分電盤設備 トラブル・対応事例 平成23年5月制定 盤標準化協議会 分電盤技術部会 <は じ め に> 電気の安定供給は社会活動の中で必要不可欠なものとなっており、その 供給電路に幅広く使用される分電盤には高い信頼性が要求されています。 しかしながら分電盤の取り扱い、保守点検に起因した停電・短絡事故など のトラブルを引き起こすケースも少なくありません。 このような現状を踏まえ、盤標準化協議会では、事故防止を目的に分電 盤における具体的な事故例をまとめ、安全にご使用いただくための提案と して、この技術資料を作成いたしました。 設備所有者の方々におかれましては、分電盤を長期間安定してご使用い ただくために取替えを含めた適切な管理を希望いたします。 トラブル・対応事例 1.錆に関する事例 2.発熱に関する事例 3.短絡に関する事例 4.経年劣化に関する事例 5.使用環境に関する事例 トラブル・対応事例1-1 チャンネルベースに錆が発生 設置 場所 ・屋外 状況 ・屋外に設置した、壁掛け自立のキャビネット内部に水が 溜まり チャンネルベースに錆が発生した。 原因 ・基礎とチャンネルベースの間をコーキング処理したため。 防止 対策 ・基礎とチャンネルベースの間はコーキング処理をしない。 または、基礎工事時に水抜き処理を施す。 ※ 盤施工上の注意事項(P4)参照 換気孔 (排気用・フード付) 換気孔 (吸気用・フード付) ・ 換気ができるよう、換気孔を設ける。 なお、フードなどを取付け、雨水の 浸入を防ぐこと。 ・ 下部は、水が抜けるように水抜き孔を 設けるか、チャンネルベース・基礎の 隙間はコーキングしないこと。 ・ 基礎には、水が流れるように傾斜を つける。 ・ 入出線部はコーキング処理をする。 基礎 不具合 状況 コーキング処理 - 1- ※ 基礎水抜き構造例 A A-A’断面図 A’ トラブル・対応事例1-2 機器に錆が発生 設置 場所 ・屋外 状況 ・屋外に設置した自立盤の補助リレー接点に錆が発生し、 警報信号が出力できない。 原因 防止 対策 ・盤内部に水溜りが出来るほどの結露が発生したため。 ・換気孔を設ける。または、ファンなどで強制換気する。 ※ 盤施工上の注意事項(P4)参照 ・ 換気ができるよう、換気孔を設ける。 なお、フードなどを取付け、雨水の浸入を防ぐこと。 換気孔 (排気用・フード付) 換気孔 (吸気用・フード付) ・ 下部は、水が抜けるように水抜き孔を設けるか、 チャンネルベース・基礎の隙間はコーキングしないこと。 ・ 基礎には、水が流れるように傾斜をつける。 ・ 入出線部はコーキング処理をする。 基礎 不具合 状況 補助リレー - 2- トラブル・対応事例1-3 屋根に錆が発生 設置 場所 ・屋外 状況 ・施工時の加工孔及び、屋根のかぶせ部に錆が発生した。 原因 ・施工時の孔加工で発生した鉄粉が除去されずに屋根の かぶせ部に残っており、その鉄粉に錆が発生したため。 (屋根背面側より孔加工があり、本体まで貫通していた。) 防止 対策 ・孔加工後の鉄粉は確実に除去する。また、水の浸入を 防ぐため孔加工部付近は、コーキング処理を行う。 不具合 状況 施工時の加工孔 屋根かぶせ部の錆 除去させずに残って いた鉄粉 - 3- トラブル・対応事例2-1 分岐回路の高負荷率による発熱 設置 場所 ・家電量販店 状況 ・分岐ブレーカに接続された負荷側の電線被覆が変色した。 《 分電盤仕様 》 壁埋込み型 電灯分電盤 主幹容量400A 分岐容量20A×30回路(200V) 原因 ・高負荷によりブレーカが発熱し、盤内雰囲気温度の上昇と 分岐ブレーカ端子部の干渉熱で電線被覆が変色したと 推測される。 ※1 分岐回路負荷電流 : 80~85% ※2 電線被覆実測温度 : 55~59℃ 防止 対策 ・負荷率が分岐容量の2/3を超えないように使用する。 (超える恐れがある場合は、分岐容量を上げておく。) 不具合 状況 電線被覆が変色 (白⇒茶) ■ 参考 ・経年劣化により、 電線被覆に含まれる 難燃材が変色した 可能性もある。 - 4- トラブル・対応事例2-2 圧着端子かしめ部の発熱 設置 場所 ・屋外 状況 ・太陽光発電用の接続箱において、逆流防止用ダイオード に接続した圧着端子(ファストン端子)のかしめ部が変色 した。 原因 ・絶縁被覆付き圧着端子をメーカー指定の専用工具にて 圧着したが、かしめ力にバラツキが発生。かしめ力の 弱いものが発熱して、変色したと推測される。 ・通常の分電盤に比べヒートサイクルの頻度が高く、温度の 高低差が大きい。 防止 対策 ・圧着部分の電線に隙間が生じないように、適正なかしめ 量に調整し、圧着後にかしめ状態を確認する。 不具合 状況 変色した電線 ■ 参考 ・かしめ条件が同じでも、圧着端子の材料が黄銅と銅では、かしめ量が異なるため注意する。 ・被覆材料がポリアミド樹脂(PA)のものは、湿度や温度により被覆の割れなどを生じる恐れが あるため、保管には注意する。 - 5- トラブル・対応事例3-1 異物による短絡 設置 場所 ・幼稚園 状況 ・主幹部付近で短絡が発生し、発火した。 原因 ・何らかの要因により短絡が発生。短時間で銅バーが焼損 して、その熱により樹脂部品が溶けたと推測される。 防止 対策 ・異物が入り込まないように主幹部付近に保護カバーを 取り付ける等の対策を実施する。 不具合 状況 - 6- トラブル・対応事例3-2 異物(電線屑)による短絡 設置 場所 ・商業施設 状況 ・導電部において短絡が発生した。 原因 ・施工時の配線作業で発生した電線屑が導電部に残り、 電線屑に気付かずに通電したため。 防止 対策 ・施工作業中の養生及び、作業終了後の清掃を実施する。 不具合 状況 変色 分電盤内の電線屑 - 7- 取り出した電線屑 トラブル・対応事例3-3 異物(昆虫等)による短絡 設置 場所 ・屋外 状況 ・導電部において短絡が発生し、発火した。 原因 ・昆虫等の小動物が分電盤内部に侵入したため。 防止 対策 ・通線孔等、小動物の侵入経路の封鎖を行う。 不具合 状況 事故後の分電盤内器 事故後の保護板 - 8- トラブル・対応事例3-4 水滴による短絡 設置 場所 ・美容室 状況 ・導電部において短絡が発生し、発火した。 原因 ・天井より水が染み出しており、分電盤付近へ滴下しており その水が電線を伝い、分電盤内部へ浸入した。 ・多くの綿埃(布埃)が分電盤内外へ付着していた。 ・分電盤の真下にタオル洗浄装置が設置されており、洗浄 装置の扉を開閉する度に水蒸気が立ち上がり、分電盤へ かかっていた。 防止 対策 ・分電盤内部への水の浸入防止を行う。また、定期的に 清掃を実施する。 ・水蒸気がかからないように、タオル洗浄装置の配置を 変更する。 不具合 状況 当該分電盤 水滴による染み 分電盤の真下に設置された タオル洗浄装置 - 9- トラブル・対応事例4 変圧器の焼損 設置 場所 ・サーバールーム 状況 ・トランスのコイルが均等に焼損した。 《 トランス仕様 》 3SB5000VK(三相200/100V Y-△) 原因 ・外観状態及び各相が均等に焼損していることから過負荷 の状態で長年使用したためと推測される。 防止 対策 ・二次側に定格電流以上が流れないようにブレーカの 選定を行う。 不具合 状況 - 10 - トラブル・対応事例5 ブレーカの誤動作 設置 場所 ・電気室 状況 ・電子回路を搭載したブレーカの近傍において、無線機 (トランシーバ等)を使用したら、ブレーカが遮断した。 原因 ・無線機(トランシーバ等)が発生する強電界は、ブレーカの JIS規格の数倍に相当するため、搭載されたICの耐量 限界を超えたことにより誤動作(遮断)が発生した。 防止 対策 ・無線機(トランシーバ等)を電子回路が搭載したブレーカの 近傍で使用しないよう注意喚起する。 不具合 状況 ■ 参考 ・無線機がブレーカに与える影響は周波数、出力、距離、周囲環境に依存する。 ・JIS規格の試験内容は以下の通り。(JIS C8201-2-2 附属書2) 130dB (3.16V/m) 130dB (3.16V/m) 140dB (10V/m) 146dB (20V/m) - 11 - 参考文献 ・日本工業規格 JIS C 8201-2-2:2004 低圧開閉装置及び制御装置-第2-2部:漏電遮断器 この技術資料の作成に関与された委員・事務局の氏名は次の通りである(敬称略) 分電盤技術部会 主査 黒野 透 〔日東工業(株)〕 委員 梶間 竜二 〔河村電器産業(株) 〕 委員 小久保 健司 〔日東工業(株)〕 委員 渡邊 暢浩 〔テンパール工業(株)〕 委員 奥出 恭一 〔内外電機(株)〕 委員 南平 智志 〔パナソニック電工電路(株) 〕 事務局 近藤 正 〔盤標準化協議会〕 盤標準化協議会 発行所 分電盤技術部会 〒460-0006 名古屋市中区葵一丁目27番32号 カイフビル4F (社)日本配電制御システム工業会 中部支部内 U R L : http://www.sp.jewa-hp.jp/
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