これまでの募集制度改善、募集環境整備活動

 これまでの募集制度改善、募集環境整備活動
大蔵省・金融庁との主な関係事項(昭和53年度∼平成6年度の主な動向)
⑴ 昭和53年10月31日 「大蔵メモ」を受領、内容は次の8項目。
①代理店種別 ②手数料格付 ③紹介代理店 ④総代理店 ⑤プロ代理店養成法
②プロフィットコミッション ⑦最低保険料 ⑧プロ代理店の規模(人・挙績)
⑵ 昭和54年2月9日 「全代連答申」を提出、前記「大蔵メモ」に対し、本会の意見を述べたものである。
「損害保険ノンマリン代理店制度における諸問題に関する答申」→大蔵省より高い評価を受ける。
⑶ 昭和54年12月11日 大蔵省から「ヒヤリング」を受け、代理店の立場から意見を述べる。
主なテーマ ①研修生制度 ②単種目代理店 ③挙績基準 ④資格者数基準 ⑤顧客対応力
⑥定期検証 ⑦テスト ⑧小店舗住宅 ⑨最低手数料 ⑩特定契約 等々
⑷ 昭和54年12月26日 「大蔵概要回示」を受領。
「募集制度改定の概要について」
(募集制度改定の骨子決定)
⑸ 昭和55年6月11日 「大蔵通達」を受領、募集制度改定の基本が決定、これにより昭和55年10月1日
募集制度が改定され「新ノンマリン代理店制度」が発足した。
「損害保険募集制度の基本要綱について」
、同年6月10日付蔵銀第1459号
⑹ 昭和58年6月 「望ましい代理店手数料体系のあり方」
、平成2年4月 「長期展望に関する答申」
、平
成6年5月 「今後の損害保険代理店事業の在り方を求めて」
、平成7年2月 「保険業法の改正に伴
う募集関係問題について」
、平成8年5月 「直販保険会社研究会提言」
、平成9年10月 「募集規範」
を大蔵省へ提出した。平成11年3月には金融監督庁へ「新しい資格制度について」を提出し自由化時
代にふさわしい資格制度の制定を要請した。
⑺ 平成6年度 「大蔵省・保険ブローカー制度懇談会」並びに「大蔵省・地震保険制度懇談会」へ本
会代表が参加した。
⑻ その後も随時、金融庁の担当官に本会の現状と主な案件について報告、要望を提出するとともに指
導を受けている。
(特定契約代理店問題、銀行等による保険商品の販売、保険料控除に係わる税制改
正要望等々)
。
大蔵省への主な要望事項とその回答
要望事項等
回 答
料率改訂のほぼ同時実施についての問題(代
理店の生計と経営上の問題点) (昭和56年)
代理店数適正化についての要望
(多数の非自立代理店、研修生制度等に関する
問題点)
普通種別代理店の挙績基準引上げについての
要望
(非自立代理店の活性化と整理の方向)
料率検証は定期的に行い、常時、正しい料率で消費者に商
品を提供する必要がある。
基本はプロ代理店を育成することにある。新規参入を止め
ることはできない。研修生制度は既存代理店との関係で無
制限に続けて行くことには問題もあろう。
現行挙績基準では生活できない。しかし、これを引き上げ
るという方法は必ずしも本来のやり方ではないのではない
か。能力ある代理店が酬われるという手数料体系の問題で
あろう。
手数料体系改善についての要望
手数料体系の問題はファンドの問題ではない。代理店とし
(あるべき手数料体系の追求と現行体系上の不 て生産性を向上していく中で、どういう分前を得るかとい
合理性の是正)
う問題として認識する必要があろう。
保険審議会への代理店の代表参加に関する要 保険審議会で、今後、募集制度に関する審議を行う機会が
望
あれば、代理店の代表的団体である日本代協からの意見を
聞くための仕組みを考える。
(平成3年10月、日本代協会長が保険審議会臨時委員として
参画。)
保険業法改正にあたり自己契約比率を30%以 初級種別については、50%以下となっており、これとの関
下とする要望
連から新保険業法案において30%以下とすることは難しい。
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損保協会への主な要望事項とその回答(損保会社との個別案件を含む。
)
⑴ 自動車保険関係 [昭和55年∼平成9年]
要望事項等
回 答
自動車保険自己契約代理店手数料率設定につ
基本的、精神的には理解できるが、多大のコストを必要と
いての要望 (昭和55年10月)
するだけでなく、導入の効果も少ない。実施は困難である
と考えられる。
自動車共済無事故割引率継承に関する要望
現在、無事故割引率の継承を認めているのは農協共済だけ
(昭和58年8月)
である。他の自動車共済についても検討したが、結論的に
時期尚早となった。その主な理由は両者間で規定上整合性
が欠けること及び農協共済以外の共済では無事故確認事務
処理体制を持っていないことにある。
自動車保険制度中5、4等級代理店手数料率
手数料率水準の引上げになるので難しい。データを検証し
手直しに関する要望
たが、5、4等級の契約は全体の2%にも達していない。
(昭和60年3月・平成5年3月)
従って、平均的に言えば、1代理店当りの年間手数料減収
額は5,000円程度である。手直しは難しい。
(平成5年5月28日、本会はこの要望を取り下げた。)
小損害支払いによる適用等級手直しに関する
自動車保険の場合リスクの実態は事故を起しやすい人か否
要望 (昭和60年3月)
かにあり、支払額の問題ではない。従って、支払額により
適用等級上差を設けることは適当でない。
搭乗者傷害の事故件数算入除外に関する要望
搭乗者傷害の単独請求の場合には算入しないこととする。
(昭和60年3月) (昭和61年10月1日実施済)
損害時契約者対応業務とその遂行経費に関す
損害時契約者対応業務のすべてを包括して代理店の業務で
る要望
あり、代理店手数料の中に含まれている。従って、損害時
契約者対応業務の遂行に要する経費の支払いは応諾できない。
積立型自動車保険に関する検討状況と今後の
基本としては全社統一商品とし、商品性を高めるとともに、
見通し (昭和59年2月)
先行する積立型商品との整合性をはかる必要がある。
積立型自動車保険については、検討すべき問題が多いこと
から、成案を得るに至っていない。
自動車リース会社代理店の自動車保険契約取
リース契約では、車の所有権がリース会社にあることから、
扱の改善に関する要望 (昭和62年6月)
同時に自動車保険もリース会社代理店が取扱うことが一般
的である。損保会社との間で包括的特約をかわしている例
が多い。しかし、この場合でも、ユーザーが自分で付保す
ると言えば同特約から除外されることになっており、リー
ス車の付保はユーザーの判断に任されている。なお、リー
ス会社に対する代理店委託に当っては、リース物件の保険
料割合が全取扱保険料の30%を越えないよう基準を定め、
30%を越えたときは代理店委託契約を解約することにして
いる。
二輪車の車台番号打刻位置標準化に関する要
望 (平成2年3月)
要望の線にそって対処する。まず、運輸省、その後日本自
動車工業会に持ち込み検討を願った結果、同工業会より
「将来的には打刻位置数の減少を図るよう努力する。」との
回答があった。(平成3年1月)
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販売チャネル別損害率管理に関する提言
現在、多くの損保会社では代理店別に損害率の管理を行って
(平成5年5月)
セット割引の導入に関する提言
おり、このデーターで提言の趣旨に充分対応できると考える。
現状では、自動車保険契約の大部分がセット契約であり、
(平成5年5月)
従って、現在使用中の付加率はセット契約の場合の付加率
である。セット割引は現行料率の中にすでに含まれている。
車体構造高度化等に基づく損害率の上昇とそ
今日まで、自動車会社技術者との間で協議を重ね、改善で
の改善に関する提言 (平成5年5月)
きるところは改善して来た。今後とも「壊れにくい、直し
やすい車体」を求めて努力する。
「個人」
から「法人」に変わった場合の料率の適
平成8年4月1日改定
用に関する要望(昭和60年3月・平成7年4月)
個人事業を法人組織にした場合、車の使用環
境は何も変っていなくても、無事故割引(等
級)優良割引が継承できない。是非継承でき
るよう改定願いたい。
「車両入替規定」に関する要望(平成7年4月)
平成9年9月1日改定
被保険自動車の入替については、廃車・譲渡
入替前後の車両の所有者が同一である場合に加えて、入替
又は返還された後、その代替として、同一所
後の車両所有者が入替前の「記名被保険者」
「記名被保険
有者が新規取得した場合のみ裏書処理が出来
者の配偶者」「記名被保険者又はその配偶者の同居の親族」
るという規定になっている。一家で2台以上
である場合についても入替が可能となった。
保有している契約者は多数あり、実態に照ら
入替前の自動車が「廃車・譲渡・返還」されていなくても、
して無理がある。時流に適合するよう規定の
車両入替が出来るようになった。
改定を望む。
平成9年8月1日改定
「他車運転危険担保特約」に関する要望
(平成7年4月)
被保険者の範囲に「記名被保険者もしくは配偶者の別居の
未婚の子」を追加。
他車運転危険担保特約の賠償責任の被保険者
は記名被保険者、配偶者、同居の親族に限っ
ており、
「別居の未婚の子」は含まれていない。
しかし、同特約の自損傷害、無保険者傷害に
は含めており、又、
「運転者家族限定特約」
でも家族に含めている。同じ自動車保険の特
約で家族の範囲が異ることは、契約者にとっ
て理解しにくく、トラブルの原因にもなる。
「別居の未婚の子」も被保険者に含め整合性
をはかるよう改定願いたい。
平成8年12月16日実施
「複数所有者割引」に関する要望
(平成7年4月)
個人契約者が2台目以上の車に新たに保険契
約をする場合に既契約が11∼16等級で車の所
有者が同一で、他の定められた条件を満たせ
ば10%割引(7等級)を適用する規定となっ
ている。近年、一家に複数の車を所有してい
る家庭は多数あるが、車を購入する際には、
子供名義の場合や、車庫の問題もあり、所有
者が契約者と異なるケースも多い。この規定
の所有者については、配偶者、同居の親族、
別居の未婚の子まで、拡大願いたい。
― 148 ―
「団体扱対象車種にRV車追加」に関する要望
平成9年8月1日改定
(平成7年11月)
団体扱保険料分割払特約の対象自動車に①1
ナンバー RV車②キャンピングカーを追加願
いたい。
⑵ 火災保険関係 [昭和57年]
特級(一般)の火災一般物件手数料率に1%
一般物件には、ホテル、デパート等企業物件に属するもの
上乗せすることについての要望
があり、一概に大衆物件分野とは言えない。一般物件だけ
(昭和57年6月)
を取上げて1%アップすることは非常に難しい。
⑶ 地震保険 [平成6年・平成17年]
地震保険の改定要望⑴
平成6年10月の常任理事会において、「地震保険の見直し」につき、東京代協商品研究委員会に付託。平
成7年3月
「地震保険見直しに向けての提言」をまとめ、大蔵省、損保協会に提出した。平成7年1月阪神・
淡路大震災が発生、大被害をもたらし、家計地震保険制度の社会的、経済的役割の見直しが求められ、大蔵
省は直ちに地震保険制度の改定検討に着手、地震保険制度懇談会を10回に亘り開催、本会代表として佐藤副
会長が出席し「提言書」を基に、消費者、商品販売者の立場から発言した。
平成7年10月制度改定につき、閣議決定され、平成8年1月より実施された。
(改定内容)
123
① 引受限度額の引上げ
建物 1,000万円→5,000万円
家財 500万円→1,000万円
② 家財の損害認定方法の改善 ・建物の損害をもとにする方式→家財の損害に着目した方式
③ 家財の半損の支払割合の改善 ・半損の場合10%→50%
④ 総支払限度額の引上げ ・総支払限度額1.8兆円→3.1兆円
以上の通り、ほぼ日本代協の提言に近い形で改定された。
今後消費者対応の強化、地震保険の普及拡大に向け、我々のより一層の努力が求められている。
地震保険の改定要望⑵
平成17年10月の理事会において、九州北ブロックから地震保険の保険金支払について改定の提案があり、
損保協会に要望書を提出することが決議された。平成17年11月25日付けで概略下記内容の要望書を損保協会
に提出した。
1.改定の趣旨
現行制度においては、半損の場合と一部損の場合の保険金支払額が保険金額の50%、5%と落差が大きく、
契約時の契約者・被保険者の不満が多い。また、実際の地震発生時においても、保険金協定に難航するケー
スが多い。ついては、一部損の場合の支払内容を改善する必要がある。
2.一部損の場合の支払い内容改善
次のいずれかの方法で一部損の場合の支払い内容を改善する。
⑴ 現行の半損の場合と一部損の場合の中間の支払いを創設する。
半損の場合 保険金額の50%(保険価額の50%限度)
新一部損の場合 保険金額の一定割合(保険価額の一定割合限度)
(一定割合:たとえば20%)
一部損の場合 保険金額の5%(保険価額の5%限度)
⑵ 現行の一部損の場合の支払額を改善する。
半損の場合 保険金額の50%(保険価額の50%限度)
新一部損の場合 保険金額の一定割合(保険価額の一定割合限度)
(一定割合:たとえば20%)
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⑷ 新種保険関係 [昭和55年∼平成6年]
要望事項等
回 答
新種保険における団体規定の改善と整備に関
規定を明確にし、拡大解釈或はどちらにもとれる規定をな
する要望 (昭和55年10月)
くす方向で検討して来たが、規定を細分化することは、時
流から見て至難である。当面は個々のケースについて対応
を進める方向でさらに努力することとしたい。
クレジットカードホールダー団体契約改善に
要望の主旨は理解する。よって、当面、パンフレット、チ
関する要望 (昭和59年3月)
ラシ等によるユーザーへの割引率の提示を行わないことに
したが、引続き、料率改定などの機会をとらえ割引率を圧
縮する方向で努力する。なお、昭和59年度以降新しいカー
ド団体の割引は行っていない。
プリペイドカードに関する損保商品開発の要望
現在、大蔵省では、プリペイドカード発行会社に「供託金
(平成元年2月)
の積立」を義務付ける方向で法的対応を進めている。法の
整備が進む中で、この「供託金の積立」に対応する損保商
品の開発に努めたい。
介護費用保険改善に関する要望
給付についてのスライド制導入など判らないではないが、
(平成2年5月)
実際には、隣接業界との関係もあるので、早急な改定は困
難である。
社団法人全国シルバー人材センター協会全国
(幹事損保会社)要望の
団体傷害保険制度に関する要望
本制度は強制加入とはしない。
取扱代理店の選定は各地のシルバー人材センターの自主的
判断による。
各地のシルバー人材センターがこの制度に
加入した場合、全福サービス代理店55%、既取扱代理店45
%の代理店間分担とし、期限を設けない。
各地のシルバ
ー人材センターと一般代理店との間で個別の事情があると
きは、当該シルバー人材センターの自主的判断で従来通り
の取扱いで差支えないこととする。
一般代理店が新規参
入できる道を開く。この内容により解決に努める。
(平成6年7月11日、この内容で解決済)
⑸ 予防広報関係 [昭和57年11月]
要望の主旨に沿い対応する。(昭和57年11月実施済)
損協が行う予防広報業務に関する要望
損協が作成する「損害保険の月」のポスター
などに日本代協の名称を入れること等
⑹ 募集制度関係 [昭和56年∼平成元年]
代理店数の増加傾向とその適正化に関する要望
代理店設置については選別して行っており、乱設はしてい
(昭和56年4月)
ない。代理店の多寡については何を基準に判断したらよい
か難しい。損保会社の立場から言えば、保険の一層の普及
を図っていくためには、代理店の増設はどうしても必要で
ある。(平成21年度末においては、代理店総数は、約20万8
千店となり、ピーク時[’96年度]の約1/3の水準となっ
ている。)
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研修生制度の健全な運営に関する要望
研修生制度はプロ代理店育成が主旨で、この観点から指導
(昭和56年10月)
に努めているが、基本的には各損保会社の個別問題である。
しかし、研修生制度の健全な運営は必要なことなので、そ
の旨各社に徹底を図る。
普通種別代理店の挙績基準引上げについての
300万円への引上げは現時点では「できる」とはいえない。
要望 (昭和56年4月)
しかし、経営の効率化、プロ育成の観点から現状に満足し
ているわけではない。
代理店手数料率体系の改善に関する要望
代理店手数料の性格、本質についての検討を現段階でもう
(昭和56年4月)
一度取上げてもよいと思う。しかし、手数料率の水準もか
なりいいところにあり、また急激な変化も難しい。要望は
問題提起として受止める。
保険料預貯金種類への定期預金導入について
要望は理解できる。具体化の方向で検討する。
の要望 (昭和56年10月)
(昭和58年4月1日実施済)(平成2年10月1日、MMC預金、
大口定期預金が加えられた。)
代理店開業時保証金を賦課することに関する
保証金を賦課することの目的が判然としない。また、保証
要望 (昭和56年10月)
金保管上の問題もあるので、保証金賦課制度を導入するこ
との実現性はない。
これらの費用を損保会社で負担することは非常に難しい。
預金口座振替による保険料収納制度にかかる
費用及び満期通知にかかる郵送料等の損保会
社負担についての要望 (昭和56年10月)
新ノンマリン代理店制度への他種目組込みに
新ノンマリン代理店制度への移行完了後の課題として考え
関する要望 (昭和56年10月)
たい。その後医療費用保険、介護費用保険を組込んだ。
初級種別代理店の取扱保険種目制限に関する
独禁法との絡みもあり、業界の規定として制限を行うこと
要望 (昭和56年10月)
は難しい。
代理店登録手続の改善に関する要望
代理店登録時「代理店開業に関する報告書兼念書」の提出
(昭和58年6月)
を義務付ける方向で検討する。
(昭和61年4月1日実施済)
→(平成8年4月1日中止)
新設代理店に対する損保協会監査室による監
監査室による監査の実施は法規、規定、人手、経費等の問
査の要望 (昭和58年6月)
題があるので至難である。新設代理店についての指導、育
成は各損保会社の問題である。
(損保協会の機構改革によ
り平成9年3月31日協会監査室は廃止された。)
自己代理店登録時「同意書」の取付を制度化
要望の主旨は理解できるが、現在、自己代理店を規制する
することに関する要望 (昭和61年5月)
規定を新たに設けることは、憲法並びに独禁法との問題が
からんでくるので断念せざるを得ない。
自己物件代理店新設時の猶予期間廃止に関す
要望の主旨は判るので、猶予期間の廃止につき実際面にお
る要望 (昭和61年5月)
ける影響を含め検討したい。(昭和62年1月1日実施済)
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大資本の募集市場への本格的参入に関する分
基本的な考え方として要望の主旨は理解できる。しかし、
野調整法的視点からの要望 (昭和61年6月)
損保商品の特性を考えた場合、大資本が必ずしも有利であ
るとは考えられない。一般の代理店が十分な募集力を備え
ていれば、大資本の参入を否定的に考える理由は薄い。ま
た、分野調整法上代理店が適用除外業種なのか否か法的解
釈が明確でない。具体的な問題が出て来れば検討すること
としたい。
(注)
分野調整法(略称)→「中小企業の事業活動の機会の確保の
ための大企業者の事業活動の調整に関する法律」
自己契約・特定契約の比率計算特例措置の設
自己契約・特定契約の比率は現在取扱上30%以下となって
定に関する要望 (昭和60年12月)
いるが、この計算から積立型商品の保険料から積立部分を
除外する特例措置設定の問題は、積立型商品別に積立部分
に差があり、また他の規定との関連及びその全額が保険料
であるとの観点を含め、本件の具体化は至難である。
連結決算会社保険料についても検討したが、これも極めて
困難である。平成8年4月1日から新保険業法の施行に伴
い対象種目が従来の「火災・自動車・傷害」から「全種目」
に拡大され、特定契約比率の計算対象も「最大特定者」か
ら「全特定者合計」となった。
募集文書、他業界の関連文書、新聞記事等の
不適切と思われる募集文書については、日本代協からの指
適正化に関する要望 (昭和61年10月)
摘もあり、その都度改善して来た。今後とも誤った報道、
まぎらわしい募集文書が出ないよう十分注意して行きたい。
クレジットカードによる保険料引落制度導入
本件は昭和56年保険審議会答申中の保険料支払方法多様化
の対応に関する要望 (昭和59年2月)
の一環にある案件であるが、保険料即収の原則、引落手数
料約4%の代理店負担等々大きな問題が多いので、当面、
その実施は百貨店、スーパー代理店に限定し、また、適用
対象保険種目も限定する。なお、今後、一般の代理店が含
まれてくる時点では、改めて協議することとし、その際、
今次の導入は前例とか実績に一切しない。
専属・専業代理店の育成策と特級(一般)代
昭和56年保険審議会答申を踏まえ検討して来た。その結果、
理店の優遇策に関する要望 (昭和60年12月)
専属の特級(一般)代理店を対象として育成を促進するた
め、看板設置、永年功労表彰、種別認定祝等の面で優遇策
を設けるべきであるとの結論になった。
(昭和62年1月1日実施済)
積立型一時払保険料即時振込制度の導入につ
積立型商品の競争力を高めることが急務になって来た。こ
いて (平成元年10月)
のためには、平均で45日間代理店口座に滞留している点の
改善がぜひ必要である。そこで、検討の結果、積立型商品
の一時払保険料に限って即時振込制度を導入し、その成果
を契約者に還元することにより競争力を強めることとした
い。ついては、日本代協からの要望もあるので、代理店事
務負担の軽減、MMC預金、大口定期預金の導入等を考慮
するので理解願いたい。
(平成2年10月1日実施済)
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プロフィットコミッション制度に関する今後
プロフィットコミッション制度を導入すれば、新たな手数
の見通しについて
料ファンドを必要とするが、現状では、このファンドを見
出すことができない。また、代理店の損保会社に対する貢
献度といっても、損保会社により、地域によりそれぞれ異
るので、その評価が難しく、加えて、損害率の計算基準を
どうするかといった問題もある。よって、将来の検討課題
としたい。
ブローカー制度の導入について
わが国の損害保険募集は、新ノンマリン代理店制度により
整然と行われているので、諸外国のようなブローカー制度
を導入する必然性はない。むしろ、ブローカーが代理店と
併存することは混乱を招き、契約者の立場からも問題があ
る。従って、ブローカー制度の導入には疑問があるが、情
勢は導入の方向に傾いている。平成8年4月施行の新保険
業法によりブローカー制度が導入された。
政府・地方自治体別働体並びにこれらの主体
この種の代理店設置を一括して自粛するということは法律
型第三セクターへの代理店委託自粛に関する
上の問題もあり至難である。現地の実態に合わせて話し合
要望 (昭和63年6月)
いを行いながら募集の公平性を尊重する立場から解決を進
めて行くことが必要であろう。
「代理店のお奨め」ダイレクトメール出状の
誠に遺憾に思っている。業界として改善の徹底に努める。
根絶に関する要望 (昭和63年6月)
住宅金融公庫契約取扱の改善
[昭和55年2月∼平成19年4月]
昭和55年2月に幹事団(安田、東海、大正、日本、同和)と懇談、改善促進を要望して以来、幹事
会社安田火災(現在の損保ジャパン)、住宅金融公庫と懇談を重ねてきた。平成7年から平成19年まで、
幹事会社と本会による住公研究会を毎年続けてきた。平成19年4月に住宅金融公庫が独立行政法人
「住宅金融支援機構」となり、原則として住宅資金の直接融資は行わなくなったため、住公研究会は
廃止とした。
主な改定
昭和57年4月 住宅改良等貸付、建物の建替え買替えのための貸付において、既存契約の取扱いが
一部緩和された。
平成14年4月 「特約火災保険」と「選択対象火災保険」(特約火災保険と同等以上の保険商品で公
庫が確認した火災保険)の選択制が導入され、顧客の判断により代理店扱による特約火災以外の火災
保険付保が可能となった。
コメント
政府の行政改革・規制改革の流れの一環として、住宅金融公庫は平成19年1月に独立行政法人とな
り、主たる業務は民間金融機関が行う住宅ローン債権の証券化支援業務である。
独立行政法人移行後は、災害復興融資・低所得者向け住宅融資を除き、直接融資は原則廃止となっ
た。しかしながら、住宅ローンの主力は民間金融機関に移行することは明らかであり、従来以上に民
間金融機関が、住宅ローンに係わる長期火災保険の競合チャネルとなる。
金融機関対策
情報が勝負……最近ハウスメーカー、大型工務店、マンションディベロッパーが金融機関へ融資の紹
介をし、火災保険を金融機関扱とさせないケースがでている。金融機関といえども融資の紹介先に
保険まで強要することはできないので、顧客情報の早期入手が火災保険獲得のきめ手となる。日頃
― 153 ―
からハウスメーカー、工務店、マンションディベロッパー等と親密な関係作りが大切である。
「認定損害保険士」制度創設に関する提言
[平成10年2月]
経 緯
本会は、昭和56年度通常総会において、
「教育事業具体化への骨格」を決議した。その骨格では、
展望として「認定損害保険士」制度の創設を提唱している。また、昭和56年の保険審議会答申では、
「職
業意識を持った質の高い代理店を募集面における中核として位置付ける。」と述べている。これらを
踏まえ、本会は、昭和59年4月「称号制度研究会」を発足させた。同研究会は検討に検討を重ね、昭
和60年1月成案を答申した。本会は、この成案を昭和60年度通常総会に上程、その決議を経て、直ち
に提言書として損保協会並びに関係先に提出した。
意 義
⑴ 社会の複雑化に対応して、消費者に最も信頼できる判断の基準を提供することになり、契約者奉
仕と消費者保護の上で効果を有し、大きな社会的意義を持つ。
⑵ 知的専門職業人にふさわしい知識を習得させ、自己啓発力を充実させるための動機付けとなる。
⑶ サイクル履修方式を導入することにより、生涯教育の役割を果たす。
⑷ 損害保険代理業者にとって、称号の取得は営業の伸展をはかるための強力な武器となる。
提言項目
創設の必要性、新ノンマリン代理店制度との関係、制度の位置付け、
「称号認定委員会」の設置、
指向する水準、称号取得試験受験資格、試験課目、試験課目の講習とテキスト、試験実施回数と実施
月、称号授与月、講習地並びに試験地、再受講の義務化、称号の喪失、受験料、称号登録料、特別会
計の開設等々。これらのうち、特に「受験資格」について記せば次の通りである。
⑴ 上級以上の個人資格を有する者
⑵ 本会正会員の店主、役員または従業員
⑶ 本会所定の損害保険代理店学校の修了証書を所持する者
⑷ 損害保険代理業務につき店主、役員または従業員として満3年以上の実務経験を有する者、ただ
し、店主以外は「募集に従事する役員・使用人届」により届出た者。
損保協会の見解
昭和60年7月、損保協会に提言書を提出、協議に入った。同協会の見解は、
「新ノンマリン代理店
制度との関係、本制度の優遇措置の問題、受験資格を日本代協正会員に限定している点等々難点が多
い。」とのことで、両者間の見解に大きな間隔があり、現状では調整至難である。なお、本会では、
その後、受験資格を正会員に限定している点は見直すこととし、その旨損保協会に申し入れた。
今後の対応
本会としては、提言以来12年経過した本制度の実現を目指し、平成9年2月の企画教育委員会の答
申を受けて、平成9年度から「認定損害保険代理士(仮称)」運営委員会を設け、名称の変更と制度
の再検討を始めた。
認定損害保険代理士(仮称)運営委員会は平成10年2月の理事会に「認定損害保険代理士制度の概
要」を中間報告し、承認され、さらに平成11年2月の理事会に「日本代協認定保険代理士制度」を答
申し、承認された。平成13年1月1日付で第1期「日本代協認定保険代理士」1,163名が誕生した。
― 154 ―
「望ましい代理店手数料体系のあり方」の提言 [昭和58年6月∼平成11年12月]
問題の提起
⑴ 経済の安定成長、国際化・自由化の進行、消費者ニーズの多様化、情報化・高齢化社会の進展、
共済の進出、隣接業界との競合等々の諸要因から代理店業界は大きな屈折点を迎えるに到った。
⑵ 昭和56年保険審議会は代理店及びその手数料について、主として次の3点を答申した。
① 職業意識を持った質の高い代理店を募集面における中核として位置付ける。
② 損保会社の収支に対する代理店の貢献度が反映される手数料仕組の可否を検討する。
③ 専属・乗合代理店の育成促進策の有無につき検討する。
⑶ かかる厳しい状況を克服し、代理業界の永続的な発展を期するとともに、損保業界全体の繁栄を
募集面から寄与して行くためには、職業としての代理店業務並びに代理店手数料体系が魅力的、効
果的なものでなければならない。
⑷ 本会は、このような問題提起に対処するため、昭和56年4月「代理店問題研究会」(研究員8名)
を設置した。以降、研究会は代理店手数料の本質解明を基調に、精力的な活動を続け、約2年間に
わたる研究成果を「望ましい代理店手数料体系のあり方」としてまとめた。
検討の方向
代理店の持つべき資質、備うべき能力、求められる機能、日常業務を基本に代理店側としての費用
及び利潤性、顧客側にとっての付加価値性、損保会社側からみての貢献度に焦点を合わせて検討した。
新体系の骨子
新体系は、現行の代理店種別を基本に置き、基本手数料と付加手数料を合算したものとする。
⑴ 基本手数料→契約成立にかかる最低限の代償、募集に要する物件費で、水準としては現行手数料
の約40%を想定
⑵ 付加手数料→人件費及び利潤に対応する部分、扱保険料額によりA∼D級代理店に区分
① 機能手数料→代理店の持つ機能力、業務力に対応する部分で、現行の代理店種別による
② 貢献手数料→A∼D級区分に従い、代理店の数量的貢献度、損保会社の管理コストに対応する
部分
③ 専属手数料→募集効率、募集難易度を考慮し、上級種別以上の専属代理店に若干の手数料を設
定
今後の対応
昭和58年6月損保協会に提出以来、数次にわたり協議を重ね、損保会社、代理店間における共通認
識の醸成に努めて来た。しかしながら、平成8年12月の日米保険協議の決着とその後の保険審議会答
申をふまえ、保険業法ならびに料団法が平成10年6月に改正され、7月より算定会の料率使用義務が
廃止された。これにより文字通り純率も付加率も自由化となり、代理店手数料も従来の種別別全社統
一の手数料体系は崩壊した。本会ではこのような事態を見越して、平成9年9月4日に開催された損
保協会の保険募集委員会と本会との懇談会において「望ましい代理店手数料体系のあり方」をあらた
めて手交し、自由化後の手数料体系に本会の考え方を採用してもらいたい旨要請した。
その後平成11年12月に「新しい損害保険代理店制度・代理店手数料に係わる要望書」を金融監督庁、
損保協会、損保各社へ提出した。その中の「新しい代理店手数料体系」の要望は「望ましい代理店手
数料体系のあり方」の基本的考えをとり入れたものである。各社の新代理店手数料体系はおおむね本
会の要望に沿っている。(詳細については「代協活動の現状と課題」平成16年度版57頁参照。)
「長期展望研究会」の答申
[平成2年4月]
主 旨
― 155 ―
⑴ 本会は、昭和62年度通常総会の決議に基づき長期展望研究会を設置、その目的は「損害保険代理
業が21世紀にかけて魅力ある事業として存在するための募集環境並びに企業体質について研究し、
代理店経営の指針に資する。
」ことにあり、学識経験者の協力を得て、以後、3年間にわたり研究
を進めて来た。その精力的な活動に心より敬意と謝意を表する。
⑵ 本会は、長期展望研究会の設置とその活動を平成2年の「代協創始50周年」、「日本代協移行10周
年」の記念事業の一つとして位置付けた。
設置と答申
昭和62年4月、長期展望研究会設置、平成2年4月答申書提出、この間、研究会を13回開催した。
構 成
⑴ 正会員 10名、主査(副会長) 藤田博之氏
⑵ 学識経験者 4名 法政大学法学部部長 西嶋梅治氏
慶応義塾大学商学部教授 前川 寛氏
元大蔵省銀行局保険部保険第二課課長補佐 土屋 寛氏
㈱保険研究所 取締役相談役 森松邦人氏
主な研究課題
⑴ 日本代協正会員を対象とした損保代理店の実態調査の結果とその分析
⑵ 金融の自由化と損保代理業
⑶ 保険会社間の企業格差が損保代理店に及ぼす影響とその対策
⑷ 損保代理店と保険行政
⑸ 消費者保護のための損保代理店に対する監督行政の必要と保険募集取締法の問題点
⑹ 損害保険料率・契約者配当の自由化をめぐる諸問題
⑺ 損保業界の情報化・機械化の進展と損保代理店
⑻ 損保代理店の経営に係わる諸問題
⑼ 募集市場の展望と日本代協の役割
(注) 「長期展望に関する答申」の内容については、日本代協会報第46号(平成2年8月発行)をご
参照下さい。
成 果
昭和62年度以降3年間にわたり研究活動を精力的に進め、平成2年度、答申としてとりまとめを行
い、関係先に対し、報告と建議を行った。引続きその浸透に努めるとともに「制度対策室」、「制度研
究会」を設置し、具体策の検討をさらに進めた。
「制度対策室」の報告
[平成6年6月]
主 旨
本会は、平成2年度通常総会において、「制度対策室」設置の決議を受けた。その主旨は、「保険審
議会の審議動向並びに長期展望研究会の答申を視野に入れながら損害保険代理業が21世紀へかけて力
強く確実に前進して行くための諸方策」に関する研究を進めることにある。
構 成
⑴ 正会員 5名、主査(副会長)白川昭一氏
⑵ 学識経験者 2名 ㈱保険研究所取締役相談役 森松邦人氏
元大蔵省銀行局保険部保険第二課課長補佐 土屋 寛氏
― 156 ―
経 過
平成2年10月・第1回対策室開催、平成6年2月・第24回対策室開催、平成6年4月・制度対策室
報告「今後の損害保険代理店事業の在り方を求めて」提出、この間保険業界は歴史的な変革期にあり、
事態が流動する中で、制度対策室の研究活動は困難を極めた。しかし、同対策室では、このような厳
しい時流を直視しつつ研究活動を精力的に進められ、損害保険代理業界のために、21世紀へ向けての
一つの指針をまとめられた。本会としてその業績に敬意を表する次第である。この「報告」は平成6
年6月開催の理事会において承認された。
主な研究課題
⑴ 保険代理店の法的性格 ⑵ 現行法規制のあり方 ⑶ 生命保険募集人の一社専属性 ⑷ 紹
介代理店・紹介行為 ⑸ 保険ブローカー制度の導入 ⑹ 銀行等の保険販売 ⑺ 現行保険募集取
締法の見直し ⑻ 自主規制団体の設置 ⑼ 利便性と募集チャンネルの多様化 ⑽ ノンマリン代
理店制度 ⑾ 手数料等 ⑿ 代理店委託契約書 ⒀ 代理店等の免許制 ⒁ 日本代協の今日的位
置づけ ⒂ 日本代協に関する問題(目的・活動理念の明確化と確認、教育・広報・渉外活動の強化)
⒃ 組織・正会員の拡大と日本代協組織の拡充 等々 本会の対応
保険業法、募集取締法、募集制度等一連の改正に備えるため、「今後の損害保険代理店事業の在り
方を求めて」の報告に基づき、さらに具体的な検討を進めるとともに事態の推移に常時対応できる体
制を整えることを目的として、「制度対策室」を発展的に解消し、新たに「制度研究会」を設置した。
「制度研究会」の報告
[平成7年2月]
主 旨
21世紀へ向けての新しい保険制度の構築に対し、損害保険代理店制度の健全な発展とその基盤を強
化するため、保険募集の取締に関する法律を保険業法へ一本化する問題を中心に新しい保険制度に対
応するため、広範囲にわたる改革の中から代理店制度に直接影響すると思われる緊急かつ重要な問題
を摘出し、検討を行い、意見をとりまとめることを目的とする。
構 成
⑴ 正会員 10名、主査(副会長)太田達夫氏
⑵ 学識経験者 1名 ㈱保険研究所取締役相談役 森松邦人氏
主な研究課題
⑴ 登録制の在り方
⑵ 登録の資格要件
⑶ 登録の更新
⑷ 生命保険募集人の一社専属性
⑸ 保険ブローカー制度の導入
⑹ 自己契約、特定契約取扱代理店
⑺ 自主規制機関
⑻ 保険料率の規制緩和
経 過
平成6年9月28日・第1回研究会を開催、平成6年12月22日・第12回研究会を開催しその研究内容
を「保険業法改正に伴う募集関係事項に関する要望」と題する報告書としてとりまとめられ、平成7
― 157 ―
年2月の理事会において承認された。
成 果
制度研究会の報告を基に大蔵省、損保協会に対し、業法改正に係る要望を提出し、精力的に運動を
進めてきた結果、平成8年の新保険業法の施行までに「生命保険募集人の一社専属性の例外規定」
「ブ
ローカー制度」の内容(兼業の禁止、手数料の開示、賠償資力の確保等契約者保護の立場からの規制)
「特定契約取扱代理店」の内容の改善(対象種目が火災・自動車・傷害の3種目から全種目へ拡大され、
特定契約比率の計算対象も最大特定者から全特定者合計となった)等が実現し、
「制度研究会」の努
力が報われた。
代理店委託契約書改定問題
[平成8年3月∼平成12年12月]
経 緯
代理店委託契約書(標準フォーム)は昭和40年4月に制定され、昭和48年4月一部改訂(第10条事
故発生の通知等)があった。昭和51年10月全代連が改定案を策定し、昭和52年6月損保協会に提出。
その後募集制度改定問題のため審議が中断していたが、昭和55年10月以降再開、数次にわたる協議を
重ね損保協会の見解を受領し、企画教育委員会で精力的に再検討の上日本代協第2次改定案を決定し
昭和58年1月に損保協会に提出した。
損保協会は昭和61年2月に本会第2次改定案に対し、回答をしてきた。
(詳細については「代協活
動の現状と課題」平成9年度版45頁参照。)
その後、平成8年3月まで委託契約書改訂問題についての双方の交渉は中断した。
新標準委託契約書の提示
平成8年3月4日損保協会は「新標準委託契約書」を提示してきた。ポイントは次の通りである。
⑴ 標準委託契約書は標準であり、実際に使用されるのは各社各様となる。
⑵ 日本代協の従来からの要望事項は取入れた。
① 解除条項(第24条)30日前→60日前
② 会社と代理店を双方義務に変えた。第21条(守秘義務)、第23条(損害の賠償)
③ 双方の合意を挿入、第24条第2項(解約)
⑶ 新設項目(新保険業法施行に伴なうもの)
① クーリングオフ
② 媒介
③ 保険料の別途保管(旧募取法)
④ 他の代理店及び保険仲立人への募集の委託、手数料支払の禁止(旧募取法)
⑤ 仲立人兼業禁止
⑷ 付属約定書は廃止され、手数料は手数料表として通知される。
本会の対応
本会の要望の多くを取り入れており評価できるが、第15条の他の保険会社との委託契約につき、事
前承認を事後通知に改めるよう新たな要望を平成8年3月損保協会募集制度委員長宛提出した。
従来の損害保険代理店制度(種別制度・個人資格制度)は平成13年3月末で廃止され、4月からは
各社別の代理店制度・代理店手数料体系となった。損保各社は平成12年の10月∼12月にかけて所属代
理店に対し新代理店制度・新代理店手数料体系・新委託契約書の説明を始めた。
新委託契約書は文字通り各社バラバラであり、平成13年3月末までに調印を求める会社もあったの
で、本会は調印時期の延期を要求するとともに、法制研究会が「損害保険代理店制度・代理店手数料
体系の改定に伴う委託契約書の差替もしくは変更約定書の調印に係る留意点について」を平成12年12
― 158 ―
月に緊急提言し、全会員に通知した。
「直販保険会社研究会」の提言
[平成8年∼平成9年]
問題の提起
⑴ 平成8年4月1日より新保険業法が施行され、いよいよ21世紀に向け保険の新時代が始まった。
新保険業法の目的は規制緩和・自由化により、適正な競争を促進し、以って保険契約者・消費者の
保護の強化と利便性の推進にある。
⑵ 保険の規制緩和・自由化における先進地域であるヨーロッパにおいては最先進国である英国に合
わすためEU内の規制緩和・自由化を一定のスケジュールで漸進的に進めてきたが、1994年7月1
日に発効したEU保険第3指令によってEU内の家計分野の保険マーケットの規制緩和・自由化がほ
ぼ終了した。その結果保険会社間の競争が促進され、従来の保険会社とは異なる経営コンセプトと
手法をもつ保険会社(直販保険会社)が多数設立され、業界地図が塗りかえられようとしている。
⑶ 米国においては早くから規制緩和・自由化が進んだということと、また一方では各州が保険の監
督権限をもっているという独特の行政制度であるため、日本のような保険会社が特定の州または特
定のマーケットにおいて、また販売手法もブローカー、独立代理店、専属代理店、直販、通信販売
といった多様なチャネルが使われている。
日本に進出している外国会社(特に米国の保険会社)が自己のマーケット権益の擁護のため色々
な要求を米国政府に代弁させ、平成8年3月の日米保険協議で米国側の要求として日本における自
動車保険の通信販売の解禁が提案された。
⑷ 前述のように日本においては新しい保険業法のもと、規制緩和・自由化がこれから始まるところ
であるが、自由化先進国である欧米の新しいコンセプトの会社もしくは販売手法が一挙に導入され
た場合、業界が混乱、マーケットの秩序も乱れ、ひいては保険契約者・消費者の保護に重大な影響
を与えることになる。
こうした危機意識の中で、東京代協内に直販保険会社研究会を発足させ、平成8年2月28日以来
計7回の討議の結果を関係先への要望、代協会員に対する提言としてまとめた。
提言の内容
⑴ 大蔵省に対する要望
① 自動車保険の通 信販売について
a.引受規制につながり、契約者・消費者の利益に反する。
b.日本代協会員をはじめとする専業代理店の生活権の侵害
以上の理由でわが国において自動車保険の通信販売には日本代協の組織をあげて反対する。
② 直販保険会社について
保険の直販とは一般的には代理店やブローカー等の保険仲介業者を通さない保険の募集と解され
ている。
英国における直販保険会社の自動車保険のマーケットシェアーは1991年6%であったものが、1993
年には15%と倍増し2000年には50%を越えるものと予測されている。
この直販保険会社の問題点は①で述べた自動車保険の通信販売と全く同じである。
自動車保険の通信販売あるいは直販保険会社が認められれば、専業代理店はまさに壊滅的打撃を受
けることになる。
通信販売にせよ、直販保険会社にせよ、これらは代理店制度を否定するものである。長年にわたり、
保険会社と契約者・消費者の間にあって保険思想の啓蒙、保険の普及、保険サービスの提供により契
約者・消費者の利益に貢献してきた代理店制度を否定する販売手法、もしくは直販保険会社の導入は
社会的に許されざる行為である。
⑵ 日本損害保険協会に対する要望
― 159 ―
① 自動車保険の通信販売について (大蔵省に対する要望と同じ)
② 直販保険会社について (大蔵省に対する要望と同じ)
③ 事業費の削減と付加率の引下げ
保険の価格である保険料を構成する2つの要素のうち、純率は事故頻度、自然災害の発生率、
賠償水準等々、損害保険会社・代理店がコントロールすることが困難なことが多いが、付加率に
ついては、損害保険会社・代理店の努力によって低減することが可能な分野である。
保険の募集に際し、代理店と保険会社の営業社員のダブルアテンドがかなり広範囲に恒常的に
行われている。
保険の募集は我々代理店に任せれば二重コストは回避でき、全体のコスト削減に寄与できるも
のと考える。
また、われわれ代理店も自立した契約者の保険コンサルタントとして、保険契約者・消費者の
信頼を得られる代理店であらねばならないし、もし自立できず、募集の二重コストの原因となる
ような非効率代理店があるとすれば、いままで述べてきた流れからみて整理されるのもやむを得
ないと考える。
⑶ 日本代協会員に対する提言
① 大競争時代
a.生保の損保子会社との競争
b.外国損保会社との競争激化
c.異業種・異業態の損保子会社との競争
d.ブローカーの誕生
② 代理店が生き残るためにやるべきこと
a.コンサルタント機能の充実と顧客満足の実践
契約者・消費者から頼られる代理店が求められている。
契約者・消費者から選ばれる代理店になるための自己開発、自己研鑚が必要であり、さらに契
約者・消費者のトータルな保険設計を担当し、マッチした満足のゆく保険を提供できるようにな
らねばならない。
b.付加価値
自立した職業代理店として、コンサルタント機能の充実と顧客満足の実践は当然のこととして
さらに契約者・消費者に選ばれるためには何かがなければならない。
換言すれば、何か付加価値が提供できるかという問題である。
c.自らのリストラによる体質強化
わが国全体の保険料というパイの増大がなかなか見込めない成熟期に入っているので、パイの
奪い合いは熾烈になることは間違いのないところである。
その競争に打ち勝つためには、自らリストラを行い低コストで運営できるよう体質強化を図る
ことが必要である。
要は、自らの代理店経営を今まで述べてきたような視点から見直し、明確な方針をたてて実行
することである。
日本代協保険大学創設の経緯(現・保険大学校)[平成9年2月∼平成10年10月]
平成8年度の教育研修事業計画として「教育研修事業の見直し」が掲げられ、直ちに企画教育委員
会へ諮問された。同委員会は平成9年1月に「日本代協保険大学の創設」を答申し、同年2月の理事
会において採択された。
これを受けて平成9年度の事業計画の柱として「自由化新時代に対応した教育・研修体制の確立」
が掲げられ、新たに教育事業運営委員会を設置して日本代協保険大学の具体化の検討が行われること
となった。
― 160 ―
教育事業運営委員会は、平成9年10月の理事会に「日本代協保険大学についての企画案」を提案し
承認された。
教育事業運営委員会は、さらに詳細な詰めを行い「日本代協保険大学運営要領」をまとめ平成10年
2月の理事会に提案し、承認され、平成10年度の事業計画として通常総会へ付議され、承認された。
損保各社のご協力(講師の派遣、セミナー会場の利用、受講生の募集等)も得て、平成10年10月か
ら日本代協保険大学が開講した。 日本代協保険大学の目的
業界は速いテンポで大きく変化し、保険販売の現場にも確実に自由化の波が押し寄せている。
商品、サービス、価格が自由化され、保険流通革命ともいうべき環境の中で、
「保険代理店にとっ
て何が大切で、何が必要なのか」。
今までの販売ノウハウだけの代理店教育では問題は解決しない、新しい環境に適した新たな教育が
必要である。日本代協では、これまでの代理店学校、ブロックセミナー、海外研修などの教育活動を
統合し、より高度な教育システムをつくった。それが代理店による代理店のための「日本代協保険大
学」である。
日本代協保険大学がめざす代理店像
日本代協保険大学の最重要のテーマは、「お客さまから信頼される代理店」である。
お客さまから信頼される代理店とは 高度の知識と広範な能力を備え、お客さまの立場に立って、
お客さまに本当の安心とは何かを知っていただき、満足いただける適切な保険を提供する代理店であ
り、また、万一の際には適切なアドバイスと心のこもった対応をする代理店である。それが日本代協
保険大学がめざす代理店像である。
保険大学のカリキュラム
セミナー 21単位(必須)
、通信教育講座39単位(必須)、海外研修5単位(自由参加)合計65単位
のうち50単位以上を修得すれば修了と認定する。
保険大学の修了が認定保険代理士資格取得の必要条件となっている。
セミナー(必須) (全国17地区で開催)
コースⅠ
保険概論
(保険の概要、日本代協の歴史と活動、保険業法の概要、代理店委託契約書)
(10単位)
コースⅡ
代理店経営 (代理店の使命と役割、代理店の経営管理、マーケティング概論、代理
(11単位) 店の販売戦略)
通信教育講座(必須)
コースⅢ
コースⅣ
業務知識
(保険契約と法律・約款、保険商品の種類別特徴、損害賠償と賠償責任保
(18単位) 険、アンダーライティングと契約管理、事故処理と損害率管理、リスク
マネジメント、ファイナンシャル・プランニング、財務管理の基礎知識)
関連法規
(関連法規 Ⅰ、関連法規 Ⅱ、税法の知識)
(11単位)
コースⅤ
業際商品と (生命保険と簡易保険、共済制度、金融の知識、社会保険の知識、地球環境問題)
周辺知識
(10単位)
海外研修(自由参加)
アメリカ研修(PIAS)
5単位
― 161 ―
日本代協認定保険代理士制度 創設の経緯
[平成9年2月∼平成11年2月]
経 緯
「認定損害保険士」の制度創設提言の後、本会独自の制度創設の声が高まり、平成9年2月企画教
育委員会の「教育事業の見直しの答申書」の中で、
「日本代協保険大学創設」に併せ本制度創設の提
言があり、理事会で採択された。この決議を受け、認定損害保険代理士運営委員会で具体化の検討を
進め、平成11年2月に「日本代協認定保険代理士制度」として創設され、平成13年1月1日付で第1
期「日本代協認定保険代理士」1,163名が誕生した。
目 的
平成10年7月の算定会制度の改革により、複雑多様化するリスクに対応する様々な商品が開発され、
保険料も各保険会社で異なる本格的な自由化時代に突入した。販売チャネルも多様化し、保険業界の
急激な環境の変化により消費者はより質の高いサービスと信頼のおける業務遂行を求めている。
保険募集に携わる代理店は、社会の多様なニーズに的確に対応してゆくために、専門家となる努力
が必要であり、常に知識を更新し、その能力を向上させる責務を負っている。『認定保険代理士制度』
は、保険に関わる基本理論から実践まで、高度な知識を修得した人材を養成することを目的とした生
涯教育的観点に立った制度であり、保険業界の健全な発展につながるものと考える。
認定保険代理士たるべき人物像
⑴ 「顧客・消費者」に信頼と安心を与える専門家であること
⑵ 保険会社と円滑な取引を行い信頼関係にある者
⑶ 同業者からも高い評価を得られる者
⑷ 自ら高度な専門家としてたゆまぬ努力をし続ける者
制度創設時の概要
⑴ 名 称
「日本代協認定保険代理士」(H10.11.4商標登録出願、H12.5.26 商標登録認証、H12.7.21商標
登録第4401145号)
⑵ 対象者
損害保険代理店の募集従事者
⑶ 認定基準
下記の条件すべてを充足していること
① 日本代協保険大学を修了し、所定の試験に合格した者。
② 損害保険代理店に所属している3年以上の募集実務経験者。
③ 単位代協会長の推薦並びに保険会社の確認。
⑷ 申請時期
●毎年10月∼11月(所定の申請用紙にて申請)
⑸ 認定日
毎年1月1日(認定証と特製バッジを授与)
⑹ 更新制度
●3年毎の更新制とする。(研修の受講を義務づける)
⑺ 認定料
●申請時:登録料 10,000円
●更新時:研修受講料 10,000円
⑻ 資格の取消・失効
① 取消
― 162 ―
・資格申請の際、虚偽の申告があった場合
② 失効
・資格申請要件を欠いた時
・募集従事者でなくなった時
・更新をしなかった時
・本会の名誉又は信用を毀損した時
・本会の目的に反し、または秩序を乱す行為があった時
募集規範の提言
[平成9年10月]
問題の提起
本会は、募集の公平性の維持、募集環境の整備に関する活動を重点施策に設定している。これは本
会が公益法人並びに職業団体として、保険業法並びに消費者保護を基軸に損害保険代理業界の健全な
発展を図り、損害保険業界全体の大きな繁栄に寄与して行かなければならない責務を持つことから当
然の対応である。このためには、募集市場において公正な競争を確保することが必要である。
しかしながら、これまでの損害保険市場においては、損害保険代理店のみが殆ど唯一の募集人であ
ったが、すでに平成8年の10月からは生保市場で育った生保外務員の損害保険代理店、新しい募集チ
ャネルであるブローカーが損害保険市場に参入している。
さらには平成9年9月のリスク細分型自動車保険の認可に始まる外資系損保による新聞・テレビを
使った通販の拡大や、2001年からの参入が予定されている銀行窓販や新しいチャネル、インターネッ
トによる保険販売が考えられている。
従って今後は損害保険代理業界の中だけでなく、広く損害保険募集市場全体の募集の公平性、募集
環境の整備の活動をしていかなければならない。
そこでまず第1にやるべきことは募集のあらゆるチャネルの憲法となるべき募集規範の研究と提言
である。
損害保険募集市場におけるリーダーとして、また我々の長年にわたる経験・知識に基づき自由で、
公平、公正な競争が出来る最低限のルール(規範)を提言し、全ての募集チャネルがこれを規範とす
ることによって消費者・契約者の利益に貢献することこそ本会の使命である。
募集規範研究会の設置
平成9年度の事業計画に前記の問題意識に基いた「募集規範の研究と提言」が掲げられ、具体的検
討を進めるための募集規範研究会が設置された。
募集規範研究会は損保、生保各社のお客様対応マニュアル、募集人の行動指針、損保協会の行動規
範、生保協会の行動規範、英国保険ブローカー評議会行動規範、宅建業者の重要事項の説明、消費者
の4つの権利の研究…等々幅広く多方面の研究と論議を経て、「募集規範」を作成、平成9年10月の
理事会へ提言し、採択された。
本会はこの「募集規範」を大蔵省、損保協会、損保各社へ提出し、日本経済新聞や業界紙等マスメ
ディアへニュースリリースを行い世の中に広く提言した。(募集規範は25章参照。)
決済問題研究会の提言
[平成11年1月]
問題の所在
昭和56年の保険審議会答申の中で保険料の支払方法の多様化が取り上げられ、クレジットカードに
よる保険料の領収が検討課題とされた。
本件は保険料即収の原則、加盟店手数料の負担の問題等解決すべき問題が多いので、昭和60年当面、
クレジットカードの扱いに習熟した百貨店・スーパー代理店に限定して実施することとなった。
問題のカード取扱いに係る加盟店手数料は代理店負担と決ったが、将来クレジットカードによる保
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険料領収制度を一般の代理店にも拡大する場合には、あらためて損保協会と本会とで協議することと
なっていた。
その後平成8年4月から新保険業法が施行され、また平成8年の日米保険協議における米国の圧力
によってクレジットカードによる保険料の領収は平成8年10月から自動車保険の通信販売と一緒に解
禁された。
外資系損保は勿論、国内損保も次々と認可を取得し、平成9年の夏から運用が開始され、加盟店手
数料は代理店負担とされた。
本会の対応
平成9年5月15日本会は損保協会の保険募集委員会との懇談会において、クレジットカードによる
保険料領収制度についての約束の履行を求めたが、下記の理由で約束の履行はできないとの回答があ
った。
⑴ 平成8年4月の新保険業法の施行直前の平成8年3月に募集関係の現行規定集は廃棄された。
クレジットカードによる保険料領収制度も同様に廃棄され、各社個別対応事項となっている。クレジ
ットカードによる保険料領収を認めるか否かは各社判断であり、委員会で論議する事項ではなくなった。
⑵ 事業方法書上も代理店に支払うことができるのは代理店手数料のみであり、クレジットカードの
取扱手数料を支払うことは事業方法書違反、即ち保険業法違反となる。
本会の主張と損保協会の考えは平行線をたどり、膠着状態に落ち入ったので平成10年2月の理事会
において、クレジットカード問題も含めて将来の決済方法の多様化を研究・検討する研究会「決済問
題研究会」の設置が決定された。
提言の内容
決済問題研究会は平成10年6月18日の第1回を初めとし、7回の検討を重ね平成11年1月13日答申を
まとめ、平成11年2月18日の理事会で承認された。
提言の内容は次の通り。
⑴ クレジットカードによる保険料領収に係る加盟店手数料を保険会社と代理店で折半するよう要望する。
⑵ デビットカードによる保険料領収制度を導入するよう保険会社へ要望する。
⑶ 2001年を目処に日本代協カードを発行する。
提言の実行
本会は決済問題研究会提言のうち前記⑴、⑵ を実行すべく損保協会加盟の31社及びAIU社に対し
て要請を行った。
本件の要請に対する保険会社の回答は次の通りである。
⑴ クレジットカードの加盟店手数料折半の要望
回答のあった29社中アリアンツ社と生保系損保の6社は、クレジットカードによる保険料領収制
度を導入していないという回答であったが、導入している22社はすべて加盟店手数料の全額代理店
負担は変えられないという回答であった。
⑵ デビットカードによる保険料領収制度の導入の要望
回答のあった29社中アリアンツ、スミセイ損害、第一ライフ、ニッセイ損害、安田ライフの5社
は導入の予定はないという回答であったが、残りの24社は濃淡の差はあれ、導入に向け検討中もし
くは検討するとの回答であった。
今後の対応
クレジットカードによる保険料領収制度は、平成9年から損保各社が導入したが、クレジットカー
ドによる保険料の支払いは全体の1%に満たず、保険料の支払いは従前と変らず、現金、銀行振込
(郵便局を含む)、銀行口座振替が主要な決済手段である。
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この理由は、保険料の支払いは現金という長年の慣行が続いていること、また保険会社も、まして
や2.5%の加盟店手数料を負担させられる代理店が積極的なPRをしていないことによる。
平成12年3月からは、デビットカードが実際に使用されるようになった。いまのところ利用できる
加盟店の数や金融機関の数が限られているので、誰もが利用できるわけではないが、いずれクレジッ
トカードをしのぐ決済手段になるであろう。すでにデビットカードによる保険料領収を始めた保険会
社もでている。
また、インターネットの普及とともにインターネットによる取引、インターネットによる決済も始
まった。
デビットカードにせよ、インターネット決済にせよ、クレジットカードより決済のコストが安い。
本会としては、消費者にとっても便利であり、かつ決済コストの安い決済手段の利用を今後も損保
会社に要請していくこととする。
新しい資格制度の提言
[平成11年2月]
問題の所在
現在の損害保険代理店制度は昭和55年10月から実施された新ノンマリン代理店制度に基盤を有する。
本制度は昭和55年6月10日付通達蔵銀第1459号によって規定された。(同年10月1日から実施)そ
の後新保険業法施行(平成8年4月)に伴ない新ノンマリン代理店制度は損害保険代理店制度と名称
を変え平成8年4月1日付大蔵省銀行局長通達蔵銀第525号として規定された。損害保険業界にとり
不幸なことは代理店制度が初めから通達で規定されたということである。
「通達というのは上級行政機関(例えば大蔵大臣)が下級行政機関(例えば地方財務局)に対して
法令運用の方針、解釈等を示し、下級行政機関の権限行使について指揮監督するための行政組織内部
の行為である。」(保険業法Q&A ㈱ワールド・ヒューマン・リソーシス保険研究チーム編20頁)
即ち通達は法的根拠(国家行政組織法14条)に基づいて出されているが、最高裁判例によっても法
的拘束性は認められていない。
通達行政は口頭による行政指導と同様、世の中の裁量行政批判にさらされ、大蔵省は平成10年6月
に金融関連通達を全廃した。
当然のことながら損害保険代理店制度を定めた通達蔵銀第525号も廃止されたので、形式的にはこ
の時点で損害保険代理店制度はなくなったといえる。
本会の対応
本会は通達廃止の話がでた平成9年暮頃から損保協会とも連携し、機会あるごとに大蔵省に対し、
損害保険代理店制度の存続とその改善を訴えた。大蔵省としては前記の業界の要望と通達全廃後の現
場の混乱を考慮し、地方財務局との間で統一的な見解を共有する必要がある事項は、平成10年6月事
務ガイドライン「金融監督等にあたっての留意事項について」として地方財務局宛発出した。
この事務ガイドラインの中に先に廃止された通達蔵銀第525号の内容、とりわけ損害保険代理店制
度は全て残され、そのまま金融監督庁へさらに平成12年7月から金融庁へと引継がれた。
さらに平成10年7月の損害保険料率の自由化によって、損害保険代理店制度(種別制度・個人資格
制度)の存続自体が危くなった。
種別制度は保険会社の経営の問題であるが、個人資格制度は消費者利益に直接影響することになる
ので、消費者の自己責任のお役にたてる業界統一の新しい資格制度の導入が必要である。しかも新制
度は法的裏付け(政省令に規定)がほしい。
本会は前記のような認識のもとに平成10年6月の理事会において、企画環境委員会に対し、
「新し
い資格制度について」を諮問した。
企画環境委員会は検討を重ね、平成11年1月23日に答申をまとめ、2月18日の理事会で承認された。
答申の内容は「新しい資格制度について」として金融監督庁、損保協会、協会加盟の33社へ提出し
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た。(提言の詳細については「代協活動の現状と課題」平成11年度版49頁参照。)
本会は損害保険代理店制度の改革の動きが早まったことを受けて平成11年12月に「新しい損害保険
代理店制度・代理店手数料に係わる要望書」を金融監督庁、損保協会、各損保会社へ提出した。この
中であらためて新しい資格制度の導入を要望した。
損害保険代理店制度(種別制度・個人資格制度)は平成13年3月末で廃止となったが、金融監督庁
及び損保協会の理解を得て、平成13年4月より業界共通の代理店教育制度:損害保険募集人教育(試
験)及び損害保険代理店専門教育(試験)が損保協会によって実施されている。(詳細については「代
協活動の現状と課題」平成13年度版38頁参照。)
「地球環境問題研究会」の提言
[平成11年10月]
問題の提起
平成9年12月に地球温暖化防止京都会議が開催され、温室効果ガスの削減目標を盛り込んだ議定書
を採択した。これによって日本は2008年から2012年にかけ温室効果ガスの総排出量を1990年に比べ6
%削減することを約束した。
これを受け、美しい地球を子孫に残すため日本代協として、また1会員として何ができるのか検討
しようという問題提起が平成10年2月の理事会になされ、4月の常任理事会において「地球環境問題
研究会の設置」が決定した。
平成10年6月19日に第1回の研究会が開催されて以降平成11年9月7日まで11回の研究会が開催さ
れ、答申がまとめられ、平成11年10月の理事会において採択された。
提言の内容(詳細については「代協活動の現状と課題」平成12年度版70頁参照。)
主な内容は次の通り。
⑴ 日本代協の自主行動計画
① 地球環境問題に関する啓蒙活動を行う。
② リサイクル活動を積極的に推進する。
③ グリーン購入を推進する。
④ グリーン基金を設立し、継続的に植林活動を支援する。
⑤ 地球環境に役立つ商品開発、保険システム等に対する提案活動を行う。
⑵ 日本代協としての取組み
① 単協、支部の地域環境ボランティア活動に対する支援活動を行う。
② 日本代協ニュースを活用し、地球環境に対する啓蒙活動を行う。
③ 地球環境問題に関するパンフレットを作成、会員、非会員に対する啓蒙活動を行う。
④ 日本代協保険大学に地球環境講座を設け、地球環境問題に対する知識と認識を深める。
⑤ 日本代協内にグリーン基金を設立し、毎年日本代協会費の1%を拠出するほか会員からの浄財
を集める。
⑥ 日本代協グリーンエージェント制度を創設し、グリーンエージェントの普及を推進する。
⑦ グリーン購入ネットワークに入会し、グリーン商品等に関する情報を入手し、会員に伝達する
ことによってグリーン購入の普及拡大を図る。
⑧ 日本代協に地球環境対策室を設置し、各単位代協に地球環境問題対策委員をおく。
⑨ 平成12年4月に地球環境問題対策委員会議を開催する。
⑶ 日本代協会員としての取組み
① 日本代協会員は次の3つの事項を必ず実行する。
ゴミの削減に努力するとともに、ゴミの分別回収に協力する。
紙を大切にするとともに再生紙を使うことを心がける。
駐車中は自動車のエンジンを切る。
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② グリーンエージェント運動に賛同し、グリーンエージェント登録をする。
③ グリーンエージェント登録した会員は、グリーンエージェント宣言のエコカードを常に携帯し、
毎日のグリーン行動の実績を記録する。
法制研究会の提言<⑴∼⑷>
[平成12年6月∼平成15年1月]
法制研究会の設置
本会は平成11年度の事業計画において「本会が自由化の荒波をこえて、行政や業界に提言し、主張
するためには法律に強い外部の専門家の能力が必要であると考えるので、顧問制度を検討する。
」と
うたい、平成12年度の事業計画において「法律に強い顧問をアドバイザーとして法制研究会を設置す
る。法制研究会は新代理店制度、新代理店委託契約書等の研究を行う。」と掲げた。
そして平成12年2月の理事会において法制研究会の設置が決議され、6月の理事会において顧問1
名、研究会委員6名が選任され、活動を開始した。
法制研究会の提言⑴
損害保険の自由化の仕上げとして平成13年4月より損害保険代理店制度・代理店手数料の自由化が
実行されることとなり、平成12年10月から損保各社は所属の代理店に対し、新しい代理店手数料体系
と新委託契約書の説明を始めた。法制研究会は保険会社から新委託契約書の調印を迫られて、対処に
窮する会員が多数でてくることを予見し、顧問の早稲田大学 大塚 英明教授の見解も付して「委託
契約書の差替もしくは変更約定書の調印に係る留意点」を平成12年12月に提言した。
提言の内容
⑴ 委託契約の原則
それぞれの代理店は損害保険委託契約によって、所属する保険会社との間に、各種業務の内容や
報酬、様々な手続き等を約束する。代理店の業務遂行には、保険会社から一定の報酬(手数料)が
支払われるので、代理店委託契約は「有償の委任契約」という性格を持つ。委託契約書とは、これ
らの約束事を文章化したものである。代理店と保険会社は、お互いの「信頼関係」に基づき、誠実
にこの約束事を遂行することを文書をもって合意している。
⑵ 留意点
① 基本的な変更点は何か
・どうして委託契約書が変更されることになったのか。
・委託契約書を代理店の側に備え置くためにもう一通作成できないか。
(代理店は4千円の印紙代を負担しても委託契約書を保有することをお勧めする)
② 代理店の業務範囲と内容について
・「何々をすれば、いくらもらえる」の何々の部分で、保険会社はどのような業務を代理店に
委託しているのか。そしてそれを、損害保険代理店の業務として受け容れることができるか。
・上記と関連して、新体系によって委託業務が増えていないかどうか。
・業務の内容にこれまでと変更があるときは、その内容を確認する。
・新たに増えた「業務」について、代理店に報酬が支払われるかどうか。
(その際、代理店が支出した金銭について、会社が「費用」としてあとで償還してくれるなら、
もっと望ましい。その点で、「報酬」か「費用」かを詳細に区別できるとよい)
③ 手数料の変化について
・現状の手数料と、新手数料体系に基づくご自分の手数料が、具体的にどうなるのか試算して
もらうこと。
④ 乗合について
・代理店が所属保険会社以外の他社へ乗合うことが認められているか。新委託契約書ではその
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可能性が低くならないか。
⑤ 連帯保証人について
・委託契約書業務を遂行中に、代理店が第三者から損害賠償請求を受けた場合、賠償債務が委
託契約書の連帯保証人にも及ぶか。
⑥ 調印について
・現行の委託契約書の有効期限はいつまでか。
・新手数料体系・新委託契約書をいつまでに調印するのか。
・調印しない場合はどうなるのか。
・調印できない場合、たとえば連帯保証人のなり手がいない等の事情は考慮されるか、また、
それに替わる手段はあるのか。
・調印猶予期間があるか。
⑶ 早稲田大学 法学部 大塚 英明教授の見解
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」によれば、今回の新体系の調印に際しては、
事情によっては「優越的地位の濫用」が問題となる危険性がある。つまり、代理店に不利益をもたら
すかどうかが不明なままに調印を急ぐ会社があれば、たとえ合理的な新手数料体系が確立されていた
としても、代理店にとっては押し付けられた環境の激変事態が独禁法にいう「優越的地位の濫用」に
該当する事もあり得るとの見解が示された。
会員の皆様は、調印の前に上掲の留意点について会社からの充分な説明を求め、新手数料体系及び
新委託契約書の内容を十分理解することが必要である。
法制研究会の提言⑵
法制研究会は前回の提言「委託契約書の差替もしくは変更約定書の調印に係る留意点」の中で留意
点としてあげた「代理店の業務範囲の内容について」の法律上の問題点について、引続き検討を進め、
平成13年12月に「損害保険代理店委託契約書の問題点について」を提言した。
提言の内容
⑴ 代理店本来の「募集」業務に係わる費用について
損害保険代理店の本来業務は、保険契約の募集業務であるが、契約募集活動を行うにあたって
は色々な費用がかかる。民法650条によれば、受任者が「委任事務ヲ処理スルニ必要ト認ム……」
べき費用を負担すれば、当然委任者にそれを求償することができる。(必要費という)
代理店委託契約においては新・旧委託契約書を問わず次の3項目以外の費用は保険会社が支払
わないとしている。
⑴ 委託業務を行うにつき要した収入印紙代
⑵ 保険証券を郵送するにつき要した切手代
⑶ 保険料精算を行うにつき要した振込み手数料
即ち保険会社は一定水準の手数料を保証することによって実質的に費用を補填しているという
考え方に立っていると考えられる。
しかしながら、実際には代理店の募集活動に伴ってかかる費用は上記の3項目にとどまらない。
例えば次のような費用がある。
保険商品のPR用に代理店が独自に作成するリーフレットやチラシの作成費
代理店のOA化による機械リース料やデータ使用料
保険料口座振替の場合の振替手数料
代理店が返還保険料を契約者に支払う場合の振込み手数料
代理店が契約者に異動承認書を送付する場合の郵送料
等々である。
上記のうち 、 はいわゆる有益費に分類される費用であり、直ちに保険会社に求償できるも
のではないが、 については代理店が集金に係わる費用を軽減するメリットもあるが、保険会社
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側にも直接的な利益があるので必要費とも考えられる。 は本人(保険会社)に代って代理店が
振込むわけであるから当然のことながら必要費である。さらに は保険会社が支払いを認めてい
る保険証券の郵送と同一の行為であるので、保険会社が負担すべきものと考えられる。
このように代理店本来の「募集」業務に係わる費用につき包括的に保険会社が代理店手数料に
含めてしまうという方策は、有益費については理があるとしても必要費については無理がある。
(注) 有益費:委任事務を遂行するに当り、本人のために有益と考えられる費用であるが、本
人の同意がなければ求償できない費用。
今後、保険募集業務における必要費と有益費については明確に分類し、求償の可否について代
理店と保険会社の双方が納得する区分をすることが必要である。
⑵ 委託業務の範囲外の業務について
代理店の本来業務は契約の募集にあるが、本来の委託契約書の趣旨からすれば委託業務の範囲
に入らない業務があり、しかもそれに係わる代理店の費用が著しく増加している。
その代表例が「計上業務」と「損害調査の補助業務」である。
① 計上業務
代理店は保険契約を締結すれば、速やかに本人である保険会社にそれを「報告」しなければ
ならない。民法645条には「受任者ハ委任者ノ請求アルトキハ何時ニテモ委任事務処理ノ状況
ヲ報告……スルコトヲ要ス」と定められており、受任者の委任者に対する報告は契約上の義務
である。
委託契約書においても「代理店は、保険契約を締結した場合及びその保険契約について変
更・解除等の申し出を受けたときは、会社の定めるところに従い、直ちに会社へ報告する」な
どと定めている。そして代理店から契約の報告を受けた保険会社が契約の計上を行うのである。
即ち「契約の計上業務」は保険会社の業務であり、委託契約の範囲外の業務である。
しかしながら近時パソコンの普及により代理店業務のOA化が進み、代理店が契約報告を自
らのパソコンで直接入力すると同時に会社が保険契約の計上を行うことが可能となった。換言
すれば代理店が会社の計上業務を代行しているのである。
このように代理店が委託業務の範囲外の業務を行い、その結果会社の本来業務=計上業務の
事務が軽減されているのであるから、当然会社は代理店に対し報酬を支払うべきである。
最近、代理店が会社に代って計上業務(ダイレクト計上、O線計上、代理店計上、契約入力
……会社によって言い方は異なる)を行う場合には別途「事務委託契約」を締結することによ
って報酬を支払う例が増えている。
② 損害調査の補助業務
保険金の支払いは保険会社の本来業務である。ところが、委託契約書には次のように定めら
れていることが多い。
「代理店は、その取扱った保険契約について、保険事故が生じたことを知ったときは、ただ
ちにその状況を会社に通知する。また、代理店は、被保険者が保険金請求手続きを円滑に行え
るよう援助する。」
先に述べたように代理店の本来業務は契約の募集にあるので、本件も委託業務の範囲外のそ
の他の業務に該当する。従って本件業務を遂行しても何の報酬も得られないが、実際には次の
ような費用が発生する。
⒜ 事故通知に係わる費用 発生した事故が保険事故になるか状況の確認。(通信費)
事故現場へ出張し、事故の確認、写真撮影を行う。(交通費、写真代)
保険会社へ事故報告を行う。(通信費、郵送費)
⒝ 保険金請求手続きの援助
契約者へ事故報告に必要な書類を送付する。(通信費、郵送費)
契約者へ事故の進捗状況等の確認を行う。(通信費)
保険会社へ事故の進捗状況を報告する。(通信費、郵送費)
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契約者へ事故の処理状況を通知する。(通信費、郵送費)
契約者へ保険金請求手続きに必要な書類を送付する。(郵送費)
保険金請求書類を保険会社へ送付する。(郵送費)
保険金支払日を契約者に通知する。(通信費)
本件も⑴ の「計上業務」と同様の理由により会社は代理店に対し報酬もしくは費用を支払
うべきである。
なお、
「計上業務」と同様「損害調査の補助業務」についても別途「事務委託契約」を締結し、
1件当りいくら、あるいは実費を支払う例が増えている。
法制研究会の提言⑶
法制研究会は前記の提言⑵ に引続き、平成13年4月から導入された各社の新代理店制度に基づい
て作成された新委託契約書と従来の標準委託契約書(雛型)との比較検討を行い、平成15年1月に「東
京海上、損保ジャパン(安田火災)、三井住友海上の新委託契約書について」を提言した。
提言の内容
⑴ 3社に共通した問題点
① 委託業務の増加
計上業務
従来3社は計上業務は保険会社の本来業務と位置付け、代理店からの契約報告に基き計上
を行ってきたが、新委託契約書においては、計上業務を実質的に代理店に義務づけている。
東京海上の場合
新委託契約書 第4条1項の5号において「保険契約の報告に関する業務」を委託業務に
追加し、第14条において「保険契約の報告は書面もしくは電送等による当社所定の方法でた
だちに当社に報告する」とうたっているが、代理店手数料体系においては電送による方法を
優遇し、実質的に計上業務を代理店に付加している。
損保ジャパン(安田火災)の場合
新委託契約書 第1条1項の7号において「保険契約の計上業務」を委託業務に追加し、
第6条において「代理店が当社が別に定める電気通信等の方法により報告を実施する場合は、
代理店においてすみやかに計上業務を行う」と具体的に定めている。
三井住友海上の場合
委託業務に計上業務を追加してはいないが、第5条 保険契約の報告において電送による
報告を追加し、さらに代理店手数料体系においても電送による報告を優遇し、実質的に計上
業務を代理店に付加している。
損害調査の補助業務
従来3社は、
「保険事故が発生したことを知った場合、会社に通知することと被保険者が
保険金請求手続きを円滑に行えるよう援助する」を委託契約書で義務づけていたが、新委託
契約書においては、本来会社の業務である損害調査業務の一部を代理店に付加している。
まして現状では事故調査資格を設定し、その取得を手数料体系に反映させるなど代理店が
自ら積極的にこの業務に従事せざるを得ないよう誘導するきらいがある。
東京海上の場合
新委託契約書 第4条1項7号に「保険事故発生時の状況の確認、通知、相談、助言、保
険金請求手続きの援助ならびに事故対応の進展状況の説明に関する業務」を追加している。
損保ジャパン(安田火災)の場合
新委託契約書 第1条1項8号に「当該代理店が取り扱った保険契約の事故時の保険金算
定業務。この業務は当社が別に定める条件に適合した代理店のみが行うことができる」を追
加している。
三井住友海上の場合
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従前と同じ委託契約の内容であり、損害調査につき新たな業務を追加していない。
しかしながら、前述した資格を設けている。
前記の業務、即ち計上業務と損害調査に代表される種類の業務は、本来、保険会社の業務で
あり、損害保険代理店委託業務の範囲外である。
そのために、会社の本来業務の事務が軽減されるのであるから、会社は損害保険代理店委託
業務とは別にあらためて事務委託契約を締結することによって、代理店に報酬を支払い、かつ、
代理店が立替えた費用を補償すべきである。
② 銀行口座振替手数料
従来から3社は①保険料領収証の印紙代、②保険証券を郵送する切手代、③保険料精算を行
うにつき要した振込手数料 以外の委託業務に要した経費は代理店負担としていた。
さらに新委託契約書において、3社とも保険料口座振替手数料は代理店負担とする明文の規
定を設けた。
(東京海上 第15条2項、損保ジャパン 第10条7項、三井住友海上 第10条11項)
しかしながら、保険料口座振替は保険料の領収という委託業務を遂行する手段の1つとはい
え、保険会社にも代理店の銀行口座を経ず(平均1ヵ月早く会社口座へ入金)に直接会社の銀
行口座へ入金するというメリットがある。このように保険会社にも直接的な利益があるので、
口座振替手数料は民法上の必要費と考えるべきであり、保険会社が負担すべき経費といえる。
少なくとも一律代理店負担という考え方は合理性がない。
③ 乗合問題
従来から3社は委託契約書上、代理店が他の保険会社と委託契約を締結する場合は事前の承
認を必要としていたが、新委託契約書においても同一の規定を設けている。
本規定は、商法48条の代理商の競業避止に根拠をおいているが、これが代理店契約において
不当な規定であるかといえば、法的にはそうはいえない。
即ち、委託や信託など受任者・受託者が本人から営業の一部もしくは全部を任される場合、
法的に信認義務が課されるからである。従って代理店は本人(保険会社)のために善管注意義
務と忠実義務を果たすことが求められている。
しかしながら、商法48条も本人の許諾がありさえすれば「本人ノ営業ノ部類ニ属スル取引」
を自己のために行うことができると定めており、代理店委託契約書においても保険会社の承諾
があれば乗合は認められる。
この意味で委託契約書の本規定が法的に不当であり、排除すべき規定とはいえない。
そこで乗合申請にあたっては、委託契約書の基本である相互信頼、相互理解に立ち、次の3
つの項目を基本に話し合いを行うことが肝要である。
① まず忠実義務に違反しないことを納得させる。
② 乗合申請を行うに至った経緯、乗合を行おうとする正当事由の開示を行う。
③ 現契約の維持及び増収。
乗合申請の諾否の裁量は保険会社にあるが、申請に合理的な理由がある場合、保険会社が委
託契約解除などをちらつかせて拒否をすれば、優越的な地位の濫用に該当する可能性がある。
⑵ 日本代協から見た各社の主な問題点
① 東京海上
委託契約書 第4条1項
「①リスクマネジメント(リスクの確認・評価、防止・軽減策の策定援助、リスクに対す
る適切な保険商品の提案)に関する業務」
問題点
⒜ リスクマネジメントは本来的に代理店の業務なのか疑問がある。
⒝ 専門的な技術・知識が必要であり、対価を支払うべき業務である。
⒞ 委託契約書に記載されている以上、実行しないと委託契約書違反をとわれないか。
⒟ 損害率が手数料に反映される体系になっているので、リスクマネジメントと損害防止
がリンクしているのではないか。
― 171 ―
委託契約書 第17条
7項「保険料専用口座および代理店が領収した保険料は当社に帰属する。」
8項「当社はいつでも保険料専用口座から預貯金を払い戻すこと、もしくは代理店に払
い戻しを指示することができる。」
この規定によれば、保険料保管口座は完全に東京海上の預貯金口座となるので、代理店名義
の口座とすることと矛盾する。
② 損保ジャパン(安田火災)
委託契約書 第1条5項
「代理店は前各項にかかわらず、保険契約者等が当社の定める方式を利用した場合、第1
項に掲げた委託業務の一部を当社が代理店に代わり行うことをあらかじめ承諾する。この場
合、代理店は別に定めるところに従い当社に費用を支払う。」
コールセンターやホームページ上で契約者等が自由に異動手続きができることは、時代の
流れであり、代理店の業務の軽減につながるが、このような方法を事前承認させ、代理店の
関知しない業務につき、単価も明確でない費用を請求するのは問題である。
委託契約書 第3条2項
「代理店は、保険募集をする場合、契約の内容および契約内容にかかわる重要事項等につ
いて契約者等に対して十分な説明を行う。」
重要事項等の定義がなく本規定の遵守が困難である。
委託契約書 第18条
「代理店は、他の代理店および保険仲立人に対して保険募集の委託を行ってはならず、保
険募集に関して手数料、報酬その他の対価を支払ってはならない。また、代理店は、他の代
理店および保険仲立人から保険募集の委託を受けてはならず、保険募集に関して手数料、報
酬その他の対価を受け取ってはならない。ただし、当社が認める場合はこの限りではない。」
本規定の但し書「ただし、当社が認める場合はこの限りではない。
」は理解が困難な但し
書きである。
保険業法は275条において復代理を禁止しているので、但し書によって復代理を認めれば
保険業法違反となる。
③ 三井住友海上
代理店制度及び代理店手数料体系の抜本的な改定を行ったにもかかわらず、委託契約書の改
定を行わず変更約定書において「代理店の格付け、代理店手数料、保険料の精算」のみの改定
にとどめているので、事実が先行し、誤解も生じる可能性が高い。
やはり、新しい制度に合わせた新代理店委託契約書を作るべきではなかったか。
法制研究会の提言⑷
法制研究会は前記の提言⑶に引続き、
「満期所有権」の検討に取組み、平成16年4月に検討結果を「満
期所有権について」という提言にまとめた。
提言の内容
本提言の結論部分は次の4点である。(答申から抜粋)
⑴ 日本における満期所有権の法的位置付け
代理店が保険会社の委託を受け、保険会社の代理人として、自らの営業努力で開拓した顧客の
種々の情報及び満期に該当契約を更改し、代理店手数料を得るという経済的期待価値は一種の無
体財産であるが、わが国の民法で定める物権法定主義からいえば、新たに満期所有権という物権
を法定しない限り、物件として主張することは困難である。
⑵ 満期所有権の持分
代理店が保険会社の代理人として開拓し獲得した保険契約は、一義的には本人である保険会社
に帰属するといえるが、保険契約は代理店の営業活動の成果としての「沈殿物」であって、無体
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財産としての経済的価値を有する。この意味で保険契約には契約締結に至る貢献度が含まれてお
り、そもそも代理店に帰属する部分(持分)が存在すると考えられる。
昭和55年の損保協会の調査においても、代理店の契約の取扱権利の売買事例の報告があり、現
在でも代理店の合併・吸収・統合・継承に絡んでの売買事例が見られることがその証左である。
⑶ 営業権
当研究会では以上のような検討・議論を経て、代理店が、自らの営業活動によって蓄積した顧
客の情報、顧客との信頼関係、保険技術、リスクマネジメント、契約の維持、契約の更改にかか
わる代理店手数料の期待利益等は、排他的営業権と考えるべきであるという結論に至った。
営業権とは営業活動から生ずる「沈殿物」であり、無形の経済的利益もしくは財産価値を有す
るものである。もっと分かり易く言えば、顧客と代理店の関係の深さが沈殿物の大きさを左右す
るといえる。つまり営業権とはcustomers origin(顧客の選択、顧客の信頼、顧客との親密さ…)
であり、直接契約の募集をしない保険会社には帰属しない代理店の排他的財産権ともいえよう。
⑷ 代理店の営業権の保護
代理店の営業権は排他的営業権(対保険会社、他代理店)であって、保険会社、他の代理店か
らの営業権の侵害に対しては対抗手段として使うことができる権利である。
例えば保険会社が代理店に対し、恣意的な廃業誘導を行ったり、不当な合併強要を行えば、代
理店委託契約の本質である信義則に反し、明確な代理店の営業権の侵害といえるであろう。
従って、当研究会は「代理店の営業権」という概念を業界に浸透させることによって、上記に
述べた営業権に関連して生ずる対保険会社、対代理店の問題解決に役立つものと期待する。
本提言は平成16年4月の常任理事会で付議承認された。本会はこの法制研究会の成果を活用し、
今後「代理店の営業権」を主張し、
「代理店の営業権」を侵害するような行為に対しては、それを
守るため行動を起すことを確認した。
そして、前記の主旨を損保各社に理解していただくため、平成16年4月28日付けで佐藤会長名(当
時)のレターを各社長宛に出状した。
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