包括的核実験禁止条約(CTBT)機関準備委員会の概要 平成 27年9月 1.CTBT とは 包括的核実験禁止条約(CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)は、宇 宙空間、大気圏内、水中及び地下を含むあらゆる場所において「核兵器の実験的爆 発又は他の核爆発」を禁止する国際条約である。 部分的核実験禁止条約(1963 年 8 月締結)から大きく前進するものとして、長期の 外交交渉の末、1996 年 9 月 10 日に国連総会で採択され、直ちに署名のため開放さ れた。2015 年 9 月現在、署名 183 か国、批准 164 か国を数えるが、未だ発効していな い(日本は 96 年署名、97 年批准)。 条約の発効には、原子炉を有するなど、潜在的な核開発能力を有すると見られる特 定の 44 か国(発効要件国)の批准が必要とされ、現在のところ、3 か国(インド、パキ スタン、北朝鮮)が未署名、5 か国(中国、エジプト、イラン、イスラエル、米国)が未批 准である。 CTBT は NPT(核不拡散条約)体制を支え、「核兵器のない世界」を実現するための 現実的かつ実践的な核軍縮措置であり、我が国はその早期発効を極めて重視してい る。2013 年9月,ニューヨークにおいて開催された第8回CTBT発効促進会議で岸田 大臣は,核実験の禁止に関する国際規範化を推進すること,国際監視制度(IMS)の 早期完成の重要性を訴えること,CTBT発効促進に向けたハイレベルでの働きかけ を積極的に行っていくこと,の3つの行動を提案・表明する演説を行った。また,発効 促進会議が開催されない年に隔年で開催しているフレンズ外相会合は,第7回会合 を2014年9月にNYで開催。岸田大臣は同会議の議長を務め,CTBTの早期発効 のためには,残りの発効要件国が,核実験禁止という国際社会の強い決意とビジョン を再確認する政治的な意思を行動で示すことが重要である旨訴えた。同会合ではCT BT発効促進に向けた閣僚共同声明が採択され,104 か国が賛同を表明した。 (→外務省ホームページ ) 2.CTBT 機関準備委員会と検証制度 CTBT 機関準備委員会(ホームページ http://www.ctbto.org )は、CTBT が発効す るまでの間、検証制度の整備等、条約の実施のための準備を行っている。発効すれ ば CTBT 機関が発足するが、発効前であるため「準備委員会」と称され、1997 年 3 月 17 日、オーストリアの首都ウィーンに設置された。各署名国・批准国の全ての代表か ら成る準備委員会及びその下部機構である作業部会 A と B(A は行財政問題、B は 検証問題を扱う)がそれぞれ、年 2~3 回、各回 1~3 週間開催され、発効に向けた検 証体制整備のための交渉や作業を行っている。 CTBT 第 4 条は、その発効までに国際監視制度、及び現地査察の実施能力を整備 する旨定めている。 国際監視制度(International Monitoring System:IMS) 地球上を均質な観測技術で覆い尽くし、核実験を 24 時間監視するもの。地震学的 監視施設、放射性核種監視施設、水中音波監視施設及び微気圧振動監視施設の 4 種類があり、世界 89 か国、337 か所に設置される。各施設が探知するデータは、ウィ ーンの国際データセンター(IDC)に送付され、処理される。 現地査察(On-Site Inspections: OSI) 条約違反の核実験が行われたかを明らかにするため、執行理事会の 51 の理事国 のうち 30 以上の賛成を得て、派遣査察団により実施されるもの。 3.CTBT 機関準備委員会暫定技術事務局(PTS)について CTBT 機関準備委員会の事務局として、暫定技術事務局(Provisional Technical Secretariat:PTS)が設置されており、条約が発効すれば技術事務局(TS)となる。 PTS は、行財政局、法務対外関係局の他、IMS の整備を行う国際監視制度局、世 界中の監視観測所から送られるデータを解析する国際データセンター局、及び現地 査察に係る準備を進める現地査察局から成り、現在、258 名の職員を擁している。ブ ルキナファソ人のラッシーナ・ゼルボ事務局長以下、専門職(P レベル)が 171 名、一 般職(G レベル)が 87 名となっており、このうち邦人職員は 5 名(いずれも P レベル) である(詳細は 4.に述べる)。 2015 年度の PTS の予算は年間約 139 億円であり、日本の分担率は 11.025%、約 15.3 億円で、米国に次ぎ第 2 番目である。 4.PTS の邦人職員 2015 年 9 月現在、PTS には 5 人の邦人職員(いずれも P レベル)がいる。法務対 外関係局調整官(P5),行財政局首席予算計画・調整官(P5),国際データセンター(I DC)局ソフトウェア・アプリケーション課ソフトウェア統合室ソフトウェア・エンジニア (P4),国際監視制度(IMS)局技術開発課放射性核種専門官(P4),国際データセン ター(IDC)局運用課地震専門官補(P2)である。これまでの邦人職員の出身組織は 外務省、日本原子力開発機構、世銀、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と様々である。 加えて2015年から2016年にかけ,2名のコストフリーエキスパートを派遣してい る。 5.終わりに PTS の業務は、地震学、微気圧振動、水中音波、放射性核種の 4 つの技術を活用 する検証部門から、人事、会計、調達契約などの行財政部門、また、法務や発効促 進活動などの対外関係を担当する部門まで多岐に亘り、幅広い分野における人材が 求められている。 職員の公募情報は準備委員会のホームページで常に公開されて いる。
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