COSPA 通信 第4号 Conservación de las Orquídeas Silvestres de Panamá 平成15年 7 月 15 日 編集 なぜ我々は El Valle の蘭に着目するのか 明智 洸一郎 その 3 生物の進化と人間の特殊性 ところで、あなたは生物の進化を信じますか。全ての生物は神が作りたもうた物で永 遠に不変であると思っている人は少なかろう。変異の多い蘭を見ていると今でも刻々と 変化し、進化しつつあることを実感する。ただ、突然変異によって生じた方向性のない 変化が、「進化は変異が生存に適していた場合は残り、都合の悪い場合は淘汰されて絶 滅すると言う適者生存の法則で進む」と言う、ダーウィンの進化論と称して、学校で教 えられた論理には疑問を感ずる人も多いことと思う。 人間 Homo sapiens は、突然変異と適者生存の原理を繰り返し、遂に動物界の頂点に 登りつめた進化の王者である。このように淘汰によって排他的に強者のみが生き残れる と言う考えは普遍的に通用するだろうか。たまたま脊椎動物の頂点にいる人間 Homo sapiens にだけ当てはまる特殊な論理かもしれない。人間以外の動物界、植物界、微生 物などはどうだろうか。数知れない種類が生存している微生物などを進化の掟から取り 残された未進化の生物と考えがちだが、動物界より古の時代から営々と進化の過程を歩 んで、多様な性質を持った種類へと分化した結果が今日あるのではないか。サルの病原 として存在したエイズウイルスが人間の体内でも増殖する形に変化し、SARS も野生の 動物の病気から人間に適応できる病原にごく最近進化したのではないか。節足動物の進 化の最先端、昆虫の世界を見てみよう。昆虫の種類は数万、数十万と言われているが、 これは進化していないから数が多いのではなく、著しい適応放散の結果、無数の種類に 分化した。植物界で、進化の頂点にある蘭科植物は人為的に作られた種も含めるとなん と 5 万種以上、自然界にある種類だけで 2 万 5 千種はあるといわれる。人間のように進 化の頂点に至ってその結果、強者がたった 1 種類に収斂するなどと言う方が例外のよう だ。進化は適者生存、淘汰の論理で進むのだというのは、人間の現状を、人間の論理で 正当化しようとする、独善的論理ではないだろうか。 「三浦ふづきさん調査報告会」のお知らせ 三浦さんは4月から2ヶ月間、パナマ El Valle の APROVACA を中心に、野生蘭の保 護活動と野生蘭の販売で生計を立てる人たちの生活向上運動の状況を調査してきまし た。 下記の通り調査報告会を開催しますのでどうぞご参集ください。 1 日時: 平成15年8月8日(金) 午後6時から8時 場所: JICA 国際東京センター(京王新線幡ヶ谷駅から徒歩10分) 電話:03-3485-7057 尚、COSPA の広報活動として、次の通り三浦さんの報告とパナマの野生蘭とその保 護をテーマに小集会を持ちます。ご都合の良い方は是非ご参加ください。 日時: 平成15年7月26日(土) 午後3時から5時 場所: 世田谷ボランティア協会(東急田園都市線三軒茶屋から徒歩10分) 電話:03-5712-5101 いずれも、参加人数確認のため e-mail で明智まで出欠をご連絡ください。 パナマの野性蘭保護活動調査報告 3 三浦ふづき 2-観光市場での販売 週末に行われる観光市場にはたくさんの観光客が訪れとてもにぎわう。そ の中でも蘭は人気商品のひとつである。しかし野生蘭の販売は環境保護のため 法律で禁止されており市場で売られているのはパナマの蘭業者が古いものや病 気にかかってパナマシティでは売り物にならなくなったものを$6で卸して市 場では$10 程度で売っている。それらを販売している会員もいて週末の市場だ けで売り上げが$40∼50 になるという。 3-個人販売 残念なことだが会員が個人で販売していることも事実であることを報告し なければならない。しかしこの件についてはあまり悲観的に考える必要がない と思う。APROVACA 自体発足してまだ1年あまりなのでそれまでは個人販売 が主流に行われていたので仕方がないであろう。この先 APROVACA が El Valle の蘭の生産者組合としての認識が高まれば自然と CEPROVACA での販売 に移行してくるものだと思われる。また ANAM の蘭販売に対する取り締まり が強化されれば CEPROVACA での販売が必然的に行われることであろう。 ・会員の生活レベル 会員のほとんどは APROVACA の活動とは別に個別に仕事を持ってい る。El Valle の住民は別荘の住み込み管理人をしていたり、民芸品を作ってい るなどしてそれほど生活には困っていない。La Mesa の住民は野菜や観葉植物 を栽培し販売して生計を立てていることが多く、中には週末の観光市場でパナ マシティの業者の蘭を販売している会員もいて彼らはその収入だけでも週に $40∼50 を稼ぐというので比較的裕福である。 全体的に住むところと食べるものに困っていないので蘭を販売して現金 収 入を 得ようというよりは、明智 SV の目指している野生蘭の保護活動に会員 の関心が高く感じられる。ただし中には貧しい会員もいて彼らは頭では分かっ ていながらも蘭を山から取って売り生計を立てるほか手段がない。APROVACA が蘭販売をして彼らの生計の安定を図ることが望まれる。 2 絶滅が危惧されるパナマの野性蘭 その4 Aspacia epidendroides と A. principisa この属はグアテマラからブラジルまでの中南米に8種類が分布している。 パナマには A. epidendroides と A. principisa の 2 種類がある。両種とも低地の熱帯雨林 の中でよく見かける。 Aspacia epidendroides Aspacia principisa 3
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