パッシブサンプラーによる流域河川から手賀沼への溶存態放射性

第 23 回環境化学討論会,亀田豊,ポスター発表(京都;2014 年)
P-164
パッシブサンプラーによる流域河川から手賀沼への溶存態放射性セシウム
負荷特性評価
○亀田豊 1, 佐藤花香 1
(1 千葉工業大学工学部)
【はじめに】
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災での東京電力福島第一原子力発電所事故により,大量の放射性物質が環境中
に放出された。福島県外においても土壌・水道水・農畜産物などで様々な環境汚染を引き起こしている。特に放射性物
質の中でも半減期が長い放射性セシウムが私たちの生活や周辺の環境に影響を与えることが懸念されている。千葉県北
部に位置する手賀沼でも事故後の環境モニタリング調査において底質から基準値を超える Cs 放射能が検出された。一
方で、表流水中の放射性セシウムは検出下限値未満(1 Bq/L)と報告されている。また、手賀沼でも魚種によっては出
荷自粛の措置が取られており、水生生物への放射性セシウム蓄積が問題となっている。これらの問題を解決するには、
手賀沼流域の放射性セシウムの環境中挙動の研究が有効であり、自治体にもこの原因を把握するため手賀沼に流入する
河川の調査が求められている 1)。しかし、手賀沼流域の広さ、表流水中の微量放射性セシウム分析の困難さ、収支解析
のための長期間連続モニタリングに必要なマンパワーと時間、得られたデータの解析方法の欠如などから研究活動は芳
しいとは言いにくい状況となっている。本研究室では労力、時間的に効率的なパッシブモニタリング手法 2)やシンチレ
ーションカウンターと放射性セシウムに選択的吸着性を有するディスクを用いた微量分析方法(Absorbed Disks for
radioactive Caesium with
NaI Scintillation counter; ADiCS)
)法 3)を開発し、東日本の河川や湖沼における放射性
セシウムモニタリングと環境中挙動解析を行っている。
そこで、本研究では時間平均濃度(TWA)が測定可能なパッシブサンプラーを用いて手賀沼流入河川流域の放射性セシ
ウムのホットスポットの探索・流域別移動量を調査し流出メカニズムを明らかにすることを目的とした。なお、最終的
にはこれらのデータを用いて、手賀沼及び流入河川の放射性セシウムの将来予測モデルを作成することを目的としてい
る。
【方法】
分析対象物質:溶存態放射性セシウム(134Cs、137Cs)、水位、水温、流量
調査場所:手賀沼に流入する河川(大堀川・大津川)の本流及び支流 9 地点
分析方法:調査地点に 6~8 月の間の計 5 回パッシブサンプラーを 2 週間ずつ設置し,溶存態放射性セシウムの TWA を求
めた。パッシブサンプラーは、セシウムラドディスク(住友 3M 社製)を Chemcatcher®ホルダー(住友3M 社製)にい
れ、専用ケース(なでしこ)にセットするものである。2 週間後、パッシブサンプラーおよびラドディスクを回収し、
ベルトールド社製のシンチレーションカウンター(LB2045)で一時間吸着した放射性セシウム放射能を測定し、本研究
室が確立した方法 3)でディスクに吸着した放射能を定量した。TWA は、本研究室で明らかにしたキャリブレーション式
に基づいて
2)
設置前にあらかじめ添加した Performance Reference compound の残留率、設置期間、使用したラドディ
スク枚数(2~3 枚)から計算した。
一方、なでしこ内部に投げ込み型水位計および水温計も入れ、設置期間における設置地点の水位および水温を連続的
に測定した。また、現在、各地点の水深と流量の関係(H-Q 曲線)を把握するため、定期的に調査地点の川幅、流速、
水深を測定し、データ蓄積を行っている。
Load evaluation of dissolved radioactive caesium from branches to Lake Teganuma by passive
samplers
○Yutaka Kameda1), Haruka Sato1)
1)
Chiba Institute of Technology, 2-17-1 Tsudanuma, Narashino, Chiba, 275-0016, Japan, Tel +81-474-47-4756,
Fax +81-474-78-4756, E-mail [email protected]
第 23 回環
環境化学討論会
会,亀田豊,ポ
ポスター発表(京
京都;2014 年)
【結果と考
考察】
Fig. 1 に 6 月から 8 月ま
までの各調査地
地点の放射性セ
セシウム TWA 結果と文科省に
結
による航空機モ
モニタリング沈
沈着量調査結
果 4)を示す。大堀川では本
本川 3 地点(防
防災調整池、新
新橋、昭和橋)
)、支川 1 地点
点(地金堀)を
を調査した。こ
これとは別に
大堀川の河口
口付近もパッシ
シブサンプラー
ーにより調査し
した結果、222
2 mBq/L であっ
った。これらの
の値はパッシブ
ブサンプリン
グによる TWAA であるため、
、6 月から 8 月の平均溶存態
月
態放射性セシウ
ウム放射能が示
示されたことに
になる。この結
結果から、最
上流部の防災
災調整池の表流
流水が最も放射
射能が高かった
た。この防災調
調整池は周辺市
市街地の台風等
等の出水時の調
調整を果たす
ために作られ
れており、道路
路排水の寄与が
が大きいと考え
えられる。道路
路粉塵等には高
高濃度の放射性
性セシウムが含
含まれている
報告もあり、それらが流入
入してきている
ることが原因の
の一つと推測さ
された。また、調整池周辺の
の沈着量が高い
いことも原因
の一つである
ると示唆された
た。防災調整池
池より下流の新
新川では 1/2 程度に放射能
能が低下してい
いることが明らかとなった。
これは新川よ
よりやや上流で
で利根川から導
導水されている
ることによる希
希釈効果と考え
えられた。昭和
和橋より下流地
地点では表流
水中放射能が
が再び上昇する
るが、これは地
地金堀の表流水
水放射能からも
も推測されるよ
ように、支川か
から放射性セシ
シウムが流入
しているため
めと考えられた
た。一方、大津
津川では上流よ
よりも下流域で
で高い傾向とな
なった。この原
原因は Fig. 2 のように最
上流部は畑と
として土地利用
用されており、
、沈着した放射
射性セシウムが
が流出しにくい
いためと考えら
られた。中流か
からは市街地
も流域に含ま
まれ、また増尾
尾付近ではホッ
ットスポットも
も存在している
るため、中流で
では表流水中放
放射能が高くな
なったと考え
られた。海外
外では、表流水
水中放射性セシ
シウム放射能は
は、流域の沈着
着量や土地利用
用に大きく影響
響を受けること
とが報告され
ており 5)、今
今回はその結果
果と調和的な結
結果となった。
今後は、濃
濃度に流量を加
加味することで
で、各調査地点
点の移動量で評
評価することで
で、大堀川、大
大津川の表流水
水中放射性セ
シウムの汚染
染源地域の推定
定が可能になる
ると期待できる
る。この結果を
を利用すれば、推定された汚
汚染源をピンポ
ポイントで除
染することで
で、手賀沼への
の放射性セシウ
ウム負荷量の効
効果的な削減が
が期待できる。
。一方、流域の
の土地利用、流
流出量、降雨
量および沈着
着量を検討する
ることで、土地
地利用別流出率
率の算出も可能
能となることが
が期待できる。
。これら、環境
境中挙動の基
礎的パラメー
ータが明らかに
になれば、表流
流水中放射性セ
セシウムの将来
来予測モデルの
の構築が可能 となる。
【結論】
今回の研究
究結果から、TTWA で評価が可
可能なパッシブ
ブサンプラーに
による表流水中
中放射性セシウ
ウムの移動量把
把握や汚染源
推定の有効性
性が示唆された
た。
【謝辞】
本研究は、平成 24 年度
度文部省科学研
研究費(挑戦的
的萌芽研究:2
24651033)の援
援助を受けて行
行われたことを
を記して謝意
を表する。
【参考文献
献】
1)
2)
千葉県 (2012) 第 1 回第
回 6 期水質保
保全計画に係わ
わる策定委員会
会資料, http://www.pref.cchiba.lg.jp
Y. kameeda, et al. (2014)
(
in pre
ep
3) 亀田ら (2014) 日本水
水環境学会誌、submitted
4) 文部科学
学省 (2011) 放射線量等分布
放
布マップ拡大サ
サイト, http://raamap.jaea.go.jp /map/ (2014 年 2 月時点).
5) L. Soneesten (2001) J. Environ. Radioact., 555, 124-143
Fig. 1 Dissolved Caesium radioactiviity in
surfacee water at sampling points in O
Ohori
river an
nd Ohtsu riiver in 2013
3
Fig. 2 Land
d use in thee catchmentt of Lake
Teganuma