Page 1 アルツハイマー型認知症者における塗り絵の分析 塗り絵による

研究
アルツ八イマー型認知症者における塗り絵の分析
一塗り絵による認知症重症度把握の試み
●
Amly制so『lhecolo『ingに机inAlzheimer,sdiSe“c一Triedloevaluaに【heseven1yofdementiabycoloring
堀川晃義*1.2上城憲司*3
白石浩*’
AMyo9hiHoRIKAwA
KenjiKAMIjou
Him5hiSHIRAHsHI
菅沼一平*l
荻原喜茂*2
IPPciSUcANUMA
Y“highigeOcIIIARA
キーワード:認知症,塗り絵活動,評価
Abstract:アルツハイマー型認知症高齢者92名(重度認知症患者デイケア通所者26名,認知症
病棟入院患者66名)を対象に,塗り絵活動能力を評価する塗り絵テスト(「認知」,「配色」,「面
稲」,「はみだし」,「時間」,「色数」の6つの下位項目)を独自に作成し実施した.塗り絵テスト
はminimentalstateexamination,cunicaldementiarating,troublesomebehaviorscale,
physicalselfLmaintenancescaleとそれぞれ0.55,0.813,-0.42,-0.662の相関を認めた.認
知症の重症度別(軽度群,中等度群,重度群)に比較した結果,塗り絵テストの合計点と下位項
目の「配色」,「色数」で軽度群,中等度群,重度群にそれぞれ有意差を認めた.「認知」,「面積」,
「はみだし」,「時間」において,軽度群と重度群,中等度群と重度群にそれぞれ有意差を認めた.
塗り絵テストの下位項目において,「配色」が認知症関連の評価と最も強い相関が認められ,塗り
絵における「配色」の重要性が明らかとなった.今回開発した塗り絵テストは認知症重症度把握
に有用であることが示唆された.
はじめに
型認知症高齢者(以下AD患者)の塗り絵活動を
認知症の重症度を評価するツールとしては,
分析することで,塗り絵活動が認知症の重症度の
clinicaldementiaratingスケール')(以下CDR)
把握や状態像の変化を予測する手立ての一つにな
やN式老年者用精神状態尺度2)(以下NMスケー
るのではないかと考えた.
ル)が,一般的に用いられている.これらの評価
塗り絵を認知症の評価として用いる先行研究で
法は,認知機能や生活状況等,複数の要素から重
は,中村ら7)が,認知症患者と非認知症患者の比
症度を導き出す評価法であり,多面的な情報が必
較から,認知症高齢者では使用する色数,着色面
要となる.また,作業療法分野では,認知症の重
積が少なく,完成の自覚が乏しい傾向にあること
症度だけでなく,残存能力に着目し、活動から認
を明らかにしており,認知症のスクリーニング評
知能力3'や遂行能力4.51を評価する手法が開発され
価として塗り絵が有用であることを示唆してい
ている.
る.また,大原ら8)は,塗り絵評価尺度を作成し,
一方,塗り絵は認知症高齢者に対する作業療法
認知症高齢者の塗り絵活動能力評価を試みてい
の手段として.使用されることが多い活動の一つ
る.前者では,認知症の重症度における検討は行
である.その要因として.多くの高齢者が過去に
われておらず,後者では,下位項目による臨床像
経験を有し,取り組みやすく、下絵に合わせて,
との検討が行われていない.また,両者とも.塗
どのような色が適しているかを考えることが,知
り絵の重要な要素であると思われる「配色」が取
的な部分への働きかけになる6)と指摘されている
り入れられておらず,認知症高齢者の塗り絵能力
ためである.筆者らは,臨床場面において,認知
の分析や検討という観点で,十分とはいえない.
症高齢者の重症度や状態像に変化がみられたころ
そこで,筆者らは,塗り絵を分析するために「配
と同じ時期に,塗り絵活動においても変化がみら
色」を取り入れた新たな評価方法が必要であると
れた事例を経験した.これらよりアルッハイマー
考えるに至った.
掌'今津赤十字病院.作業療法士〒819-0165福岡市西区今津377,.2国際医療福祉大学大学院,作業療法士.拳3西九州大学
大学院,作業療法士..↓今津赤十字病院,理学療法士
0Tジャーナル46(2):’81-187.2012
18J
図l塗り絵テストの評価用図版
目的
本研究の目的は。AD患者の塗り絵活動能力を
明らかにし,塗り絵活動が,認知症の重症度や状
トと各認知症評価を実施し,その関連性を比較,
検討する.
2)塗り絵テスト使用物品
図lに,塗り絵テストの評価用図版を示す.図
態像を把握する一助となり得るのかを検討するこ
版はB4サイズとし,図柄の配色は推奨色(本来
とである.
選んでほしい色)が明らかな“鯉のぼり",“スイ
方法
1.対象者
2009年(平成21年)5∼11月の期間に,九州地
方の3カ所の重度認知症患者デイケアに通所,ま
カ雨,“栗',,“サンタクロース”(以下“サンタ")
を選択した.色鉛筆は,12色セット(赤,青,黄,
緑,黄緑,水,桃燈,紫,茶,黒,肌)を用い
た
.
3)塗り絵テストの実施方法
たは1カ所の認知症治療病棟に入院しているAD
塗り絵テストは,以下の塗り絵テスト評価マ
患者137名のうち,対象者および介護者へ書面を
ニュアルにそって実施を促した.①利き手側に
用い研究の趣旨を口頭で説明し,同意の得られた
12色入りの色鉛筆.正面に塗り絵を配置する,②
118名を対象とした.上肢の運動機能障害を有す
開始時は,研究の説明を行い,対象の絵が何であ
る者,視覚障害のため色の弁別判断が難しい者.
るかを尋ねる,③作業時間は,鉛筆を持ったとき
1時間の座位保持が困難な者は除外し,92名を最
終的な分析対象者とした(内訳:女性70名,男性
22名,平均年齢:女性81.9±7.1歳,男性79.9±
から塗り終えるまでの時間とし,最大40分で終
10.3歳).
2.手順
評価者から声かけや介助は行わない,⑥対象者か
らの色に関する質問には「何色を考えています
l)研究の手順
か?」と答え,それでも選べない場合は「好きな
手順は,①塗り絵テスト(塗り絵テストの図版
色でいいですよ」と返答し,本人が選んだ色を推
と塗り絵テスト評価表,塗り絵テスト評価マニュ
奨する.また,周囲の認知症高齢者から塗り絵実
施の妨げになるような刺激を受けないよう,他患
アル)を作成する,②対象者92名に,塗り絵テス
了とする,④作業が止まった場合は,1分程度待
ち「終了ですか?」と声かけを行う,⑤基本的に
1 8 2 0 T ジ ャ ー ナ ル ,Vo1..46 No.22012年2M
表l塗り絵テスト評価基準
内容
項目
①認知
各下絵について何である力、の質問を行い.名前を答えたら各2点,名前を答えられないが,言い換え等に
より説明できれば1点‘それ以外を0点とする
鯉のぼりは,いちばん上の鯉を黒,または青,上から2番目の鯉を赤または桃で塗れていれば推奨色で塗っ
ているとする.スイカは,左側の皮・中身を赤または桃,全体を緑または黄緑で塗っていれば推奨色で塗っ
②配色
③面稲
④はみだし
⑤時間
ているとする.栗は茶(下部は黒でもよい)各1点,サンタは,帽子を赤または桃,服を赤または桃を使
用して満色していれば,推奨色で塗っているとする(推奨色基準は8面.図2の②「配色」も参照).全体
を単色または2色で全体を満色している場合は,0点とする
下絵の推奨色基準面を基準とし,推奨色基準面の半分以上の面祇が碕色されていれば,満色しているとみ
なす.各1点
はみだしが,まったくみられない.はみだしは,わずかにみられる程度である.明らかなはみだしがみら
れるが,図柄と背景の判別はできている.図柄と背景を区別しきれていない部分がみられる.明らかに図
柄と背景を区別していない.まったく塗っていない,の6段階で判断する
活動時間は,塗り絵に取り組んだ時間を点数とした.配点は以下の通りである.活動に取り組まない:0
点,1∼5分取り組む:1点,6∼10分取り組む:2点,11∼15分取り組む:3点,16∼20分取り組む:4点,
21∼25分取り組む:5点,26∼30分取り組む:6点,31∼35分取り組む:7点,36∼40分取り組む:8点とす
る
⑥色数
塗り絵を塗る際に用いている色の数(種類)を点数とする.異なる図柄でも同じ色を使用していた場合も
1色(1点)と採点する.例:鯉のぼり,サンタで赤を使用していても点数は1点
者と席を離して実施した.
mini-mentalstateexamination(MMSE).②行動
4)塗り絵テスト分析の項目
観察尺度として,Hughesら')のCDR.③認知症
表lに,塗り絵テストの評価基準と点数配分を
の行動・心理症状(behavioralandpsychological
示す.塗り絵テストの分析項目は,先行研究7 91
symptomsofdementia:BPSD)の評価尺度とし
の評価項目を参考に,筆者らが独自の評価項目を
て,朝田ら''1の問題行動評価票(troublesomebe‐
追加し作成した.分析項目は,①下絵が認知でき
haviorscale:TBS).④日常生活動作(ADL)能力
ているかを問う「認知」.②推奨色で塗っているか
を測定する尺度として,Lawtonら'2'のphysical
を測定する「配色」,③着色の面積を測定する「面
self-maintenancescale(PSMS).
積」.④はみだしの有無を測定する「はみだし」.
3.解析方法と統計分析
⑤活動時間を測定する「時間」.⑥使用色数を測定
塗り絵テスト合計点および各下位項目と年齢,
する「色数」とした.図2に塗り絵テスト評価表
性別,所属,重症度の分析に相関比りを用いた.
を示す.「認知」は,4つの図柄の配点が各2点の
塗り絵テスト合計点および各下位項目とMMSE・
計8点とした.「配色」は4つの図柄に基準面が
TBS,PSMSの分析にはSpearmanの順位相関係
各2面(1面あたり1点)の計8点とした.「面積」
数を用いた.次に,認知症重症度別(CDR)塗り
は,4つの図柄に基準面が各2面(1面あたり1点)
絵テスト合計点および塗り絵テスト小項目の比較
の計8点とした.「はみだし」は,6段階の基準で
を目的にBonferroni法を用いて,多重比較を行っ
評価し,最大5点とした.「活動時間」は,9段階
た.解析にはDr.SPSSⅡfbrwindowsを用いた.
で最大8点とした.「色数」は,使用した色の数を
点数とし,最大12点とした.また,塗り絵テスト
小項目の和を合計点数(以下,塗り絵合計)とした.
結果
今回,AD患者92名に塗り絵を実施した.内
5)認知症評価
訳は,CDRl(軽度認知症:以下軽度群)23名,
対象者に対して以下の評価スケールを用い測定
CDR2(中等度認知症:以下中等度群)51名,
CDR3(重度認知症:以下重度群)18名であった.
した.①認知機能検査として,Folsteinら'0)の
OTジャーナル,,
V
O
L
、
4
6
N().22012年211I“
)
氏名(
日付()
点数
①認知
鯉のぼり(2.正解1.いい換えによる返答0.不正解)
スイカ(2.正解1.いい換えによる返答1.不正解)
栗(2.正解1.いい換えによる返答0.不正解)
サンタ(2.正解1.いい換えによる返答1.不正解)
③面狐
210
(
赤 桃
)
身 (
赤 ・桃)
210
(同左)
(赤・桃)
210
210
210
鯉 の ぼ り 上 . 下
スイカ
皮・中身
210
栗
左
・
右
サ ン タ 帽 子 ・ 服
210
210
210
543210 876543210
④はみだし
210
210
下中右服
鯉 の ぼ り 上 ( 黒 ・ 青 )
ス イ カ 皮 ( 緑 , 黄 緑 )
栗左(茶,下部は黒でも可)
サ ン タ 帽 子 ( 赤 ・ 桃 )
②配色
はみだしが全くみられない
わずかにみられる
明らかなはみだし有り,図柄と背景の判別は可
図柄と背景を区別していない部分がみられる
明らかに図柄と背景を区別していない
全く塗っていない
⑤活動時間
40∼36分活動に取り組む
31∼35分活動に取り組む
26∼30分活動に取り組む
21∼25分活動に取り組む
16∼20分活動に取り組む
11∼15分活動に取り組む
6∼10分活動に取り組む
1∼5分活動に取り組む
活動に取り組まない
色
塗り絵に使用した色数(色の種類)
⑥色数
小計
210
合 計 点
図2塗り絵テスト評価表
表2塗り絵テストと対象者属性との相関係数および相関比
0.227
0.044
0.082
0.086
0.013
0.051
0.366
0.323
0.248
0
.
7
4
0.766
0.757
0.467
0.613
0.316
0
.
4
1
0.425
0.622
0.405
0.525
0.24
0.402
0.262
0.413
合計
0.18
相関係数
0.067
0.509
相関比'7
相関比17
0
.
5
5
相関係数
0.813
相関比'7
|’
0.474
0.465
色数
一一
0.443
0.566
|’
0.493
一一
0.491
0.549
一一
PSMS
時間
0.072
一一
TBS
はみだし
0.197
|’
CDR
面狽
0.165
253469
MMSE
配色
0
.
0
2
釦叫偲杷堰釦髄
●0
●0
●0
守0
■0
●
0●0
認知
年齢
性別
所属
0.468 相 関 係 数
0.662 相 関 係 数
MMSE:mini-mentalstateexamination,CDR:clinicaldementiarating・TBS:trouble‐
somebehaviorscale,*PSMS:physicalselfmaintenancescale
l)認知症関連の評価と塗り絵テストの相関係数はそれぞれ0.55,-0.468.-0.662であり,
表2に,塗り絵テスト合計点,下位項目と対象相関が認められた.また,塗り絵テスト下位項目
者属性との相関係数および相関比を示す.塗り絵とMMSE,TBS,PSMSの比較で,相関係数が最
テストの合計点とMMSE,TBS,PSMSとの相関も高い下位項目は「配色」であり,相関係数は,
I8fOTジャーナルVOL、46No22012年2月
点
犯記釦躯即幅m5O
I
それぞれ0.566,-0.425,-0.622であった.唯
2)認知症重症度における塗り絵テスト結果の
比較
図3に,認知症重症度別塗り絵テスト合計点の
激
熟
1−
あり,認知症重症度と塗り絵テストの強い机関を
認めた.
塗り絵テスト合計点
り絵テスト合計点とCDRの;Ni関比りは0.813で
灘
数
)
「
比較を示す.多重比較では,各群間で有意差を認
CDR1CDR2CDR3
めた(p<0.01).図4に.認知症蒐症度別途I)絵
図3認知症重症度別塗り絵テスト合計点の
比較
*
:
p
<
0
.
(
)
1
テスト下位項目の比較を示す.下位項'1では「配
色」と「色数」において,各群間において有意錐
を認めた(p<0.01).「認知」,「而横」,「はみだ
し」.「時間」では,CDRlとCDR3.CDR2と
色」と「色数」の能力が問<、埴度群に比べ,すべ
CDR3において有意差を認めた(p<0.01).
ての.'、舎位項11の能力が商いことがIリjらかとなった.
3)塗り絵テストで観察された認知症重斥度に
おける塗り絵活動の特徴
IlI等度鮮の対象渚は,幡度群の対象群に比べ「配
色」と「色数」の低下がみられる.そして「配色」
軽度群の対象者は,.、鯉のぼり”の「配色」が雌
能ノJの低「によって.色の選択に│‘l傭がなく,色
しい者もみられたものの.多くの対象渚で.推奨
の選択の際にIiij意や介助を求める行動が比較的
色を用いた「配色」が可能であった.また,軽度
多くみられた.
群の一部の対象者では,瑞色時に濃淡をつけてい
る作品がみられた.
亜度群の対象群は,ほかの承症度に比べすべて
のド位項Ilの能ノJが低く,似l柄によっては,認知
中等度群の対象者では,色の選択に同意や介助
を求める行動が比較的多くみられた.
重度群の対象者では,全体的に「配色」が附雌
な様子がみられた.また,認知症が埴症化するこ
することも附雌な様.fがみられ,「配色」は亜度群
の対象券にとって雌しい課題であった.しかし,
藩色するという点で,作業に取り組むことは可能
であった.
とで,z活動性が低下し,途中で手が止まる.ま
今1111,厘度群の対象荷において.結果で述べた
たは非常に作業速度が遅いため,蒜色「而積」が
4つの雄I)絵のタイプをたびたび経験した.谷
少ない,②対象物に適した色を想起,選択する様
IiIlI:31は,「認知機能障蒋は進行とともに悪化する
子が乏しいため,「配色」ができず,少ない「色数」
が,無為や無関心を除く多くの周辺症状はある時
で全体の「面積」を若色する,③「配色」ができ
の理由で席を立ち活動を終了するため,「而稚」が
期(多くの場合''1期の後半か後期)をピークに収
束してくる」と述べている.砿度群の対象群は.
こういった状態像の異なる対象者が特に混在して
おり,状態により作業への取り組み〃にも差が大
きく,これが「認知」,「面砿」.「色数」のバラツ
少なく「時間」が短い.これら4つの雄り絵のタ
キとなって現れていると考えられる(図‘l).よっ
イプをたびたび経験した.
て,確り絵の下位項'1を個別にみるだけでなく,
ず,少ない「色数」で雑に早く蒜色するため,全
体を短い「時間」で塗り終える,恋作業に取り組
むものの.集中することができず,途IlIなんらか
考察
1.認知症重症度における塗り絵能力の特徴
対象者の重症度における塗り絵活動能力の特徴
として.軽度群の対象者は,’'1等度群に比べ,「lWd
名ド位項Ilを総合的にみることで認知症の状態像
の一部を把握するのに役立つ11」能性があると考え
られる.今'111,各亜症度における雄り絵活動能力
がIリjらかとなり,雄り絵活動が亜推度の把握に有
川であることが示唆された.
O'1,ジャーナル,1
.
〔
)
1
.
4
6N
《〕、22012年2"185
淵
「言ユ
r・皿
*
犀L
甲、
点旧9876543210
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課
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下位項 目 得 点
T
「
紅
氷
扇
面
1
1
1
1
Ⅲ
認 知 配 色 面 稲 は み だ し 時 間 色 数
■CDR1□CDR2□CDR3
図‘l認知症重症度別塗り絵テスト下位項目の比較
摩:p<0.01
2.塗り絵テストと認知機能,重症度,BPSD,
ADLの相関要因の分析
度を見』11識,記'億,ADL,社会適応,介護状況に
より評価するCDRとの強い相関がみられたと思
本結果によって,認知症の雄I)絵テストが,認
われる.以上から雄り絵活動能力の把握が,認知
知機能,重症度,ADL,BPSDと関連があり.認
症の亜症度を把握する一助となると考察した.ま
知症の重症度が,亜度および認知機能やADLの
た,今'''1,評価に用いたMMSE,CDR,TBS,
能力が低ければ,塗り絵活動の能力も低い傾向に
PSMSは,認知症分野の研究において,認知症高
あることが明らかとなった.
齢杵の認知機能,重症度,BPSD,ADLの評価と
塗り絵テストとMMSEのイ;Ⅱ関については,唯
して川いられおり,これらの評価結果と塗り絵テ
り絵活動が,図柄を認知し,過去の記憶から色を
ストのイ;11関がみられたことで,今回作成した塗り
想起し,色を選択,蒜色するという一連の認知機
絵テストは,確り絵活動を通して認知症の活動能
能と実行機能を必災とする活動であるため,認知
ノJを表していると考える.
機能評{iIi法であるMMSEと,│;'1関がみられたと考
える.
次に塗り絵テストとADLとの1;'1関についてで
3.塗り絵テスト下位項目で「配色」が認知症
評価と最も相関を示した要因の分析
認知症:砿症度と下位項11の祁関比から「配色」
あるが,横井らM)は,認知症の亜症度とAI)Lは
が,雌もCDRの_砿推度と関連が強いことがリjら
関連があると述べており,PSMSはADLにおけ
かとなった.配色は,図柄(抽象iiIIi)の視覚情報
る作業遂行を評{llliする.雄り絵テストは,雄り絵
をもとに,祝空間認知に関する分析として,過去
活動における作業遂行を評111iしており,この2つ
の記憶と照らし合わせて認識(対象のIiil定過程と
の評イllliは,活動は異なるが,作業遂行能力を評イIlIi
概念的分析過稗)し,それに相当する色を想起,
想起した色にイ:Iド.'↑する色を色鉛繁の111から選択
しているため,イ11関がみられたと考える.
一方,BPSDは認知症の''1核症状に加え,環境
し,端色するという塗り絵のriIで,一連の認知機
等の要因や影禅により発生する推状であり,沿動
能と作業遂行能ノJを必要とする項1.1であるため,
能力以外の要素も関連するため,TBSと縦り絵
テストにも相関は認めたものの,MMSEや
認知機能職員により遂行機能障害がみられる認知
症のin症度と1:Ⅱ関が強く,亜症度に及ぼす影響が
PSMSに比べ低かったと推察した.
雌も大きいと考えられる.よって,AD患者の塗
雄り絵テストは,MMSE,TBS,PSMSといっ
た認知症評価と関連があることから.認知症砿推
り絵活動をみる際,「配色」の具合(選択した色の
適切さ)についての視点は重要である.
ノ 師 O T ジ ャ ー ナ ル ,w〕L、46 N【).22012年2月
4.塗り絵テストの利点と限界,今後の課題
塗り絵テストは,塗り絵自体が取り組みやすい
活動であり.多くの人が過去に経験しているため,
適応が広い活動である.今回,考案した塗り絵テ
ストは.(現実的な色の選択を要求する)「配色」
を評価項目に取り入れた初めての塗り絵活動の評
価法であり.塗り絵活動を分析するために用いる
評価としての有用性は高い.また,雄り絵活動と
いう一つの活動を評価することにより認知症の重
症度把握にもつながる点は.大きな利点であると
考えた.
本研究の限界として,塗り絵テストに興味を示
さない者,重度の上肢運動機能障害を有する者,
視覚障害のため色の弁別判断が難しい者,1時間
の座位保持が困難な者は塗り絵テストを実施する
ことが困難である.また,本評価法は,認知症鑑
別の評価ではない点には,留意が必要である.中
平'5)は,「図柄によって認識のしやすさが異なる」
と述べており.今回も図柄によって,得点差がみ
られていたので,今後,図柄による難易度の検討
が必要である.また,塗り絵活動は再現性が高い
活動とされているが,今回用いた塗り絵テストの
信頼性と妥当性の検討は十分とはいえず.認知症
高齢者の塗り絵活動遂行能力把握と認知症重症度
を把握する感度を高める点に着目し,構成概念妥
当性を検討したうえで点数配分の重みづけを改善
する必要がある.加えて,塗り絵の評価として考
えた場合,健常者(非認知症高齢者)やAD患者
以外の認知症高齢者との比較や年齢や性別,経験,
職業,好み等の属性による影響についての検討も,
今後の課題である.
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る継続的な「ぬり絵」活動と作品の変化作業
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10)FolsteinMF,etal:.、Mini-mentalstate"・A
practicalmethodfOrgradingthecognitive
stateofpatientsfOrtheclinicianJpsychiatRes
l2:’89-198.1975
11)朝Ⅲ隆.他:痴呆患者の問題行動評価表
(TBS)の作成.日公衛誌41:518-526,1994
12)LawtonMP,etal:Assessmentofolderpeople:
self-maintainingandinstrumentalactivitiesof
dailyliving、Gerontologist9:179-186,1969
おわりに
今回.AD患者における塗り絵活動能力の特徴
が明らかとなり,塗り絵活動を分析することは,
重症度の把握に有用であることが示唆された.ま
た,塗り絵活動分析の視点として,「配色」の重要
13)谷向知:アルツハイマー病の診断と治療:周
辺症状(行動心理症状.BPSD)の治療.診断と
治療96:2343-2349,2008
14)横井抑夫.他:痴呆性高齢者の認知機能障害と
ADL障害との関連.理学療法科学18:225228,2003
15)中平啓太.他:ぬり絵を介して見えてくるもの:
認知機能との関連について.第43回日本作業
療法学会抄録集,2009
性が明らかとなった.
謝辞
ご協力いただきました対象者の方々.および各施
設のスタッフの皆様に.お礼を申し上げます.
OTジャーナルvoL46No,22012年2月
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