20 演題名 :ラテックス凝集反応を利用した乳房炎簡易診断技術の検討

演題番号 :20
演題名
:ラテックス凝集反応を利用した乳房炎簡易診断技術の検討
発表者氏名:○船木博史1) 大元隆夫2)
発表者所属:1)島根県家畜病鑑室 2)島根県益田家保
1.はじめに:乳房炎発生による酪農経営の経済的損失は甚大であり、その防除法の確立が課題となっている。
原因菌に特異的な乳房炎治療を実施するためには細菌検査が必要であるが、フィールドでは経験的な薬剤選択お
よび治療が行われている。黄色ブドウ球菌(S.aureus:以下SA)に起因する乳房炎は難治性で、生産性の低下が著
しいことから、簡易な早期診断法の開発が求められている。SAは菌体抗原として莢膜が病原性因子あるいは菌体
抗原として重視されており、そのうち血清型5および8型が乳房炎分離株に多いとされている。本研究では、臨床
症状等を伴う乳房炎における早期診断、牛群中に存在する潜在性あるいは慢性乳房炎牛の診断、摘発に資するた
め、精製莢膜多糖体抗原5型(SPA5)に焦点を当て、SA性乳房炎の簡易診断技術としてラテックス凝集試薬の開発
を行った。
2.材料および方法:簡易診断試薬としてSPA5を抗原としたラテックス凝集反応試薬を作成し、細菌検査結果の
判明している乳房炎乳101例を用いて急速凝集試験を実施した。
3.成
績:ラテックス凝集反応試験の結果、SPA5 型 SA が分離された乳清では 23 例中 12 例(52.2%)で凝集
陽性となった。
4.考
察:県内で分離されるSAの大部分はSPA5型であり、SPA5型分離乳清の63%が乳清中抗体陽性であると判
明しており、この知見をもとに作成されたラテックス凝集試薬の特異性は高いことが判明した。診断感度は既報
で述べたELISA試験成績と同等あるいは若干低い程度であり、抗体検出試験系として、簡易かつ有用である
ことが示された。臨床応用にはさらなる操作手技の簡素化が必要である。