Vol.26 No.1 (2016年3月 発行)

静岡済生会総合病院医学雑誌
Journal of Shizuoka Saiseikai General Hospital
Vol.26 No.1
2016 年 3 月 発行
社会福祉法人
恩賜
財団
済生会支部
静岡県済生会
静岡済生会総合病院
目
次
ページ
【研究】
当院における B 型肝炎再活性化に対する取り組みと今後の課題
4
静岡済生会総合病院 化学療法委員会
山中義裕、横山正人、佐竹路子、野竹秀幸、朝日恵美
日比知志、竹内隆浩、田村圭浩、岡本好史
当院におけるシクロホスファミドのばく露状況について
静岡済生会総合病院
10
化学療法委員会
横山 正人、朝日 恵美、山中 義裕
【発展研究】
臓器提供に関する当院職員の意識調査と今後の課題
15
静岡済生会総合病院 院内移植コーディネーター
上田理恵子、田村朋哉、池谷至乃部、岩崎圭介
当院でのメンタル健康診断結果報告と今後の課題について
静岡済生会総合病院
19
安全衛生委員会
横山 美紀、安藤 恵、榛葉 俊一
【第 14 回
院内研究発表会
抄録】
研究発展部門
外来透析者の QOL 傾向分析
安倍 里佳 (透析室)
27
ブータンにおける新生児蘇生法普及支援の試み
杉浦 崇浩 (小児科(新生児科)
)
29
一般発表部門
看護部内における5Sプロジェクトの活動報告 パソコン情報と物品の整理・整頓
川口 光代 (看護部)
30
リハビリテーション科における緊急時対応訓練の成果
~平成 24 年度と 25 年度を比較して~
兵永 志乃 (リハビリテーション科)
-1-
32
患者ケースカンファレンスの実施率向上における取り組み
大橋 勇美 (西 3 階病棟)
33
薬剤科ハイリスク薬剤対応チームの活動報告
佐竹 路子 (薬剤科)
34
クリニカルパス委員会の活動と取り組み
平野 恵美 (クリニカルパス委員会)
35
看護部パリケモ委員会口腔ケアグループ活動報告 ~口腔ケア充実に向けての取り組み~
中村
亜由美
(パリケモ委員会
口腔ケアグループ)
37
Panitumumab 投与に伴う低マグネシウム血症に対し、市販薬のサプリメント“カイホー・マグ
ネシウムプラス”が有用であったと考えられた 1 例
鈴村 潔 (外科)
38
当院で在宅血液透析を導入し維持管理することができた一事例
齋藤 李香 (透析室)
39
高齢透析導入患者に対しての食事療法介入とその後の経過報告
鈴木 美穂 (透析室)
40
長期安静臥床を強いられた妊婦との関わり方について振り返る
望月 菜摘 (周産期センター)
41
整形短期貸し出し器械の紛失に対する対策
塩沢 祥子 (手術センター トトロチーム)
42
スタッフ間のコミュニケーション向上を目指して
青島 優子 (手術センター)
43
乳房再建エキスパンダーを挿入した患者への退院指導の現状調査
朝日 恵美 (看護部外来)
44
手術室における曝露予防行動の実態調査と今後の課題
久保田 淳平 (手術センター)
-2-
45
「抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)曝露防止マニュアル」の読み合わせの効果
~毎年行っている曝露予防行動調査からみえてきたこと~
久保寺 晋士(パリケモ委員会 化学療法グループ)
46
「臨死期におけるケアの手引き」の作成を目指して
石野 裕子(パリケモ委員会 看取りケアグループ)
47
ストーマ近接部に生じた粘膜侵入に対する処置の検討
~CO2 レーザー焼灼術と副腎皮質ステロイドホルモン剤外用との比較~
河合 幸 (看護部 認定看護師室)
48
手術体位の除圧方法の統一に向けた試み
小杉 淳子 (手術センター)
49
オムツ皮膚炎に対する予防的スキンケアの検討
~リモイス® バリアとプロペト® の効果の比較~
髙橋 歩 (NICU 病棟)
50
病棟で化学療法・放射線治療を受ける患者へのセルフケア指導について
中村 弥生 (パリケモ委員会 口腔ケアグループ)
51
針穿刺吸引細胞診の概要(乳腺・甲状腺を中心に)
滝浪 雅之 (病理診断科)
52
外来化学療法患者の食事に関連する需要調査と支援ツールの作成
内田 理恵 (臨床栄養科)
53
【投稿規定】
静岡済生会医学雑誌の投稿規定
55
【編集後記】
59
-3-
静岡済生会総合病院医学雑誌 26(1): 4-9, 2016
<研究>
当院における B 型肝炎再活性化に対する取り組みと今後の課題
静岡済生会総合病院 化学療法委員会
山中義裕
*1
横山正人*1 佐竹路子*1 野竹秀幸*1 朝日恵美*2、
日比知志*3 竹内隆浩*4 田村圭浩*5 岡本好史*6
*
1:薬剤科 薬剤師、*2:外来看護室 看護師、
3:消化器内科 医師、*4:血液内科 医師、*5:産婦人科 医師、*6:外科 医師
*
キーワード:B 型肝炎、化学療法、HBV 再活性化、HBV-DNA、B 型肝炎対策ガイドライン
【抄録】
B 型肝炎ウイルスを保有する患者に化学療法を施行する場合、その再活性化に注意が必要で
ある。2013 年、日本肝臓学会による「免疫抑制・化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイ
ドライン(改訂版)
」の公表を受け、当院でも化学療法委員会において、B 型肝炎再活性化に
関する対応マニュアルを作成した。本稿では、その対応策を紹介するとともに、マニュアル施
行前後での各検査項目の測定率などの調査から、明らかとなった現状および今後の課題につい
て報告する。
1. はじめに
近年の化学療法・免疫療法の進歩に伴い、B 型肝炎ウイルス(以下、HBV)キャリアのみで
なく、臨床的治癒と考えられていた既往感染例でも HBV 再活性化が多数報告されている。
既往感染例においては、化学療法、特にリツキシマブとステロイドを投与した場合、高率に
HBV 再活性化による急性肝炎(de novo B 型肝炎)を発症し、それは通常の急性 B 型肝炎よ
り劇症化の頻度が高く、死亡率も高いとされている 1)。最近では、血液内科領域だけでなく、
固形がんや関節リウマチなどにおいても化学療法による再活性化が報告
2)3)されており、対策
が急務となっている。
本邦では、2009 年に厚生労働省が「免疫抑制・化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイ
ドライン」を作成し、2013 年に日本肝臓学会よりその改訂版が公表された。本ガイドライン
によれば、免疫抑制・化学療法を施行する前に、全例 HBs 抗原測定を実施し、陽性の場合に
は核酸アナログの投与を開始するとされている。一方、陰性の場合、HBs 抗体・HBc 抗体検
査を実施し、いずれかが陽性の場合には HBV-DNA 量を 1-3 か月毎に測定し
検出感度以上となった時点で核酸アナログを投与し肝炎発症を未然に防ぐという予防指針が
示されている 4)。
-4-
この公表を受け、当院化学療法委員会において、治療開始前の HBs 抗原・HBs 抗体・HBc
抗体(以下、3 検査項目)測定及び抗原抗体陽性例における HBV-DNA 量測定に関する対応マ
ニュアル(以下、マニュアル)の作成・通達を行い、2013 年 10 月から運用を開始した。
今回、マニュアル施行前後の各検査項目測定率を後方視的に調査するとともに、明らかと
なった課題について報告する。
2. 対応マニュアルの作成・周知
化学療法委員会にて協議し、以下の 6 項目を主な対応策とした。
これらを組み込んだマニュアル(フローチャート)を作成し(図 1)
、院内全体への連絡や院
内イントラへの掲載などを行い、全職員へ周知した。
1) HBc 抗体検査について
院内測定へ変更し、迅速な結果反映を可能にした。
2) 検査セット「化療時 HBV スクリーニング」の作成
HBs 抗原・HBs 抗体・HBc 抗体をセット化し、ワンクリックでのオーダを可能にした。
3) HBs 抗体検査について
cut off 値を 2.09IU/ml に設定した検査項目「HBs 抗体(既往)」を新たに追加した。
4) HBV-DNA 定量について
外注となるため、タイムラグによる結果確認の見落としが懸念された。その防止策とし
て、検査セット「HBV-DNA モニタリング」を作成し、こちらからオーダした場合には、
結果陽性時に検査科から医師へ連絡がいくようにした。
5) 消化器内科受診の取り決め
①HBs 抗原が陽性の場合、②HBs 抗原が陰性かつ HBs 抗体 and/or HBc 抗体が陽性で、
HBV-DNA 定量が検出感度以上の場合 には、消化器内科へ受診する運用とした。
6) 化学療法同意書への明記
HBV 再活性化を防ぐ目的で、各種検査を実施する旨を明記した(図 2)
。
3. 薬剤科の取り組み
薬剤科では、化学療法およびリウマチ生物学的製剤を施行する患者全例に対し、治療開始前
に薬剤指導を実施している。マニュアル施行後、この薬剤指導の機会を利用して、3 検査項目
や HBV-DNA 量のオーダまたは測定がされているかチェックするようにした。
-5-
図1
図2
当院における B 型肝炎再活性化に関するマニュアル(フローチャート)
HBV 再活性化予防に各種検査を実施すると明記した化学療法同意書
-6-
4. 方法
2013 年 4 月から 2014 年 10 月までの期間(マニュアル施行前;2013 年 4 月から同年 9 月、
施行後;2013 年 10 月から 2014 年 10 月)に、全ての殺細胞性抗がん剤(内服薬を含む)
、一
部の分子標的治療薬(リツキシマブ、ボルテゾミブ、エベロリムス、テムシロリムス、モガム
リズマブ)
、リウマチ生物学的製剤のいずれかが初めて投与された患者 219 名を対象とした。
対象者カルテより、3 検査項目測定及び HBV-DNA 量測定の実施有無と検査結果を調査し、測
定率および陽性率を算出した。また、薬剤科からの測定依頼件数についても調査した。
なお、本研究は、当院化学療法委員会の承認のもとに実施した。
5. 結果
今回の調査結果を以下に示す。
なお、対象期間において、HBV 再活性化が疑われた症例はなかった。
1) 3 検査項目の測定状況
マニュアル施行前後での測定率は、HBs 抗原が 93.0%から 99.2%、HBs 抗体が 48.8%から
83.5%、HBc 抗体が 39.5%から 81.2%といずれも上昇した(表 1、図 3)
。しかし、この中
には治療開始後に測定された症例も存在した(表 1)
。
2) 3 検査項目の陽性率
全期間を通しての陽性率は HBs 抗原が 0.9%(2 名/212 名)
、HBs 抗体が 15.0%(23 名/153
名)
、HBc 抗体が 16.2%(23 名/142 名)であった。HBs 抗原陽性の 2 例については、消化
器内科によるフォローが実施されていた。
3) HBV-DNA 量測定状況
HBs 抗原が陽性の場合、および HBs 抗原が陰性かつ HBs 抗体 and/or HBc 抗体が陽性の
場合には HBV-DNA 量の測定が推奨される。
3 検査項目全てが測定された症例のうち、該当者数は 29 名であった。このうち HBV-DNA
量が測定されたのは、マニュアル施行前は 0 名(0%)、施行後は 16 名(66.7%)であった。
さらに、1-3 ヶ月毎の定期測定が実施されたのは、5 名(31.3%)のみであった。
4) 薬剤科からの測定依頼件数
薬剤科からの測定依頼件数は、延べ 29 件であった。このうち、受け入れ率は 28 件(96.6%)
であった。
全測定数
(全測定数/対象患者数)
治療開始後測定数
(治療開始後測定数/全測定数)
表1
全体(n=219)
マニュアル施行前(n=86)
マニュアル施行後(n=133)
HBs抗原 HBs抗体 HBc抗体
HBs抗原 HBs抗体 HBc抗体
80
42
34
132
111
108
93.0%
48.8%
39.5%
99.2%
83.5%
81.2%
9
18
21
6
14
14
11.3%
42.9%
61.8%
4.5%
マニュアル施行前後における 3 検査項目の測定率
-7-
12.6%
13.0%
100%
90%
80%
70%
60%
測
定 50%
率
40%
30%
マニュアル施行
20%
10%
0%
10月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
図3
3月
HBs抗原
測定率
2月
1月
12月
11月
10月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
2013年
2014年
HBs抗体
測定率
HBc抗体
測定率
2013 年 4 月~2014 年 10 月における 3 検査項目測定率の推移
6. 考察
マニュアル施行後、3 検査項目の測定率はいずれも上昇していた。これは、マニュアルを周
知するための院内通達や、治療開始前の薬剤科のチェックが寄与していると示唆された。しか
し、その中には治療開始後に測定されている症例も少なからず存在した。化学療法開始後に測
定した場合、抗体価が低下することが考えられるため、可能な限り治療前に測定するよう、さ
らなる周知が必要であると思われた。なお、3 検査項目の陽性率については、既存の報告とほ
ぼ同様であった 5)。
一方、HBV 既往感染例においては、HBV-DNA 量の定期的なモニタリングが必須とされて
いるが、その実施率は低いことが明らかとなった。一要因として、対象薬剤における薬剤科の
介入は、外来患者の場合には治療導入時及び変更時に限定されており、継続介入ができていな
いことが挙げられた。そのため、今後は電子カルテシステムによるチェック機構の確立などを
講じる必要があると考えられた。
最後に、HBV 再活性化による肝炎は重症化しやすいだけでなく、肝炎の発症により原疾患
の治療を困難にさせるため、発症そのものを阻止することが重要である。今後も分子標的薬を
中心に新規薬剤が続々と開発・上市される予定のため、種々の領域にてより一層の留意が必要
である。また、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(ティーエスワン○R )の
添付文書には、最近になって HBV 再活性化についての注意喚起の旨が記載された。このよう
に既存の薬剤における報告にも注視していくことが求められる。以上を踏まえ、引き続き医
師・看護師・薬剤師などがチームとしてこの問題に取り組んでいきたい。
-8-
7. 文献
1) Kusumoto S, et al: Reactivation of hepatitis B virus following systemic chemotherapy
for malignant lymphoma. Int J Hematol 90:13-23, 2009.
2) Yeo W, et al: Hepatitis B reactivation in patients with hepatocellular carcinoma
undergoing systemic chemotherapy. Ann Oncol 15:1661-6, 2004.
3) Gwak GY, et al: Fatal hepatic failure associated with hepatitis B virus reactivation in
a hepatitis B surface antigen-negative patient with rheumatoid arthritis receiving low
dose methotrexate. Clin Exp Rheumatol 25:888-9, 2007.
4) 井戸章雄, 熊谷公太郎, 坪内博仁: 本邦における B 型肝炎再活性化ガイドライン. 最新医
学 68: 355-9, 2013.
5) 職域集団における肝炎ウイルス感染状況および検査普及状況. 平成 24 年度厚生労働科学
研究費補助金肝炎等克服緊急対策研究事業 肝炎ウイルス感染状況・長期経過と予後調査
及び治療導入対策に関する研究 研究報告書, 2013.
-9-
静岡済生会総合病院医学雑誌 26(1): 10-14, 2016
<研究>
当院におけるシクロホスファミドのばく露状況について
横山 正人*1 朝日 恵美*2 山中 義裕*1
*1
薬剤科 薬剤師、*2 外来看護師室 看護師
キーワード:抗がん剤、ばく露対策、シクロホスファミド、サンプリングシート法
抄録
2014 年 5 月に厚生労働省から、
抗がん剤に対するばく露防止対策について通知が出された。
当院では薬剤科、看護部とも調製~投与の各段階にて抗がん剤ばく露防止に取り組んできたが、
これまでばく露状況を数値として可視化したことがなかった。そこで今回、ばく露状況の把握
と原因解明を図ることを目的に、シクロホスファミドの残留用調査を実施した。その結果、薬
剤師が抗がん剤調製時に使用していた手袋からシクロホスファミドが検出された。サンプル数
が限られており原因の解明までには至らなかったが、今後もばく露防止に向けた取り組みを継
続するとともに、薬剤科での抗がん剤プライミングや経口抗がん剤の取り扱いなど、新たなば
く露防止策にも積極的に取り組んで行く必要性があると考える。
Ⅰ.はじめに
1987 年、WHO の外部組織である IARC(International Agency for Research on Cancer)
より、ヒトに対する発がん性が認められた物質の危険度リスト 1)が発表された。そのリストで
は、アスベスト、喫煙、肝炎ウイルスの慢性感染などと並んで、シクロホスファミド、メルフ
ァラン、エトポシド等の抗がん剤も明記されている。このように抗がん剤には制がん作用があ
る反面、正常細胞に対する毒性、変異原性、発がん性を有するものも多い。さらには、抗がん
剤を取り扱う医療従事者の尿中からシクロホスファミドが検出されたという報告 2)もあり、患
者以外の家族、病院職員の抗がん剤ばく露防止対策が重要視されるようになってきた。こうし
た現状を背景に、2014 年 5 月、厚生労働省労働基準局安全衛生部より、医療現場で取り扱わ
れる抗がん剤等の化学物質を取り扱う際の労働者に対するばく露防止対策についての通知 3)が
出された。以下にその通知内容を示す。
- 10 -
1.調製時の吸入ばく露防止対策のために、安全キャビネットを設置
2.取扱い時のばく露防止のために、閉鎖式接続器具等(抗がん剤の漏出及び気化並びに
針刺しの防止を目的とした器具)を活用
3.取扱い時におけるガウンテクニック(呼吸用保護具、保護衣、保護キャップ、保護メガネ、
保護手袋等の着用)を徹底
4.取扱いに係る作業手順(調剤、投与、廃棄等におけるばく露防止対策を考慮した具体的な
作業方法)を策定し、関係者へ周知徹底
5.取扱い時に吸入ばく露、針刺し、経皮ばく露した際の対処方法を策定し、関係者へ周知徹底
当院では抗がん剤の調製は薬剤科にて薬剤師が行っているが、その際には抗がん剤によるば
く露防止および清潔環境維持を目的に、ディスポーザブルの薬剤不透過性・背開き型ガウンを
着た上で、2 重にしたニトリル性手袋、マスク、キャップを装着し(写真 1)、さらにクラスⅡタ
イプ A2 の安全キャビネット内にて陰圧操作による調製を行っている(写真 2)
。また、常温で
の揮発の可能性が示唆されている抗がん剤であるシクロホスファミド(エンドキサン®)
、イホ
スファミド(イホマイド®)、ベンダムスチン(トレアキシン®)うち、シクロホスファミド及
びイホスファミドの調製時には、日本 BD 社の BD ファシール
TM 閉鎖式薬物移送システムを
使用することでばく露のリスク低減に努めている。抗がん剤の投与を行う看護師も、手袋、マ
スク、ビニールエプロン、ゴーグルを装着し、シクロホスファミド、イホスファミドを取り扱
う際にはアームカバーを使用するなど、薬剤投与時のばく露対策に取り組んでいる(写真 3)。
写真 1 抗がん剤調製時の薬剤師装備
写真2
安全キャビネット内での
抗がん剤調製の様子
- 11 -
写真 3 抗がん剤投与時の看護師装備
これら調製時のばく露対策も含めた作業手順は、薬剤科では日本薬剤師会監修「抗悪性腫瘍剤
の院内取扱い指針
抗がん薬調製マニュアル」4)に準じて行っているほか、看護部では独自の
マニュアルとして整備されている。しかし実際にこれらのばく露対策の効果を可視化して検討
したことはなかった。そこで今回、薬剤科及び外来化学療法室を対象に、抗がん剤によるばく
露状況を明らかにし、その原因の検討を行うことを目的に調査を実施した。
Ⅱ.方法
2014 年 10 月 28 日から 11 月 7 日の 11 日間を調査期間とし、その間の職場環境中抗がん剤
濃度を測定した。測定対象物質は、IARC「ヒトに対する発がん性が認められた物質の危険度
リスト」において発がん性が認められており、常温で揮発の可能性があることからばく露のリ
スクが高いと考えられるシクロホスファミドとした。試料の採取には下記に示す 3 方法を用い、
クール便にてシオノギ分析センターに郵送し分析・測定を依頼した。
1)サンプリングシート法
2014 年 10 月 28 日から 11 月 7 日の 11 日間、抗がん剤を吸着するサンプリングシートを対
象箇所(表 1)に貼付し、最終日に剥ぎ取った。
表1
サンプリングシート貼付状況
貼付箇所
シートサイズ
薬剤科ミキシングルーム内パソコン用マウス
10cm×10cm
抗がん剤搬送用トレイ
25cm×25cm
外来化学療法室抗がん剤受け渡し作業台
25cm×25cm
抗がん剤投与点滴スタンド下の床面
25cm×25cm
貼付期間
2014 年 10 月 28 日
~11 月 7 日
2014 年 10 月 28 日
~11 月 6 日
2)拭き取り法
11 月 7 日の抗がん剤調製終了後、エタノールで湿らせた脱脂綿および乾いた脱脂綿で調製
担当薬剤師のシューズ裏面を拭き取り回収した。
- 12 -
3)抽出法
11 月 6 日の抗がん剤調製および抗がん剤投与の際に使用した手袋を回収した。
Ⅲ.結果
調査期間中のシクロホスファミド調製件数は 5 件(8 バイアル)であり、そのうち 1 件が外
来化学療法室で患者に投与された。サンプリングシート法および拭き取り法による調査では、
いずれの試料からもシクロホスファミドは検出されなかった(表 2、表 3)
。抽出法では抗がん
剤の調製を担当した薬剤師の手袋から 0.469ng のシクロホスファミドが検出された(表 4)
。
表2
サンプリングシート法によるシクロホスファミド残留量解析結果
貼付箇所
シクロホスファミド残留量
薬剤科ミキシングルーム内パソコン用マウス
ND
抗がん剤搬送用トレイ
ND
外来化学療法室抗がん剤受け渡し作業台
ND
抗がん剤投与点滴スタンド下の床面
ND
ND:検出限界以下
検出限界
・10cm×10cm:0.2ng
・25cm×25cm:1ng
表3
拭き取り法によるシクロホスファミド残留量解析結果
サンプル
シクロホスファミド残留量
調製担当薬剤師シューズ裏面
ND:検出限界以下
検出限界:0.2ng
表4
ND
抽出法によるシクロホスファミド残留量解析結果
サンプル
シクロホスファミド残留量
0.469ng
調製担当薬剤師手袋
ND
患者担当薬剤看護師手袋
ND:検出限界以下
検出限界:0.4ng
Ⅳ.考察
今回の調査では調製担当薬剤師が使用していた手袋以外からはシクロホスファミドは検出
されず、当院における抗がん剤ばく露防止対策が有効に機能していることが示唆された。特に
外来化学療法室については、先行研究においても抗がん剤ばく露防止の意識が高く、防護具の
遵守率も高いことが明らかになっており、マニュアルに準じた適切な防護の徹底が実施されて
いることを裏付ける結果と言える。ただし、当初投与期間中のシクロホスファミドの調製は 7
件(10 バイアル)予定されていたが、検査データ不良等の理由により 2 件(2 バイアル)が
- 13 -
中止となってしまった。多くの試料からのシクロホスファミド検出がなかったのは、調製件
数・投与件数が少なかったことも一因であると考えられる。
ごく微量とは言え調製者手袋からシクロホスファミドが検出されたことは調製終了後の薬品
の搬送や患者への投与などの過程にまでばく露が拡散するきっかけとなる可能性があり無視
できない。シクロホスファミドの調製時には閉鎖式薬物移送システムを使用しており、これに
より調製者のばく露は防止できるはずであった。それにも関わらずシクロホスファミドが検出
された理由として、閉鎖式薬物移送システムを用いた調製手技に不備があった、工場での薬物
充填過程で既に調製前の未使用バイアル表面にシクロホスファミドが付着していたなどの原
因が推測される。また、閉鎖式薬物移送システムの影響が及ばないシリンジプランジャー部分
からの抗がん剤ばく露を示唆する報告 5)もあり、今回もその可能性が否定できない。未使用バ
イアルを洗浄してから調製を開始する施設もあるが、洗浄機の購入には高額な設備投資が必要
で有り現状では現実的ではない。バイアル表面や調製に使用したシリンジは汚染されていると
いう共通認識のもと、抗がん剤の事前準備や搬送時の取り扱うことが重要である。また、現在
抗がん剤ルートへのプライミングは看護師が実施しており、点滴ボトルへのびん針挿入やルー
トへの接続時の液漏れやエアロゾルの噴出によるばく露の危険が伴っている。経口抗がん剤に
ついても当院では明確な指針がないため、これらの取り扱いも含めた対策を今後検討していく
必要があると考える。
Ⅴ.参考文献
1)AGENTS CLASSIFIED BY THE IARC MONOGRAPHS, International Agency for
Research ob Cancer, http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/index.php
2)Flack K, Gröhon P, Sorsa M, Vainio H, Heinonen E,Holsti LR(1979) Mutagenicity in
urine of nurses handling cytostatic drugs. Lancet 9: 1250-1251
3)厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知: 発がん性等を有する化学物質を
含有する抗がん剤等に関するばく露防止対策について, 平成 26 年 5 月 29 日, 2014
4)日本病院薬剤師会監修. 抗悪性腫瘍剤の院内取り扱い指針 抗がん薬調製マニュアル第 3 版,
東京, じほう, 2014
5)栗原幸司ら. シクロホスファミド調製時におけるシリンジプランジャー汚染の調査, 2015
(第 23 回クリニカルファーマシーシンポジウムポスター発表)
- 14 -
静岡済生会総合病院医学雑誌 26(1): 15-18, 2016
<発展研究>
臓器提供に関する当院職員の意識調査と今後の課題
静岡済生会総合病院 院内移植コーディネーター
上田理恵子*1 田村朋哉*1
*
1:西 3 階病棟看護師
池谷至乃部*2 岩崎圭介*2
*
2:地域医療・医療相談室 MSW
キーワード:院内移植コーディネーター 臓器提供
HAS 意思表示 院内体制整備
【抄録】
静岡済生会総合病院の院内移植コーディネーターチームは、『臓器提供』の意思表示があっ
た場合の院内体制を整えることを目的に当院全職員の意識調査を実施した。調査は厚生労働省
研究班「臓器移植の社会的基盤の整備」(篠崎尚史主任研究者)における職員意識調査票
(Hospital Attitude Survey:HAS)を使用した。その結果、当院の現状では、
「移植のため
の臓器を提供」については賛成が多数であるものの、「脳死やその判定の妥当性」「脳死下臓
器移植のシステム」や「臓器提供の家族悲嘆軽減」については「わからない」という回答が多
く臓器移植に関する知識不足が考えられたが、その一方で研修会などの要望も高く啓発活動の
重要性が示された。
【はじめに】
当院は、救命救急センターを有する急性期病院であると同時に静岡県が指定した臓器移植推
進協力病院でもある。当院では 2001 年~2012 年まで、7例の心臓死後の臓器提供が実施され
たが、2012 年以降臓器提供が行われていないことより、臓器提供の経験者は少ない。また、電
子カルテ内『臓器提供意思表示』欄は活用されておらず、患者の意思確認ができにくい環境下
でもある。今回、私たちは院内移植コーディネーターチームとして、『臓器提供』の意思表示
があった場合にスムーズな対応が可能な院内体制を整えることを目的に意識調査を実施した。
本調査研究の内容は、
静岡済生会総合病院倫理委員会で承認されている
(2014 年 3 月 24 日付)。
【調査対象・方法】
全職員(1007 名) 有効回収率 88% 調査時期 2014 年 5 月
調査は厚生労働省研究班「臓器移植の社会的基盤の整備」(篠崎尚史主任研究者)における
職員意識調査票(Hospital
Attitude Survey:HAS)を使用した。1)
- 15 -
【結果】
移植のために臓器を提供することには全職員の 73%が賛成(図 1)した。自身の臓器提供に
関しては 43.3% が臓器提供をしたいと回答し(図 2)、ご家族との話し合いは 31.2%が行って
いた。(図 3)
脳死を人の死とすることに関して、49.8%がわからないと回答(図 4)し、その理由に、40%
が脳死に関する知識不足をあげた。(図 5)
また、臓器提供が家族の悲嘆を和らげることについては、「わからない」という回答(図 6)
が多かった。そして当院の脳死下臓器移植のシステムについては、約 80%が「わからない」と
いう回答であった。(図 7)
【考察】
2012 年 HAS 調査(看護師:96 名)と比較しても、概ね「脳死による臓器移植」について肯定
的な考えを持っていることが分かった。しかし、「脳死による臓器移植」の実態は十分理解で
きおらず、脳死や臓器移植に関する能力知識や経験の不足が影響していると考えられた。しか
し、学びたいというニーズは大きく、院内環境調整に加え啓発活動が重要である。
【結論】
今回の意識調査から明らかになった課題を踏まえ、今後当院における臓器移植医療の方向づ
けを検討することが必要である。貴重な『臓器提供』の意思表示があった場合の遅滞なく対応
する院内体制を整えるためには、患者の意思確認ができるシステム(環境)整備、知識の習得
のための研修会の定期的開催、実践を意識したシミュレーション研修の開催が必要である。
【資料】
HAS 結果
1 回目:2012 年 脳死下臓器提供を経験した看護師 96 名対象
2 回目:2014 年 全職員対象 1007 枚配布 886 枚回収(回収率 88%)
医師
看護師
1回目
2回目
1回目
賛成
2回目
反対
1回目
その他
総計
わからない
2回目
1回目
2回目
0%
図1
20%
40%
60%
80%
100%
移植のために臓器/組織提供をすることについてどう思うか
- 16 -
1回目
医師
2回目
1回目
看護師
はい
2回目
いいえ
1回目
その他
わからない
2回目
1回目
総計
2回目
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図 2 ご自身が死亡した後、臓器/組織を提供したいか
1回目
医師
2回目
看護師
1回目
2回目
ある
ない
1回目
その他
2回目
1回目
総計
2回目
0%
図3
20%
40%
60%
80%
100%
ご自身の死亡後の臓器/組織提供についての考えを、家族に話したことがあるか
医師
看護師
1回目
2回目
1回目
思う
2回目
思わない
1回目
その他
総計
わからない
2回目
1回目
2回目
0%
20%
40%
60%
80%
図 4 脳死は、死の妥当な判定方法である
- 17 -
100%
医師
看護師
1回目
2回目
1回目
思う
2回目
思わない
1回目
その他
総計
わからない
2回目
1回目
2回目
0%
図5
医師
看護師
20%
40%
60%
80%
100%
臓器提供は、家族の悲しみを癒す助けになると思うか
1回目
2回目
1回目
思う
2回目
思わない
1回目
その他
総計
わからない
2回目
1回目
2回目
0%
図6
1 回目
2 回目
20%
40%
80%
100%
自分の病院は、臓器提供ではうまく機能している
ド ナーの特定
ド ナーの臨床的な管理
院 内 臓器提供プロセスの調整
家 族 の悲しみのカウンセリング
脳死
臓 器 の同意を得る
意 思 決定における家族の問題
コ ミュニケーションスキル
その 他
受けた
ド ナーの特定
ド ナーの臨床的な管理
院 内 臓器提供プロセスの調整
家 族 の悲しみのカウンセリング
脳死
臓 器 の同意を得る
意 思 決定における家族の問題
コ ミュニケーションスキル
その 他
0%
図7
60%
受けたい
20%
40%
60%
80%
100%
次のような点について、研修を受けたことがありますか、また受けたいと思いますか
【文献】
1. 大島伸一:臓器移植の社会的基盤に向けての研究 平成 15・16 年度総合研究報告書 2005
- 18 -
静岡済生会総合病院医学雑誌 26(1): 19-24, 2016
<発展研究>
当院でのメンタル健康診断結果報告と今後の課題について
横山 美紀*1,安藤 恵*1,榛葉 俊一*2
1 地域医療センター 臨床心理士
*
2 精神科 医師
*
Key Words:メンタルヘルス 職場環境改善 ストレス要因
抄録
静岡済生会病院の安全衛生委員会では,2011 年~2014 年の 4 年間にわたり全職員を対象に
質問紙によるメンタル健康診断を実施している。本稿では、過去 4 年間の結果推移や質問紙に
記載されたコメント、ハイスコア部署の管理者とのインタビュー内容について報告している。
またそこから得られた現状とその課題について分析したところ、早急な対応を必要とする職員
への迅速な介入に加え、部署の特性に応じたフォロー、そして職場全体で取り組むべき問題を
整理しそれに取り組む等、多面的な対応が大切であると考えられた。さらに、改めて相談方法
を周知し、気軽に相談しやすい環境を作ることやメンタルヘルスの認識を高める研修会などを
実施することも検討課題としてあげられた。
Ⅰ はじめに
職場のメンタルヘルスは現代社会の課題であり、ストレスや精神疾患による休退職が問題と
なっている。精神障害の労災認定件数は 2011 年が 325 件、2012 年が 475 件、2013 年が 436
件と急増しており、業種としては製造業が 27.1%と最も多く、医療福祉は 15.5%となってい
る(厚生労働省、2001)
。労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することは、労働者の健
康の保持・増進、事業場における安全・生産性の確保の観点から労使双方にとって優先順位の
高い課題となっている(川上・島津・土屋、2008)
。厚生労働省は 2014 年 6 月 19 日に労働安
全衛生法を改正し、2015 年 12 月から年に 1 度のストレスチェックを義務づけた。当院ではそ
うした国の取り組みに先立ち、過去 4 年間、質問紙によるメンタル健康診断を行っている。
(2011 年 10 月対象 846 名、回収率 86%;2012 年 10 月対象 894 名、回収率 88%;2013 年
10 月対象 881 名、回収率 87%、2014 年 10 月対象 938 名、回収率 89.3%)。本稿では、2014
年度の結果概要と過去 4 年間の結果の推移を示すとともに、質問紙の自由記載のコメント欄の
内容について報告する。さらに、昨年度の 2013 年度メンタル健康診断結果で要対応者が多い
部署の管理者へインタビューを行ったが、そこから得られた現在の問題・課題についても明ら
かにし、今後のメンタルヘルス活動のさらなる発展を目指すことを目的とする。
- 19 -
Ⅱ 方法
1.質問紙調査
(1)調査の実施
2014 年 10 月に院内で質問紙調査を実施した。質問紙の回収には、回収箱を設置し中身が
みえないよう封をした状態で提出できるよう配慮した。
(2)調査対象者
有効回答の得られた対象者は 938 名で回収率は 89.3%だった。職員には書面にて内容を
説明し同意を得ており、データは個人情報として扱った。職種別にみると、医師が 96 名、
看護師が 496 名、コメディカルが 159 名、事務職が 103 名、その他が 84 名であった。
(3)質問紙の構成 使用した質問紙は次の 3 つから構成された。
・精神健康調査票(GHQ)
:身体症状、不安・不眠、社会的活動障害、うつ状態の 4 尺度
28 項目から構成されている。回答は 4 段階評価で求めた。
・自記式抑うつ尺度(SDS)
:うつ状態全般を評価する質問紙で 20 項目から構成されて
いる。回答は 4 段階評価で求めた。
・ストレス要因調査票:職業性ストレス簡易調査票(下光、2004)の中から仕事のストレス
要因に関する尺度 17 項目を抜粋した。仕事の意義、技能の活用、適性、仕事のコントロ
ール、職場環境、対人関係、身体的負担、質的負担、量的負担について評価することがで
きる。回答は“そうだ”
(4 点)から“ちがう”(1 点)までの 4 段階評価で求めており、
得点が低いほどストレス要因になっているといえる。部署への結果のフィードバックの際に、
職員の主なストレス要因を把握するための資料として用いた。
・自由記載欄:メンタルヘルス活動全般について自由に記述してもらう欄を設けた。
(4)調査手続き
GHQ・SDS の総点、下位尺度、及び自殺念慮につながるスコアを用いて正常(Ⅰ群)、要注
意(Ⅱ群)
、要対応(Ⅲ群)の 3 段階で判定した。判定結果は書面にして回答職員全員に
封書にて返信をした。なお、要対応者には専門相談の勧めと相談方法の案内をフローチャー
トにしたものを同封した。
2.コメント記載欄の内容の検討
2014 年度質問紙のコメント記載欄に書かれた内容を「相談業務について」
「質問紙について」
「メンタルヘルス活動について」
「意見・要望」
「その他」の 6 つに分類した。また、コメント
の深刻度に応じて 2 段階の評価(+,++)をもうけて、例年のⅢ段階の健診結果とは別に評
価した。++と判定された職員には出来るだけ早く専門相談をうけるよう返信した。
3.ハイスコア部署へのインタビュー
2013 年度健診結果で要対応者(Ⅲ群)が部署の 20%を越えた部署を「ハイスコア部署」と
位置付け、臨床心理士と精神科医が管理者に結果のフィードバックとインタビューを行い問題
点を整理した。そしてその概要を当院管理職 3 役(院長、看護部長、事務部長)に報告した。
- 20 -
Ⅲ 結
果
1.測定尺度の分析
(1)要対応者の推移
2014 年度「健診スコア」が要対応となった職員について、2014 年は 154 名(14.7%)であ
った。なお、2011 年は 154 名(15.6%)
、2012 年は 132 名(12.9%)
、2013 年は 133 名(13.2%)
となっており、要対応者は初年の 2011 年よりは若干減少しているものの、ほぼ例年通りの割
合となっている(Figure 1)
。
(2)各職種における要対応者割合の推移
2012 年度~2014 年度までの各職種における要対応者の割合を算出した(Figure 2)
。2012
年度と 2013 年度は看護師の要対応者割合が最も高かったが、2014 年度は事務職が 18.4%と
最も高くなっており昨年度から急増した。医師は 3 年間とも低めの割合であるが、年度により
変動がある。コメディカルでは、2012 年度が 12.8%、2013 年度は 11.4%であったが、2014
年度は 16.4%と大きく増加している。その他の職種は調理師、看護助手、運転手、検査助手、
保育士などが含まれているが、本年度の要対応者の割合は 16.7%と過去 3 年間で最も高くなっ
ている。
(3)職場のストレス要因
ストレス要因について、病院全体とハイスコア群の結果を Figure 3 に示した。この尺度は
得点が高いほど良好で、得点が低いほどストレス要因になっているといえる。図に示されるよ
うに、病院全体とハイリスク群では同じ傾向があり「仕事の意義」や「対人関係」は良いが、
「質的負担」
「技能の活用」「量的負担」「身体的負担」にストレスを感じている人が多いとい
える。
2014年度
14.7
19.7
55.0
10.7
2013年度
13.2
22.7
51.4
12.7
要対応
要注意
2012年度
12.9
19.3
55.4
12.4
正常
未提出
2011年度
15.6
0
18.5
20
52.3
40
60
13.6
80
100
120
割合(%)
Figure 1 2011 年度から 2014 年度における結果の推移
- 21 -
20.0
18.6
17.3 17
18.0
18.4
16.7
16.4
16.0
14.0
12.8
11.4
12.0
10.0
H26
9.4
H25
7.7
8.0
6.0
13.6
12.2
15.8
14.7
H24
4.5
4.0
2.0
0.0
医師
看護師
コメディカル
事務
その他
Figure 2 各職種における要対応者の割合
仕事の意義
技能の活用
適性
仕事コントロール
職場環境
ハイスコア群
対人関係
病院全体
身体的負担
質的負担
量的負担
0.00
0.50
1.00
1.50
2.00
2.50
3.00
3.50
Figure 3 病院全体とハイスコア部署のストレス要因
2.質問紙コメント記載欄の内容の検討
質問紙のコメント記載欄に寄せられた内容を「相談業務について」
「質問紙について」
「メン
タルヘルス活動について」
「意見・要望」
「個人の悩み」「その他」の 6 つに分類した。その結
果,
「相談業務について」は院内・院外の相談機関を教えて欲しいというコメントが多く、院
内の相談の場合、相談内容が上司に伝わるのではないかという意見も寄せられた。「質問紙に
ついて」では、SDS の回答方法の改善を求める意見があり、
「メンタルヘルス活動について」
は、
『全職員への実施は有難い』というコメントがいくつか寄せられた。
「意見・要望」や「個
- 22 -
人の悩み」では、
『自分にばかり仕事負担がかせられる』『自分ばかり無視される』『復職した
ばかりで新しい環境・仕事に慣れず疲れやすい』など、具体的に職場での人間関係の問題を訴
えるコメントや業務改善を求める内容がみられた。また、メンタルヘルスやパワーハラスメン
ト関連の研修会の実施を求めるコメントもいくつかみられた。
3.ハイスコア部署の管理者とのインタビュー
2013 年度の健診結果からハイスコア部署と位置付けられたのは 50 部署中 10 部署であった。
そのうち明らかに個人が特定されてしまう部署を除いた 5 部署の管理者と面談を行った。その
際、部署の SDS・GHQ の結果概要と年代別分析を示した資料を用いた。また、ストレス要因
を全国平均と比較したものを提示しながらインタビューを行った。その結果、1)多様な職務内
容への不適応と疲労、2)他職種との関係性、3)権利意識の高い患者及び家族への対応、4)管理
者自身のフォロー、5)人材不足、6)教育方法が主にあげられた。
Ⅳ 考
察
本年度のメンタル健診の結果では、要対応者の割合はほぼ例年通りとなっているが、職種ご
とでみると事務職の要対応者率の増加がみられた。またストレス要因としては「質的負担」
「技
能の活用」
「量的負担」
「身体的負担」が主にあげられている。これより、仕事の意義を感じて
いる職員は多い一方で、仕事の量や身体的な負担は大きく人員確保や勤務時間、業務量につい
ての検討は今後も必要だといえる。また、各職員の知識・技能の向上だけでなく、それを上手
く活用できるような体制を病院全体で作り上げていくことも課題である。そのためには、管理
者のインタビューでも取り上げられた教育体制についても再度検討していく必要がある。
また、質問紙のコメント欄からは、1)要対応者個人への早急な対応、2)相談方法の周知、3)
院外資源の案内、4)パワーハラスメントの専用窓口の周知、5)メンタルヘルス関連の研修会の
実施などが課題としてあげられた。特に、院内の相談の流れについては以前より通知していた
が、いざ相談をする際どういう手続きを踏めば良いのか分からない職員が多いようだった。よ
って、本年度は相談方法や情報の取り扱い方、守秘義務について改めて回答者全員に通知をし
た。将来的には職員がいつでも相談方法を確認できるような何らかの対策が必要である。また、
研修会などについては教育センターと連携し企画・考案していくことが求められる。
ハイスコア部署の管理者とのインタビューから、部署によって職種、仕事内容、労働条件な
ど様々であり各職場の抱える問題・ニーズはそれぞれで異なる。よって、部署の特性に応じた
フォローや職場環境の改善が重要である。しかし、作業組織や労働時間、予算を要する改善な
どについては、管理者や企業トップの理解がないと改善が難しい問題もあり(吉川、2015)
、
メンタルヘルス活動としては個人へのアプローチに加えて、病院全体で取り組むべき問題を整
理することも重要である。よって、本年度はハイスコア部署の管理者の了承を得たうえで当院
管理職 3 役(院長、看護部長、事務部長)にインタビュー内容を報告し対応策の検討をお願い
した。
- 23 -
Ⅴ まとめと課題
本稿では、メンタル健診結果とともに質問紙のコメント欄に記載された職員の意見や管理者
とのインタビュー結果についても取り上げ、当院の現状や今後の課題について報告した。近年
の職場のメンタルヘルス対策は、疾病対策からより予防に視点を移したリスクマネジメントを
中心とする考え方が広がってきており、メンタルヘルスの不調を未然に防止するだけでなく、
企業の生産性にも寄与するような活動が目指されている(川上、2012)。また 2015 年 12 月よ
りストレスチェックが義務化されるにあたり、当院でのメンタル健診のあり方や現在使用して
いる質問紙・採点基準について見直しをしていく必要がある。さらに、ハイスコア部署へのイ
ンタビューはメンタルヘルス活動において有用な意見となりうるが、管理者に過度な責任感を
与えないような配慮も必要であり、結果のフィードバック方法についても今後工夫していくこ
とが求められる。
参考文献
1)川上憲人・島津明人・土屋政雄(2008)
:産業ストレスの第一次予防対策―科学的根拠の
現状とその応用 産業医学レビュー,20,175-196.
2)川上憲人(2012)
:職場のメンタルヘルスの現状と課題―わが国の課題と国際的動向の分析
公衆衛生,76,896-899.
3)厚生労働省労働基準局補償課職業病認定対策室(2001)
:脳・心臓疾患の認定基準の改正
について
4)下光輝一(2004)
:職業性ストレス簡易調査票 産業精神保健 ,12,25-36.
5)吉川徹(2015)
:職場環境改善を通じたメンタルヘルス不調の未然防止への取り組み
精神医学,57,1,15-21.
- 24 -
静岡済生会総合病院医学雑誌 26(1): 25-51, 2016
<抄録>
【第 14 回
済生会院内研究発表会
抄録】
開 催 日 : 研究・発展部門 平成 27 年 1 月 27 日(火)
一般発表部門
平成 27 年 1 月 29 日(木)、1 月 30 日(金)
会
場 : 北館地下 講堂、北館 7 階 第一会議室、カンファレンスルーム
主
催 : 教育・臨床研究委員会
【研究・発展部門】
1)外来透析者の QOL 傾向分析
安倍 里佳 (透析室)
2)当院における B 型肝炎再活性化に対する取り組みと今後の課題 *
山中 義裕 (化学療法委員会)
3)ブータンにおける新生児蘇生法普及支援の試み
杉浦 崇浩 (小児科(新生児科)
)
4)当院におけるシクロホスファミドの曝露状況について *
横山 正人 (化学療法委員会)
5)当院でのメンタル健康診断結果報告とその課題について *
~職員へのフィードバックの充実化をめざして~
横山 美紀 (安全衛生委員会)
【一般発表部門】
6)看護部内における5Sプロジェクトの活動報告 パソコン情報と物品の整理・整頓
川口 光代 (看護部)
7)リハビリテーション科における緊急時対応訓練の成果
~平成 24 年度と 25 年度を比較して~
兵永 志乃 (リハビリテーション科)
8)患者ケースカンファレンスの実施率向上における取り組み
大橋 勇美 (西 3 階病棟)
9)薬剤科ハイリスク薬剤対応チームの活動報告
佐竹 路子 (薬剤科)
10)クリニカルパス委員会の活動と取り組み
平野 恵美 (クリニカルパス委員会)
11)看護部パリケモ委員会口腔ケアグループ活動報告 ~口腔ケア充実に向けての取り組み~
中村
亜由美
(パリケモ委員会
口腔ケアグループ)
12)Panitumumab 投与に伴う低マグネシウム血症に対し、市販薬のサプリメント“カイホー・
マグネシウムプラス”が有用であったと考えられた 1 例
鈴村 潔 (外科)
- 25 -
13)当院で在宅血液透析を導入し維持管理することができた一事例
齋藤 李香 (透析室)
14)高齢透析導入患者に対しての食事療法介入とその後の経過報告
鈴木 美穂 (透析室)
15)長期安静臥床を強いられた妊婦との関わり方について振り返る
望月 菜摘 (周産期センター)
16)整形短期貸し出し器械の紛失に対する対策
塩沢 祥子 (手術センター トトロチーム)
17)スタッフ間のコミュニケーション向上を目指して
青島 優子 (手術センター)
18)乳房再建エキスパンダーを挿入した患者への退院指導の現状調査
朝日 恵美 (看護部外来)
19)当院における臓器提供に関する職員意識の現状と課題 *
上田
理恵子(西 3 病棟/院内移植コーディネーター)
20)手術室における曝露予防行動の実態調査と今後の課題
久保田 淳平 (手術センター)
21)
「抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)曝露防止マニュアル」の読み合わせの効果
~毎年行っている曝露予防行動調査からみえてきたこと~
久保寺 晋士(パリケモ委員会 化学療法グループ)
22)
「臨死期におけるケアの手引き」の作成を目指して
石野 裕子(パリケモ委員会 看取りケアグループ)
23)ストーマ近接部に生じた粘膜侵入に対する処置の検討
~CO2 レーザー焼灼術と副腎皮質ステロイドホルモン剤外用との比較~
河合 幸 (看護部 認定看護師室)
24)手術体位の除圧方法の統一に向けた試み
小杉 淳子 (手術センター)
25)オムツ皮膚炎に対する予防的スキンケアの検討
~リモイス® バリアとプロペト® の効果の比較~
髙橋 歩 (NICU 病棟)
26)病棟で化学療法・放射線治療を受ける患者へのセルフケア指導について
中村 弥生 (パリケモ委員会 口腔ケアグループ)
27)針穿刺吸引細胞診の概要(乳腺・甲状腺を中心に)
滝浪 雅之 (病理診断科)
28)外来化学療法患者の食事に関連する需要調査と支援ツールの作成
内田 理恵 (臨床栄養科)
*論文として本誌に掲載された発表の抄録は省略した
- 26 -
【研究・発展部門】
1.外来透析者の QOL 傾向分析
発
表 者:安倍里佳(透析室)
共同研究者:外山雅子、横山美紀、安藤恵
【目的】
外来透析者の QOL 傾向を把握し、よりその人らしく生きるための看護を考える。
【方法】
WHO/QOL-26 質問紙調査法に 1 項目を追加し 27 問とした。
【結果】
通院透析者 46 名に質問用紙を配布、35 名から回答(回収率 76%)を得た。
1. 対象者の属性
平均年齢:66.2 歳。70 歳代が 40%と最多、60 歳代以上が全体の 80%を占めた。
透析歴:10 年以上が 70%を占めた。
2.対象者の QOL 得点
QOL 平均値は 3.41。
全国平均値より低い項目
身体的領域
・体の痛みや不快感のせいで、しなければならないことがどのくらい制限されていますか。
・毎日の生活の中で治療(医療)がどのくらい必要ですか。
・毎日の生活を送るための活力はありますか。
・家の周囲を出まわることがよくありますか。
心理的領域
・自分の生活をどのくらい意味あるものと感じていますか。
全国平均値以上の項目
・医療施設や福祉サービスの利用しやすさに満足していますか。
(環境)
・家族の支えに満足しているかの得点は 4.00 であった。
QOL 総得点の中央値は 3.27。対象者を中央値以上の群(「QOL 高群」18 名)と中央値よりも低
い群(
「QOL 低群」17 名)に分け QOL 総得点と下位尺度を比較した。QOL 総得点・身体・心理・
環境的領域に有意な差が認められた。
【考察】
透析者にとって、血液透析や投薬だけでなく生活そのものが治療の対象となる。QOL は基本的
属性、食生活、ライフスタイル、健康などの要因によって影響される。調査に当たって透析者
の QOL 平均値は、同年齢の結果より低値であろうと予測した。しかし、60 歳代平均値 3.29 と
比較しても大差はなかった。血液透析の治療目標は、合併症の発症・進展の抑制で、治療を生
涯続けなければならない。
今回の結果から、透析者が血液透析と共存し日常生活の再構築ができていると考える。家族の
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支えへの満足度も高かった。しかし 3 回/週、約 12 時間、血液透析を施行する影響は大きい。
全国平均より低値項目が、身体的領域であったことを反映している。透析者は年齢を重ね、身
体的領域の低下は否定できない。私たちは透析者だけでなく、家族に対してのケアも低下させ
ないことが必要である。
当初、うつ的要因が QOL の阻害要因になるのではないかと仮説を立てたが明確にはならなかっ
た。引き続き調査を継続していきたい。
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3.ブータンにおける新生児蘇生法普及支援の試み
発
表 者:杉浦崇浩(小児科(新生児科)
)
共同研究者:小松和幸、小松賢司、水谷真一郎、佐藤恵、森下雄大、福岡哲哉
【背景】
全出生児の約 10%は呼吸開始のために何らかの補助を必要とし、約 1%はバッグ・マスクや気
挿管などの積極的な蘇生処置を要することが報告されている。新生児蘇生は国際的に標準化さ
れてきており、国際蘇生連絡委員会(ILCOR)から出されるコンセンサスがその基本的な考え
方となっている。北アメリカにおいては Neonatal ResuscitationProgram(NRP)が展開され、
発展途上国においてもその蘇生法がそのまま展開さる事が散見されるが、その国や地域の医療
事情や文化等そぐわない部分が存在し、継続的なコース開催が困難である等の問題点が存在す
る。
わが国においては 2007 年より日本周産期・新生児医学会が母体となり日本独自の新生児蘇生
法プログラム(Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation:NCPR)が展開され、現在その受講
者は 7 万人を超えている。今回いまだ確立した蘇生法が普及しておらず、かつ新生児死亡率の
高い親日国、ブータンにおいて日本が独自の蘇生法を確立・普及した経験を生かすよう、ブー
タン独自の蘇生法を展開する一助として新生児蘇生法インストラクター養成パイロットコー
スを開催した。そのコースの効果や方向性等につき検討・報告する。
【方法】
対象はブータンの首都ティンプー最大の国立病院の看護師・助産師 12 名に対し 4 日間のイン
ストラクター養成パイロットコースを開催した。コース構成はシミュレーションや NCPR の概
説やデブリーフィング(振り返り)の講義で 1 日、NCPR 専門コースの受講、及びブータン独自の
シナリオ作成で 1 日、残り 2 日間はブータン人インストラクターによる NCPRB コースに準じた
講習の開催・実施とした。受講後に受講者にアンケートを実施しコース評価や自信の変化等に
つき検討した。
【結果】
新生児蘇生を適切に実施する自信は講習会前後で有意に上昇していた(受講前:全くなし 33.3%、
なし 41.7%、どちらでもない 8.3%、ある、8.3%、強くある 16.6% 受講後 全くなし 0%、な
し 0%、どちらでもない 8.3%、ある、25%、強くある 66.7%)。またコース受講の推奨度は参加
者全員(100%)が強く推奨し、また講習会受講による自施設の新生児の予後改善の期待度はかな
り強いものであった(期待できる 16.7%、強く期待できる 83.3%)。
【結語】
ブータンにおける新生児蘇生法インストラクター養成パイロットコースは受講者の自信につ
ながるものであった。今後コース評価を続け、より良いコースを作成、普及と共に、ブータン
における実際の新生児予後の変化についても検討が望まれる。
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【一般発表】
6.看護部内における5Sプロジェクトの活動報告
パソコン情報と物品の整理・整頓
発
表 者:川口光代(看護部)
共同研究者:牛之濱千穂子、水島礼子、海野光枝、亀井由紀子
【背景】
平成 25 年度より、看護部内に5S プロジェクト(以後 PJ と記す)が発足された。平成 26 年度
には看護部の行動目標に「職場環境の充実」があり、その成果尺度に、
「5S 活動の実施」が挙
げられている。しかし、PJ 活動では限界があるため、2 年に渡り看護部のパソコン(以後 PC
と記す)情報と物品の整理・整頓に焦点を絞り活動している。
【目的】
5S とは何かを学び、まずはやってみる。その活動として、PC の情報と物品の整理・整頓を行
う。
【用語の定義】
5S:物、情報、人を対象に整理・整頓・清掃・清潔・しつけの活動
【方法】
1.期間:平成 25 年 6 月~平成 26 年 12 月(現在も継続中)
2.対象:PC は看護部と各部署の共通画面、物品は救命外来(以後西1と記す)
3.活動内容:
1)毎月 1 回(1 時間以内)の定例会開催
2)院外研修参加と磐田市立総合病院の見学
3)協力要請:師長会と主任会、西1階
4)PC 情報の整理・整頓:現状把握(調査用紙の活用、特性要因図の作成)、整理・
整頓ルールの作成、各部署における監督者の決定、定期的な現状調査とその結果を
各部署の師長・主任へ提示
5)物品の整理・整頓:現状把握(病棟ラウンド、用度課と薬剤部への請求数の調査)
、
整理・整頓の実施
【結果】
1.PC は、看護部共通の画面で、フォルダ 80 が 31、ファイル 159 が 0 となった。又、17 部署
での共通画面の合計数は、フォルダ 645 が 366、ファイル 1710 が 151 と減った。
2.物品は、西1階の水回りの整理・整頓と、用度課と薬剤部への請求定数の見直しを行った。
【考察・結論】
現在も継続中であるが、上記の結果を出せた。ルールの作成により、整理・整頓ができた。又、
管理者に監督者を依頼した為、しつけができ清潔・清掃へと繋がった。高原は、しつけとは「決
められたことを、決められたとおりに実行できるように習慣づけること」である 1)と述べてい
る。しつけは習慣化つまり、時間の経過とともに元にもどらないようにするには、定期的な状
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況把握と評価が必要となる。決定したことを継続していく為には、対象者全員が5S 活動の必
要性を理解し納得しなければ習慣化は難しい。今回は、活動前後の結果を数値と写真にて可視
化することにより、行動に繋がったと考えられる。
まだ、導入段階であり、5S は活動の一つである。しかし、看護部内での継続と共に、他部
門での参加が期待できれば、全ての活動の土台となり、医療安全や感染対策と連携していける
と思われる。
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7.リハビリテーション科における緊急時対応訓練の成果
~平成 24 年度と 25 年度を比較して~
発
表 者:兵永志乃(リハビリテーション科)
共同研究者:山田勇樹、水野秀太、杉山稔子、石井光治、大石真理子
【背景】
急性期リハビリテーションの現場では患者の急変に直面する可能性が高い。しかし当院リハ
ビリテーション科のスタッフ 45%が経験 3 年以下であり、急変に対する経験や知識が乏しい。
よって当科はスタッフが不安なく現場で迅速な対応ができるよう、平成 23 年度より緊急時対
応研修を継続している。
【目的】
本研究の目的は、インシデント報告内容の比較を行い緊急時対応研修の成果を検討すること、
また研修前後での自己評価がインシデント件数に影響するのかを検討することである。
【方法】
平成 24 年度と 25 年度のインシデント内容を比較検討した。
平成 26 年度の研修は、まず新人を対象に急変時に必要な物品の確認と使用法の実技指導を行
った。次に全スタッフを対象に講義を実施した。そして部門混合の 5 名 1 グループで、グルー
プワークを行った後、実践練習を行った。
受講したスタッフ 20 名を対象に、研修前後で「緊急時に動ける自信があるか」を 10 段階評価
で紙面回答させ、Wilcoxon 符号付順位和検定(以下、検定)を用いて研修前後の点数を比較し
た。統計処理は Statcel2 を使用し、有意水準は 5%未満とした。
【倫理的配慮】
インシデントは匿名化されたものを使用した。また紙面回答は無記名とした。
【結果】
インシデント報告件数は 44 件から 33 件に減少し、部門別、経験年数別でみた 1 人当たりの
発生件数も減少した。しかし機能訓練室での発生件数は 19 件から 24 件に増加した。報告件数
が多かった神経内科、脳神経外科患者の件数は減少したが、整形外科では 7 件から 15 件に増
加した。チューブ抜去と転倒転落の件数は減少したが、嘔吐が 7 件から 11 件に増加した。
検定の結果、研修後の自己評価点(中央値 5)は研修前(中央値 3)よりも統計的に有意に高値
であった(P<0.001)。
【考察】
研修の継続によりリスク管理に対する意識が啓発され、インシデント件数が減少した可能性
がある。また研修後の自己評価が高値を示したことも、急変に対する意識や急変時の迅速な対
応に寄与した可能性が示唆された。しかし整形外科患者の件数が増加し、その内容が嘔吐、転
倒、意識レベル低下など多岐に渡ったことにより、加齢や重複疾患を考慮する必要性があると
考えられる。
【まとめ】
経験の浅いスタッフが多い中でも、急変時には即座に周囲の協力を求め迅速な対応が行える
よう、今後も研修を継続していく必要がある。
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8.患者ケースカンファレンスの実施率向上における取り組み
発
表 者:大橋勇美(西 3 病棟)
共同研究者:八巻眞理子、望月愛美、山本真冬、髙嶺志織、野崎和代、上田理恵子
【背景】
平成 25 年度に業務改善として申し送り短縮による業務のスリム化を図り、申し送り時間は
短縮されたが、カンファレンスはほとんど実施されなかった。今年度は、申し送りが短縮され
た時間を活用してカンファレンスの実施ができるように小チーム活動を開始した。
【目的】
申し送り短縮の継続とカンファレンス実施による看護ケアの向上を図る
【方法】
1.申し送り短縮の継続(患者申し送り 8:35~8:45)
2.朝カンファレンス実施時間(8:45~9:05)の統一
3.記録方法の統一・情報共有方法の検討
4.カンファレンス内容の評価(アンケートの実施)
【結果】
申し送りは 10 分程度に短縮し、継続ができている。朝カンファレンスに変更したことで、
毎日実施できている。検索できる記録方法に統一したことで、情報共有がしやすくなった。朝
カンファレンスを行うことで集中治療室(intensive care unit)経験の浅いスタッフには、
看護ケア・観察の視点の確認となりケアの質の向上に繋がっている。しかし、「自分のケアの
評価ができる午後に実施したい」という意見があった。
【結論】
1.カンファレンスを行うためには、スタッフが確実に参加できる環境と時間が必要である。
2.朝の時間は、業務改善の結果、日勤スタッフは確実に参加可能となった。
3.カンファレンスの必要性はすべてのスタッフが、認識している。
4.検索できる記録により情報共有がしやすくなった。
5.情報を把握している深夜スタッフが、カンファレンスに参加できていない。
6.カンファレンスに求める内容は、経験値により異なる。
7.カンファレンスの質の向上により、開催時間・回数など検討していく必要がある。
8.カンファレンスが看護の質を向上させるため、カンファレンスを継続する必要がある。
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9.薬剤科ハイリスク薬剤対応チームの活動報告
発
表 者:佐竹路子(薬剤科)
共同研究者:野竹秀幸 山中義裕 横山正人
【目的】
患者の生活の質改善及び化学療法薬や医療用麻薬の適正使用には、多職種が連携して治療に参
画する必要がある。薬剤科においては、平成 25 年 10 月よりこれらの薬剤指導を担当するハイ
リスク薬剤対応チーム(以下、ハイリスクチーム)を立ち上げた。外来での介入は当初、化学療
法関連薬剤・麻薬の導入時及び治療変更時の薬剤指導(原則予約制)のみとしていたが、診療
報酬改定によるがん患者指導管理料 3 の新設に伴い、平成 26 年 5 月より化学療法導入・変更
後の副作用評価まで範囲を広げた。入院においては、原則 2 コース目までの化学療法施行患者
及び医療用麻薬使用患者へ定期的に介入している。今回、ハイリスクチームの現状を発表する
とともに、明らかとなった課題について報告する。
【方法】
平成 25 年 10 月~翌年 11 月の外来及び入院患者への指導件数、平成 26 年 5 月~同年 11 月の
がん患者指導管理料 3 の算定件数、さらに平成 26 年 6 月~同年 12 月の疑義照会件数とその内
訳及び受け入れ率を調査した。
【結果】
外来指導件数は合計 577 件(2.02 件/日)で、科別割合では外科が 57.2%と最も多く、泌尿器
科 20.1%、血液内科 7.3%と続いた。このうち、指導予約がなかった件数は、7ヶ月で合計 102
件(45.8%)であった。がん患者指導管理料 3 の算定件数は延べ 138 件(19.7 件/月)であった。
入院指導件数は合計 928 件(3.28 件/日)であった。さらに、疑義照会件数は合計 108 件であ
り、その内訳は、検査オーダー提案 37 件、用法用量変更や薬剤中止提案 22 件、鎮痛剤新規追
加の提案 6 件、副作用への支持療法薬の提案は、悪心嘔吐関連が 14 件、便通関連が 9 件、皮
膚対策関連が 4 件などとなっており、受け入れ率は全体として 88.6%であった。
【考察】
疑義照会の受け入れ率は約 9 割であり、患者に対する薬剤指導に加え、その処方確認及び処方
支援により副作用対策や症状緩和へ貢献する事が出来たと考えられた。また、腎機能低下患者
に対する投薬量の確認も多く、薬剤師の介入により適正な薬剤使用に貢献できたと考えられた。
一方、指導予約のない件数が約 4 割を占め、患者情報の把握など薬剤指導準備に要する時間に
より、場合によっては患者の待ち時間が延長することが示唆された。以上を踏まえ、今後は他
職種へのアンケート調査により薬剤師介入の有用性について検証するとともに、各外来診療科
との連携強化や薬剤指導業務の効率化を模索していく必要がある。
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10.クリニカルパス委員会の活動と取り組み
発
表 者:平野恵美(クリニカルパス委員会)
共同研究者:鈴木 みどり
【目的】
クリニカルパス(以下、パス)が本稼働してから 7 年が経過した。「アウトカム評価」→「バリア
ンス分析」→「パス改訂」のサイクルを回すことが重要であり、そのためには現在のパスの使用
状況や稼働状況を把握する必要がある。当院のパス使用の現状と、今年度の点数改定における
パスの取り組みを報告する。また、今後の改訂に取り入れる予定のベーシックアウトカムマス
ターについて紹介する。
【背景】
今回の診療報酬改定により「再入院までの日数延長」と、入院基本料に「短期滞在手術基本料
3(以下、短手 3)」というものが新たに設定された。短手 3 とは、厚労省が定める手術を入院で
行う場合は、すべて包括された点数でしか請求できないという制度であり、一回の入院で該当
する手術を数回行ってしまうと、その分病院の持ち出しとなってしまう。今回は再入院する可
能性が高い循環器内科の心臓カテーテル検査(以下、CAG)、経皮的冠動脈ステント留置術(以下、
PCI)のパスと、短手3に該当する手術を複数回行う可能性が高い眼科の白内障パスを例にあげ
た。
【方法】
パスの使用状況については H26.4~10 までのパス使用件数・使用率を報告する。診療報酬改定
におけるパスの取り組みについては眼科白内障のパスと循環器内科 CAG のパスを例にあげ、点
数改定前後の H25.4~10 と H26.4~10 のパス使用率を比較する。
【結果】
①パス使用状況:
今年度 4 月~10 月のパス使用数は 300 件前後、パス使用率は 35%前後だった。新規に使用開始
したパスは 3 件、改訂を行った回数は 7 回(後発品への切替に伴う全科対象の改訂を含む)であ
った。
②診療報酬改定におけるパスの取り組み:
医事課担当者より、医師に短手 3 の制度について、金額の概算、可能な限り両眼パスの使用を
抑え片眼パスを使用していただきたいという旨の説明を行った。また、循環器内科の医師にも
個別に再入院までの日数の変更についての説明を行った。
H25.4~10 片眼パス使用件数…87 件、両眼パス使用件数…71 件
H26.4~10 片眼パス使用件数…166 件、両眼パス使用件数…76 件
H25.4~10 CAG、PCI 再入院件数…0 件(3 日以内の再入院率 0%)
H26.4~10 CAG、PCI 再入院件数…16 件(7 日以内の再入院率 35%)
【考察】
眼科の白内障パスは、両眼パスから片眼パスへの移行が進んでいると思われる。両眼パスにつ
いても診療報酬改定当初の 4 月・5 月は件数が多かったが、月が進むにつれてだんだんと使用
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件数が減っていった。現在は白内障日帰りのパスを新たに作成中であり、今後より短手 3 に則
した医療行為を行うことができると思われる。
循環器内科の CAG、PCI のパスについては、前年度までは 1 回目の退院から 4 日後に再入院す
る流れになっていたため再入院の件数はほぼ無かったが、今年度からは再入院までの期間が 7
日に延びてしまったために再入院率があがってしまった。4 月以降は循環器内科の先生方にも
ご協力をいただき、可能な限り再入院は 7 日以上空けるようにしていただいている。
クリニカルパス委員会として、今後も各部署と協力してパスの作成と改訂を行っていきたい。
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11.看護部パリケモ委員会口腔ケアグループ活動報告
~口腔ケア充実に向けての取り組み~
発
表 者:中村亜由美(パリケモ委員会 口腔ケアグループ)
共同研究者:森永由希、三浦和洋、上杉朋子、中村佳代子
【背景】
口腔ケアの目的は口の中を清潔にするだけでなく、歯や口の疾患を予防し、口腔の機能を維持
する事にある。また、生活の質(QOL)の向上のみならず全身疾患の予防、全身の健康状態の
維持・向上に繋がると言われている。
入院中、自身で口腔ケアが行えない場合、看護師の介入が必要であり、それは重要な看護ケア
となる。しかし、当該病棟での実際は院内共通の口腔ケア手順表の認識が低く、スタッフ全体
に口腔ケアの知識が乏しいうえ、ケア自体満足に行えていない現状がある。
【目的】
看護部パリケモ委員会リンクナースを通して、口腔ケアの必要性や重要性を理解し、適切な方
法、物品を知ることで院内共通の口腔ケア手順に基づいた正しいケア方法を、スタッフが習得
できる。
【方法】
対象病棟はリンクナースの在籍を考慮し、南 5、9 階とした。
①院内の口腔ケア手順表の認識や、実際の口腔ケア手順や知識のアンケート調査を行う。
②アンケート集計をして、問題点を明らかにする。勉強会のための資料作成を行う。
③勉強会を行う。
④実際にスタッフに口腔ケアを行ってもらうよう働きかけていく。
⑤適宜口腔ケア状況をリンクナースで確認し、定着を志す。
⑥口腔ケア勉強会実施後、再度アンケート調査を行う。
⑦アンケート集計し、評価修正。
以上の点を年間活動計画として立案し実施した。
【結果】
アンケートの結果、口腔ケア手順が存在する事を知らないスタッフが多く、実際に口腔ケア
を行っている中で、使用している物品が限られている事も分かった。また、口腔ケアに要する
時間も 5 分以内という回答が多かった。
【考察】
日常の看護ケアの中で口腔ケアは重要なケアの 1 つであるという認識が乏しく、食後に簡単
に口腔ケアを実施しているのみで、口腔内がどのような状態なのか、汚染されている状況がな
ぜ起こっているのか等の観察が行えていない事が明らかとなった。その為、確実なアセスメン
トが出来ず、必要なケア方法が見いだせない状況であった。ただ、口腔ケアを実施するだけで
は口腔内を清潔に保つことは困難である。一人のスタッフが適切な口腔ケアを実施できても、
常に口腔内環境を整える事は困難である為、全スタッフが口腔ケアに対する知識を深める必要
があると再認識した。
今後も、口腔ケアに対する知識・認識向上のために継続した活動が必要であると考える
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12.Panitumumab 投与に伴う低マグネシウム血症に対し、市販薬のサプリメント
“カイホー・マグネシウムプラス”が有用であったと考えられた 1 例
発
表 者:鈴村潔(外科)
共同研究者:朝日恵美
【目的】
切除不能、進行再発大腸癌に対して、分子標的薬である Panitumumab(以下 P-mab)の有用
性が明らかとなっている。P-mab の有害事象の一つに低マグネシウム血症が挙げられる。今回、
P-mab 使用中患者の低マグネシウム血症の治療に市販薬のサプリメントが有用であったと考え
られた 1 例を経験したため報告する。
【症例】
66 歳男性。横行結腸癌に対し 2012 年 2 月、結腸右半切除後。K-ras mutation なし。術後補
助化学療法として XELOX 療法を 8 コース実施した。2013 年 2 月に縦隔リンパ節および鎖骨上リ
ンパ節再発を認めたため、化学療法導入となった。2013 年 3 月より FOLFIRI 療法を開始し、2013
年 4 月より Bevacizumab(アバスチン)を追加した。17 コース終了時、左鎖骨上リンパ節の腫
大傾向を認めたため PD と判断し、2014 年 6 月より P-mab 単剤投与に変更した。投与開始前の
血清マグネシウム値は 2.3mg/dL であった。2014 年 8 月の診察時(P-mab 投与 4 回目)に血清
マグネシウム値が 1.4mg/dL と低下を認めたため、当院のプロトコールに則り生食 100ml+硫酸
Mg20mgEq/mL を投与した。その後もマグネシウム低値が持続し、8 月下旬(P-mab 投与 6 回目)
の診察時には立ちくらみの訴えもあり、
[CTCAEv4.0 グレード 0]低マグネシウム血症に対し
てさらなる加療が必要と考え、市販薬であるカイホーマグネシウムプラスの服用をおすすめし
た。その後はマグネシウム値、1.5~1.7mg/dL と改善傾向を認めていたが 11 月の診察時には前
回 1.7mg と上昇傾向を認めていた血清マグネシウム値が再び、1.4mg/dL と低値を呈した。患者
からの聞き取りから 2 週間サプリメントの服用を中止していたことが判明した。以上の経過よ
りサプリメントの服用は低マグネシウム血症の治療において一定の効果があったと考え、再度
患者に内服再開を提案した。
【結論】
市販薬のサプリメントである“カイホー・マグネシウムプラス”は Panitumumab 使用中の患
者の低マグネシウム血症に対し、一定の効果が認められたと考えられた。今後も同様の症例に
対しては、使用を勧める予定である。
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13.当院で在宅血液透析を導入し維持管理することができた一事例
発
表 者:齋藤李香(透析室)
共同研究者:黒田沙織
【はじめに】
在宅血液透析患者は 2013 年末で 461 人であり、全透析患者数の 0.1%と少ない。その中、当院
で在宅血液透析を初めて導入し、維持管理を行う事ができたため報告する。
【患者背景】
A 氏 40 歳代男性 市内在住
実父・妻・子供 3 人と同居 自営業(建築関係)
30 歳代より高血圧を指摘され内服治療開始。その後、腎生検にて IgA 腎症と診断され、経過観
察となっていた。2011 年頃より徐々に腎機能低下があり、翌年 5 月に血液透析の導入となった。
患者は導入前より透析療法選択説明(腹膜透析・血液透析・在宅血液透析・腎移植)を受け在
宅血液透析(以下 HHD)を希望していた。
【経過】
HD 導入後 2012 年 6 月より通院しながら HHD 知識指導を受けた。8 月より自己穿刺トレーニン
グを開始した。10 月より手技トレーニング、機器管理指導、家族指導を経て、2013 年 1 月よ
り HHD に移行した。翌月より月 1 回透析室で HD。半年に 1 回、介助者と共に手技確認テストを
行った。HHD が安定した為、8 月より月 1 回の腎内外来受診のみに変更した。
【考察】
HHD は患者自身のライフスタイルに合わせ、自己管理しやすくなると言われているが、普及し
ていないのが現状である。その原因として患者側では基本的に自己穿刺が出来る方が対象であ
り必ず介助者が必要となる。さらには知識・技術を確実に習得する事が条件となる。また、自
宅の環境を整えるための設備投資などの自己負担がある。医療者側としては初期投資が大きい、
指導経験施設が少ない、コストの持ち出しが多いなどの問題が挙げられる。今回 HHD の対象と
なる患者に対して、指導経験が無い当院のスタッフは不安が強く、当初はあまり前向きにはな
れなかったが、HHD 指導経験のある施設からのサポートがあり、トレーニングの進め方や外部
の業者との連絡方法・HHD 移行後の管理方法など細かいアドバイスを受けることができ、それ
らを基に当院独自の資料を作成し生かす事ができた。また、他職種と連携をとる事で維持管理
上の問題点も解決する事ができた。今回、院外・院内でチーム医療が行えた事で HHD へスムー
ズに移行し、維持管理ができている。振り返れば、指導開始から HHD 移行まで 8 ヶ月を要した
が、
指導方法や院内外の調整方法などの経験ができたため、次回 HHD を希望する患者があれば、
患者や介助者の負担を少なくできるように短期間でのトレーニングを計画していく必要があ
る。
【結語】
今回 HHD 導入を初めて行い、維持管理する事が出来ている。今後も対象者がいた場合、患者の
意思を尊重し積極的にサポート出来るようにしたい。
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14.高齢透析導入患者に対しての食事療法介入とその後の経過報告
発
表 者:鈴木美穂(透析室)
共同研究者:杉山佳代子、伴野葉月、市原健太郎
【背景】
透析患者は蛋白・エネルギー栄養障害が高頻度でみられ、透析患者の生命予後を不良にする危
険因子として重要視されている。CKD ステージ 4・5 の保存期には低蛋白食が食事療法の基本と
なるが、蛋白質の制限が強化されるとエネルギー不足に陥りやすく、蛋白異化亢進の危険性が
高くなる。多くの患者では保存期から透析導入にかけて体重が減少し、低蛋白血症が進行する
と言われているが、当院では計画的に透析導入した患者は入院期間が短く、大半の患者は他院
に転院するため個別的な食事療法が十分に行えていない。
【目的】
家族の協力が得られない恒例透析患者に食事療法介入を行い、その後の経過を追跡し、今後増
加する恒例透析導入患者の支援に役立てる。
【方法】
①栄養士と協力し患者の生活状況と食事内容の聞き取りをする。②透析導入から2年間の Alb、
GNRI、BMI をグラフにし、透析導入後の経過を分析した。
【結果】
透析導入後、生活リズムの変化から食生活も変わり、Alb は 3.4g/dl、GNRI は 81.3 と共に低
値であった。また骨折による入院を機に Alb は 2.7g/dl、GNRI は 70.7 と共に下降した。栄養
士や看護師などが入院中から継続的に食事療法介入した結果、Alb4.0g/dl、GNRI89.7 と共に
上昇した。早期に継続的な介入を行ったことで栄養障害を予防することができた。
【考察】
透析導入時に保存期とは食事内容が異なることなど個別性を考えた食事療法介入が行われて
いれば、良好な栄養状態を保つことができ、大きなイベントが生じた時も回復し、元々の ADL
に戻ることが可能であると考える。そのため入院中に患者の生活背景を踏まえ、退院後を見据
えた食事療法介入を行う必要がある。
【結論】
良好な栄養状態を維持するためにも、積極的な食事療法介入を行い、実現可能で適切な食生活
が身につくように継続的に介入していくことが重要である。しかし入院期間が短く、他院に転
院していく患者に対しては継続的に介入していくことができないため、効果的な食事指導介入
の方法を検討することが今後の課題である。
【参考文献】
1)日本病態栄養学会誌 16(1) P 93-97.2013 年
2)臨床栄養 Vol.99 No.7 P886-892 2001 年 12 月
3)臨床栄養 Vol.109 No.7 P854-858 2006 年 12 月
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15.長期安静臥床を強いられた妊婦との関わり方について振り返る
発
表 者:望月 菜摘(周産期センター)
【背景】
当病棟には、切迫早産の診断のもと妊婦が安静治療目的で入院している。治療内容は床上安静
や子宮収縮抑制剤を使用する患者等切迫早産の進行具合によって異なる。妊娠週数や症状によ
って入院期間は様々である。切迫早産の進行が著名な患者は、子宮収縮抑制剤の 24 時間持続
点滴を行い、尿道留置カテーテルが挿入され床上安静の指示となる。ストレスの感じ方は人そ
れぞれであるが、安静度が高く身体的侵襲を伴う処置が多いほど患者はストレスを感じやすく
なる。
【目的】
切迫早産で入院となったA氏への看護を通し、長期安静臥床を強いられた妊婦との関わり方に
ついて考える。
【方法】
プロセスレコードを用い、患者との対応を振り返る。
【結果】
①静脈留置針や尿道留置カテーテルの交換がストレスになっていた②清拭と陰部洗浄のみの
保清であったA氏は清潔のニードが満たされていなかった③口数が少なく無表情であったこ
とから、A氏が嫌な気持ちであるという思い込みで接していた
【考察】
A氏は持続点滴を行っており静脈留置針の入れ替えが必要であった。安静のために尿道留置カ
テーテルを挿入していたが、長期挿入に伴い感染症を起こしカテーテルの入れ替えを行う等身
体的侵襲を伴う処置があった。ストレスフルな状態であったと考えられる。
切迫早産患者の入院生活におけるニードとして最も高い項目は清潔のニードであるとされて
いるが、A氏は入院してきた当初、保清ケアは清拭と陰部洗浄のみであり、清潔のニードは満
たされていなかったと考えられる。また、ニードが満たされていないということもストレスへ
とつながっていたと考えられる。患者の要望を聞きそれに沿ってケアを行うことで満足感を得
ることができ、ストレス源の排除もできると考えられる。長南は「身体面の問題に十分対応し、
入院生活の日常生活を整えて初めて、精神面の援助が生きてくる」と述べている。患者の不安
やストレスに働きかけるには、入院中の基本的ニーズを満たし、治療に関する身体的な問題を
解決していかなければ、精神面に対する援助をしても新たなストレスが生まれてしまうと考え
られる。
【結論】
切迫早産の患者は、入院中の治療そのものがストレス源になっている。患者のニードに気づき、
様々なニードを満たす援助をしていかなければならない。
- 41 -
16.整形短期貸し出し器械の紛失に対する対策
発
表 者:塩沢 祥子(手術センター トトロチーム)
共同研究者:鈴木 美紀、中山 朋美、早川 和美、高木 由崇、勝又 広太、瀧 千尋、
金森 美幸、堀 茜
【はじめに】
整形外科のインプラントが生じる器械は、ほとんどが業者からの借りものである。
多数の手術器械が混沌としている中、貸し出し器械の搬入から返却までの受け渡しと保管に関
する明確な取り決めがない為、度々器械の紛失が起きている。この状況を改善する為、チーム
活動としてその対策を考え、実行した経過をここに報告する。
【目的】
器械の紛失を防止する
・
「整形貸し出し器械の受け取り表」の作成
・器械保管場所の確保
【方法】
①アンケートによる現状調査(A)と問題点の抽出
②解決策の実施
・
「整形貸し出し器械の受け取り表」を作成。
1 ヶ月後アンケート(B)を実施
③器械のケース・インプラントの保管状況の把握をする。(写真)
器械保管用の台車を追加購入する。
【結果】
①について:誰が最後に使用した器械なのか等サインや記録がない為に、器械のトラブル・紛
失が起きた際責任の所在がはっきりしなく、紛失した器械も探しきれないという意見が多数あ
った。
②について:100%のスタッフ・業者が受け取り表の必要性を感じていることがわかった。
「受
け取り表」を用いることで責任の所在が明確になり、紛失などのトラブルが起きた際、速やか
に対処することができるようになった。
③について:保管場所が定まらないことによる器械の紛失を防ぐことができた。
【結論】
「受け取り表」を用いることで責任の所在が明確になった。しかしすべてのスタッフが確実に
サインできているわけではない。今後はその重要性を理解し、更なる運用方法の検討が必要で
ある。
- 42 -
17.スタッフ間のコミュニケーション向上を目指して
発
表 者:青島優子(手術センター)
共同研究者:山本陵祐、池ヶ谷映美、望月健児、佐藤文信、石川富美、稲葉奈奈、清水浄江、
佐藤マユ子
【目的】
接遇マニュアルに対して私達は、 “みんな知っている” “私達はちゃんとやっている” “今
さら接遇なんて・・・”
等々思うことがある。しかし、知っていることイコールできているこ
とではないという事がしばしばある。それは、接遇の善し悪しは自分が決める事ではなく、相
手が決める事であるからだといえる。この接遇の善し悪しは、人間関係作りが大きく関与する
ものであるため、私達チームは職場での接遇の向上を目指し、人間関係をより良いものにする
ための一つとして、挨拶を見直し推奨していこうと考えた。
【方法】
・アンケート調査
対象:手術センター看護師 30 名 / 挨拶に対する意識調査(活動前と6ヶ月後の年2回)
・挨拶スローガン掲示
・接遇勉強会の計画・実施
・アワード表彰
【結果】
・アンケート結果 (図あり)
回収率 1回目:80% / 2回目:86%
問1 出勤後出会った人に挨拶をしていますか?(1 回目→2回目)
必ずしている 29.2%→34.6%、している 54.2%→50%、時々する 16.6%→15.4%、
会釈だけする 0%、していない 0%
問2 挨拶は誰にしていますか?
医師 57.6%→92.3%
OP 看護師 88.5%→100%
委託業者 88.5%→100%
業者 88.5%→100%
患者 84.6%→96.1%
他病棟看護師 76.9%→73.0%
患者家族 61.5%→65.4%
【考察】
挨拶は人と人とが接する時、その最初に投げかけられる言葉や仕草で、相手との関係が円滑に
いくか否かを決定づけるといっても過言ではない。そして自分がその相手に対して存在を認識
しているということを示す、とても大事な行動の一つになる。今回のアンケート結果から、少
しずつではあるが、挨拶をする人が増えてきていることが解った。これは、スローガン掲示や
接遇勉強会などの活動が挨拶に対する意識付けとなり、アワード表彰等でモチベーションが向
上したのではないかと考えた。手術室は他と比べると閉鎖された空間であり、スタッフ間の円
滑なコミュニケーションが仕事の善し悪しにまで大きく関わるものである。今回、活動後のア
ンケート調査には至っていないが、挨拶が増え、スタッフ間のコミュニケーションが向上した
ことにより、話しやすい環境、聞きやすい人間関係が生まれたことで、手術センターでの明る
い職場作りに繋がった印象がある。今後もこの活動を継続し気持ちよく挨拶しあえる良い職場
を目指したいと考える。
- 43 -
18.乳房再建エキスパンダーを挿入した患者への退院指導の現状調査
発
表 者:朝日恵美(看護部外来)
【背景・目的】
2014 年 7 月に乳房再建用のエキスパンダーとインプラントの一部が保険償還された。乳房再建
希望の増加が考えられ、形成外科医師による説明パンフレットの改定や説明外来新設等支援体
制強化を図った。そのような中、外来化学療法室においてエキスパンダーを挿入した患者から
注意事項や下着の選択について質問を受けた。そこで、エキスパンダーを挿入した患者の退院
指導の現状を明らかにする目的で、調査を行った。
【方法】
筆者が作成した選択式調査用紙を、乳房再建患者が入院する病棟看護師 56 名に配布した。調
査は無記名とし、調査に参加しなくても不利益はないことを文章で説明した。調査期間は 2014
年 10 月 21 日から 10 月 31 日とし、回収封筒への提出をもって同意を得たとした。回答は単純
集計した。
【結果】
調査用紙回収率、有効回答率は 100%であった。現病棟経験平均年数は 2 年であった。46%が
過去 3 年間に「乳房再建の研修会に参加した」とし、内 96%は院内で企画した研修会に参加し
ていた。82%が「エキスパンダーを挿入した患者の退院後生活指導が必要」と回答したが、
「指
導を行った」という回答は 0.03%であった。指導内容として「感染兆候時の対応」を口頭で行
っていた。指導を行っていない理由は「受け持ったことがない」「どのように説明を行えばい
いのかわからない」であった。自由記述欄に「患者から質問されたことがない」「患者の相談
にのれるようになりたい」
「感染で入院する患者への精神的看護も必要」という記載があった。
パンフレットなど資材を希望する意見もあった。
【考察】
エキスパンダーを挿入した患者に対する退院指導の必要性を認識していたが、指導方法がわか
らないことや、患者から質問が無いなどの理由から実践できていなかった。エキスパンダー挿
入中は磁気共鳴画像検査を回避するなど医療安全上の問題や、感染兆候の初期行動がその後の
治療に影響を及ぼすことなどから、患者には文章による説明が必要である。
調査終了後、形成外科医師のアドバイスを受け患者説明用パンフレットを作成し、病棟に配布
した。今後パンフレット内容についての評価が必要である。
【結論】
エキスパンダーを挿入した患者に対する退院指導は確立されていなかった。56 名中 2 名の看護
師が行った指導は感染に関連するもので、口頭伝達であった。
- 44 -
20.手術室における曝露予防行動の実態調査と今後の課題
発
表 者:久保田淳平(手術センター)
共同研究者:朝日 恵美
【背景】
当院では、抗がん剤調製時の飛散による曝露を防護するため、薬剤科がクラスⅡタイプの安全
キャビネットを用いて調製業務を行っている。しかし手術室では、医師の指示により手術の流
れの中でタイムリ-な準備が必要とされているため、指示を受けた間接介助看護師が調製を行
っている現状である。
【目的】
手術室における抗がん剤曝露予防行動の現状を明らかにし、調製時の防護具着用率を改善する
ことを目的に調査を行った。
【方法】
2014 年 7 月から 8 月に、筆者らが独自に作成した調査用紙を用いて、手術室に勤務する 31 名
の看護師を対象に抗がん剤曝露予防行動の実態調査を実施した。調査結果を単純集計し、遵守
率が低かった項目について 2014 年 11 月にポスターを貼付した。また、マニュアル読み合わせ
を実施した。
【結果】
調査用紙回収率、有効回答率共に 100%であった。58%が「抗がん剤取り扱いマニュアル(以
下マニュアル)を読んだことがある」と回答した。2013 年度の抗がん剤調製件数は 26 件で、
調査期間中の件数は 3 件であった。81%が「手術室で抗がん剤調製を行ったことがある」と回
答した。調製時の、マスク着用 71%、ビニールエプロン着用 61%、2 重手袋着用 28%、ゴーグル
着用 58%、アームカバー着用 58%、全ての着用者は 28%であった。シリンジ陰圧操作を行ってい
る看護師は 61%で、調製後のバイアル及びシリンジ処理方法の正答率は 61%だった。
調査後、調製時の防護についてポスターを貼付すると同時に、マニュアルの読み合わせを実施
した。その結果、マスク着用 100%、ビニールエプロン着用 90%、ゴーグル・アームカバー着
用 100%、2 重手袋着用 74%、全て着用が 71%という結果となった。調製時の陰圧操作は 71%、
調製後の処理方法正答率は 94%であった。
【考察】
2011 年にマニュアルは作成されていたが、手術室で読み合わせを行ってこなかったことが、防
護用具着用率が低い原因の1つであると推測された。ポスターによる啓蒙とマニュアルの読み
合わせにより、防護具の着用率が向上した。抗がん剤の曝露はその調製時に最も多いとされて
いるため、調製時の 2 重手袋着用とシリンジ陰圧操作が遵守率 100%になるよう活動を継続す
る必要がある。
【結論】
手術室における抗がん剤調製時の防護用具着用率は低値であったが、マニュアルの読み合わせ
とポスターによる啓蒙活動により着用率が向上した。
- 45 -
21.「抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)曝露防止マニュアル」の読み合わせの効果
~毎年行っている曝露予防行動調査からみえてきたこと~
発
表 者:久保寺晋士(パリケモ委員会 化学療法グループ)
共同研究者:浦田瑶姫、村上薫
【背景・目的】
医療従事者は抗がん剤取り扱い時に曝露を受ける可能性がある。今年度、厚生労働省から「抗
がん剤の曝露を予防する必要性」について通達が出された。当院は 2009 年から看護部パリケ
モ委員会を中心に曝露予防活動を開始した。2011 年に「抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)曝露防止マ
ニュアル」
(以下マニュアル)を作成し、年に 1 回の曝露予防行動調査を実施していたが、マ
ニュアル内容が浸透していない現状があった。2013 年にマニュアルの読み合わせを呼びかけた
結果、読み合わせ率 97%、マニュアル浸透率(マニュアルを読み内容を知っているという回答)
84%であった。読み合わせ直後の曝露予防行動は全ての項目で改善した。今回 1 年経過後の評
価目的で行った調査結果を報告する。
【方法】
毎年使用している調査用紙を用いて、化学療法を実施している 5 病棟と外来化学療法室に勤務
する看護師 150 名を対象に 2014 年 7 月に調査を実施した。10 月にマニュアルの読み合わせを
行い、読み合わせの 1 か月後に同内容の調査を行った。調査は無記名とし倫理的配慮について
の記述を行なった。用紙提出をもって同意が得られたとした。
【結果】
マニュアル浸透率は 39%であった。曝露の影響を受けやすい点滴交換時に「手袋、マスク、ゴ
ーグル、ビニールエプロンの着用」を行っていたスタッフは昨年 85%、今回 74%であった。
昨年課題として取り組んだ、点滴交換時の差し替えの位置の正答率は昨年 93%、今回 90%で
あった。マニュアル読み合わせを呼びかけた結果、浸透率 68%であった。また点滴交換時の差
し替え位置の正答率は 93%であった。
【考察】
前年度と比較して浸透率が減少した理由として、時間経過が挙げられる。再度読み合わせを行
ったところ、浸透率は再び上昇した。昨年度重点をおいてポスターで啓蒙した部分は行動弱化
が少なかった。マニュアルの読み合わせは、曝露防護具や曝露行動に関する知識の普及につな
がる。知識定着には定期的な読み合わせが必要であり、内容を視覚的で理解しやすい記述に改
訂する必要性がある。
【結論】
マニュアル読み合わせは曝露予防行動に関する知識の普及に効果があり、定期的に継続して行
うことが必要である。
- 46 -
22.「臨死期におけるケアの手引き」の作成を目指して
発
表 者:石野裕子(パリケモ委員会 看取りケアグループ)
共同研究者:西川紗帆、福室夏希、水野涼子、大石祐香、岡村千花、水島礼子、有海洋美、田
村朋哉、髙嶺志織、長篠由恵、大石敦子、鈴木淳子
【背景】
入院中の患者はあらゆる病期が混在する。急性期病棟では緊急性の高い急性期患者のケアが優
先される傾向にあり、その中で臨死期にあり看取りを迎えようとしている患者にも、急性期看
護が適用される場面が多い。臨死期のケアの実態を明らかにするとともに看護師が患者の病期
に応じてケア内容を変更することが可能となることを目的としてグループ活動を行った。
【方法】
看護部パリケモリンクナース会内で、①臨死期にある患者の特徴についての学習、②臨死期に
おけるケアの実態調査、③臨死期におけるケアの手引き作成をグループ活動として行った。
【結果】
これまで経験知としていた臨死期にある患者の特徴を、文献検索を行い学習知とした。また、
臨死期にある患者へのケアの実態調査では、①バイタルサインの測定、②療養におけるケア、
③状態変化時の対応など、部署毎・看護師毎で対応が異なっており、看取りに向けたケアにも
急性期看護が適用されていると推測された。ここで学習した臨死期にある患者の特徴を踏まえ
て、看取りに向けてあるべきケアの姿を検討し、
「臨死期におけるケアの手引き」を作成した。
【結論】
ケアの手引き作成までのため、実際に使用しての評価には至っていない。今後は手引きを使用
し、ケア内容の評価や患者・家族への言葉がけなど、実践に伴う内容へ変更していく予定であ
る。
- 47 -
23.ストーマ近接部に生じた粘膜侵入に対する処置の検討
~CO2 レーザー焼灼術と副腎皮質ステロイドホルモン剤外用との比較~
発
表 者:河合幸(看護部 認定看護師室)
【はじめに】
ストーマの晩期合併症である粘膜移植、粘膜侵入は装具装着の耐久性の低下につながり患者の
QOL を阻害する。今回、粘膜侵入の 5 例に対し、副腎皮質ステロイドホルモン剤の外用及び CO2
レーザーの焼灼術を行った経過をまとめたのでここに報告する。
【対象】
消化管ストーマ 4 例、尿路系ストーマ 1 例の計 5 例。 1 例にのみ CO2 レーザー焼灼術施行、4
例は副腎皮質ステロイドホルモン剤外用中である(装具を装着するためローションタイプを使
用した)
【結果】
粘膜侵入が疑われた症例に、副腎皮質ステロイドホルモン剤外用を開始した。
1 例は軽快、1 例は過剰肉芽の増殖を認め装具装着に難渋したため患者の同意を得て CO2 レー
ザーの焼灼術を行い改善傾向。その他 3 例は外用剤継続し経過観察中である。
【考察】
排泄物の付着が比較的少ない下部消化管ストーマにおいて副腎皮質ステロイドホルモン剤外
用は有効であると考えられる。特に初期の段階で治療を開始すると効果が高い。
排泄物の付着が多い症例では改善しないか、悪化傾向にあり患者の同意を得て施行した CO2 レ
ーザー焼灼術が効果的であった。
CO2 レーザー波長 10.6μm、スポット 12mm、パルスモード 5w の条件で局所麻酔を行った上で施
行し、2 度の焼灼を行ない上皮化が認められた。
ストーマ周囲における皮膚障害の多くは管理上の問題で発生する。特に粘膜移植に関してはス
トーマの近接部から始まる皮膚障害が発端となることが多い。予防は適切な期間でストーマ装
具を交換する、装具の穴開けを適切なサイズで行う、などであるがストーマ・ケアに慣れてく
ると変化に気づきにくい。また、初期は周囲皮膚炎で疼痛もあるが、粘膜侵入により疼痛は徐々
に緩和されることが多く患者自身もストレスを感じにくくなる。
粘膜侵入の診断とともに治療を開始することが重要であるがストーマ・ケアの見直しを行うこ
とも必須である。
ストーマは排泄経路の変更であり、疾患が完治すれば外来受診から次第に足が遠のくが、定期
的なストーマ外来の受診を勧めていく啓蒙活動が必要であると考える。
- 48 -
24.手術体位の除圧方法の統一に向けた試み
発
表 者:小杉淳子(手術センター)
共同研究者:石上 有樹、川島 直樹、原 有里、杉野 良子、長谷川 亮、久保田淳平、坂
下
桃子、芹澤 莉歩
【背景】
全身麻酔、腰椎麻酔を受ける患者は手術中自分で身体を動かす事が出来ない。その為、手術室
看護師は除圧に心掛け、患者の手術体位を安全、安楽に固定する重要な役割を担っている。現
在クッションを使用し除圧を行っているが、クッションの使用場所に個人差があり、統一した
体位保持が行えていない。また、部屋準備の段階でクッションを集める作業から始まる為、作
業効率の低下にも繋がっていると考えられる。
【目的】
クッションの必要性を体圧測定をする事により再確認し、安全、安楽な体位保持をスタッフが
統一して行える。また、スタッフの作業効率の上昇を目指して腹臥位、側臥位のクッションセ
ット作成に取り組む。
【方法】
1.手術室スタッフ2名の腹臥位、側臥位のクッションを使用した場合、しなかった場合の
体圧測定を行いクッションセットを作成した。
2.1ヶ月スタッフに使用してもらいアンケートを実施した。
【結果】
アンケート結果(回収率 82%)
(円グラフあり)
問1 腹臥位、側臥位のクッションセットを使用した事がありますか?
はい・・・65.2% いいえ・・・34.7%
問2 クッションセットを使用してみてどうでしたか?
大変良かった・・・20% 良かった・・・80% 悪い・大変悪い・・・0%
問3 スタッフが統一した体位保持が出来るようになったと思いますか?
大変思う・・・6.6% 思う・・・66.6% 思わない・・・26.6% 全く思わない・・・0%
問4 手術前にクッションを集める時間は省けましたか?
大変思う・・・46.6% 思う・・・53.3% 思わない・全く思わない・・・0%
問5 使用してない理由を教えて下さい。
使用する機会がなかった。対象の手術を担当しなかった。
問6 今後改善した方が良いと思った点
クッション置き場の検討をした方がいい。クッションがバラバラになっていて使用出来
なかった。
【考察・結論】
アンケート結果より、クッションを集める作業が省け作業効率の上昇に繋がったと考えられ
る。その反面、統一した体位保持には問題が残った。今後、統一した体位保持を行って行く為
にもクッションの使用方法を再度説明しスタッフに呼びかけを行っていきたい。さらに、クッ
ションセットの置き場もスタッフが使用しやすい場所を検討して行きたい。
- 49 -
25.オムツ皮膚炎に対する予防的スキンケアの検討
~リモイス® バリアとプロペト® の効果の比較~
発
表 者:髙橋 歩(NICU 病棟)
【背景】
平成 23 年度に行った当院NICUでも調査では、入院患児の約 30%にオムツ皮膚炎の発生を
認めた。予防的にプロペト®を使用しているが十分な予防効果が得られないのではないかと疑
問をもった。
【目的】
リモイス®バリアとプロペト®の効果の比較。
【方法】
対象:当院 NICU に入院した患児 27 名のうち保護者の同意を得られた 24 名
期間:A 平成 26 年 3 月 1 日~4 月 16 日(プロペト群)B 平成 26 年 6 月 1 日~7 月 16 日(リモ
イス群)A・B それぞれの期間、オムツ交換時鼠径~臀部にかけて塗布しオムツ皮膚炎の発生に
ついて調べた。スタッフの手技統一を図るため、オムツ交換の手順も決定した。
【結果】
プロペト群:26 名(平均入院日数 15.07 日:2~48 日、平均出生体重 2635.9g:1630~3520
g、平均出生週数 37 週 3 日:34 週 2 日~41 週 2 日、平均便回数 80.9 回:4~333 回)のうち
オムツ皮膚炎発生者は 9 名(34.6%)
。リモイス群:24 名(平均入院日数 20.91 日:3~60 日、
平均出生体重 2464g:1267~3734g、平均出生週数 36 週 2 日:29 週 1 日~41 週 0 日、平均便
回数 135.3 回:8~505 回)のうちオムツ皮膚炎発生者は 1 名(4.2%)
。
【考察】
リモイス®バリアはpH4の弱酸性で、pH 緩衝作用を持つ。ホホバ油やシクロペンタシロキサ
ンなどにより撥水・保湿効果が得られる。プロペト®は油脂により撥水・保湿効果は得られる
が皮膚呼吸を妨げて皮膚を侵軟させてしまうデメリットがあり、真菌などを閉じ込めて症状悪
化につながる可能性があると言われている。今回の研究ではリモイス群の方が優位差はないも
のの出生週数は早く、体重は小さく入院日数も長い傾向にあり、さらに便回数は優位に多かっ
た。このことからオムツ皮膚炎発生のリスクが高かったと言える。その中でもオムツ皮膚炎の
発生が少なかったのはリモイス®バリアの予防効果が高いと言えるのではないだろうか。
【結論】
プロペト®よりリモイス®バリアの方がオムツ皮膚炎の発生が少なかった。リモイス®バリアの
皮膚保護作用の機序をエビデンスに基づき理解することができた。
- 50 -
26.病棟で化学療法・放射線治療を受ける患者へのセルフケア指導について
発
表 者:中村弥生(パリケモ委員会 口腔ケアグループ)
共同研究者:中村 佳代子
【背景】
南7病棟では、化学療法・放射線治療を行う患者が入院されることがあるが、化学療法・放射
線治療を行う患者への皮膚・口腔内のセルフケア指導の内容や、介入の流れが確立されていな
かったため、治療開始時からセルフケア介入ができていなかった。そのため、口腔内・皮膚の
症状が悪化してから認定看護師に介入依頼をすることが多く、病棟スタッフが主体的に指導を
行えていない状況であった。
【目的】
セルフケア指導の流れを作り、スタッフがセルフケア指導を行える。
【方法】
パリケモリンクナース会の年間活動計画表に沿って行動し、アンケート実施、分析評価した結
果から、病棟スタッフへセルフケア方法の伝達、資料の作成を行った。
【結果】
アンケート調査を行い、現状の把握を行った。アンケート調査から、セルフケア指導を行えて
いるスタッフもいるが、ほとんどのスタッフが指導を行えていなかった。また、指導内容や、
方法についての質問も聞かれた。
セルフケア指導の内容について、病棟スタッフへ、セルフケアを行う根拠から説明し、皮膚ケ
ア・口腔ケアの方法を口頭にて伝達した。患者への指導として、口腔ケアは既存のパンフレッ
ト、皮膚ケアは作成したパンフレットを使用して指導を行うように伝えた。そして、セルフケ
ア指導介入日を入院の翌日と決め、入院前の生活習慣についての確認事項にそって確認し、セ
ルフケア指導を行うようにしていく。日々の観察はスタッフが症状の評価を確実に行えるよう
に、有害事象共通用語基準を基準として、評価していくことを再度確認した。また、継続して
観察・指導を行えるように、毎週水曜日を評価日として、看護指示に入力し、現在行われてい
るケアが現状に合っているか評価、カンファレンスを行っていくこととした。
以上の内容を、12 月より病棟で実施していくこととした。
病棟スタッフへ伝達し、12 月よりセルフケア指導の介入を行うようにしたが、現在、対象患者
の入院がないため、実際にはまだ実施できていない状況である。
【考察】
指導の流れは作成できたが、実際には運用できておらず、評価ができていない。今後も継続し、
適宜、介入方法やパンフレットの内容を修正していく必要がある。
【結論】
今回作成したパンフレットやセルフケア指導介入の決まりなどを作成したため、今後も継続し、
適宜修正・評価行っていく。
- 51 -
27.針穿刺吸引細胞診の概要(乳腺・甲状腺を中心に)
発
表 者 滝浪雅之(病理診断科)
共同研究者 山田仁彦、斎藤彩香、土屋和輝
【はじめに】
針穿刺吸引細胞診は乳腺、甲状腺、唾液腺、リンパ節、肺などの病巣に穿刺吸引器具を用いて
直接針穿刺し採取する。今回乳腺と甲状腺の針穿刺吸引細胞診について述べる。
【対象と方法】
針穿刺吸引細胞診では、超音波検査下で腫瘤に穿刺し、注射筒のピストンを引き、陰圧をかけ
る。陰圧をかけたまま左右に2、3回穿刺針を回転させたり、上下に微動させ細胞採取する。
穿刺針とシリンジを直接連結させても構わないが、なるべく補助者をつけ、エクステンション
チューブを利用することが望ましい。腫瘤内で平圧に戻した後、穿刺部位から注射針を抜く。
注射針を注射器から外し内筒を引き注射器内に空気を入れ、内筒を引いた注射器に再度注射針
を装着し、スライドガラスに吹き付ける。吹き付けたらただちに(1 秒以内)95%アルコール
に入れて固定する。以上が一般的な穿刺手技であるが、甲状腺において非常に硬い組織構造を
持つ乳頭癌と柔らかく血管に富んだ濾胞性腫瘍では異なる手技が必要とされる。血管に富んだ
腫瘍に対して過度の吸引陰圧をかけると血液成分のみの標本となり、不適正標本となることが
多い。また乳腺では穿刺時間(陰圧をかけている時間)が長いと血液を多量に混入し、採取細
胞量が少ないことの多い硬癌や浸潤性小葉癌では、注射針内で細胞変性を起こす恐れがあるの
で、原則的には長くても 10 秒以内で行うこと。また吹き出した検体を 95%アルコールに入れ
る動作を一人で行うと、どうしてもすばやく作業が出来ないため、介助者が 95%アルコールに
入れることが望ましい。今回当院で採取された乳腺と甲状腺の適正標本、不適正標本、乾燥標
本の細胞像を提示する。
【結果・考察】
いかに手技を素早く行い、細胞を乾燥させないことが重要である。補助者が臨床医のサポート
することでよりよい標本を安定して作製することができる。現在、外科の穿刺吸引細胞診は病
理検査技師が現場に出向き補助を行っている。出向くことによって採取時の検体の性状や採取
量を把握することができる。
【まとめ】
今後は耳鼻科等の穿刺吸引細胞診を行う際、外科と同様に補助を行えるよう検討し、標本の質
を一定に保つように工夫をしていく必要がある。
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28.外来化学療法患者の食事に関連する需要調査と支援ツールの作成
発
表 者 内田理恵(臨床栄養科)
共同研究者 朝日恵美
【背景】
入院中のがん患者には食事の個別対応など管理栄養士の介入体制があるが、外来で化学療法を
行う患者の食事に関連する支援は、外来化学療法室(以下化療室)の看護師らに委ねられてい
る。この現状について、化療室カンファレンスで問題提起された。
【目的】
外来で化学療法を行う患者の食事に関連する需要を明らかにし支援体制を考える。
【方法】
2014 年 9 月から 10 月に、化療室で化学療法を受けた患者 117 名を対象に、筆者らが作成した
選択式質問用紙を用いて調査を実施し、単純集計を行った。倫理的配慮として個人が特定でき
ないように無記名とし、調査に協力しなくても不利益は生じないことを文章で説明した。調査
用紙提出をもって同意を得たとした。調査と平行し化療室看護師と話合いを重ね支援ツールの
作成を行い、化療室に配置した。
【結果】
調査用紙回収率 59.8%、有効回答率 98.5%で、男性 39.1%平均年齢 62.9±9.9 歳、女性 60.9%
平均年齢 54.7±11.5 歳であった。55%が「化学療法開始後食事のことで気になることがある」
と回答し男女差はなかった。気になった内容として、味覚の変化 31.9%、食欲不振 24.6%、
骨髄抑制時の食事 23.2%と回答があった。解決方法は「医療者に聞いて解決」が 75.4%であ
った。今後管理栄養士の介入希望は 44.9%であった。同時進行で作成したツールは合計 8 種類
のパンフレットで、調査期間中の使用は 107 枚であった。最も多く利用されたのは「味覚の変
化」
「食欲不振」であった。
【考察】
管理栄養士の介入希望が 44.9%にとどまった理由として、すでに問題を解決した患者が含まれ
ていることが考えられる。味覚の変化、食欲不振は個人背景が影響を及ぼす面があり、パンフ
レットを渡すだけでは不十分であると考える。化学療法を受ける患者に対して多職種で構成さ
れたチームによる支援は不可欠である。管理栄養士がチームの一員として役割を担うためには、
個人背景を考慮した介入が求められる。そのためのシステム構築が課題であり、臨床栄養科と
化学療法センターで検討を重ねる必要がある。
【結論】
当院で外来化学療法を受ける患者は、味覚の変化、食欲不振、骨髄抑制時の食事について情報
を得たいと考え医療者に相談することで解決を試みていたが、回答者の半数近くは管理栄養士
の介入を希望していた。患者の需要とパンフレット使用状況は比例関係にあった。
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第 14 回
済生会院内研究発表会
演題発表について
◇開催日程について
開 催 日 : 研究・発展部門 平成 27 年 1 月 27 日(火)
一般発表部門
会
平成 27 年 1 月 29 日(木)、1 月 30 日(金)
場 : 北館地下 講堂、北館 7 階 第一会議室、カンファレンスルーム
◇演題について
・発表領域を【研究発展】
・
【一般発表】より選択し、申込みいただきます。
各現場での活動の報告や症例報告をはじめとして、学術的な内容まで、皆様が日ごろ
実践されていることを発表してください。
・申し込み多数の場合には、教育・臨床研究委員会による事前審査の後、採用演題を決定
いたします。
・抄録の提出後、教育・臨床研究委員会による査読を行います。
・発表抄録は原則として、静岡済生会総合病院医学雑誌に掲載されます。
・発表内容の著作権は静岡済生会総合病院に帰属します。
◇抄録について
・Microsoft Word にて【背景】【目的】【方法】【結果】【考察】【結論】【文献】【図表の説明】
などの形式で作成してください。
・記載項目は、演題名・発表者・共同研究者・抄録本文で 1000 字以内とします。
◇発表について
・内容は結論に達していなくても構いません。結果に基づいた問題提起でも結構です。
・申込演題は発表者 1 人 1 題とします(共同研究者としての発表は制限がありません)。
・研究・発展発表はパワーポイントを使用して発表を行います。
・一般発表はポスター発表となります。
・発表時間は 1 演題あたり持ち時間 8 分(発表 6 分、質疑応答 2 分)となります。
◇ポスター発表について
・パネルの大きさは縦180㎝、横120㎝となります。
・ポスター閲覧は済生会職員と看護学生が対象になります。
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静岡済生会総合病院医学雑誌 26(1): 55-58, 2016
静岡済生会総合病院医学雑誌
Journal of Shizuoka Saiseikai General Hospital
投稿規程
静岡済生会総合病院医学雑誌
編集局
教育センター
教育・臨床研究委員会
Ⅰ)「本誌の主旨(Mission & spirit)」
本誌は静岡済生会総合病院・静岡県済生会支部、施設における研究・医療・教育・福祉活動など
を掲載し、院内のみならず、社会における医療・医学の発展に寄与し、人々の健康と福祉に貢献
することを目的とする。
Ⅱ)「執筆者の資格」
筆頭発表者または著者、共同著者は静岡済生会総合病院に勤務する職員とする。
ただし、当編集局から委託された原稿についてはこの限りではない。
Ⅲ)「執筆形式」
原稿の種類
原著論文、症例報告、総説、論説、活動報告、その他など医学、歯学、看護学、薬学、心理、
福祉、医療技術、医療事務など広い領域から形式を選択できる。研究的な内容のものだけで
なく、日常の業務の発展的な内容も対象とする。
なお原著論文の場合は、他の出版物にすでに発表あるいは執筆されていないものを原則とする。
ただし、学会や研究会などに講演等で既発表または発表予定であるものはこの限りではないが、
その場合には、その旨を原稿末尾に記載する。
≪参考≫
【原著論文】知識や技術の発展に貢献する独創的な論文であり、オリジナルなデータもしくは分析
に基づいて得られた知見と実践への示唆が論理的に述べられているもの。
【総
説】特定のテーマについて多面的に内外の知見を集め、また文献をレビューして当該
テーマについて総合的に学問的状況を概説して、考察したもの。
【論
説】様々な領域の問題や話題のうち、議論が交わされつつあるものについて、今後の
方向性を指し示すような著述や提言をするもの。
- 55 -
投稿形態
一般投稿、院内研究発表会推薦(研究または研究発展)、編集局推薦、院内研究発表会抄録
執筆要項
1)原稿は原則として Microsoft Word の楷書で横書、口語体、現代仮名使い、明朝体とし、
句読点は明確に付けてください(フォントの指定がある場合には、ご一報ください)
。
製本の都合上、用紙サイズは A4 で余白は標準のものとしてください。
2)原稿の文字数や図の枚数に制限は設けていないが、編集局の判断で、原稿量の調節を
依頼することがあります。
3)原稿表題として論文題名(副題があれば記載)
、代表著者名、所属部署名(部署内のチー
ム名または院内・院外における組織横断的な委員会名は別に明記)、職種名、共同著者
名(所属部署名、職種名)
、Key Word(3~5 語程度)を記載してください。
4)文頭には、論文全体の内容がわかるように、250 字程度の抄録をつけてください。
5)論文には目的(はじめに)
、対象、方法、結果、考察(結語)等を記載してください。
6)写真や図、表はカラーまたは白黒等、原稿通りに掲載します(JPEG または PDF、PNG、
GIF、Excel)。写真や図、表及びその説明は和文、英文表記のいずれも可。
7)外国人名、冠名症候群などは欧文表記とし、活字体で明記してください。外国の国名、
地名などで一般的なものは片仮名表記で結構です(例:カナダ、ワシントンなど)。
8)数字は特別な場合を除き算用数字で、また度量衡単位は国際単位(S.I)に準拠する。
9)引用番号は本文中の引用箇所右肩に片括弧(例
済生会 1))で掲載する。文末に掲載
する引用文献は引用順に、参考文献の場合は著者名で ABC 順に下記の例にまとめる事
を原則とし、共同執筆者は 2 名以上の場合『~ら、~ほか、et al』としてください。
『文献の書き方』
◎単行本含む書籍
・単独あるいは共同執筆の場合
著者名:書名、引用頁、出版社名、発行場所(外国文献の場合)
、発行年
(例
済生太郎、済生花子:済生会総合病院の歴史、済生会図書、pp16-20、2015)
(例
Saisei S,Shizuoka A:The history of Saiseikai:Saiseikai,5th ed,Italy,pp5-20,1911)
・分担執筆の場合
著者名:論文題名、編者名(編)
、書名、引用頁、出版社名、発行場所(外国文献の場合)、
発行年
(例
済生次郎:済生会総合病院の現在、済生空子(編)済生会医学書、第 2 版、pp10-15、
済生出版、2014)
◎雑誌
・著者名:論文題名、雑誌名、巻数、引用頁、発行年
(例
済生三郎:済生会総合病院の未来、済生会医学雑誌
(例
Saisei C,Suruga B,et al:Composition of the Saiseikai.Shizuoka Saiseikai Journal of
Medicine 25:70-71,2016)
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Vol.24、No.1、10-11、2014)
◎インターネット
・著者名(年号)
、Web サイトのタイトル、URL、アクセス年月日
(例
済生風子(2016)
:済生会の明日、静岡済生会総合病院医学雑誌
http://www.siz.saiseikai.or.jp/hosp/
(例
2016.1.1 アクセス)
Aoi S,Suruga B (2015):The future of Saiseikai, http://www.siz.saiseikai.or.jp/hosp/
2015.1.1 アクセス)
『原稿記入例』
1)論文タイトル
6)抄録(250 字程度)
2)代表著者名
7)本文
3)所属名(チーム名、委員会名)
目的(はじめに)
、対象、方法、結果、考察
4)共同著者名(所属名)
(結語)等を記載し、適宜図表の説明を掲載。
5)keyword(3~5 語程度)
8)文献表記
倫理規定
ヒトを対象とした臨床研究に当たっては、済生会総合病院の倫理委員会の了承を得ていること
が望まれる。やむを得ず、承認が得られていない原著論文にはヘルシンキ宣言(1964 年採択、
2008 年改訂)を遵守して行ったものであることを必要とし、被験者の人権、安全性、インフォ
ームド・コンセントなどの倫理的配慮した旨、本文中または文末に明記する。
引用・転用の許諾について
論文の執筆に際しての他著作物からの引用・転用については、著作権保護により著者らにより
予め原出版社および原著者の許諾を得ていること。
査読(Peer review)
論文は 2 名以上の編集局員(必要に応じて編集局が適当と認めた院内外の専門家を含める)で
査読し、必要に応じて論文内容の加除訂正を著者に依頼する。必要に応じて再投稿のなる場合
もある。
また英文による投稿の場合には、病院予算にて外部に英文添削や校閲を依頼する。
校正
論文の校正は、2 校までを原則とするが、それ以降は編集局に一任する。
校正は、専ら誤字、誤植などの修正にとどめ、原稿への加筆や改文などは認められない。
Ⅳ)著作権(Copyright Transfer)
本誌に掲載された文章および写真や図、表などの著作権は済生会総合病院に帰属する。
掲載にあたり代表著者は別紙の「著作権委譲承諾書」に、すべての共同著者の同意を得て代表とし
て署名する、または共同著者全員の署名をして提出し、原本は編集局(教育センター)で保管し、
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複製(コピー)は代表著者で保管することとする。
文章および写真や図、表などの使用に関して、著作者自身のこれらの権利を拘束するものではない。
Ⅴ)公開
原則として非冊子体とする。
雑誌は査読後の加除修正、
校正の後に PDF 化して静岡済生会総合病院のホームページ内で公開する。
冊子体も必要部数作成し、静岡県立図書館などに所蔵用として提出します(冊数は病院と相談)
。
平成 26 年度に第 25 巻 1 号(Vol.25、No.1)よりホームページ上で公開を行う。
Ⅵ)その他
本誌は非冊子体で、原則として非売品とする。
依頼原稿であっても原稿料は発生しない。掲載料も無料とする。
投稿規定に関する問い合わせ窓口は、静岡済生会総合病院医学雑誌編集局(教育センター)とする。
なお教育センターで判断できない事案の場合には、教育・臨床研究委員会に一任する。
Ⅷ)附則
この規定の改正は、平成 26 年 3 月 10 日から施行する。
この規定の改正は、平成 28 年 3 月 7 日から施行する。
編集長:静岡済生会総合病院
教育センター長
編集局(委員)
:教育・臨床研究委員会、その他
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編集後記
2015 年度の発刊に際し、執筆者および関係者の皆様のご協力に感謝申し上げます。
静岡済生会総合病院における研究や活動の発表の場として、今後ともご支援よろしくお願いい
たします。
また、本雑誌、および掲載の内容についてのご意見、ご質問などは、教育センター
[email protected]
までお寄せください。
平成 28 年 3 月
編集局長
榛葉 俊一
病 院 理 念
私達は暖かい思いやりの心で質の良い
医療・福祉サービスを実践します
静岡済生会総合病院医学雑誌 (Vol.26 No.1)
《Journal of Shizuoka Saiseikai General Hospital》
発 行 日:2016 年 3 月 発行
発 行 元:静岡済生会総合病院
編
集:静岡済生会総合病院 教育センター
教育・臨床研究委員会
表紙写真:総務管理課
髙宮 哲夫
ご意見・お問い合わせ先
静岡済生会総合病院 医学雑誌 編集局
〒422-8527
静岡県静岡市駿河区小鹿一丁目 1 番 1 号
静岡済生会総合病院
教育センター 宛
E-mail:[email protected]
TEL:054-285-6171(代)
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FAX:054-285-5179