商品開発の軌跡 - 日本木造住宅産業協会

vol.25
2014
Wooden Home Builders Association of Japan
Project A to Z
商品開発の軌跡
株式会社カナイ
木造軸組住宅用の「ウォールコーナー」
総合接合具メーカー・カナイが開発
リブを取り付け耐力を向上、専用の鋼製ビスにもひと工夫を凝らす
ケイミュー株式会社
木目調柄の新外壁材、Pixcera「エストレモウッド」と「セフィロウッド(グラデーション塗装)」
ケイミュー㈱が設立10周年記念で発売
本物感が出せる新塗装技術を駆使
旭化成建材株式会社
「ネオマフォーム」活用の「ネオマ®断熱ボード」を発売
旭化成建材、施工精度が高く容易な内貼断熱リフォーム手法開発
複数居室を断熱化する「居ながらゾーン断熱」を提唱
パナソニック株式会社
「真・価値建材」の「ベリティス」
「極上の木質感」を追求したベリティスシートによる内装建材
リフォーム対応の「内貼断熱パネルシテム」開発
真空断熱材を採用、最薄13mm
パナソニック㈱エコソリューションズ社が開発
編集・発行 一般社団法人日本木造住宅産業協会
〒106-0032 東京都港区六本木1-7-27 全特六本木ビルWEST棟 2F TEL:03-5114-3010 FAX:03-5114-3020
2014.9
vol. 25
2014
Wooden Home Builders Association of Japan
Project A to Z
「Select The Best」発刊にあたって
資材流通委員会では、従来より二種正会員(資材・設備メーカー等)
の商品を中心とした商
品情報をまとめて、会員の皆様にご活用いただけますよう印刷物にして、各社の新商品を中心
に年4回の季刊冊子として発行して参りましたが、
このシステムを刷新して、各社の商品情報に
関しては、
春・秋号の2回発刊として、
新商品を中心に掲載させて頂きますが、
新しく一種正会員
でもメーカーとして商品を製造販売されている場合も掲載可能といたしました。
また、
夏・冬号に関しましては、
「Select The Best−Project AtoZ」
と題して、
特集号とし
て各社の商品開発の軌跡や開発苦労話の記事を中心に4社掲載の特集号とさせて頂きまし
株式会社カナイ
木造軸組住宅用の「ウォールコーナー」
総合接合具メーカー・カナイが開発
リブを取り付け耐力を向上、専用の鋼製ビスにもひと工夫を凝らす
ケイミュー株式会社
「セフィロウッド(グラデーション塗装)」
ケイミュー㈱が設立10周年記念で発売
本物感が出せる新塗装技術を駆使
お役立て頂ければと存じます。
旭化成建材株式会社
(メール:[email protected])
の方までお送り頂きますようお願い申し上げます。
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・P7
木目調柄の新外壁材、Pixcera「エストレモウッド」と
た。今後とも
「Select The Best」のご愛読及びご活用を今まで以上に、
日ごろの事業活動に
なお、
ご覧いただいた上でお気づきの点などございましたらご遠慮なくご意見を資材・流通部
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・P1
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・P13
「ネオマフォーム」活用の「ネオマ®断熱ボード」を発売
旭化成建材、施工精度が高く容易な内貼断熱リフォーム手法開発
複数居室を断熱化する「居ながらゾーン断熱」を提唱
パナソニック株式会社
「真・価値建材」の「ベリティス」
「極上の木質感」を追求したベリティスシートによる内装建材
平成26年9月 一般社団法人日本木造住宅産業協会
資材・流通委員会
リフォーム対応の「内貼断熱パネルシテム」開発
真空断熱材を採用、最薄13mm
パナソニック㈱エコソリューションズ社が開発
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・P19
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Select the Best
商品開発の軌跡
1
「ウォールコーナー」
木造軸組住宅用の
総合接合具メーカー・カナイが開発
リブを取り付け耐力を向上、専用の鋼製ビスにもひと工夫を凝らす
木造軸組住宅用の「ウォールコーナー」
( 標準仕様)は、柱材と横架材を強固に緊結する15KN 対応のコーナー
金物である。カナイとしてアンカーボルトを介さない初の15KN 対応商品となった。横から見るとL 字形状をして
おり、柱部分から横架材の部分にかけてリブが付けられた特徴的な形状をしている。施工は容易だ。柱と横架材
の直 交 部分 に設 置して、柱 側 に7 ヵ所と横 架 材側 には4 ヵ所 に開 けられている孔に専用の 鋼 製ビスで止める
だけ。
柱や横 架材の繊 維を壊すほど強く締め付けてしまうと、所定の耐力を発揮することができないことから、必
要以上に締め付けないという注意は必要だが、これだけで短期基準引張り耐力15.2KN を発揮するという 優れ
もの だ。
住宅用「総合接合具メーカー」の㈱カナイ(本社=埼玉県八潮市、資本金9,900 万円、金井亮太社長)は、今や
住宅の建 設に欠かすことのできない「建 築金 物」のトップメーカーである。釘やネジを始めとして接 合 金 物や仕
口金物、基礎金物、筋かい金物などを含めると、取扱商品群は何と約6 万アイテムにも達する。いずれの商品も自
完成まで百回以上も試験続ける
社で設計から開発、製造、販売まで一貫して行われている。そのカナイから柱材と横架材を緊結する木造軸組住
開 発 に携 わった内 田 龍 一・商品管 理 本 部 商品 開
宅用の「ウォールコーナー」と垂木取り付け用の「タルキーネジ」
「 たる木ネジサポート」が相次いで発売された。
発 部開発 課リーダー(30 歳)は、
「 金 物だけでなく鋼
両商品とも施工性が良いだけでなく、作業精度も向上し、住宅瑕疵担保履行法の施行や長期優良住宅の普及か
製ビスと一 体になって強 度を出すものです。引き抜
ら耐震性や耐久性が今まで以上に求められる中にあって、木造軸組住宅の建設に不可欠な建築金物となってい
き力に対応できるネジの選 択に苦労しました。簡単
る。カナイの商品群は構造躯体の中に取り付けられるため、竣工後にお客様は見ることはできないが、耐震性や
な構造ですが、この形状にするまで苦労の連続でし
耐久性、安全性を支える 縁の下の力持ち 的な存在になっている。
た」と語りだした。苦労の原因が特徴的なリブ。一 般
的な平板のコーナー金物では、構造体に強い力が加
わると変 形してしまう場 合 がある。これでは耐震性
や耐久性に問題が残ってしまう。
施工サンプルを前にした小林社長(左)と内田リーダー
「変形量を少しでも少なくすることからリブを取り
付けることにしましたが、このリブの 形 状 がなかな
か 決 まりま せ んでした。試 作 品 を 製 造して 試 験 を
ビスに着色し容易に識別、誤使用を防ぐ
行っては 壊し、また次の試作 品を 繰り返すといった
緊 結 用 の 鋼 製 ビ ス は 柱 側 が 長 さ75 ミ リ の
毎日でした。ようやくこの形状に決まり、試 験機関で
YS-N75、横 架 材 側 が105 ミリのYS-N105。ここにも
15.2KN の耐力が出た時にはひと安心しました」と続
ひと工夫が施されている。鋼製ビスはせん断力及び
ける。完 成 品 に なるま で に 試 験 を 繰り返した 回 数
引き抜き力を高めることから線 径を6 ミリにしてい
は、ゆうに百回以上にもなったという。
るほか、施 工が容 易なように切っ先を先割れ形 状と
リブを取り付けたことによって、薄型形状とするこ
した。ビ ス 頭 も 締 め 付 け や す いように 四 角 形 状と
とができた。
「 ウォールコーナー」の材質は溶融亜鉛
なっている。
めっき 鋼 板。寸 法 は 柱 側 の 長さが160 ミリ、横 架 材
これだけで はない。ビスや 釘 などは、決 められた
側 が70 ミリ、幅 は50 ミリで 厚さは3.2 ミリとなって
ものを所 定の場 所に使 用しないと十 分な耐 力を 発
い る。従 来 品 の 厚さ は6 ミリだった事 から、リブ を
揮しない。柱側と横 架材側に使 用するビスの長さが
取り付けたことによって半分 近くまで 薄型 形 状とす
異なるのもこのためだ。しかし、実際の施工では、時
ることが で き、そ れ だ け 軽 量 化 が 図ら れ たことに
として決 められた箇 所に違うビスを 使ってしまった
なった。
りすることがある。
横架材側に開ける孔の位置も工夫している。従 来
こうした誤使 用を未然に防ぐことから、カナイで
品の孔は「田の字型」に4 ヵ所に開けられていたが、
は柱 側の鋼製ビスはブラック、横 架材側はパープル
これを「八の字型」に変 更して、より耐力のかかる箇
色に 着 色している。内 田リーダーは「容 易に識 別で
所の強度をアップさせて引き抜きの力に対抗させて
きることから、建 築 現 場の職 人さんからは喜ばれて
いる。
います」と語っていた。
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2
project A to Z
Select the Best
カナイでは、床の剛性をより高めるために床に厚
ミリの長いYS-N120 に変更した。
「タルキ ーネジ」は、垂 木 の 高さに 応じて長さ115
こと。ノンクロム化 さ れ た 木 造 建 築 金 物 用 の 防 錆
板 合板を張る工法が多くなっていることから、標 準
ビスの使用本数などは同じだが、短期基準接合引
ミリから200 ミリまで の6 種 類 が用 意 さ れてい る。
処理法で、鋼材の上に電気亜鉛めっきと合わせて15
仕 様の「ウォールコーナー」に加えて「ウォールコー
張り耐 力は15.5KN を 発 揮、N 値も2.9 以下を誇って
対応 する垂木 は65 ミリから150 ミリまで。短 期 基 準
ミクロン厚の防錆被膜で覆う仕組み。
ナー合板 用」も商品 化している。形 状 や材 質などは
いる。30 ミリ厚までの床 合板に対応でき、一 般的に
接 合引張り耐力は1.9KN。Z マーク金 物の「ひねり金
横 架 材 に使 用さ れることが 多 い ベイマ ツには、
同じだが、
「 ウォールコーナー 合 板 用」と床 合 板、横
なっている24 ミリの厚物合板に十分に使 用すること
物(ST-12)」と同 等以 上の 性 能 が、
( 一 財)建 材 試 験
酸 性 度 が3.75ph と高 い木 酸 が含まれており、防 錆
架 材を強 固に緊 結 するため、横 架 材側のビスを120
ができる。
センターの性能試験で確認されている。
処理を施していないネジや釘を使 用すると1 ヵ月程
「ウォールコーナー」に使 用されている鋼製ビスと
度で 赤錆が発 生する。土台や大引きには防腐・防蟻
同様に、
「 タルキーネジ」は施工が容易で木材を割れ
処 理 剤が 使 用され、基 礎コンクリートは強いアルカ
にくくするため切っ先が先割れ形状となっている。先
リ性を持っており、いずれも長期にわたって使用して
割れ形状は打ち込みが容易になるようにしたものだ
いると横 架材と同様に錆が生じ、接 触 腐食してしま
垂木と桁を強固に緊結する「タルキーネジ」と「たる木ネジサポート」も開発
施工精度と作業効率を大幅アップ
カナイが今回発売したもう一つの新商品である垂
具の「たる木ネジサポート」は、建 築現場での職人の
が、打ち込 みが容 易ということは逆に言うと抜けや
う恐れがある。
木と桁を固定する「タルキーネジ」と専用取り付け治
施工精度アップと作業性の向上を考えた商品である。
すいことに通じる。この 抜けを防ぐのがネジの螺 旋
長 期 優 良住宅 化の普及に伴って防 錆処 理は欠 か
部分。切れ込みとネジ部分が相互に補完しあいなが
せないものであり、
「 デュラルコート」は耐 震 性や耐
ら精度をアップさせていることになる。
久性 のアップ に 大 きく寄 与する防 錆 処 理 法といえ
「ウォールコーナー」の鋼製ビスと同様に、着色に
る。しかも、健康に害をおよぼすクロムを含まないこ
よって識別しやすいよう、
「 タルキーネジ」もシルバー
とから、居 住環境だけでなく施工者の健康面にも良
やモスグリーン、シルバーレッドなど6 色に色別され
い結果となる。
ている。このほかビス頭は締め付けやすい四角形状
「タルキーネジ」とセットで販 売されている専用取
で、さらにそれぞ れの 長さが 刻 印され、色 別とあ わ
り付け治具「たる木ネジサポート」は、着脱可能な透
せて二重に判別できることになり、誤使 用を未然に
明なプラスチック製で、施 工 精度を高めるだけでな
防いでいる。
く作業効率をアップさせる小道具だ。
これまでの垂木と桁の接合は、桁の切り込みに垂
「デュラルコート」で長期優良住宅化に対応
木をあてがい、垂木面と90 度の角度で斜めにインパ
商品開発の軌跡
クトドライバーでネジを打ち込んで緊 結していた。と
「タルキーネジ」の特徴の一つは、防錆処理性能が
ころがネジを直角に打ち込むことは熟練職人ならば
高く環 境に優しい「デュラルコート」が施されている
雑作のないことだが、技量が未熟な職人が打ち込む
内田龍一・商品管理本部商品開発部
開発課リーダー(30 歳)
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と真っ直ぐに入らず、桁からネジ先が飛び出たりして
しまい、想定の強度が得られない恐れがある。
カナイが開発した「たる木ネジサポート」は、
「 タル
キーネジ」を挿入する導管が垂木面に90 度の角度で
開けられている。導管に「タルキーネジ」を入れて打
釘・ネジの生産工場を視察
グループ企業のKN村田産業
1台で1分間に600本を生産
商品開発の軌跡
ち込むだけで垂木と桁を確実に緊 結できる。これな
読者の皆さんは平均的な木造軸組住宅を建設する
ら、熟 練 大 工だけでなく未熟な職 人でも楽に、しか
のに、何本の釘やネジが使用されるのか知っている
も確実に接合できる。
だろうか。カナイによると、その数は何と約 10 万本
取り付 け手 順 は、先ず 垂 木 に「たる木 ネジ サポー
にもなるという。いくら電動工具やインパクトドライ
ト」と「タルキーネジ」をセットし、取り付け位置を確
バーを使用するとはいえ、これだけの量の釘やネジを
認する。次に「タルキーネジ」が直 角に自立するとこ
取り付けるのはひと苦労だ。そこで、意外と知られて
ろまでインパクトドライバーで止めつける。その後に
いない釘とネジの製造過程を知るために、カナイ
「たる木 ネジサポート」を 外して、
「 タルキーネジ」を
グループの KN 村田産業㈱(本社=大阪府岸和田市、
小 林 社 長 は「国 内 で 使 用 さ れる釘 や ネジ の 約
最 後まで 打 ち込 んで 完了で きるという簡 単 なもの
小林琢社長、資本金 9,900 万円)の本社工場を訪
75%が輸入品となっている中で、当社では品質が良
だ。打ち損じたネジが桁から飛び出すこともない。
れた。
く付加価値の高い製品の開発・製造に、今まで以上
「たる木ネジサポート」を垂木に直角に取り付ける
KN 村田産業は、平成 21 年にムラテックKDS ㈱
に取り組みたい」と強調している。
のがポイントといえ、内田リーダーは「打ち込む角度
からカナイが釘・ネジ事業の譲渡を受け、カナイグ
カナイは、金井製作所の社名で建築現場の装飾金
を1 本1 本と確認する必要がなく、しかも確実に緊結
ループ入りした釘とネジの製造企業である。最盛期に
物の製造を目的に昭和 38 年に設立された。平成元
することがで きます」と精度向上と確 実性というメ
は月間 5,000トンを製造していたが、輸入品が急増
年に現社名に商号変更され、建築用金物の設計から
リットを強調している。
して現在では 600トンから800トン程度に減少して
開発、製造、販売を手掛けるトップメーカーに成長し
いる。カナイグループでは釘とネジの国内最多 25%
ている。この間、KN 村田産業を始めとした 5 社でカ
のシェアを誇っており、本社工場はカナイグループの
ナイグループを組織。全国各地に事業所や物流セン
主力工場となっている。
ター、生産工場などを配置して、家造りをサポートし
京セラドーム大阪とほぼ同じ敷地(約 36,000 ㎡)
ている。
「総合接合具メーカー」として、住み手と造り
の本社工場では、伸線メーカーから購入した鋼鉄の
手を考えた建築金物の開発・製造・販売に、カナイの
線材が引き伸ばされ、釘打機に送られた後にポンチに
役割は今後とも大きくなる。
1分間に最高で 600 本を製造する製釘機
よって頭部が成型される。次に送りロッドが所定の
長さだけ押し出し、ナイフが鉄線を切断して先端部が
成型されて製品になる。
工場内には鉄線の長さによって約 120 台の製釘
機が稼働していた。小林琢社長(66 歳)は「1 台あた
り1 分 間に150 本 から600 本を製 造 する能 力を
持っています」と説明、製釘機から成型された釘が
75mm
90mm
次々に受け皿に溜まっていた。製釘工程を終えた釘
は次に磨釘工程に回され、 粉と米糖、研磨剤が加
えられて回転ドラムに入れられ、磨かれた後、油や
鉄くずが除去され製品となる。
この後、ローリング機のダイスによりスクリュー・
リング加工され更にワイヤー連結・シート連結を行
い、着色し出荷される。
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ワレネール 34×75
ワレネール 38×90
2×4工法にて使用する「ワレネール」
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「エストレモウッド」と
「セフィロウッド(グラデーション塗装)」
木目調柄の新外壁材、Pixcera
ケイミュー㈱が設立10周年記念で発売
本物感が出せる新塗装技術を駆使
等 級3 に対応 する 。いずれも無 機 塗 装 のセラミックコート外壁 材 で 、光 触 媒コーティングや 親 水コーティング
が施されており、光セラは、太 陽 光と雨水で 表面についた汚れを洗い流 すセルフクリーニング機 能 があり、色
あせもしにくいのが特徴のひとつになっている。
このうちPixcera「エストレモウッド」は、抄 造 方式を採 用してプレス成 形で製 造した外壁材。アンティークな
古木の味わいがある雰囲気を、独自の「フルカラーセラジェット塗装」でリアルに表現した。
小西寛・奈良テクノセンター外壁材開発 部長 兼R&D センター担 当部 長( 53 歳 )は 、
「 窯 業 外 壁 材 でありなが
ら 、本 物の木のような風合 い 、手触り感などを再 現するのに苦労しました 」と開 発当時 の 苦労をふり返る 。
2003 年にクボタ松下電工外装㈱として再発足した後に、現社名に変更されたケイミュー㈱(本社=大阪市中
央区、小森隆社長)は、昨年12 月に設立10 周年を迎えた。今春、10 周年を記念すると同時に消費税率アップを受
けて、多くの新商品を発売した。その中でも最近のナチュラル嗜好の高まりを受けて、木目調柄の窯業系外壁材
を大幅にリニューアルし、主力商品としてPixcera「エストレモウッド」と「セフィロウッド(グラデーション塗装)」
を発売した。フルカラー印刷技 術と、新たな塗装 技 術「グラデーション塗装」によって木目調と木の質感を向上
させた商品で、3 月から7 月までに全国8 会場で開催された新商品発 表会で好評を博したという。二つの外壁材
の開発にあたってどのような苦労があったのか、同社の奈良テクノセンター(奈良県大和郡山市)を訪れた。
小西寛・奈良テクノセンター外壁材開発部長兼
R&D センター担当部長
商品開発の軌跡
古木を探し求めた毎日が続く、導管が浮き出され、
きめ細かいテクスチャー
Pixcera エストレモウッド
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Pixcera「エストレモウッド」と「セフィロウッド(グラデーション塗装)」とも45 分準耐火の準 不燃 材で、耐震
「どういう木を参 考にするのかに多くの時間をかけ
ま し た。何 日 も 街 中 を 捜 し 歩 き、ア ン ティー ク・
ショップやジーンズ・ショップなどを訪れ、その過程
外壁 材に限らずどんな商品の開 発 にも市 場 調 査
で 辿り着 いたのが古 木でした。そういうショップ で
が 欠 か せ ない。魚 田 祐 樹・奈良テクノセンター 外 壁
は誰でもが見たことがあり、親しみのある古木が使
材 開 発 部 商品企 画グル ープ長(43 歳)とデザイング
われていました」と語る。
ループ担当課 長の高橋禎司さん(42 歳)らが中心に
デザイナーの高橋担当課長も「古木調にすること
なって、リサー チに 駆 け 巡った。魚 田グル ープ長 は
決めた後でも、古木らしく見せるためいろいろなサン
魚田祐樹・奈良テクノセンター外壁材開発部
商品企画グループ長
高橋禎司・奈良テクノセンター外壁材開発部
商品デザイングループ担当課長
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project A to Z
Select the Best
商品開発の軌跡
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プルを探し回りました。古 木の多くが黒く焦げた表
フルカラージェット塗装で鮮やかな色彩と凹凸感
情が 特 徴になっており、この焦げを強調したいと思
い何度となくトライしました」と続ける。
この自然 素 材に迫る質 感 を実 現したのが 独自の
内 装 材としても活用で きるようになり、個 人住宅や
商業・店舗などでアンティーク調の内装 施工ができ
出会いは「蕎麦屋の焼き杉」だった
るようになるなど、これまで以 上に使 用の幅を広げ
「セフィロウッド(グラデーション塗装)」は昨 年8
ている。
月にプロジェクトを立ち上げ、商品開発に着手した。
同社が開発に着手したのは昨年 春。魚田グループ
「フルカラージェット塗 装」という技 術。この塗 装 方
長や高橋担当課長らは、昨年夏から本格的に色出し
法は綿密にプログラミングされたデザインデータに
小西外壁材開発 部長は「古木調という柄は、一歩
こちらの木目調 の 柄 は、実はひょんなところから
作業に着手した。
基づいて、赤や青、黄、黒の塗料を用いて一回の印刷
間 違 えてしまうと汚く映ってしまいます。
『 Pixcera
生まれた。プロジェクト・チームの一員で、
「 より自然
高橋担当課長は「技 術陣と一 緒になって何度とな
工程で多色塗装するもの。淡い色合いや微妙な表現も
エ ストレ モウッド』はそういうことは なく、当 社 が
な形で木を表現したい」と日頃から考えていた後 藤
く色 出し をしました が、デ ー ター上で『で きあがっ
可能で、鮮やかな色彩と壁面の凹凸感を作り出せる。
持っている技 術を駆使して開発することができまし
隆幸・奈良テクノセンター外壁材開発 部外壁材商品
た』と思っても、実際に試作してみると想 定していた
取 材 に訪 れた 奈良テクノセンターで、フルカラー
た。ここまで 仕 上げた外 壁 材 はなく、木目調でこれ
企 画グル ープ 担 当 課 長(47 歳)が、昼 食 のためにあ
色とは大 違い。色の配色を何十回となく変えて試 行
セラジェット塗装と通常塗装の同柄の外壁材を見比
だけの大柄商品は当社で初めてです」と胸を張って
る蕎麦屋に入った。
し、最 終 的に色出しが 完了したのは年末になってい
べてみた。遠目では同じように見えても、間近に見る
いる。
「その時に店の奥に使われていた古木調の焼き杉
ました」と語る。
とフルカラーセラジェット塗装の方が天然 素 材と同
の 壁 材 が目に入りました。導 管 が はっきりとしてい
今年5 月に発売されたPixcera「エストレモウッド」
じような、より鮮 明な質 感 が 手に取るように分 かっ
のカラーバリエーション は、①ホワイト②ブラウン
た。リアル感は従 来商品をはるかに凌 駕するもので
③ブラックの 各3 色だ。それぞ れ 木の 導 管が浮き出
ある。
さ れ、きめ の 細 か い テクスチャー が 味 わ い の あ る
施 工 時 に 同じ 柄 が 続 いてしまう恐 れ が あ るが、
同社が満を持して発売したもうひとつの木目調の
表情を醸し出している。
同 社では複 数の印刷パターンを用意しており、同柄
「セフィロウッド(グラデーション 塗 装)」は、独自に
が重 なることを 未 然 に防 いで いる。このほか、外 装
開発した新技術である「グラデーション塗装」によっ
材としてだ けでなくPixcera「エストレ モウッド」は
て、天然木の奥深い色調をリアルに表現した商品で
凹凸をより一層と強調したグラデーション塗装
オリジナル塗料と新技術で天然木の奥深さ表現
て、ひと目で『いいなぁ。これだ』とひらめきました。
何とかして外壁 材に表 現したいと思いました」と当
時をふり返る。
ある。
「グラデーション塗装」は、同じ塗料によって外壁
材表面の凸部の色は薄く、凹部にかけては徐々に濃
くなるように塗装できる新技 術。写 真のように木 肌
の導管部分は同じ塗装であっても白っぽく塗装され
る。凹 部 は 同 色でありな が らより濃 い 色 に 塗 装 さ
れ、導 管などを際 立たせている。一見して本 物の木
と間違うほどのできあがりである。
小 西 外 壁 材 開 発 部 長 は「天 然 木の 持 つ 導 管をど
後藤隆幸・奈良テクノセンター外壁材開発部
外壁材商品企画グループ担当課長
のようにリアルに表 現できるかが開発 のポイントで
ところが、これからが苦労の連続だった。プロジェ
した。グラデーション 塗 装 によって 課 題をクリアし
クト・チームはまず塗装方法を検討した。導管をはっ
て、本 物 感 を出すことが で きました。全 国で 開 催し
きりさせる方法に「オイルスティン塗装」という技 術
た 新商品発 表 会に来場したお客 様 から、
『 本物によ
がある。この塗 装 方法は、木 材に塗料 を塗り表面を
り近 づ いた』という評 価をいただき、開 発 者冥 利に
布で拭き取るというものである。拭き取った凸部 の
尽きます」と語っている。
導管部分は薄く塗装され、拭き取れなかった凹部は
基 材は中空で押し出し方式で製 造される。カラー
色が濃く残って自然にグラデーション模様になる。
バリエーションは①オーク②オリーブ③ウォル ナッ
しかし、窯業系の外壁材は木材のように簡単に拭
ト④スモ ーク―― が用 意 さ れ、同 社で は「このうち
き取れ ない。
「 オイルスティン塗 装 の風合 いを出す」
スモークは焼き杉をイメージし、和風住宅に最 適な
ことを目標に、プロジェクト・チームは塗料の開発を
表 情」としている。また、ウォルナットは玄 関 回りや
開 始した。流 動 性 を 向 上した 特 殊 塗 料が 必 要 だっ
バルコニーなどのアクセントに、オークはナチュラル
た。塗料メーカーと一緒になって、顔料の量を何度と
モダ ンや 和モダ ンの 住 宅 に 適していると説 明して
変えることによって、凸部は薄く、凹部には濃く印刷
いる。
できるオリジナル塗料ができあがったのは、年末 近
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くになっていたという。
ては再び 次の試作品を試すという毎日が 続いた。こ
「セフィロウッド(グラデーション塗装)」の塗装工
うしてようやく薄くならず垂れ 込 み過ぎない適 温と
程は、基 材をベース色で塗装した後、凸部にはトップ
乾 燥 時 間を導き出し、木 材のオイルスティン 塗 装と
色 を 塗 装し、そ の上 に オリジ ナル 塗 料で グ ラデ ー
同様の表現が出来る塗装ができるようになった。
これまでに古木をイメージした商品はあったもの
ション 塗 装 を施 すというもの。トップ色 の上のグラ
後 藤 担 当課 長 は、
「 途 中で 一 枚 板のようになって
の、より一層と木目調を鮮明にして本物の木のような
デーション塗装は薄く、凹部はより濃い塗装が実現
しまった時には愕然としましたが、乾 燥 温 度と時間
風合い、手触り感などを創出した商品はPixcera「エ
できる。
が 分 かって特 殊 乾 燥 制 御 技 術を確 立することがで
ストレモウッド」と「セフィロウッド(グラデーション
塗料開発と同様に乾 燥制御 技 術の確 立にも苦労
き、本当に安堵しました」と振り返っている。
塗装)」が実質的に初めてと同社では強調している。
自然、本物志向が需要の中心に
従来商品よりも早い立ち上がり
が 多かった。後 藤 担 当課 長 は、
「乾 燥 の 際 の 基 盤 の
そのためなのだろう、発売以降の反響についてケイ
温度が低すぎると凸部の塗装が薄くなりすぎてしま
ミューでは「通常の新商品と比べて立ち上がりが早い
います。逆に乾燥温度が高いと塗料の垂れ込みがな
というのが特徴です。従来商品を100 とすると、今回
くなり、基材の全面が同一に塗れてしまいます。これ
発売した商品は130 となっています」と分析している。
では導管が 強 調されず、一枚 板のようになってしま
今、住宅市場が大きく転換しており、同時にエンド
います」と語る。
ユーザーの間から自然 志向、本物志向が高まってい
これを解決するには最 適な乾 燥 温 度と乾 燥 時間
る。その観点からケイミューが開発した木目調柄の2
を探し出さなくてはならなかった。最 適 温 度と最 適
つの商品は、光触媒コーティングや親水コーティング
乾燥時間は企業秘密ということで教えて貰えなかっ
が施されているだけでなく、環境性能の高さや施工性
たが、プロジェクト・チームは何度となく試作品を製
の容易さなどから、エンドユーザーを含めて施行者側
造して試 験を続けた。試 験を実 施して結果を確 認し
からも受け入れられようとしているように感じられた。
商品開発の軌跡
11
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「ネオマフォーム」活用の「ネオマ® 断熱ボード」を発売
旭化成建材、施工精度が高く容易な内貼断熱リフォーム手法開発
複数居室を断熱化する「居ながらゾーン断熱」を提唱
旭化成建材が積極化を図っている「居ながらゾーン断熱」は、リビングなどの1 部屋を断熱 化する局所断熱で
はなく、日常生活で使用している居間や台所、寝室、水回りとそれらを結ぶ廊下を生活ゾーンとして一括して断熱
する工法である。家全体を断熱するのと比較して、簡単な工事で断熱リフォームが可能なため、工事中は家具な
どを別室に移動し、工事完了後に元に戻すだけ。お客様は別の居室で生活することができる。
従来の居室の断熱リフォームは、壁や床を一度剥がして断熱材を充填して施工する。このため大掛かりな工事
になることが多く、大 量の廃材も出てしまう。この「居ながらゾーン断 熱」は、既存の下地などを剥がさない。旭
化成建材は、この「剥がさない」という点に着目した。
使 用する「ネオマ® 断熱ボード」は、同社の主力商品のひとつで高い断熱性能を誇る「ネオマフォーム」と、9.5
わが国の住宅ストックは約4,950 万戸にも達している。しかし、国土交通省などの推計によると、このうち省エ
ミリ厚の石膏ボードを複合化した内断熱リフォーム専用高性能断熱ボードである。壁と天井の断熱化に用いる。
ネルギー化が図られている住宅は61%にすぎず、残りの39%は断熱施工が施されていない無断熱 住宅である。
床断熱はもう一つの主力商品である「ジュピー」を使用して床断熱施工を施す。
つまり1,900 万戸強の住宅は、夏に暑く冬は反対に寒いということになり、快 適な生活を送ることができないで
いる。そんな中で 今、注目されているのが家全 体を断 熱するのではなく、居室や複 数の居室だけを室内側から
断 熱 化するという「内断 熱リフォーム」である。旭化成グループの旭化成 建 材 ㈱(本社=東 京都千 代田区、前田
富弘社長)は今年6 月、内断 熱リフォーム専用の「ネオマ® 断 熱ボード」を発売し、居室を内側から断 熱 施 工して
世界最高水準の熱伝導率を誇る「ネオマフォーム」
容易な施工と安定した精度が特徴
省エネ性能を高める「居ながらゾーン断 熱」の普及に乗り出した。
「 ネオマ® 断 熱ボード」の施工性は容 易で施工
ここで「ネ オマフォーム」と「ジュピー」の 基 本 性
期日も短く、断 熱 効果もすこぶる高いことから、施 工 店やリフォームを実 施したお客 様 から好評を博している
旭 化 成 建 材 が「ネ オ マ® 断 熱 ボード」を 開 発 する
能をみてみよう。
「 ネオマフォーム」は、2000 年10 月
ためにプロジェクト・チームを発足させたのは、約4
という。
に外張り断 熱や屋根断 熱 用として発売された。熱 伝
年前のこと。
導 率 は0.020W/( m・k)という世界最 高レ ベ ル の高
新家谷(しんけや)幹彦・事 業 本部 事 業 企 画部断
性能断熱材だ。
「 ジュピー」は「ネオマフォーム」の特
熱 住宅資 材企 画グループサブ マネージャー(33 歳)
徴 を引き継 いで、2010 年10 月に発 売した 木 造 住 宅
は、
「 プロジェクト・チームでは断 熱 性 能の高いネオ
用の床充填専用断熱材。こちらも熱 伝導率0.020W/
マフォームを活 用することを基 本 に考え、どういう
既存木下地(柱、間柱等)
既存木下地ボード
外壁
(m・k)を誇っている。
素材を貼り合わせて複合化した一体内断熱リフォー
商品開発の軌跡
「ネ オ マフォーム」と「ジュピー」の 素 材 はともに
ム専用高性能断熱ボードを創り出せるかを検 討しま
フェノール 樹 脂 で、炎 に あ ぶら れても 他 の 素 材 の
した。初 め は 木 質 系 素 材 など5、6 種 類 もの 素 材 を
断 熱 材 が 燃 え 広 が るの に 対して、表 面 が 炭 化 する
使って試作を繰り返しましたがそれぞれに一長一短
だけで燃え広がることはなく、一酸化炭素や二酸化
があり、最 終 的に石 膏ボードと一 体化することを決
炭素の発 生量は少ない。ホルムアルデヒド放散 等級
めました。施 工 が 容 易な点 がネ オマ® 断 熱ボードの
はF☆☆☆☆で4VOC 基準に適合し、ノンフロム発泡
第一 の特 徴ですが、この容 易性を導くのに苦心しま
の断熱材として環境に優しく、グリーン購入法の適合
した」と語る。
商品にもなっている。
断 熱 材として使 用さ れて い る50 ミリ厚 の グラス
ネオマ断熱ボード
ウール(10K)や36 ミリ厚の 住宅用ロックウール、34
ミリ厚 の吹き付け硬 質ウレタンフォーム(A 種1)と
比べて、
「 ネオマフォーム」は20 ミリ厚という薄さで
ありながら同等以上の高い熱伝導率を誇っている。
経年劣化も極めて少なく、長 期にわたって高い断
熱 性を維 持し続けられるという特 徴も持っている。
ネオマフォーム
これは断熱ガスを閉じ込めている気泡膜のガスバリ
ア性が高く、かつ独立気泡で内部の発泡ガスの抜け
が極めて少ないためだ。長期優良住宅用の断熱 材に
石膏ボード 9.5mm
13
も認 定されている。この ほ か、
「 ジュピー」は 省エ ネ
対策等級4 の基準を満たしている。
新家谷幹彦・事業本部 事業企画部
断熱住宅資材企画グループ サブマネージャー
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居室の壁と天井の工事が完了する。
今 年6 月の 発売に先 立って、旭化 成 建 材では独自
(茨城 県)で 生 産されている。その後、近隣の協力工
既 存サッシの開口 部 は内 側 から内 窓を設 置する
に開発を速めると同時に、近 鉄不動産と一 緒になっ
場 で人 体 に 無 害 な 酢 酸 ビ ニ ル 系 の 接 着 剤 で 石 膏
ほか、床 部 分 は 床 充 填 専用 断 熱 材「ジュピー」を施
てプロジェクトを組 んで試 験 施 工を続けた。施 工は
「居な がらゾーン 断 熱」の 断 熱 効 果 はどうだろう
ボードと接着され、出荷される。
工する。
簡単とはいえ、手順や 使 用方法を誤ってしまうと期
か。奈良 県 の2 階 建 て木 造 住 宅 に住 んで いたA さん
石膏ボードを貼ったのは、施 工の合 理化と精度を
このように通常の施工で石膏ボードを貼る作業と
待した断熱効果が出ない。現場施工の危さを解消す
の場 合を検 証した。以前は大 家 族で 生 活していたA
高めるためだという。新家谷サブマネージャーは「石
ほぼ 変わらない 手 順 で 施 工で きる。
「 ネ オマ® 断 熱
るため、詳細な施工マニュアルも作成したという。
さんだったが、一人暮らしになって冬の寒さに悩まさ
膏ボードとネオマフォームを現 場で別々に貼っても
ボード」は特 殊な素 材 などを 使っていないシンプル
内側から断熱 化する「内断熱リフォーム」は、施工
れ、住 み慣 れた自宅で の 寒さがストレスになってい
十 分 に断 熱 性を確 保で きると思います。しかし、現
な構 造のため、誤って孔を開けたり傷つけたりしな
した断 熱 材の厚さだけ居室が狭くなってしまうとい
たという。
場 施 工を 楽 に1 回でで きるようにしたい のと、現 場
いように気を配る必要も特段ない。
う難 点 が あ る。
「 ネ オ マ® 断 熱 ボード」も、20 ミリ厚
A さんは日常的に使 用しない客間や2 階 部分は除
で貼ると隙間が生じてしまい結露の恐れがあること
のネオマフォームと石膏ボードの9.5 ミリを加えると
外して、思い切って生 活に必 要な居間 兼寝 室とキッ
総 厚は29.5 ミリとなる。壁の場合には両側に施 工す
チン、水回りとそれをつなぐ廊下を「居ながらゾーン
るため、内側に約60 ミリ狭くなる。
断 熱」でリフォームした。別 図 は「ネ オマ® 断 熱 ボー
「ネ オマフォーム」と「ジュピー」は同 社 の 境 工 場
から、工 場 生 産でしっかりとした接 着によって商品
精度の向上を図りました。この二つから信 頼性の高
1枚当たりの重量は約11キログラム
早朝も20℃を上回る高い断熱効果を示す
商品開発の軌跡
い石膏ボードと一体化し、ネオマ® 断熱ボードを開発
岸圭介・旭化 成 建 材 ㈱営業 本部 東 京断 熱 住宅資
この点に関して岸マネージャーは「圧 迫 感は個 人
ド」の試 行 販 売 時に、A さん 宅 の居間 兼寝 室の室 温
しました」と語る。
材 第 一 営 業 部 技 術 グル ープ マネー ジャー(44 歳)
差があり試験施工で聞き取り調査したところ、
『 気に
推 移 を 計 測したものである。施 工 前 は 昨 年1 月6 日
この説明の通りに建築現場での施工は容易で、基
は、
「 ネ オマ® 断 熱 ボードは 施 工 が 簡 単 なため、8 畳
ならない』という回答が大半を占めました。今まで使
に、施工後の計 測は昨年2 月20 日にそれぞれ測定し
本的には既存のクロスを剥がして上から石膏ボード
相当の天井、壁工事はほぼ1日で施工が完了します。
用していた暖房器具などが必要なくなり、また、壁表
た。居間 兼寝 室の1日の温 度 変 化を時間ごとに比 較
と一体化された「ネオマ® 断熱ボード」を既存の下地
その 後 のクロス貼りなどを含めても2、3 日で終了し
面の温 度も上 がる為、寒くないので『その 分だけ 利
した。
ボードの上に貼るだけだ(既存クロスは 剥がさなく
ま す」と簡 便 さと 短 施 工 を 強 調 する。加 えて「そ の
用空間が広がった』という声もありました」と語って
図を見て分 かる通り、施 工前の室温は 朝6 時 の段
ても施工は可能)。
上、解 体 に伴う廃 材も剥がした 既 存 のクロスくらい
いる。
階 で20℃を下 回り、1日を 通して20℃を上 回ったの
具体的な施工手順は、まず既存の下地やボードが
で、ほとんどありません」と説明する。
腐 朽していないかを確 認し、腐朽している場 合は取
「ネオマ® 断熱ボード」が軽 量なことが施工性を高
り換 えや補 強 が 必 要 になる。その 後 に「ネ オマ® 断
めている。幅 は910 ミリ、長さ1,820 ミリで、1 枚 あた
熱ボード」のネオマフォーム側に接着剤を5 ミリ程度
りの重 量 は11.1 キログラム(1 ㎡あたり6.7 キログラ
のビードで田の字に塗 布して密着させ、さらに室内
ム、ネオマフォーム20 ミリ)と、かさばらずに持ち運
側の石膏ボードの上から専用ビスで取り付ける。
びや施 工が容 易となっている。これで 熱 抵抗値1.04
切欠けやエアコンなどの配管口も孔開けし、四周
㎡・K W を発揮している。25 ミリ厚のネオマフォーム
に接着剤を塗布しないといけないが、基 本的な施工
を 使 用し た「ネ オ マ® 断 熱 ボ ード」で も1 枚 あ たり
はこれ だ け で 終了する。取り付 け た「ネ オ マ® 断 熱
11.3 キログラム、30 ミリ厚 で も11.5 キログラムと楽
ボード」の上から、新しい厚手のクロスを貼るだけで
に施工できる重量だという。
は正午すぎと暖 房器具を使い始めた夕刻くらいしか
燃焼性比較実験
岸圭介・営業本部 東京断熱住宅資材第一営業部
技術グループ マネージャー
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なく、そ の 後 は一 貫して20℃を下 回 る 寒 い 住 環 境
だった。施 工後は早 朝の6 時 の段 階で20℃を上回っ
今年は内貼断熱リフォームの 元年 に
ており、深 夜 や 翌日の 早 朝 に か けて20℃から22℃
今後、リフォーム市 場 の 拡 大 が予 想され、住 宅 需
程度と安定した室温で推移している。
要の中心が新築 からリフォームに移 行しようとして
特に施工後に測定した日の外気温が、施工前に測
いる。新家谷サブマネージャーは、
「 わが国には省エ
定した外気温よりも低かったにもかかわらず施工後
ネ面で断 熱工事が施されていない無断 熱 の 住宅が
の室温が安定しており、高い断 熱 効果を発揮してい
多く存在しています。このネオマ® 断熱ボードを活用
ることが判明した。
した『居ながらゾーン断熱』は、無断熱の住宅の多さ
赤外線写真をみても、A さん宅の壁、床ともにオレ
から今後 のリフォーム市 場 の中心になろうとしてい
ンジ色や赤色で写っており、室温が20℃以 上で保た
ま す」と 強 調 す る。岸 マ ネ ー ジ ャ ー も「今 年 の リ
れていることを示している。悩んで いた冬 の 寒さか
フォーム産業フェアに出展しましたが、リフォーム会
ら解放された。
社や工務店の皆さんの反応は大きなものがありまし
A さんは「暖 房してもなかなか温まらなかった 床
た。各 社 の 新 商 品 も 発 売 さ れ、そ の 意 味 で 今 年 は
も、リフォーム後 は足に伝わる冷たさが 和らぎまし
内貼断熱リフォーム元年 になると思います」と語っ
た。部屋 が 暖 かくなり、暖 房 器 具を幾つも使わずに
ている。
済みました」と語り、暖 房 効 果 以 外にも省エネ効 果
数年後に「居ながらゾーン断 熱」が普及して、無断
が向上し、冷 暖 房費の削減につながることを喜んで
熱の住宅がどれくらい減るのかを再取材してみたい
いるという。
ものだと感じた。
商品開発の軌跡
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「真・価値建材」の「ベリティス」
「極上の木味感」を追求したベリティスシートによる内装建材
パナソニック㈱エコソリューションズ社が開発
天 然 無 垢 材の 美しさは 木目や木 肌、照り、艶、色 彩 の5 つの 要 素で 決まる。同 社で は「ベリティス」の開 発に
あたって、従来の木目をすべて見直した。全国の原木市場を訪れ、厳選した無垢の原木を選び抜いたという。本物
を感じる凹凸感を取り込むために、天 然木が 持つ凹凸パターンを分析し、試作 検 証を何度となく繰り返すこと
で、従来商品よりも凹凸の幅が狭く、深さが浅い木肌感にたどり着いた。
ベリティスの表情は、突き板・印刷シートのいずれかで構成されている。
「 ベリティス」の一番の売りである照り
については、突き板への独自の熱着色技 術(WAT)で実現した。一 般的な突き板 塗装では、塗料が木目を埋めて
しまって照りが 損なわれてしまう。同社ではコーヒー豆をローストするように、無垢 板の内部から木そのものに
着 色することによって、この問題を解決した。さらに印刷シートの場 合は基 材の上にベース印刷層、照り演出・
木目柄印刷層、深み演出層、手触り感演出層、EB コート層で、コーティングすることにより実現した。
パナソニック㈱エコソリューションズ社では今年4 月、内装 建材の新シリーズ「ベリティス」を発売した。
「 木を
艶についてもこだわり、鉋で削った際に現れる無垢材の落ち着いた艶を実現した。その技術は企業秘密だそう
超える美しさと機能性」を目指し、天然木が 持つ「木目」と「木肌」
「 照り」
「 艶」
「 色 彩」の5 つの要素を追求して、
だが、グロスメーターによる実 測 値 調 査で は、従 来 の同 社 製 品よりも一層と天 然 木に近い 数値を実 現したと
無垢材に近い素材感を表現した内装建材である。同社のボリュームゾーン製品としては実に8 年5 ヵ月ぶりの一新
いう。
となった。床材については独自の熱着色技術によって天然木の美しさを最大限に生かした木目を表現した。内装
天然木は単色ではなく、1 枚の板でも多くの色が混在している。同社では天然木の持つ色をすべて取り込もう
ドアでは採光や通風といった自然の恵みを享受できるルーバー付ドアを追加している。同時にオーダー対応力
と、何度となく試作を繰り返して色彩を再現した。
を強化したほか、提 案から施工までをサポートする仕組みも構築するなど、新築だけでなくリフォーム市場にも
対応している。
商品開発の軌跡
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2014 Vol.25 20
project A to Z
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5つの要素で天然無垢材の美しさを実現
光と風を確保することをコンセプトに開発に取り掛
かった。開き戸で はドアを開 閉するスペースが 必 要
オーダー対応力アップ、出荷は最長 8日に短縮
商品開発の軌跡
岡 田 直 樹・ハウジ ングシステム事 業 部R&D セン
となり、狭さの解消につながらないことから、主に引
同社では新築だけでなくリフォーム需要にも対応
ター、ヒューマンソフト開 発グル ープ感 性価 値 評 価
き戸の種 類を多くした。自然の恵みの享受では新た
することから、商品開 発と並 行してオーダー対応力
技術開発チームリーダーは、
「 5 つの要素は重要です
にルーバー付開き戸を商品に加えた。
を強化している。
が、これらの要素のバランスが美しさに影 響するた
ル ーバーは 把 手 を中心 に 上下に分 割して 設 置さ
これまで 対応 が 難しかった受 注 範 囲を大 幅に拡
め天然木に近く美しい表情をどうしたら実現できる
れ、ガラスの採 光 ルーバーからは自然 光が差し込 ん
大し、見 積もりや 受 発 注システムの簡 略 化、納 期 の
か、どの要素を調整すべきかの指 針を導く画像解 析
でくる。また、ドアを開けることなくプライバシーを
単純化と短 期化を図っている。商談から施工までを
技術の開発に苦慮しました」と語る。
「 加熱温度や時
保ちながらルーバーを開閉するだけで手軽に換気す
ス ムーズ に 効 率 的 に 進 められるようにした 仕 組 み
間によって色を 制 御できるWAT があって、初めて商
ることもで きる。通常の開き戸 で は閉めたままだと
で、シンプルな価格を設 定したことによって、お客様
品化にこぎつけることができました」と続ける。
ドア下部の隙間からしか風が通らないが、ルーバー
にも分 かりやすく提 案も容 易にしたほか、見 積もり
こうして商品 化された「ベリティス」。床 材の実 物
を取り付けたことで上下のルーバーを全開すると約
もパソコンやタブレット端末などで画像を選択する
を間 近で見ても、色・手触り感、木目柄など、天 然 の
4.5 倍 の 換 気 スペースが 確 保される。それだけ通 風
だけで 楽に見 積もれることになった。リフォーム 工
無 垢 材と同 様 な 風 合 い を 醸し 出して い る。同 社で
量が増えることになる。上のルーバーを開放し、下は
事 など で は 、現 場 で 必 要 な 部 材 が5 日 以 内( 最 大
は、このような天 然 木と変わらぬ 内 装 建 材 を「真・
閉じることによって季節や室内の熱環境に合わせた
8 日)に出荷できるよう、部 材ごとに出荷期日を定め
価 値 建材」と呼んでおり、新築・リフォーム需要の主
換気も行える。
ている。
力商品群に位置付けている。
奥山主事らは「通風の有効性を評価するため各種
同社によると、従 来の出荷期日は最 大16 日となっ
の試 験を繰り返しました。下のルーバーだけを開け
ていたが、これが半分の日数になった訳で、リフォー
た 時 の 換 気 量 や、ル ーバーが 安 全 に開 閉 するかな
ム工事でありがちなお客様の設計・仕様変更にも対
ど、1 体の試作ドアについて10 回以 上の計 測を行い
応でき、現場の混乱の防止や工期短縮にも寄与でき
「ベリティス」シリーズのうち、主力商品の一つであ
ました」と語る。ルーバー内にダンパーを内蔵させ、
ることになる。
る「内装ドア」を中心に開発の苦労などを聞いた。
間違って指などを挟んでも大丈夫なように安全性を
IT システムも充実しておりオーダー対応以外にも、
奥山隆・ハウジングシステム事 業部内装システム
確保している。強い風でルーバーが必 要以 上に開か
シンプルな価格設定によりお客様にも分かりやすい
ビジネスユニット商品企 画グル ープ主事は、
「 近 年、
ないよう、復元バネも内蔵した。
提 案 がで き、イメージすることが 難しかったカラー
バリアフリーや省スペースの観点から引戸が注目さ
設 計・生 産面でも数多くの工夫 が施されている。
コーディネーションもタブレット端末などで、ショー
れ、販売も増えている。しかし、床面の段 差がない上
パネルの横 框を開き戸と引き戸で統 一したほか、部
ルームなどに行かなくとも簡単にシミュレーション
吊り引戸は品揃えが少なく、戸車引き戸が主体で 選
材の共通化を進めて部材点数を減らし、縦框の寸法
でき、色決めなどのスピードアップが図れる。見積も
びづらくなっていました。今回、それらをすべて見直
も統 一するなどして生 産効率を高めた。特 注 対応の
り、発 注 作 業 も 容 易 に なり、詳 細 の 施 工 方 法 も ス
してフルラインナップ化しました」と語りだした。
幅を広げたのも特 徴の 一つだ。リフォーム需 要に対
マートフォンやタブレット端末などで確認できること
奥山主事らは、狭さの解消や自然の恵みである採
応 で きるよう、ド ア 高さを1,700 ミリから新 築 用 の
になった。価格設定はスタンダード使用の場合、引き
2,500 ミリまで特注対応している。全ての引き戸で引
戸なら7 万円から19 万円まで7 段階、開き戸なら5 万
き幅 を広げ、有 効 開 口として900 ミリまで 対応 で き
円から10 万円と5 段 階に分けられ、デザイン別に端
るようにした。
数のない 価 格となっており、ひと目で 分 かるシンプ
このほかでは、一部の仕様で蝶番を従来の蝶番か
ルな価格体系となっている。
内装ドアにルーバーを付け、光と風を享受
ら独自のフラット蝶番に変更し、ドア枠から出っ張り
をなくしてすっきりとした外観となっている。内装ドア
も床材と同様に本物そっくりの木質感が漂っている。
奥山隆・ハウジングシステム事業部内装システム
ビジネスユニット商品企画グループ主事
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商品開発の軌跡
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「内貼断熱パネルシテム」開発
リフォーム対応の
真空断熱材を採用、最薄の13ミリ
施工も大幅短縮、12畳大で3日程度
この狭さ感を軽 減するため8 ミリ厚と薄い真空断 熱 材を採 用した。硬 質ウレタンフォームや室内側の鋼板を
含めても総 厚で13 ミリと薄く、狭さ感を軽 減した。13 ミリという厚さは業界で 最 薄だという。真空断 熱 材は180
ミリ厚のグラスウールと同等の断熱性能を発揮する。
断熱パネルは長さが600 ∼ 2,450 ミリ、幅は床や壁、天井などによって異なり258 ミリ∼ 420 ミリとなっている。
施工は容易で居室を採寸した後に床や壁、天井を壊すことなく既存のクロスを剥がし、その上から断熱パネルを
接着施工するだけだ。真空断熱材は、孔が開いてしまうと性能を発揮しなくなるが、鋼板と硬質ウレタンフォーム
で 全面を覆っているので施 工 時に孔を開けてしまう心 配 がなく、施 工 が容 易である。全面的な断 熱 改修では
1 ヵ月以上かかっていた工事が、12 畳大の内貼断熱では3 日程 度で終了する。そのため、お客様も生活しながら
リフォームできる。
パナソニック㈱エコソリューションズ社が、今、力を入れている商品の一つがリフォーム対応商品の「内貼断熱
同社では敷地内に評価・実験スペースを設置している。
「 内貼断熱パネルシステム」を施した居室と施していな
パネルシステム」。昨年6 月に正式発売され、家全体を外貼断 熱改修するのではなく、LDK などだけを居室内部
い同じスペースの居室を隣接して並べ、体感や温 度 差などが分かるようにしている。実際に入ってみると狭さを
から上貼りで部分断熱するシステム商品だ。
感じることはなく、温度は確実に異なることが分かる。
冷蔵庫などに使用されている真空断熱材をコア材料に硬質ウレタンフォームで被覆し、鋼板とアルミニウム箔
で 一 体化された断 熱パネルを壁や天 井、床に貼り、省エネ性 能を高めるという仕 組み。
「 内貼 断 熱パネルシス
テム」でLDK を断熱化することによって、同社では年間冷暖房費を約40%削減できると試算している。
内貼りという工法から、当然、パネルの厚さ分だけ天井や壁から迫り出し居室面積が狭くなる。田村俊樹・ハウ
ジングシステム事業部R&D センター技術戦略企画・管理グループ総 括参 事は、
「 各種の実 験によって、迫り出し
の厚さが20 ミリ以 上になると居室が狭くなったと感じる人 が 半 数以 上になることが分かりました。そのため、
できるだけ薄くすることが命題でした」と語る。
亜鉛めっき鋼板
水酸化アルミニウム紙
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「断熱改修診断」シミュレーションを開発
田村 総 括参 事に苦労点を聞いた。
「 真空断 熱 材は
断熱パネルの中央部に組み込まれており、真空断熱
材の周囲にウレタンフォームが 充 填されています。
真 空 断 熱 材 だけで は強 度 が 不足するためウレタン
フォームを入れているのですが、このウレタンフォー
ムを均一に充填するのに苦労しました」と語る。均一
に充填しなければパネル表面に凹凸が生じてしまう
だけでなく、温度差にむらが出る。このためウレタン
フォームの注入圧力や温度を何度となく変えて検証
した。加えて同社のオリジナル技 術である屋根材の
「鋼 板 成 形 技 術」と金属サイディングの「ウレタン発
泡パネル化技術」を活用して、この問題を解決した。
同社の「内貼断 熱パネルシステム」の特 徴の 一つ
は、施 工 後 の 効 果 が 分 かるよう「断 熱 改修 診 断」シ
ミュレーションを開 発したこと。居室の間 取りや断
熱の状況などの情報に基づいて、施工前と施工後の
温 度 差 や 体感 温 度 変 化、光 熱 費削 減 効 果などが無
料でシミュレートでき、効果が納得できる仕組みだ。
断 熱 効 果と予算に応じて部分 的な断 熱工事が 可
能なことも特徴の一つ。例えば12 畳大LDK の床、壁、
天 井のすべてを施 工すると約250 万円、床と壁だけ
商品開発の軌跡
を施 工した場 合 は 約130 万円となっており、お 客 様
の予算などに応じて選択できるようになっている。
同社では「施 工が容 易になれば、省エネ改修は普
及する」と分析しており、
「 内貼断熱パネルシステム」
の普及に拍車をかけたい考えだ。
岡 田 直 樹・ハウ ジ ング システム 事 業 部 R&D センター、
ヒューマンソフト開発グループ感性価値評価技術開発チー
ムリーダー(左)と田村俊樹・ハウジングシステム事業部 R&
D センター技術戦略企画・管理グループ総括参事(右)
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