クリスティアン・ティーレマン指揮 シュターツカペレ・ドレスデン

クリスティアン・ティーレマン指揮
シュターツカペレ・ドレスデン
Christian Thielemann / Sächsische Staatskapelle Dresden
ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデン vs. ラトル/ベルリン・フ
ィル。
この対決構図がヒートアップ中だ。カラヤンが創設したザルツブル
ク復活祭音楽祭の主役が、後者から前者に交代するだけでない。両楽
団がそれぞれの本拠地でおこなう大晦日のジルヴェスターコンサート
の生中継をめぐり、
ドイツの公共放送局2社が真っ向からぶつかり合う
といった具合に、話題はすでに音楽界を超えた広がりを見せている。
かつて冷戦中は、カラヤンを戴く
「西側」のベルリン・フィルのほうが、
世界的知名度という点で圧倒的だった。対して「東側」に属していたシ
ュターツカペレ・ドレスデンは、
「いぶし銀の響き」
という譬えからも分か
るように、むしろ通好みのオーケストラであった。そんな幻のオーケスト
ラが、冷戦終結とともにヴェールを脱ぎ、
「 西側」では既に失われてしま
った伝統の音を常に聴かせてくれるようになり、事態は変わった。
もちろんその後の政治や社会の変化により、シュターツカペレ・ドレス
デンの響きに新しさが徐々に加わったことも見逃せない。
それでも一貫
して変わらぬ筋が通っているのは、
このオーケストラがドレスデン州立
歌劇場の専属団体だから。歌手や合唱に合わせる仕事をもっぱらとす
ることで、人間の歌の生理を知り尽くし、それを器楽の演奏にも活かす
という姿勢が、
コンサート専門のオーケストラにはない歌心や劇性を培
い続けた。
しかもそんな歌劇場附属のオーケストラがコンサートをおこなうとな
れば、それはまさしく
「晴れの舞台」に他ならない。スポットライトに煌々
と照らされて、聴衆の拍手と歓声を一身に受ける。普段オーケストラボッ
クスの中では味わえない充実のひと時であって、おのずと演奏にも力が
入ろうというものだ。
このようなシュターツカペレ・ドレスデンを新たに率いるようになった
のがティーレマンである。重厚壮大を旨とするドイツ音楽の巨匠たちの
解釈を受け継ぎつつ、それのみに安住しないシャープなバランス感覚
や推進力を持ち味とする独特の芸風。それは、伝統の中に新風を取り
入りいれながら前進するシュターツカペレ・ドレスデンと最高の相性を
見せ、
ドイツひいてはヨーロッパ楽壇注目の的となったのも当然だろう。
しかも今回は、
ワーグナーにブラームスという
「ドイツ音楽」の王道ま
っしぐらのプログラム。
となれば、役者と舞台は全て揃った。あとは彼ら
の醸し出す音楽が、みなとみらいホールとそこに集った聴衆との間で、
ど
のような化学反応を見せてくれるのか? 小宮正安
©MatthiasCreutziger
クリスティアン・ティーレマン
シュターツカペレ・ドレスデン
〔シュターツカペレ・ドレスデン首席指揮者〕
(2012年9月就任予定)
〔ドレスデン国立歌劇場管弦楽団〕
Christian Thielemann, Principal Conductor
Sächsische Staatskapelle Dresden
ベルリン生まれ。5歳でピアノ、7歳でヴィオラを始め、後にピアノをベルリン音楽大
学学長のヘルムート・ロロフに師事。1978年、19歳でベルリン・ドイツ・オペラのコレ
ペティートアに採用され、
この頃より指揮者としての道を歩み始める。その後カラヤン
1548年にザクセン選帝侯の宮廷楽団として設立され、460余年の歴史を持つ、世
界的に最も古い歴史と伝統を誇るオーケストラの一つ。17世紀のシュッツ、19世紀
のウェーバー、
ワーグナー、20世紀のR.シュトラウスに至るまで、重要な作曲家がこ
との交流も深まり、また、ベルリン・ドイツ・オペラでバレンボイムのアシスタントも務
めた。1982年よりゲルゼンキルヒェン音楽歌劇場、
カールスルーエ・バーデン州立劇
場、ハノーファーのニーダーザクセン州立劇場にて経験を積み、1985年にデュッセ
ルドルフ・ライン歌劇場の首席指揮者、1988年ニュルンベルク州立劇場の音楽総監
督に就任。1991年「ローエングリン」を指揮してベルリン・ドイツ・オペラにデビュー
し、1993年にはカルロス・クライバーの代役として
「ばらの騎士」を指揮してメトロポ
リタン歌劇場にデビュー。1995年にはドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、多く
のCDやDVDをリリース。1997年ベルリン・ドイツ・オペラ音楽総監督、2004年ミュ
ンヘン・フィル音楽総監督を経て、2012年のシーズンよりシュターツカペレ・ドレスデ
ンの首席指揮者に就任予定。
◆未就学のお子さまの同伴、入場はご遠慮ください。
◆やむを得ぬ事情により、出演者・曲目などが変更となる場合がござい
ます。あらかじめご了承ください。
◆場内に花束などのお持込をご遠慮いただく場合がございます。
のオーケストラと関係を築いてきた。
ワーグナーは宮廷楽長をつとめ、
この楽団を 奇
跡とも呼べるハープ と称し、その在任中に
「タンホイザー」を初演。
また、R.シュトラウ
スの「サロメ」、
「エレクトラ」、
「ばらの騎士」、
「アルプス交響曲」等を初演したオーケス
トラとしても音楽史に名を残している。20世紀には、ベーム、コンヴィチュニー、ケン
ペ、カラヤン、クライバー、
ブロムシュテット、
シノーポリ、ハイティンクなど錚々たる顔
ぶれの指揮者がその指揮台に立った。初来日は1973年。2007年ルイジがドレスデ
ン国立歌劇場の音楽総監督に就任。その後2012年9月、クリスティアン・ティーレマ
ンの首席指揮者就任が予定されている。
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