投てき競技の安全に配慮した指導について

投てき競技の安全に配慮した指導について
岐阜県高等学校体育連盟陸上競技専門部
1 競技環境の確認
(1)練習場所の安全を確保するため、他の部活動や陸上競技の他種目と時間帯を分ける等の対策
を講じる。
(2)種目の特性や個人の能力に応じて、適した投てきスペースを確保した上で投てき練習を行う。
(3)落下エリアをコーンやネット等で明確に区分する。
(4)円盤投げやハンマー投げにおいては、投てき囲いや防護ネットの設置等、安全対策に十分配
慮する。なお、設置には指導者が必ず立ち会う。
(5)雨天時には、手元が滑ったり、サークルや助走路の水たまりに足を取られたりして大きくそ
れることがある。対策を講じるか、投てき練習を中止する。
(6)突発的に起こりうる危険に備えて拡声器やメガホン等を所持(準備)しておく。
(7)練習場に掲示物を表示する等、常時注意を促す。
2 施設・器具の設置と点検
(1)練習前には投てき物や投てき囲い・防護ネットが劣化・破損していないかを確認する。
(2)投てき囲いや防護ネットを設置する際には、支柱の転倒や投てき物のすり抜けがないように
適切に設置する。
3 生徒への全般的な指導内容
(1)全ての陸上競技部員に対し、安全な練習方法を指導するとともに、起こりうる危険性を理解
させる。
(2)同一グラウンドで活動する他の部活動の生徒に対して事前に危険性を十分理解させ、落下エ
リアに誤って進入しないよう徹底を図る。
(3)投てき者は周囲の安全を確認するとともに、大きな声で「ハンマー行きます(例)
」等と周囲
の生徒に知らせ、周囲の者はその声に対して返事をしたり手を挙げたりして反応する。投て
き者は、その反応と全体の安全を最終的に確認した上で投てき動作を開始する。
(4)思わぬ事態が起こることを想定して、周囲の者は投てき者を必ず注視し、その投てきが終了
し、投てき物が静止するまで確認する。
(5)投てき物を拾う者は、投てき者が全て投げ終わってから落下エリアに入って、投てき物を拾
い、戻すようにする。また、その際に投げ返えさないようにする。
(6)投てき物を拾ったり戻したりしている際には、次の投てき者はサークルやピットに立ち入ら
ないようにする。
1
砲丸投げ
考えられる危険と対策
<砲丸を持ってのグライド・ターン練習>
危
険
対
策
①グライド・ターン練習中に手が滑り、砲丸が手 ○周囲に人がいないことを確認して行う。
から離れることがある。
<投げの局面>
危
険
対
策
②投てき動作中に手が滑って、横方向へ大きくそ
れることがある。
③グライド・ターンによる投てきの際は投てき方
向に対して、背を向けるため、落下エリアへの ○投てき動作前の声掛け等による投てき者と
人の侵入を見落としやすい。
周辺の者による安全確認を行う。
④投てき距離が長かったり、転がる距離が長い場
合には、他の種目の生徒に投てき物が接触する ○投てき動作中に指導者や周辺の生徒による
安全確認を行う。
ことがある。
⑤回転投法を用いる際は、砲丸が左右に大きくそ
○落下エリアをコーンやネット等で明確に区
れることがある。また、ターンの失敗によって
分する。
は真横方向へも強く飛ぶことがある。
⑥砲丸を拾うため、落下エリアへ進入する際に、
次の投てき者がそれに気づかず、サークルへ入
って投てきを行うことがある。
⑦砲丸投げに関係ない者(他の部活動など)が、 ○投てき動作中であれば、指導者や周囲の者
ボールを追いかけるなどして落下エリアへ突然
侵入することがある。
が笛や大声等で投てき中止を投てき者へ知
らせる。
<その他>
危
険
対
策
⑧回転投法は方向性が悪く、大きくそれることが ○指導者が回転投法に関して正しい知識をも
ある。
ち、起こりうる危険に対して十分な対策を
とる。
2
円盤投げ
考えられる危険と対策
<器具を持っての予備動作・ターン>
危
険
対
策
○周囲に人がいないことを確認してから行う。
①投げない場合でも予備動作中やターンの際に不 ○投てき囲い等の安全性が確保できる場所で
意に手から円盤が離れ、360度いかなる方向
へも飛ぶ危険がある。
行う。
○初心者はターン用ストラップ等を使用す
る。
<投げの局面>
危
険
対
策
②サークルが滑りやすくなっている場合(サーク ○サークルが滑りにくくなるよう対策を講じ
ルの劣化・雨天時)、予測できない方向へ投げて
るか、投てき練習を中止する。
しまうことがある。
③投てき囲いを使用しても設置状態によっては隙 ○投てき囲いを適切に設置する。
間から投てき物が飛び出すことがある。
○周囲の者は落下エリア外の者でも投てき者
を注視する。
④防護ネットに円盤が当たった際は、予想以上に ○待機者は防護ネットから離れた位置に立つ
ネットが伸びてくることがある。
ようにする。
⑤失投によって大きく左右へそれることがある。
○投てき動作前の声掛け等による投てき者と
⑥ターンの際は、投てき方向に対して背を向ける
周辺の者による安全確認を行う。
ため、落下エリアへの人の侵入を見落としやす
い。
⑦投てき距離が比較的長め(15~50m)であ
○投てき動作中に指導者や周辺の生徒による
安全確認を行う。
り、予期せぬバウンドや転がりによって思わぬ
方向へ飛び出すなど落下エリア付近にいる者が ○落下エリアをコーンやネット等で明確に区
注意を怠りやすい。
分する。
⑧円盤を拾うため、落下エリアへ進入する際に次
の投てき者がそれに気づかず、サークルへ入っ
て投てきを行ってしまうことがある。
⑨円盤投げに関係ない者(他の部活動など)が、 ○投てき動作中であれば、指導者や周囲の者
ボールを追いかけるなどして落下エリアへ突然
が笛や大声等で投てき中止を投てき者へ知
侵入することがある。
らせる。
<その他>
危
険
対
策
⑩基礎練習として真上に円盤を投げ上げる練習を ○通常の投てき練習同様に周囲に人がいない
行う際、飛ぶ方向が大きくそれることがある。
ことを確認し、安全な状態で行う。
3
ハンマー投げ
考えられる危険と対策
<器具を持ってのスイング・ターン>
危
険
対
策
①投げない場合でもスイングやターンの際に不意 ○周囲の安全を確認し、投てき囲い等の安全
に手からハンマーが離れたり、ワイヤー(ピア
性が確保できる場所で行う。
ノ線)が切れたりして、360度いかなる方向 ○「スイングお願いします」
「ターンします」
へも飛ぶことがある。
等、投てき練習同様に声による周囲への確
認を行う。
<投げの局面>
危
険
対
策
②サークルが滑りやすくなっている(サークルの ○サークルが滑りにくくなるよう対策を講じ
劣化・雨天時)ことがある。
るか、投てき練習を中止する。
③投てき囲いを使用しても設置状態によっては隙 ○投てき囲いを適切に設置する。
間から投てき物が飛び出すことがある。
○周囲の者は落下エリア外の者でも投てき者
を注視する。
④失投の際には防護ネットの角度より大きくそれ ○予想しうる最大の落下エリアを設定する。
ることがある。
⑤防護ネットにハンマーが当たった際はネットが ○待機者は防護ネットから離れた位置に立つ
予想以上に伸びてくることがある。
ようにする。
⑥360度いかなる方向へも飛ぶことがある。
※ワイヤー(ピアノ線)や取手が金属疲労により、 ○投てき練習は投てき囲いの中で行う(スイ
ングやターンを含む)
。
スイングやターンの際に切れる。
※スイングやターン中に手が滑る。
○投てき動作前の声掛け等による、投てき者
⑦失投によって大きく左右へそれることがある。
と周辺の者による安全確認。
⑧投てき距離が長め(20~60m)であり、予
期せぬバウンドや転がりによって思わぬ方向へ ○投てき動作中に指導者や周辺の生徒による
飛び出すなど、落下エリア付近にいる者が注意
安全確認。
を怠りやすい。
⑨ハンマーを拾うため、落下エリアへ進入する際 ○落下エリアをコーンやネット等で明確に区
に、次の投てき者がサークルへ入って投てきを
分する。
行うことがある。
⑩ハンマー投げに関係ない者(他の部活など)が、 ○投てき動作中であれば、指導者や周囲の者
ボールを追いかけるなどして落下エリアへ突然
が笛や大声等で投てき中止を投てき者へ知
侵入することがある。
らせる。
<その他>
危
険
対
策
⑪ワイヤー(ピアノ線)にねじれが生じている場 ○異常のある用器具は使用しない。修理・交
合や鉄球部との接合部のベアリングが正常に回
換を行ったうえで使用する。
転しない場合は、ワイヤーが切れることがある。 ○異常のある用器具は使用しない。修理・交
⑫取手部分に破損や金属疲労がある場合、手袋
換を行ったうえで使用する。
の装着が正しくなかったり、破損している場合 ○砲丸投や円盤投よりも、落下地点の危険範
は、ハンマーが手から離れることがある。
囲が広く予測しづらい事を認識し、余裕を
⑬ワイヤーや取手が当たっても大きな事故にな
もった投てきスペースを確保する。
る。
4
やり投げ
考えられる危険と対策
<器具を持っての助走・クロス練習>
危
険
対
策
①やりを持った状態での助走やクロスの練習にお ○周囲に人がいないことを確認してから行う。
いて選手が転倒し、走路等、予期せぬ方向へや ○声掛け等による投てき者と周辺の者による
りが飛ぶことがある。
安全確認を行う。
<投げの局面>
危
険
対
策
②重量が軽いため (男子800g、女子600g)、
風の影響を受けやすく、大きくそれることがあ
る。
③投げる方向は比較的安定しているが、方向がそ
れた場合は距離が長い分、大きなずれとなる。
④やりの落下の仕方(胴体着地)によっては、落 ○投てき動作前の声掛け等による投てき者と
周辺の者による安全確認を行う。
下地点より十数メートル先まで、やりが滑る場
合がある。
⑤投てき距離が長いため、落下エリア付近にいる
者が注意を怠りやすい(20~70m)。
⑥助走も含めると落下地点までは50~100m
○投てき動作中に指導者や周辺の生徒による
安全確認を行う。
○落下エリアをコーンやネット等で明確に区
にもなることが考えられるため、落下エリア付
分する。
近の者に声が届きにくい。
⑦クロスステップ時の転倒や滑りやすい地面では、
大きくやりがそれることがある。
⑧やりを拾うため、落下エリアへ進入する際に、
次の投てき者がそれに気づかず助走路へ入って
投てきを行ってしまうことがある。
⑨やり投げに関係ない者(他の部活動など)が、 ○投てき動作中であれば、指導者や周囲の者
が笛や大声等で投てき中止を投てき者へ知
ボールを追いかけるなどして落下エリアへ突然
らせる。
侵入することがある。
<その他>
危
険
対
策
○他の選手と間隔を十分取り、周囲の安全確
⑩やりを使っての体操や動きづくりでは、周囲に
認をした上で行う。
人がいる場合にはやりが刺さる可能性がある。 ○初心者はやり先にゴムキャップ等を付けて
行う。
5