自動車部品リユースのための洗浄技術に関する調査研究

システム技術開発調査研究
18−R−9
自動車部品リユースのための
洗浄技術に関する調査研究
報
告
−要
書
旨−
平成19年3月
財団法人
委託先
機械システム振興協会
みずほ情報総研株式会社
こ の 事 業 は 、競 輪 の 補 助 金 を 受 け て 実 施 し た も の で す 。
http://keirin.jp
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件は急速
な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、直面する問題
の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度化する社会的ニーズ
に適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。
このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興協会で
は、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、機械システムの調査研究等に関す
る補助事業、新機械システム普及促進補助事業を実施しております。
特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技術、あ
るいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますので、当協会に
総合システム調査開発委員会(委員長 政策研究院 リサーチフェロー 藤正 巖氏)を設置し、同
委員会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を実施しております。
この「自動車部品リユースのための洗浄技術に関する調査研究報告書」は、上記事業の一環と
して、当協会がみずほ情報総研株式会社に委託して実施した調査研究の成果であります。
今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の成果が一つの礎石
として役立てば幸いであります。
平成19年3月
財団法人機械システム振興協会
i
はじめに
本報告書は、財団法人機械システム振興協会の委託を受けて、みずほ情報総研株式会社が実施
した「自動車部品リユースのための洗浄技術に関する調査研究」の成果をまとめたものである。
資源の有効な利用の確保を図るとともに、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全に資することを
目的とした「資源有効利用促進法」では、関係者の責務について規定がなされている。自動車関
係は、省資源化、長寿命化を図る「指定省資源化製品」
、及び使用済製品の再利用を図る「指定再
利用促進製品」に指定されている。
このような背景のもと、本調査は自動車補修部品としてのリビルト部品・リユース部品のリサ
イクル促進に寄与することを目的として、
洗浄技術の向上、
標準化等に関する調査研究を行った。
調査研究は、有識者による「自動車部品リユース・リビルトのための洗浄技術に関する調査研究
委員会」の検討、及びその下に設置されたワーキンググループの検討に基づいて進められた。ま
た、洗浄の現状については、洗浄事業者のアンケート、ヒアリングによって把握した。
本報告に当り、委員会、ワーキンググループの委員の皆様方、及び調査に御協力を頂いた企業
の方々に深く感謝の意を表する。
平成19年3月
みずほ情報総研株式会社
ii
目次
序
はじめに
1. 調査研究の目的 ..................................................................................................................................1
2. 調査研究の実施体制...........................................................................................................................2
3. 調査研究の内容 ..................................................................................................................................6
4. 自動車部品リユースにおける洗浄実施の現状把握..........................................................................7
4.1 自動車部品リユースの概観...........................................................................................................7
4.2 自動車部品リユースにおける洗浄実施の現状(訪問調査) .................................................. 10
4.3 自動車部品リユースにおける洗浄実施の現状(アンケート調査)....................................... 22
4.4 まとめ .......................................................................................................................................... 31
5. 部品の材質・汚れと適切な洗浄技術の検討 ...................................................................................32
5.1 自動車リサイクル部品の洗浄の特徴......................................................................................... 32
5.2 代表的な部品の材質・汚れ........................................................................................................ 33
5.3 代表的な材質・汚れについて適切と考えられる洗浄方法.................................................................. 34
5.4 洗浄事例 ...................................................................................................................................... 36
6. 現状技術では対応困難なケースについての洗浄試験の実施.........................................................45
6.1 シリンダヘッドに付着したカーボンに対する検討.................................................................. 46
6.2 ピストンに付着したカーボンに対する検討 ............................................................................. 49
7. 今後の技術開発の課題・影響等の検討...........................................................................................51
7.1 短期的課題................................................................................................................................... 51
7.2 中長期的課題............................................................................................................................... 52
8. 調査研究の今後の課題及び展開......................................................................................................53
iii
1.調査研究の目的
現在、国内で発生する使用済み自動車は年間約 500 万台と言われており、地球環境への
配慮・限りある資源の有効利用などにおいて、非常に大きな問題となっている。リサイク
ルを考えた場合、自動車などの機械類は、本質的には、長寿命の製品であるので、部品の
再利用は重要な意味をもつ。事故や部品の故障・劣化等によって使用不能になった自動車
から、使用可能な部品を取り出せば、補修用として使用可能であることが多い。しかし、
実際には、使用可能な部品も回収されることなく、処分されてしまう場合も多くあると考
えられる。
本調査研究では、当該分野における洗浄の現状・課題を把握した上で、適切と考えられ
る洗浄技術を整理し、特に洗浄が困難な部品・汚れについては洗浄試験を実施することで、
課題解決の可能性を探る。さらに、自動車部品再利用の更なる促進に向けて、今後必要と
なる洗浄技術について、技術開発課題を検討する。
1
2.調査研究の実施体制
本調査研究の実施体制として、みずほ情報総研株式会社内に学識経験者、自動車部品リ
サイクル関連団体、洗浄技術者等からなる「自動車部品リユース・リビルトのための洗浄技
術に関する調査研究委員会」を設置し、委員会における討議・指導を得て、具体的作業を進
めた。
また、同委員会の下部組織として、みずほ情報総研株式会社内に洗浄技術者等からなる
「自動車部品リユース・リビルトのための洗浄評価ワーキンググループ」を設置し、専門技
術的な検討を行った。
さらに、自動車部品の洗浄等に関するデータ収集や洗浄試験は洗浄装置のメーカーに外
注した。外注内容は、上記委員会及びワーキングの指示に基づいた。
調査研究の実施体制
財団法人機械システム振興協会
総合システム調査開発委員会
委託
みずほ情報総研株式会社
自動車部品リユース・リビルトのための
洗浄技術に関する調査研究委員会
自動車部品リユース・リビルトのための
洗浄評価ワーキンググループ
2
総合システム調査開発委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長
政策研究院
藤
正
巖
太
田
公
廣
金
丸
正
剛
志
村
洋
文
中
島
一
郎
廣
田
藤
岡
健
彦
大
和
裕
幸
リサーチフェロー
委
員
埼玉大学
地域共同研究センター
教授
委
員
独立行政法人産業技術総合研究所
エレクトロニクス研究部門
副研究部門長
委
員
独立行政法人産業技術総合研究所
産学官連携部門
コーディネータ
委
員
東北大学
未来科学技術共同研究センター
センター長
委
員
東京工業大学大学院
薫
総合理工学研究科
教授
委
員
東京大学大学院
工学系研究科
助教授
委
員
東京大学大学院
新領域創成科学研究科
教授
3
自動車部品リユース・リビルトのための洗浄技術に関する調査研究委員会名簿
(順不同・敬称略)
委員長
外川
健一
熊本大学
法学部
教授
永澤
卓也
日本自動車リサイクル部品販売団体協議会
清水
信夫
有限責任中間法人日本ELVリサイクル機構
深澤
広司
リビルト工業会全国連合会
柳川
敬太
株式会社デンソー
材料技術部
森合
主税
森合精機株式会社
常務取締役
委員
常務理事
理事
会長
主任部員
オブザーバ
平塚
豊
日本産業洗浄協議会
シニアアドバイザー
和田
宇生
みずほ情報総研株式会社
シニアコンサルタント
中本
隆宏
みずほ情報総研株式会社
シニアマネジャー
生田奈緒子
みずほ情報総研株式会社
リサーチアナリスト
事務局
4
自動車部品リユース・リビルトのための洗浄評価ワーキンググループ名簿
(順不同・敬称略)
座長
森合
主税
森合精機株式会社
常務取締役
委員
柳川
敬太
株式会社デンソー
材料技術部
長田
和己
日伸精機株式会社
第二事業部長
杉浦
篤
ファインマシーンカタオカ株式会社
平塚
豊
日本産業洗浄協議会
冠木
公明
松村
清
株式会社 EME
主任部員
第二営業部長
シニアアドバイザー
技術顧問
株式会社パーカーコーポレーション
室長代理
事務局
和田
宇生
みずほ情報総研株式会社
シニアコンサルタント
中本
隆宏
みずほ情報総研株式会社
シニアマネジャー
5
3.調査研究の内容
(1) 調査研究のフロー
本調査研究のフローを図 3.1に示す。
自動車部品リユース・リビルト
のための洗浄技術に関する調査
研究委員会
↓
ワーキンググループ
リサイクル部品生産者への
1.自動車リサイクル部品にお
現場訪問調査
ける洗浄実施の現状把握(第 4
及びアンケート
章)
日本産業洗浄協議会
2.部品の材質・汚れと適切な洗
浄技術の検討(第 5 章)
(自動車部品の洗浄等に関
するデータ収集)
3.現状技術では対応困難なケ
洗浄関連メーカー
ースについての洗浄試験の実
施(第 6 章)
4.今後の技術開発の課題・影響
等の検討(第 7 章)
図 3.1
調査研究のフロー
(2) 調査研究の対象
本調査研究では、使用済み自動車部品のリユースにおける洗浄を対象とする。ここでい
う洗浄とは、水やアルコール等の液体を使用した洗浄だけに限らず、汚れを取るためのブ
ラスト等の表面加工処理も含むこととする。
6
4.自動車部品リユースにおける洗浄実施の現状把握
自動車部品のリユースにおいて洗浄は必要不可欠な技術であるが、これまでは特に洗浄
技術という観点からの現場での実態は明らかになっていない。
したがって、本調査研究では、まず、自動車解体業者・部品再生業者で実施されている
洗浄の現状を把握するとともに、課題・ニーズを検討して、本調査研究項目を実施する上
での基礎情報とする。
調査の方法としては、当該事業者等へのヒアリング、アンケートを実施した。
4.1 自動車部品リユースの概観
自動車部品の国内でのリユースには「リビルト部品」「リユース部品」「解体部品」の3
つの形態がある。いずれの部品も、解体業者が使用済自動車を解体する過程で取り外され
た部品が自動車補修部品として流通し、整備事業者の修理作業により使用過程車に装着さ
れ、再度市場に投入されるものである。また、解体業者が使用済自動車を解体する過程で
取り外された部品の一部には、海外に輸出されるものもある。
図 4.1に自動車部品リユースの流れを示す。
使用済自動車
テスト
洗浄
コア
解体部品
輸出部品
解体業者
部品取り外し
調査対象
部品再生業者
テスト
組立
検査・整備
洗浄
コア分解
リビルト部品
コアバック
図 4.1
リユース部品
整備事業者・部品流通業者
自動車部品リユースの流れ
7
(1) リビルト部品
リビルト部品は、使用済部品を分解し、内部まで洗浄して部分品(以下「インナーパー
ツ」という)の検査を行い、劣化や磨耗が激しいインナーパーツを交換するなどの整備を
施した上で再度組み立て、稼動テストに合格して出荷される部品である。市場規模につい
ての統計データは見当たらないが、複数の民間調査機関の過去の推計から 150 億円∼200
億円程度であるものと推測される。
リビルト部品の主な部品は、エンジン、ミッション、ドライブシャフト、スタータ、オ
ルタネータなど自動車の機能に関わる部品である。リビルト部品の生産者は“部品再生業
者”や“リビルダー”と呼ばれ、特定の部品に特化した小規模事業者が多いが、そうした
事業者の中から成長拡大を続け、多用な部品を取り扱う企業へとステップアップするとこ
ろも出てきた。
原料となる使用済部品は“コア”と呼ばれ、部品再生業者は仕入れを、整備事業者から
のコアバック1、解体業者またはコア集荷業者からの購入に依存している。従来、コアは整
備事業者が使用過程車から部品交換整備の時に取り外した部品が主流であったが、故障車
から取り外した部品は劣化や磨耗が激しいことから、近年では解体業者が使用済自動車を
解体する過程で取り外した部品(故障していない部品)へのニーズが高まっていると言わ
れる。
コア提供者である解体業者や整備事業者は、コアの輸送時に他の荷物を汚さない程度の
油類のふき取りをしてから梱包するなど最低限の処置は実施するが、コアの洗浄は一切行
わない。また、整備事業者は購入したリビルト部品を改めて洗浄することはしない。した
がって、リビルト部品が市場に投入されるまでの過程で洗浄が行われるのは、部品再生業
者においてのみである。
(2) リユース部品
リユース部品は、解体業者が使用済自動車を解体する過程で、比較的劣化や磨耗の程度
が軽い部品を取り外し、表面を洗浄して部品の状態を検査し、検査結果を添付して出荷さ
れる部品である。市場規模についての統計データは見当たらないが、複数の民間調査機関
の過去の推計から 1200 億円∼1500 億円程度であるものと推測される。
リユース部品の主な部品は、ドア、フェンダ、ランプ類、ガラス類などの外装部品であ
り、機能部品はエンジンやミッションなどの高額部品でのニーズがある。リユース部品の
生産者は部品の取り外しを行う解体業者であり、在庫を自社で保管・管理している。
リユース部品の販売には 1990 年代後半からインターネットを活用した在庫共有システム
が普及しており、整備事業者や部品流通業者から注文を受けた販売者=生産者=解体業者
1
自動車補修部品流通における商習慣として、リビルト部品を購入した整備事業者は、交換整備で取り外
した使用済交換部品を、出荷元に無償で返却することになっている。返却できない場合は、購入金額にコ
ア未返却のペナルティーが上乗せされることがある。
8
は自社のパソコンから他者の在庫も検索可能であり、買い手の注文条件に応じた在庫を自
社+他社の在庫から選択して出荷することができる。
在庫共有システムは、解体業者の協同組合や任意組織がそれぞれ独自に開発しており、
業界統一には至っていない。それぞれのシステムでは在庫として登録するための基準を設
けており、傷の表現方法や洗浄していない部品の取り扱いなど、システムによって多様で
ある。例えば、あるシステムでは登録する部品の洗浄は必須とされているが、別のシステ
ムでは洗浄の程度はほとんど問われない、という状況である。
リユース部品は生産者である解体業者から直接整備事業者に販売されることが一般的で
あり、間に部品流通業者が介在することが一般的とは言い難い。また、整備事業者は購入
したリユース部品に、よほどひどい汚れが付着していない限り改めて洗浄することはしな
い。むしろ外装部品は、交換していない他の部品の汚れや日焼けとの見た目の差が大きい
と、顧客からのクレームの原因ともなるので、装着してから全体を洗車することが多い。
したがって、リユース部品が市場に投入されるまでの過程で洗浄が行われるのは、生産
者である解体業者においてのみである。
(3) 解体部品
解体部品は使用済自動車から取り外したままの状態で再利用されるものであり、洗浄や
検査などは一切行われない。解体業者の近隣の整備事業者やユーザーが、解体業者から直
接格安で購入していくのが一般的である。解体業者の中には“もぎ取り”と称して、広大
な敷地に使用済自動車を陳列して、入場者に好きな部品の取り外しを許可し、カフェテリ
ア方式で退場時に精算するサービスを実施しているところもある。解体部品が市場に投入
されるまでの過程で洗浄が行われる可能性は、購入者が部品装着直前に行う場合であるが、
本事業で議論するほどの規模ではないと推測される。
(4) 輸出部品
解体業者が使用済自動車を解体する過程で取り外された部品の一部には、海外に輸出さ
れるものもある。40 フィートまたは 20 フィートのコンテナに取り外した部品だけを詰め込
んで通関させることが一般的である。外部への油類への染み出し防止程度の措置は行われ
るが、きちんとした洗浄は行われない。
9
4.2 自動車部品リユースにおける洗浄実施の現状(訪問調査)
2005 年 1 月に施行された「使用済自動車の再資源化等に関する法律(以下「自動車リサ
イクル法」という)」では、自動車の解体には自動車解体業の許可が必要とされており、財
団法人自動車リサイクル促進センターの発表では約 6000 社が許可を取得している。
この中には、車輌販売時の下取り等で引き取った車から部品取りをして、事故車のドア
等の交換整備を行う自動車整備事業者や、解体部品は出荷するが洗浄・検査が求められる
リユース部品までは手がけていない解体業者も含まれている。インターネットを活用した
リユース部品の在庫共有システムへ部品登録を行っている解体業者の正確な数の把握は難
しいが、日本自動車リサイクル部品販売団体協議会に加盟している諸団体の規模等から、
部品洗浄に取組んでリユース部品を商品化している解体業者数は 500∼800 社程度ではな
いかと推測される。
本節では、自動車部品リユースにおいて自動車部品再生業者及び自動車解体業者で実施
されている洗浄の現状についての現場訪問及びヒアリングによる調査の結果を述べる。本
調査研究においては、当該事業者の現場を 4 件を訪問し、また必要に応じて、他の事業者
に対してもヒアリングを行った。
以下に、前節で述べたリビルト部品及びリユース部品に分けて調査結果を記す。
4.2.1 リビルト部品における洗浄実施の現状
現場調査・ヒアリングによって把握したリビルト部品に対する洗浄の実施例を表 4.1
にまとめた。今回調査した事業者は、この業界では比較的大手の企業である。
(1) 洗浄の現状
以下に、リビルト部品の製造工程で行われている洗浄について記す。
(a) 洗浄の目的
リビルト部品において、洗浄を実施する主目的は、以下のとおりであった。
・ 概観の改善による商品価値の向上
・ 部品トラブルの防止
(b) 取扱製品
取扱製品としては、エンジンやドライブシャフトといった機能部品、及びスタータ
やオルタネータといった電装部品が対象であった。
(c) 汚れの種類
汚れの種類としては、油、オイルスラッジ、塵埃、泥、グリース、カーボン、錆で
10
あった。かなり幅広い種類の汚れが付着している状況であった。
(d) 使用されている洗浄剤・洗浄方法(図 4.2)
洗浄剤としては、主として、水蒸気、アルカリ洗浄剤が使われていた。
洗浄方法としては、手作業で実施されている場合もあるが、自動洗浄機が多く使わ
れていた。自動洗浄機としては、ジェット洗浄が多く使われていたが、中には、30 年
以上同じ洗浄機が使われているケースもあった。
また、表面の概観をきれいにするために、どの事業所でもショットブラストが使わ
れていた。
洗浄装置(超音波、ジェット洗浄)
図 4.2
ブラスト装置
リビルト部品における洗浄装置
11
表 4.1
事業者
1
2
3
従業員数
主な取扱製品
約 140 人
ドライブシャフト
約 60 名
約 60 名
ドライブシャフト
スタータ、オルタ
ネータ
リユース/リビ
ルト
リビルト
リビルト
リビルト
リビルト部品に対する洗浄実施の例
汚れ
洗浄剤
洗浄方法・工程
油、オイル
スラッジ、塵
埃、泥
アルカリ洗浄剤
(上項に同じ)
油、オイル
スラッジ、塵
埃、泥、グリ
ース
アルカリ洗浄
剤、ガラスビー
ズ、灯油
油、オイル
スラッジ、カ
ー ボ ン 、
泥、錆
アルカリ洗浄剤
工程
①スプレーで洗浄剤を一面に塗布
②高圧スプレーで噴霧して洗浄
③必要に応じて、手でブラシがけ
④エアーブラシで乾燥後、自然乾燥
洗浄方法
手作業、自動機
工程
①分解後、ブラシを使って灯油で洗
浄
②アルカリ洗浄
③ガラスビーズでショットブラスト(外装
品の場合のみ)
④灯油による洗浄で仕上げ(ガラスビ
ーズの除去)
洗浄方法
自動機(一部手作業)
備考
汚れの程度で洗
浄剤の濃度変
更。
洗浄方法
手作業
工程
①アルカリ洗浄剤を使い、自動機でジ
ェット洗浄(8 分、70℃)
②汚れがひどい場合は、再洗浄
③ショットブラストで固形物を除去
④ヘラ(手作業)でグリース等の粘着
物を除去
12
課題
左記の洗浄剤以
外に、トリクロロエ
チレンを月 200ℓ
程度使っている
ようである。
生産性向上のため
に、左記の工程①の
洗浄時間を短縮した
い。
事業者
4
従業員数
約 40 名
主な取扱製品
エンジン
リユース/リビ
ルト
リビルト
汚れ
洗浄剤
洗浄方法・工程
油、オイル
スラッジ、カ
ーボン、塵
埃
アルカリ洗浄
剤、水蒸気
洗浄方法
自動機
工程
①アルカリ洗浄槽への浸漬(80℃、4
∼5 時間)
②汚れがひどい場合は、再洗浄(1 割
程度)
③スチーム洗浄で工程①②の洗浄剤
を除去(10 分)
④防錆剤の塗布
13
課題
固着したカーボン
を除去する技術が
欲しい(現在、ショ
ットブラストで研
磨)。
アルミ材の場合、洗
浄剤の使用条件に
よっては、表面が黒
く変色してしまう
ので、良い洗浄剤が
欲しい。
備考
(2) 洗浄における課題
リビルト部品の製造現場からは、洗浄技術の検討プロセス・情報の共有化及び洗浄技
術に対する課題・ニーズについて、表 4.2に示すような意見が得られた。
表 4.2
リビルト部品の製造現場での意見(ヒアリング結果)
<洗浄技術に対する課題・ニーズ>
・近年、自動車の軽量化のためにアルミ部品が増えてきている。しかし、アルミの場合、
洗浄剤の使用条件によっては、表面が黒く変色してしまうので、良い洗浄剤が欲しい。
・カーボンを除去する技術が欲しい。現状ではショットブラストを行っているが、表面
を削るので本当は実施したくない。
・生産性向上(洗浄時間の短縮)のためには、例えば、洗浄温度を高温にすることが考
えられるが、高温にすると、ポンプのトラブルが生じるのでできない。また、ジェット
洗浄のノズルの数を増やすと、噴射圧が低くなり、洗浄性能が低下してしまう。
・部品再生において洗浄は課題である。この課題が解決すれば、仕事はうまくいく。
・部品の種類が様々なので、多様な部品が洗浄可能な装置を望む。また部品の中まで洗
浄できる装置を望む。
<洗浄技術の検討プロセス・情報の共有化>
・洗浄に関する情報源は、洗浄剤の仕入先が主である。
・情報収集源としては、まず洗浄剤や工具の仕入先や思いつく。仕入先が都合の良い情
報しか入ってきていない可能性も考えられる。
・創業当初から数十年間経ているが、洗浄方法はほとんど変更していない。
・技術については、同業者内で見学会を行っている。しかし、洗浄方法については、現
在、業界の標準は存在しない。
<新規装置に対する投資や設置スペース>
・リビルト業者にとって、300 万円の洗浄装置は高価ではない。しかし、装置購入の際に
は費用対効果を見るので、ただ概観をきれいにするだけで 300 万円だと高価だという印
象がある。部品を分解して洗浄するのを 1 回の工程で可能になれば、300 万円は妥当で
ある。
・洗浄装置の購入価格として、200∼300 万円は妥当な範囲である。洗浄量・洗浄能力に
もよるが、高いという印象はない。
・設置スペースについても、2m2 程度なら問題ない。
14
上記の結果を踏まえながら、リビルト部品での洗浄における課題をまとめると以下の
ようになる。
(a) 洗浄技術上の課題
技術上、以下のような課題のあることが分かった(図 4.3)。
¾ 固着カーボンの除去が困難。
¾ アルカリ洗浄剤でアルミが変色。
固着カーボンは、エンジン部品に付着した汚れであり、エンジンの燃焼による熱で油
分が炭化したものであると考えられる。
また、アルカリ洗浄剤でアルミ材が変色するのは、アルミは強アルカリに弱いためで
ある。近年の自動車の軽量化の動きを受けて、アルミ材の使用が増えていると推測され、
課題となっている。
カーボン固着、アルミを変色させずに洗浄
図 4.3
カーボン固着
洗浄技術上の課題
(b) 生産効率上の課題
洗浄時間は、1 つの工程で十分から数十分程度かかっている場合が多かった。また、
中には、4∼5 時間かかっているケースもあった。
また、洗浄の際には、部品の種類ごとに分類した後で、同一部品をまとめて洗浄し
ている場合が多かったが、汚れが多様なために、一度の洗浄では汚れが十分取れずに、
再洗浄を実施しているケースもあり、時間を短縮したいというニーズが高かった。
(c) 情報収集上の課題
洗浄方法は、自社内での試行錯誤によって検討され、実施されている状況が伺えた。
また、情報源は、洗浄剤や工具の仕入先及び同業他社などと比較的限定されたもので
あった。
15
4.2.2 自動車解体業者におけるリユース部品洗浄の現状(現場調査)
以下に、リユース部品の製造工程で行われている洗浄について調査結果を述べる(表 4.
3)。
(1) 洗浄の現状
(a) 洗浄の目的
リユース部品において、洗浄を実施する目的は、リビルト部品の場合と同様であっ
た。
・ 概観の改善による商品価値の向上
・ 部品トラブルの防止
(b) 取扱製品
取扱製品としては、機能部品、電装部品だけでなく、ドア、バンパ、ウインドウガ
ラスなどの外装品及び電子基板などの電子部品が対象であった。リビルト部品よりも
取扱製品の種類が幅広い状況が伺えた。
(c) 汚れの種類
汚れの種類としては、リビルト部品の場合と同様に、油、オイルスラッジ、塵埃、
泥など、かなり広範囲な種類の汚れが付着している状況であった。
(d) 使用されている洗浄剤・洗浄方法(図 4.4)
洗浄剤としては、主として、アルカリ洗浄剤が使われていた。部品の違いや汚れの
違いによる洗浄剤の使い分けはあまり行われていないようであった。また電子部品の
洗浄にはアルコールが使われていた。
洗浄方法としては、布拭きや高圧スプレーなど、手作業で実施されている場合が多
かった。
16
布拭き
高圧スプレー装置
図 4.4
リユース部品における洗浄の状況
17
表 4.3
事業者
1
従業員数
約 140 人
主な取扱製品
エンジン、ミッシ
ョン
ドア、バンパ
リユース/リビ
ルト
リユース
リユース
リユース部品に対する洗浄実施の例
汚れ
洗浄剤
油、オイル
スラッジ、塵
埃
アルカリ洗浄剤
(原液:pH11∼
12、モノエタノールア
ミン含有水溶液)
塵埃、泥、
手垢
洗浄方法・工程
アルカリ洗浄剤
(上項に同じ)
洗浄方法
自動機(ジェット洗浄)
洗浄時間
10∼30 分/回
処理数
70∼80 部品/日
洗浄方法
手作業
洗浄時間
数分/部品
ウィンドウガラス
電装品
リユース
リユース
塵埃、泥、
手垢
工程
①スプレーで洗浄剤を一面に塗布
②高圧スプレーで噴霧して洗浄
③布で拭く
④再度、布で乾拭き
洗浄方法
手作業(手拭き)
水
洗浄時間
数分/部品
(洗浄しない)
−
18
課題
備考
洗浄時に水が入らな
いようにするための
下準備に手間がかか
る。
錆 防 止 のた め 、
洗浄は注文後に
実施。
洗浄ができないという
理由で商品にならな
いケースはない。
再生するかどう
かは、傷の有無
で判断。
バンパは、傷が
あれば、スクラップ
か海外へ。
事業者
2
従業員数
約 60 名
主な取扱製品
ターボチャージ
ャー、キャブレタ
ーなど
電子基板
リユース/リビ
ルト
リユース
リユース
汚れ
洗浄剤
洗浄方法・工程
油、オイル
スラッジ、塵
埃
アルカリ洗浄
剤、ガラスビー
ズ、灯油
洗浄方法
自動機
工程
①アルカリ洗浄剤を使い、自動機でジ
ェット洗浄(2度洗い、10 分)
②超音波洗浄(40∼50℃、15∼20
分)
③ガラスビーズでショットブラスト(外装
品の場合のみ)
④灯油による洗浄で仕上げ(ガラスビ
ーズの除去)
洗浄方法
手作業
アルコール
工程
①綿棒でコーティング剤を剥がす
②半田付け
③防湿剤の塗布
19
課題
備考
生産性向上のため
に、左記の工程①の
洗浄回数を1回に減
らしたい。
左記の洗浄剤以
外に、トリクロロエ
チレンを月 200ℓ
程度使っている
ようである。
(2) 洗 浄 に お け る 課 題
リユース部品の製造現場からは、洗浄技術の検討プロセス・情報の共有
化 及 び 洗 浄 技 術 に 対 す る 課 題 ・ ニ ー ズ に つ い て 、 表 4 .4 に 示 す よ う な 意
見が得られた。
表 4 .4
リユース部品の製造現場での意見(ヒアリング結果)
<洗浄技術に対する課題・ニーズ>
・部品の分解は、どうしても手作業で行わざるを得ない。
・ランプの洗浄は独特の技術が必要である。水が入ると不良となるので、
手作業で行っている。
・日本の消費者は、純正品志向がある。
・日本の自動車部品は、車種ごとに部品の形状が異なり、また同一車種で
も 2∼ 3 年 で 部 品 が 替 わ る 。
<洗浄技術の検討プロセス・情報の共有化>
・ 洗 浄 剤 に つ い て は 、 様 々 検 討 し た ( 例 え ば 、 「マ マ レ モ ン 」や ガ ソ リ ン ス
タ ン ド の 床 用 な ど )。 現 在 使 用 し て い る 洗 浄 剤 は 、 売 り 込 み に よ っ て 試 し
てみたものである。
・洗浄方法については、自社努力で検討してきた。自社でできる範囲のこ
と は 既 に 実 施 し て き て お り 、こ れ 以 上 は 限 界 が あ る 。こ の 業 界 は 、問 題 は
自分達で解決するという風土があるかもしれない。
・技術については、同業者内で見学会を行っている。しかし、洗浄方法に
ついては、現在、業界の標準は存在しない。
<新規装置に対する投資や設置スペース>
・装置を導入する際には、コストパフォーマンスが重要な観点である。リ
ビ ル ト 部 品 の 場 合 は 取 扱 部 品 が 特 化 し て い る の で 、数 や 大 き さ が そ ろ っ て
い る 。そ れ に 対 し て 、リ ユ ー ス 部 品 の 場 合 は 、取 扱 部 品 が 少 量 多 品 種 で あ
り 、ラ イ ン を 組 む こ と が 困 難 で あ る 。し た が っ て 、ど う し て も 手 作 業 で 洗
浄することになる。
・リユース部品の業界でも、以前、洗浄装置の導入に投資したことはある
が、結局、手作業になっている。
・ 洗 浄 機 の 導 入 に 、100 万 円 な ら 投 資 可 能 で あ る が 、300 万 円 だ と 結 構 高 価
で あ る 。 300 万 円 か か る な ら 、 作 業 員 を も う 1 人 雇 う こ と が で き る 。 手 作
業の方がきれいになる。スペース的にも新規に装置を置く余裕がない。
20
上記の意見等を踏まえながら、リユース部品での洗浄における課題をま
とめると以下のようになる。
(a) 技 術 上 の 課 題
リビルト部品の場合と異なり、今回調査したリユース部品の場合は、
特に技術上の課題はあまりなく、洗浄工程で特に困っている状況は伺え
なかった。
(b) 生 産 効 率 上 の 課 題
リビルト部品の場合と同様に、洗浄回数を減らしたいという意見を得
た。また、洗浄時に部品内に水が入らないようにするために下準備に手
間がかかるという意見も得た。
(c) 情 報 収 集 上 の 課 題
洗浄方法については、リビルト部品の場合と同様に、自社内での試行
錯誤によって検討され、実施されている状況が伺えた。また、情報源も
限定的であった。
21
4 . 3 自 動 車 部 品 リ ユ ー ス に お け る 洗 浄 実 施 の 現 状( ア ン
ケート調査)
(1) 実 施 概 要
前節までに述べた現場訪問の結果を更に幅広く定量的に把握するために、
自動車部品リサイクル業者に対してアンケート調査を実施した。
アンケートでは、以下の事項について情報収集ができるように留意して、
設問を設定した。
・ 事業所の規模と取り扱い部品の種類
・ 更 な る リ サ イ ク ル 促 進( 生 産 性 ・ 生 産 力 の 向 上 )に 対 す る ニ ー ズ 及 び 阻
害要因
・ 洗浄工程の詳細(対象部品、洗浄方法、洗浄の課題等)
・ 洗浄技術に関する情報・支援策などの課題解決に対するニーズ
ア ン ケ ー ト の 発 送 数 は 275 件 ( う ち 、 リ ビ ル ト 部 品 業 者 93 件 、 リ ユ ー ス
部 品 業 者 182 件 ) で あ り 、 回 答 数 は 126 件 ( 回 収 率 46% ) で あ っ た 。
以下に、アンケート結果を示す。
(2) ア ン ケ ー ト 結 果
① 回 答 事 業 所 の 規 模 ( 従 業 員 数 )( 図 4 .5 )
従 業 員 20 名 以 下 が リ ビ ル ト 部 品 71% 、リ ユ ー ス 部 品 51% 、と も に 最 も
多 く 、 次 い で 21∼ 50 名 以 下 が そ れ ぞ れ 19% 、 44% と な っ て お り 、 い ず れ
も 50 名 以 下 の 事 業 所 が 90% を 超 え る 。
従業員
従業員
従業員
従業員
従業員
計
20 名 以 下
21-50 名
5 1 -1 0 0 名
1 0 1- 30 0 名
301 名 以 上
リ ビル ト 部 品
回答数
構成比
15
71.4%
4
19.0%
2
9 .5 %
0
0 .0 %
0
0 .0 %
21
10 0 . 0%
※無 回 答 を除 く
22
リユース部 品
回答数
構成比
43
51 . 2 %
37
44.0%
3
3 .6 %
1
1 .2 %
0
0 .0 %
84
10 0 . 0%
合計
回答数
58
41
5
1
0
10 5
構成比
55.2%
39.0%
4 .8 %
1 .0 %
0 .0 %
10 0 . 0%
リビルト部品
従業員20名以下
従業員21-50名
従業員51-100名
従業員101-300名
従業員301-1000名
従業員1001名以上
リユース部品
0%
10%
20%
図 4 .5
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
従 業 員 数 [ N b = 21、 N u = 84] 注 )
注 )N b 及 び N u は、 各 設 問 に お け る リビ ル ト 部 品 業 者 の 回 答 件 数 及 び リ ユー ス 部 品 業 者 の 回 答
件 数 を示 す。以 下 同 様 。
② 洗 浄 を 実 施 し て い る 取 扱 い 部 品 ( 図 4 .6 、 図 4 .7 )
リビルト部品・リユース部品合計で多い機械部品は、エンジン、オート
マ チ ッ ク ト ラ ン ス ミ ッ シ ョ ン 、ラ ジ エ ー タ 、サ ス ペ ン シ ョ ン な ど 60% 以 上
の事業所(件数)で行っている。次いでドライブシャフト、プロペラシャ
フト、コンプレッサーなどとなっている。
エ
ン
ス ジン
ミッ
シ
ョ
ミッ ン
ラ ショ
ジ
ン
サ エー
ス
タ
ペ
ー
ン
ド
ラ
シ
イ
ョ
プ ブシ ン
ロ
ペ ャフ
ラ
シ ト
コ
ャ
ン
フ
デ プレ ト
フ
ァ ッサ
レ
ン ー
シ
ャ
ル
マ
フ
ス ラー
パ ター
ワ
ス ター
オ テポ
タ ルタ ン
ー
プ
ボ ネー
チ
タ
ャ
ー ー
ジ
ャ
ー
電
装
品
そ
の
他
オ
ー
トマ
チ
ッ
ク
トラ
ン
回答率
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
リビルト部品
図 4 .6
リユース部品
洗 浄 を 実 施 し て い る 取 扱 部 品 ( 機 械 部 品 )[ N b = 21、 N u = 84]
注 ) 縦 軸 の パ ー セ ン テー ジ は、 各 設 問 ご と の 回 答 件 数 を、 総 回 答 件 数 (N b あ る い は N u ) で 割 っ た 値
で ある 。 以 下 同 様 。
外装品に ついては 、リビル ト部品は 非常に少 なく、ほ とんどが リユース
23
部 品 で あ る 。フ ェ ン ダ 、バ ン パ 、ボ ン ネ ッ ト 、ド ア 、ス ポ イ ラ ー な ど が 60%
以 上 の 件 数 と な っ て い る 。ラ ン プ 類 、ガ ラ ス 、サ イ ド ミ ラ ー S な ど も 多 い 。
100%
90%
80%
回答率
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
他
そ
ー
デ
の
ィオ
ー
ト
カ
サ
ー
オ
イ
ドミ
ガ
シ
ラ
ラ
ー
ス
類
ラ
ン
プ
イ
ラ
ス
ポ
ド
ー
ア
ト
ン
ネ
ッ
ボ
フ
ェ
バ
ン
ン
ダ
ー
パ
ー
0%
リビルト部品
図 4 .7
リユース部品
洗 浄 を 実 施 し て い る 取 扱 部 品 ( 外 装 品 )[ N b = 21、 N u = 84]
③ 今 後 の 生 産 性 や 生 産 力 の 向 上 に つ い て ( 図 4 .8 )
生産力や 生産効率 の向上に ついては 、リビル ト部品、リユース 部品とも
に「 今 よ り も 生 産 力 を 向 上 さ せ た い 」、
「今よりも生産効率を向上させたい」
が 圧 倒 的 に 多 く 、「 現 状 の ま ま で よ い 」 は き わ め て 少 な い 。
リビルト部品
図 4 .8
他
そ
の
現
状
以
下
で
よ
い
い
よ
の
ま
ま
で
今
よ
り
も
生
産
現
状
効
率
を
産
力
を
も
生
り
今
よ
向
上
さ
せ
た
い
向
上
さ
せ
た
い
回答率
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
リユース部品
生 産 力 や 生 産 効 率 の 向 上 に つ い て [ N b = 21、 N u = 83]
24
④工程上の課題
○ 課 題 の 種 類 ( 図 4 .9 )
生 産 力 や 生 産 性 の 向 上 に お け る 工 程 上 の 課 題 と し て 、リ ビ ル ト 部 品 で は
「 洗 浄 」 と 「 保 管 」 が 最 も 多 く ( 53 % )、 次 い で 「 検 査 」、「 部 品 の 分 類 」、
「 分 解 」 が 40% と な っ て い る 。
リ ユ ー ス 部 品 で は 、 多 い も の か ら 「 自 動 車 の 解 体 」、「 検 査 」、「 保 管 」 が
50% 以 上 、 次 い で 「 洗 浄 」 41% と な っ て い る 。
70%
60%
回答率
50%
40%
30%
20%
10%
他
そ
の
い
は
な
課
題
に
る
盤
に
よ
施
特
組
表
面
処
理
塗
装
立
て
み
分
解
分
類
荷
品
の
部
自
動
梱
包
・出
洗
浄
保
管
検
査
車
の
解
体
0%
リビルト部品
図 4 .9
リユース部品
工 程 上 の 課 題 [ N b = 15、 N u = 81]
⑤ 課 題 の 内 容 ( 図 4 .1 0 )
課題の内容については、
「 対 策 に 必 要 な 費 用 が 高 す ぎ る 」が 最 も 多 く( 合
計 で 41% )、 次 い で 「 新 し い 対 策 を 導 入 し て も 使 い こ な せ る 人 材 が 不 足 し
て い る 」、「 新 し い 設 備 な ど を 設 置 す る ス ペ ー ス が な い 」 が そ れ ぞ れ 32% 、
31 % と な っ て い る 。「 現 状 の 工 程 を 変 更 し よ う と す る と 、 製 品 の 品 質 確 保
が 心 配 」 も 21% あ っ た 。
25
そ の他
世 の中 にあ る 現 状 技 術 で は 解 決 で
きな い
回答率
図 4 .1 0
対 策 情 報 を 集 める のが大 変
リビルト部品
ど の よ う な 対 策 を 選 べば よ いの か
判 断 し にく い
現 状 の工 程 を 変 更 し よ う とす る
と 、製 品 の品 質 確 保 が 心 配
新 し い設 備 な ど を 設 置 す る ス ペー
スが な い
新 し い対 策 を 導 入 し ても 使 い こな
せ る 人 材 が 不 足 し て いる
対 策 に必 要 な 費 用 が 高 す ぎ る
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
リユース部品
課 題 の 内 容 [ N b = 15、 N u = 81]
⑥洗浄工程
○ 使 用 洗 浄 剤 ( 表 4 .5 )
リ ユ ー ス 部 品 の 場 合 ( リ ビ ル ト 部 品 は サ ン プ ル 数 が 少 な い )、 全 部 品 を
通 し て 「 ア ル カ リ 洗 浄 剤 」 が 50% で 最 も 多 く 、「 水 、 水 蒸 気 」 34% 、「 中
性 洗 剤 」34% 、
「 灯 油 」11% 、
「 ア ル コ ー ル 」8% な ど と な っ て い る 。ま た 、
部品別には異なる洗浄剤がそれぞれ異なる割合で使用されている。
表 4 .5
使 用 洗 浄 剤 [ N b = 27、 N u = 206]
【リビルト部 品 】
エンジン
アルカリ洗 浄 剤
水 、水 蒸 気
中性洗剤
灯油
アルコール
酸性洗浄剤
植物系
塩素系溶剤
その他
回答件数
33%
50%
17%
33%
トランスミ
ッ ショ ン
20%
40%
40%
40%
ドライブ
シ ャフ ト
67%
17%
17%
スタ ータ
オルタネ
ータ
100%
100%
100%
100%
33%
6
5
3
26
1
1
その他
合計
5%
5%
11%
41%
22%
37%
0%
0%
11%
7%
7%
11
27
10%
15%
30%
【リユース部 品 】
エンジン
アルカリ洗 浄 剤
水 、水 蒸 気
中性洗剤
灯油
アルコール
酸性洗浄剤
植物系
塩素系溶剤
その他
トランスミ
ッ ショ ン
ドライブ
シ ャフ ト
51%
35%
30%
10%
5%
5%
1%
1%
5%
54%
31%
31%
10%
2%
5%
2%
54%
23%
42%
4%
12%
4%
5%
4%
16%
10%
13%
50%
34%
34%
11%
8%
5%
1%
0%
8%
72
55
25
16
9
29
206
回答件数
スタ ータ
オルタネ
ータ
11%
5%
11%
32%
16%
11%
30%
20%
20%
20%
30%
その他
35%
48%
42%
10%
3%
合計
○ 洗 浄 方 法 ( 表 4 .6 )
洗浄方法は、リビルト部品、リユース部品ともに全部品をとおして手作
業 に よ る 場 合 が 多 く ( 90 % 以 上 )、 自 動 機 に よ る も の は 少 な い ( リ ユ ー ス
部 品 で 8% )。
表 4 .6
洗 浄 方 法 [ N b = 29、 N u = 225]
【リビルト部 品 】
エンジン
自動機
手作業
その他
回答件数
33%
100%
17%
6
トランスミ
ッ ショ ン
60%
100%
ドライブ
シ ャフ ト
スタ ータ
オルタネ
ータ
その他
100%
100%
15%
55%
1
1
13
5
100%
33%
3
トランスミ
ッ ショ ン
ドライブ
シ ャフ ト
10%
97%
11%
98%
100%
5%
100%
100%
3%
97%
78
61
26
19
10
31
合計
28%
93%
7%
29
【リユース部 品 】
エンジン
自動機
手作業
その他
回答件数
スタ ータ
オルタネ
ータ
その他
合計
8%
99%
0%
225
⑧洗浄上の問題点
○ 問 題 点 の 内 容 ( 図 4 .1 1 )
設 問 に 挙 げ た 5 種 類 の 内 容 が 、そ れ ぞ れ 同 程 度 の 割 合 で 問 題 点 と し て あ
げ ら れ て い る 。 ま た 、「 特 に 困 っ て い る こ と は な い 」 が 全 体 で 15% で あ っ
た。
27
60%
50%
回答率
40%
30%
20%
10%
リユース部品
洗 浄 上 の 問 題 点 の 内 容 [ N b = 21、 N u = 84]
○ 洗 浄 困 難 な 汚 れ ( 図 4 .1 2 )
「カーボンの固着」と「表面の変色」が同程度に挙げられた。
60%
50%
回答率
40%
30%
20%
10%
0%
カーボンの固着
表面の変色
リビルト部品
図 4 .1 2
その他
リユース部品
洗 浄 困 難 な 汚 れ [ N b = 4、 N u = 45]
28
そ の他
図 4 .1 1
特 に困 って いる こと は な い
リビルト部品
現 在 の洗 浄 方 法 から 別 の方 法
に変 更 した いが 、適 当 な 技 術
が 見 つから な い
ど う し ても 手 作 業 が 必 要 な た
め 、自 動 化 でき な い部 分 が あ
る
洗 浄 困 難 な 汚 れ な の で 、適 当
な 技 術 が 見 つから な い
洗 浄 剤 の使 用 量 を 減 ら した い
部 品 形 状 が 複 雑 な た め 、洗 浄
し にく い
0%
○ 洗 浄 方 法 の 変 更 ( 図 4 .1 3 )
変 更 し た い 理 由 と し て 、「 生 産 効 率 の 向 上 」 が 最 も 多 く ( 合 計 で 79% )、
「 洗 浄 性 能 の 向 上 」、「 コ ス ト 低 減 」 が 続 い て い る 。 安 全 衛 生 や 事 故 防 止 は
他
そ
の
化
備
の
設
ブ
ル
トラ
備
の
設
労
働
老
朽
止
衛
生
・事
故
の
向
の
防
上
減
安
全
の
向
洗
浄
性
能
の
向
効
率
生
産
コ
ス
ト低
上
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
上
回答率
少ない。
リビルト部品
図 4 .1 3
リユース部品
洗 浄 方 法 の 変 更 [ N b = 7、 N u = 36]
⑩ 必 要 な 情 報 ( 図 4 .1 4 )
「 洗 浄 剤 や 洗 浄 装 置 の 商 品 情 報 」が 最 も 多 く( 合 計 で 59% )、次 い で「 部
品 や 汚 れ ご と の 標 準 的 な 洗 浄 方 法 」45% 、
「 成 功 事 例 」33% 、
「コスト情報」
27% な ど と な っ て い る 。
29
70%
60%
50%
回答率
40%
30%
20%
10%
0%
浄剤
洗
部品
浄装
や洗
や
置の
商品
に整
ごと
れ
汚
情報
た
理し
標
準的
浄
な洗
の
方法
紹
介
成功
事例
ト情
コス
報
規制
情報
特
リビルト部品
図 4 .1 4
に欲
情報
しい
い
はな
その
他
リユース部品
必 要 な 情 報 [ N b = 19、 N u = 81]
⑪ 期 待 す る 支 援 策 ( 図 4 .1 5 )
「 イ ン タ ー ネ ッ ト の ホ ー ム ペ ー ジ 」 が 合 計 で 35% 、「 ガ イ ド ブ ッ ク ・ 冊
子 」 30 % が 多 く 、 次 い で 「 見 学 会 」、「 講 習 会 」 と な っ て い る 。 ま た 、「 特
に 支 援 は 必 要 な い 」 も 31% と 多 い 。
50%
40%
回答率
30%
20%
10%
リビルト部品
図 4 .1 5
リユース部品
期 待 す る 支 援 策 [ N b = 19、 N u = 80]
30
の
他
そ
要
な
い
に
支
援
は
必
技
特
術
指
導
員
の
派
遣
講
習
会
見
学
会
ブ
イ
ド
ガ
イ
ン
タ
ー
ネ
ッ
トの
ホ
ー
ム
ッ
ク
ペ
ー
ジ
・冊
子
0%
4.4 まとめ
自動車部品再生業者・解体業者への現場訪問・ヒアリング及びアンケート
調査を実施し、自動車部品リユースにおける洗浄の実態及び課題・ニーズを
調査した。
自 動 車 部 品 リ ユ ー ス に お い て 、洗 浄 が 行 わ れ る の は 、
“部品再生業者におけ
る コ ア 分 解 後 の 洗 浄 過 程( リ ビ ル ト 部 品 )”と“ 解 体 業 者 に お け る 部 品 取 り 外
し 後 の リ ユ ー ス 部 品 商 品 化 の 過 程 ( リ ユ ー ス 部 品 )” の 2 つ の 場 合 で あ る 。
調 査 の 結 果 、 自 動 車 部 品 リ ユ ー ス に お け る 洗 浄 の 課 題 は 「 洗 浄 技 術 」、「 生
産 効 率 」、「 洗 浄 に 関 す る 情 報 収 集 」 に あ る こ と が 導 出 さ れ た 。
ま た 部 品 の 形 状 や 多 品 種 少 量 の た め に 、洗 浄 に は 手 作 業 が 必 要 で 自 動 化 が
困難な状況が分かった。
傾 向 と し て は 、リ ユ ー ス 部 品 よ り も リ ビ ル ト 部 品 の 方 が 技 術 上 の 課 題 を 多
く抱えていることが分かった。
31
5.部品の材質・汚れと適切な洗浄技術の検討
現状の洗浄方法(洗浄剤、洗浄装置、周辺装置)は多種類あり、それらの
組み合わせも多様である。通常、洗浄方法は、個々の企業で個別に検討が行
われるので、実際には、不適切な洗浄方法が実施されている可能性もある。
また、既存の技術で洗浄可能であるにもかかわらず、適当な洗浄方法が見つ
けられずに、洗浄を諦めているケースもあると推測される。
そ こ で 、 本 調 査 研 究 に お い て は 、 「3 . 自 動 車 部 品 再 生 に お け る 洗 浄 実 施
の 現 状 把 握 」の 結 果 を 基 に し て 、当 該 分 野 で の 代 表 的 な 部 品 に つ い て 、種 類 ・
材質・汚れを整理する。さらに上記の結果に対して、ワーキンググループに
よって、個々の条件に適していると考えられる洗浄方法を検討した。
5.1 自動車リサイクル部品の洗浄の特徴
自 動 車 リ サ イ ク ル 部 品 に つ い て 、適 切 な 洗 浄 方 法 を 検 討 す る た め の 参 考 と
して、当該分野での洗浄の特徴をまとめておく。
自動車リサイクル部品の洗浄の特徴を通常の産業洗浄と比較すると、表
5 .1 の よ う に な る 。
通 常 の 産 業 洗 浄 は 、大 量 に 同 一 の 部 品 が 製 造 さ れ る 過 程 で の 洗 浄 工 程 で あ
るので、汚れの種類は限定的であり、汚れは部品ごとに大きく異なることは
な く 、全 部 品 で 一 様 で あ る 。ま た 汚 れ は 比 較 的 薄 く 付 着 し て い る 場 合 が 多 い 。
一方、自 動車リサ イクル部 品の洗浄 の場合は 、このよ うな通常 の産業洗 浄
と 異 な り 、汚 れ の 種 類 は 、潤 滑 油 、泥・砂 、オ イ ル ス ラ ッ ジ 、錆 、カ ー ボ ン 、
グリースなど、多種類あり、汚れは自動車の使用履歴(使われ方、地域、年
数など)によって部品ごとに異なる。また汚れの中には、カーボン固着など
強固な汚れもある。
したがっ て、当該 分野での 洗浄方法 には、程 度や種類 の異なる 汚れに極 め
て細かく対応できる必要があると考えられる。
表 5 .1
比較項目
汚れの種類
部品ごとの違
い
汚れの程度
自動車リサイクル部品の洗浄の特徴
自 動 車 部 品 リサイクル分 野 の洗 浄
通 常 の産 業 洗 浄
多種類
限定的
( 潤 滑 油 、泥・砂 、オ イ ル ス ラ ッ ジ 、
錆、カーボン、グリースなど)
部品ごとに汚れが異なる
全部品でほぼ一様
油等が厚く付着
カーボン固着など強固な汚れあり
32
汚れは比較的薄く付着
ま た 、 自 動 車 部 品 分 野 で の 洗 浄 装 置 の 標 準 的 な 価 格 を 表 5 .2 に 示 す 。 洗
浄装置メーカ 2 社へのヒアリング結果である。
装 置 の 標 準 的 な 価 格 と し て は 、 半 自 動 機 が 100∼ 200 万 円 、 自 動 機 が 300
∼ 500 万 円 以 上 で あ る 。
表 5 .2
自動車部品分野での洗浄装置の標準的な価格
(洗浄装置メーカ 2 社へのヒアリング結果より)
タイプ
半自動機
価格
100∼ 200 万 円
備考
乾燥装置、ろ過装置なし。
自動機
300∼ 500 万 円
ろ過装置、周辺装置含む。
設 置 面 積 は 2∼ 3m2 程 度 。
被洗浄物が大きくなるともっと高額になる。
表4.2に示したように、リビルト部品を製造する事業者にとっては、こ
の 程 度 の 価 格 は 妥 当 な 範 囲 の よ う で あ る 。 事 実 、 表 4 .6 に 示 し た よ う に 、
リビルト部品分野では、3 割程度、自動機が導入されている。また、表4.
4に示したように、リユース部品を製造する事業者にとっては、無理のある
価格ではないと言える。
ま た 設 置 面 積 に つ い て も 、 2∼ 3m 2 程 度 と 小 さ い の で 、 今 回 、 現 場 訪 問 し
た状況から考えると、問題のない大きさであると推測される。
しかし、この分野で洗浄の自動化が進まない理由は、装置の価格や設置面
積 で は な く 、 む し ろ 、 図 4 .1 1 に 示 し た よ う に 、 部 品 の 形 状 が 複 雑 な こ と
などために、手作業でないと洗浄が困難なことや、多品種少量の処理のため
に洗浄機を導入するメリットがないことなどのためであると考えられる。
5.2 代表的な部品の材質・汚れ
ア ン ケ ー ト で 得 た 情 報 を 基 に し て 、代 表 的 な リ サ イ ク ル 部 品 の 材 質 と 主 な
汚 れ を 整 理 す る と 表 5 .3 の と お り と な る 。 対 象 と し て は 、 特 に 洗 浄 に お い
て 課 題 の あ る 機 能 部 品( エ ン ジ ン 、ト ラ ン ス ミ ッ シ ョ ン 等 )及 び 電 装 部 品( ス
タータ、オルタネータ)の代表的な部品を取り上げた。
表 5 .2 に 示 す よ う に 、 材 質 と し て は 、 ア ル ミ 、 鉄 が 主 で あ る 。 ま た 汚 れ
としては、泥・砂、塵埃といった外部から入って来る汚れ、潤滑油、オイル
スラッジ、グリース、燃料といった油系の汚れ、またこれらの油系の汚れが
炭化したカーボン、さらに材質が変質した錆など、性質の異なる多様な汚れ
が付着している。
33
表 5 .3
△
○
○
○
○
△
塵埃
○
△
○
○
○
カー ボン
○
○
○
○
△
燃料
S
B
A
△
△
○
○
◎
○
◎
グリ ー ス
◎
◎
○
○
○
主 な汚 れ
錆
△
オ イ ルスラ
ッジ
◎
○
◎
◎
△
泥 ・砂
潤滑油
樹脂
◎
◎
銅
◎
◎
主 な材 質
鉄
エンジン
トランスミッション
ドライブシャフト
スタータ
オルタネータ
アルミ
部品
代表的な部品についての材質・汚れ
△
△
△
△
△
△
△
△
注 )◎ : 多 い ( ア ン ケ ー ト で の 回 答 率 7 0 % 以 上 ) 、 ○ : や や 多 い ( 同 2 0 % 以 上 7 0 % 未 満 ) 、 △ : 少
ない(同 5%以 上 20%未 満 )
5.3 代表的な材質・汚れについて適切と考えられる洗浄方法
前節でまとめた代表的な材質・汚れを対象として、適切と考えられる洗浄
方 法 を 検 討 し た 結 果 を表 5 .4 に示 す。
これは、ワーキン ググルー プのメン バーによ って、実 際の自動 車部品リ サ
イクル業者を訪問し、洗浄現場、被洗浄物を調査した上で適切と考えられる
洗 浄 方 法 を 検 討 し た 結 果 で あ る 。 し た が っ て 、 これらの方 法 は、第 4章 で述 べた
実 際 のリサイクル業 者 の要 望 にあるような効 果 的 な洗 浄 方 法 として有 効 であると考 えら
れる。
検 討 方 法 は 、現 在 、標 準 的 に 使 用 さ れ て い る 洗 浄 技 術( 洗 浄 手 法 、洗 浄 剤 、
ブラスト材 )の中 から、それぞれの材 質 ・汚 れに適 していると考 えられる組 み合 わせを選
んだものである(ただし、一 部 、新 規 な洗 浄 技 術 も含 む)。5.1節 で述 べたように、通
常 の産 業 洗 浄 の場 合 と異 なり、自 動 車 リサイクル部 品 の場 合 は、エンジンなど、取 れ
にくい汚 れが付 着 している場 合 があるので、予 備 洗 を入 れた。
ただし、ここで示 した洗 浄 方 法 は、あくまでも一 般 論 であり、実 際 に適 用 する場 合 は、
被 洗 浄 物 の形 状 や汚 れの程 度 、またコストや作 業 効 率 などを考 慮 して、アレンジする
必 要 がある。
また 今 後 は 、 新 規 な 技 術 を 更 に 取 り 込 む こと な どを 検 討 す るこ と が 重 要 で あ るこ と も
指 摘 されている。
34
表の見方
例 え ば 「 1 a 」 の 場 合 は 、 下 表 の 「洗 浄 技 術 の 選 択 候 補 」 か ら 、 洗 浄 手 法 は
「 1. 超 音 波 」 で 、 洗 浄 剤 は 「 a . ア ル カ リ 洗 浄 剤 」 を 選 択 す る こ と を 意 味 す る 。
た だ し 、 洗 浄 手 法 が 「5. ブ ラ ス ト 」の 場 合 の み 、 洗 浄 剤 で は な く 、 ブ ラ ス ト
材 の 種 類 ( 「A. ス チ ー ル 」な ど )を 示 す 。
表 5 .4
代表的な材質・汚れについて適切と考えられる洗浄方法
材質
鉄鋼
汚れ
潤滑油
オイルスラッジ
グリース
燃料
カーボン
変 色 ・焼 き付 き
泥 ・砂
塵埃
錆
アルミ合 金
予備洗4
a/4e/2g
➾1a/2a
予備洗4
a/4e/2g
➾2a/2c/1e
予備洗4
a/4e/2g
➾2b/2c/3b/1e
1e/1f/4e
予 備 洗 4a/4e
➾2a/1a
➾5B/5C
2a/1a
➾5B/5C
1a/2a/3a/7a
1a/2a/3a/7a
5A/5B/6C
樹脂
(ABS)
プラスチック
ゴム
予 備 洗 4a/4e/2g
➾1b/2b
─
─
─
予 備 洗 4a/4e/2g
➾2b/2c/1e
─
─
─
予 備 洗 4a/4e/2g
➾2b/2c/1e
─
─
─
─
─
─
─
─
─
─
─
1e/1f/4e
予 備 洗 4a/4e
➾2a/1a
➾5B/5C
2a/1a
➾5B/5C
1a/2a/3a/7a
1b/2b/3b/7b
5B/5C
5D/5F
2a/3a/7i
2a/7i
─
2a/3a/7i
2a/3a/7i
─
注 1 ) 記 号 の 意 味 は 次 の と お り で あ る 。 / : 「 ま た は」 。 ➾ : 前 の 洗 浄 後 続 け て 行 う 。 ─: 対 象 外 。
注 2)ここで示 した洗 浄 方 法 は、あくまでも一 般 論 であり、実 際 に適 用 する場 合 は、被 洗 浄 物 の形
状 や 汚 れ の 程 度 、 ま た コ ス トや 作 業 効 率 など を 考 慮 し て、 ア レ ン ジ する 必 要 が あ る 。
洗浄技術の選択候補
洗浄手法
1.超 音 波
2.高 圧 ジェット
3.ブラシ
4.浸 漬
5.ブラスト
6.ウエットブラスト
7.拭 き取 り
洗浄剤
a.アルカリ洗 剤
b.中 性 洗 剤
c.準 水 系 洗 浄 剤
d.塩 素 系 溶 剤
e.炭 化 水 素 系 溶 剤
f.灯 油
g.スチーム
h.アルコール
i.水 ・温 水
j.機 能 水
k.バクテリア
35
ブラスト材
A.スチール
B.ガラスビーズ
C.アルミナ
D.重 曹
E.貝 殻 粉
F.プラスチックビーズ
G.ドライアイスペレット
H.液 化 炭 酸 ガス
2a/3a/7i
2a/3a/7i
─
5.4 洗浄事例
前 節 で ま と め た 適 切 と 考 え ら れ る 洗 浄 方 法 を 確 認 す る た め 、具 体 例 と し て 、
実 際 の 洗 浄 事 例 を 収 集 し た 。 表 5 .5 に 収 集 し た 洗 浄 事 例 の 一 覧 を 示 す 。
これは、日本産業洗浄協議会の会員からの事例提供及び自動車部品リサイ
クル業者からのサンプル提供を受けての洗浄機器メーカーでの洗浄試験の実
施によるものである。
自動機による洗浄であり、洗浄時間は数分とかなり短時間である。
以降のページに具体的な洗浄事例を示す。
36
表 5 .5
事例№
洗浄品目
1
パワーステアリン
グ・ ポ ン プ の 洗 浄
6
スタータ、A/C コン
プレッサー、ヘッド
ライト等 の洗 浄
テールランプの洗
浄
7
8
2∼5
処理量
1 個
収集した洗浄事例の一覧
洗浄物の
材質
アルミ、鉄 、樹 脂
他
汚れ
(付 着 物 )
潤 滑 油 、グリー
ス
洗浄手法注)
洗浄剤注)
高 圧 スプ レ ー 洗 浄 、
11 0 ℓ
アルカリ洗 浄 剤
( 濃 度 5 %)
スプレー洗 浄 、
90 ℓ
アルカリ洗 浄 剤
( 濃 度 3 %)
乾燥・
廃水処理
エアブロー、廃
液 :バッグフィルタ
ーろ過
エアブロー
複 数 の部 品 、コン
ベアで連 続 洗 浄
A BS 樹 脂
塵 埃 、 グ リス
スプ レ ー 洗 浄 、
25 0 ℓ / 分
アルカリ洗 浄 剤
( 濃 度 3 %)
ケーシング、カバ
ー類 の洗 浄
1 パレ ッ ト / 分
鉄 、銅 、アルミ、樹
脂
オイル、ゴミのカ
ーボン状
高 圧 ジェット、
20 0 ℓ
アルカリ洗 浄 剤
(2 0 ℓ /1 0 日 )
エアブロー、熱
風 、廃 液 :業 者 引
取り
エアブロー、廃
液 :業 者 引 取 り
ケーシング、カバ
ー類 の洗 浄
1 パレ ッ ト / 分
鉄 、銅 、アルミ、樹
脂
オイル、ゴミのカ
ーボン状
高 圧 ジェット(洗
浄 、水 切 り、乾 燥 の
全自動)
アルカリ洗 浄 剤
(2 0 ℓ / 10 日 )
熱風、
廃 液 :業 者 引 取 り
注 ) 今 回 収 集 し た 事 例 は す べ て、 5 . 3 節 で の「 洗 浄 技 術 の 選 択 候 補 」 で は、 洗 浄 手 法 は 「 2 . 高 圧 ジ ェ ッ ト 」 、 洗 浄 剤 は 「 a . ア ル カ リ 洗 浄 剤 」 に 該 当 す る 。
37
事例№
1
事例名称
自 動 車 部 品 ポ ンプ の 洗 浄
名称
ハ ゚ ワ ー ステ ア リン ク ゙ ・ ホ ゚ ン フ ゚
(組 込 み品 )
材質
ア ル ミ、 鉄 、 樹 脂 、 他
部 品 流 し方
形 状 、 寸 法 ( mm)
180
[代表例]
ワーク回 転 洗 浄
115
洗浄仕様
付着物
潤 滑 油 、グリース
〔洗 浄 剤 〕
種類
商品名
メーカー
使用量
使用上の
注意点
アルカリ洗 浄 剤
MC-23
森合精機㈱
5 %
〔洗 浄 装 置 〕
洗浄方式
メーカー
装置寸法
装置重量
洗浄槽寸法
洗浄液量
〔乾 燥 ・廃 水 処 理 〕
高 圧 水 ス フ ゚ レ ー 洗 浄 機
MCJ-350S
森合精機㈱
1 0 0 W× 1 6 5 0 D × 1 9 0 0 H
280 kg
180 ℓ (液 タンク容 積 )
1300 ℓ/Hr
乾燥方法
エアブロー
廃液処理
ハ ゙ ッ グ フ ィ ル タ ー ろ 過
廃水処理
定 期 的 な液 の入 替
え
<洗浄工程・条件>
工程:
洗 浄 機 の 治 具 に 部 品 を セ ッ ト → 洗 浄 槽 内 に 搬 入 → 水 ス プ レ ー 洗 浄 ( 部 品 の テーブル回 転 )
→ エアブロー水 切 り 乾 燥 ( 部 品 の テーブル回 転 ) → 洗 浄 槽 よ り 搬 出 → 部 品 の 取 出 し
条件:
水スプレー洗浄
:
3MPa( 洗 浄 圧 力 )、 5 分 ( 洗 浄 時 間 )
エ ア ブ ロ ー 水 切 り 乾 燥 : 0.4MPa( エ ア 圧 力 )、 2 分 ( 乾 燥 時 間 )
<設備概要>
洗浄前
洗浄後
高 圧 スプレー洗 浄 機 MCJ-350S
コスト
初期投資額
運用費
3,300,000 円
円/月
38
その他の
必要な設備
電気、エア、水
事例№
2
事例名称
自 動 車 部 品 スタ ータ の 洗 浄
名称
スタ ータ
〔洗 浄 剤 〕
種類
商品名
メーカー
使用量
使用上の
注意点
〔洗 浄 装 置 〕
アルカリ洗 浄 剤
JP-1L
日伸精機㈱
3%濃 度
洗浄方式
メーカー
装置寸法
装置重量
洗浄物寸法
洗浄液量
スプレー洗 浄
日伸精機㈱
7 2 0 × 7 5 0× 9 4 0 H
1 00 k g
5 0 0 φ× 1 7 5 H
約 9 0ℓ
〔乾 燥 ・廃 水 処 理 〕
乾燥方法
廃液処理
廃水処理
<洗浄工程・条件>
ス プ レ ー 洗 浄 圧 力 : 0.29MPa
吐 出 量 : 約 100 ℓ
洗浄時間:2 分
洗浄前
洗浄後
39
エ ア ー フ ゙ ロー
事例№
3
事例名称
自 動 車 部 品 A / Cコ ン プ レ ッサ ー の 洗 浄
名称
A / C コ ン プ レ ッサ ー
形状
[代表例]
〔洗 浄 剤 〕
種類
商品名
メーカー
使用量
使用上の
注意点
〔洗 浄 装 置 〕
アルカリ洗 浄 剤
JP-1L
日伸精機㈱
3%濃 度
洗浄方式
メーカー
装置寸法
装置重量
洗浄物寸法
洗浄液量
スプレー洗 浄
日伸精機㈱
7 2 0 × 7 5 0× 9 4 0 H
1 00 k g
5 0 0 φ× 1 7 5 H
約 9 0ℓ
〔乾 燥 ・廃 水 処 理 〕
乾燥方法
廃液処理
廃水処理
<洗浄工程・条件>
ス プ レ ー 洗 浄 圧 力 : 0.29MPa
吐 出 量 : 約 100 ℓ
洗浄時間:3 分
洗浄前
洗浄後
40
エ ア ー フ ゙ ロー
事例№
4
事例名称
自 動 車 部 品 ヘッ ドラ イ ト の 洗 浄
名称
ヘッ ドラ イ ト
形状
[代表例]
〔洗 浄 剤 〕
種類
商品名
メーカー
使用量
使用上の
注意点
〔洗 浄 装 置 〕
アルカリ洗 浄 剤
JP-1L
日伸精機㈱
3%濃 度
洗浄方式
メーカー
装置寸法
装置重量
洗浄物寸法
洗浄液量
スプレー洗 浄
日伸精機㈱
7 2 0 × 7 5 0× 9 4 0 H
1 00 k g
5 0 0 φ× 1 7 5 H
約 9 0ℓ
〔乾 燥 ・廃 水 処 理 〕
乾燥方法
廃液処理
廃水処理
<洗浄工程・条件>
ス プ レ ー 洗 浄 圧 力 : 0.29MPa
吐 出 量 : 約 100 ℓ
洗浄時間:1分
洗浄前
洗浄後
41
エ ア ー フ ゙ ロー
事例№
5
事例名称
自 動 車 部 品 の洗 浄
〔洗 浄 剤 〕
種類
商品名
メーカー
使用量
使用上の
注意点
〔洗 浄 装 置 〕
アルカリ洗 浄 剤
JP-1L
日伸精機㈱
3%濃 度
洗浄方式
メーカー
装置寸法
装置重量
洗浄物寸法
洗浄液量
スプレー洗 浄
日伸精機㈱
7 2 0 × 7 5 0× 9 4 0 H
1 00 k g
5 0 0 φ× 1 7 5 H
約 9 0ℓ
〔乾 燥 ・廃 水 処 理 〕
乾燥方法
廃液処理
廃水処理
<洗浄工程・条件>
ス プ レ ー 洗 浄 圧 力 : 0.29MPa
吐 出 量 : 約 100L
洗浄時間:1分
洗浄前
洗浄後
42
エ ア ー フ ゙ ロー
事例№
6
事例名称
自 動 車 部 品 テ ール ラ ンプ の 洗 浄
洗浄物
洗浄物量
処理個数
名称
部品種類
テ ー ル ラ ンプ
ABS 樹 脂
形 状 、 寸 法 ( mm)
L400 W90 H90
複数
洗浄時点
部 品 流 し方
材質
コ ンベ ア に て 連 続 洗 浄
洗浄前
洗浄仕様
付着物
塵 埃 、 グ リス
要求清浄度
目 視 にて汚 れの付 着 なきこと
〔洗 浄 剤 〕
アルカリ洗 浄 剤
デタージェイント 90
洗浄方式
メーカー
メーカー
ネ オス
装置寸法
使用量
3% 希 釈
( p H 1 0. 8 )
装置重量
50℃以 上 加 温
洗浄後
〔洗 浄 装 置 〕
種類
商品名
使用上の
注意点
[代表例]
〔乾 燥 ・廃 水 処 理 〕
スプレー洗 浄
ファインマシーンカタオカ㈱
W 1 2 0 0× L 2 4 0 0
×H 1 7 0 0
1 20 0 k g
洗浄槽寸法
洗浄液量
タンク容 量 280ℓ
乾燥
方法
エ ア ー フ ゙ ロー 、 熱 風
廃液
処理
産廃業者引取り
廃水
処理
<洗浄工程・条件>
本 品 に お い て は 、 搬 送 速 度 0.5m/分 、 洗 浄 液 温 60℃ 、 洗 浄 圧 0.36Mpa(250L/分 )に て 実
施
洗 浄 ノ ズ ル 数 合 計 78 ケ (狙 い 箇 所 の 特 定 無 し )
<設備概要>
当装置は無段変速コンベアによる連続搬送の過程においてスプレー洗浄⇒エアーブロ
ー 水 切 り を 行 う 装 置 で あ り ま す 。 状 況 に 応 じ て 熱 風 乾 燥 炉 を 1m 設 け 乾 燥 促 進 を 行 い ま
す (LD)。
スプレー洗浄では上下左右に配列されたノズルゾーンを 3 箇所通過する事でムラの無い
洗浄を、水切りは同様に 1 箇所を通過する事でエアーブロー水切りを行います。
洗 浄 液 の 吐 出 量 は 250L/分 、 洗 浄 圧 力 0.36Mpa と 豊 富 な 吐 出 量 ・圧 力 に よ り 油 脂 類 や 塵
埃、切粉の除去が可能です。
コスト
SPC-101-S
初期投資額
3,200,000 円 ∼
運用費
円/月
43
SPC-101-S-LD( 乾 燥 炉 付 )
その他の
必要な設備
コンプレッサーエアー
事例№
7
事例名称
自 動 車 の 分 解 し た 部 品 の ケ ー シ ン グ、 カ バ ー 各 種 の 洗 浄
洗浄物
洗浄物量
処理個数
1 パレ ッ ト / 6 0 秒
部品種類
40∼50 種
洗浄時点
初 期 バッチ式
部 品 流 し方
名称
カ バー 類 、 他
材質
鉄 、胴 、アルミ、樹 脂
形 状 、 寸 法 ( mm)
42 00 ∼ 1 00
パレット単 位
∼
100
洗浄仕様
付着物
要求清浄度
210
オイ ル、 ゴ ミ の カ ー ボ ン 状
目視検査
〔洗 浄 剤 〕
種類
商品名
メーカー
使用量
使用上の
注意点
[代表例]
〔洗 浄 装 置 〕
アルカリ洗 浄 剤
20ℓ/10日
濃度
洗浄方式
メーカー
装置寸法
装置重量
洗浄槽寸法
洗浄液量
〔乾 燥 ・廃 水 処 理 〕
高 圧 ジェ ッ ト
東光技研工業㈱
1. 5 × 2 m
各種
200ℓ
乾燥方法
エ ヤ ーブ ロー
廃液処理
産廃業者
廃水処理
産廃業者
<洗浄工程・条件>
バッチ式 ターンテーブル
事例№
8
事例名称
自 動 車 の 分 解 し た 部 品 の ケ ー シ ン グ、 カ バ ー 各 種 の 洗 浄
洗浄物
洗浄物量
処理個数
1 パレ ッ ト / 6 0 秒
部品種類
40∼50 種
洗浄時点
部 品 流 し方
名称
カ バー 類 、 他
材質
鉄 、胴 、アルミ、樹 脂
形 状 、 寸 法 ( mm)
最終自動化
4ヶ × カ ゴ
∼
100
洗浄仕様
付着物
要求清浄度
210
オイ ル、 ゴ ミ の カ ー ボ ン 状
目視検査
〔洗 浄 剤 〕
種類
商品名
メーカー
使用量
使用上の
注意点
[代表例]
42 00 ∼ 1 00
アルカリ洗 浄 剤
20ℓ/10日
濃度
〔洗 浄 装 置 〕
洗浄方式
メーカー
装置寸法
装置重量
洗浄槽寸法
洗浄液量
高 圧 ジェ ッ ト
東光技研工業㈱
8×3m
各種
2t
<洗浄工程・条件>
全自動(洗浄、水切、乾燥)
44
〔乾 燥 ・廃 水 処 理 〕
乾燥方法
熱風
廃液処理
産廃業者
廃水処理
産廃業者
6.現状技術では対応困難なケースについての洗浄
試験の実施
「4 .自 動 車 部 品 再 生 に お け る 洗 浄 実 施 の 現 状 把 握 」で 得 ら れ た 実 施 困 難 な
原因が洗浄技術上の問題であるケースは、当該業者にとっての共通の技術的
課題であり、この課題の解決は自動車部品の再利用を促進するためのブレー
クスルーとなりうるものである。
したがって、本調査研究においては、技術上、特に洗浄困難なケースにつ
い て 、実 際 に 洗 浄 試 験 を 実 施 す る こ と に よ っ て 、適 切 な 洗 浄 方 法 を 検 討 し た 。
試験方法 としては 、第4章 で述べた 現場訪問 の協力事 業者から 、洗浄困 難
なケースについて試験サンプルの提供を受け、洗浄試験等を実施し、洗浄技
術上の課題解決の可能性を検討した。
検討としては、大別して以下の 2 種類を行った。
・シリンダヘッドに付着したカーボンに対する検討
・ピストンに付着したカーボンに対する検討
45
6.1 シリンダヘッドに付着したカーボンに対する検討
シリンダヘッドに付着したカーボンに対する検討について以下に記す。
(1) 試 験 対 象 の 性 状 ( 表 6 .1 )
表 6 .1
試験対象の性状
部品
エンジンのシリンダヘッド
材質
アルミ
汚れ
カーボン
(2) 現 状 の 課 題 ( 表 6 .2 )
表 6 .2
現状の課題
① 洗 浄 に 時 間 が か か る( 第 1 段 階 の 洗 浄 : ア ル カ
リ 浸 漬 4∼ 5 時 間 、 80℃ 、 pH11)。
② アルミが変色する。
③ カーボンの固着が取れない。
(3) 検 討 方 針
通 常 の 強 ア ル カ リ 洗 浄 剤 よ り も pH を 下 げ( pH=11.2)、高 圧 ジ ェ ッ ト に よ
る洗浄を行うこととする。従来の洗浄方法は化学的作用を主とするが、本技
術は、化学的作用を弱くして、その分、物理的作用で洗浄力を補うものであ
る。
洗浄試験としては、アルミへの影響と汚れの取れ具合を検討するために、
3 種類の洗浄剤を用いて比較を行う。
ま た 洗 浄 方 法 を 検 討 す る た め に 、汚 れ の 固 着 状 態 を 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 す る
こととする。
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(4) 試 験 結 果
洗浄試験
表 6 .3
洗浄試験の条件と結果の例
洗浄条件
洗浄剤
温度
洗浄圧力
吐出量
洗浄時間
洗浄結果
ア ル カ リ 洗 剤 ( pH11.2)
※アルミに対するアタック
性なし。
60℃
約 0.29MPa
約 100ℓ/分
5分
一部汚れの残渣はあるが、
時間を延ばせば除去の可
能性あり。
アルミの変色なし。
洗浄前
洗浄後
図 6 .1
洗浄試験の前後での汚れ具合の変化
( 試 験 実 施 機 関 :日 伸 精 機 株 式 会 社 )
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汚れの付着状態
走査型電子顕微鏡を使って、汚れの付着状態の観察写真を撮影した。
その結果 、カーボ ンは母材 に侵食は していな いが、表 面近くで は凹凸の
ある母材に隙間なく密着していることがわかった。また、表面から離れた
ところでは、汚れの密度は粗になっている様子が伺えた。
こ の よ う な 汚 れ の 付 着 状 態 に な っ た 要 因 と し て は 、母 材 表 面 で は 温 度 が
高く、汚れが着くと表面温度が低下することが考えられる。
図 6 .2
汚れの付着状態の観察写真
(実施機関:川重テクノサービス株式会社)
(5) 結 論
ア ル カ リ 洗 浄 剤 の pH を 下 げ 、高 圧 ジ ェ ッ ト に よ る 洗 浄 を 検 討 し た と こ ろ 、
洗 浄 時 間 が 大 幅 に 短 縮 で き( 4 ∼ 5 時 間 → 5 分 )、ア ル ミ も 変 色 さ せ な い こ と
が可能となった。
また、カーボン固着については、通常の洗浄では処理が困難であり、現状
技術ではブラスト洗浄が適していると考えられる。
し た が っ て 、表 6 .2 の 課 題 ① 、② に 対 し て は 、解 決 の 可 能 性 が 得 ら れ た 。
48
6.2 ピストンに付着したカーボンに対する検討
ピストンに付着したカーボンに対する検討について以下に記す。
(1) 試 験 対 象 の 性 状
表 6 .4
試験対象の性状
部品
エンジンのピストン
材質
アルミ
汚れ
カーボン
(2) 現 状 の 課 題
こ の 部 品 に 対 す る 現 状 の 課 題 は 、カ ー ボ ン の 固 着 が 取 れ な い と い う こ と で
ある。
(3) 検 討 方 針
カ ー ボ ン を 分 解 す る 微 生 物 ( 図 6 .3 ) を 使 っ て 、 取 れ に く い カ ー ボ ン を
除去することとする。
卓 上 型 超 音 波 洗 浄 機( 40kHz 200W)
微生物混養洗剤
図 6 .3
試験に使用した洗浄剤と洗浄装置
(4) 試 験 結 果
表 6 .5
洗浄試験の条件と結果の例
洗浄条件
洗浄結果
洗浄剤
微生物混養洗剤
リング部周辺、格子
温度、洗
洗 浄 液 温 27℃ に 設 定 し
部分等に多少のカー
浄時間
て 、 48 時 間 浸 漬 後 、 30
ボンは残るが、十分
分間超音波を実施。
洗浄できた。
49
洗浄前
洗浄後
図 6 .4
洗浄試験の前後での汚れ具合の変化
( 表 6 .5 の ケ ー ス 1 、 試 験 実 施 機 関 :日 伸 精 機 株 式 会 社 )
(5) 結 論
ピストン部品のカーボン固着について、バクテリアを用いた洗浄を実施
し、洗浄時間はかかるが、洗浄性能としては問題のないことが分かった。
またこの洗浄剤は繰り返し再利用できるので、洗浄剤の使用量を減らせ
る技術としても有用であることが分かった。
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7.今後の技術開発の課題・影響等の検討
使 用 済 み 自 動 車 部 品 洗 浄 に お け る 現 場 の ニ ー ズ 、今 後 望 ま れ る 技 術 開 発 の
方向性について、1.のアンケート調査、現場訪問・ヒアリングの結果に基
づき、その結果として、当該分野における今後の洗浄のあり方として、既存
技術を用いた洗浄技術の向上、技術情報の普及、環境対策技術の普及、洗浄
品質の評価について検討し、その結果をまとめた。
課題とし ては、直 ぐに取り 組める短 期的課題 と、理想 を目指し て時間を か
けて取り組むのが望ましいと考えられる中長期的課題に分けて記す。
7.1 短期的課題
以下に、短期的課題として考えられる事項を示す。
(1) 既 存 技 術 を 用 い た 洗 浄 技 術 の 向 上
今回の調 査研究で 分かった ように、当該分野 の洗浄に おいては 、洗浄時 間
の短縮や、アルミ材を変色させない洗浄方法などの課題がある。しかし、第
6章で述べたようにこれらの課題の中には既存の技術を適用すれば解決の可
能性がある。
したがっ て、今後 は既存洗 浄技術を 用いて、現場の課 題に対し て更に検 討
を進めることが望まれる。
(2) 技 術 情 報 の 普 及
調 査 研 究 結 果 に お い て 、当 該 分 野 で は 洗 浄 技 術 に 関 す る 情 報 が 不 足 し て い
る状況が伺えた。
したがっ て、洗浄 機や洗浄 剤のメー カーの情 報も含め て、初歩 的な情報 提
供から取り組む必要があると考えられる。
ま た 、日 本 産 業 洗 浄 協 議 会 の よ う な 洗 浄 を 専 門 と す る 機 関 で の 洗 浄 技 術 の
集大成が望まれる。当機関では、洗浄に関するセミナーや講習会及び洗浄相
談 も 実 施 し て お り 、こ れ ら の 機 会 を 利 用 す る こ と は 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。
更には、工業団体に未加盟の事業者が多いので、加盟促進とともに、洗浄
剤の流通や同業者間でのネットワーク等を通した情報流通の促進も望まれる。
(3) 環 境 対 策 技 術 の 普 及
洗 浄 排 水 の 排 出 に つ い て は 、水 質 汚 濁 防 止 法 や 各 種 条 例 の 遵 守 の 観 点 か ら
重要である。
近年、遠 心分離を 利用した 洗浄剤再 生装置が 低価格で 販売され ている。自
動車部品メーカでは、このような技術を利用して、洗浄剤を再利用し、洗浄
剤の使用量を減らす工夫が行われている。
したがっ て、自動 車リユー スの分野 でも、こ のような 技術の利 用によっ て
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洗浄剤の環境負荷を減らす可能性を検討することが望まれる。
7.2 中長期的課題
(1) 洗 浄 品 質 の 評 価
新車製造の分野では、洗浄品質の評価基準について検討されつつある。
将 来 的 に は 、部 品 リ ユ ー ス の 分 野 へ の 応 用 が 有 効 で は な い か と 期 待 さ れ る
ので、新車製造分野を踏まえた応用例を想定することも重要であると考えら
れる。
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8.調査研究の今後の課題及び展開
我 が 国 の 自 動 車 補 修 部 品 の 市 場 規 模 は お お よ そ 2.5 兆 円 か ら 3 兆 円 で あ る
が 、 そ の う ち 中 古 部 品 の 市 場 は 1∼ 2 千 億 円 程 度 と さ れ て お り 、 ま だ 全 体 の
数 %で あ る 。 ア メ リ カ で の 補 修 部 品 の 市 場 占 有 率 が 3 割 か ら 4 割 程 度 で あ る
ことを考えると、わが国では今後の更なる市場拡大が期待される。
今回は、自動車部品リユース分野(リビルト部品、リユース部品)に対し
て洗浄という切り口で調査研究を行い、リユースの現場には洗浄の技術情報
が十分に行き渡っていないことが明らかとなった。このような状況にある原
因としては、当該分野の事業者の規模が小さく、収集可能な情報量や設備投
資に限界があることが考えられるが、一方で、洗浄装置メーカー等の技術提
供側においても重要な市場として認識されて来なかったことも要因だろう。
したがって、今後、当該分野の更なる発展のためには、技術提供側(シー
ズ )と 技 術 利 用 側( ニ ー ズ )で の 技 術 交 流 を 活 発 に す る た め の 仕 組 み 作 り や 、
シーズ側で現場の状況やニーズを十分に把握した上で、既存技術の適用や新
規技術の開発を行うことが重要であると考えられる。
その際には、部品リサイクルという観点だけでなく、例えば、洗浄におけ
るエネルギー消費量や洗浄後の排水処理といった環境影響を総合的に見る視
点が必要だろう。また小規模な事業者でも実施可能である対策を検討するこ
とも重要である。
更に、リサイクル促進という面では、洗浄だけでなく、自動車の解体、部
品の保管、製品の検査なども人手とコストのかかる工程であり、これらにつ
いても検討が望まれる。
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−禁無断掲載−
システム技術開発調査研究
18−R−9
自動車部品リユースのための洗浄技術に関する調査研究
(要旨)
平成19年3月
作
成
委託先
財団法人機械システム振興協会
東京都港区三田一丁目4番28号
TEL 03-3454-1311
みずほ情報総研株式会社
東京都千代田区神田錦町二丁目3番
TEL 03-5281-5288