知的資産経営報告書 2015 - 業務用食材問屋 業務用食品製造加工

 会社の強みと提供する価値を見える化しました。 知的資産経営報告書 2015 スター物産株式会社 お取引先のお客様とともに歩む スター物産知的資産経営報告書
■社長からのご挨拶 スター物産株式会社は、昭和初期から日本の食肉販売に貢献し
また冷凍食品の黎明期を支えた堀田商店、マツオ商店の子会社と
して、昭和 38 年に創業いたしました。
当初はマツオ商店の商品を仕入れて社内で調理して、高校生の
修学旅行を受け入れる本郷や箱根の旅館に納品していました。現
在ではその調理技術・ノウハウを活かし、飲食店や居酒屋等に食材
一式と調理品・半調理品を一括してお届けして厨房のお手伝いをす
る「キッチンソリューション」を提供しています。
創業以来 50 年以上に渡り、形を変えながらも日本の食文化に貢献できてきたことは、ひとえに当社の
商品を使って美味しい食事を生み出していただいているお客様や、お取引先様、金融機関様などのご
指導ご鞭撻と、当社従業員の地道な努力のたまものと厚く御礼を申し上げます。
スター物産の企業理念は「お取引先のお客様とともに歩む」です、お客様のためになる「変革」をお客
様の視点で考え「誠実さ」で実行いたします。
この知的資産経営報告書では、財務的な数値ではおわかりいただきにくい、このようなスター物産の
経営方針と、それを支える従業員や、組織、ノウハウ、お取引先様との関係などの強み(知的資産)、
今後の経営方針などをわかりやすく取り纏めました。お客様・お取引先様やこれから当社で働きたい方、
金融機関様などが当社をご理解いただくための一助になれば幸いでございます。また、この報告書の
作成・公開を契機に、これまでの会社の歩みとお客様に提供してきた価値を振り返り、これからの更な
る発展の起点としてまいります。
今後とも従業員一同、日本の食文化に貢献するために鋭意努力してまいりますので、相変わらず
のご指導を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
2015年 5月 1日
スター物産 株式会社 代表取締役社長
堀田 正克 知的資産経営報告書について
知的資産とは、バランスシートに記載されている資産以外の無形の資産であり、企業における競争力の源泉である人材、技術、技能、知的財
産(特許・ブランドなど)、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなど、目に見えにくい経営資源の総称のことです。
「知的資産経営報告書」は、この目に見えにくい経営資源、即ち非財務情報を、債権者、株主、顧客、従業員といったステークホルダー(利害
関係者)に対し、「知的資産」を活用した企業価値向上に向けた活動(価値創造戦略)として目に見える形でわかりやすく伝え、企業の将来性
に関する認識の共有化をはかることを目的に作成する書類です。経済産業省から平成 17 年 10 月に「知的資産経営の開示ガイドライン」が公
表されており、本報告書は原則としてこれに準拠しています。
2
スター物産知的資産経営報告書
Ⅰ.当社の事業環境 1. 外食産業の流動性 ① 市場規模の推移 当社のお客様は、飲食店や給食施設、酒場等の各店舗・施設です。(まとめて「飲食店」と記します)
(一社)日本フードサービス協会及び(公財)食の安全・安心財団の「平成25年外食産業規模推計値」
によると、外食産業全体の市場規模は、平成 9 年(1997 年)の 29 兆 702 億円をピークに長期に渡り
減少傾向にあり、平成 23 年(2011 年)には 23 兆 8,282 億円とピーク時の 82%にまで減少しました。
その後は、景気回復基調のなか 2 年連続で増加しましたが、平成 26 年は天候不順や食の安全問題な
どで横ばいとなったもようです1。
業態別には、最も市場規模が大きい「食堂・レス
トラン」は、外食産業全体の傾向と同期しながらも
比較的安定的に推移しました。「宿泊施設」「酒
図表 1:外食産業の市場規模(単位:億円)
350,000
300,000
250,000
場・ビヤホール」は、全体の傾向以上に大きく減少
200,000
しており、景気動向に敏感に反応する業態である
150,000
「その他飲食店」は景気動向と逆の動きを示して
100,000
います。また、保育所給食は規模は小さいながら
50,000
も一貫して増加傾向を示しています。
120,000
0
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ことがわかります。一方、ファストフードが含まれる
16,000
14,000
100,000
12,000
80,000
10,000
8,000
60,000
6,000
40,000
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2,000
1他の統計による推定。
2PB : プライベートブランド。小売店・卸売業者が企画し独自のブランドで販売する商品。
3
スター物産知的資産経営報告書
② 開店・閉店の出入りが激しい飲食店 飲食店の店舗数は全体としては景気動向に沿って増減する傾向にありますが、個々の店舗に着目
すると、その出入りは非常に激しいものがあります。店舗の開閉店そのものを調べたデータは有効なも
のがありませんが、開店しても採算の見込みが立たない店舗は、一般企業よりも閉店の決断が早い傾
向にあります。そして閉店した店舗の跡には、すぐに別業態の店舗が開店します。これは、飲食店が人
の流れや競合店の出現などの外部環境に、非常に大きな影響を受けやすいためと考えられます。
飲食店の数が長期的に減少トレンドの中、総務省統計局の「経済センサス」によると、飲食店の労働
者数は増加傾向にあります。これは、零細な小規模店が減少し、店舗あたり従業員の多い大型の店が
増えているためと考えられます。
③ メディアが集客に大きく影響 昨今の飲食店の集客の特徴として、インターネットやマスメディアの影響が非常に大きく現れることが
あげられます。インターネットでは、従来の店舗や企業のホームページに加え、グルメサイトでの評価が
集客を大きく左右するようになりました。特に情報収集系のグルメサイトは、実際の来店客が料理だけ
でなく店の雰囲気や店員のサービスなど多面的な評価を投稿できることから高い人気を得ています。
ある程度インターネット上で評価が高まると、グルメ雑誌やローカルテレビで取り上げられることもあり、
ここまでいくと店の人気は一気に高くなります。
また、インターネットやテレビ等メディアの影響で特定の料理や食材の人気が急激に高まることもあり
ます。例えば栄養価の高さが人気となったアマゾン原産の植物「アサイー」は、インターネット検索キー
ワードの人気度を分析できる Google Trend によると、2011 年頃から検索が増え始め 2013 年に急激
に関心が上昇し、2014 年 6 月をピークにその後は沈静化しつつあることがわかります。なお実際の購
買行動はこれらの関心度の動きに対し、少し遅れて行なわれると考えられます。
飲食店はこれらの評価や関心にできる限り追随して事業機会を逃さないことが望まれますが、当社の
ような卸売業もこれに対応して商品を供給することが求められます。
図表 2:Google Trend キーワード「アサイー」の関心度
4
スター物産知的資産経営報告書
2. 飲食店の食材調達とメニューの考え方の変化 ① キッチン・ストックヤード比率の減少 飲食店の店舗は、いわば製造部門と販売部門を併設した施設とみることができます。製造部門とは厨
房(キッチン)とバックヤードであり、販売部門とは客席(ホール)スペースです。当然、厨房やバックヤー
ドを小さく抑え、客席を広くとることで売上高と利益率を高めることができます。
特に、ランチ営業が主体の店や、ロードサイドのレストランのように休日に大量に集客して一気に稼ぐ
タイプの店、居酒屋など季節性の宴会需要に対応したいタイプの店では、どうしても客席を広く取り厨
房とバックヤードをぎりぎりに抑える傾向があります。しかしこれは厨房の労働環境や作業効率を悪化さ
せるリスクを伴っています。また材料保管の制約が高まることになります。 ② 食材の多頻度少量発注 バックヤードが十分にない飲食店においては、食材を何日分もまとめて保管しておくことができないた
め、調達先への発注はこまめに必要量のみを行ないたいというニーズがあります。また売上実績や客
数予測をぎりぎりまで確認して、必要十分な最適量の発注をすることが利益率の改善につながりますが、
翌日のランチやディナーに間に合わせるためには、ある程度「見込み」で発注を行なわざるをえませ
ん。
③ メニューの考え方の変化 スペースが抑えられた厨房においても、顧客の多様化するニーズに応えて料理メニューを揃える必
要は当然にあります。また競争が激しい飲食店業界においては、季節メニューや新メニューなど常に変
化を取り入れていかないと、あっという間に競合店に顧客を奪われてしまいます。チェーン店の場合で
も同様で、従来のような自店やセントラルキッチンで作られる規格化されたメニューだけでは競合店と差
別化することが難しくなっており、その場合店独自のメニューの考案をする必要がありますが、限られた
調理スタッフと厨房がそれを困難にしています。
5
スター物産知的資産経営報告書
3. 精肉店の減少 飲食店は市中の精肉店や業務用精肉店から肉を仕入れていますが、精肉店の数は年々減少してい
ます。NTT タウンページデータベースによると、タウンページに登録されている全国の精肉店の件数は、
2006 年には 16,417 件ありましたが、2011 年には 13,128 件と、5 年間で約 20%も減少しています。
原因としては、市中の精肉店は一般消費者のスーパーでの購入が増えた結果と考えられます。業務
用精肉店については、飲食店業界の競争激化により加工の要求が細かく厳しくなっています。その要
求に十分に応えられなかったり、カットした残りの端材を挽肉やハンバーグ、肉団子、ソーセージなどに
加工して販売できないと、採算が悪化し廃業に至っているものと考えられます。
4. 一層注目が高まる食の安全 2014 年は、その前年の年末に発覚した大手食品会社の子会社での、冷凍食品への高濃度な農薬
混入問題にはじまり、ファーストフードチェーンやコンビニチェーン等で使用していた中国の上海福喜
食品の期限切れ食肉問題、人気のカップ焼きそばに虫が混入した問題、その他複数企業での異物混
入問題、あげくには店舗の商品につまようじを入れたように見せかけた動画をインターネットに投稿する
愉快犯まで現れた、食の安全に関する事件がたいへんに注目された年となりました。
例えば農薬混入の問題では、親会社である大手食品会社の商品の他に、イオン、西友、セブン&ア
イなどの PB2商品まで自主回収されました。このように著名な販売元企業の PB 商品の多くは中堅・中
小企業が製造しており、その製造現場や流通過程で起こした問題は、販売元企業のブランドを大きく
毀損しています。またひとたび問題が起きると、問題の大小や深刻性にかかわらずインターネットを通じ
て急激に拡散し、その後テレビでも報じられて日本中に印象付けられるという図式が明らかになったの
も 2014 年の食の安全問題の特徴でした。
2PB : プライベートブランド。小売店・卸売業者が企画し独自のブランドで販売する商品。
6
スター物産知的資産経営報告書
5. 同業者の移動と競合の参入 ① 築地市場の移転 図表 3:当社と築地・豊洲市場の位置 東京都中央卸売市場の一つである築地市場は、80
年以上に渡る歴史を持つ取引額で世界最大規模の水
産物・青果物市場ですが、平成28年11月に当社から7
Km、車で15分程度の至近距離に豊洲新市場が開場 3
し、その機能を引き継ぐ予定です。
築地市場には、現在800以上の仲卸業者があり、また
周辺の場外市場には、数多くの商店が並び大変なにぎ
わいを見せています。これらのうち多くの事業者は豊洲
新市場に移転してくるものと考えられます。
また築地市場の場内・場外は観光地としても人気で、
日本人のみならず外国人旅行者にとっても東京の定番
観光スポットとの一つなっています。移転後は豊洲新市場が外国人旅行者の新たな観光スポットとなる
ことが予想されます。
② 他地域からの競合参入 経済の東京一極集中やその市場規模の大きさから、地域の食品卸業の東京進出が進んでいます。
特に関西地区や九州の資本金 10〜50 億円、売上高 1,000〜2,000 億円クラスの総合卸売業は、
M&A により中堅卸売業を吸収しながら大規模化し、圧倒的な品揃えと価格競争力を誇っています。自
社 PB 品も豊富に品揃えしており、企業によってはグループ内に製造会社を何社も擁しているところも
あります。これらの会社は東京地区において、地方独自の商品(例えば湯葉加工品など)をドアノック商
品として取引を開始し、徐々にその他の商品も自社からの納入に切り替えていくという戦略が見受けら
れます。
3平成27年2月時点の計画。
7
スター物産知的資産経営報告書
Ⅱ.企業理念とビジネスモデル 1. 企業理念と行動規範 ① スター物産の企業理念 飲食店の厳しい競争環境のなか、客席重視の店舗レイアウトにより厨房やストックヤードの環境は従前
よりも厳しくなっている一方、厨房にはメニューと調理で他社と差別化することが求められています。この
ようなお客様の状況に対し、スター物産は単なる食品の卸売業にとどまることなく、飲食店の厨房の総合
的なお手伝いを行い、厨房にはその店の看板料理等に注力していただく、言い換えれば、スター物産
が厨房業務のアウトソーシングをお受けして、お客様にはコア・コンピタンス4に特化していただく「キッチ
ンソリューション」を推進してまいりました。このお客様とのパートナーシップによりお客様といっしょに成長
していく姿勢をこれまでもこれからも変わらず大切にしていくために、スター物産では企業理念を次の通
りに定めています。
お取引先のお客様とともに歩む 当社はこの理念のもと、お客様である飲食店様とその利用者様が創る食の空間に貢献することを「社会
的役割」と認識し、それを果たしてまいります。そのためにお客様のためになる「変革」をお客様の視点で
考え「誠実さ」で実行いたします。
② 行動規範 スター物産の従業員は、企業理念に基づく日々の行動の規範として以下の 3 つを遵守しています。
行動規範 1.
自己を管理し主体的に行動し、働き甲斐を創造する。 2.
常に開拓の精神を持ち挑戦し、過去の失敗に学ぶ。 3.
現実を直視し、できるところから着手し、変化を恐れず行動する。 4コア・コンピタンス : 他社に対する強みとなる中核的な分野・能力
8
スター物産知的資産経営報告書
2. ビジネスモデル 当社の主たる販売先は、首都圏の居酒屋、和・洋・エスニック系レストランで、売上の約 8 割を占めて
います。扱っている商品は一般食品と精肉加工品、生鮮魚介加工品、それに厨房で使用する食品以
外の商品です。肉と魚に関しては仕入後に社内の製造部において加工して納品しています。
また当社は下処理を行いお客様の厨房で最終調理するだけの半調理品を、お客様指定のレシピで
製造するいわゆる相手先 PB 品(約 50 種類)の製造を行ない、仕入商品と併せて一括してお納めして
います。
仕入は食品商社(1次問屋)の 2 社から仕入れているほか、一部の食品については専門食品業者約
150 社から仕入れています。またこれら仕入先に取扱いが無い特殊な食品や、飲食店で必要な消耗
品類は、大田市場で調達しています。
図表 4:スター物産のビジネスモデル
スター物産
食品商社
(2社)
生鮮品
一般食品
業務部
仕入品荷受け
ピッキング
配送
自社配送便
居酒屋
レストラン
専門食品業者
(約150社)
豆腐、
カット野菜等
製造部
相手先PB品・自社
オリジナル商品の
製造、肉・魚加工
PB品レシピ
特殊な食品
大田市場
串、箸、洗剤、
たわし等
食品以外
営業部
総務部
キッチンソリューション
提案
事業所給食
(社員食堂)
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スター物産知的資産経営報告書
Ⅲ.知的資産経営の展開(過去〜現在) 1. 堀田商店から続く伝統 ① 原点である堀田商店とマツオ商店 よ さ ま つ
スター物産の系譜をたどると、明治 36 年富山県生まれの堀田與三松 氏が昭和 3 年に東京市牛込
区(現新宿区)に開店した堀田商店にさかのぼります。堀田商店は養豚場の経営と肉の卸売店とトン
カツ・コロッケ等の総菜小売店を行い、業容を急速に拡大していきました。現在スター物産が行なう調
理品製造の原点は堀田商店にあります。
終戦後、三男の堀田松男氏が堀田商店を再建し、その後有限会社マツオ商店を設立し、日本冷蔵
㈱様(現㈱ニチレイ様)や㈱日清製粉グループ本社様(日清フーズ㈱様)と協力し、日本の冷凍食品
の黎明期を作り上げました。
② ホテル・旅館向け加工販売会社として開業 スター物産はマツオ商店の関連会社として昭和 38 年に創業しました。「スター」は、㈱ニチレイ様の
スター印をご了解を頂き使わせていただきました。初代社長は堀田武司です。
当初はマツオ商店の商品を仕入れて総菜に加工して販売する食品製造会社でした。当時の東北
地方の高校の修学旅行は東京本郷地区に二泊三日、箱根地区に一泊が定番となっていたため、両
地区の大きなホテル・旅館に対し、焼売、トンカツ、コロッケ、春巻、茶碗蒸し等を納品していました。
特に箱根地区は中強羅に営業所を設け、地域のほとんどの大規模ホテル・旅館を押さえていました。
③ 飲食店市場に進出 図表 5:創業当時の本社
昭和 51 年に㈱ニュートーキョー様との取引を
開始しました。これが転機となり、当社は飲食店
市場に進出し、製造品だけでなく厨房で必要な
食材一式を含めてご提供する総合卸売業に業
態を転換しました。以降、さくら水産様(㈱テラケ
ン)、東宝不動産㈱経営レストラン様等にお取引
きを広げてまいりました。
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スター物産知的資産経営報告書
2. 製造の強み ① 肉・魚加工、相手先 PB 商品製造、オリジナル商品製造のサービスメニュー 当社は食品卸売業でありながら、創業当初から製造部を有し、食肉加工、魚の切り身漬込等の加
工、相手先 PB 商品製造、当社オリジナル調理品の製造を行なっています。
一般の中小食品卸売業は外部の精肉店に肉の加工を外注していますが、当社では社内で加工す
ることで、細かいご要望にお応えしつつ品質に責任を持ちまた納期の短縮を実現しています。精肉店
が大幅に減少している中、ほとんどのお取引先で便利にご利用頂いています。
お客様からレシピを頂き製造調理する相手先 PB 商品は、当社キッチンソリューションの中核ともい
える強みです。お客様厨房の限られた資源の中で、自店の特徴を強く打ち出し他店と差別化しつつ
幅広いニーズに応えていただくために、セントラルキッチン機能を提供するアウトソーサーとして貢献
しています。競合する大規模卸売業は大量生産の強みから自社の PB 品を強く打ち出していますが、
当社は中小企業ゆえの機動性を活かし、相手先 PB 商品の製造に注力しています。
図表 6:(左)ニュートーキョー様 PB 商品「カミカツ」(右) 当社オリジナル品「サバ味噌煮」
② 小ロット製造への対応力 大手の食品卸売業のなかには、当社と同様に製造部門を持つ会社もありますが、そのほとんどは
1,000 個単位で注文を受けています。これに対し当社はその 1/10 以下の小ロットでもご注文を受け付
けています。このためチェーン全体でなく店舗独自のご注文や個人店のご注文にもお応えすることが
できます。また当社オリジナル品は、緊急なご注文にも対応できるよう、常に在庫を絶やさないようにし
ています。
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スター物産知的資産経営報告書
③ お客様レシピの再現力 相手先 PB 商品の製造は、お客様からレシピをお預かりして当社製造部内で製造します。レシピは
その店の厨房の大切なノウハウ・営業秘密であり、本来店内で作るはずであった料理の設計図です。
お客様にとっては、外部に調理委託する以上、いかに店内調理と同じように再現してもらえるのかが
最も重要なポイントです。
当社の製造部には、元コック経験者や元肉屋などの熟練者を揃え、レシピを正確に再現することで
お客様から高い評価をいただいています。
例えば、ローストビーフ・焼き豚・鶏の照り焼き等の肉加工品の製造。
コロッケ・カツ・メンチ等のパン粉付け製品製造、鶏のから揚げプレ味付け加工品製造。
魚の切り身西京漬け加工他、各種タレ、みそラーメンの味噌調合、エスニック風さつまあげの製造など、
分野は完成品、下ごしらえした商品、独自の調味料と様々です。
図表 7:オールビーフハンバーグ製造工程例
1.
2.
3.
4.
ハンバーグミートを作る
• 宮崎牛 10Kg
• 豚背脂 1Kg
• オニオンソテー 3Kg
• 白生パン粉 800g
• 牛乳 1L
• スパイスミックス 130g
• 卵 14個
(スパイスミックス : ローズ
ソルト900、味の素100、黒
胡椒100、ナツメグパウダ
100)
ハンバーグミート(約
100Kg)を成形機に入
れ、180gに計量し成形
する。
180gに成形したハン
バーグをクッキングペー
パーを敷いたバットに25
個ずつ並べる。
バットをラックに並べ、
スチームコンベクション
に入れる。
庫内温度140℃で中心
温度80℃になるまで、
約30分焼成処理。
5.
6.
7.
焼き上がったら室内温
度で30分粗熱をとる。
急速冷凍庫に入れ12
時間冷凍処理する。
異物が付着していない
かを、複数人数で目視
点検する。
8.
9.
10.
11.
真空袋PNH-11に凍結
したハンバーグを5個ず
つ入れ真空パックする。
再度急速冷凍庫に入
れ12時間冷凍処理す
る。
異物が付着していない
かを、金属探知機で点
検する。
出荷時に箱詰
(1c/s10PC)を行う。
(箱詰作業前に異物が
付着していないかを、
再度複数人数で目視
点検する。)
12
スター物産知的資産経営報告書
3. 調達と物流の強み ① 必要なものは全て揃える 当社がご用意している商品は、乾物・冷凍品の常時在庫として約 5,000 アイテムあります。また米や
たまご・豆腐等のチルド商品の日配も行なっています。これに加え、自社製造部において食肉加工品、
魚の切り身漬込商品、そして相手先 PB 商品、当社オリジナル商品の製造を行なっています。これら
により、和食・洋食はもちろんエスニックまで対応できる商品ラインとなっています。
さらに当社では、通常の仕入先で取扱いの無い商品や、食品以外の、洗剤、串、箸、ナプキンなど
厨房とホールで必要なほとんどのものについても、大田市場で調
い ち ば
図表 8:かんずり
達するいわゆる「市場 買い」によってご用意をしています。例えば、
新潟県妙高地方で戦国時代から作られていた地元産唐辛子ベ
ースの調味料「かんずり」は、食通には「西の柚子こしょう、東のか
んずり」と呼ばれ、和食店によっては隠し味として使われています
が、このような珍しい食品も一個から調達しています。
通常の取扱い品以外でも、お客様が必要な物は市場で揃えら
れる限り何でもフットワーク良くお届けできることは、大手卸売業
にはない当社の強みです。豊洲市場開場後はこの強みをさらに
強化してまいります。
② 自社配送体制 図表 9:自社所有の 2 トン冷凍車
当社は平成23年に、それまで外部の運送会
社に委託していた首都圏の配送業務を、コスト
ダウンと柔軟な配送の実現のために自社配送
(白ナンバー車)に切り替えました。現在、2トン
冷凍車7台、1トン冷凍車3台で、常設コース 700
ポイントに配送しています。その他に緊急対応用
として、2トン保冷車1台を保有しています。
なお、地方への物流は、地域の卸問屋と提携し
て、北海道、名古屋、大阪、神戸、福岡地区をカ
バーしています。
13
スター物産知的資産経営報告書
③ 物流に有利な立地 図表 10:新木場からスカイツリーを望む
当社は江東区新木場に立地しています。新木
場は貯木場や材木商・木材加工・合板工場など
が集積する地区ですが、同時に首都圏物流の
拠点地域でもあります。首都高速湾岸線インター
チェンジに至近で、都内、神奈川、千葉、埼玉へ
のアクセスには最適です。
また周辺には倉庫施設が数多く並んでいます。
当社ではこれら周辺倉庫を、商品を在庫保管せ
ず入荷・検品後仕訳して配送する TC(Transfer
Center:通過型センター)として活用し、仕入先
が倉庫に納品し当社がそこで方面別に積み替えて配送をしています。
例えばお客様が地方の食材を首都圏の飲食店に供給したい場合、小規模で頻度も少ない段階なら
宅配便が適していますが、店舗数と頻度が増えてきたら、当社で一括荷受けして、必要な場合は一時
保管して、店舗別に仕分けして配送することができます。
④ バラ出荷とクイックデリバリー 当社は電話・FAX のほか Web 受注システムを採用して、深夜0時までご注文を受け付けています。
一方で納品は早い地域では翌日のランチに間に合わせることも可能です。このためお客様店舗では、
閉店後にその日の実績や翌日の予測を勘案した、より精度の高い発注を行なうことが可能です。
またその単位も、ケース単位だけでなく例えば
15食分などのバラ出荷にも対応しており、お客
図表 11:早朝の出庫の様子
様のバックヤードの実情に応じた必要十分な数
量をお届けする、言い換えればお客様がジャスト
インタイムの食材ストックを実現することが可能と
なっています。
供給業者様から当社への入荷については、大
手卸売業の場合昼までで締め切る場合が多い
のですが、当社は 24 時間の荷受けが可能です。
これにより産直フェアなどの生鮮品も他社よりも
早く高い鮮度でお店にお届けすることができま
す。
14
スター物産知的資産経営報告書
4. ソリューション営業の強み ① 製造・調達・物流を活かしたキッチンソリューション提案力 当社は 5,000 を超える商品点数を誇っていますが、お客様とお会いする際はその豊富な商品の紹
介ではなく、まず調理やメニューでのお困りごとや課題をおうかがいしています。そこで製造と調達・物
流の強みを活かして当社がご提供できることを考え、お客様と一緒になって厨房の課題解決に取組ん
でいます。
例えばある飲食店様は厨房が全体的に手が足りてなく、お客様へのサービスにも支障が出かねない
状況でしたが、その商談中に新潟のもち豚がお店に納品されてきました。豚ロースカツを作るためとい
うことでしたので、これを当社で下ごしらえした半調理品として納めることをご提案し、ご採用いただきま
した。その結果、お客様は食材保管や仕込みが不要となり厨房の生産性が高まり、店の看板料理等に
より注力できることとなりました。
このようにして当社のご活用を始められたお客様の多くから、その後に他の食品についてもご用命を
頂いています。お客様にとっては店で使う食材がスター物産から一括して入荷される方が、仕入の手
間が省けるからです。
図表 12:全て店内調理と当社活用との比較
スター物産
飲食店厨房
全
店
内
調
理
当
社
活
用
食材の仕入
半調理品の
製造
半調理品の
仕入
(必要量)
食材保管
仕込み
調理
調理
15
スター物産知的資産経営報告書
5. 知的資産が創造するお客様の価値 スター物産の知的資産は、企業理念と堀田商店から続く伝統を背景にした、製造の強みと調達・物流
の強み、それらをお客様業務に役立てる提案力です。当社はこれらの知的資産を活かして、お客様に
対して「PB 品の外部調達」「何でも揃う」「少量でもタイムリーに届く」という価値をご提供します。そしてお
客様のメニューの競争力向上、厨房の生産性向上に貢献いたします。
図表 13:スター物産の知的資産とお客様の価値
企業理念
スター物産の知的資産
知的資産が生み出すお客様の価値
製造の強み
肉・魚加工、相手先PB商品、
オリジナル商品のサービスメニュー
小ロット製造への対応力
取
引
先
客
様
堀
田
商
店
店独自のPB品を
外部調達できる
活
メニューの
競争力向上
何でも揃う
調達と物流の強み
続
伝
統
歩
お客様レシピの再現力
製
造
調
達
物
流
必要なものは全て揃える
少量でも
タイムリーに届く
自社配送体制
物流に有利な立地
厨房の
生産性向上
提
案
力
バラ出荷・クイックデリバリー
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スター物産知的資産経営報告書
Ⅳ.知的資産経営の今後の展開 1. マーケティング強化 当社はこれまで製造、調達・物流、提案力などの強みを有していたにもかかわらず、マーケティング
プロモーションが不十分で、営業部門の人的営業に依存していました。出入りの激しい飲食店業界で
は、何もしなければお客様はどんどん減っていくことになり、マーケティング強化による新規顧客開拓
や既存顧客の取引量拡大は必須課題です。今回の知的資産経営の見える化を契機にして、以下の
通りマーケティング強化に取組んでまいります。
① ホームページ、会社案内の刷新 現在の当社のホームページは、数年前に従業員が手作りで作ったものです。会社の概要や、製造
部の調理品が写真付きで紹介されてはおりますが、その背景にある製造の強みや歴史、また卸売業
としての調達と物流の強みや提案力については述べられていませんでした。さらに当社の強みがお
客様にどのような価値をご提供するのかについても伝えていませんでした。
この知的資産経営報告書によって見える化した当社の強み・魅力と、お客様や入社希望者にとって
の価値を明確に伝えられるよう、平成 27 年度にホームページの大幅見直しをはかってまいります。
会社案内に関しても、これまでの文章中心のものを見直し、写真や図、表(データ)などを盛り込ん
だ営業用会社案内として訴求力あるものに全面改訂いたします。
② CI (Corporate Identity) 当社はこれまで、飲食店の厨房の総合的なお手伝いを行う「キッチンソリューション」を推進してまい
りました。これは当社の強みである、商品のバラ出荷やクイックデリバリー、お客様 PB 商品の製造、市
場買い等による厨房のお手伝いです。このキッチンソリューションがお客様に提供する価値を表すメッ
セージ「少量でもタイムリーに届けます」「(PB 品を)何でも作ります」「何でも揃えます」を統合した、お
客様が当社をご利用いただくメリットを一言で現すコーポレートメッセージの開発を、ホームページの
刷新と並行して行なってまいります。
開発したメッセージは、ホームページはもちろん、会社案内、名刺、お客様への提案書類などに使
用し、お客様や当社従業員のスター物産に対する価値観の共有をはかってまいります。
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スター物産知的資産経営報告書
2. 製造の強みの更なる強化 PB 商品をはじめとした製造の強みは、当社が創業以来培って来たコア・コンピタンスともいえるもの
です。この強みを更に活かして、今後のオリジナルメニュー強化やマーケティング強化による受注増
にも対応できるよう、人材面、機械化面、リスク対策面から強化をはかってまいります。
① 人材の強化 図表 14:製造部の食肉加工の
様子
現在製造部門は 5 名体制で操業していますが、ほぼフル操業の
状態となっています。当面の対策として 2015 年 2 月に食肉加工の
専門職として元畜産会社勤務の人材を1名、同 3 月には洋食調理
人として元外食産業勤務の人材を1名採用いたしました。これによ
り平成 27 年度は 7 名の体制に強化されます。
② 機械化による生産性向上 現在の製造作業は人手に頼る部分が多く、生産量を上げるには増員が必須の状況です。今後は機
械化率を高めて生産性を上げてまいります。ただし機械化には設備投資が必要なため、適切な規模
と時期に、公的補助金・助成金の活用も検討し、身の丈に合った形での機械化を進めてまいります。
機械化の主なポイントとしては、スチームコンベクションオーブンの最新型への入れ替えによる調理
の自動化率アップと、最新大型冷蔵庫への入れ替えによる急な注文への対応力強化です。またこれ
ら最新機器の導入は、省エネ機器に変えることによるエネルギーコストの削減も目的としています。
③ 異物混入リスク対策 図表 15:異物検査のための
金属探知機
食品製造工程におけるリスクは食中毒等の衛生面の問題と異物
の混入です。異物混入は、衛生問題に比べると健康上の影響が小
さい場合もありますが、発生リスクはより高く、一般消費者のブランド
イメージを大きく悪化させます。製造現場においては当然5S 活動
等により対策を行ないますが、100%の防止は不可能です。当社で
は、原料開梱〜製造ライン〜出荷梱包の各段階で目視検査を行う
とともに、金属探知機を導入して機械チェックを行なっていますが、
平成 27 年に最新型機種に入れ替え予定です。
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3. 部門間情報共有の改善 飲食店がお客様である当社は、業務部の勤務時間帯と、営業部、製造部の勤務時間帯とが大きく
異なっています。業務部は 24 時間受け付けている入荷への対応と、深夜に出庫作業を行い早朝か
ら午前中にかけて各店舗に商品配送を行っています。一方営業部と製造部の勤務時間帯は一般企
業と同様の 8 時 30 から 17 時 30 分です。そのため、業務部とその他の部門の間の情報の共有(業
務連絡)が課題となっています。電話連絡するにしても相手が勤務時間外で就寝中と思われる時間も
多く、つい連絡が遅れがちになることもありました。
当社のような中小の食品卸売業が、ますます多様化する飲食店のニーズに対して木目細かく対応
していくには、各部門が一体となって業務を遂行するための情報共有は重要課題です。この改善策と
して IT の活用をはかってまいります。ただし相当数の社員が日常業務ではパソコンを必要としていな
く、なおかつコストをできるだけかけないで実現するために、クラウド型のグループウェアサービスの活
用を進めてまいります。端末としては社内パソコンのほかに、会社配布の携帯電話や個人所有のスマ
ートフォンなどを活用します。クラウド型のため社内にサーバやソフトウェアを準備する必要はありませ
ん。時間帯に関係なく、相手の業務(運転中・商談中)や生活(就寝中など)をさえぎらず、しかも確実
に情報を共有することが狙いです。お客様ごとに担当者のグループを定義して、必要な従業員だけ
に迅速確実に情報を共有できる仕組みを構築してまいります。平成 27 年中に実務での運用開始を
目指します。
図表 16:情報共有のイメージ
グループごとに、業務カレンダー、掲示板、TO DOリスト、フォルダーを共有
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Ⅴ.企業概要 社名
スター物産株式会社
事業所住所
東京都江東区新木場2−6−3
代表取締役社長
堀田 正克
設立
昭和41年2月12日
資本金
6,100 万円
従業員
27人
事業内容
業務用食品の販売
PB 食品の製造及び開発販売
所属団体
東京商工会議所江東支部
営業許可証
食料品等販売業
総菜製造業
魚介類販売業
食肉処理業
食肉販売業
(以上 城東保健所管轄)
米穀販売許可(東京食料事務所)
主な取引先
㈱ニュー・トーキョー
(敬称略)
㈱テラケン(さくら水産グループ)
東宝不動産㈱飲食事業部(丸の内ディンドン、パパイヤリーフグループ)
㈱セクションエイト(居酒屋「はなこ」グループ)
㈱ダイニング・イノベーション(やきとり屋「すみれ」グループ)
㈱ヒューマンウェブ(G&O グループ)
主な有資格者・その他
管理栄養士 1名
第一種衛生管理者 1名
生産物賠償責任保険(PL 保険)加入
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あとがき 注意事項 この知的資産経営報告書に記載しました将来の経営戦略及び事業計画ならびに付帯する事業
見込みなどは、全て現在入手可能な情報をもとに、当社の判断にて掲載しています。
そのため、将来にわたり当社を取り巻く経営環境(内部環境および外部環境)の変化によって、これらの
記載内容などを変更すべき必要が生じることもあり、その際には本報告書の内容が将来実施または
実現する内容と異なる可能性もあります。
よって、本報告書に掲載した内容や数値などを、当社が将来にわたって保証するものではない
ことを、十分にご了承願います。
問合せ先 商号
スター物産株式会社
住所
東京都江東区新木場2−6−3
電話番号
(03)3522−1591
電子メール
[email protected]
担当者名
総務部長 大崎 一実
本報告書の内容の合理性について
本報告書に掲載された内容は、スター物産株式会社の過去から現在に至る経営環境(内部環境
及び外部環境)に照らし、合理的な内容であることを認めます。
2015年 5月 1日
経済産業大臣登録 中小企業診断士
長島孝善(登録番号 402609)
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意事項 昭和 40 年代に百貨店で販売されていた揚げ餃子
スター物産のルーツは、昭和初期の堀田商店と戦後
のマツオ商店です。両社が切り開いてきた精肉卸売、
総菜製造と冷凍食品開発のパイオニア精神は、当社
の DNA に引き継がれています。両社が常にその時代
の消費者や食品事業者のニーズに応えてきたように、
スター物産はこれからも飲食店が求めるキッチンソリュ
ーションをご提供し続け、お客様とともに歩んでまいりま
す。
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