難しい問題ですし、それに対
ればなりません。現実的な見方をしていかなければならな
して反対するということもまた難しいことだと思います。
いと思います。
しかし先ほども申しましたが、ちょっと離れた見方をする
それから政治経済的な要素、この博物館運営のビジネス
ことです。つまり、ビルバオがやってきたこと、そして、
ですが、これは大きなビジネスとなってきていて、インタ
グッゲンハイムが果たしたことに対して、もっと視野のひ
ーナショナルなビジネスであるとか、ツーリズムといった
ろい観点からコスト効果性を見ていきたい、そして、ソー
ことになってきています。その地域に対するベネフィット
シャルコストについても考えていきたいと思います。
そこから、さらに吟味をしなければなりません。なぜか
というと、まだそうしたことが吟味されていないからです。
(恩恵)がどういうものであるかも考えていかなければなら
ないと思います。以上、グッゲンハイムについてのコメン
トです。
ひとつに、事例としてはまだ認められていませんし、ここ
次に、ブランディングということに触れます。すでに指
からスタートするということでもありません。いろいろな
摘されているように、私どもにとって、なぜこのような活
議論がまだ残っているから、ビルバオをひとつの結論とし
動をやって人々をひきつける必要があるのでしょうか。非
てもっていくこともできません。おそらく、いろいろなプ
常に興味深い活動事例をひとつあげます。必ずしもこれは
ラスの面とネガティブの面があると考えます。そして、実
従来型の、いわゆるセールスをするとか、広告をするとい
際どのようなインパクト、効果があったのか。例えば、そ
うことに限らず、ブランディングというのはいったい誰の
の地域においての参加はどうであったのか。ギャラリーに
ためのものなのか、何のためのものなのかを考えなければ
行った人たち、参加した人たちは、ほとんどが外部の人た
なりません。つまり、ブランディングをすることによって
ちでしょうから。
誰が恩恵をえるのかを考えなければならないと思います。
もうひとつには、持続性の問題があげられると思います。
国
際
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ン
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ジ
ウ
ム
﹁
新
・
都
市
の
時
代
︱
創
造
都
市
の
発
展
と
連
携
を
求
め
て
﹂
︱
総
合
討
論
これは、いわゆるナラティブな(語りのような)もので
いったんそこに出かけていって、もしかしたら再度、行く
す。自分たちで自分のまちのことを語る。自分たちがそれ
かもしれません。しかし、好きであってもそれ以上頻繁に
で満足をするのであれば、日和見的にそれを文化創造産業
89
で売りだしていくことにつながるわけです。これは長年、
クショップを催したりするようになりました。
ランドリーさんが言っていますが、そこに人がいるのであ
まちのダウンタウンは、ウォルマートができたり、巨大
れば、その人が何を望んでいるのか。その望んでいるもの
な郊外型ショップができていて、他のまちと同じように完
をベースとして、有機的に発展させていかなければなりま
全に荒廃していましたが、このプロジェクトによって、こ
せん。外から与えて押しつけるのではダメです。押しつけ
の小さいダウンタウンがまったく新しくなり、新しいカフ
られれば、それに対して反発をするということもおこるで
ェもつくられるようになりました。これは周辺の人たちの
しょう。ですから、ミュージアムのようなメガプロジェク
ためのもので、他の都市からやってくるツーリストのため
トのときにも、そういう市民からの力が必要だと思います。
のものではありません。つまり、地元の人たちが自分たち
の可処分所得を使ったということです。隣まちのウォルマ
地元発信のアート活動
(矢作)
ートに行って安価な輸入品を買うのではなく、自分の地元
に可処分所得のなかからお金をだして、地元のアートをよ
いまのご発言に関連して、マークセン先生におう
くしようとしているのです。これは非常に小さなまちの例
かがいしたいのですが、ビルバオの場合もそうですが、あ
ですが、同じことはもう少し大規模な都市でもおこりうる
るいはグラスゴーやリバプールもそうだったと思いますが、
と思います。要するに、文化の中心が分権化され、分散化
EUの文化都市という考え方です。それにともなって、都
していくということだと思います。
市づくりあるいは、都市再開発がおこなわれているわけで
また、オーストラリアの小さいまちでエルビス祭りをや
すが、大西洋の反対側から見ていて、ヨーロッパの文化都
っています。これが、どんどん大きくなっていろいろな人
市戦略はどのように見えますか。
がやってくるようになりました。単に1回きりのイベント
ではありません。さらに私たちは、好きなように車を装飾
(マークセン) 申し訳ないのですが、実はよく知りません。
して展示するアートカーパレードをやっています。とても
ドイツでもそれについていろいろな討議があったのですが、
楽しいイベントで、コミュニティの人もとても喜んでいま
私は十分に理解できていないと思います。その文化都市と
す。いろいろなかたちで、既存のいまあるもの、そのコミ
いうものがいったい何なのかよくわかっていません。ここ
ュニティの人たちがもっている創造性やスキルを活用して、
で私たちが話をしていることよりも、もう少し幅のひろい
そのためのスペースをつくりだすことは可能だと思います。
話でしょう。ですから、ヨーロッパからおこしの方に任せ
たいとお思います。
先ほどのお話の続きでいいでしょうか。いくつかいろい
芸術や文化にお金をだしてツーリストをよんできて、経
済的な波及効果を狙うだけという考え方は避けなければな
りません。つまり、研究者が検証して研究をする。これは、
ろな事例がもうでていると思いますが、石毛先生から非常
瀬田先生がおっしゃったことです。いろいろなアプローチ
に重要な指摘がありました。つまり、その都市の特徴とい
を研究者がきちんと検証すべきです。例えば、フラッグシ
うことです。その土地に住んでいる人たちが、その都市に
ップの大規模な美術館をつくってもいいのか。あるいは、
とって何が重要だと思っているかに関連してくると思いま
ブランドのためにコンサルタントをよんでくるべきなのか。
す。アメリカの中小都市では、特徴を明確にして成功して
あるいは、とても有名なヨーロッパの建築家に来てもらっ
いるところが多いと思います。例えば、ナッシュビルはカ
て、建ててもらうべきなのか。そういったことを検証すべ
ントリーミュージックの中心になっていますが、誰かがそ
きだと思います。
こに行って、建物はこういうものをつくりましょうなどと
私のまちの建築家の多くは、他のまちでもいろいろな仕
言って生まれたのではなく、カントリーミュージックとい
事をやっています。それら人たちは、例えば、新しい芸術
う、その土地の固有の文化を元に、その土地の人たちがつ
設備のコンペには出場できないようになっています。です
くりあげてきたのです。もちろん時間はかかりましたが、
から、この分野についてもっと考えるべきだと思います。
そこにはその土地から生まれてきた「らしさ」があるわけ
研究者自体も、この面では責任をもってコミュニティや市
です。
民に応えていくべきでしょう。つまり、検証するのが研究
私は、主要都市から5時間離れたような中小都市を研究
しているのですが、例えばミネソタでは、ダウンタウンを
者の役目なのです。
それから、アンディ・プラット先生の方から、ビルバオ
再生する地域の文化芸術センターなどをつくっています。
での影響についてお話がありました。こういったさまざま
アーティスト自身がやりはじめたことです。もともと古い
な文化、それから、創造都市戦略から、誰が受益者となる
農場にいたのですが、そこで少し飽き飽きして、ミネアポ
のかということです。資源が限られているのですから、市
リスの財団を見つけて、アーティスト・レジデンスを自分
長、市議会、大学は本当に賢明な決定をしなくてはなりま
の農場でやることになりました。アーティストがまちの市
せん。
議会にアプローチして、この古い建物を使わせてください
と頼んだところ、建物の所有者が提供したのです。市議会
金沢21世紀美術館
の方もこれはいいと認め、その土地のアーティストが外に
行った結果、そのプロジェクトに参加しましょう、出資し
90
(佐々木)
私は昨日、報告を発表させてもらったときに、
ましょうというアーティストがでてきて、このセンターで
いくつか事例をゆっくり話したかったのですが、その時間
はいろいろなことがなされています。地元のローカルなア
がなかったので、いまのビルバオのケース、あるいは、ミ
ーティストの音楽や芸術の公演をやっています。さらに、
ネアポリス、ミネソタ州の取り組みとの関係で、私の考え
アーティスト・イン・レジデンスにも、有名なイスラエル
方を少し説明したいと思います。
のジャズピアニストがやってきて、即興で教えたり、ワー
例えば、大阪市に新しい現代アートの美術館をつくりた
いという希望があって、そのための準備室も設置したので
そのために、例えば美術館がオープンしてから半年間の
すが、なかなか実現できない状態が続いています。たいへ
うちに金沢市内の小中学生全員を無料で招待しました。そ
んな財政危機でもありますし、新しくナレッジキャピタル
して、彼らがどんなに楽しい体験をしたかを家に帰って両
と称して、再開発で高層ビルを建てるプロジェクトが進ん
親に伝え、またその両親が美術館を訪れてくるというプロ
でいることもあり、そちらの優先順位が高いとされている
セスが生まれました。こういったやり方は、都市のなかで
からです。ただ、私はまず財政的な優先順位をつけるなら
新しい文化的な消費があり、今度はそのことがきっかけに
ば、美術館やアーティストの集まるセンターを優先したほ
なって伝統産業や新しい産業の文化的な生産に結びつくわ
うが、大阪市にとっていいのではないかという感想をもっ
けです。こういったよい循環をつくりだすような美術館の
ています。
つくり方が創造都市にとっては大事なのではないかと考え
その次に、どういった美術館なのか、アートセンターな
ています。
のか、アーティストのためのセンターなのかということが
問題になると思います。私は金沢市が21世紀美術館をつく
スペースの必要性と受益者の問題
ったプロセスにずっとかかわってきました。金沢21世紀美
術館は比較的成功したひとつのモデルではないかと思って
(矢作)
いまの佐々木先生のお話、それから、先ほどのマ
います。それは、ビルバオ的な意味で成功したという意味
ークセン先生、プラット先生のお話にも関係ありますが、
ではなく、金沢という伝統工芸や伝統芸能が非常にしっか
話したいことが2点あります。
りした都市が、コンテンポラリーアートという分野に新た
なる美術館をつくることに成功したという意味です。
10年以上前に、現代美術館をぜひつくりたいということ
で、市長から相談を受けたとき、必ず伝統工芸や伝統芸能
まず、それぞれの土地の創造性を育てたり、示したりす
るスペースが必要だとマークセン先生はおっしゃいました。
それから、受益者は誰なのかということをマークセン先生
とプラット先生のおふたりともご発言されました。
の領域から反対意見がある。伝統芸能や伝統工芸にかかわ
ここでふたつの事例をお話しします。ひとつは、ダラス
っている方々は、もっと自分たちのために予算を欲しいと
の中心市街地で、自営業の小さな商店の経営者たちが組織
いうはずで、それでも、それを説得するだけの材料があり
をつくっています。そのなかに、地元の作家やエッセイス
ますかと、私は聞きました。そのときに市長はなみなみな
トの作品を積極的に展示している本屋があるのですが、そ
らぬ決意をもっていて、地元の伝統工芸や伝統芸能、ある
こに全米チェーンの大きな本屋が進出してくると、小さな
いは地元のファッション産業にとってプラスになるような
地元の本屋はつぶれてしまいます。それで、インディペン
現代美術館がつくれる、あるいはそうしなければいけない
デント系の商店街が手を組んで、大手の本屋の進出を排除
と考えていたわけです。
する運動をおこし成功しました。そういう意味で、スペー
しかして、実際にコンフリクトがおこりました。地元の
スを確保していくことはすごく大事なことだと思います。
メディアや伝統産業では、現代アートだけ、それも海外の
もうひとつは、受益者は誰なのかということですが、瀬
現代アート作品を高いお金で買うというのはおかしいので
戸内海のど真ん中に直島という島があり、ここをベネッセ
はないかということで、市民を巻きこんで大きな討論がお
という受験産業会社が現代アートの島にしています。直島
きました。私はまず創造都市としての条件は、そういった
というのは、いま、世界ブランドなのです。世界各国50∼
市民を巻きこむ現代アートと伝統芸能の間での大きな討論
60カ国から直島に来るのです。現代アートを見るという目
がおきて、その討論の結果、その後にいかなるプロセスが
的に加えて、著名な建築家の安藤忠雄さんの建物を見に来
進むかということだと思っています。結果的に、金沢市の
るのです。砂浜などあちこちにオブジェが置いてあるので
伝統工芸や伝統芸術の分野であっても、現代アートの作品
すが、一方で島の人にしてみると、何か宇宙のあっちの方
としてみなせるような、非常に先鋭的で実験的でチャレン
から突然オブジェが落ちてきて、砂浜に置いてあるという
ジングな領域は積極的に収蔵するということになりました。
ような感じで、あまり島の人との縁がありません。また、
つまり、伝統というのは伝統をそのまま保存しても意味
突然、世界中から観光客が来るようになったために、それ
がないのです。必ず伝統文化というものはコンテンポラリ
までは戸締まりをしないで外出していた島の人たちが、最
ーな新しい芸術の潮流とぶつかりあって、伝統を自ら変革
近では家を出るときに錠前をするようになりました。こう
するというプロセスがなければ、伝統自体が歴史のなかで
いう状況がでてきて、受益者は誰かということとがわから
ひからびてしまいます。伝統が絶えず革新されていくこと
なくなっています。それでも、直島というのはいまや世界
自体が、新しい都市の文化をつくっていくのです。そのプ
的なクリエイティブアイランドなのです。
ロセスを大事にして美術館をつくってきたということが、
金沢のひとつのポイントだと思います。
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新
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都
市
の
時
代
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創
造
都
市
の
発
展
と
連
携
を
求
め
て
﹂
︱
総
合
討
論
川崎さん、社会学的にはいかかでしょうか。その後、ラ
ンドリーさんにお話をうかがえればと思います。
それから、すでに立派に成功した人たちのためというよ
り、とりわけ小学生や中学生に現代アートに触れてもらう
当事者間での話し合い
ための美術館をつくることが目標でした。その子どもたち
が将来、金沢の産業や文化、社会の担い手になっていくの
(川崎)
いつも難問をふられて、どう答えていいのかと思
です。そういった市民にとって、若いときから現代アート
うのですが、ただ、直島は私も1度、泊まったことがあり
作品に触れ、現代アーティストと一緒にアートプロジェク
ます。とてもすばらしい美術館で、たまたまそのときは家
トに参加するというプロセスが大事です。そうすれば、芸
内と私だけだったので、すごくよかったです。
術への投資は未来の人材をつくるための投資になるわけで
す。
それはそれとして、社会学的に言うと、結局、地元住民
や市民にとって、そういう文化遺産や文化的な装置にどう
91
いう意味があるのかということだと思います。このケース
のと非物理的なものをどのようにうまく調和させていくの
は非常に難しいものがあります。先ほども言いましたが、
か、目に見えないものをどうやって目に見えるようなかた
とにかく当事者同士が話しあうことです。当事者というの
ちにしていくのかということです。都市開発でこういった
は、観光客は別として、市の当局と市民の人たちです。市
ものをすべて結びつける要因は、インスピレーションのク
民といってもいろいろな団体もありますし、組織化されて
リティカルマス(臨界質量)をどのようにして達成するの
いない場合もあると思いますが、それらの方々が何度も話
か、そして最終的には、どれは物理的でよく、どれは物理
しあって対策を講ずる以外にないと思います。解決しよう
的ではない方がよいかという仕分けをすることなのです。
とするプロセス自体が大切なのだと思います。
どれがプログラムで対応できるのかということを考えたう
ですから、直島の場合はかなり難しいとは思うのですが、
えで、さまざまな志が都市にはあると思いますが、それを
お互いに知恵をだしあってやる必要があると思います。あ
物理的にどう実現していくのかということだと思います。
そこまでわざわざ来るという方はそれなりの方で、よほど
私の直感で言いますと、軸足としてはおそらく、小規模な
の美術好きとかそういう方だと思われるわけです。ですか
ものを30件つくる方が、大きなものを1件つくるよりはい
ら、そういう意味で、どこまでいっても当事者間でいろい
いのではないかと思います。
ろと意思決定、あるいは、工夫をするプロセスをあきらめ
ふたつ目です。いまここで話をしているときには、ブラ
ずに続けて改善する方向にもっていくことが、一番現実的
ンディングという言葉は使わない方がいいと思います。わ
な解決ではないかと思います。
れわれは都市にブランドを与えようということではなく、
いい評判をつくりあげるということを考えているわけです。
(矢作)
直島というのは、車でおおよそ20分もあるとグル
それはいろいろなプロセスを経ることになるわけで、それ
ッと回れてしまいます。たいへんきれいな砂浜があり、そ
が先ほど言いましたような30件のプロジェクトにつながっ
こにカボチャのようなものやテントウムシのようなものが
ていくのかもしれません。例えばビルバオにおいても、ミ
ドーンとあちこち置いてあって、世界各国から人が来てい
ュージアムというのは単なる偶然で、ミュージアム建設が
ます。本当にここ2∼3年の間に来島者数がうなぎのぼり
合意を見る15年ぐらい前に、すでに戦略的におもしろいこ
に増えています。それまではごく静かな島でしたから、島
とを手がけているわけです。多くのものが社会的なプログ
の人はみなさんは、家を出るときも鍵を閉めないで出かけ
ラムですが、ビルバオという、いままでやってきたことを
ていたのですが、いまや車は狭い路地裏にまではいってく
打ち消してしまうだけのインパクトのあるものができてし
るし、知らない人が島中歩くということで鍵を閉めなけれ
まったので忘れがちですが、ビルバオ・メトロポリ30とい
ばならなくなって当惑気味らしいのです。そういうある種
うものがありました。すなわち、30年先を見てのプロジェ
のカルチャーツーリズム公害をどう考えたらよいのでしょ
クトだったわけです。1975年にビルバオが築いたものとは
うか。
違う産業にはいってしまっています。地域的にも、彼らに
とって不利なのです。いろいろなことを考えたうえで、彼
(川崎)
いまの件でひとつ言い忘れていたのは、観光客に
対して、それなりに観光客が守るべきルールをつくるとか
らは非常に興味深い空港や道路というものをつくろうと思
ったわけです。
お願いというかたちで、何か規制をかけるのはやむをえな
ですから、いろいろ彼らは手がけたていたわけです。そ
いと思います。直島の場合はそれをしてもよいような気が
れは、戦略的には非常に興味深いことで、そこで生まれた
します。
状況は、特定のものにもうすでに合意もできていたことも
あって、ビルバオというチャンスがあらわれたとき、スペ
都市開発の流行と戦略
(ランドリー)
ったのです。サラゴサとかバルセロナなども手を挙げたの
瀬田先生がおっしゃったように、都市開発
ですが、ビルバオの場合には、あらかじめ戦略的な布石を
の流行というものがあると思います。しかし、浅いトレン
打っていて、ある程度、予算も別につけることができたか
ドと深いところのトレンドは区別すべきだと思います。こ
ら可能だったのです。ビルバオのグッゲンハイムというの
れは、都市開発でも同じで、レパートリーとしていろいろ
は、あまり評判のよくないところもありますが、しかし、
なことがおこるわけです。例えば、ミュージアムを建設す
ビルバオがそれを手にいれたことには、それなりの布石が
るとか、シンフォニーホールをつくるといったことがおこ
あったということを考えなければなりません。
なわれます。
92
インのなかでそれに取り組むことができたのは彼らだけだ
また、メトロポリ30というのは、グッゲンハイムについ
ここで一番大きな問題は、別の見方をするならば、ビル
てはあまり話をしていません。彼らがいま手がけている最
バオミュージアムは3億ドルするのですが、ひとつのもの
新のプロジェクトは非常に洗練されたものです。前ほど力
をつくるのに3億ドルでつくるべきなのか、それとも1,000
はありませんが、これは、市にとってのブレーンとなって
万円のプロジェクトを30件するのとどちらがいいのかとい
いる目に見えないプロジェクトです。ビルバオの人たちが、
うことです。また、30件1,000万ドルのプロジェクトと言っ
例えば、どのようにすれば心をもっと開くことができるの
ても、それをすべてハードウェアに投資すべきなのか、そ
かといったようなことを中心に実現しようとしているわけ
れとも、ソフトにも投資すべきなのか、箱物ではなくコン
です。目に見えない価値観というものを、何とか目に見え
テンツの方がいいのではないかということもあります。
るかたちにもっていくことができないかという取り組みを
都市というもののダイナミクスを考えてみますと、物理
しているのです。
性があるということ、それ自体から、市民に問いかけると
他の方がおっしゃったように、ビルバオのグッゲンハイ
ころがあります。そこで、都市開発の要点は、物理的なも
ムについては、いろいろマイナスのことも言われています
が、それほど単純ではないと私は思っています。そして、
創造都市、あるいは創造的な環境、創造的な建物、近隣
地元のアーティストも、ミュージアム自身に関しては非常
区、都市、地域、国と、どんどん大きくしていくことがで
に批判的であったのですが、いまやもう少し前向きな見方
きます。それも興味深いのですが、ここでは、いろいろな
ができるように意見がかわってきていると思います。いず
個人、組織というものが集まったかたちで、それが実現さ
れにしても、バランス感覚が必要なのではないでしょうか。
れるということなのです。
もうひとつは、4∼5日前、私はダラスから30分ぐらい
そこで、3つ目のタイプの創造性の特徴があります。こ
のところにあるフォートワースに行って、安藤忠雄さん設
れは、個人や組織の創造性とは違うものです。前者のふた
計のミュージアムに行ってきました。そこで展覧会をやっ
つの場合には、組織間のネットワーキングが必要であり、
ていたのですが、列が長すぎて、ちょっとズルをしてよう
また、共通のアジェンダを組織間で見つけだすことが重要
やく入ることができました。それでも1時間半くらい列び
です。また、意見は合わないけれども、依然として全体の
ました。その展覧会でおもしろかったのは、黒人系の人が
運動のなかで同じ方向に向いて進んでいくというような可
6割もいたことです。普通は5∼10%程度だと思います。
能性を探ることも必要です。例えば、鳥瞰的、俯瞰的に地
ロン・ミュエク(Ron Mueck )という人の彫刻で、50倍ぐ
域、都市、国といったものを上から見てみると、信じられ
らいの大きさの赤ちゃんや、男性の大人の3倍ぐらいもあ
ないほど興味深い解決が実現されています。創造都市のど
るようなものや、あるいはお年寄りだけれどもとても小さ
こに私が引きつけられるのかといいますと、こうした事例
い人のものなどがあります。
を見つけだすことができれば、ありとあらゆる問題が創造
そして、大きな黒い顔がついているものの周りに黒人系
的なかたちで解決できるのではないかと思うからです。ど
の人が集まっていました。「本物みたいだね。目もこんなに
うしてそういったことが実現できていないのかということ
大きいし、目もちょっと赤くなっているし」などと言って
に焦点をあてるべきなのではないでしょうか。なぜ1カ所
見ていました。つまり、アートいうものは感情を引きだす
だけに固まってしまうのでしょうか。
ものなのです。この場合は、黒人系の人たちが、自分たち
そこで、監査的なものについて考えています。大阪市の
が共感できるような彫刻があると知って訪れていたという
方もおっしゃいましたが、大阪がこれまでやってきておも
ことが明らかだと思います。
しろいなと思ったこと、例えば、ゴミの回収であるとか、
アーティストの奨励、騒音問題への対応、あるいは、社会
創造都市の潜在性
(矢作)
ありがとうございます。アジェンダにつながる方
向で少し議論を方向づけようと思うのですが、まず、いま
的な企業家の発掘であるとか、いろいろ大阪でこれまでお
こったおもしろいことを、大なり小なりリストアップして
みるといいのではないかと思います。そうすると見えてく
るものもあるのではないでしょうか。
のランドリーさんのご説明に対するかたちでひとつご質問
もちろん、みながみな創造的なわけではないことは明ら
します。ランドリーさんにお答えいただいた後、瀬田先生
かです。すなわち、同じ程度の創造性をもっていないこと
にもぜひお答えいただきたいと思います。人間は生まれな
は明らかですが、現状よりは創造的になることができるの
がらに天賦の才があります。生まれながらにみんな天才な
ではないかという考え方です。ときにリチャード・フロリ
のですが、ランドリーさんはどの都市も創造都市になる可
ダに関する批判がなされますが、それは、ゼロサムゲーム
能性をもっているとおっしゃっておられました。ただ人間
であるとプラット先生もおっしゃったとおりで、ひとにぎ
の場合、残念なのは、本来、料理の天才をもって生まれた
りの本当の勝者としての創造都市がでてくるのかどうかと
のに、お母さんが一所懸命ピアノを教えるのでその才能は
いうことです。ここでわれわれが話している創造都市とい
開花しないというように、だいたいの多くの人がそうやっ
うのは、個々のどの都市にもあてはまりうるわけです。そ
て人生を終わっていきます。創造都市の潜在性をどのよう
れぞれの都市は、いまよりはよく、もっと創造的に問題の
に見つけることができるのかということについて、かいつ
解決にあたることができるはずだという考え方です。
まんでお話しいただきたいと思います。
先ほども申しましたけれども、それぞれの都市、世界中
国
際
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
﹁
新
・
都
市
の
時
代
︱
創
造
都
市
の
発
展
と
連
携
を
求
め
て
﹂
︱
総
合
討
論
のありとあらゆる都市には、もっとやらなければならない
(ランドリー)
個人、組織、都市というものは、想像力と
ことがあります。それは、現状の再評価です。現状を再評
いう意味では区別すべきだと思います。想像力があって、
価して、これから先、どこにいきうるのかということは、
好奇心があって、関心があってという特性を説明すること
ある意味ではクリエーション(創造)そのものだと思いま
はできます。それと同時に、組織についてもどのような特
す。そういったなかで、いまのままでいいのだというとこ
性があるのかというようなことについては、いろいろな言
ろもあるでしょうし、いや、こうかわりたいのだというと
葉で語ることができますが、どのような資質が必要なのか
ころもでてくると思います。自己反省して、内省して現状
ということについては、興味深いことはそれぞれ違うわけ
はどうなのかという分析が必要だと思います。
です。
例えば、組織と個人を区別するとして、組織の創造的な
文化芸術の振興と都市の振興
ところを引きだすには、チームワークや共同作業といった
まったく違った属性が必要です。また、組織においては、
(瀬田)
文化芸術を振興・発展させるということと、都市
創造性を発揮させたい場合には、いわば独立独歩型の人た
全体を発展させるということとはかなり違う概念だという
ちでも組織のなかでうまく作業できるような環境を与える
ことです。そこで注意しなければいけないことの代表例が、
ことも必要でしょう。いろいろな意味で重点が違うわけで
まさにブランディングです。ブランディングによって、例
す。
えば、都市がブランドとなって、都市全体はもしかしたら
93
観光やある種の産業によって発展するかもしれませんが、
造の場であったり、創造の渦をおこすような場になってい
そのことが芸術家自身の幸せになるかどうかは、おそらく
くわけです。その意味で、創造都市の担い手の人たちが、
また別の問題でしょう。もちろん、都市で生まれた芸術が
行政や民間の経済セクター、さらには市民的なNPOのセ
より高く売れて幸せになるアーティストもいるかもしれま
クターの個々人がいろいろな場で集まってネットワークし
せんが、地価が高くなって追いだされてしまうアーティス
ていくということはたいへん有意義なものだと、そのたび
トもいるかもしれません。
ごとに思っています。
私はここに至るまで「創造的」ということの定義がよく
一方で、グローバリゼーションのいまの流れですと、競
わからなかったので、それについて述べる立場にはありま
争ということが外から押しつけられているわけで、ある意
せんが、ただ、文化芸術の振興をもって都市が発展すると
味では、創造都市というユネスコのブランドを手にいれた
いうように、両方が成立するというケースは、当然あると
いという都市政策の担当者の思いがあるかもしれません。
思います。ただ、そうでない都市もあります。では、大阪
場合によると、都市間競争というような場面が、今後、日
を考えた場合にどうか。これは非常に可能性があるように
本のなかでもおこるかもしれません。現に、いまから20年
思います。もともと大阪には多様性があって、こう言って
前には日本国内でテクノポリスという政策があって、ハイ
は何ですが、非常にきれいなところから非常に汚いところ
テクインダストリーの誘致合戦がおこりました。当時、私
まである。あるいは、外国人の比率も非常に高く、いろい
はマークセンさんと一緒に、ハイテク産業と都市の問題な
ろな人種がいる。そういったことが、創造性や、特に文化
どを調べておりました。また10年前には、グローバルシテ
芸術にとっては、非常にプラスにはたらくと私は思います。
ィになるための競争がおこっていました。
私は東京出身ですが、東京にくらべても、そういう意味で
は、非常に可能性が高いのではないかと考えています。
他のどの都市でも、文化芸術の振興が都市の振興に結び
つくかどうかということは、私が前から言っているように、
検証が必要だと思います。大阪についてもそうなのですが、
競争によって他の都市をだしぬくようなことをしていた
のでは、創造性は生まれてこないと思います。お互いが胸
を開いて、なかよく相互に学びあわないと、創造性という
ものは生まれてこないのではないでしょうか。
そういう意味では、創造都市間のブランドをめぐるよう
大阪については、私は、まだ検証したわけではありません
な競争は避けるべきだと思います。むしろ互いが学びあう
が、非常に可能性は高いのではないかと考えております。
ような、そして、互いが欠けているものを学びながらさら
に創造都市的に発展していけるようなネットワークを、ぜ
創造都市のネットワーキングの可能性
(矢作)
本日の議論を含めて、創造都市のネットワーキン
ひいま、よびかけないといけないのではないか、そのタイ
ミングにきているのではないかと思います。
とりわけ、アジアにおいては急激な経済成長があり、ほ
グということについてかなり議論がされたように思います。
うっておくと競争原理がたいへん強くでてくる可能性があ
そのミッション(使命)や可能性について、佐々木先生や
ります。ですから、大阪というアジアにおける大都市とし
プラット先生は、この創造都市ネットワークが、単なるな
ては、日本国内の創造都市のネットワーク、アジアのレベ
かよしクラブのようなものではダメで、もっと生産関係ま
ルでの創造都市のネットワーク、そしてユネスコが提唱し
で入り込んだ関係が必要だと指摘されたように私は理解し
ているようなグローバルなレベルでの創造都市のネットワ
ました。そこで佐々木先生とプラット先生から、創造都市
ークなど、さまざまなレベルでのネットワークのひとつの
のネットワーキングの役割と可能性についてご発言いただ
ノード(結節点)になっていくことが、大阪にとっても大
ければと思います。
事ですし、ふさわしいのではないかと、今回この会議をと
おしてあらためて実感しています。
(佐々木)
私はこの10年ぐらい、日本国内、それから、ア
ジア、ヨーロッパ、アメリカと、世界の各地での創造都市、
(矢作) 創造性というのは、先ほどからうかがっていると、
創造産業、創造階級にかかわるシンポジウムやワークショ
どうもそれぞれの都市にきわめて固有性の高いもののよう
ップに、毎年何回もあちこち参加してまいりました。その
ですので、トランスファーするのも難しそうですが、創造
都度、新しい発見があって、ここにいるメンバーも、ほと
都市のネットワーキングの可能性について、プラット先生、
んどそうした活動のなかでネットワークができてきたので
お話しいただけますか。
すが、今回もまた、大阪市のご協力もあって、ボローニャ、
モントリオール、サンタフェ、上海、そして日本のたくさ
んの都市関係者が3日間お集まりになりました。
94
(プラット)
ネットワークグループにおける原則というの
は、すべての関係者がいかに前向きで学習的なリソースを
実は、ユネスコの創造都市ネットワークの3つの都市の
ポジティブに見いだすことができるかということです。確
担当者も、あまり話しあいをしていなかったのです。とこ
かに、オープンなアクセスで提供していかなければなりま
ろが今回、この大阪で3つの濃い交流ができ、私どもと多
せんし、お互いに意見を交流させ、情報を交換することが
角的な議論をしていくなかで非常な刺激を受けたそうです。
必要です。お互いの情報を内省しながら、他者に対しても
先ほどランドリーさんが言ったように、個々人がもってい
情報を提供して、それがどのように他者に大きな影響を与
る創造性と、組織がもっている創造性と都市がもっている
えることができるかということも問題です。
創造性のレベルは違うのですが、私は、個々人がもってい
国際的な同意、あるいは、提案が継続的にでてきて、そ
る創造性が一番基礎にあると思います。その個々人の創造
の流れに従いながらやっていくことも必要だと思います。
性が、こういう場をとおしてお互い刺激しあうことで、新
ですから、文化そして創造産業はいったい何かということ
しい発想がいっぱいわいてくるわけです。こういう場が創
については、ユネスコが提示しているものもあるわけです
から、そういった活動と提携することも必要です。例えば
ますが、文化都市と文化産業都市というのは、かなり違っ
UNCTAD(国連貿易開発会議)が世界各地で経済的な
て考えなければいけないのでしょうか。
側面で活動しています。都市はそのなかでも活動している
わけですから、既存の政策とのインターフェースも考えな
(マークセン)
まず重要なことは、ネットワーキングには
ければならないと思います。つまり、再度それらをつなぎ
時間がかかるということです。私はかなり政策にかかわる
あわせることができれば、よりパワフルになってくると思
活動をしました。いろいろなレベルの政府と、短期間では
います。
ありますが、共同作業をやってきた経験から言うと、意味
もうひとつ、ユネスコのブランドということについては、
あるかたちで関与してもらうためには、まず次のようなこ
非常に懸念があります。ユネスコが問題というわけではあ
とを示す必要があります。つまり、ネットワーキングにか
りませんが、2週間前パリにいて、世界遺産の話をしてい
ける時間がどれくらいなのか、どのような種類のネットワ
ました。基本的にふたりの人間で、全世界の世界遺産を管
ーキングなのかということをです。担当者の方には、その
理しているのです。個々の遺跡をというわけではなく、全
ほかにも仕事があるわけですから。
体の管理をしているわけです。ユネスコの観点から言うと、
また、都市がネットワークをするのではなく、そのなか
それぞれ個別の遺跡からのそれぞれのニーズをどのように
にいる人間がネットワークするわけですから、対象は誰な
管理していくかが彼らの問題です。そして、いかに建設的
のかということを考えなければなりません。例えば大阪市
な話しあいをしたうえで、ムダなくその管理をすることが
のみなさんと、他の地域にいる私たちのような専門家をネ
できるかが彼らの問題です。
ットワークをするというのなら、それはまたひとつのあり
多くの重要な質問が今回の会議でもでてきたと思います。
方です。しかし、それぞれが何百件もの仕事を、他の担当
何が成功し、何が成功しないか、なぜうまくいかないのか、
分野をかかえているわけです。アンディ・プラットさんが
どのようなものがいい事例なのか、あるいは1カ所でうま
言ったように、オープンアクセス、オープンなかたちのネ
く成功した例についての情報を共有する。それはほかの場
ットワークの管理ということもあるでしょう。かなり具体
所ではうまくいかないかもしれないといった情報を、アイ
的に、さまざまな都市で何がおこっているのかということ
デアの情報として交流させるということが都市間でできる
を考えなくては、ネットワーキングの可能性というのは語
と思います。こういったことをアジェンダに盛りこんでい
れないと思います。
きたいと考えます。
それから、“Creative(創造的)”対“Cultural(文化的)”
学術的な観点から見ると、都市の特性やサイズなども確
ということに関しても、十分にコンセンサスがえられてい
かに関連しますが、ネットワークをはかるということは、
ないと思うので、アジェンダをまとめるには、それを明確
何らかの有効な利用価値のあるようなものをつくり、お互
にする必要があると思います。また、文化産業と文化的な
いに前向きなかたちでその情報を交流させることを考えな
職業の両方を考える必要があると思います。それぞれが少
ければなりません。どのような大きさの都市、どのような
しずつ違います。それぞれに関するデータも違いますし、
形態の都市が参加すべきなのか、小さい都市もいれるのか、
それぞれの組織も違います。というのも、文化的な職業に
大都市だけなのか、あるいは、ある特定の地域だけなのか、
ついては、十分な研究がなされていません。文化的な職業
あるいは、どの地域から選択的にどの都市を選んでネット
と文化的な産業の間には関連があると思いますので、私は
ワーク化していくのかということなどです。こういったリ
何とか研究しようと思っています。
ソースの共有については、ときにはそういうことを考えて
いかなければならないと思います。
それから、創造クラスターについてですが、アメリカに
おいては、クラスターという概念とその使用方法があまり
ですから、単にスキルを共有する、リソースを共有する
信憑性をもたなくなってきています。非常にファジーな曖
だけでなく、お互いに何がうまくいって、何がうまくいか
昧模糊とした言葉だというわけです。個人的には、このク
ないか、お互いに学習することを目的としてネットワーキ
ラスターという言葉をもし使うのであれば、いったい創造
ングをしていかなければなりません。また、どのように評
クラスターとは何なのかということを明確にしないと使え
価をするか、そして、何をベースとして比較対象として評
ないのではないかと思っています。
国
際
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
﹁
新
・
都
市
の
時
代
︱
創
造
都
市
の
発
展
と
連
携
を
求
め
て
﹂
︱
総
合
討
論
価をするかということも考えていかなければならないと思
います。ここには多くの可能性が秘められていると思いま
グッドプラクティスモデルの提示
すが、いわゆるアンカーとなるような戦略的な方向性が示
すことができれば、それが有効にはたらいていくと思いま
(矢作)
アジェンダを含めて、あるいは、後半部の先生方
す。オープンなネットワークではなく、どういった方向で
の議論を含めて、何かご質問やご意見があればうかがいま
発達させていくかを明記した方がいいのではないかと思い
す。
ます。基礎となるようなアンカー的なナレッジがあると思
(フロア質問:岡田)
います。
文化都市と文化産業都市
(矢作)
マークセン先生にも、創造都市ネットワーキング
に関する可能性やその役割についてご発言いただきたいと
私は創造産業に関して、インキュベ
ーティングのコンサルティングをしている岡田と申します。
横浜から参りました。後半の創造都市のブランディングと
いう話に関して、私が考えていることを申しあげたいと思
います。
思います。それからもう1点、マークセン先生は、文化都
いま、日本のなかで創造都市というと、私たちは創造都
市という言葉をずっとお使いになっていて、文化産業都市
市になりたい、創造都市だと名のりをあげたところがネッ
という言葉はお使いになっていなかったように理解してい
トワークをつくってきていると思います。ところが、すで
95
に創造都市であるところ、もしくは、創造都市のなかでグ
ではないでしょうか。そういうところで育った人たちが成
ッドプラクティスモデルと思われるようなところで、まだ
長していったときに、創造的な発想をもつことができるの
気づかれていないところがいろいろとあるわけです。こう
ではないかと考えています。
いうところに創造都市をひろげていく、もしくは、これが
ヨーロッパには、非常に刺激的な彫刻があったり、建物
創造都市だというサクセスストーリーを論述する立場の人
があったりするのですが、全体的な調和がとれているなか
たちが見つけてあげて、あなた方は創造都市だとか、創造
に刺激的なものがあれば、それはひとつのイノベーション
都市としてこれはすばらしいから見た方がいいというよう
にもつながっていくでしょう。しかし、いわゆる雑多な都
な話が、こういうネットワークからでてくるといいのでは
市において、そういうものがあっても、ただ雑然としてい
ないかと思っています。
るだけにすぎなくなってしまいます。いまは調和がとれて
例えば、ふたつの事例をあげます。いま、滋賀県の彦根
いなくて美しくなくても、100年後にとっては価値のあるも
では四百年祭という祭りがおこなわれているのですが、地
のかもしれないというお話もでましたが、いま調和がとれ
域の人たちにそのキャラクターやキャラクター商品を自由
ていない、美しくないのであれば、将来のことも考えられ
に使う、もしくは、それをひろめることをコモンズ的に提
ないのではないかと思います。景観の調和と創造性とのつ
供することで、お金をかけなくても集客するようになりま
ながりについてご意見をお願いします。
した。70万人集める予定が、2カ月前でもう70万人を突破
してしまいました。城を見るのではなく、そのキャラクタ
(矢作)
それでは、おふたりにかいつまんでお話をいただ
ーを見たり、商品を買ったりするために集まったわけです。
きましょう。ここに都市計画の専攻の先生と、建築の専門
こんなことができるじゃはないかということで、モノをつ
の方がおられますから、ごく簡単にコメントをもらいます。
くるだけではなく、市民がイベント事をもするようになる
まず建築家のシィリエさんに、その後、都市計画専攻の瀬
という事態がおこっています。それは、とても有名なアー
田先生にお願いします。都市の空間の美しさ、あるいは、
ティストが来ているからではなく、創造性を市民に開放す
調和ということと、そこに暮らす人の創造性の間に深い因
ることによって自らエンパワーメントして、それが観光や
果関係があるのではないかというご質問です。どのように
産業価値を高めているという、新しい経済の枠組みのなか
お考えになっておられますか。
での創造都市がおこってきているわけです。でも、それを
している人たちは、それが創造都市だということを誰も気
づいていなかったわけです。
同じように、いま、東京のなかで、コンテンツ産業の育
(シィリエ)
簡単な問題ではないと思います。都市の物理
的な景観や調和という面は、建築家だけの責任ではありま
せんし、社会がその物理的な景観をどのように考えるかは、
成がおこなわれていて、国家予算も投じられているのです
建築家にとどまる問題ではないと思います。外観やさまざ
が、それに対するキャンペーンを都民は誰も知りません。
まな文化によって異なる都市のモデルが生まれてくるので
ところが、国が何も言わなくても、東京で来週からデザイ
す。世界都市というのは、お互いに類似した景観をもつよ
ンイベントが大規模におこなわれるのですが、100万人近い
うになっているのかもしれませんが、そうでない場合もあ
人たちがそれにかかわって集まり、有料入場者だけでも何
ります。例えばアジアの都市、特に日本の都市です。ヨー
十万人も来るわけです。このデザインは、創造産業ではな
ロッパの市内における生活の規則によって、いかに市の景
く、コンテンツ産業ではないからということで知られてい
観が決まってくるか、規定されるかということ、そして、
ないところがあります。でも、創造産業として、ロンドン
文化自体がどのように現代のアジアの都市景観をつくって
と同様の力がいまは東京にあるのに、それを誰もメジャー
いるかを考えてみると、伝統的な日本の建築物とコンテン
で測ってくれないので、活かしきれていません。
ポラリーな都市の建築物を比較してみるのは非常におもし
これが創造都市だというグッドプラクティスモデルをみ
なさんの方でだしてひろげていくことで、全体的な底上げ
ができるようになるのではないかと思っています。
ろいと思います。非常に大きな違いが、物理的な景観の差
としてでてくるわけです。
これは、ひとつにはアプローチの仕方の違い、あるいは、
文化的なアプローチやプロセスが違うということが背景に
景観の調和と創造のつながり
(フロア質問:成田)
が大都市になっていくというプロセスやアプローチの違い
大阪市立大学大学院の1回生の成田
にもあるでしょう。私見ですが、日本においては、ヨーロ
と申します。創造都市と景観について、ひとつだけご質問
ッパの諸都市の都市生活や歴史的なプロセスと違う背景を
させていただきます。先ほどのお話のなかで、その都市に
もつので、都市の物理的な景観が異なるということもある
ある潜在的なものが創造性につながるのではないかという
と思います。日本のほとんどの都市は、第二次世界大戦後
お話がありました。昨日、今日のお話のなかにもありまし
に成長してきました。火災によってつぶれて、その後で何
たように、都市の美しさというものは非常に難しい問題で
度もつくり直されて、日本においては都市の景観がその都
あるということで、これからどんどん議論しなければいけ
度つくりかえられてきたわけです。ですから、社会の機能
ません。
のあり方をよく反映していると言えるかもしれません。ま
個人の思いや、多くの人たちが都市の美しさというもの
をどう考えるか、そこに文化や歴史があるということと関
96
あると思います。集落のような小さい都市であったところ
た、美醜についても、いかに直接的にその社会を反映して
いるかという観点からも興味深い点だと思います。
係すると思うのですが、それをもし調和というかたちで呼
びかえるならば、全体的な調和がその都市のなかにあるか
どうかが、創造都市のかなりベーシックなところにあるの
(瀬田)
一般的な意味での創造性ということですが、景観
ということに関しては、創造性を非常に高める場合と、か
えって阻害する場合があります。例えば、イギリスやドイ
くなってしまうわけです。
ツの都市計画というのは非常に評価が高く、ドイツの景観
われわれが話をしていることは、基本的にそんなに高度
の保護というのは、隣の家とつくりを合わせようとしてい
な知識ではなくて、直感的にわれわれが知っている知識で
るところもけっこうあります。その結果、全体としていい
す。そこにおいて重要な問題は、マーケットだけでいいの
まち並みができます。ところがそれは、自分の創造性はぜ
かということです。すなわち、マーケットだけで人が快適
んぜん発揮されていないわけです。隣と同じような建物を
さを感じ、創造的になるのか。刺激と静かさの対比、にぎ
建てなさいということですから、それが阻害するケースで
やかなところもあれば、ちょっとした公園があったりとい
す。
うようなことです。
一方、まちのランドマークとして、そのまちを象徴する
私が考えているもうひとつのことは、どれだけ介入する
ような建物、まさにバルセロナのサグラダ・ファミリア教
か、あるいは介入しないのかということです。プランナー
会のような建築物は、創造性が景観をよくしていると言え
というのは、枠組みをつくることはできます。そのなかで、
ます。景観と創造性という意味では、創造性が景観を非常
多様性が発露する。昨日、アムステルダムのまち並みにつ
によくするケースとその逆のケースと両方あるのではない
いて触れました。それは古くて新しい、非常に多様であり
かと思います。
ながらパターン化もしているわけです。ですから、実はそ
れほど複雑な問題ではないのではないかと私は思っていま
人がクリエイティブになる都市
(ランドリー)
私は、数年、いろいろな都市の人に、その
す。
これまで何千人もの人々と話しをしたと思いますが、メ
ッセージとしては同じことが常にでてきます。例えば、ア
場所について一番好きなところを形容詞であらわしてくれ
メリカ人にまち並みや都市でどういったところが好きか、
と尋ねているのですが、いろいろなものがでてきました。
シアトルを例にとってどういったところが好きですかとき
例えば、「愛らしい(Lovable)」、「住みやすい(Livable)」、
いてみるわけです。サンフランシスコもかなり人気がある
「 楽 し い ( J o y f u l )」 と か 、「 鋭 い ( E d g e )」、「 刺 激 的
と思いますし、シアトルも人気があるでしょう。しかし、
(Stimulating)」、あるいは、「何かやれる」や「企業家精神」
ハーモニーがあるかどうかということは、ちょっと別問題
というような言葉もでてきます。あるいは、「落ち着いた」、
だと思います。ハーモニーということはバランスです。私
「静かな」、「ひっそりと暮らせる」、「反発力があり、適応能
の頭のなかでは、それはバランスとおきかえて考えます。
力がある都市」というようなこともでてきますが、あるい
すなわち、脳のいろいろなところに、別のかたちで反映さ
はクラスターとして言葉をとらえるならば、秩序とカオス
れるものだと思います。
のバランス、あるいは、騒音を抑える、安心・安全といっ
たものに関するものが多いわけです。偉大な都市というの
(矢作)
ありがとうございました。24∼26日の3日間のフ
は、矛盾するようなことを同時に実現することができ、刺
ォーラムでしたが、この午後のディスカッションのみなら
激もあれば、静かな暮らしも約束できるというわけです。
ず、3日間のフォーラムを含めてのまとめるかたちで、最
さて、すべての状況にこうした問答があてはまるわけで
後に佐々木先生にお話をいただいてしめたいと思います。
はないと思いますが、人々にどのような雰囲気を求めるの
かと尋ねてみること、すなわち、どういったところが生活
アジェンダ文案の修正
しやすく、仕事がしやすいかときいてみることは、心理的
な側面から都市を見ることにつながります。
例えば、高層建築があったり、舗装道路が狭い場合には、
(佐々木)
3日間、たいへん多面的で、刺激的な議論にお
つきあいいただきありがとうございました。さて、いまで
コントロールができなくなって威嚇されているような感じ
ましたプラットさんの意見、アン・マークセンさんの意見
を受けるようです。道幅が単に広いという場合には、大通
もとりいれて、アジェンダをとりまとめました。いまから、
りでもなければ、どこにもないような雰囲気を与えてしま
読みあげていきます。
います。大都市の景観において顕著なものは、やはり街路
です。ですから、マークセン先生も昨日おっしゃいました
まず、アジェンダの大きなひとつの柱は、創造都市の発
展と連携を求めるということです。
が、みんなの行く先となるような(デスティネーションを
「世界創造都市フォーラム 2007 in Osakaに参加した私た
つくる)アイコン的な建物は、場を壊してしまう、道を壊
ちは、創造都市連携フォーラム(10月24日)および、国際
してしまいます。通りについていろいろ人々に尋ねてみて
シンポジウム「新・都市の時代−創造都市の発展と連携を
も、いろいろな解答が返ってきます。例えば、「刺激してく
求めて」
(10月25・26日)の3日間の発表と討論をつうじて、
れるところ」、あるいは「グローバルでありながらローカル
以下の点に関して、共通の目標をもって行動することを宣
な雰囲気をもっているようなところ」というようなことが
言するものである。
返ってきます。
国
際
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
﹁
新
・
都
市
の
時
代
︱
創
造
都
市
の
発
展
と
連
携
を
求
め
て
﹂
︱
総
合
討
論
「創造都市」はグローバル化し、知識情報化した21世紀
方法論的には、まず考えることです。そして、もうひと
社会における新しい都市モデルとして、また、都市政策の
つは、「Yes/No分析」です。まちのなかをまず歩き回るわ
目標として、研究者のみならず、世界中の都市に暮らす市
けです。都市というものはどうなっていればうまくいって、
民、都市政策を担当する行政にとって、きわめて重要なも
満足がいって、そして、創造的になりうるかということを
のとなりつつある。
人は直感でわかります。例えば、何も描かれていない白い
創造都市の実現と発展のためには、ユネスコが進めるグ
壁だらけというところには、犯罪が生まれやすく、店も倒
ローバルなレベルでの都市相互の連携のみならず、アジア
産しやすい、すなわち生き生きとしたところがまったくな
レベル、全国レベルでの連携から学ぶとともに、都市内部
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における公共セクター、民間セクター、市民セクターの相
互連携も不可欠であり、多層的で多面的な連携を深めるこ
と、そして、そのための多様なプラットフォームを各都市
が提供するようにはたらきかける。
創造都市をさらに発展させるために、成功要因の研究と
その評価をおこない、以下の点に関する討論を深めて、都
市政策の理論的政策的進化に貢献する。
(1)都市固有の文化と文化的多様性にもとづく創造都市の
展開
(2)都市経済のさらなる発展にとって創造性が果たす役割
(3)都市の問題を、想像力をもって解決しうるように公共、
民間、市民の3つのセクターの組織の役割と目的を見直し、
運営すること
(4)創造都市において芸術家が果たす文化的、社会的、経
済的な役割の重要性
(5)創造都市の経済的エンジンとしての創造的文化産業の
発展
以上の諸点を参加者一同で合意し、各方面にはたらきか
けるものである。
2007年10月26日 世界創造都市フォーラム参加者一同」
以上です。いかがでしょうか。
(矢作)
会場からご意見はありますか。先生方は何かご意
見ありますか。
ないようでしたら、これでアジェンダを発表したいと思
います。どうもありがとうございました。
さて、ふたつほどぜひ付け加えておきたいことがありま
すので、申しあげます。
まず、この3日間の会議、そして明日のワークショップ
は、たいへんたくさんの方々の協力によって、無事ここま
で滞りなく進めてくることができました。大阪市役所、あ
るいは千里文化財団、あるいは大阪市立大学の関係者のみ
なさん、そして、私のごく身近にいる方々にお礼を申しま
す。
それからもうひとつ、この会議をすばらしい内容で支え
てくださった通訳のみなさんにお礼を申しあげたいと思い
ます。どうもありがとうございました。
あとは、明日の宣伝です。討論のなかでもしばしばでて
まいりましたが、シティホール(市役所)を創造的にする
必要があるだろうという思いがありましたので、明日はこ
の会場を離れてシティホールに出かけ、その玄関ホールで
創造的なプロジェクトを、現代アートの関係者と直接、語
りあいながら展開したいと思います。大阪市役所をこのよ
うにしたら創造的になるというひとつの実験ですので、ぜ
ひたくさんの方々に駆けつけていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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