適応作型の広い一本ネギ「吉宗」の 品種特性と特性を

農場情報
品種特性と栽培のポイント
表 「吉宗」
と
「秀逸」の特性
品種名
葉色
しまり
太さ
吉宗
中
濃緑
最良
太
秀逸
やや長
濃緑
最良
太
図2 「吉宗」の可能作型と既存品種の可能作型
適応作型の広い一本ネギ「吉宗」の
品種特性と特性をいかした使い方
−既存品種との組合わせ−
葉長
11
12
1
2
3
4
5
MSI-953
㈱武蔵野種苗園 新治育種農場 永田 晋
るくらいの量を作付けしておけば、
その後「吉宗」が仕上がってきますので、
「吉宗」単独の作付けよりもやや早く収穫が始められます。
逆に
「吉宗」
よりやや太りの遅い「秀雅」、
「MSI-953」
を同時播きした場合、
先に
「吉宗」が仕上がり、遅れて
「秀雅」、
「MSI-953」が仕上がります。
これら
は太りが遅い分、ネギ自体の老化も遅い在圃性の高い品種です。また
「MSI-953」は「吉宗」
よりも晩抽のため、3月∼4月上旬どりが可能です。
こ
の晩抽性を利用して、11月播きのトンネル栽培も可能なので、
「吉宗」の収
穫が始まる前の6月下旬からの収穫が可能です。
に広い作型をカバーすることができます。
既存品種の品種特性
・春播き、夏秋どり:12∼2月播種、3∼4月定植、7∼9月収穫
夏から秋口にかけて収穫する作型です。
この作型では早太り性、高温
いと締まりが良く、葉色は濃緑で高品質です。
「吉宗」の使い方
期での肥大性などが求められます。
「 吉宗」は比較的肥大が早く高温肥
大性にも優れるためこの作型に適します。また、
この作型では葉が短く
「MSI-856」
①耐暑性に優れる早太り品種で、高温期でもよく太るため早出しの作型に
適します。
播種時期も広く、
12月から4月まで播種することが可能です。
太りは早い方で
すが、極早生ではないため、極早生種に比べると仕上がりがやや遅くなりま
す。
反面、
在圃性は極早生種より高く、
ある程度の出荷調整が可能です。
やや強
強
中
やや強
強
中
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4
②草勢は旺盛で、葉
部は太くなり収量性が高い品種です。
③草姿は立性で襟部の締りがよく、管理作業がしやすい品種です。
「秀雅」
①耐暑性に優れ、作型適応性が広く栽培しやすい品種です。
②草姿は立性で、生育はやや遅めで在圃性があり、収穫遅れによる襟のば
らけが少ない品種です。
③首部の襟
いと締りがよく、葉長はやや短めで葉折れが少なく、管理作
業がしやすいです。
「MSI-953」
①首部は襟
い、締りがとても良く品質良好です。
②草姿は極立性で草勢はおとなしい品種です。
④抽苔はやや遅く、耐暑性に優れ、襟のばらけも遅いため、適応作型が広
く作りやすい品種です。
・春播き、秋冬どり:2∼4月播種、4∼6月定植、9∼2月収穫
栽培上の注意点
いうちに夏を迎えるため、高温、乾燥、過湿などで欠株になる危険が高ま
の作型でも形状がまとまり、
作りやすいネギであるということです。
このため
強
やや強
③葉色は濃緑で草丈は短く葉折れがしにくい品種です。
仕上がりますので、強い風雨でも葉折れの心配がありません。
秋から冬にかけて収穫する作型です。
この作型では定植後苗が小さ
「吉宗」の一番の特徴は、夏秋どりから秋冬どりまで広い作型に適応し、
ど
早
やや早
:収穫時期 ※11月播きは定植後トンネル被覆
の後「吉宗」が仕上がってきますので、
「MSI-856」
を1週間程度で取り終え
ら秋冬どりまでの広い作型に適応します。
また、弊社から発売しています他の品種と組合わせることによってさら
④首部の
抽苔
※
:播種時期
このたび、発売しました新品種「吉宗」は特に適応作型が広く作りやすいことが特徴です。
このため、夏秋どりか
③葉長はやや短いので、風等による葉折れは少なく管理作業が容易です。
耐暑性
MSI-856
意が必要です。
②草姿は立性で、
草勢は中程度で、
葉 部は太くなり収量性の高い品種です。
低温伸長性
秀雅
時期にあわせて品種を使い分ける必要があります。
しかし、品種によっては最適作型が短いなど品種選びには注
①耐暑性、耐寒性に優れ、適応作型が広く作りやすい品種です。
6
耐寒性
吉宗
現在、ネギは周年栽培が定着し、全国的に生産が行われています。
このため気候や土質が様々で、その土地や
「吉宗」の品種特性
生育
ります。
「 吉宗」は特に高温、乾燥条件に強いため、そのような条件下で
「吉宗」はどちらかというと多肥栽培を好むため、肥料はやや多めに施
も欠株になりにくい特性があります。
また、年明けの収穫では、最も寒さ
用します。特に砂質土壌など肥料分が流亡しやすい圃場では注意が必要
の厳しい時期のため生育が止まり葉が枯れこんできますが、
「吉宗」は低
です。ただ、必要以上の多肥栽培は軟弱徒長や病気の原因にもなりますの
温期でも首が極端に詰まってしまうことはなく、葉も比較的残る方なの
で、生育状況を確認しながら追肥を行います。
また、ネギは収穫適期を過
で、年明けの収穫にも適応します。
ぎると首のばらけが出やすくなりますので、計画的な収穫を心がけましょ
う。
図 「吉宗」の最適作型
作 型
夏 秋 どり
秋 冬 どり
1
2
3
4
●×
×
●
●×
5
6
7
8
9
10
11
12
●
×
既存品種(「秀雅」
「MSI-856」
「MSI-953」)
との組合わせ
これら早生から晩生の品種を組合わせることによって、
「吉宗」単独で作
付けするよりも収穫期間が広がります。例えば「吉宗」
と
「MSI-856」
を同時
吉宗の砂質土壌での栽培状況
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播きした場合、
「吉宗」
より太りがやや早い「MSI-856」が先に仕上がり、
そ
吉宗は葉長がやや短いので葉折れが少ない
吉宗の水田転作地での栽培状況
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