「刻々と進化する中国」 1. 躍動感溢れる街 “上海” 2. イメージ・チェンジ

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「刻々と進化する中国」
株式会社ア イ ト ー 社長 加 藤 裕 彰
7 月 16 日~19 日上海、景徳鎮に出張、その変化のスピードに感心すると同時に、昨今問題とな
っている中国製品の信頼性についても新たな認識をして帰国しました。
1. 躍動感溢れる街 “上海”
以前お世話になった東京と上海に拠点を置く商社通じて、
上海の百貨店グループから“MADE IN JAPAN”製品を売
るショップ出店の話を頂き訪問。
近くに上海虹橋空港(国内線)や官庁街、日本領事館、シ
ェラトンホテルなど 5 つ星ホテルが立ち並び、日本人・韓国人
が多く居住する虹橋地区にある高級専門店型百貨店、及び旧ヤオハン(上海最大の売上と最大
の売場 15 万㎡)、上海第一商城などを経営する大手流通 2 つのグループと出店につき商談。
両社とも場所貸しで、商品や什器及び販売員は当社側負担、売上から一定料率を場所代とし
て支払う条件。 ただ、輸入税、増値税の問題で日本国内上代価格の 2 倍近い小売価格の設定
になるので、どの程度売れるかが問題。 以前から複数の日本洋陶メーカーが百貨店にインショプ
を展開しているが、北京オリンピックや上海万博を見据えた業務用食器拡売のブランド浸透が主
目的にも思える。
何れせよ現地での商品管理や販売員の確保など多くの課題があるので、今後関係商社と検討し
て行く方針。 以前輸出した当社ギフトを広大な“百貨店店外催事会場”で販売してみたが、日本
製品に対する注目度は高く結構好評であった。 日本的な着物柄、織部など日本古来の釉調の
陶器を、幾つかの婦人雑貨専門店業者から商品を置きたいとの引合いがあった。 今後、店外催
事の機会を捉えての商売も検討したい。
他に業務用食器・備品を扱う商社や卸問屋が集積する市場の一つを視察。 上海には駐在員・
家族など 5 万人、出張者含め 6 万人の日本人が常時いると言われ、日本食のみならず韓国飲食
店も多い。 “かっぱ橋”や“千日前道具屋筋”も顔負けの品揃えであった。 実際に大口のビビン
バ鍋(万古焼)の引き合いがあった。 ただ、高率の輸入税や増値税がネックになり、価格面で指
値が非常に厳しい。
2. イメージ・チェンジしつつある “景徳鎮”
上海から飛行機で1時間、初めて景徳鎮を訪問。 陶都“宜興”に対して磁都と呼ばれ、漢時代
から 1700 年の歴史を誇る江西省直轄の磁器発祥の地。 市区内人口 50 万人、周辺地域含め
150 万都市。 台湾資本の企業など 3 社メーカー訪問。 1990 年代設備の近代化や公害問題で
多くの石炭窯が廃止され、各工場へはパイプ・ラインで石炭ガスが供給されている。 海外市場向
け中心の近代的な製造設備もつメーカーは、更に上質な磁器生産をする為に、より燃料コストが
高い天然ガスを使用。 景徳鎮が得意とする工芸品、大物の花瓶や大皿の販売不振で、長年景
気が悪く、多くの国営工場が倒産、行政が外資メーカー(ズズキ自動車も進出)や陶磁器工場を積
極的に誘致している。
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① 陶磁器生産に向く上質な原料と若年労働力が豊富
② 他産地と比較しても比較的安価な人件費(平均 1 千元=17,000 円/月)
③ 郊外での工業団地新設と行政の誘致政策
など他の中国陶磁器産地より有利な条件が揃い、昨今外資系の工場の進出が見られるようになっ
た。
明時代の古窯
景徳鎮問屋団地
台湾、中国(潮州、広州、上海など)に 6 工場(工員 6 千名)を操業、“FRANZ”ブランドで高額な
装飾磁器を生産する台湾資本の工場視察。 リモージュ焼高級磁器”アビランド“の台湾と中国代
理店でもある。 昨秋フランスで知己を得た陳総裁(冒頭の写真)にカートで工業団地内にある最
新鋭の景徳鎮工場(従業員 1,600 名)を案内してもらう。
敷地内には寮や食堂、ジム、図書館などが完備、芝生と池、丘や林に囲まれ、ゴルフ・コース顔
負けの広大で素晴らしい環境。 世界各国の大手百貨店など 4 千店の販売拠点へ向けて大勢の
若い工員が熱心に働いていた。(中国工場の給料は殆ど出来高払い) 広くモダンなショールーム
には胡綿濤主席始め共産党幹部や海外の要人が訪問した際の写真が並び、さすが全世界を飛
び回る“政商”と感心する。
F社
ショールーム入口
F社
F社
吹付け工場
F社
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工場
絵付工場
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次に瀬戸の企業が関係し米国や独メーカー用ノベリティの OEM 生産している台湾系工場 T 社
視察。 瀬戸のノベリティ生産は瀬戸→台湾→マレーシア→中国本土と生産地を経済環境等の変
化に対応して移転されてきたが、現在 T 社は広州、上海郊外に工場を持ち、景徳鎮工場は最新
鋭の工場設備を持つ(従業員 600 名) 。 また、土岐のメーカーが生産技術指導し、日本市場向
けの食器を生産している K 社にも訪問(従業員 400 名)。 この工場は敷地と一部設備を元操業し
ていた国営工場からリース、加えて新たに最新の上絵付け窯、ローラーハウス・キルン、シャトル窯
を増設、主に日本向けの磁器製 DC ブランド食器を生産・輸出している(酸化窯)。 機械成形機
(ローラー・マシン)も 10 機備えかなりの生産キャパを持っている。 来春還元窯を増設する計画。
T社
K社
OEM 製品を
K社
K社
鋳込成形
圧力鋳込
機械成形
多発する中国製食品、衣料品、食器などの品質不良や表示問題で、それら製品に対して
日本の消費者から反発と拒絶反応と言う強い逆風が吹いている現状。しかし、今回訪問
した3工場は操業開始後 3 年未満で、何れも設備や生産技術、品質管理レベルが高く、
将来的には大きな戦力になる可能性を感じた。
また、従来中国陶磁器の生産地として潮州、徳化など主に中国南部地域を注目してきたが、
観光地や工芸品をイメージしていた磁都“景徳鎮”に新たな印象と興味を持った。
最後に、今回の出張で特に“台湾人”の中国本土での情報量の豊富さと、現地政財界との
パイプの太さ、そしてスピーディな動きには感嘆。 中国と台湾、政治的には対立しているように
見える両国だが、経済的には強い絆で結ばれていることを実感出来た。
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