iii 訳者序文 本書は,Edward T. Dow1ing:Mathematics for Economists, McGraw-Hill Book Company, 1980 年の日本語版である。 本書は,経済学部や経営学部の学生諾君のために編まれた経済数学の入門 書である。しかもそれは,どちらかというと数学をニガ手とする学生諸君を 対象として編まれたものである。したがって,要求される数学の知識は高校 1,2 年生程度で十分である。 経済数学の入門書は,多くの場合コトバによってクドクドと解説すること によって何とか理解させようとするのが常である。このような教授法も 1 つ のやり方ではある。しかし,説明の冗長さに辟易し,かえって混乱を招くこ とが多い。もう少し簡潔かつメカニカルに教授した方が効率的ではないかと 思われることをしばしば経験してきた。本書はこのような視点を突破する 1 つの方向を示すために著わされたのである。説明はできるかぎり簡潔にかつ 例を用いて,後は演習問題を 1 つ 1 つ解くことによって,経済数学のクセを 知らず知らず習得させようとするのが本書のねらいである。そのために,本 書は数多くの演習問題が用意されている。 今日,現代経済学を学ぼうとする学生諸君にとっては,経済数学は必需品 であるといっても過言ではない。数学がニガ手であるために経済学部に入学 した学生諸君でも,否応なしに経済数学とつき合わされる。であれば,学生 諸君は 1 日も早く経済数学の思考の仕方とか操作の仕方をマスターすること である。 本書はこのような学生諸君にとっては最良のガイドブックである。山登り にたとえるならば,本書をガイドブックとすると,経済数学という山の七合 目ぐらいは登れるであろう。山頂をきわめたいなら,本書をガイドブックと (上,下 2 して,たとえば A. C. チャン著大住他訳『現代経済学の数学基礎』 巻,シーエーピー出版)を杖とすることである。しかし,山頂をきわめるた めには,まずもって登山道の入り口に立つことである。これが本書を広く推 iv めるゆえんである。 本書との出合いは数年前にさかのぼる。訳者の 1 人がニューヨーク大学 を訪ねたときである。そこのブック・ストアに本書がうず高く積まれてあっ た。聞けば,新入生のテキストとのことであった。先にも述べたような本書 の特徴が説得的な口調で述べられるのを聞いたとき,翻訳の決意をした。帰 国後,編集部長の杉谷繁氏に相談することとなった。本書が,どちらかとい うと数学をニガ手とする学生諾君に効用を与えて現代経済学への関心をひき 起すならば,それは一重に氏のコントリビューションによるものである。記 して感謝の意を表したい。 幸い本書は好評をもって迎えられ,版を重ねることとなったが,この度, シーエーピー出版においてリバースすることと相成った。これを機に読者諸 氏の効用がさらに高まることを期待したい。 このリバースに際して訳業に若干の手を加えた。読者諸氏の一層のご教示 をお願いしたい。 1995 年秋 訳 者 v 序 文 今日,経済学を学ぶ上で数学のもつ重要性を考えると,学生諸君は幅広く 数学をマスターしていなければならない。本書はこのような事情をかんがみ て,微分や積分,行列,線形計画法,微分方程式,および差分方程式の初級 の段階を,経済学への応用という仕方でやさしく,かつ十分に理解可能なよ うに編まれたものである。本書における微分と行列を扱った章の順序は,他 のテキストとは異なるので,必要ならば第 2 章まで進んだ後,第 7 章と第 8 章に飛んで行列を勉強してもよい。 各章とも解説-演習という形をとっている。つまり,本書はまず例題によっ て簡単な説明をした後,数多くの演習問題(解答付き)を解くという仕方で 展開されている。取り上げられる例題とかそれに付随する演習問題は,簡単 な数学で解ける問題から徐々に難しくなって複雑な問題へと進めるよう配列 してある。といって,高等学校で学ぶ程度の数学上の知識しか要求されてい ない。このように「問題を解くことによって学ぶ」という方法をとると,読 者諸氏は各自の能力に応じて勉強を進めていくことができるし,また各自の 必要に応じて本書を利用することができるであろう。 本書は,主として経済学や経営学を学ぶ学部学生や大学院生の補助教材と 用いられることを意図している。それと同時に,本書の幅広い例題の取りげ 方をみると,数学や社会科学を学ぶ学生にとっても,本書は有益であろう し,数学の実力テストの勉強にも役立つであろう。 本書は私一人だけの力によって完成されたのではない。まず同僚であるド ミニク・サルバトーレ博士の長年に亘る助言,助力に対して深い感謝の意を 表したい。辛抱強くかつ勤勉に原稿をタイプしてくださったマリー・イマ キュレイト・オクチピンティ女史にも感謝の意を表したい。また,フォーダ ム大学の卒業生,とりわけメアリー・アッカー,エドワード・バルボア,エ ベリン・グロスマン,ローズマリー・トーマス,およびアン・ウオルドロン vi の諾君には,草稿を準備していく過程で有益な貢献をしてくれた。ここに記 して感謝の意を表したい。最後に,マグロウヒル杜のスタッフ全員のあたた かい助力に対しても感謝の意を表したい。 エドワード T. ドウリング
© Copyright 2024 Paperzz