カキ殻の水質底質改善効果の検討

カキ殻の水質底質改善効果の検討
四蔵研究室 大門昌平・田辺意期
1. はじめに
京都府宮津市、与謝郡与謝野町に日本三景のひとつ、天橋立がある。阿蘇海は、天橋立によ
って日本海の宮津湾と仕切られてできた内海で、典型的な閉鎖性水域である。この地形の問題として有機汚泥の堆
積と富栄養化が挙げられる。窒素化合物やリンの増加による富栄養化は、生態系への悪影響、有機汚泥の発生、水
質汚濁や悪臭発生の原因となっている。このような背景から、近年阿蘇海の水質改善が強く求められている。本研
究は、本来産業廃棄物となる「カキ殻」の持つ汚濁吸着能力に着目し、阿蘇海の水質改善剤としての適用性を検討
することを目的としている。
2. 研究方法
本研究は以下の 3 系列の実験からなる。
1) カキ殻からの汚濁成分溶出評価試験
焼成カキ殻、
非焼成カキ殻 1g、
3g、5g、7g、10g、20g を蒸留水 300ml に添加し 20℃で 24 時間反応後、
COD、T-N、T-P の溶出量を調べる。図 1 は実験装置の写真である。
2) 汚濁成分除去能力に及ぼすカキ殻添加量評価試験
人口廃水(①グル
コース(COD)50ppm、②硝酸カリウム(T-N)5ppm、③リン酸二水素カリ
図 1 実験装置
ウム(T-P)5ppm の各水溶液)300ml に焼成カキ殻、非焼成カキ殻 1g、3g、
5g、7g、10g、20g を添加し、20℃で 24 時間反応後の残存濃度を分析する。
3) 焼成カキ殻の汚濁成分除去評価試験
焼成カキ殻の添加量を 1g に設定し、硝酸カリウム(T-N)水溶液、リン
酸二水素カリウム(T-P)水溶液の濃度を変化させ、汚濁成分除去能力を測定する。
3. 結果
3.1 カキ殻からの汚濁成分溶出評価試験
カキ殻 1g 当たりの
汚濁成分の溶出量を表 1 に示す。乾燥カキ殻からは汚濁成分の溶出は認
められたが、焼成カキ殻からはほとんど認められなかった。
3.2 汚濁成分除去能力に及ぼすカキ殻添加量評価試験
試料名
カキ殻1g当たりの汚濁成分溶出量(mg/g)
COD
T-P
T-N
乾燥カキ殻
0.73
0.04
0.08
焼成カキ殻
0.03
0.00
0.01
表 1 汚濁成分溶出量
結果を図 2∼4 に示す。図中に示す直線は各成分の初期濃度である。乾燥カキ殻には T-P の除去効果がある
が、COD、T-N の除去効果は無かった。焼成カキ殻には T-P、COD の除去効果があった。特に、T-P に関し
ては高い除去効果が確認できた。T-N に関しては、この実験では、除去効果は確認できなかった。
図 2 COD 成分
3.3 焼成カキ殻の汚濁成分除去評価試験
図 3 T-P 成分
図 4 T-N 成分
焼成カキ殻 1g 当たりの T-P の最大除去量は 848(mg/g)、T-N の
最大除去量は 40(mg/g)であった。
4. おわりに
本研究ではカキ殻の基本性能の評価を行い、以下の点を明らかにした。1)焼成カキ殻は T-P、
COD の除去効果がある、2)特に T-P に関しては、高い除去効果がある、3)T-N に関しては、ほとんど除去効果は
無い、4)乾燥カキ殻はわずかに T-P の除去効果があるが、COD、T-N の除去効果は無い。今後は阿蘇海の底泥を
用いて汚濁成分の除去能力の評価を行う予定である