橡 特定調停QA

特定調停法 実務 Q & A
Q20 .
「特定調停法」の税制措置で、国税庁は通達運用で対処する方向へとされておりますが、具体的に教
えてください。
A20 .「 金 銭 債 務 の 調 整 の 促 進 の た め の 特 定 調 停 に 関 す る 特 別 措 置 法 」(「 特 定 調 停 法 」) は 、 多 額 の 債
務を抱えて破綻又はそのおそれのある個人や中小企業の債務免除等を“民事調停手続きの特例”と
いう位置づけで推進するもの。
同法のスキームで実施される債務免除等について、債権放棄サイドの処理は法基通 9−4−1(子会
社等を整理する場合の損失負担等)及び 9−4−2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)に
沿って判断することとなった。
多重債務者救済の切り札か?
特定調停によって放棄される債権の税務処理は制度の実効性を大きく左右する。そこで税務上の
取扱いだが、多重債務者の救済促進と言うことであれば、債権放棄が行われた場合、債権者・債務
者ともに課税されないことが「切り札」となるが、同法のスキームではこれが実現しなかった。
つまり、特定調停法にしたがって債権放棄(債務免除)が行われた場合、個々の案件毎に判断し、
同通達の適用が認められたときは、債権者側は債権放棄分を貸倒損失ではなく単純損金として損金
算入できる模様。
個々の案件判断はキメ細かく <債権者側の処理>
特別調停が行われた場合には、法基通 9−4−1、9−4−2 の通達趣旨に沿ったところで、個々の案
件判断が行われる。つまり、免除の“合理性”が要求されているのであり、中身の精査があって初
めて損金算入が可能となるのである。この点税務当局は、特別調停だから、無条件に損金算入が許
されるというスタンスを採っていないことに注意すべきだろう。
なお、9−4−1 等では債権者・債務者間で親子会社などの何らかの「関係」が必要とされているが、
この「関係」は相当広く解釈されており、債権債務関係があれば十分ということになる。取引先に
対して単に債務を抱える中小企業も「関係」を持っているということである。
原則は免除益の計上が必要 <債務者側の処理>
一方の債務者側処理だが、法人の場合、債務免除部分については原則どおり債務免除益の計上が
要求される。債務免除益自体は課税所得を形成するが、多くの債務者の場合、欠損や累積欠損があ
るのが普通だから、納税という事態になることは稀だろう。
個人の場合も課税(事業所得や一時所得の総収入金額に算入)が原則だが、資力を喪失して債務
の弁済が困難な場合には課税されない模様だ。
もちろん、案件判断に必要な当局の相談体制も特定調停申し立て件数の推移等を見ながら決定さ
れることになりそうだ。今後、特定調停の申し立てが膨大になれば、当局の相談体制もよりキメ細
かくなることが予想されるので要注意だ。
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