2015 年度秋学期航空操縦学専攻卒業研究前刷 旅客機乗客が感じる恐怖の考察とその軽減方法についての研究 指導教員 中川 淳雄 教授 研究者 2BEO1115 近藤 亮平 1.緒言 旅客機乗客が感じる恐怖とその軽減方法を研究 しようと思った背景として、お客様に飛行機は安全 であることを理解してほしい、そして飛行機を身近 に感じてもらい利用者の増加を狙いたいと考えた からです。先入観や偏見だけで飛行機を利用しない 方々や、飛行中に恐怖心を抱く方々への対処法を見 つけることができれば、利用者が増加し航空業界に 良い影響を与えることができるはずです。秋学期の 研究目標として、飛行機に恐怖を感じる人々のため に恐怖軽減方法の模索を目標としています。 2.研究方法 書籍、インターネット上の論文、東海大学教員で 元客室乗務員の方や飛行機が苦手な方へのインタ ビューを行いました。書籍では主に、心理学の文献 を参考にしました。インターネットでは、既存の恐 怖症対策プログラムのウェブサイトや、心理学者の 立ち上げているウェブサイトを参考にしました。 客室乗務員 機内から見る外の景色 空港のお土産売り場や機内販売 機内食やドリンクサービス 展望デッキからの飛行機鑑賞 機内エンターテインメント 飛行機が苦手な人への取材では、飛行機の仕組み や機能を知らないが故に感じている恐怖があると 気づきました。例えば、鉄の塊が飛ぶ理由がわから ないことや、変な機械音がするなどは、正しい理解 があれば防ぐことが出来る恐怖です。飛行機に関す る知識を得る場所があれば、改善されると感じまし た。 楽しみなことについて意見を伺った結果、景色や 機内サービスの他に、機内アナウンスを楽しみにし ている人が多いことにも気づきました。この点に注 目し、どのようなアナウンスをすれば安心感を与え られるのか、調査に取り組みました。 ③ 3.研究結果・成果 春学期の研究成果では、恐怖の種類と飛行機恐怖 症という病気が存在することがわかりました。恐怖 には三種類存在し、死を連想させるものに働く肉体 的恐怖、想像力が負の方向へ働く精神的恐怖、そし て知らないことに対して働く知識的恐怖でした。 秋学期では、多くの方が飛行機に対し抱いている、 知識的恐怖に焦点を置き、アンケートや取材、既存 の軽減策などの調査に取り組みました。 ① 飛行機が苦手な方へのアンケート 高い場所が苦手 高い所から下を見ると恐ろしくなる 落ちた時を考えてしまう テレビ等の再現映像が怖すぎる たまに浮遊感がある 機械音が変な想像を掻き立てる 鉄の塊が飛ぶ理由がわからない 狭い空間に長時間いることの窮屈さ 空港や機外での時間ロスが多い 耳が痛い 天候に左右されやすい 離着陸時の大きな音や重力 ② 飛行機や空港で楽しみなこと 機内アナウンス 東海大学教員で元客室乗務員の方へインタ ビュー 飛行機内で直接お客様と関わるのは、客室乗 務員の方です。心理学などの接客技術を向上 するための訓練を受けているか、機内アナウ ンスで心がけていることや接客するうえで 大切にしていることをお伺いしました。 お客様の不安感に関する特別な訓練はして いないということでした。緊急事態である前 提で行われる訓練は年 2 回あるということ ですが、通常時は想定していないということ でした。 機内アナウンスで心がけていることについ ては、普段より声質を明るめにし聞き取りや すいようにゆっくりと話すことを意識して いるということでした。また、どんなときで もお客様を安心させるために笑顔を絶やさ ないようにしているそうです。また客室乗務 員には『アナウンスリーダー』という資格が あり、資格毎にアナウンスできる内容が決め られているそうです。 接客する上で大切にされていることについ ては、気配りの精神を常に絶やさないという ことでした。訓練生時代から常に指導され続 けてきたことだそうで、無意識の内に実行出 2015 年度秋学期航空操縦学専攻卒業研究前刷 来るのだそうです。お客様からお声をかけて くださることは多くはないので、気になった らすぐにお声かけを意識しているそうです。 パイロットの機内アナウンスが流れると、お 客様が明らかに安心している雰囲気になる のだそうです。実際にお客様からの意見では、 『存在がわかるだけで安心する』、 『声を聞く と安心する』、 『このパイロットなら命を預け られる』などの良い印象があったそうです。 パイロットが機内アナウンスをする上での ポイントは、落ち着いているゆっくりとした 低い声で話し、お客様が理解しやすいように 専門用語の使用を避けることです。 ④ 恐怖症軽減プログラム 恐怖症軽減プログラムには大きく分けて二 種類あり、航空会社が行っているプログラム と心理学者が独自に行っているプログラム がありました。 いずれのプログラムも、心理学者によるカウ ンセリングと自分で行える恐怖軽減方法の 練習を行います。航空会社が行っているプロ グラムの特徴として、参加者が抱える疑問を パイロットや客室乗務員などの運航に携わ る者に直接聞くことができる点があげられ ます。現場の声を聞くことで飛行機をより理 解でき、乗務員と実際に対話することでより 信頼できる効果があります。もう一つの特徴 として、シミュレーターや実機へ搭乗し、い つどんなタイミングで何が行われているの かを解説しながら体験することができます。 この体験により、知識的恐怖を大幅に軽減す ることが可能であり、飛行機に乗る楽しみを 増すことにも繋がります。これらはルフトハ ンザ航空やヴァージンアトランティック航 空、ブリティッシュエアウェイズなど、欧米 諸国の多くの航空会社で実施されています。 残念ながら参加することはできませんでし た。 4.結言 秋学期を通してアンケートや取材、たくさんのイ ンターネットサイトから情報を集めました。その中 で気づいたことがあります。それは、日本には恐怖 軽減プログラムに取り組んでいる航空会社や心理 学者が存在しないということです。これは航空への 関心が低い、飛行機恐怖症を克服しようとしない表 れだと捉えました。航空をもっと身近に感じてもら う為には、国内航空各社が協力し航空を知る機会の 増加を図る必要があると考えました。これからの課 題は、日本での恐怖症軽減プログラムの実現への働 きかけを行うことです。 参考文献 『恐怖の種類とその考察』2015/06/09 http://www10.plala.or.jp/mituha/oofo/beyond/f ear.htm 『飛行機恐怖症』2015/06/26 参照:wikipedia 『飛行機恐怖症の克服』2015/06/26 参照:Lufthansa®日本 『飛行機についてのアンケートランキング』 2015/10/27 参照:@nifty 何でも調査団 『お客様の期待する安全とは 池上彰氏』 2015/10/27 参照: ANA グループ安全飛行 No.283 2015 秋号 P.13, 14 『Fly Without Fear Virgin Atlantic』 http://www.virgin-atlantic.com/us/en/travelinformation/your-health/flying-withoutfear.html 『Flying with Confidence British Airways』 http://www.britishairways.com/engb/information/special-assistance/flyingwith-confidence 『飛行機恐怖症への対策』 http://www.airfrance.co.jp/JP/ja/local/guidev oyageur/pratique/sante_anti_stress.htm 『Flying Without Fear』 www.flyingwithoutfear.com 参考論文『Benefits to an airline of a fear of flying program』著:Dr Bryan Burke http://www.icao.int/secretariat/airtransport/Documents/2007/FearFlying/Burke.pdf
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