映画評 「ソウル・サーファー」 常郎 評者・前島 「私は、私を強くしてくださる 方によって、どんなことでもでき るのです」 (ピリピ4章 節) ●ストーリー 60 ベサニー・ハミルトン本人 傷心の「人魚」に気を取り直さ せたのは、大津波で被災したタイ のプーケット島にボランティアに 行って出会った一人の幼子だった ……。 を楽しむことも。 ある日、兄たちと友人アラナの 家族といっしょにサーフィンを楽 しんでいるとき、ベサニーは突然 姿を現したサメに左腕を噛まれ る。 らだの %もの大量の血液を か 失ったにもかかわらずベサニーは 一命を取りとめた。しかし、再び ボードに乗る気力を取り戻すの は、並大抵のことではなかった。 ようやく練習を再開し、コンテ ストに出てみたものの、波に巻き 込まれてボードを壊し、すっかり やる気を失ってしまう。 6月9日 全国ロードショー 2011年 アメリカ映画 配給 トライスター・ピクチャーズ 監督 ショーン・マクナマラ 出演 アナソフィア・ロブ、 ヘレン・ハント 原作 ベサニー・ハミルトン 『ソウル・サーファー』 文庫版 172ページ 出版社 ソニーマガジンズ 13 サ ニ ー( ア ナ ソ フ ィ ア・ ロ ベ ブ) がイタチサメに襲われたのは、 2003年 歳のときである。舞 台はハワイ。ベサニーの両親は、 ともにサーファー。家族は海辺に 住んでいる。 母親から「人魚」と呼ばれるほ どの根っからの波乗り少女ベサ ニー。からだは乾いているよりぬ れている時間のほうが多かった。 物心がついた時から、 将来はプロ・ サーファーになると決めていた。 親友のアラナ(ロレイン・ニコル ソン)と夜中に家を抜け出して、 家族に内緒でナイト・サーフィン 13 お父さんも励ます。 自分の悲劇から励ましを受けた ベサニーを、 という世界中の若者たちから便り 「おまえだったら何でもできる が届いたことも、ベサニーにはう さ」 れしい驚きだった。 ふたりの兄たちもベサニーの 味方だ。練習風景をビデオに収 ●お勧め理由 めては、家族でチェックする。 美しいサーフィンシーン満載な 聖書のことばも勇気を与えて のが何よりの魅力。 くれた。 「私は、私を強くして 思春期の友だちの大切さ、けん くださる方によって、どんなこ かと仲直り、ライバル心、そして とでもできるのです」 スポーツマンシップとは何かを考 ●あえて言うならば えさせる。また、信仰の面でも家 族で語り合えるきっかけを与えて ハワイを舞台にしたサーフィ くれる。 ン映画なので、水着姿の女性が 歳の娘が片腕を失うという災 多数登場する。それを売り物に 難は、家族全員の痛みになる。 した作品ではないのは確かだ 「どうしてこれが神のみこころ が、男性の誘惑になる可能性は なの? 分からない!」 否定できない。 かし、ベサニーの家族は、信 サニーがサメに襲われる場 し ベ 仰によって一つになって立ち向か 面(短時間) 、ま た 救 出 の シ ー う。 普 通 で な く な っ て し ま っ た ンなどは、幼い目にはショック 自分をあわれみ、 「男の子たちは、 であろう。 普 通 が い い の よ 」 と す ね る ベ サ タイの津波被害地の様子は、 ニーをお母さんのシェリー(ヘレ 東日本大震災の惨状を思い出さ ン・ハント)は、優しく諭す。 せ、被災者にはトラウマをよみ 「 『普通』ってそんなにいいかし がえらせる可能性もある。 ら。心ある男の人は、ありのまま ●おまけ のあなたを愛してくれるわよ。あ なたは美しい。 ミロのビーナスは、 最後のクレジットのところで 長いこと美の極致とされてきた。 公開されるベサニー・ハミルト あなたより手が一本少ないのに」 ン本人の豪快なサーフィンが圧 巻。 またコンテストに出たいと言う 13 family forum No.62 27
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