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の態度・性格、又は、経営上の必要性に関係するもので
トピックス : <第17回 労働契約の終了 その2>
なければならないとされていますが(74条参照)、具体的
今回は、前回に引き続き、カンボジア労働法におけ にどのような事情があれば「正当な理由」があるとされる
る無期労働契約の終了に関する規制について紹介さ のかは明らかではありません。
この点、解雇の正当性が争われた仲裁裁定においては
せて頂きます。
、その判断において、「重大な企業秩序違反行為の有無
」及び「就業規則への記載」が強調されています。
1 労働者からの意思表示による労働契約の終了 どのような行為が「重大な企業秩序違反行為」に該当す
(1) 事前通知
ア 労働者からの意思表示によって労働契約を終了 るかという点については、仲裁裁定の蓄積を待つほかあ
する場合、雇用期間の長さに応じた期間の事前通知 りませんが、いずれにせよ、紛争回避のためには、始末
書を提出させる等のこまめな証拠収集手続及び就業規
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が必要となります(労働法75条1項:この点は、使用者
からの「正当な理由」に基づく解雇の場合も共通で
‐気をつけて下さい。不動産購入後の注意点‐ 則への詳細な記載が重要です。
(2) 解雇補償金
す。) 。 重大な企業秩序違反に基づく懲戒解雇の場合を除き
・ 雇用期間が6ヶ月未満:7日間
、使用者は、労働者を解雇する際、労働者に対して当該
・ 6ヶ月以上2年以下:15日間
労働者の雇用期間に応じた解雇補償金を支払わなけれ
・ 2年を超え、5年以下:1ヶ月
ばなりません(88条、89条)。
・ 5年を超え、10年以下:2ヶ月
解雇補償金の金額は、雇用期間が6ヶ月以上1年以下
・ 10年を超える場合:3ヶ月 の場合には7日間分、1年を超える場合には1年毎に15
イ 事前通知期間中、労働者は通常通り労働に従事し、
日分ずつの賃金・手当相当額となります(89条1項)。
使用者はそれに対して賃金を支払わなければなりま
(3) 「正当な理由」が認められない場合 せん(81条)。
使用者が「正当な理由」無く、労働者を解雇した場合、
使用者は、事前通知期間中、当該労働者に働いて
当該労働者は使用者に対し、損害賠償金の支払いを求
もらわなくてもよい場合にも、労働者に対して当該期間
めることができます(91条1項、2項)。損害額は解雇補償
中の賃金相当額の補償金の支払いが必要です。
金と同額と推定されます(同条3項)。
(2) 事前期間中の有給休暇 (4) 再雇用・解雇から再雇用までの期間の損害賠償 労働者は事前通知期間中、職を探すために1週間に
解雇したにもかかわらず、解雇に正当な理由が認めら
2日間、有給休暇を取得することができます(79条1項)。
れないというケースにおいて、労働者が再雇用を求めた
上記有給休暇中、労働者は、給与満額の支払いに
場合には、使用者に対して、当該労働者の再雇用及び
加えて、その他手当の支払いを受けることができます
当該労働者に対する解雇時から再雇用時までの期間の
(同条2項)。
賃金の損害賠償金の支払義務を認める内容の仲裁裁定
(3) 退職金・解雇補償金等の支払い
労働者からの意思表示によって労働契約が終了す が出されています。
る場合には、使用者から労働者への退職金や解雇補 そのような仲裁裁定によって、解雇を行う場合の使用
者側のリスクは飛躍的に高まったものと言えます。このリス
償金等の金銭の支払いは不要です。
クを低減させるためには、就業規則における懲戒に関す
る規定を具体的かつ網羅的に充実させ(懲戒手続を含
2 使用者からの「正当な理由」に基づく解雇
みます。)、実際に労働者を解雇する場合には就業規則
(1) 「正当な理由」
に記載された手続を履践した上で、十分な証拠を残して
「正当な理由」は、労働者の技術・資格、労働者
おくことが肝要であろうと思われます。 (村上)
<注記>
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<担当: 藪本、村上、今>