講演 「地域の人たちとともにつくる花のまちづくり」(要旨) ブレインズ 種まく私たち 代表 内 倉 真裕美 氏 こんにちは。内倉と申します。高校生の皆さん、福祉と地域と一緒に共に歩んでいく というその姿、すごいなと思い、お聞きしました。 加森観光さんの方から広木さん、「ぼくは花なんか、知らないんだよ」と言っていま したが、造園のことをずっとやられていた方なので、お花を美しく植えるというところ では、素晴らしい素敵な花壇をつくっていると感じました。 北海道は、4、5か月は白い雪の中で閉ざされて、春がきます。 一年草のお花が一番美しく咲く地域は、やはり北海道ではないかと思います。 私は、恵庭市の恵み野という所に住んでいて、20年位前から、個人のお庭を花で飾 るという取り組みをしてきました。 そ の 後 、ガ ー デ ニ ン グ と い う 言 葉 が で き て き て 、日 本 全 国 が ガ ー デ ニ ン グ と い っ た ら 、 お花を素敵に植えることと認知されてきています。 お花を見て、交流を深めていく。これがオープンガーデンということです。 交 流 を 深 め る こ と に よ っ て 、み な さ ん の お 花 の デ ザ イ ン 力 が あ が っ て く る と 感 じ ま す 。 昔、木はお父さん、お花はお母さんというふうに分かれていたのが、ガーデニングと いうかたちで、樹木とお花が素敵に融合するようになってきました。 北海道をはじめ、日本全国、素敵なお庭をつくる人たちが増えてきています。 お 花 で つ な が る と い う こ と が 、コ ミ ュ ニ テ ィ 、交 流 に つ な が っ て い る と い う こ と を 常 々 、 感じています。 先ほどの広木さんのデザインを見ましたら、緑のなかにお花がありました。 お花というのは緑の分量が多くて、その中に彩りがはいってくるということで、美し く見えます。 花壇にお花ばかり、植えてしまうと、花同志がけんかしてしまいます。 やはり、やわらかい緑の中にお花が映えてくるような気がします。 同じ場所でも、上手に宿根草を活かしていけば、お花の風景が変わってくるので、取 り入れてみていただきたいと思います。 咲く時期が早いお花を奥の方に入れて、手前の方がだんだん背が高くなって、奥の方 があまり見えなくなってくるというつくり方をしても、いい感じになります。 お花の分量が、多ければいいというものではなくて、高低差、背の高いものがでてく ることによって、緑が活かされ、そして、お花というのは、ある程度、かたまって咲く ようになった方が、インパクトがあります。 大勢の人たちで作業する時には、トレイに番号をつけて、誰も間違わないようにお花 を植える方法をとっています。 (恵庭市の取り組みについて) 恵庭市では、小中学校、企業、町内会、いろいろなところで花壇づくりがとても盛ん で、駅前から中学校に至るまで約3キロメートルの区間を花の千人植え活動として行っ ています。 子供たちが、小さい頃から花と関わっていくということが、情操教育として大切であ ると感じます。 恵み野の個人のお庭がオープンガーデンとなっていて、お花の観光となっています。 2006年から、中央公園に紫陽花、アナベルをいっぱい植える活動をしています。 私は、花をとおしたまちづくりとして考えていますので、1、2年で、紫陽花の公園 つくろうとは考えていません。 恵み野の個人のお庭がオープンガーデンとなっていて、お花の観光となっています。 地域のみなさんと共に育てて、育んでいくお花のまちづくりにしたいと考えています ので、10年、20年、引き継がれていくようなまちづくりを目指しています。 (フランスのまちづくりについて) 私、農村景観、農村観光を視察するため、フランスに行ってきました。 ハーブの時期の咲く時期の頃、とれた牛乳でつくったチーズは、5割増しくらいの値 段になるそうです。 フランスの南東部、スイスやイタリアの国境を接するサヴォワ県の農村部は、1年を 通じて、魅力ある観光地づくりをしていて、きれい、おいしい、楽しい思い出に残ると ころでした。 きれいというのは、ただ、きれいなお花を植えているということではなくて、心地良 いきれいさです。 そこに人が住んで暮らしているのにもかかわらず、その農村景観というのは、本当に すてきな場所でした。 そこでは、大きい看板を建ててはいけない、むやみにごみをだしてはいけない等いろ いろな規制があります。 色も、規制がありますので、赤い色だとか、壁がはでな色だとか、景観を乱していけ ません。 統一感のあるとても素敵な町、場所でした。 そして、その中で、やはり効果的に花を植えていました。 ジュネーブの空港に降りたときに、とても素敵なセンスのいい花束がありました。 チューリップは、球根がついたまま、花束になっているのです。 ダリアも非常に効果的に使われていました。 フランスは、石の壁が多く、自然の美しさがあります 家の中に入ると、インテリアはとても素敵で、思い思いの飾りつけをしているのが、 フランスです。 アヌシーは湖があり、宿泊施設、カフェ等があり、朝から夕方、夜まで人がにぎわっ ていました。 ホテルの窓辺にはハンギングが飾ってあり、同じ色のもので統一していました。 あまり水がいらないゼラニウム、サフイニアが多かったように思います。 ムジューブは観光高地放牧地で、ゼラニウムが植えてありました。 アボンダンスという白い顔の牛を育てていて、この牛からとれる牛乳でつくったチー ズを作っている地域です。 このへんは木造住宅になっていて、景観を壊さない町になっています。 ムジューブの役所に表敬訪問に行きましたら、昼間なのに、ワインとチーズが振る舞 われました。 副市長さんという方が4人いるそうなのですが、女性の方、花担当の副市長さんが、 市内全体の花のバランスを見ていらっしゃいました。 ム ジ ュ ー ブ の 観 光 協 会 は 、ホ テ ル か と 思 わ せ る く ら い 、外 か ら 見 て も 、中 に 入 っ て も 、 とても素敵な場所で、窓を花で飾られていました。 葉ボタンやゼラニウムを見ることができました。 フランスの家庭料理は、そんなに手をかけていないかもしれないのですが、ボリュー ムがあり、良質のチーズがとてもおいしかったです。 フランスのブルターニュ地方は、クレープの本場。 窓辺のハンギング、陳列方法がとてもきれいで、統一感がありました。 ゴッホ村は、観光農場と生活が共存していて、美しい景観をつくっています。 標高1、800mで、ごみ箱は、ごみステーションになっていて、分別が徹底されて いました。 農家民宿、経営学校を訪問したのですが、1、2か月間、地元食材を使ったメニュー や調理方法、経営、帳簿づけやお客様の接客にいたるまで、すべてを学ぶことができる 学校があります。 一律ではなくて、自分のオリジナルをつくろうということで、きちんと勉強できるよ うになっています。 フランスには、地方自然公園制度があり、ヴォージュ地方に、人と自然が共存する地 域での自然文化遺産の保護、管理を名目に持続可能な社会的、経済的国土開発を理念に 基づいて運営している自然公園事務所があります。 昔 、ヴ ォ ー ジ ュ 地 方 は 、放 牧 が 終 わ っ た ら 、雪 に 閉 ざ さ れ 、半 年 間 、出 稼 ぎ に 行 っ て 、 家に戻ってくるという生活をしていた場所です。 なんとかしなきゃいけないということで、農家のおじさんが政治家になり、自然公園 事務所になるような組織を作り、出稼ぎに行かなくてもいい村づくり、集落をつくろう ということで、できあがった所です。 今は、1年間のサイクルというものがうまくいっていて、観光に結びつけた産業がで きるようになっています。 レマン湖は、アルプスが見える場所で、とても素敵な場所でした。 春には、ルピナスの花がきれいに咲いている場所だそうです。 チーズの種類が非常に豊富でした。 濃厚でひとつひとつのチーズがとても個性がありました。 (オープンガーデンについて) 私、北海道を庭園の島にするために設立した団体、オープンガーデングループ、ブレ インズ「種まく私たち」の代表と「NPOガーデンアイランド北海道」の副理事長をし ています。 2012年、十勝で北海道ガーデンショウが開催されました。 十勝エリアは、ガーデン街道というように広域で取り組んでいて、とてもきれいで、 多くの人が集まります。 桜 が 咲 き 、桜 前 線 の 場 所 ご と に 人 は 移 動 し て 歩 く よ う に 、花 が 咲 く と 人 が 集 ま り ま す 。 花のある美しい町、そして、美しい景観に、人がつながり、そのことが社会貢献にも つながっていきます。 自分の楽しみは地域の楽しみであり、そして、世界の平和にもちょっぴり貢献してい くのがいいのではないかと思います。 個人の庭を自分の公開方法によって、見せてくれるお庭のことをオープンガーデンと 呼んでいます。 オープンガーデンは、全国に広がっています。 北海道では、160箇所ものお庭がすでに公開されています。 2010年、オープンガーデン全国大会が苫小牧市のノーザンホースパークで開催さ れました。 全国に、約400人、お花の仲間がいます。 東日本大震災があった年、3月31日にガーデンチャリティを起ち上げ、オープンガ ーデンの仲間に呼びかけ、チャリティの箱をおいて、見る人も、見せる人も、募金する ことにより、福祉に役立てるようにはじめました。 2012年5月、ガーデンチャリティ支援第1号として石巻で、また、6月、陸前高 田 で 、何 千 人 と い う 人 た ち が 、ボ ラ ン テ ィ ア で 瓦 礫 撤 去 を し て 、お 花 を よ み が え ら せ て 、 お花の風景をつくりました。 今年から、ドングリの会という会で、東北の山に入り、種やどんぐりをひろい、苗木 を育てています。 使えるのは、2~300本に1本ということで、優秀な木を十勝で育て、東北にもど して、森を再生させようという予定です。 ぜひ、高校生の皆さんも、オープンガーデンを見てほしいと思います。 きっとびっくりすると思います。 会場から質問があり、内倉講師から回答をいただきました。 (男性からのご質問) 恵庭で地域の人たちと花の町づくりを進めてきたというお話しですが、先生の住んで いる恵み野地区でのご苦労や今後の課題を教えていただきたいです。 ま た 、恵 み 野 地 区 の オ - プ ン ガ ー デ ン で の 花 の ト レ ン ド 、例 え ば 、植 え 方 の ト レ ン ド 、 花の種類のトレンドがあったら、教えていただきたい。 (内倉講師) 最初に、自分が楽しいから、自分のうちの庭をお花できれいにしました。 それから、お花を植えている写真を撮って、写真展をしました。 次に、みなさんにお庭をきれいにすることが広がっていきました。 それでコンテストをはじめました。 コンテストをやった時に、勝手に審査をして、勝手におめでとうと言ってあげる勝手 に審査、勝手に表彰式、そんな感じのことをずっと続けてきたことによって、ガーデニ ングをする人たちが、増えてきました。 今、法律等により、勝手に写真を撮って、勝手に表彰するというのが、ままならなく なってきました。 それで、3年くらい前にこの方法はやめました。 現在、恵庭には、フラワーマスターが20数名いるのですけれど、お庭をつくった方 の許可をいただいて、写真を撮ってきて、道の駅で写真展をするようになっています。 あなたの庭はいい庭だ、悪い庭だと評価をするのではなくて、みんなが暮らしている 場所、お庭の写真を撮って写真展をしているのが、また、ちょっと広がりをもっていま す。 一番大変なのは、まちづくりとしてのお花のひろがりをどうするかということで、町 内会、商店街等々、全部をまとめていかなければ、花のまちづくりにはなりません。 そうした時に、恵み野花協では、東西南北の4つの町内会にはいっていただいて、商 店街、花づくり愛好会、企業、小中学校と一緒に活動しました。 町内会の会長さんは、一年ずつかわるところが多く、引き継ぎに混乱したことがあり ましたが、現在では解消されています。 花のトレンドですが、ここ数年、全国的にガーデニングの中にバラを入れるというの が、トレンドになっています。 なぜこんなにバラが好きなのでしょうというくらい、バラを植えているお庭が多いの ですが、バラだけではつまらない。 特徴のある庭があると、素敵ですね。 和モダンというのでしょうか、バラはないけれども、とても素敵な樹木であったり、 おしゃれな庭というのがでてきています。 今は、本当に意識レベルが非常に高くなってきています。 最初は、バラからはいってきた方でも、自分なりの解釈で素敵なお庭をつくっている ところが、多くなっています。 ぜひ、高校生の皆さんも、オープンガーデンを見にまわってほしいなと思います。 きっとびっくりすると思います。
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