閉ざされた内陸国(Land Locked Country) - IDCJ

開 発の理 論と現 場をつなぐ
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I n t e r n a t i o n a l D ev e l o p m e n t C e n t e r o f J a p a n
財団法人
国際開発センター
「閉ざされた内陸国(Land Locked Country)
」から
「インドシナをつなぐ国(Land Linked Country)
」へ
∼ラオス国全国物流網計画調査∼
この記事を皆さんに読んでいただく頃には終了していますが、
2009年12月9日から18日まで、ラオスでは「東南アジア競技大会」
げるチャンスにあります。
そのような変貌を遂げるために必要となるのが、脆弱な物流の制
が開催されます。東南アジア競技大会は1959年に第1回大会がバン
度面・インフラの改善です。同時に、ラオスの物流が将来どのよう
コクで開催され、2年ごとに開催されています。今回のビエンチャ
なものを目指すか、ブルー・プリントを示す必要もあります。JICA
ン大会は25回目の開催で、25種目の競技が行われます。競技は、オ
が現在実施している「ラオス国全国物流網計画調査」はこのような
物流の全国戦略を策定するものです。
リンピックでもおなじみの競技が行われま
ラオスの国土の西側の多くの部分はタイと
す(柔道や空手、テコンドーもあります)
が、セパタクロー(東南アジアで人気の足
国境を接していますが、メコン川が通行の大
を使ったバレーボールのような競技)やペ
きな障害となります。その障害を取り払うべ
タンク(フランス発祥のラオスの人気スポ
く、タイ=ラオス友好橋(1994年)
、パクセ
ーツで、鉄の球を使ったカーリングのよう
橋(2 0 0 0 年)、タイ=ラオス第2友好橋
な競技。ラオスではペタッと呼ばれていま
(2006年)などの橋梁が整備され、今後さら
す)など、東南アジアらしい競技もありま
に第3友好橋、第4友好橋が整備されること
になっています。このような国際ルートの整
す。ラオスではこのような国際的なイベン
トや国際会議の経験はまだあまりないの
東南アジア競技大会の宣伝ポスター、大会マスコットは
象のチャンパとチャンピ
備の結果、ラオスの人々が利用する消費財、
で、大会の開催が近づくにつれてビエンチ
耐久消費財、石油製品の輸入のための物流コ
ャンの街もそわそわしてきたように感じます。
ストが下がり、また、ラオスで生産された銅、
現在、IDCJは、ラオスで財政管理能力強
縫製品、砂糖、コーヒーなどがこれらのルー
化、工業開発、物流、地方都市などの分野
トを通ってタイから海外に輸出されるように
の協力に携わっています。その中で、今回
なってきています。
一方、増加する貨物の積み替え、保管、税
は物流への協力についてご紹介したいと思
関手続・検疫・入国検査等を行う物流施設の
います。
整備は、ラオスではまだあまり進んでいませ
ラオスは、インドシナの不安定な政治情
ん。ビエンチャン郊外にはタイ=ラオス友好
勢や、計画経済の国であったこと、人口の
少ない内陸国であることから発展から取り
ビエンチャン郊外の物流施設、タイナンバーのトラック
からの貨物の積み下ろし
橋が整備される前から使われている物流施設
がありますが、施設が手狭になり、また、貨
残されていました。しかし、1990年代まで
にインドシナの政治情勢の安定化や市場経済の導入が行われ、徐々
物輸送のコンテナ化に十分に対応できない状態にあります。他の都
に経済発展のための環境が準備されてきました。さらに1990年代か
市では物流施設がまだ整備されていません。
「ラオス国全国物流網計
らはアセアンへの加盟、拡大メコン圏(GMS)プログラムの開始、
画調査」では、国際ルート上の都市における物流戦略の策定、その
およびアセアンの経済統合の動きやGMSにおける経済回廊整備プロ
中でも重要な都市であるビエンチャン、サバナケット、パクセの3
グラムの中で、ラオスは「閉ざされた内陸国(Land Locked Country)
」
都市における物流施設整備のための調査も行っています。
から「インドシナをつなぐ国(Land Linked Country)
」へと変貌を遂
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(IDCJ研究員 榊原洋司)