死刑執行に抗議する会長声明 11月11日,福岡拘置所

死刑執行に抗議する会長声明
11月11日,福岡拘置所において1名に対して死刑が執行された。金田勝年法務
大臣による初めての執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは,10
回目で,合わせて17名の生命が国家刑罰権の名の下に剥奪されたことになる。
一昨年3月,静岡地方裁判所は,袴田巖氏の第二次再審請求事件について,再審を
開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。もし,死刑の執行がなされてい
たならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。死刑判決を下すか否かは人
が判断する以上,えん罪による処刑を避けることができないのである。このようなえ
ん罪の危険性等を踏まえ,日本弁護士連合会は,本年10月7日に開催された第59
回人権擁護大会において,
「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」
を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020
年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。
国際的に見ても日本の状況は異例である。世界で死刑を廃止又は停止している国は
140か国に上っている。昨年に実際に死刑を執行した国は日本を含めわずか22か
国であった。OECD加盟国の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・米国
の3か国のみであるが,韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止している。米
国でも死刑を廃止する州が増加している。こうした状況の中で,国際人権(自由権)
規約委員会は,一昨年,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等
を勧告している。
死刑存置の大きな根拠とされる世論についてみると,一昨年11月に実施された政
府世論調査によれば,仮釈放のない終身刑が導入されるならば「死刑を廃止する方が
よい」と回答した者が37.7%にも上る。世論の大半が死刑制度を支持しているな
どとは言えない数字である。
このような国際的・国内的動向を踏まえ,当会は,今回の死刑執行に対し強く抗議
するとともに,2020年までの死刑制度廃止を目指し,死刑執行を停止した上,死
刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を喚起
することを求めるものである。
2016年(平成28年)12月16日
沖縄弁護士会
会長
池
田
修