アジア太平洋平和研究学会 財団法人人間自然科学研究所 小松昭夫理事長 講演 レジュメ クラウド・コンピューティングの時代──共感から対立、統合・発展へ :朝鮮半島と日本列島の使命──「人類社会日本代表」として宣言 1、はじめに 今、世界は不信の連鎖を生む金融混乱、エネルギー・資源危機、そして核拡散の恐怖などが重なり、 展望が開けない状況に陥っています。 自然環境も火山、巨大地震、津波など地球規模の大変動期の様相を帯び、人類社会をいかにして存続 させるかという視点が求められています。 日本は、戦後の西側世界の右肩上がりの繁栄の末期に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれた 時期もありましたが、 「繁栄の極みに衰退の芽が生じ、衰退の極みに繁栄の芽が生ず」という古くから の言葉そのままの状況を迎えています。 2、楽しく持続的に生きられる地球社会をつくる、私がつくる 「楽しく持続的に生きられる地球社会をつくる、私がつくる」これが研究所の目的です。 ひとつの目標を達成し、その成功体験へのこだわりを捨てることを前提条件に、 「私」という一人称を 付け加えることにより、脳内で「思い」が現実化するための知の並べ替えが起こり、必要な情報・人 との出会いが生まれ、激しい社会変化の影響を受け、脳が覚醒、志が確立します。 私は 1971 年勤務先の倒産を機に退社、石油危機があった 1973 年島根県八束郡八雲村(現在の松江市 八雲町)でゼロから事業を起こし、1985 年高速シートシャッター「門番」 、2000 年クラウド・コンピ ューティングのさきがけとなった総合水管理システム「やくも水神」を発売し、2 つの異なった市場 を創造、トップブランドに育て上げました。 創業以来、税を払う責任を果たし続け、利益の一部で 1994 年に人間自然科学研究所を設立。以来、国 際社会に通用する順序を踏むために、1997 年大韓民国の独立記念館に日本人として初めて公式に献 花・寄付、1998 年大韓赤十字社を通じて朝鮮民主主義人民共和国に食糧支援、2008 年第 6 回国際平和 博物館会議に協賛し、同会議松江セッション「出雲和譲フォーラム」を開催、同年、安重根義士紀念 館に寄付、2010 年安重根義士の遺墨「獨立」の韓国への貸出しと、日本初公開の支援、さらに中国、 露国、米国はじめ世界各国の戦争と平和記念館の公式訪問を重ねるなかで、国内外の環境が整う時期 を待ってきました。 3、「和」――共感、対立、統合、発展の循環 朝鮮半島と日本列島に、人類の歴史上初めて、 「和の文化」を生み出す平和の事業化を必要とする時代 がめぐってきたと認識しています。 私は哲学者、発明家、社会起業家の顔を持つ、ゼネラルコーディネーターをめざして、今日まで活動 を続けてきました。 最近話題になっているピーター・ドラッカーが高く評価していた政治哲学者メアリー・パーカー・フ ォレットは人間や組織のかかわり方を「対立、妥協、統合」の 3 つに分けています。私は、共感の場 を生み出し、対立を統合・発展に導く循環を「和」と定義しています。その手段が「和譲」です。 「和 譲」とは、感情を加味した 3 つのソフトパワー(知識を活用する知恵、時代の要求する責任を果たす 使命感、目的が具現化に向かうための会話力)と、2 つのハードパワー(集団組織力、道理を実現す るための方便)を、全体の文脈の中で組合せ、 「和の文化」を生み出す力です。言い換えれば、目的の 具現化のために、相手を尊重し、 「何を確保し、何を譲るか」の判断力です。 4、火の利用、言葉の発明、神の認識により進歩、今行き詰まる 人類は火の利用、言葉の発明、神の認識によって「信」を生み出し社会秩序をつくり、分業により発 展し、今、混迷の時代を迎えています。私の創業の地には「火の元の神社」といわれる熊野大社があ り、儀式に使う火を起こす神器を出雲大社に授ける「亀太夫神事」が伝わっています。 今日、火は火薬、ダイナマイトを経て、究極の火・核に至り、言葉は文字、そしてグーテンベルクの 印刷術を経て、言葉と映像で瞬時につながるクラウド・コンピューティング、タブレット端末、スマ ートフォンに至っています。また、分業は国際分業が機能しなければ生きられない時代になっていま す。 究極の火である原子力=核は、福島原発の事故でヒロシマ、ナガサキにフクシマが加わり、人類共通 の「難題」となっています。県庁所在地である 20 万都市に、日本最大出力の 3 号機が建設された原発 がある島根県にとっても、喫緊の課題です。 朝鮮半島の対岸に位置するこの地域は、古代からの朝鮮半島との交流の痕跡が至るところに残ってお り、日本発祥の地ともいわれています。また、日本文化を欧米に紹介した小泉八雲(ラフカディオ・ ハーン)ゆかりの地でもあります。 伝統文化を基盤としつつ、核という難題に直面している、この地域から「和の文化」創造の旗を掲げ て世界に呼びかけ、人類史的な役割を果たす時だと確信しています。 5、戦前責任、戦中責任、戦後責任 戦争責任を戦前責任、戦中責任、戦後責任に分ける考え方があります。戦後世代は、直接戦争を行っ た世代ではありませんが、鉄道など戦前に作られた社会インフラをはじめ多くの遺産を引き継ぎ、物 質的繁栄を享受して生きてきた以上、戦前、戦中から引き継いだ怨念を、次の世代に先送りすること は許されません。 戦前、戦中の事実関係を関係国と共同で調査・研究し、一致する部分、異なった部分をすべて生かし て、 「和の文化」創造の方向に進むことが、戦後責任を果たすということではないでしょうか。それは 人類の未来に対する、今を生きる私たちの義務と責任、そして使命です。 6、朝鮮半島と日本列島の使命 朝鮮半島と日本列島は、国連常任理事国、3大核大国である米国、中国、露国の勢力が均衡している 結節点です。朝鮮半島には東西冷戦構造が世界でただひとつ残っています。 2005 年島根県「竹島の日」条例制定は、韓国、朝鮮との緊張状態の上に、露国との北方領土、中国と の尖閣諸島をめぐる出口のない緊張状態を生み出しました。 日本と朝鮮半島の間には竹島=独島問題のほかに、慰安婦問題、日本海=東海呼称問題、靖国神社問 題、強制労働、拉致問題などが抑制された対立状態にあります。政治家の発言や教科書問題などで緊 張が高まると、マスコミやインターネットを通じて、怨念が再生産されます。これに政治経済問題が 重なれば、不測の事態を招く危険性があります。 今、日本は国内の閉塞感と世界的な経済の混乱が加わり、富裕層の海外脱出も現実化し、国家崩壊さ え懸念される状況を迎えています。もし、日本、韓国、朝鮮の内部崩壊や衝突が導火線となり、3大 核大国の内部崩壊や衝突が起これば、人類の存続に決定的な影響力を及ぼします。そのような事態に 陥れば、後世から戦後責任はおろか、戦前責任を問われ、 「人類を滅亡に導いた世代」との非難を受け ます。 戦後 65 年という時間、日本海=東海という空間、その「間」を生かして、朝鮮半島と日本列島を希望 の生まれる未来世界をつくる入り口にする以外に未来への展望は開けません。 人類史的かつ世界的視野で現状を直視し、共感の場を生み出し、対立を統合・発展に導く叡智、見識 と勇気が、とくに日本、そして在日朝鮮・韓国の方々、朝鮮、韓国、さらには中国、露国、米国の国 民に求められています。 7、人類存続の緊急プロジェクト 2011 年 2 月 22 日、 「竹島の日」であり、 「和を以て貴しと為す」で日本の形をつくられた聖徳太子の 命日と伝えられる日に、研究所は上記の構想をまとめた書籍『朝鮮半島と日本列島の使命』を、日本、 朝鮮、韓国、中国の方々のご協力を得て発刊しました。また 1999 年、本構想の骨格を著した「太陽の 國 IZUMO」 、その具現化のためのプロジェクトソング「太陽の國・水の都・緑の街」の CD、さらに 2009 年、学苑出版社をはじめ多数の中国の方々のご協力を得て、数千年にわたって引き継がれた人類の至 宝である中国古典から平和・環境・健康に関する名言を抜粋し、中日韓英の 4 カ国語で編纂した『中 国古典名言録』を発刊、グローカル(グローバル&ローカル)時代を生かした「和の文化」の創造を 呼びかけています。 研究所では世界からの参加と寄付による人類存続の緊急プロジェクトとして、以下の3件を提言して います。 1)明治維新以降、今日に至るまでの世界の戦争による犠牲者全てを記録することを目指すメモリア ルタワーの建設 2)世界の戦争と平和博物館が、ICT により写真と映像で見られる世界平和戦争記念館の建設 3)現代科学技術と情報通信技術を生かし、 「和の文化」を生み出す「和の殿堂」の建設 これらの計画は、2012(平成 24)年までに構想をまとめ、2013(平成 25)年に具体化に向けてスター トし、事業費は約 5,000 億円とイメージしています。 21 世紀は、世界的に水質悪化と水不足が懸念され、 「平和の源・水」の世紀といわれています。クラ ウド・コンピューティング、Ruby 時代のさきがけを務めた総合水管理システム「やくも水神」事業を、 皆様のお力を借りて地球規模に発展させ、緊急プロジェクトの基金を生み出したいと念じています。 8、民族の誇りを超える人類社会最高の役割 研究所は、2002 年、日本海を中海に名称変更、竹島=独島を平和と環境の聖地とすることを提唱。そ して、この地域を核放棄による核の空白地帯にし、3 大核大国はもとより核保有国の核削減の流れに つなげ、この地域の伝統的な発酵の文化を生かし飛躍的に発展させる。この3つを同時にスタートさ せることによって「和の文化」の潮流が生まれると提言しています。 世界の人口は 1950 年代の 25 億人から現在 70 億人に達しようとしています。これに対し、耕地面積は ほぼ横ばいです。化学肥料、農薬、遺伝子操作を含む品種改良により面積当たりの収穫量が増加し、 食糧がまかなえています。しかし、土壌务化による自然界の免疫力低下、家畜や人間の免疫力低下の 問題が世界共通の課題となっています。とくに原発事故による放射能汚染が発生した日本では、長期 的な免疫力の低下が懸念されます。 人類は燻製と発酵によって、食糧の保存と免疫力を上げる工夫をしてきました。朝鮮半島と日本列島 にはキムチ、味噌、醤油等々、発酵の文化があります。朝鮮半島と日本列島を、世界の英知を結集し、 先端科学、情報通信技術と対立のエネルギーを生かし、飛躍的な免疫力の向上につながる菌・発酵の 先進地とし、世界人類の健康回復・増進に寄与することを提案します。この構想は、生命の持続、人 類の未来のカギを握る子どもと女性たちの強力な支持が期待できます。2011 年のノーベル平和賞は 3 人の女性が受賞しました。女性が先頭に立って活躍する時代を迎えています。 今こそ、日本国民と在日朝鮮・韓国人の方々が、朝鮮・韓国国民と共に恒久平和創造に寄与すること によって、民族の誇りを超える人類社会最高の誇りが生まれる、人類史的な役割を果たせる時がきて います。 「人権」という言葉の語源ともいわれている「人類社会代表重任」という安重根義士の言葉が よみがえる時です。 「人類社会日本代表」として、全世界に向けて本構想を発表いたします。皆様のご 意見をお待ちしています。
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