アウターフレームCFH工法による鉄骨系集合住宅架構システムの開発と展開 1.開発の背景 釜石市上中島地区復興公営住宅Ⅱ期全景 1.1 開発の背景 ~復興住宅の短工期実現化と新しい鉄骨造汎用システムを目指して~ ● 現状を取り巻く状況 ● 鉄骨造のメリットを活かした架構開発 生産労働力不足と環境負荷低減は建設業では喫緊 の課題であり、特にRC造集合住宅に対する課題解 決が求められている。 建設業の喫緊 の 課題 課題 環境負荷低減 メリット デメリット 経済性 居住性 生産性 CO2排出 ● 釜石市上中島地区復興公営住宅Ⅱ期のニーズ 東日本大震災の発生により釜石市では復興住宅の 需要が高まり、早期完成が喫緊の課題となった。 災害対応 メリット 工場生産や乾式接合による工期短縮 靱性に優れた耐震性、小断面 軽量化による基礎簡略化、省CO2 生産労働力不足 一般的にRC造 集合住宅の 鉄骨造の 早期施設提供の 高い要望 1. 工期1年(新年度4月からの入居必達) 2. 大地震時の高い安全性(対余震) 3. 多様な居住者への対応(フレキシビリティ) コンクリート供給制限、職人・資材不足に対応できる 「鉄骨造のメリットを活かした中高層集合住宅」 の開発 ● 具体的な課題 ① 労務事情に左右されない早期の施設提供 ⇒ 在来RC造と比較し2/3の工期 ② 大地震時(対余震)の高い安全性 ⇒ 震度6強の耐震性の確保 ③ ライフステージの変化に対応できる可変性 ⇒ 2住戸連結等への変更、設備更新性確保 ④ 室内空間拡大とフラット化による居住性向上 ⇒ 室内の梁・柱型の出っ張りがほとんどない ⑤ 一般のRC集合住宅と同等の経済性 ⇒ 資材高騰に左右されない同等の経済性 アウターフレームCFH工法による鉄骨系集合住宅架構システムの開発と展開 2.開発内容 2.1 アウターフレームCFH架構システムの開発 ~従来のRC集合住宅を超えた次世代システム~ 1. アウターフレームとインナーフレームによる架構構成 外部(アウター)フレームと住戸間(インナー)フレームでラーメン架構を平面2方向架構に分離、フレキシビリティ性と住戸の居住性を大幅に向上。同 時にH形鋼による部材構成により、優れた生産性を発揮。 2. アウターフレーム大梁と低層部の柱にCFHⓇ部材を採用 大梁は防錆に優れた溶融亜鉛めっきのH形鋼にコンクリートを充填(CFH®)した無耐火被覆と高い耐震性を実現。また、生産性向上に鉄骨製作・運 搬・取付けなどに高効率なノンブラケット形式を採用。柱は1~3階までの2層をCFHⓇ にALC巻き、3階以上の柱は、H形鋼にALC巻きとしている。 3. 短辺方向の揺れを低減に住戸間フレームに波形鋼板壁パネルを設置 高耐震性、高剛性を確保する鋼板壁パネルは薄型で住戸間の任意の位置に配置を可能としている。 ▐ インナーフレーム <戸境壁方向> H形鋼 柱:500X250 梁:500X200 ▐ アウターフレーム ▐ 架構構成詳細図 <外部長辺方向> アウターフレーム柱 コンクリート充填鉄骨部材(CFH部材) 柱:650X300 梁:600X300 下層CFH® 上層ALC耐火被覆 アウターフレーム CFH Ⓡ梁(溶融亜鉛めっき) 製作ヤードでコンクリート打設 孔明き合成床版 +現場打ち コンクリート 建方用つなぎ梁 錆止めペイント ▐ 直接基礎 独立フーチング基礎 軽量化による杭基礎の省略 ▐ 波型鋼板壁パネル CFH Ⓡ梁端部 ノンブラケット工法 <戸境壁方向> 梁端部は、コンクリート非充填とし、 建方用仮設ボルト採用、現場溶接 剛性確保 耐震性の向上 2.2 アウターフレームCFH架構システムの特徴 ① 内部のフレキシビリティ ALC、巻付ロックウール等の 耐火被覆 ~3つのメリットを実現~ アウターフレームは、 インナーフレームと分離 1.設計時の自由度 インナーフレーム柱 スラブで平面フレームを連結 コンクリートの耐震壁や鉄骨ブレースがなく、設計 段階では各住戸の間仕切り位置を自由に設定可 能としている。 2.改修時の自由度 戸境壁が乾式壁となっているので、ライフステージ に合わせ、比較的自由に開口があけられる。2戸 連結や3戸を2戸に変更することを可能としている。 インナーフレームは、アウター フレームの柱位置に制約され ない自由な配置が可能 ライフスタイルの変化に 対応し戸境壁の開口を 自由に開けられる 戸境壁部分はフルオープン H形鋼のみによるフレーム ② 高い耐震性 一般鉄骨造 1.高剛性と高靭性 一般的なS造に比べ高い剛性のCFH®部材を外 部フレームに採用し、RC造に比べて軽量である こと、かつ高い変形性能により高耐震性を備え ている。 アウターフレームCFH®架構 梁:手すり兼用 手摺 バルコニースラブ バルコニースラブ 梁 耐震性とデザイン性を兼ねたアウターフレーム 2.波型鋼板壁パネルの採用 住戸間フレームは短スパンの柱配置とし、さらに 波型鋼板壁パネルを併用し、地震時・暴風時の 水平変形を抑えた安心な構造システムとしてい る。 柱 耐火被覆 柱・梁への 耐火被覆不要 無耐火被覆梁 波型鋼板耐震壁 アウターフレームCFH工法による鉄骨系集合住宅架構システムの開発と展開 ③ 高い居住性 1.開放性のある居室 アウターフレームにより、自由な開口寸法を設けることができ、かつ逆梁の採用により上部方向にビューの広 い開口を確保。 2.高い天井とレイアウトフリーの居室 住戸内を横切る大梁が一切無いため、一般の架構に比べて同一階高で高い天井高さを確保することができる。 また、設備配管レイアウトの自由度が増し、快適な居住空間を実現できる。 柱型少なく、梁型の無い高い天井 アウターフレームCFH®架構 一般鉄骨造 アウターフレーム 二重床 純梁による狭い開口部 断面 配管と梁の干渉により 将来対応が困難 限定される水回り 階高の低減 逆梁による広い開口部 必要な天井高さを確保しつつ フレキシビリティを確保 限定されない水回り 巾木の一部を兼ねた 機能的な逆梁 スラブと一体化した梁 スラブ下に出てくる大きな梁 アウターフレーム 平面 柱型で狭くなるバルコニー 柱型の出ない広いバルコニー 室内を制限する柱型 出っ張りが少ない薄型柱 2.3 CFH®部材の特徴と性能 ~耐火実験と施工検証による性能確認~ ● CFH®部材の特徴とメリット ● 耐火性能上の課題と検証 1.H形鋼のフランジ間にコンクリートを充填した部材 鋼材とコンクリートの累加効果により部材剛性が向上 2.コンクリートを充填することで鉄骨耐力向上 局部座屈や横座屈を防止し鋼材強度限度まで使用 3.コンクリートの充填により耐火性能を向上 鋼材(フランジ部分)を表わしにすることが可能。 加熱 外部に露出する逆梁に採用するため、 4面から加熱を受ける環境となるが、 過去の無耐火実験例がない。 加 熱 火災時における構造安全性能の確認と 耐火設計に必要なデータ取得のために、 熱応力解析と載荷加熱実験の実施結果 をもとに、耐火性能評価(ルートC)を実 施し、国土交通大臣認定を取得した。 H形鋼(溶融亜鉛メッキ) 充填コンクリート 加熱 溶接金網 頭付きスタッド 評価取得 BCJ基評-BS1044-01、BCJ基評-BS1045-01 ● CFH®部材の施工性 工場打設・現場地上打設・建方後打設でも製造可能なCFHⓇ部材は、様々な条件下での採用が可能であることを確認した。 ① 場外ヤード鉄骨梁搬入 ③ ウエブ面コンクリート打設 ② 目地・メッシュ筋配筋 ⑤ 出荷(場外ヤード⇒作業所) ④ コンクリート打設後ひび割れ防止処理 ⑥ 取り付け状況 ⑦ CFH梁仕口部 溶接状況 ⑧ アウターフレーム仕上げ状況 アウターフレームCFH工法による鉄骨系集合住宅架構システムの開発と展開 3.展開プロジェクトの概要 3.1 設計概要 ~「鉄のまち 釜石」にふさわしい復興事業計画~ ● 事業の位置付け 2号棟8F79戸 1.鉄の町と鉄の会社による事業 本事業は鉄の町である釜石市で長年にわたり発展してきた新日鉄住 金とそのグループ会社である新日鉄興和不動産による災害公営住宅 整備事業である。 3号棟5F38戸 2.鉄骨造によるメリットを生かした災害公営住宅 鉄の町である釜石市に対し、労働者不足の中で早く施工が可能となる 鉄骨造を採用し、なおかつ市民が安心して住み続ける耐震性を担保す るCFH工法という鉄骨造メリットを最大限生かして災害公営住宅を建 設する復興支援事業である。 (他社施工) 4号棟3F18戸 5号棟3F21戸 3.チーム力を発揮しての復興事業 釜石市における中核企業としての新日鐵住金の責任を踏まえ、新日鉄 興和不動産と竹中工務店が一体となって推し進め、社会貢献を果たし 得る復興事業である。 上中島町Ⅱ期 ● 工事概要 工事名称 建築地 建築主 建物用途 設計施工 階 数 構 造 建築面積 延べ面積 工 期 :釜石市上中島町復興公営住宅Ⅱ期整備工事 :岩手県釜石市上中島町二丁目20-6 :新日鉄興和不動産株式会社 :共同住宅 (3号棟1F=応援センター・集会室など) :株式会社 竹中工務店 :2号棟:地上8階/3号棟:地上5階 (住戸数計117戸) :鉄骨造 (竹中工務店 CFH工法: 商標登録) :2号棟974.37㎡、 3号棟1,080.64㎡ (計2,055.01㎡) :2号棟6,784.16㎡、3号棟:3,844.05㎡ (計10,628.21㎡) :2014/2~2015/2 (本体12.5ヶ月)+(外構工事1ヶ月) 釜石湾 津波到達エリア 釜石市 出展 Google ● プラン概要 基準階平面図 立面図・断面図 2号棟 2号棟 南立面図 4号棟 3号棟1階は 集会場等 5号棟 2号棟 東立面図 CFH ®架構システムにより理想的なプランを実現 住戸バルコニーを共用空間としたコモン バルコニー、様々な催し物が行える応援 センター、それと連携した外部ステージな ど、居住者間の豊かなコミュニティを醸成 させる仕掛けを多く配した。 CFH架構システムにより、自由度の高い プランニングが可能となり、理想的なプラ ンを実現することができた。 1LDK 2LDK 集会所など 3号棟 コモン テラス コモンバルコニー コモンバルコニー 「縁側」空間となるコモンバルコニー
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