1 - 話題提供「“ペイメント手段”あれこれ」−ICカードによるペイメントシステム

話題提供「“ペイメント手段”あれこれ」−ICカードによるペイメントシステム −
はじめに
今年に入りデビットカードの展開、NTT公衆電話の非接触型ICカードサービス開始、或い
は新宿でのスーパーキャッシュ実験開始、JRの非接触型ICカードによる本格的定期乗車券の
展開計画等々、カードに関する動きが活発化してきている。このような動きの中で、ペイメント
サービスに視点を置くとき、これらのカードが利用者にとって正しく理解され利用されているか
疑問が生じてくる。そこでICカードの原点に戻り、カードのあるべき姿を描きつつ、カード先
進国であるヨーロッパの動向も睨みつつ方向観を追って見たい。
テーマは「ペイメント手段あれこれ −ICカードによるペイメントシステムー」である。IC
カードによるペイメントシステムが多々出てきており、それと同時にカードによる事故・犯罪も
多数報道されている。その中でも今年4月22日新聞報道された東京台東区での磁気カード偽造
事件は、耳新しいところである。
磁気カード(キャッシュカード)偽造事件
この事件は、委託業務を処理する中からその当事者が業務データ内の個人データを取り出し、
キャッシュカードを偽造したものである。この偽造キャッシュカードを使用して、銀行内に設置
されたATM(現金自動預入払出機)から現金を引き出し、その結果逮捕されている。被害者は、
キャッシュカードを落としたわけでもなく、盗まれたのでもない。キャッシュカードは、自分の
手元に正しく存在しながら、他人の手に偽造複製されたキャッシュカードがあり、これでこの犯
罪は引き起こされたものである。カード所持者には何の落ち度もないわけである。その被害額は
1000万円に近い額とされている。
では何故キャッシュカードのセキュリティの要である暗証番号が盗まれたのか、或いは知れ得
たのであろうか。この事件の調査の中で次のように報道されている「生年月日或いは電話番号等
から類推した」とのことである。業務上知り得た個人データには、氏名・生年月日・住所・電話
番号・振込先銀行口座番号等がある。これらの情報は、一般的に入手しやすい情報といわれてい
る。1998年警察庁へ被害届が出された犯罪件数は、1201件(総額 568,170千円)で、暗証番号は
「カード番号と同時入手」が32.8%、「暗証番号推測・解読」が32.3%となっている。これまで
暗証番号の確認は、銀行設置のATMとかごく限られた機器にて行うことができたが、これらは
総て銀行内にあり且つ誤り回数に対する制限管理も行うことができている。しかし、現在は利便
性向上策からテレホンサービスが充実し、そこから残高照会等も簡単に行うことができる。この
時カードアクセスはない。こうして見ると、これまでの利用環境とは大きく異なる状況が、種々
展開されていることに気がつくところである。身近なところに情報関連機器が散在し、それらを
自由に利用できるのもまた事実である。磁気カードの偽造・変造には、一枚当たり2分間で十分
とも報道されている。
これまでの多くの偽変造事件は、海外カードが中心であったが、これからは国内カードを含め
真摯にこの対応を検討することが急務であるといえる。現在の日本の法制度では、偽造カードの
所持罪がなく、偽造の罪も軽く、まず捕まらないとさえ云われている。これまでの磁気カードベー
スでの犯罪を見ると頷けるところである。
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このようなことから今年1月から開始されたデビットカードサービス(J−デビット)には末
恐ろしいものを感じる。デビットカードサービスに対する日本での意志は、「海外でこのサービ
スが飛躍的に進んでいることから、日本でも当然進むであろう」としている。このサービスの本
質論からはこの判断は正しいものであろう。しかし、その実現手段は海外とはまったく異なるも
のであり、このことは市民に知らされずにいるのも事実であろう。このサービスが消費者の安全・
利便性を真剣に検討した結果なのか、カード開発者とし警鐘を鳴らさずにはいられない。
「流れ」が変わる!
従来の「人」「物」「金」という経営資源の流れに、新たに「情報」の流れが加わったことか
ら、決済分野における社会構造に大きな変化が起こっていることを、まず認識しなければならな
い。今までは「生活の場(プライベート・家庭)」と「仕事の場(ビジネス)」は分離されて動
いていたと考えられる。そこにネットワークが入ることにより、境目がなくなりネットワーク社
会が形成されつつある。これを決済の場で見るならば、アクセスしている相手が「個人」か「企
業」かの見分けがつかない、或いは見分ける必要がないということである。
「流 れ 」が 変 わ る !
人 の流れ
モ ノの流れ
社 会 構 造 の 変 化 (決 済 分 野 )
金 の流れ 情 報 の流れ …
生活の場
現実世界での日常生活
仕事の場
ネットワーク
活 動 領 域 の 拡 大 ・現 実 世 界 / 仮 想 社 会
<決済>
生活空間での決済
企業・
消費者間( B
t
o C)
企業空間での決済
企業・
企業間(B
t
o B)
企業内
地 域 社 会 で の 電 子 決 済 ・電 子 マ ネ ー
グ ロ ー バ ル で の 電 子 決 済 ・電 子 マ ネ ー
ペ イ メ ン ト手 段 の 多 様 化
図1:「流れ」が変わる!
ネットワーク上に決済情報をそのまま載せることは、極めて危険なことである。
「インターネッ
トのモール上で買い物をし、クレジット番号等をそのまま相手に伝えることは、公道に財布を置
くが如く極めて危険である」という意識が日本では欠けている。米国では電子資金移動(EFT:
Electronic Found Transfer )に関する消費者保護のための規定が制定されている。通称50
$ルールがそれである。このルールは、自己口座の資金が無権限者によって不正に移動させられ
た場合、資金移動が記載された計算書が届いてから60日以内に金融機関に連絡するか、または
カードなどの紛失・盗難に気づいてから2営業日以内に連絡すれば、消費者の損害額は50$を
超えないというものである。消費者が金融機関に連絡しなかった場合の上限も規定しており、そ
れ以上の損害は金融機関が補償している。金融機関はたとえば暗証番号などで本人確認を行って
いたとしても、免責の理由にならないものである。これは欧州でも同様であり、EU委員会から
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1997年に公表されている。このような消費者保護が何ら取られていない日本の現状で、ペイ
メント手段の多様化が行われている今、「流れ」が大きく変わっていることを認識しておかなけ
れば、日本におけるペイメントサービスの方向を間違うのではないかとう危惧がある。
“現金”の欠点
日本での個人支払い件数の9割以上が現金で占めている。その「現金」の欠点の幾つかを拾い
出すと、図2に示す遠隔地送金における高額な手数料と時間的制約を受けるという不便さである。
また、釣り銭の準備(例えば数店舗のスーパーマーケットにおけるレジでの釣り銭準備は数百万
円に達する)、小銭の負荷、消費者側からは小銭を入れた重い財布ということになる。これは「現
金」の価値の分割・統合の柔軟性欠如に他ならない。
“現 金 ”の 欠 点
・遠 隔 地 送 金 の 不 便 性 と 高 額 な 手 数 料
・価 値 の 分 割 ・統 合 の 柔 軟 性 欠 如 (Flexibility)
− 釣り銭の準備
− 小銭の負荷
− 重い財布
・あらゆる面でのハンドリングコスト増 大
・現 物 管 理 で の 安 全 性 確 保
・偽 造 ・変 造 の 脅 威 等 々
IT:情報技術活用による 新しい手段 … 電子マネー
図2:“現金”の欠点
また、「現金」はあらゆる面でのハンドリングが必要となり、そのコストがまた高い。日本に
は現金に伴うハンドリングコスト統計はないが、1993年のイギリスでは日本円に換算して約
7000億円とされている。日本の経済規模或いは現金依存度を加味し、約3倍とするならば年
間2兆円を超える費用が掛かっていることになる。この寝ているコストを、前向きに動かすこと
によりどういう変化が獲られるか、真剣に検討が必要であろう。
安全性の確保面では、表面には大きく出てこないがコンビニでの現金強奪、磁気カード犯罪(ク
レジット等)予防のため保険費用等の増大となり、先のような事故が高まるに連れそのコスト比
率が高まるというジレンマに陥ってくるであろう。
また「現金」の欠点には、印刷技術や情報機器の発達により紙幣の偽造・変造・複製等の脅威
もあり、情報技術の活用による新しいペイメントスキームが誕生してもよいのではないだろうか。
現在定着している決済手段の「現金・通貨」も、社会のしくみの変化、技術の進歩に伴い変化を
続けてきている。そこで「電子決済」「電子マネー」の出現は当然のことと認識できる。
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変化する決済システム … 選 択 す る の は 消 費 者 ・小売店
電子決済システム
電子現金
後 払 い 型 (クレジット)
プリペイド型
即 時 決 済 型 (デビット)
電子マネー以外
マネーの機能
価値保存機能
交換機能
価値尺度機能
電子マネー
クレジット カード支払
デビット支払
電子振替/振込 等
完全情報化
追跡不可能性
オフライン性
再使用不能性
譲渡機能
安全な電子マネー
グローバル化
マイクロペイメントの実現
利 用 者 (消 費 者 ・小 売 店 等 )にとって有効な手段
図3:変化する決済システム
ペイメント手段は多様化へ
図4の横軸は取引形態を示しており、「プリペイド」「デビット」「ポストペイド」の3形態
である。「デビット」は、即時決済であり、カード提示で支払えばその時点で決済が完了する、
いわば現金決済と同様である。「プリペイド」は、事前に価値をあるもの(カード等)に移転し
ておき、それを使用するものである。「ポストペイド」は、事後に請求とともに支払うものであ
る。
ペイメント手段は多様化へ
ハンドリング コスト
取引処理の安全性確保
高 速 化 ・高 度 化 ・流通性
汎 用 性 ・信 頼 性 ・利便性
等で評価
各種電子マネー
プリペードカード
取引形態
現金
小切手
ATM
クレジットカード
デビットカード
?
オフライン
バンクPOS.
プリペード
デビット
I
T(情 報 通 信 技 術 )によって
・現 金 の 不 便 さ 改 善
・現 金 の 優 れ た 特 徴 を 活 用
・偽 造 ・変 造 脅 威 か ら の 脱 却
・新 小 口 決 済 方 法 の 開 発
図4:ペイメント手段の多様化
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ポストペイド
それに対して縦軸は、その機構を動かすのに必要とするであろう手数料を含めたハンドリング
コストを示している。ハンドリングコストが高ければ、その機構を動かす維持費が掛かることと
なる。これをどのように許容するかにより、取引処理の安全性確保・高速性・流用性・汎用性・
信頼性・利便性・高度化等をベースに評価する必要があろう。
図4中央部の?はある商品をイメージしているが、こような各種電子マネーがある。この範疇
にデビットカードを入れて語られているが、欧米のデビットカードはこの範疇に入れて語ること
ができるが、日本のそれはこの範疇に入れることには疑問を持つ。
このようにペイメント手段の多様化に対し、情報通信技術により「現金の不便さを改善」し、
「現金の優れた特徴を活用」し、「偽造・変造の脅威から脱却」し、「新小口決済方法の開発」
をすることが消費者への回答となろう。即ち、消費者の生活環境の中で、最も安全で安心して使
え且つ信頼あるものを望んでいると言う捉え方が必要であろう。
決済システムにおける電子化動向
現在は決済システムにおいて電子化の動向が見られ、ここにネットワークが加わり互いに情報
交換がネットワークの中に入り、動きの範疇も顧客間の動きから取引銀行、或いは複数銀行にま
たがり、決済面から見るとリージョナルマネーからグローバルマネーへと広がりを見せている。
しかし、そこで使用されているツールは小切手・手形・現金という支払手段でありこの電子化を
検討しているわけである。支払手段の背後には、「決済システム(Settlement System)」「清算
システム(Clearing System)」があるが、本稿では支払手段の電子化を対象とする。
電子化が進むと「銀行が不要になる」と言われているが、これは支払手段の電子化と決済・清
算システムの電子化を混同しての議論であろう。これからは「顧客が銀行を選ぶ」時代になって
きて、顧客の視点での銀行業務の見直しを怠るならば、他業種同様存続は危うくなるであろう。
決済システムにおける電子化動向
グローバルマネー
リージョナルマネー
顧客
顧客
銀
現金
顧客
行
顧客
銀
顧客
行
銀
顧客
現金・手形・小切手
クレジットカード
デビット
ファームバンキング
ホームバンキング
行
預金口座
民間決済システム
日銀ネット
リージョナル マ ネ ー
・地 域 限 定
・ リアル市場
清算システム
外為円制度 全銀システム 手形交換
日銀小切手
日本銀行
支払手段
決済システム
当座預金
発展系
グローバル マネー
・広 範 囲
・リ ア ル ・バ ー チ ャ ル 市 場
図5:決済における電子化動向
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支払手段の電子化
正しい支払手段の電子化が行われ、消費者がその方法を採用したときに当該銀行だけが残る時代
になってきていると思われる。
リージョナルマネーという地域限定、あるいはリアル市場から、グローバルマネーという広範
囲・リアルバーチャル市場へと電子化は広がると思う。この場合ネットワークで境界線の無い世
界へと移行するわけであるから、日本独自発想の日本でのみ通用するものは存続せず、日本のルー
ルが世界で利用され、デファクトまで持ち上げることで始めて存続が可能となろう。
リテール取引におけるコスト
表1は、米国銀行における1件当たりの事務処理コストを業務別に示したものである。支店窓
口で取引をするとその処理コストは1.07$、テレホンバンキングでは0.52$,ATMでは0.27$、
パソコンバンキングでは0.015$、インターネットバンキングでは0.01$となっている。窓口とイ
ンターネットとでは、約1/100である。銀行がネットワークバンキングを進めていく背景の一つ
に、このようなコスト低減策が伺える。もしそうであれば、銀行の顧客に対するサービス内容が
変わって然るべきであろうし、その対応策がもっと分かり易いものとなることが望まれるであろ
う。
リテール取引におけるコスト(1件当たり)
1.2
1.07
1
0.8
0.52
0.6
0.4
$
支店
PCバンキング
インターネット
0
℡
0.015
0.01
ATM
0.2
0.27
( 出 典 :U.S.Department of Commerce 98)
表1:リテール取引におけるコスト
ペイメント手段の多様化の行方
ペイメント手段は、現金・銀行系・クレジット系・流通系・ネットワーク系・地域共通・専用
プリペイド等多様化している。これらの取引においてそのペイメントの後処理内容により事務処
理コスト等のハンドリングコストが掛かってくる。取引金額が高額であれば問題にならない面も
あろうが、100円の取引で数%のコストがかかるケースでは、回避する方向へと進んでいる。
例えば、クレジット系では、小額取引が手数料問題で加盟店を圧迫することになる。現在電子マ
ネー化を検討しているのは小口決済の分野であり、高額決済の分野まで視野に入れることはない。
小口決済の新しいペイメントスキームとして検討していく必要がある。
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消費者にとって
現金を含めた支払手段のそれぞれのメリット・デメリットを整理したのが表2である。
日本では先にも述べたように個人決済の9割以上が現金である。その利害は先に述べた通りであ
る。プリペイドのデメリットは、現在利用目的が限定されており、またカードに対する不信感あ
り、その最たるものが、かってのパチンコカードでありテレホンカードである。カード開発に携
わる立場から云うと、これはカードの固有の問題ではなくカードの特性を生かさなかったシステ
ムの問題であると言える。カード特性とシステム構築をしっかりしておかないと、消費者のカー
ドに対する不信感は払拭できない。クレジットカードのメリットは、与信の範囲内で利用が可能
であること。デメリットには、手数料問題で少額利用ができないことであろう。また、磁気カー
ドに対する安全性の問題から、先のプリペイドカード同様、事故の多発にも繋がっている。
消 費 者 に とって
支払手段
現金
メリット
デメリット
いつでもどこでも使える
プリペイドカード 現 金 の 持 ち 歩 き 不 要
デビットカード
現金の持ち歩き不要
クレジットカード 現 金 の 持 ち 歩 き 不 要
与信の範囲内で利用可能
持ち歩き危険
硬貨等重い
送金に手間
利用目的が限定
カードに対する不信感
利用範囲が限定
カードに対するセキュリティなし
消費者の責任範囲不明確
少額利用できない
カードに対するセキュリティ不安
事故多発
表2:消費者にとってのメリット・デメリット
日本の場合デビットカードとクレジットカードの安全性・セキュリティには違いがある。デビッ
トカードの場合は金融機関の預金口座の残高であり、クレジットの場合はクレジット会社が持っ
ている口座での与信枠・取引履歴等である。この差は非常に大きい。テレビで報道された中に、
今年1∼3月の3ヶ月間で、某信販会社は店頭で不正取引現行犯を20数件逮捕することができたと報
じられている。これはカード保持者の特徴・取引履歴等の情報から、不正取引か否か判断する対
応手段が取られていることを意味する。これと同様な対応が、デビットカードサービスに期待で
きるであろうか。磁気カードのセキュリティは、アクセスする相手によりレベルが異なることを
認識しておく必要がある。
ICカードの機能とシステムとの対比
ICカード機能を氷山に例えて図示したのが図5である。トップにあるのが、まずデータである。
次がコマンドであり、カード単体での判断機能、そしてネットワークへと繋がる。まず、磁気カー
ドはデータのみが入っており、コマンドも保持できない。総てシステムで管理することが前提と
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なり、オンライン・リアルタイム処理が必須となる。
かって大きな問題となったパチンコカードシステムは、オフライン利用であり、偽造・変造カー
ドが使用されても、その時点ではチックに掛からない構造となっていたためである。カード内デー
タを暗号化しても、あまり意味を持たないこととなるわけである。そのため、磁気カードを使用
するのであれば総てオンライン管理でなければならない。これがカードの特性を生かすこととな
る。
I
Cカードの機能とシステムとの対応
ICカード
磁気カード
カード制御部分
ICメモリーカード
カード対応
Card Data
ICロジック付きカード
Card Command
Card Decisions
ICカード(スマートカード)
システム対応
システム制御部分
Network Control
ICカードの種類により
システム制御管理部分が
異なる
システム制御管理は
総てオンラインで対応
その間のセキュリティ管理
通信コスト等が必要
System Decisions
RunningBusinessService
比 較 ポ イ ン ト : 1. 媒体コスト
3. 運用トータルコスト
2. セキュリティ
4. シ ス テ ム 維 持 コ ス ト
図6:磁気カードとICカードの機能比較
1月より運用を開始したJ−デビットは、オンラインを前提に動く仕組みとなっている。この時、
ストレートで情報を電話回線やネットワークに流すことは極めて危険なことから、暗号化などの
セキュリティ対策を施した新規端末が必須となってくる。これは情報傍受から守ることを含めて、
極めて重要なことである。
図6左側のICカードの場合は、カード制御はICカードの特性に合わせて選択できる。デー
タだけを入れているカードは、「ICメモリカード」と呼ばれる商品である。一部制御機能を入
れたものが、ロジックカード「ICロジック付きカード(ワイヤードロジックカード)」で、今年3月から
サービスを開始した公衆電話カード(非接触型)がこのタイプである。このカードは、電話をか
けるために必要なコマンドだけが具備されており、チップコストを安価に押さえることが可能と
なっている。「ICカード(スマートカード)」は、マイクロプロセッサを内蔵し、カード単体で判断
機能を持ち動作することができる。これを利用して、「個」としての自立機能を持ち、オフライ
ンで行動することができる。
そこでカード比較のポイントは、媒体コスト・セキュリティ・運用コスト・システム維持コス
トであり、利用目的を十分に理解した上でこれらのバランスを見て選択しなければならないであ
ろう。
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日本のカードシステムビジネスでは、価格が最大の課題となり、カード・システム共に価格で
決定する状況にある。そのため、安価を狙うあまり現状維持に固執したり、安価なカードを選択
しシステムとして高機能を狙うあまりバランスが崩れたものとなったりしている。
日本のデビットカードサービスの現状
現在磁気カードをベースにサービスを開始している。このサービスは、預金者としてキャッシュ
カードを持っている人は、誰でも利用店でキャッシュレスサービスを受けることができるもので
ある。利用店でカードを提示することで、その場で該当金融機関の口座残高を照会し、取引が成
立する仕組みとなっている。旧来のバンクカードとは異なり、利用手続きは不要となっている。
これも法制度規制緩和によるもので、大蔵省通達が廃止されたことによりこのルールとなってい
る。
(J−デビット協議会資料より)
地域代行センタ
利用者
利用店
本部ホスト
CAFISセンタ
金融機関コンピュータセンタ
参 加 金 融 機 関 (929機 関)
預貯金者口座
利用店本部口座
参 加 企 業 ( 1 3 6 社) … デパート・スーパ・レストラン・ホテル・ガソリンスタンド等
項
目
銀行POS
目
的
顧客利便性の向上
利用手続
システム
J−デビット
共通性のある社会インフラ
書 面 に よ る 事 前 申 込 (MOF通 達 ) MOF通 達 改 正 に よ り 手 続 不 要
銀行POSインターフェース
銀 行 P O S ・ ク レ シ ゙ ッ ト インターフェース
図7:J−デビット サービス概要
注意点は、偽造カードが出たときにはその責任は銀行ではなく、消費者が一切の責任を取るこ
とになっている点である。しかし、このことはサービスが開始されたいまでも、カード所有者に
は連絡徹底されていない。冒頭の事件で、もし銀行のATMで取引せず、デビットサービスを実
施しているデパート等で使用したとすれば、このような短期間で逮捕までに至ったか心配すると
ころである。デパートでは、商品券はじめ換金性の高い商品を購入することができるわけである。
また、欧米で施行されている消費者保護ルールもなく、消費者の逃げ場が無い状態とも言えるの
ではないだろうか。
デビットカードサービスの課題
加盟店のメリットは、売上代金は販売後2営業日後に自店口座に入金されること、並びにクレ
ジットに比べ手数料が安いこと等である。逆に新たな設備導入や通信コスト負担等の問題点が出
てくる。特に、通信料金に対しては加盟店の立地条件により影響が出てくることが予想される。
いずれにしても消費者にとって、いつでも利用できる(24時間対応)・どこでも使える(加盟店
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の拡大)・セキュリティが確保される・海外でも使える等の課題解決が必要であろう。
デビットカードサービスの課題
加盟店
・売 上 増 が 見 込 め る
・クレジットに比べ手数料が安い
・現 金 管 理 コ ス ト 削 減
・代 金 回 収 早 ま る
メリット
顧 客 層 の 幅 拡 大 ・手 持 現 金 不 要
1%もしくは100円いずれかの安い方
店 舗 で の 現 金 管 理 ・銀 行 へ の 預 入 不 要
販売2日後自口座に入金
・新 た な 設 備 費 用 発 生
デメリット
PIN(暗証番号)入力手段必要
PIN入力後のセキュリティ確保が必要
現有端末機の回収 …費用負担は加盟店
残高照会に20∼30秒必要
(ISDNへの切替 … コスト増)
磁気ストライプ変更から次期カードまでの対応か
・残 高 照 会 に 時 間 が 掛 か る
・キ ャ ッ シ ュ カ ー ト ゙JISⅡ の 改 変
解 決 す べ き 課 題 … 何 時 で も 使 え る (24時間対応)
何 処 で も 使 え る (加 盟 店 の 拡 大 )
海 外 で も 使 え る (新キャッシュカードの発行 現 キ ャ ッ シ ュ カ ー ト ゙ 海 外 互 換 な し )
セキュリティ確保(消費者信頼の維持)
表3:日本におけるデビットカードサービスの課題
支払いにおけるキャッシュレス手段の変化(フランス)
フランスでは1992年にICカード化が行き渡り、支払手段の多様化も確立し、市民の生活に定
着している。そのよき事例をフランス銀行カード協会のデータをベースに紹介する。
10年前の1987年と比較すると、CB(デビット・クレジット・キャッシュカード混在)カード
は8%から26.5%と増加している(図8)。このCBカードには、電子マネーは入っていない。
一方、決済手段の一つである小切手は、63%から45%と減少している。他の支払手段にはあ
まり大きな変化は見られない。欧米ではこのように、デビットの対象は小切手である。このため、
小切手での手数料負担がデビットカードでも継続され、その商品毎に設定されている。日本では、
消費者手数料は無料でサービスが開始されているが、一方その責任は消費者に暗黙で押し付けら
れており、必ずしも有り難いシステムとは言い難い面がある。
支払におけるキャッシュレス手段の変化(仏 )
1997
1987
小切手
63%
1997
0
0.269%
1987: 16.3 M 枚
1997: 30.2 M 枚
不 正 0.269%
不 正 0.020%
10年間カード枚数2倍
不 正 率 1/10
0.020%
不正使用
91
1
2 0.3
3
4 0.2
5 0.1
6
89
45%
セグメント
セグメント
セグメント
セグメント
セグメント
セグメント
87
26.5% 11.4%
ATM
取 扱 件 数 2,302M件 835M件
売上総額
702B Fr 325B Fr
平均額
305 Fr 389 Fr
年間利用
83 件
28 件
不正使用率
CB
支 払
不正使用
97
8%
小 切 手
”CB”
デビット
クレジット
請 求 書
限定デビット
95
8%
93
クレジット
図8:CBにおけるキャッシュレス手段の変化
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CBカードにはレベル1∼4までの種類がある。また、CBカードには含まれない銀行独自の
カードがあり、その銀行だけのATM或いは特定店でのみ利用できる限定されたカードも存在す
る。レベル1∼4は、銀行共通のカードでこれにクレジットが乗ったカードとなっている。日本
と異なり、クレジット会社がカード発行することはなく、総てペイメントカードは銀行が発行を
行っている。クレジットは、決済時の預金からの引き落とし方法を指定するものとなっている。
CBの機能分類と特徴を図9に示す。
CB(フランス)の 機 能 分 類 と 特 徴
:銀 行 A T M の み で の 引 出 し ( 国 内 の み )
レベル 1
CBカードに含まれず銀行独自カード
特定店での買い物
:C B 銀 行 間 引 出 し カ ー ド ( 国 内 の み )
ATM引出しのみの単機能カード
レ ベ ル 1 BIS :レ ベ ル 1 機 能 ( 海 外 で 使 用 可 能 )
銀行間カード
買い物には使用できず
買い物には使用できず
ex.CirrusPlus e
t
c
レベル 2
:国 内 バ ン キ ン グ カ ー ド
銀行引出し・デビット機能による支払
レベル 3
ダイレクトデビット VISA・マスターカード連動
デビット支払でのオーソリゼーションの可否
引落日設定・限度額(フロアーリミット)設定
EUROCARD・VISA
:国 際 バ ン キ ン グ カ ー ド
レ ベ ル 2機 能 の 国 際 版
:VIPカード
GOLDMASTERCARD・PREMIERVISA
すべての機能を持つ通称のゴールドカード
レベル 4
CB カ ー ド の 運 用 ル ー ル ( 一 部 )
・す べ て の 銀 行 は カ ー ド 発 行 は で き る 。 そ の カ ー ド は 、 標 準 化 さ れ た カ ー ド に 限 る 。
・すべてのATMで利用することができること。
・す べ て の 商 店 で 、 す べ て の カ ー ド が 受 入 れ ら れ る こ と 。 ア ク セ ス 端 末 の 設 置 は 商 店 側 の 費 用 負 担 。
クレジット・デビットに関わらず2日後に振込完了。
図9:CB(フランス)の機能分類と特徴
このようにこの各種カードは、そのサービスに適合する手数料を設定し、利用されている。そ
のカード機能については、カード所有者のみが知るものであり、利用する際には何ら差別される
ものではない。
このフランスの場合、ICカード選択は図10に示すように行われている。磁気カードかIC
カード化を検討したのは、1980年代の終わりから1990年代はじめにかけてである。CBがICカー
ドを選択した理由は、それまでの磁気カードの偽造撲滅である。この偽造撲滅の具体的な方策と
して、3案が検討対象となった。1つは、ATMが利用しているオンラインシステムをそのまま使
用する方法であり、これは従来の磁気カードを継承するものである。しかし、この方法では、小
売店にとって通信コストの負担があり、且つオンライン端末の設置費用を負担し、オーソリゼー
ション要求の通信混雑対応が完全にできるか等の問題が解決できずこの案は消えた。次の案は、
磁気ストライプのコーティング強化によりハッキング対応しようと言う案であるが、受身的で且
つ技術的ハードルを高くするのみで意味が無いとしてこれも消えた。そしてセキュリティの要で
ある磁気ストライプの良否を検討した結果、ICカード化を最終案として提示しこれに決定した。
元々フランスはICカード発祥国でもあり、他国に無いスキームを採用したわけである。そして
このICカード即ちスマートカードを採用すれば、オフラインでも使用可能であり、また暗証番
号(ピンコード)も銀行側コンピュータで割り付け、安全な管理ができるとして進められ今日に
至っている。ただし、これまで順風満帆とは言えずスマートカードの産みの苦しみを味わい一つ
一つを着実に解決し、ISO規格等にも反映し先陣を切っている。
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I
Cカードと磁気カードの比較選択
CBがICカードを選択する目的
偽造カードの撲滅
1.偽造カードを作製したり、それを入手する機会を減少させる。
2.偽造カードの使用をより困難にする。
3.カードの不正を察知するのに要する時間を減少させる。
具体的方策の検討
1.ATMが利用しているオンラインシステムを利用
・小売店にとって通信コスト負担
・オンライン端末の設置費用負担
・オーソリゼーション要求の通信混雑対応
2.磁気ストライプ上のコーティング強化
・受動的ハードルを高くすることのみ
・セキュリティの要が磁気ストライプで良いのか
③.スマートカード化
・オフライン利用
・P
I
Nのコントロール
日本のJ−Debi
tは 直 面 す る 投 資 最 小 限 化
を目的にこの方式を採用
CB として今後のペイメントサービスの
基盤としてI
Cカードを採用
PINは、4桁 − 顧 客 が 自 由 に 設 定 す る こ と は で き な い 。
すべて、カ ー ド 発 行 時 に 発 行 者 側 で与える。PI
Nの変更は認められていない。
図10:ICカードと磁気カードの比較選択
J−デビットシステムを見るとき、初期投資は少なく目的は達成するかもしれないが、「預金
者保護や安全性の面で消費者不在のシステム」と言えなくも無いとは、言い過ぎであろうか。
フランスでは1993年にCBカードは総てスマートカードに切り替わり、その結果カードの不正
使用率が0.27%(1987年)から、0.02%(1997年)へと激減している。この間のカード発行枚数
は2倍(約3000万枚)に増加しているにもかかわらずである。先進国の中で安心してカードが使用
できるのはフランスのみで、現在イギリス・ドイツも磁気カードからスマートカードへと切り替
え作業に入ったところである。ドイツでは、カードに有効期限を設け、切り替え時に新しいサー
ビスを加味することができる方策を取っている。この時新しいサービスを受けるかどうかは、各
個人にその判断を委ねている。このようにカードライフサイクルが利用者を前提に回転が始まっ
ており、この点でも日本での展開に疑問があるところである。
私見ではあるが現在のJ−デビットの動きには賛同しかねる。しかし、デビットサービスそれ
自体は多いにやるべきと思っている。これが進めば電子マネーと合体した利用者にとって利便性
のある、且つ信頼性のあるサービスが可能となろう。今フランスもこの方向で検討が進められた
いる。
このようにペイメントカードは利用者が、どこでも・いつでも・安全に・安心して利用するこ
とができ、これに対応する小売店等の利用店が信頼をベースに維持コストも含め安全・安心に業
を営むことができるスキーム構築が必要であろう。従って、ペイメント手段としてのカードシス
テムのポリシーをどう判断し、システムを構築するかである。このポリシーの考え方の一例を図
11に示す。
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システム ポリシー
システム ポリシーとして、守るべきモノ は 何 か を 明 確 に す る こ と が 最 重 要 。
システム設計開始時点から、
消 費 者 ・商 店 小 売 店 等 の 最 終 利 用 者 に 対 す る 充 分 な 配 慮
が重要。
1.守るべきモノは何か
2.どの程度のコストをかけて行うか
3.システムの方針とその公開性維持
4.利 用 者 保 護 ま で 含 め た 法 整 備 へ の 配 慮
5.運 用 ・制 度 面 へ の 対 策 等 々
安全に・安心して・信頼を得て・運用できるシステム構築の
実現ツールの一つがICカード
この長所を生かし、新社会へのソリューションとして提案する。
図11: システム ポリシー
我が国は地域振興券なる大尽的発想を実施する国である。もし良識を持ってこの一部でも多様
化するペイメントスキームを支援するならば、より永続する社会構築も夢ではないと思うのは筆
者だけであろうか。
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ホームページ運用委員会が立ち上り、11月2日から東京ビックサイトで開催される
COM JAPAN1999のテスト発表に向け、“What’s IC CARD?”のコンテンツ
作成に入りました。
“What’s IC CARD?”は、一般市民と協議会をつなぐ、はじめての接点と位置づけら
れ、利用者との双方向チャンネルにより、来たるべきICカード社会の前倒しにいささ
かでも貢献したいとの発想が原点になっています。“What’s IC CARD?”を通し、「利
用者がICカードを利用するメリットは何か。」を明確化できればと考えています。
本号に収録した「JICSAPの国内ICカードの標準化の取り組み」でも触れたよ
うに、99年は我が国ICカード史上では、画期的な年であったと言えます。3月には
NTT ICテレホンカードが初のライフラインにおける全国規模の商用サービスと
して開始されましたし、高速道路でも実用システムとしてETC(ノンストップ自動料
金収受システム)の建設が始まり、8月には第145回通常国会で住民基本台帳法改正
案も成立しました。
広報部会、ホームページ運用委員会では、“What’s IC CARD?”をはじめとするホー
ムページを介し、ICカード社会のインフラ形成に大きな影響力を持つ上記のその後の
動きや、非接触近接型ICカードのJIS原案作成等標準化動向について、積極的に情
報を発信して行きますので、皆様も事務局にご意見、情報をお寄せ下さいますようお願
い申し上げます。
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